説明

建設機械

【課題】 物品収容箱を小さくすることなく、大容量の尿素水タンクを容易にアクセスできる位置に設けることにより、尿素水を給水するときの作業性を向上する。
【解決手段】 燃料タンク12は、周壁面板をなす第1の板体13の前面板13Bよりも第2の板体14の上面板14Aのフランジ部14A1を外側に張出すことにより、前面板13Bの前面側に、上面板14Aのフランジ部14A1の範囲で上,下方向に投影される前側の余剰空間部15Aを形成し、尿素水タンク24は、その後側部分が余剰空間部15Aに入り込んだ状態で燃料タンク12に添って配置する構成としている。従って、尿素水タンク24は、燃料タンク12に形成される前側の余剰空間部15Aを利用し、この余剰空間部15Aに後側部分を入り込ませることにより、物品収容箱16を小さくすることなく、容量を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の窒素酸化物を除去するための尿素選択還元触媒と尿素水タンクを搭載した油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載され上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造部材をなす旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記作業装置の左側に添うように前記旋回フレームの左前側に設けられたキャブとを備え、該キャブ内には、オペレータが着座する運転席等が設けられている。
【0004】
また、旋回フレームには、作業装置の右側に位置して前記エンジンに供給する燃料を貯える燃料タンクが設けられ、該燃料タンクの前側には、工具、グリースガン、各種消耗品等の物品を収容する物品収容箱が設けられている。
【0005】
一方、油圧ショベルのエンジンにはディーゼルエンジンが用いられている。このディーゼルエンジンは、窒素酸化物(以下、NOxという)等を多く排出するとされている。そこで、ディーゼルエンジンの排気ガスの後処理装置として、NOxを浄化するためのNOx浄化装置がある。このNOx浄化装置は、例えばエンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒と、還元剤としての尿素水溶液を貯える尿素水タンクと、該尿素水タンク内の尿素水溶液を尿素選択還元触媒の上流側に噴射する尿素噴射弁と、前記尿素水タンクと尿素噴射弁とを接続する接続配管とにより大略構成されている。
【0006】
ここで、油圧ショベルに尿素水タンクを設ける場合、給水回数を少なくするために容量を大きく設定することが望まれる。しかし、油圧ショベルには多くの機器が搭載されているから、新たに尿素水タンクを設置するスペースを確保するのは困難である。そこで、従来技術による油圧ショベルには、工具等を収容する物品収容箱内に尿素水タンクを収容する構成としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−240676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1によるものでは、物品収容箱内に尿素水タンクを収容する構成としているから、容量を大きくした場合、物品収容箱の容量が小さくなり、工具や消耗品を収容できなくなるという問題がある。
【0009】
また、物品収容箱内に尿素水タンクを収容した場合、物品収容箱内の工具等が邪魔になって尿素水タンクにアクセスし難くなる虞があり、給水作業に手間を要してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、物品収容箱を小さくすることなく、大容量の尿素水タンクを容易にアクセスできる位置に設けることにより、尿素水を給水するときの作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建設機械は、走行体の支持構造部材を形成する支持フレームと、該支持フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記支持フレームの前側に位置して左,右方向の一側に配置されオペレータが搭乗するキャブと、前記支持フレームの左,右方向の他側に配置され前記エンジンに供給する燃料または油圧系統に用いる作動油を貯える貯油タンクと、該貯油タンクの前側に位置して前記支持フレーム上に設けられた物品収容箱と、前記エンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒と、還元剤である尿素水を貯えるために中空な容器からなる尿素水タンクと、該尿素水タンクと前記エンジンの排気管との間を接続する接続配管とを備えている。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記貯油タンクは、外周面を形成する角筒形または円筒形の周壁面板と、該周壁面板の下面を閉塞する下面板と、前記周壁面板の上面を閉塞し周壁面板よりも外側に張出したフランジ部を有する上面板とにより形成し、前記周壁面板の外周面側には、前記上面板のフランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部を形成し、前記尿素水タンクは、前記余剰空間部に入り込んだ状態で前記貯油タンクに添って配置する構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記尿素水タンクは、前記貯油タンクに形成される余剰空間部のうち、前記貯油タンクと前記物品収容箱との間の余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、前記貯油タンクは、前記下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成し、前記上面板には、前記第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前記前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部を形成し、前記尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としたことにある。
