説明

弁を操作する方法

少なくとも1つの開口部(2)が形成された第1の弁部分(1)と、少なくとも1つの開口部(4)が形成された弁部分(3)とを含む弁を操作する方法を開示する。第1の弁部分(1)と第2の弁部分(3)は、相対移動を実施するように適合され、第1の弁部分(1)の開口部(2)と第2の弁部分(3)の開口部(4)の相対位置が、開口部(2、4)の重なり領域によって弁の開口度を規定する。この方法は、第1の弁部分(1)および/または第2の弁部分(3)を弁の最大開口度を規定する位置から弁の最小開口度を規定する位置へと移動させるステップであって、重なり領域が減少すると第1の弁部分(1)と第2の弁部分(3)との間の相対移動の速度が低下するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁、特に冷凍システムに使用する弁を操作する方法に関する。さらに具体的には、本発明の方法は、弁を挿入した流体系の圧力脈動を大幅に低減又は取り除くように弁を操作することができる。
【背景技術】
【0002】
流体系の弁が閉止すると、流体の流れが急に停止してシステムに逆流を引き起こす。逆流は、高圧脈動衝撃波や過渡現象の原因となる。衝撃波は、流体系の導管の衝撃騒音と振動を発生させる。これは、「水撃作用」として知られている。衝撃騒音は、特に弁が繰り返し開閉する流体系では望ましくない。さらに、振動は、流体系の導管及び/又はその他の部分に損傷を与える可能性がある。
【0003】
弁をゆっくり閉止することによって水撃作用を低減できることが知られている。しかし、場合によっては、例えば、弁を正しく操作するために、一定の速度で閉止する必要があることから、十分に時間をかけて弁を閉止するのみで水撃作用を防いだり、あるいは、低減したりすることは不可能又は少なくとも不都合もしくは不適当である。
【0004】
米国特許第5,983,937号明細書は、水撃作用を低減することが可能な流量制御装置を開示している。この流量制御装置は、温水回路中に設けられた流量制御弁のロータ側壁部に段階的に形成された第1〜第3開口部を含む。流量制御弁の入口パイプと出口パイプとを連通する第1連通通路を全閉する第1位置と第1連通通路を全開する第2位置との間に、第3位置(a)と第3位置(b)を設定する。上記4つの位置間で、ロータが繰り返し往復するように負荷制御する。従って、流量制御装置は、水撃作用の低減が可能となるように修正されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の方法に比して、水撃作用を大幅に低減しながら、弁の許容応答時間を維持するように弁を操作する方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、弁又は弁を挿入した流体系の修正を必要とせず、水撃作用を大幅に低減するように弁を操作する方法を提供することである。
【0007】
本発明は、少なくとも1つの開口部が形成された第1の弁部分と、少なくとも1つの開口部が形成された第2の弁部分を含む弁であって、第1と第2の弁部分は、相対移動を実施するように適合され、第1の弁部分の(1つ又は複数の)開口部と第2の弁部分の(1つ又は複数の)開口部の相対位置が、第1の弁部分の開口部と第2の弁部分の開口部の重なり領域によって弁の開口度を規定するような弁を操作する方法を提供し、この方法は、弁の最大開口度を規定する位置から弁の最小開口度を規定する位置へと第1の弁部分及び/又は第2の弁部分を、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動の速度が、第1の弁部分の開口部と第2の弁部分の開口部との間の重なり領域に応じて変化し、該速度は、重なり領域が減少するに従って低下するように、移動させるステップを含む。
【0008】
本発明の方法によって操作される弁は、弁の操作によって流体系の少なくとも一部で流体の流れを制御するように、流体系に有利に配置することができる。例えば、流体系は、冷凍システム、ヒートポンプ又はエアコンシステムなどの蒸気圧縮システムであってよい。例えば、弁は、膨張弁である。
【0009】
弁は、互いに移動可能に配置される第1の弁部分と第2の弁部分とを含む。これは、第1及び/又は第2の弁部分を取り付け、その一方/両方を、弁の残りの部分に対して移動可能にして実施してもよい。従って、第1の弁部分を移動可能にし、第2の弁部分を固定して取り付けてもよい。別の代替手段として、第2の弁部分を移動可能にし、第1の弁部分を固定して取り付けてもよい。最後に、弁部分の両方が移動可能となるように取り付けてもよい。上記の状況ではいずれも、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動は可能であり、これにより、第1の弁部分と第2の弁部分の相互位置を規定する。例えば、相対移動は、回転移動又は実質的に直線移動であってもよい。相対移動が回転移動の場合、弁部分は、実質的に円板の形状が有利となりうる。弁部分の少なくとも1つは、各円板の中心を延伸する軸の周りを回転できるように配置される。
