説明

建造物を補強する方法

【課題】建造物を補強する方法を提供する。
【解決手段】建造物を補強する方法であって、一旦硬化されると熱可塑性材料に接着するように熱的に活性化され得る硬化性ポリマーを備える第1の層を、建造物表面に適用する段階と、前記硬化性ポリマーを硬化する段階と、前記硬化性ポリマーの熱活性化のために、前記建造物の前記表面と反対側の前記第1の層の少なくとも1つの表面を加熱する段階と、補強ファイバーと、前記熱活性化硬化性ポリマーと互いに接着する熱可塑性母材と、を備える第2の層を、前記第1の層の前記表面の上に適用する段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物を補強する方法及び補強された建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物は、例えば橋又は水道管などの任意のタイプであり得る。補強されるべき領域は、通常コンクリートで作られる。
【0003】
このような建造物を補強するための1つの既知の技術は、例えば特許文献1に開示されている。それは、建造物を補強することになる複合層を得るために、建造物の表面に硬化性樹脂を適用し、樹脂を硬化する前に、通常カーボン又はガラスファイバーの織物バンドである補強ファイバーを表面に適用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/122472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬化は、熱、化学反応(例えば二成分のエポキシなど)、又は放射線によって行われ得る。
【0006】
このような方法は、非常に有効な建造物の補強法である。しかしながら、樹脂が硬化されない限り、特にそれらが長い織物バンドの形態で適用される場合にそれら自身の重さによって、又は補強されるべき表面上にファイバーを適用する間若しくは後の、振動など何らかの種類のプロセスの混乱によって、ファイバーが破壊されるというリスクがある。このようなリスクは、ファイバーを適用する際に特別な予防策を取ることによって最小限におさえられ得るが、それは完全には取り除くことができない。
【0007】
更に、樹脂成分間の化学反応又は温度変化によって硬化が自然に起こる場合、硬化が完結する前、好ましくは硬化が開始する前に、ファイバーは表面上に適用される必要がある。これにより、与えられる作業時間が非常に短くなる場合がある。
【0008】
上述の問題の一部又は全部を解決すること、及び硬化が完結する前に補強材料が破壊されるリスクのない、且つ更に樹脂が硬化される前に素早く補強材料を適用しなければならないという制約が少ない又は制約のない、建造物を補強する方法を提供すること、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
建造物を補強する方法が提供され、この方法は
−一旦硬化されると、熱可塑性材料に接着するように熱的に活性化され得る硬化性ポリマーを含む第1の層を、建造物表面に適用する段階と、
−前記硬化性ポリマーを硬化する段階と、
−前記硬化性ポリマーの熱活性化のために、前記建造物の前記表面と反対側の前記第1の層の少なくとも1つの表面を加熱する段階と、
−補強ファイバーと、熱可塑性母材とを含み、それによって前記熱可塑性母材と前記熱活性化した硬化性ポリマーとが互いに接着する複合材料を含む第2の層を、前記第1の層の前記表面の上に適用する段階と、
を含む。
【0010】
建造物は任意の種類であり得、補強されるべき領域は様々な材料、特にコンクリート及び/又はスチールで作られ得る。
【0011】
第1の層のポリマーは、建造物の表面に接着する。一旦ポリマーが硬化されると、第1の層は硬く十分安定化し、ある期間変わらぬ状態にあることができる。第2の層を適用する時点は、有利に選択され得る。
【0012】
第1の層は、その成分を建造物表面上に塗るか、又はスプレーすることによって適用され得る。
【0013】
第1の層、少なくとも建造物に貼ってある面と反対側の面を加熱することによって、第1の層は熱可塑性材料に接着され得る。熱可塑性母材を有する複合材料を含む第2の層は第1の層に接触される。必要ならば、接着を促進するために、僅かな圧力が複合材料に加えられてよい。即時の且つ強い接着が得られ、故に第2の層が破壊されるリスクが低減される。第2の層を加熱することもまた可能である。代わりに、第1及び第2の層の両方が加熱され得る。
【0014】
異なる層を適用する段階は、容易に自動化され得る。特に、補強されるべき建造物が導管である場合、第1の層を適用するために機械は導管内部で円運動し得る。一旦第1の層が硬化されると、まず第1の層を加熱して、次いで第2の層を適用する機械を用いて、同様の方法で第2の層が適用され得る。
【0015】
本発明の実施形態によると、以下の特徴が加えられ、及び/又は結合され得る:
−第1の層は硬化性ポリマーと混合された硬化剤を更に含み、前記硬化段階は、硬化剤と硬化性ポリマーとの反応の結果行われる。通常ポリマーとその硬化剤は別々に保管され、次いで適用前に混合される。