【0015】
請求項4の発明は、前記貯油タンクは、前記下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成し、前記上面板、左面板および右面板には、前記第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前記前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部をそれぞれ形成し、前記尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影されると共に、前記左面板と右面板の前記フランジ部の範囲で左,右方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成とたことにある。
【0016】
請求項5の発明は、前記貯油タンクと前記物品収容箱との間には、該貯油タンクと物品収容箱との間を覆う前カバーを設け、前記尿素水タンクは、該前カバーによって隠蔽された状態で前記貯油タンクに添って配置する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、貯油タンクは、外周面を形成する角筒形または円筒形の周壁面板と、該周壁面板の下面を閉塞する下面板と、前記周壁面板の上面を閉塞し周壁面板よりも外側に張出したフランジ部を有する上面板とにより形成することにより、前記周壁面板の外周面側には、上面板のフランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部を形成することができる。そして、尿素水タンクは、前記余剰空間部に入り込んだ状態で前記貯油タンクに添って配置することができる。
【0018】
従って、尿素水タンクは、貯油タンクに形成される余剰空間部を利用し、この余剰空間部に入り込むことにより、物品収容箱に収容したり、物品収容箱を小型化することなく、尿素水の容量を大きくすることができる。
【0019】
この結果、尿素水タンクの容量を大きくした場合でも、物品収容箱の容量を確保できるから、工具、消耗品等を十分に収容することができる。また、尿素水タンクは、前記貯油タンクに添って配置しているから、尿素水を充填するときに容易にアクセスすることができ、尿素水を給水するときの作業性を向上することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、尿素水タンクは、貯油タンクと物品収容箱との間の余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としているから、貯油タンクの前側の余剰空間部と、貯油タンクと物品収容箱との間の空間部とを利用し、容量の大きな尿素水タンクを配置することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、貯油タンクは、下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成しているから、2枚の板体によって中空容器を形成することができる。
【0022】
この場合、上面板には、第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部を形成することができるから、尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置することができる。これにより、周囲の部材の設置スペースを侵害することなく、容量の大きな尿素水タンクを配置することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、貯油タンクは、下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成しているから、2枚の板体によって中空容器を形成することができる。
【0024】
この場合、上面板、左面板および右面板には、第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部をそれぞれ形成することができるから、尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影されると共に、前記左面板と右面板の前記フランジ部の範囲で左,右方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置することができる。これにより、周囲の部材の設置スペースを侵害することなく、容量の大きな尿素水タンクを配置することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、貯油タンクと物品収容箱との間には、該貯油タンクと物品収容箱との間を覆う前カバーを設けているから、尿素水タンクは、該前カバーによって覆い隠すことができ、外観上の見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】上部旋回体を建屋カバーの一部を省略した状態で示す平面図である。
【図3】上部旋回体の前側部分を拡大して示す外観斜視図である。
【図4】燃料タンクと尿素水タンクと旋回フレームの一部とを示す要部拡大の斜視図である。
【図5】燃料タンクを単体で示す外観斜視図である。
【図6】燃料タンクを図5中の矢示VI−VI方向からみた断面図である。
【図7】燃料タンクを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図8】旋回フレーム、燃料タンク、物品収容箱、尿素水タンク等を図2中の矢示VIII−VIII方向からみた断面図である。
【図9】燃料タンクから尿素水タンクを分離した状態を示す要部拡大の斜視図である。