【0010】
第1の弁部分と第2の弁部分にはそれぞれ、少なくとも1つの開口部が形成されている。
従って、第1の弁部分と第2の弁部分の相対位置は、第1の弁部分に形成された開口部と第2の弁部分に形成された開口部との間の相対位置を、第1の弁部分で形成された開口部と第2の弁部分で形成された開口部との間に存在しうる重なりの大きさを含めて決定する。この重なり領域は、弁の開口度を規定し、即ち、弁を流れる流体の流量を決定する。
【0011】
開口部は、実質的に円形、実質的に三角形、実質的に四角形、実質的に長方形、実質的に六角形、涙滴状、円の切片形状、テーパー形状などのあらゆる好適な大きさ及び形状であってよい。第1の弁部分に形成された(1つ又は複数の)開口部及び第2の弁部分に形成された(1つ又は複数の)開口部は、大きさと形状が実質的に同じであってよく、その場合は、第1の弁部分の開口部が第2の弁部分の開口部に完全に重なる場所に第1及び/又は第2の弁部分を移動させることが可能となるように、開口部を弁部分に配置してもよい。あるいは、第1の弁部分に形成された少なくとも1つの開口部は、第2の弁部分に形成された少なくとも1つの開口部の大きさ及び/又は形状と異なる大きさ及び/又は形状であってもよい。この場合、2つの開口部の間に同じ重なりを得ることができない。しかし、2つの開口部の間の最大重なり領域と最小重なり領域を形成することは可能である。
【0012】
従って、第1の弁部分と第2の弁部分の相互位置は、上に記載するように、重なり領域によって弁の開口度を決定する。このため、第1の弁部分と第2の弁部分の相互位置を調整することによって、弁の開口度、結果的には、弁を流れる流体媒体の量を調整することができる。
【0013】
本発明の方法によれば、第1の弁部分及び/又は第2の弁部分は、弁の最大開口度を規定し、即ち、弁部分の対応する開口部間に存在しうる最大可能な重なりを形成する位置から弁の最小開口度を規定する位置へと移動する。例えば、最小開口度は、第1の弁部分の開口部と第2の弁部分の開口部との間に重なりが存在しない位置であってよい。この場合、最小開口度は弁の閉止位置に対応する。あるいは、最小開口度は対応する開口部の間の重なりが存在するが、重なり領域は最小となる位置であってよい。従って、弁部分は、弁が「全開」状態を形成する位置から「全閉」又は「ほぼ全閉」状態を形成する位置へと移動し、即ち、この移動は、弁の閉止動作となる。
【0014】
相対移動は、相対移動の速度が第1の弁部分の開口部と第2の弁部分の開口部との間の重なり領域に応じて変化するように実施される。速度は、重なり領域が減少するに従って低下するように変化する。
【0015】
これにより、第1及び/又は第2の弁部分は、閉止動作の開始時、つまり、第1の弁部分と第2の弁部分の対応する開口部との間で比較的大きい重なり領域が形成されている時には比較的速く移動し、移動の速度は、閉止動作の終了時、つまり、重なり領域が大幅に小さくなると予想されるべき時へ向けて低下する。従って、速度は、水撃作用が問題とならないと予想される移動の部分で比較的高くなり、水撃作用が生じると予想される移動の部分でのみ低下する。これにより、可能な限り素早く弁を操作しつつ、水撃作用を可能な限り回避するというバランスが得られる。これは利点である。
【0016】
第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動の速度は、重なり領域に応じて段階的に変化してもよい。本実施形態によれば、速度は、最初に比較的高い第1のレベルに維持してもよく、重なり領域が所定のレベルに達したときに、速度は第2のレベルに急に低下させてもよく、閉止動作の終了までこの第2のレベルに維持してもよい。さらに、第1の速度レベルと第2の速度レベルとの間に他の速度レベルを追加してもよく、これにより、速度レベルの各変化がさらに小さくなり、第1の速度レベルから第2の速度レベルに滑らかに遷移する。
【0017】
あるいは、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動の速度は、重なり領域に応じて実質的に連続的に変化させてもよい。本実施形態によれば、速度は、比較的高い第1の速度から低い第2の速度へと滑らかに低下させてもよく、弁部分が最小開口度を規定する位置に達すると実質的に同時に、第2の速度に達する。
【0018】
別の代替手段としては、速度を部分的に段階的に、かつ、部分的に連続的に変化させてもよい。
【0019】
第1の弁部分及び/又は第2の弁部分を移動させるステップは、第1の弁部分及び/又は第2の弁部分を、第1の相対速度v1で所定の重なり領域に達するまで移動させるステップと、次に、第1の弁部分及び/又は第2の弁部分を、第2の相対速度v2で、重なり領域がゼロになり、これにより、弁は閉止位置となるまで移動させるステップとを含んでよく、v2はv1より大幅に低い。
【0020】