−前記硬化性ポリマーは水酸基末端ブタジエンポリマーである。このタイプのポリマーは特に、コンクリート構造物を補強するのに適している。このポリマーはポリービイデイ(PolyBd)(登録商標)として知られる。
−前記水酸基末端ブタジエンポリマーは2.0以上のヒドロキシル官能価を有する。このような特性は硬化を可能にし、一旦硬化されると第1の層に適切な特性を提供する。
−前記水酸基末端ブタジエンポリマーは2.2と2.6の間のヒドロキシル官能価を有する。この範囲は特に、コンクリート構造物を補強するのに適している。
−前記硬化剤はジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を含む。この群の成分は、水酸基末端ブタジエンポリマーの存在下で良好な硬化能力を示す。
−前記第1の層は、硬化剤及び硬化性ポリマーと混合された硬化反応の触媒を更に含む。触媒のタイプ及び量を選択することによって、第2の層が適用された後の持続時間を調整するために、硬化反応を加速するか、又は減速することが可能になる。
−前記熱可塑性母材は、ポリアミド、好ましくはポリアミド12又はポリフェニレンサルファイドを含む。
−1つ又は複数の追加の層が第2の層の上に連続して適用されるが、追加の層のそれぞれが補強ファイバーと熱可塑性母材とを含む複合材料を含み、第2の層と追加の層とは熱溶融によって互いに結合される。それぞれの追加の層が補強ファイバーと熱可塑性母材とを含む複合材料を備え、熱溶融によって先行する層に貼り付けられる。熱溶融を得るために、先行する層と追加の層とは加熱され得、追加の層は先行する層に対してプレスされ得る。結果物が多層補強物である。利点は、第1の層への第2の層の接着が即時である事実の結果、良好な機械抵抗(更に補強された層)、最終層(建造物と反対側)の幅広い範囲の可能性、及び補強層(第2の層及び追加の層)が適用された後に破壊されるリスクがより低いことであり得る。例えば、建造物が持ち運び可能な水道管である場合、最終層が適切なコーティングを構成するため、それらが選択され得る。
【0016】
補強ファイバーはカーボンファイバーを含み得る。それらはガラスファイバーであり得る。それらは幾つかの種類のファイバーの混合物であり得る。通常ファイバーは、織物(fabric)を作るための織物材料(woven)である。
【0017】
本発明はまた、表面を有する建造物を備える補強された建造物を対象とし、第1の層は硬化性ポリマーを含み、前記第1の層は一方では前記建造物の前記表面に接着し、他方では補強ファイバーと熱可塑性母材とを含む複合材料を含む第2の層に接着する。
【0018】
補強された建造物は、上記の方法によって得ることができる。
【0019】
補強された建造物の実施形態によると、以下の特徴が加えられ、及び/又は結合され得る:
−前記硬化性ポリマーは、水酸基末端ブタジエンポリマーと、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物との反応によって生じたポリウレタンを含む;
−前記水酸基末端ブタジエンポリマーは2.2と2.6の間のヒドロキシル官能価を有する;
−前記熱可塑性母材は、ポリアミド、好ましくはポリアミド12又はポリフェニレンサルファイドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による補強された建造物の平坦部の断面図である。
【図2】本発明による方法によって補強されたコンクリート水道管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の非限定的実施形態が、添付図面を参照してここで説明される。
【0022】
当業者は、図面の要素が簡便性及び明瞭さのために示されること、並びに原寸に比例して描かれる必要がないことを理解するであろう。例えば、図面における幾つかの要素の寸法は、本発明の実施形態の理解を向上させるために他の要素と比べて誇張され得る。また、異なる図面における同一の符号は、同一の要素に対応する。
【0023】
図1及び図2は共に、本発明による方法を用いて得られた、本発明による補強された建造物を示す。図1では、平坦な建造物1が補強されるが、限定的な拡大図のみが示される。図2において、建造物1はその内部表面1aが補強されたコンクリート水道管である。
【0024】
第1の層2を準備するために、3成分の樹脂が準備される:
−例えばポリービイデイ(登録商標)などの、略2.5のヒドロキシル官能価を有する水酸基末端ブタジエンポリマー(以下の表1参照)
−硬化剤としての、従来型のジイソシアネート又はポリイソシアネート
−触媒(任意)
【0025】
触媒がない場合、ポリービイデイ(登録商標)の重量分率は5/6であり、一方硬化剤の重量分率は1/6である。結晶化を避けるために、樹脂は50℃で予熱され得る。
【0026】
層は、建造物の表面1a上に混合物を塗ることによって適用される。2時間後、第1の層は硬化されて、水酸基末端ブタジエンポリマーとジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応によって生じたポリウレタンになる。