【図10】後処理装置の構成をエンジンと共に示す構成図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による尿素水タンクを図8と同様位置からみた断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態による尿素水タンクを図8と同様位置からみた断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態による燃料タンク、尿素水タンク等を示す斜視図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態による尿素水タンク等を図3と同様位置からみた斜視図である。
【図15】変形例による尿素水タンク等を図8と同様位置からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0028】
図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、尿素水タンクは、前カバーの内側に位置して貯油タンクに添って配置する構成とした場合を例示している。
【0029】
図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に走行体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0030】
また、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、エンジン6、キャブ10、作動油タンク11、燃料タンク12、物品収容箱16、前カバー20、後処理装置21、尿素水タンク24等により大略構成されている。
【0031】
5は支持フレームとしての旋回フレームである。この旋回フレーム5は、図2に示す如く、前,後方向に延びる厚肉な底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cから左,右方向の外向きに延び前,後方向に間隔をもって配置された複数本の張出しビーム5D,5E(図8参照)と、左,右方向の外側に位置して各張出しビーム5D,5Eの先端に取付けられ、前,後方向に延びた左サイドフレーム5F,右サイドフレーム5Gとにより支持構造部材として構成されている。
【0032】
ここで、前側に位置する張出しビーム5Dは、図8に示すように、後述する燃料タンク12の前側部分を支持するものである。また、張出しビーム5Dは、上側の平坦部分が前方に延びて形成され、これにより、張出しビーム5D上には、尿素水タンク24を取付けることもできる。
【0033】
6は旋回フレーム5の後側に設けられたエンジン(図2参照)で、該エンジン6は、ディーゼルエンジンとして構成され、旋回フレーム5に横置き状態で搭載されている。このエンジン6には、排気ガスを排出するための排気管7が設けられている。
【0034】
ここで、ディーゼルエンジン6は、高効率で耐久性に優れているが、窒素酸化物(NOx)等の有害物質が排気ガスと一緒に排出されてしまう。そこで、排気管7に取付けられる後述の後処理装置21は、図10に示すように、窒素酸化物(NOx)を除去するNOx浄化装置23を収容筒体22内に収容している。
【0035】
8はエンジン6の左側に設けられた熱交換装置(図2参照)で、該熱交換装置8は、エンジン冷却水を冷やすラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン6が吸込む空気を冷却するインタクーラ等により構成されている。また、9はエンジン6の右側に取付けられた油圧ポンプで、該油圧ポンプ9は、エンジン6によって駆動されることにより、作動油タンク11からの作動油を圧油として吐出するものである。
【0036】
10は旋回フレーム5の左前側に設けられたキャブである。このキャブ10は、油圧ショベル1を運転するためにオペレータが搭乗するもので、内部には、オペレータが着座する運転席、各種操作を行うレバー、ペダル等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0037】
11はエンジン6の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられた貯油タンクとしての作動油タンクを示している。この作動油タンク11は、上,下方向に延びる直方体状の耐圧タンクとして形成されている。
【0038】
12は作動油タンク11の前側に隣接するように旋回フレーム5の右側に設けられた貯油タンクとしての燃料タンクを示している。この燃料タンク12は、規定の稼働時間作業するのに十分な燃料を貯えることができる。また、燃料タンク12は、図4ないし図9に示す如く、後述する第1の板体13、第2の板体14等により大略構成されている。
【0039】
13は燃料タンク12を構成する第1の板体である。この第1の板体13は、その前,後方向寸法L1が後述する第2の板体14の前,後方向寸法L2よりも小さな寸法に形成されている(L1<L2)。また、第1の板体13は、短冊状に切出した1枚の金属板をU字状に折り曲げることにより形成されている。即ち、第1の板体13は、図7に示すように、下側に位置して水平方向に延びた長方形状の下面板13Aと、該下面板13Aの前,後方向の両側からそれぞれ上向きに屈曲して平行に延びた前面板13B,後面板13Cとより構成されている。
【0040】
また、前面板13Bには、高さ方向の中間位置に左,右方向に離間して2個のねじ穴13Dが設けられている。この2個のねじ穴13Dは、後述する尿素水タンク24を固定する固定具26を取付けるためのボルト27が螺着されるものである。さらに、前面板13Bの上側位置には、後述する第3のステップ板19が取付けられる。
【0041】
14は第1の板体13に被さるように設けられた第2の板体で、該第2の板体14は、その前,後方向寸法L2が第1の板体13の前,後方向寸法L1よりも大きな寸法に形成されている(L2>L1)。また、第2の板体14は、第1の板体13とほぼ同様に、短冊状に切出した1枚の金属板を逆U字状に折り曲げることにより形成されている。即ち、第2の板体14は、上側に位置して水平方向に延びた長方形状の上面板14Aと、該上面板14Aの左,右方向の両側からそれぞれ下向きに屈曲して平行に延びた左面板14B,右面板14Cとより構成されている。また、第2の板体14の上面板14Aには、燃料タンク12内に燃料を給油するための給油口14Dが設けられている。