本実施形態によれば、上に記載するように、速度は段階的に変化する。所定の重なり領域は、最大重なり領域の40〜80%、例えば最大重なり領域の50〜70%、例えば最大重なり領域の約60%であってよい。最大重なり領域は、弁の「全開」状態を形成することから、重大な制約を受けることなく流体が重なり領域を通って弁部分の開口部を流れるのに十分な大きさである必要がある。重なり領域が最大重なり領域の少なくとも40%であれば、流体は重大な制約を受けることなく弁を流れると予想することができる。しかし、重なり領域がこのレベルに達すると、相対速度が比較的高いレベルで維持されている場合に、圧力パルス、即ち、水撃作用が発生する可能性がある。従って、重なり領域がこのレベルに達したときに、速度をv2に低下させることが望ましい。しかし、弁の設計、特に第1の弁部分と第2の弁部分で形成された開口部の大きさ及び形状ならびに最大重なり領域の大きさにもよるが、水撃作用を確実に回避するために、さらに大きい所定の重なり領域を選択することが必要となる場合がある。同じように、水撃作用を発生させることなく、重なり領域が小さくなるまで、速度を高く維持することが可能である。
【0021】
この方法は、最小開口度を規定する位置に達した後に、相対速度を増大するステップをさらに含んでもよい。本実施形態によれば、(1つ又は複数の)弁部分は、閉止位置に達すると、即ち、水撃作用が発生する危険性がもはや存在しないようになると、再度高速で移動する。(1つ又は複数の)弁部分が弁の閉止位置を形成する位置に達した後は、(1つ又は複数の)弁部分は弁の開放を開始できる次の位置に移動してもよい。この移動は、水撃作用が発生する危険を冒すことなく高速で実施でき、弁をかなり素早く操作することが可能となる。さらに、相対速度が高い状態で、弁を開放してもよい。従って、本実施形態によれば、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対速度は、弁が実際に閉止される間のきわめて限られた時間でのみ低下する。これにより、弁の全体操作は、水撃作用を回避することを考慮したうえで可能な限りの最大速度で実施される。
【0022】
第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動は、段階的に実施してもよい。これは、ステップモータによって有利に実施可能である。本実施形態によれば、「相対速度」は、例えば、(1つ又は複数の)弁部分が次の位置への別のステップに移動する前の位置での「待ち時間」に関して広い意味に解釈してもよい。このような待ち時間は、いくつかのステップを介して(1つ又は複数の)弁部分が開始位置から終了位置にいかに速く移動するかを決定し、従ってこの移動の「速度」を表す。
【0023】
別の代替手段として、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動は、実質的に連続して実施してもよい。
【0024】
さらに、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動の速度は、弁を流れる冷媒の必要質量流量に依存してもよい。冷凍システムの負荷によって、蒸発器に多量の冷媒を供給することが必要とされ、これにより、膨張弁を流れる多量の質量流量の冷媒が必要な場合に、(1つ又は複数の)弁部分を比較的高速に移動させて、弁の正しい操作を確実にする必要がある。これにより、圧力パルスと付随する騒音が増大する可能性もあるが、このような状況では、これを容認することが必要となる場合がある。一方では、冷凍システムの負荷によって、蒸発器に少量の冷媒を供給することが必要とされ、これにより、膨張弁を流れる少量の質量流量の冷媒が必要な場合に、弁部分が高速移動することの重要性が低くなることから、水撃作用を防止するように弁を閉止するためにさらに多くの時間を利用することが可能となる。従って、膨張弁を流れる冷媒の必要質量流量に応じて、弁を素早く操作しつつ、水撃作用を回避するようにバランスを調整してもよい。
【0025】
一実施形態によれば、第2の弁部分は、流体媒体の供給源に流動的に連結された1つの開口部を含んでもよく、第1の弁部分は、少なくとも2つの開口部を含んでもよく、第1の弁部分の各開口部は、少なくとも2つの平行流路に流動的に連結される。この場合、この方法は、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動を実施することによって、少なくとも2つの平行流路に流体媒体を分配するステップをさらに含んでもよい。
【0026】
少なくとも2つの平行流路は、平行に流動的に配置される少なくとも2つの蒸発器であってもよく、あるいは、同じ蒸発器の少なくとも2つの冷媒の流路を平行に流動的に配置してもよい。
【0027】
本実施形態によれば、流体媒体は、第1の弁部分と第2の弁部分との間の相対移動を実施することによって、少なくとも2つの平行流路に分配されるので、流体媒体の膨張前又は膨張時に流路に分配される。従って、分配時には、流体媒体は少なくとも部分的に液体状態にある。これは、流路が蒸発器のマイクロチャンネルの形態にあり、かつ、流体媒体が冷媒である場合に特に有利である。これは、マイクロチャンネルが少量の冷媒のみ収容可能であることから、冷媒は、実質的に気相にある間、即ち、膨張後に流路間で分配されると、あまりにも早く蒸発してしまう危険性が存在することによる。
