説明

建造物の免震構造

【課題】煩雑な作業を要することなく耐久性及び耐火性に優れ、施工コストの低減を図ること。
【解決手段】上方部に鉄筋コンクリート製の受け部21を有し、ビル10を構築する地盤1に設けた基礎構造体20と、受け部21の上面21aに構成した砂層から成る摩擦調整部30と、摩擦調整部30を介して受け部21の上部に移動可能に配置した鉄筋コンクリート製の可動構造体40とを備え、可動構造体40を土台としてその上部にビル10を構築した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や橋脚等の建造物に適用される免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の免震構造としては、地盤に設けられた基礎と建造物との間に積層ゴムを用いた滑り支承装置を介在させるものが知られている。しかしながら、積層ゴムを用いた滑り支承装置にあっては、耐久性や耐火性の点で問題がある。さらに、滑り支承装置を取り付ける基礎上の架台及び土台に高い寸法精度が要求されるため、施工コストの点で必ずしも好ましいとはいえない。
【0003】
このため従来では、建造物が構築される地盤側の基礎と、建造物の下方部に構成された土台との間を水平方向に滑ることができる状態で接触させることにより、地震振動の建築物への伝搬を抑制するようにした免震構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この免震構造によれば、耐久性や耐火性に問題はなく、また基礎や土台に高い寸法精度が要求されることもないため施工コストが増大する事態を招来することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−154455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地盤側の基礎や建造物の下方部に構成される土台は、コンクリートによって構成される場合がほとんどであり、これらを単に当接させただけでは、摩擦抵抗が大きすぎて地震が発生した場合にも両者に滑りが発生し得ない。このため特許文献1に記載の免震構造にあっては、基礎と土台との間をそれぞれ滑り塗膜によって被覆することが必須となる。この結果、基礎と土台とに被覆する塗膜を正確に管理しなければならず、建造物を構築する際の作業が煩雑化する虞れがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、煩雑な作業を要することなく耐久性及び耐火性に優れ、施工コストの低減を図ることのできる建造物の免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、上方部に鉄筋コンクリート製の受け部を有し、建造物を構築する地盤に設けた基礎構造体と、前記受け部の上面に構成した砂層から成る摩擦調整部と、前記摩擦調整部を介して前記受け部の上部に移動可能に配置した鉄筋コンクリート製の可動構造体とを備え、前記可動構造体を土台としてその上部に建造物を構築したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した建造物の免震構造において、前記受け部の上面を凹凸状に構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した建造物の免震構造において、前記摩擦調整部を構成する砂層は、砂粒に接着剤を介在させたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した建造物の免震構造において、前記受け部及び前記可動構造体は、互いに対向する部位にそれぞれ水平面に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した建造物の免震構造において、前記受け部の傾斜面は、上方に向けて互いに離隔するテーパ状の凹部に設けたものであり、前記可動構造体の傾斜面は、前記凹部に対応する部位において上方に向けて互いに離隔するテーパ状の突部に設けたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述した建造物の免震構造において、前記可動構造体と前記基礎構造体との間に水平方向に沿ってダンパー手段を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建設分野で一般的に使用されている砂を適用し、これを基礎構造体の受け部と建造物の土台となる移動体との間に介在させることによって免震構造を構成するようにしているため、煩雑な管理作業を要することはなく、耐久性や耐火性の点でもきわめて有利となる。また、受け部や移動体に高い寸法精度が要求されることもなく、施工コストの低減を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である建造物の免震構造を示す断面側面図である。