【0042】
ここで、燃料タンク12を構成する第1の板体13と第2の板体14との組立構造について述べる。まず、前述したように、第2の板体14の前,後方向寸法となる幅寸法L2は、第1の板体13の前,後方向寸法となる前面板13B,後面板13C間の寸法L1よりも大きな前,後方向寸法に設定されている(L2>L1)。従って、図7に示すように、第2の板体14の左面板14B,右面板14C間に第1の板体13の前面板13B,後面板13Cを周方向に90度ずらした状態で配置し、第1の板体13の周縁を第2の板体14に気液密に溶接する。
【0043】
これにより、燃料タンク12は、第1の板体13の前面板13B、後面板13Cと第2の板体14の左面板14B、右面板14Cとが外周面を形成した角筒形の周壁面板を形成し、該周壁面板の下面を第1の板体13の下面板13Aが閉塞し、さらに、前記周壁面板の上面を第2の板体14の上面板14Aが閉塞する。
【0044】
このときに、周壁面板を構成する第1の板体13の前面板13B、後面板13Cよりも外側に張出した上面板14Aの前,後部分がフランジ部14A1,14A2となる。また、第1の板体13の前面板13B、後面板13Cよりも外側に張出した左面板14B、右面板14Cの前,後部分がフランジ部14B1,14B2、14C1,14C2となる。即ち、前,後のフランジ部14A1,14A2、14B1,14B2、14C1,14C2は、第1の板体13の前,後方向寸法L1と第2の板体14の前,後方向寸法L2との寸法差によって形成されるものである。
【0045】
そして、燃料タンク12の外周面の前側には、上面板14Aの前フランジ部14A1の範囲で上,下方向に投影され、左面板14B,右面板14Cの前フランジ部14B1,14C1の範囲で左,右方向に投影された前余剰空間部15A(図5、図6等に格子状に示す部分)を形成することができる。同様に、燃料タンク12の外周面の後側には、上面板14Aの後フランジ部14A2の範囲で上,下方向に投影され、左面板14B,右面板14Cの後フランジ部14B2,14C2の範囲で左,右方向に投影された後余剰空間部15Bを形成することができる。
【0046】
この前,後の余剰空間部15A,15Bは、2枚の板体13,14を溶接して燃料タンク12を形成するときに必然的に形成される空間となっている。この前,後の余剰空間部15A,15Bのうち、燃料タンク12と後述の物品収容箱16との間の余剰空間部15Aに入り込んだ状態で尿素水タンク24が配置されている。
【0047】
また、燃料タンク12は、前側部分が前側に位置する張出しビーム5Dおよび右サイドフレーム5G上に取付けられ、後側部分が張出しビーム5Dの後側に位置する張出しビーム5Eおよび右サイドフレーム5G上に取付けられている。ここで、燃料タンク12の前側部分が取付けられる前側の張出しビーム5Dには、尿素水タンク24が配置されている。
【0048】
16は旋回フレーム5の右前部に設けられた物品収容箱である。この物品収容箱16は、修理用の工具、グリースガン、消耗部品、油圧機器等を収容するもので、燃料タンク12の前側に所定の間隔寸法をもって配設されている。また、物品収容箱16は、旋回フレーム5上に取付けられ、上方が開口したボックス状の箱体部16Aと、該箱体部16Aの上側を閉塞するように設けられた蓋部16Bとにより構成されている。そして、蓋部16Bは、後部が箱体部16Aに回動可能に取付けられ、これにより、前方に向けて開閉することができる。
【0049】
ここで、物品収容箱16は、後述の尿素水タンク24を収容していないから、容量を大きくすることができ、必要量の工具、消耗品等を収容でき、また、容易に出し入れすることもできる。さらに、制御弁等の油圧機器を収容した場合には、この油圧機器のメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、物品収容箱16の蓋部16Bには、後述する第2のステップ板18が一体的に設けられている。
【0050】
17,18,19は上部旋回体2の右前側に設けられた3段のステップ板を示している。第1のステップ板17は、物品収容箱16よりも前方に延びるように、旋回フレーム5の右前部に取付けられている。また、第2のステップ板18は、物品収容箱16の蓋部16B上に一体的に設けられている。さらに、第3のステップ板19は、後述する尿素水タンク24よりも上方となる高さ位置で、燃料タンク12を構成する第2の板体14の前面板13Bの上側部位に溶接手段、ねじ止め手段等を用いて固着されている。
【0051】
これにより、3段のステップ板17,18,19は、下部走行体2上から順番に足をかけることにより、上部旋回体3上に容易に乗ることができ、燃料タンク12への給油作業、尿素水タンク24への給水作業等を容易に、かつ安全に行うことができる。
【0052】
20は燃料タンク12と物品収容箱16との間に設けられた前カバーで、該前カバー20は、燃料タンク12と物品収容箱16との間の空間を隠蔽することにより外観上の見栄えを良好にするものである。また、前カバー20は、燃料タンク12の第1の板体13から前側に連続するように設けられた周面部20Aと、該周面部20Aの前側を閉塞する前面部20Bとにより形成されている。さらに、前カバー20は、燃料タンク12と物品収容箱16との間を滑らかに接続するために、その上側部分が前,後方向に狭幅に形成されている。そして、前カバー20の上側部分には、第3のステップ板19を前方に突出させるためのステップ挿通開口20Cが設けられ、該ステップ挿通開口20Cの下側には、尿素水タンク24の給水口24Gを外部に露出させるための給水用開口20Dが設けられている。
【0053】
次に、第1の実施の形態の特徴部分となるNOx浄化装置23等を備えた後処理装置21の構成について、図10等を参照しつつ述べる。
【0054】
21はエンジン6の排気管7に接続して設けられた後処理装置である。この後処理装置21は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元剤となる尿素水溶液を用いて浄化する後述のNOx浄化装置23を備えるものである。そして、後処理装置21は、後述の収容筒体22、NOx浄化装置23等により大略構成されている。