【0028】
添付図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】本発明の実施形態による方法を実施するのに適した第1の弁部分を示し、弁部分の開口部は、実質的に円形形状であることを示す図である。
【図1b】本発明の実施形態による方法を実施するのに適した第2の弁部分を示し、弁部分の開口部は、実質的に円形形状であることを示す図である。
【図2a】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図2b】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図2c】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図2d】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図2e】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図2f】図1a及び1bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図3a】本発明の実施形態による方法を実施するのに適した第1の弁部分を示し、弁部分の開口部はテーパー形状であることを示す図である。
【図3b】本発明の実施形態による方法を実施するのに適した第2の弁部分を示し、弁部分の開口部はテーパー形状であることを示す図である。
【図4a】図3a及び3bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図4b】図3a及び3bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図4c】図3a及び3bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図4d】図3a及び3bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図4e】図3a及び3bの第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動を示す図である。
【図5】従来技術の操作方法による第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動の間の時間に対する流体媒体の相対速度、相対位置及び圧力に対応するグラフを示す図である。
【図6】図5のグラフの一部をさらに詳細に示す図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる操作方法による第1の弁部分と第2の弁部分の相対移動の間の時間に対する流体媒体の相対速度、相対位置及び圧力に対応するグラフを示す図である。
【図8】図7のグラフの一部をさらに詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aは、本発明の実施形態による方法を実施するのに適した弁に使用される第1の弁部分を示す。第1の弁部分1は、実質的に円板の形状であり、4つの開口部2を有し、各開口部は実質的に円形断面を有し、円板を延伸する貫通穴の形状として形成されている。
【0031】
図1bは、本発明の実施形態による方法を実施するのに適した弁に使用される第2の弁部分を示している。第2の弁部分3は、図1aの第1の弁部分1の直径と実質的に同じ直径を有する実質的に円板の形状である。従って、図1aの第1の弁部分1と図1bの第2の弁部分3は、同じ弁の一部を形成するように、かつ、弁の開口度の規定において連携するように適合される。以下に、図2a〜2fを参照して、これを詳細に説明する。
【0032】
第2の弁部分3は、円板内に延伸する貫通穴の形状の開口部4を備える。開口部4は、実質的に円形断面を有し、円形開口部4の直径は、図1aの第1の弁部分1の開口部2のそれぞれの直径と実質的に同じである。
【0033】
図2a〜2fは、図1aの第1の弁部分1と図1bの第2の弁部分3の相対移動を示している。第1の弁部分と第2の弁部分3は、円板の円形表面が実質的に重なり、これにより、共通の中心を形成するように隣接して配置される。弁部分1、3の一方又は両方が、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間で相対的な回転移動が実施されるように、共通の中心が規定される回転軸の周りで回転移動を実施するよう適合される。
【0034】