【0027】
【表1】

【0028】
第1の層2の表面2aを加熱した後、第2の層3が第1の層の表面2a上に適用される。必要ならば、第2の層3もまた加熱され得る。第1及び第2の層の間の界面における温度は、110から130℃の範囲であり得る。
【0029】
第2の層3は、織物カーボンファイバーと例えばポリアミド12などの熱可塑性母材とを含む複合材料から成る。このような複合材料織物は、カーボスタンプ(Carbostamp)(登録商標)との商標でソフィカー(Soficar)社から入手可能である。
【0030】
第2の層は直ちに第1の層に接着する。
【0031】
本発明は、特許請求の範囲及び明細書の全般的な部分から現れる全般的な発明思想を限定しない実施形態を用いて、上記で説明された。
【符号の説明】
【0032】
1 建造物
1a 建造物1の表面
2 第1の層
2a 第1の層2の表面
3 第2の層
3a 第2の層3の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−一旦硬化されると、熱可塑性材料に接着するように熱的に活性化され得る硬化性ポリマーを含む第1の層を、建造物表面に適用する段階と、
−前記硬化性ポリマーを硬化する段階と、
−前記硬化性ポリマーの熱活性化のために、前記建造物の前記表面と反対側の前記第1の層の少なくとも1つの表面を加熱する段階と、
−補強ファイバーと、熱可塑性母材とを含み、それによって前記熱可塑性母材と前記熱活性化した硬化性ポリマーとが互いに接着する複合材料を含む第2の層を、前記第1の層の前記表面の上に適用する段階と、
を含む、建造物を補強する方法。
【請求項2】
前記第1の層が前記硬化性ポリマーと混合された硬化剤を更に含み、前記硬化段階が前記硬化剤と前記硬化性ポリマーとの間の反応の結果行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化性ポリマーが水酸基末端ブタジエンポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水酸基末端ブタジエンポリマーが2.0以上のヒドロキシル官能価を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水酸基末端ブタジエンポリマーが2.2と2.6の間のヒドロキシル官能価を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化剤が、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の層が、前記硬化剤及び前記硬化性ポリマーと混合された前記硬化反応の触媒を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性母材が、ポリアミド、好ましくはポリアミド12又はポリフェニレンサルファイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は幾つかの追加の層を前記第2の層の上に連続して適用する段階を更に含み、前記追加の層のそれぞれが補強ファイバー及び熱可塑性母材を含む複合材料を含み、前記第2の層と前記追加の層とが熱溶融によって結び付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
表面を有する建造物を備える補強された建造物であって、第1の層は硬化性ポリマーを備え、前記第1の層は一方では前記建造物の前記表面に接着し、他方では補強ファイバーと熱可塑性母材とを含む複合材料を含む第2の層に接着し、前記硬化性ポリマーは水酸基末端ブタジエンポリマーと、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物との反応によって生じたポリウレタンを含む、表面を有する建造物を備える補強された建造物。
【請求項11】
前記水酸基末端ブタジエンポリマーが2.2と2.6の間のヒドロキシル官能価を有する、請求項10に記載の補強された建造物。
【請求項12】
前記熱可塑性母材が、ポリアミド、好ましくはポリアミド12又はポリフェニレンサルファイドを含む、請求項10に記載の補強された建造物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−144972(P2012−144972A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1131(P2012−1131)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(509167338)
【氏名又は名称原語表記】SOLETANCHE FREYSSINET
【住所又は居所原語表記】133 Boulevard National,92500 RUEIL MALMAISON,France
【Fターム(参考)】