【0055】
22は後処理装置21の収容筒体で、該収容筒体22は、前,後方向に延びた中空な筒体として形成され、該収容筒体22の内部にはNOx浄化装置23の尿素選択還元触媒23Aと酸化触媒23Bとを収容している。また、収容筒体22は、その上流側(前側)がエンジン6の排気管7に接続されている。
【0056】
23は収容筒体22内に設けられたNOx浄化装置である。このNOx浄化装置23は、尿素水溶液を利用して排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するものである。また、NOx浄化装置23は、例えば収容筒体22内の上流側に収容された尿素選択還元触媒23Aと、該尿素選択還元触媒23Aの下流側に配置された酸化触媒23Bと、尿素選択還元触媒23Aの上流側、例えば排気管7に設けられた尿素噴射弁23Cとにより大略構成されている。また、尿素噴射弁23Cは、後述の尿素供給配管28、供給ポンプ29を介して尿素水タンク24に接続されている。
【0057】
ここで、NOx浄化装置23は、尿素噴射弁23Cにより排気ガス中に尿素水溶液を噴射し、尿素選択還元触媒23Aにより尿素水溶液から生成されたアンモニアを用いて排気ガス中のNOxを還元反応させ、水と窒素に分解する。そして、酸化触媒23Bによって排気ガス中のアンモニアを低減させるものである。
【0058】
次に、燃料タンク12と物品収容箱16との間に設けられた第1の実施の形態による尿素水タンク24について、図4、図8、図9等を参照しつつ述べる。
【0059】
図4において、24はNOx浄化装置23を構成する尿素水タンクで、該尿素水タンク24は、尿素選択還元触媒23Aの上流側に噴射するための尿素水溶液を貯えるものである。また、尿素水タンク24は、燃料タンク12を構成する第1の板体13の前面板13Bの外周側(前側)に位置して上面板14Aの前フランジ部14A1の範囲で上,下方向に投影され、左面板14B,右面板14Cの前フランジ部14B1,14C1の範囲で左,右方向に投影される前余剰空間部15Aに入り込んだ状態で配置されている。
【0060】
具体的には、尿素水タンク24は、前,後方向に扁平で第2のステップ板18の下側に収まる高さ寸法をもった箱状体として形成され、これにより、前カバー20によって隠蔽された状態で燃料タンク12の前側に添って配置することができる。また、尿素水タンク24は、前面部24A、後面部24B、左面部24C、右面部24D、上面部24Eおよび下面部24Fからなり、前面部24Aの上部左側寄りには、尿素水を給水するための給水口24Gが設けられている。
【0061】
そして、尿素水タンク24の後面部24Bと下面部24Fには、弾性を有する板状のクッション材25A,25Bが固着され、燃料タンク12を構成する第1の板体13の前面板13Bにクッション材25Aを当接させ、旋回フレーム5の張出しビーム5Dにクッション材25Bを当接させた状態で配設されている。この状態で、尿素水タンク24は、図9に示すように、長板を略コ字状に折り曲げてなる固定具26を前側から押えるように配置し、この固定具26の両端部に挿通したボルト27を前面板13Bに設けたねじ穴13Dに螺着することにより、燃料タンク12の前側に添うように固定されている。
【0062】
ここで、第1の実施の形態による尿素水タンク24は、燃料タンク12と物品収容箱16との間に配置され、かつ、後側部分が燃料タンク12の前側に形成された前余剰空間部15Aに入り込んでいるから、物品収容箱16を小型化することなく、長時間稼働するために必要な量の尿素水を貯えることができる容量を得ることができる。また、尿素水タンク24は、燃料タンク12の前側に添って配置しているから、燃料タンク12への燃料作業を容易にするための各ステップ板17,18,19を利用して尿素水を簡単に給水することができる。さらに、尿素水タンク24は、前カバー20によって覆い隠すことができるから、外観上の見栄えも良好にすることもできる。
【0063】
28は尿素水タンク24と尿素噴射弁23Cとを接続して設けられた接続配管としての尿素供給配管である。この尿素供給配管28の途中には供給ポンプ29が設けられている。これにより、尿素水タンク24内の尿素水は、尿素供給配管28を介して尿素噴射弁23Cに加圧状態で供給することができる。
【0064】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0065】
まず、オペレータは、キャブ10に搭乗し、エンジン6を始動して油圧ポンプ9を駆動する。そして、走行用のレバー等を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、作業用のレバーを操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0066】
また、エンジン6の運転時には、その排気管7から有害物質である窒素酸化物(NOx)が排出される。このときには、尿素水タンク24内の尿素水溶液を、供給ポンプ29を用いて尿素供給配管28からNOx浄化装置23の尿素噴射弁23Cに供給する。これにより、NOx浄化装置23は、尿素噴射弁23Cから排気ガス中に尿素水溶液を噴射してアンモニアを生成する。これにより、尿素選択還元触媒23Aでは、窒素酸化物を水と窒素に還元し、酸化触媒23Bを経て外部に排出することにより、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0067】
また、尿素水タンク24に尿素水を補給する場合には、燃料タンク12に燃料を補給する場合と同様に、下部走行体2から第1のステップ板17に上がり、第3のステップ板19の下側に配置された給水口24Gから尿素水を簡単に給することができる。
【0068】