【図2】図2は、図1に示した免震構造の要部を示す拡大図である。
【図3】図3は、図1に示した免震構造の第1変形例を示す拡大断面側面図である。
【図4】図4は、図1に示した免震構造の第2変形例を示す拡大断面側面図である。
【図5】図5は、図1に示した免震構造の第3変形例を示す拡大断面側面図である。
【図6】図6は、硅砂の基準化応力と微細化率とを示す図表である。
【図7−1】図7−1は、図1に示した免震構造の第4変形例を示す平面図である。
【図7−2】図7−2は、図7−1に示した免震構造の断面側面図である。
【図8】図8は、図1に示した免震構造の第5変形例を示す拡大断面側面図である。
【図9】図9は、図1に示した免震構造の第6変形例を示す拡大断面側面図である。
【図10】図10は、図1に示した免震構造の第7変形例を示す拡大断面側面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2である建造物の免震構造を示す断面側面図である。
【図12】図12は、図11に示した免震構造の第1変形例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建造物の免震構造の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である建造物の免震構造を示したものである。ここで例示する免震構造は、ビル(建造物)10を構築する場合に適用するもので、地盤1に基礎構造体20を備えている。基礎構造体20は、地盤1を掘削して形成した空間の内底面及び側面に鉄筋コンクリートを施工することによって外周に擁壁21bを有するように構成したべた基礎であり、内底面に施工した鉄筋コンクリートの上方が受け部21を構成している。受け部21の上面21aは、水平方向に沿った一様な平坦面として構成してある。
【0018】
受け部21の上面21aには、摩擦調整部30を介して可動構造体40が配設してあり、さらに可動構造体40を土台としてビル10が構築してある。摩擦調整部30は、砂を堆積することによって構成した層状部分である。摩擦調整部30を構成する砂としては、高い圧縮特性を有するもの、例えば粒径を揃えた硅砂を適用している。可動構造体40は、構築すべきビル10の下面と同じ大きさの底面積を有した鉄筋コンクリート製の構造体であり、下面40aが一様な平坦面に構成してある。
【0019】
受け部21の上面21aに敷設した摩擦調整部30の上部において可動構造体40を構成する場合には、例えば図2に示すように、摩擦調整部30の上面に、コンクリートに対して浸透性を有していないシート50を敷き詰め、この状態から例えば型枠を構成して鉄筋コンクリートを施工すれば良い。シート50としては、例えば新聞紙やビニルシートを適用することができる。
【0020】
また、図3に示す第1変形例のように、摩擦調整部30の上面に合板やFRP製の捨て型枠51を配置して鉄筋コンクリートを施工することにより可動構造体40を構成しても良いし、図4に示す第2変形例のように、摩擦調整部30の上面にハーフプレキャストコンクリート版52を配置して鉄筋コンクリートを施工することにより可動構造体40を構成しても構わない。
【0021】
さらには、図5に示す第3変形例のように、プレキャストコンクリート版53によって可動構造体40を構成することも可能である。可動構造体40をプレキャストコンクリート版53によって構成する場合には、ビル10の鉄骨柱11に対する連結作業を容易化するため、プレキャストコンクリート版53に鉄骨柱11に連結するためのアンカーボルト53aを組込んでおくことが好ましい。
【0022】
図1に示すように、基礎構造体20の受け部21と可動構造体40との間には、適宜箇所に可動構造体40から受け部21に向けて引き抜き防止ボルト60が設置してある。引き抜き防止ボルト60は、受け部21と可動構造体40とが相対的に上下動するのを防止するためのものである。可動構造体40に形成した引き抜き防止ボルト60の挿通孔41は、引き抜き防止ボルト60の外径よりも大きな内径を有するように形成してある。
【0023】
また、可動構造体40と基礎構造体20との間には、ダンパー手段70が介在させてある。ダンパー手段70は、水平方向に沿う態様で可動構造体40と基礎構造体20の擁壁21bとの間の複数箇所に配設したもので、可動構造体40と基礎構造体20との相対的な水平方向の移動を制限する機能と、基礎構造体20に対する可動構造体40の水平方向に沿った振動を吸収する機能とを兼ね備えたものである。