図2aでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3は、第2の弁部分3の開口部4が第1の弁部分1の開口部2aの1つと完全に重なるように互いに対して配置される。これにより、流路は、第1の弁部分1の開口部2aと第2の弁部分3の開口部4によって弁部分1、3を通るように規定される。流路の大きさは、開口部2a、4間に完全な重なりが存在していることから、各開口部2a、4の大きさによって規定される。従って、図2aでは、流路の大きさは最大可能値となるため、第1の弁部分1と第2の弁部分3のこの相互位置は、弁の最大開口度を規定する。これにより、開口部2a、4の重なりによって形成される流路に連結する流路には、最大流量が流れる。
【0035】
図2a〜2fではいずれも、第2の弁部分3の開口部4と第1の弁部分1の残りの開口部2bとの間には、重なりは存在しない。従って、流体がこれらの開口部2bに連結する流路を流れることできないことから、弁は、これらの流路に対して閉止しているとみなしてよい。
【0036】
図2bでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置はわずかに変化している。従って、第1の弁部分の開口部2aと弁部分3の開口部4との間の重なりは、もはや完全ではない。従って、流路の大きさは、重なっている開口部2a、4によって規定され、図2aに示す状況に比して減少している。しかし、流路は、依然として比較的大きいため、十分多量の流量を流路に流すことができる。
【0037】
図2cでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置はさらに変化し、第1の弁部分1の開口部2aと弁部分3の開口部4との間の重なりはさらに減少している。この時点では、重なり領域は、図2aに示す弁部分1、3の相互位置で、開口部2a、4によって規定される最大重なり領域の約30%に減少する。
【0038】
図2dでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置はさらに変化し、開口部2a、4間の重なりはさらに減少している。この時点では、重なり領域はきわめて小さいが、流路は依然として形成されている。従って、流体媒体は、この流路を通って、これに連結する流体経路へと流れることができるが、流量はごく僅かである。従って、弁は依然として開放位置にあるが、開口度はごく僅かである。
【0039】
図2eでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置はさらに変化している。図2eでは、第1の弁部分1の開口部2aと第2の弁部分3の開口部4は互いにすぐ隣接して配置される。従って、開口部2a、4による重なりは形成されず、流体の流れは開口部2a、4を流れることができず、弁はまさに閉止位置に達している。
【0040】
図2fでは、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置はさらに変化している。第2の弁部分3の開口部4は、第1の弁部分1の2つの開口部2a、2b間の位置に配置され、つまり、第1の弁部分1の開口部2のいずれとも重なって配置されていない。従って、流体は弁を流れることができず、弁は依然として閉止位置にある。開口部4は、第1の弁部分の次の開口部2bへと移動し、次の開口部2bに達したときに、重なりを形成し、これにより、その開口部2bに連結する流路へと弁を開放する。
【0041】
上に記載するように、図2a及び2bに示す位置では、開口部2a、4によって重なり領域が規定され、これにより、弁の開口度は、比較的大きい。これにより、これらの位置で発生する水撃作用の危険性はごく僅かである。しかし、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相互位置が、図2cに示す位置から図2dに示す位置を通って図2eに示す位置に変化する際、移動速度が速すぎる場合に、水撃作用が発生する可能性がある。従って、本発明によると、図2a〜2fに示す移動は、以下の方法で有利に実施してもよい。図2aに示す位置から図2bに示す位置を通って図2cに示す位置への弁部分1、3の相対移動は、比較的高速で実施され、これにより、弁の許容応答時間と正しい操作を確実にする。
【0042】
図2cに示す位置に達すると、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対移動の速度が、急に又は徐々に低下する。従って、図2cに示す位置から図2dに示す位置を通って図2eに示す位置への弁部分1、3の相対移動は、図2aに示す位置から図2cに示す位置への移動より低速で実施される。これにより、水撃作用が発生する危険性は大幅に減少する。
【0043】
図2eに示す位置に到達して、弁が閉止位置にある場合、弁が閉止位置にある間は水撃作用が発生しないことから、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対移動の速度を再度増大させることができる。従って、図2eに示す位置から図2fに示す位置への相対移動は高速で実施される。
【0044】