かくして、第1の実施の形態によれば、燃料タンク12は、周壁面板をなす第1の板体13の前面板13Bよりも第2の板体14の上面板14Aのフランジ部14A1を外側に張出し、左面板14Bのフランジ部14B1、右面板14Cのフランジ部14C1を外側に張出すことにより、前面板13Bの前面側には、前記上面板14Aのフランジ部14A1の範囲で上,下方向に投影され、左面板14B,右面板14Cのフランジ部14B1,14C1の範囲で左,右方向に投影される前余剰空間部15Aを形成している。この上で、尿素水タンク24は、その後側部分が前記前余剰空間部15Aに入り込んだ状態で燃料タンク12に添って配置する構成としている。
【0069】
従って、尿素水タンク24は、燃料タンク12に形成される前余剰空間部15Aを利用し、この余剰空間部15Aに入り込むことにより、物品収容箱16に収容したり、物品収容箱16を小型化することなく、尿素水の容量を大きくすることができる。
【0070】
この結果、尿素水タンク24の容量を大きくした場合でも、物品収容箱16の容量を確保できるから、工具、消耗品等を十分に収容することができる。また、尿素水タンク24は、燃料タンク12に添って配置しているから、燃料タンク12に燃料を給油するために設けられた第1のステップ板17等を利用することで、尿素水を充填するときに容易にアクセスすることができ、尿素水を給水するときの作業性を向上することができる。
【0071】
しかも、尿素水タンク24は、燃料タンク12と物品収容箱16との間に配置することにより、前余剰空間部15Aに加えて、燃料タンク12と物品収容箱16との間に形成される空間部も設置スペースとして利用することができ、容量をより一層大きくすることができる。
【0072】
また、第1の実施の形態による燃料タンク12は、下面板13Aの前,後方向の両側から前面板13Bと後面板13Cとがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体13と、該第1の板体13の前,後方向寸法L1よりも大きな前,後方向寸法L2を有し、上面板14Aの左,右方向の両側から左面板14Bと右面板14Cとがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体14とを接合することにより構成しているから、2枚の板体13,14によって中空容器を簡単に形成することができる。
【0073】
この場合、上面板14Aには、第1の板体13と第2の板体14との前,後方向の寸法差により、前面板13B、後面板13Cよりも前,後方向に張出したフランジ部14A1,14A2を形成することができる。また、左面板14B、右面板14Cには、前面板13B、後面板13Cよりも前,後方向に張出したフランジ部14B1,14B2、14C1,14C2を形成することができる。これにより、このフランジ部14A1,14A2、14B1,14B2、14C1,14C2の範囲で上,下方向、左,右方向に投影される前,後の余剰空間部15A,15Bを形成できる。
【0074】
従って、尿素水タンク24は、燃料タンク12の前面板13Bの外周側に位置して前記上面板14Aの前記前フランジ部14A1の範囲で上,下方向に投影され、前記左面板14B、右面板14Cの前記前フランジ部14B1、14C1の範囲で左,右方向に投影される前余剰空間部15Aに入り込んだ状態で配置することができる。これにより、物品収容箱16等の周囲の部材の設置スペースを侵害することなく、容量の大きな尿素水タンク24を配置することができる。
【0075】
さらに、燃料タンク12と物品収容箱24との間には、該燃料タンク12と物品収容箱16との間を覆う前カバー20を設け、尿素水タンク24は、この前カバー20によって隠蔽された状態で配置する構成としている。これにより、尿素水タンク24は、前カバー20によって覆い隠すことができ、外観上の見栄えを良好にすることができる。
【0076】
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、尿素水タンクを第3のステップ板よりも高く形成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0077】
31は第1の実施の形態による前カバー20に代えて用いられた第2の実施の形態による前カバーを示している。この前カバー31は、第1の実施の形態による前カバー20とほぼ同様に、周面部31Aと前面部31Bとにより形成されている。しかし、第2の実施の形態による前カバー31には、ステップ挿通開口がなく、第3のステップ板32が直接的に取付けられ、その取付部の上側位置に給水用開口31Cが設けられている。
【0078】
33は前カバー31内に設けられた第2の実施の形態による尿素水タンクで、該尿素水タンク33は、前余剰空間部15Aに入り込んだ状態で燃料タンク12に添って配置されている。また、第2の実施の形態による尿素水タンク33は、第1の実施の形態による尿素水タンク24とほぼ同様に、前面部33A、後面部33B、左面部33C、右面部(図示せず)、上面部33Dおよび下面部33Eにより箱状体として形成されている。しかし、第2の実施の形態による尿素水タンク33は、第3のステップ板32を超える高さ寸法に形成され、上面部33Dに給水口33Fが設けられている点で第1の実施の形態による尿素水タンク24と相違している。
【0079】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、尿素水タンク33は、その高さ寸法を大きくしたことにより、容量をさらに大きくすることができる。
【0080】
次に、図12は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、尿素水タンクによって前カバーを兼ねる構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0081】
41は第1の実施の形態による尿素水タンク24に代えて用いられた第3の実施の形態による尿素水タンクを示している。この尿素水タンク41は、第1の実施の形態による尿素水タンク24と相違し、外部に露出した状態で設けられている。また、尿素水タンク41は、燃料タンク12と物品収容箱16との間に位置し、後側部分が余剰空間部15Aに入り込んだ状態で燃料タンク12に添って配置されている。
【0082】