【0024】
上記のように構成した実施の形態1の免震構造では、地震が発生した場合、基礎構造体20の受け部21とビル10の土台となる可動構造体40との間に砂層からなる摩擦調整部30が介在しているため、地盤1を通じて基礎構造体20に加えられた地震振動のビル10への伝搬が抑制されることになる。
【0025】
ここで、図6に示すように、文献(黒川、天久:「新しい砂の耐摩耗性評価法」、素形材2008.2月号、pp36-40)によれば、硅砂の場合、一粒の粒径係数(長径/短径)が1.2〜1.4程度であり、圧縮強度が約60N/mm、硅砂粒子同士の衝突による微粉化率は約32%である。一般的な普通コンクリートの呼び強度が21N/mm前後であることから、ビル10の荷重を受けている可動構造体40の下面40aに対して摩擦調整部30を敷設すれば、可動構造体40の下面40a及び摩擦調整部30に強度的な問題が発生することはなく、基礎構造体20の受け部21と可動構造体40との間に所望の滑り性能を確保することができ、上述の免震機能を保証することが可能である。
【0026】
尚、摩擦調整部30を構成する砂の種類としては、必ずしも硅砂を適用する必要はなく、セラミックサンドや一般的な砂を適用しても良い。セラミックサンドを適用した場合には、硅砂よりも粒径が揃っているとともに、高強度であるため、滑り性能の向上を図ることができる。一方、一般的な砂を適用する場合には、硅砂やセラミックサンドを適用する場合に比べて粒径が不揃いとなる可能性が高い。従って、一般の砂を摩擦調整部30として適用する場合には、硅差やセラミックサンドを適用する場合に比べて摩擦調整部30の厚さを大きく設定することが好ましい。摩擦調整部30の厚さが大きくなれば、粒径の不揃いによる滑り性能への影響を緩和することが可能となる。
【0027】
図には明示していないが、受け部21の表面には、摩擦調整部30の砂が離散するのを防止するため、多数の凹凸を設けておくことが好ましい。具体的には、鉄筋コンクリートを施工した際にささら等による掃き線を施したり、気泡緩衝材を押圧することによって受け部21の上面21aに凹凸を構成することが可能である。これらの凹凸は、特に、摩擦調整部30の厚さが小さい場合に有効であり、基礎構造体20の受け部21と可動構造体40との間に確実に砂を介在させておくことが可能となる。
【0028】
一方、上記免震構造においては、基礎構造体20の受け部21と可動構造体40との間に引き抜き防止ボルト60が設置してあるため、基礎構造体20に対して可動構造体40が上方に引き抜かれる移動を阻止することが可能である。しかも、引き抜き防止ボルト60は、可動構造体40に対して水平方向に移動することは可能であるため、上述の免震機能が損なわれる恐れはない。尚、引き抜き防止ボルト60が受け部21の挿通孔41を超えて水平方向に移動した場合には、引き抜き防止ボルト60が塑性変形することになるため、免震機能が損なわれることがないばかりか、引き抜き防止ボルト60の塑性変形によって地震の振動エネルギーを吸収することができるようになる。
【0029】
さらに、上記免震構造では、可動構造体40と基礎構造体20との間にダンパー手段70を介在させてあるため、地震の振動エネルギーを吸収することができるとともに、可動構造体40が水平方向に沿って過度に移動する事態を防止することが可能である。
【0030】
このように、上記免震構造によれば、基礎構造体20の受け部21、可動構造体40及び摩擦調整部30から成る免震構造であるため、耐久性及び耐火性の点で問題となることもなく、また基礎構造体20や可動構造体40に高い寸法精度が要求されることもないため施工コストが増大する事態を招来することがない。さらに、従前の免震構造のように、塗膜の管理といった煩雑な作業を要することもなく、建造物の免震構造を提供することが可能である。
【0031】
尚、上述した実施の形態1では、地盤1に直接鉄筋コンクリートを施工することによって受け部21を構成するようにしているが、必ずしもこれに限定されない。
【0032】
例えば、図7−1及び図7−2に示す第4変形例に示すように、プレキャストコンクリート版100によって受け部21を構成することも可能である。プレキャストコンクリート版100による受け部21の施工手順としては、例えば(1)根切り工事(2)砕石転圧(3)捨てコンクリート打設(4)プレキャストコンクリート版100の敷設(5)レベル調整(6)プレキャストコンクリート版100の接続(7)モルタル充填、を順に実施すればよい。
【0033】
レベル調整については、プレキャストコンクリート版100の複数箇所にレベル調整用ボルト101を配設し、その下端を捨てコンクリート102の上面に当接させた状態でプレキャストコンクリート版100の上面側から行うことができる。