弁の閉止動作時に速度が変化することによって、弁の正しい操作と許容応答時間との正確なバランスを確実にし、水撃作用から生じる問題を回避また低減する。
【0045】
図3a及び3bは、弁で使用する第1の弁部分1と第2の弁部分3を示している。第1の弁部分1は、テーパー断面を有する貫通穴の形状の4つの開口部5を備える。第2の弁部分3は、テーパー断面を有する貫通穴の形状の1つの開口部6を備える。開口部5、6の断面形状以外、図3a及び3bに示す弁部分1、3は、図1a及び1bに示す弁部分1、3と同じものであることから、ここでは詳細に記載しない。
【0046】
図4a〜4eは、図3aに示す第1の弁部分1と図3bに示す第2の弁部分3との間の相対移動を示す。弁部分1、3の相互位置は、図4aに示す全開位置から図4eに示す全閉位置に変化する。図2a〜2fに関して上に記載する注釈は、ここでも同様に適用される。
【0047】
上の記載と同じように、図4a〜4eに示す相対移動は、図4aに示す位置から図4bに示す位置を通って図4cに示す位置への相対移動を比較的高速で実施するように、有利に実施してもよい。図4cに示す位置から図4dに示す位置への相対移動は低い速度で実施され、これにより、水撃作用を回避又は低減させる。最後に、図4dに示す位置から図4eに示す位置、即ち、弁が閉止位置にある間、高速で実施される。
【0048】
図5は、従来技術の操作方法に従って、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相対移動の間の時間に対する流体媒体の相対速度7、相対位置8及び圧力9に対応するグラフを示している。例えば、第1の弁部分1と第2の弁部分3は、図1a及び1b又は図3a及び3bに示す種類の弁であってもよい。
【0049】
最初に、t=0では、弁部分1、3の相対速度7は高く、弁部分1、3間の相対位置8は一定速度で変化する。圧力9は一定である。この動作の間、弁は開放され、即ち、最大開口度を規定する位置に移動する。
【0050】
t=t1では、相対移動は停止し、即ち、相対速度7はゼロであり、相対位置8はt=t2まで変化しない。t=t1からt=t2までに経過する時間は、弁が開放している時間がどれくらいかを規定する。
【0051】
t=t2では、相対速度7は再度高い値に変化し、弁部分1、3の相対位置8を再度変化させる。従って、弁の閉止動作が開始する。これによって、流体媒体の圧力9が激しく振動し、その圧力振動は閉止操作の終了後も十分に持続し、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対移動はt=t3で停止することが、グラフから明らかである。これは、水撃作用として知られている現象である。第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対移動は、閉止操作及び開放操作の間、実質的に同じ速度で実施されることに留意する。
【0052】
図5では、閉止操作が続く次の開放操作をさらに示す。
【0053】
図6は、図5のグラフを拡大したものであり、上記の閉止操作を示す。図6では、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相対移動との間の相対移動の速度7が、閉止操作時に実質的に一定レベルに維持されることが容易にわかる。
【0054】
図7は、本発明の実施形態による操作方法に従って、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相対移動の間の時間に対する流体媒体の相対速度10、相対位置11及び圧力12に対応するグラフを示している。例えば、第1の弁部分1と第2の弁部分3は、図1a及び1b又は図3a及び3bに示す種類の弁であってもよい。
【0055】
最初に、t=0では、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対速度10は比較的高く、実質的に一定のレベルである。これにより、弁が開放される。t=t4では、相対速度10は急にゼロになり、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対位置11は、t=t5まで一定レベルに維持される。この間、弁は全開状態となる。
【0056】
t=t5では、弁の閉止操作が開始する。t=t5からt=t6までは、第1の弁部分1と第2の弁部分3は、開放操作の間に適用した高速の相対速度10で移動する。t=t6では、速度は高レベル時の実質的に半分のレベルに低下する。t=t7では、速度10はきわめて低いレベルにさらに低下する。t=t8では、弁は全閉位置に移動しており、速度10は再度高いレベルに増大し、t=t9までそのレベルに維持されるが、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対移動は停止する。
【0057】
相対速度10の漸減は、第1の弁部分1と第2の弁部分3との間の相対位置11に反映される。グラフ11は、t=t5とt=t8との間で徐々に平坦になることがわかる。