そして、尿素水タンク41は、前面部41A、後面部41B、左面部41C、右面部(図示せず)、上面部41Dおよび下面部41Eにより異形な箱状体として形成されている。ここで、尿素水タンク41は、その前,後方向寸法が燃料タンク12を構成する第1の板体13の前面板13Bと物品収容箱16の後面との間隔寸法よりも僅かに小さな寸法に設定されている。これにより、尿素水タンク41は、前,後方向に大きな寸法に形成することができる。
【0083】
また、前面部41Aの上側部分は、第1の実施の形態による前カバー20の上側部分とほぼ同様に、上側に向け後側に傾斜しており、燃料タンク12と物品収容箱16との間を滑らかに接続している。これにより、尿素水タンク41は、燃料タンク12と物品収容箱16との間を外観上で滑らかに接続する前カバーを兼ねることができる。一方、上面部41Dには給水口41Fが設けられ、前面板41Aの上側部分には第3のステップ板42が取付けられている。
【0084】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、尿素水タンク41の容量を余剰空間部15A等のスペースが許す範囲で最大限に大きくすることができる。また、尿素水タンク41は、前カバーを兼ねているから、部品点数を削減することができ、組立作業性等を向上することができる。
【0085】
次に、図13は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、貯油タンクの外周面を形成する周壁面板を円筒形に形成したことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0086】
51は第1の実施の形態による燃料タンク12に代えて用いられた第4の実施の形態による貯油タンクとしての燃料タンクを示している。この燃料タンク51は、外周面を形成する円筒形の周壁面板51Aと、該周壁面板51Aの下面を閉塞する矩形状の下面板51Bと、前記周壁面板51Aの上面を閉塞し周壁面板51Aよりも外側に張出したフランジ部51C1を有する矩形状の上面板51Cとにより形成されている。また、周壁面板51Aの外周面側には、上面板51Cのフランジ部51C1の範囲で上,下方向に投影される環状の余剰空間部52を形成している。
【0087】
53は燃料タンク51の前側に添って設けられた第4の実施の形態による尿素水タンクで、該尿素水タンク53は、第1の実施の形態による尿素水タンク24とほぼ同様に、前面部53A、後面部53B、左面部53C、右面部53D、上面部53Eおよび下面部53Fにより箱状体として形成されている。しかし、第4の実施の形態による尿素水タンク53は、円筒状に形成された燃料タンク51の周壁面板51Aに対面する後面部53Bが、周壁面板51Aの円筒形状に対応するように凹円弧状に形成されている。また、前面部53Aの上側位置には給水口53Gが設けられている。
【0088】
そして、尿素水タンク53は、後面部53Bと下面部53Fにクッション材54A,54Bが固着され、燃料タンク51を構成する周壁面板51Aにクッション材54Aを当接させ、旋回フレーム5の張出しビーム5Dにクッション材54Bを当接させることにより、環状の余剰空間部52のうち、燃料タンク51と物品収容箱16との間となる前側部分に入り込んだ状態で配設されている。この状態で、尿素水タンク53は、長板を略コ字状に折り曲げてなる固定具55を、周壁面板51Aに回したベルト56にボルト57を用いて取付けることにより、燃料タンク51の前側に添うように固定することができる。
【0089】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態では、円筒状の周壁面板51Aを備えた燃料タンク51に対しても、余剰空間部52に入り込んだ状態で尿素水タンク53を配置することができる。
【0090】
次に、図14は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、給水用の開口を前カバーの右側寄りに配置したことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0091】
61は第1の実施の形態による前カバー20に代えて用いられた第5の実施の形態による前カバーを示している。この前カバー61は、第1の実施の形態による前カバー20とほぼ同様に、周面部61Aと前面部61Bとにより形成され、該前面部61Bの上側部分には、左側寄りに位置して第3のステップ板19を前方に突出させるためのステップ挿通開口61Cが設けられている。しかし、第5の実施の形態による前カバー61は、後述する尿素水タンク62の給水口62Aを外部に露出させるための給水用開口61Dが右側寄りに設けられている点で、第1の実施の形態による前カバー20と相違している。
【0092】
また、給水用開口61Dには、該給水用開口61Dを覆う蓋体61Eが開閉可能に取付けられている。これにより、蓋体61Eは、給水口62Aを覆って保護することができ、また、見栄えを良くすることができる。
【0093】
62は前カバー61内に設けられた第5の実施の形態による尿素水タンク(点線で図示)で、該尿素水タンク62は、第1の実施の形態による尿素水タンク24とほぼ同様に構成されている。しかし、第5の実施の形態による尿素水タンク62は、給水口62Aが前カバー61の給水用開口61Dに対応するように右側寄りに設けられている点で第1の実施の形態による尿素水タンク24と相違している。
【0094】
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態によれば、前カバー61の給水用開口61Dは、左側寄りのステップ挿通開口61Cと異なる右側寄りに設けているから、第3のステップ板19に邪魔されることなく、給水口62Aから尿素水タンク62に円滑に給水することができる。また、給水用開口61Dには、蓋体61Eを取付けているから、給水口62Aを覆って保護することができ、また、見栄えを良くすることができる。
【0095】