【0034】
また、プレキャストコンクリート版100の適宜箇所に打設孔103を形成しておけば、プレキャストコンクリート版100の上面からモルタルの充填作業及び確認作業を行うことが可能である。
【0035】
プレキャストコンクリート版100を接続するには、予めプレキャストコンクリート版100の端縁部にそれぞれナット部材104を設けておけば、2つのプレキャストコンクリート版100に接続用の鋼板105を架け渡した後、それぞれに鋼製ボルト106を締め込むことで実施可能である。
【0036】
また、上述した実施の形態1では、擁壁21bを有する基礎構造体20と可動構造体40とがべた基礎となるように受け部21及び可動構造体40を構成するようにしているが、必ずしもこれに限らない。
【0037】
例えば、建造物10の規模が小さい場合には、図8に示す第5変形例のように、擁壁を省略したべた基礎となるように受け部21及び可動構造体40を構成しても良い。また、図9に示す第6変形例のように、建造物10′に対して布基礎20′となるように受け部21′及び可動構造体40′を構成するようにしても良いし、図10に示す第7変形例のように、建造物10″に対して杭基礎20″となるように受け部21″及び可動構造体40″を構成するようにしても同様の作用効果を奏することが可能である。
【0038】
さらに、上述した実施の形態1では、受け部21の表面に多数の凹凸を設けることによって摩擦調整部30の砂が離散するのを防止するようにしているが、摩擦調整部30として砂粒に接着剤を介在させたものを適用した場合にも同様の作用効果を奏することが可能である。適用する接着剤としては、滑り性能を考慮し、地震が発生した場合の衝撃によって破壊する程度の接着性の弱いものを適用することが好ましい。
【0039】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2である建造物の免震構造を示したものである。ここで例示する免震構造は、実施の形態1と同様、ビル110を構築する場合に適用するもので、地盤1に基礎構造体120を備えている。基礎構造体120は、地盤1を掘削して形成した空間の内底面及び側面に鉄筋コンクリートを施工することによって構成したべた基礎であり、内底面に施工した鉄筋コンクリートの上方が受け部121を構成している。受け部121の上面121aは、中心部が最も低くなる円錐状の凹部として形成してあり、上方に向けて互いに離隔する傾斜面を構成している。
【0040】
この受け部121の上面121aには、摩擦調整部30を介して可動構造体140が配設してあり、さらに可動構造体140を土台としてビル110が構築してある。摩擦調整部30を構成する砂としては、実施の形態1と同様、粒径を揃えた硅砂を適用している。可動構造体140は、構築すべきビル110の下面と同じ大きさの底面積を有した鉄筋コンクリート製の構造体であり、下面140aが受け部121の上面121aに対応した傾斜面を有するように構成してある。すなわち、可動構造体140の下面140aは、中心部が最も低くなる円錐状の突部として形成してあり、上方に向けて互いに離隔する傾斜面を構成している。可動構造体140の下面140aに構成した突部の寸法及び傾斜面の傾斜角度は、受け部121の上面121aに設けた凹部に対応したものであり、突部の中心位置を凹部の中心位置に合致させた場合に、互いの間に介在させた摩擦調整部30の厚さが全周で均一となるように構成してある。
【0041】
上記のように構成した実施の形態2の免震構造では、地震が発生した場合、基礎構造体120の受け部121とビル110の土台となる可動構造体140との間に砂層からなる摩擦調整部30が介在しているため、地盤1を通じて基礎構造体120に加えられた地震振動のビル110への伝搬が抑制されることになる。
【0042】
しかも、基礎構造体120の受け部121に円錐状の凹部を形成し、かつビル110の可動構造体140に円錐状の突部を形成しているため、両者に滑りが発生した場合、傾斜面の作用によって地震による水平方向のエネルギーを上下方向の位置エネルギーに変換して吸収することができるようになる。
【0043】
例えば、地震時における地表面の速度V=400cm/s、重力加速度G=980cm/s、建造物の質量をM、位置エネルギーに変換された際の建造物の高さをHとすると、0.5×V2/G=MGHより建造物の高さ変化H=81.6cmとして算出される。81.6cmの高さ変化量は現実的な値である。尚、基礎構造体120と可動構造体140との間にダンパー手段70を介在させれば、建造物の高さ変化を小さくすることができる。また、この場合に適用するダンパー手段70としては、単独でダンパー手段を介在させるものに比べて小型化することができ、コストの低減を図ることが可能である。