【0058】
上記の閉止操作に応じて、流体媒体の圧力12は、図5を参照して上に示す状況と同じように振動する。しかし、振動は、それほど大きくなく、急激に減衰する。従って、第1の弁部分1と第2の弁部分3の相対移動が、従来技術の方法に従って実施される図5及び6に示す状況に比して、水撃作用に関する問題は大幅に減少する。閉止操作の最後の部分では、相対移動の速度10がきわめて低いことから、水撃作用は低減する。さらに、閉止操作の最初の部分では、弁部分1、3は高速で移動し、弁が全閉する際には、弁の素早い操作と許容応答時間を確実にする。
【0059】
さらに、図7は、別の閉止操作後の弁の次の開放操作を示している。
【0060】
図8は、図7のグラフ10、11、12を拡大したものであり、t=t5からt=t9の上記の閉止操作を示している。図5及び6に示す状況に比して、圧力振動が大幅に減少していることが、圧力グラフ12からきわめて明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口部(2,5)が形成された第1の弁部分(1)と、少なくとも1つの開口部(4,6)が形成された第2の弁部分(3)を含む弁において、前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)は、相対移動を実施するように適合され、前記第1の弁部分(1)の前記開口部(2,5)と前記第2の弁部分(3)の前記開口部(4,6)の相対位置が、前記第1の弁部分(1)の前記開口部(2,5)と前記第2の弁部分(3)の前記開口部(4,6)の重なり領域によって弁の開口度を規定するような弁を操作する方法であって、
前記弁の最大開口度を規定する位置から前記弁の最小開口度を規定する位置へと前記第1の弁部分(1)及び/又は前記第2の弁部分(3)を、前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)との間の前記相対移動の速度が、前記第1の弁部分(1)の前記開口部(2,5)と前記第2の弁部分(3)の前記開口部(4,6)との間の重なり領域に応じて変化し、前記速度は、前記重なり領域が減少すると低下するように、移動させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)との間の前記相対移動の速度は、前記重なり領域に応じて段階的に変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の弁部分(1)及び/又は前記第2の弁部分(3)移動させるステップは、
前記第1の弁部分(1)及び/又は前記第2の弁部分(3)を、第1の相対速度v1で所定の重なり領域に達するまで移動するステップと、
次に、前記第1の弁部分(1)及び/又は前記第2の弁部分(3)を、第2の相対速度v2で、前記重なり領域がゼロになり、これにより、前記弁は閉止位置となるまで移動させるステップとを含み、
2は、v1より大幅に低い、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の重なり領域は、最大重なり領域の40〜80%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
最小開口度を規定する位置に達した後に前記相対速度を増大するステップを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)との間の前記相対移動は、段階的に実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)との間の前記相対移動の速度は、弁を流れる冷媒の必要質量流量にさらに依存する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の弁部分(3)は、流体媒体の供給源に流動的に連結する1つの開口部(4,6)を含み、前記第1の弁部分(1)は、少なくとも2つの開口部(2,5)を含み、前記第1の弁部分(1)の前記開口部(2,5)のそれぞれは、少なくとも2つの平行流路の1つに流動的に連結し、前記方法は、前記第1の弁部分(1)と前記第2の弁部分(3)との間の前記相対移動を実施することによって、少なくとも2つの平行流路に流体媒体を分配するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−522940(P2012−522940A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502456(P2012−502456)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/DK2010/000039
【国際公開番号】WO2010/121614
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505462622)
【Fターム(参考)】