なお、第1の実施の形態では、尿素水タンク24を、長板を略コ字状に折り曲げてなる固定具26を用いて燃料タンク12の前側に添うように固定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図15に示す変形例のように、尿素水タンク71を取付ブラケット72を用いて燃料タンク12、旋回フレーム5にボルト止めする構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0096】
また、第1の実施の形態では、貯油タンクとして燃料を貯える燃料タンク12を例示し、この燃料タンク12の前側に尿素水タンク24を配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、作動油タンク11に余剰空間部を設け、この余剰空間部に入り込むように尿素水タンク24を配置する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0097】
さらに、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(走行体)
3 上部旋回体(走行体)
5 旋回フレーム(支持フレーム)
6 エンジン
7 排気管
11 作動油タンク(貯油タンク)
12,51 燃料タンク(貯油タンク)
13 第1の板体
13A,51B 下面板
13B 前面板(周壁面板)
13C 後面板(周壁面板)
14 第2の板体
14A,51C 上面板
14A1,14A2,14B1,14B2,14C1,14C2,51C1 フランジ部
14B 左面板(周壁面板)
14C 右面板(周壁面板)
14D 給油口
15A,15B,52 余剰空間部
16 物品収容箱
17,18,19,32,42 ステップ板
20,31,61 前カバー
21 後処理装置
23 NOx浄化装置
23A 尿素選択還元触媒
23B 酸化触媒
23C 尿素噴射弁
24,33,41,53,62,71 尿素水タンク
24A,33A,41A,53A 前面部
24B,33B,41B,53B 後面部
24C,33C,41C,53C 左面部
24D,53D 右面部
24E,33D,41D,53E 上面部
24F,33E,41E,53F 下面部
24G,33F,41F,53G,62A 給水口
25A,25B,54A,54B クッション材
28 尿素水供給配管(接続配管)
51A 周壁面板
L1 第1の板体の前,後方向寸法
L2 第2の板体の前,後方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体の支持構造部材を形成する支持フレームと、該支持フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記支持フレームの前側に位置して左,右方向の一側に配置されオペレータが搭乗するキャブと、前記支持フレームの左,右方向の他側に配置され前記エンジンに供給する燃料または油圧系統に用いる作動油を貯える貯油タンクと、該貯油タンクの前側に位置して前記支持フレーム上に設けられた物品収容箱と、前記エンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒と、還元剤である尿素水を貯えるために中空な容器からなる尿素水タンクと、該尿素水タンクと前記エンジンの排気管との間を接続する接続配管とを備えてなる建設機械において、
前記貯油タンクは、外周面を形成する角筒形または円筒形の周壁面板と、該周壁面板の下面を閉塞する下面板と、前記周壁面板の上面を閉塞し周壁面板よりも外側に張出したフランジ部を有する上面板とにより形成し、
前記周壁面板の外周面側には、前記上面板のフランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部を形成し、
前記尿素水タンクは、前記余剰空間部に入り込んだ状態で前記貯油タンクに添って配置する構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記尿素水タンクは、前記貯油タンクに形成される余剰空間部のうち、前記貯油タンクと前記物品収容箱との間の余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記貯油タンクは、前記下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成し、
前記上面板には、前記第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前記前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部を形成し、
前記尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記貯油タンクは、前記下面板の前,後方向の両側から前面板と後面板とがそれぞれ上側に延びたU字状の第1の板体と、該第1の板体の前,後方向寸法よりも大きな前,後方向寸法を有し前記上面板の左,右方向の両側から左面板と右面板とがそれぞれ下側に延びた逆U字状の第2の板体とを接合することにより構成し、
前記上面板、左面板および右面板には、前記第1の板体と第2の板体との前,後方向の寸法差により、前記前面板、後面板よりも前,後方向に張出したフランジ部をそれぞれ形成し、
前記尿素水タンクは、前記貯油タンクの前面板の外周側に位置して前記上面板の前記フランジ部の範囲で上,下方向に投影されると共に、前記左面板と右面板の前記フランジ部の範囲で左,右方向に投影される余剰空間部に入り込んだ状態で配置する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項5】
前記貯油タンクと前記物品収容箱との間には、該貯油タンクと物品収容箱との間を覆う前カバーを設け、前記尿素水タンクは、該前カバーによって隠蔽された状態で前記貯油タンクに添って配置する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−62693(P2012−62693A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207860(P2010−207860)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】