【0044】
このように、上記免震構造によれば、基礎構造体120の受け部121、可動構造体140及び摩擦調整部30から成る免震構造であるため、耐久性及び耐火性の点で問題となることもなく、また基礎構造体120や可動構造体140に高い寸法精度が要求されることもないため施工コストが増大する事態を招来することがない。さらに、従前の免震構造のように、塗膜の管理といった煩雑な作業を要することもなく、建造物の免震構造を提供することが可能である。
【0045】
またさらに、基礎構造体120の受け部121に円錐状の凹部を形成し、かつビル110の可動構造体140に円錐状の突部を形成しているため、傾斜面の作用によって地震による水平方向のエネルギーを上下方向の位置エネルギーに変換してこれを吸収することができる。加えて、上記傾斜面の作用により、地震が収まった場合に基礎構造体120に対する可動構造体140の位置を互いの中心位置が合致した初期位置に復帰させることが可能である。
【0046】
尚、上述した実施の形態2では、可動構造体140に円錐状の突部を形成しているが、必ずしも突出端が一点となっている必要はなく、円錐台状の突部を形成するようにしても構わない。円錐台状の突部を形成した場合には、基礎構造体120の受け部121にも円錐台状の凹部を形成すれば良い。
【0047】
また、上述した実施の形態2では、可動構造体140の突部及び基礎構造体120の受け部121に形成する傾斜面として円錐状や円錐台状のものを例示しているため、地震による滑りがいずれの方向であっても対応することができるが、必ずしも円錐状や円錐台状である必要はない。例えば、基礎構造体120の受け部121に設ける傾斜面及び可動構造体140に設ける傾斜面としては、多角錐状や多角錐台状の凹部及び突部を構成し、一平面として複数の平面で構成したものを適用することも可能である。多角錐状や多角錐台状によって傾斜面を構成した場合には、円錐や円錐台状によって傾斜面を構成した場合に比べて製造コストを低減することが可能となる。
【0048】
さらに、上述した実施の形態2では、基礎構造体120と可動構造体140とがべた基礎となるように受け部121及び可動構造体140を構成するようにしているが、これに限定されず、例えば図12に示す第1変形例のように、建造物110″に対して杭基礎120″となるように受け部121″及び可動構造体140″を構成するようにしても同様の作用効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 地盤
10 ビル
20 基礎構造体
21 受け部
30 摩擦調整部
40 可動構造体
70 ダンパー手段
110 ビル
120 基礎構造体
121 受け部
140 可動構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方部に鉄筋コンクリート製の受け部を有し、建造物を構築する地盤に設けた基礎構造体と、
前記受け部の上面に構成した砂層から成る摩擦調整部と、
前記摩擦調整部を介して前記受け部の上部に移動可能に配置した鉄筋コンクリート製の可動構造体と
を備え、前記可動構造体を土台としてその上部に建造物を構築したことを特徴とする建造物の免震構造。
【請求項2】
前記受け部の上面を凹凸状に構成したことを特徴とする請求項1に記載の建造物の免震構造。
【請求項3】
前記摩擦調整部を構成する砂層は、砂粒に接着剤を介在させたものであることを特徴とする請求項1に記載の建造物の免震構造。
【請求項4】
前記受け部及び前記可動構造体は、互いに対向する部位にそれぞれ水平面に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の建造物の免震構造。
【請求項5】
前記受け部の傾斜面は、上方に向けて互いに離隔するテーパ状の凹部に設けたものであり、前記可動構造体の傾斜面は、前記凹部に対応する部位において上方に向けて互いに離隔するテーパ状の突部に設けたものであることを特徴とする請求項4に記載の建造物の免震構造。
【請求項6】
前記可動構造体と前記基礎構造体との間に水平方向に沿ってダンパー手段を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の建造物の免震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−261249(P2010−261249A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113773(P2009−113773)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】