説明

弁構造

【課題】コンパクトで配管し易く、開閉弁のストロークが短く、開閉弁操作が容易な弁構造を提供する。
【解決手段】流路2を一次側と二次側に区画すると共に、複数の横長スリット状の不動弁口3aと、該不動弁口3aの上下幅より拡幅した複数の不動板弁3bとを上下方向で交互に平行配列した仕切板3と、該仕切板3の一面に上下摺動自在に当接すると共に、不動弁口3aと同形で合致可能にして、且つ不動板弁3bで水密閉塞可能な可動弁口4aと、不動板弁3bに合致可能にして、且つ不動弁口3aを水密閉塞可能な可動板弁4bとを上下方向で交互に平行配列した滑り弁体4とを備え、開弁状態で不動弁口3aに可動弁口4aが合致すると共に、不動板弁3bに可動板弁4bが合致し、閉弁状態で不動弁口3aは可動板弁4bに水密閉塞され、可動弁口4aは不動板弁3bに水密閉塞される様に成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を一次側と二次側に仕切って開閉を行う弁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の弁構造を用いた装置として代表される仕切弁は、例えば特許文献1に開示される様に、弁棒の下部に取付けられた平板状のプレート弁体が、弁箱内の直線流路を垂直に仕切って開閉を行うものにして、全閉時には弁棒の操作によりプレート弁体が降下して弁箱内の流路を遮断し、全開時には弁棒の操作によりプレート弁体が上昇して弁箱内上部に連続形成した弁蓋に収容されて弁箱内の流路を全開放するものである。
【特許文献1】特許第2579832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の弁構造では、プレート弁体の設置箇所において、開弁(全開)時に流路を全開放させるために、その上方にプレート弁体の収容空間を確保せねばならず、要するにプレート弁体の二倍以上の高さを必要とするので、その大型化は避けられず、しかもプレート弁体による全開から全閉までのストロークが長く、その開閉弁操作が良好に行えないといった課題を有している。
そこで、本発明では、コンパクトで配管し易く、開閉弁のストロークが短く、開閉弁操作が容易な弁構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題に鑑み、本発明の弁構造は、流路を一次側と二次側に区画すると共に、複数の横長スリット状の不動弁口と、該不動弁口の上下幅より拡幅した複数の不動板弁とを上下方向で交互に平行配列した仕切板と、該仕切板の一面に上下摺動自在に当接すると共に、不動弁口と同形で合致可能にして、且つ不動板弁で水密閉塞可能な可動弁口と、不動板弁に合致可能にして、且つ不動弁口を水密閉塞可能な可動板弁とを上下方向で交互に平行配列した滑り弁体とを備え、開弁状態で不動弁口に可動弁口が合致すると共に、不動板弁に可動板弁が合致し、閉弁状態で不動弁口は可動板弁に水密閉塞され、可動弁口は不動板弁に水密閉塞されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
要するに本発明のものは、流路を一次側と二次側とに区画する仕切板に上下方向で交互に複数設けた不動弁口及び不動板弁に対し、仕切板に上下摺動自在に当接した滑り弁体に上下方向で交互に複数設けた可動弁口及び可動板弁を、両者の弁口及び板弁同士を合致、又は食い違う様に滑り弁体を昇降操作するだけで、流路を連通・遮断でき、そのストロークも各弁口の上下幅に応じて極端に短く設定でき、開閉弁操作が極めて容易に行える。
又、本発明によれば、従来の様に全開時にプレート弁体を収容する空間を大きく形成する必要がないため、全体を小型化でき、配管スペースを従来に比し縮小できて配管がし易く、又小型化が可能なため材料費、延いては製造コストをも低減できる等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る弁構造を用いたバルブの開弁時の正面図、図2は図1の中央縦断面図、図3は閉弁時の中央縦断面図である。
このバルブは、弁箱1内に設けた直線流路2を一次側(流路2a)と二次側(流路2b)に区画すると共に、複数の横長スリット状の不動弁口3aと、該不動弁口3aの上下幅(高さ)より拡幅した複数の不動板弁3bとを上下方向で交互に平行配列した仕切板3と、該仕切板3の一面(背面)に上下摺動自在に当接すると共に、不動弁口3aと同形で合致可能にして、且つ不動板弁3bで水密閉塞可能な可動弁口4aと、不動板弁3bに合致可能にして、且つ不動弁口3aを水密閉塞可能な可動板弁4bとを上下方向で交互に平行配列した滑り弁体4とを備えている。
そして、開弁状態で不動弁口3aに可動弁口4aが合致すると共に、不動板弁3bに可動板弁4bが合致し、閉弁状態で不動弁口3aは可動板弁4bに水密閉塞され、可動弁口4aは不動板弁3bに水密閉塞される様に成している。
【0007】
弁箱1は、正面視方形状に形成され、その正面及び背面の中央(図2、3において左右側方)に入口5及び出口6の夫々を開設すると共に、内部に入口5及び出口6の夫々に通ずる一次側流路2a及び二次側流路2bを設けている。
又、弁箱1は、入口5及び一次側流路2aを形成した正面側部材1aと、出口6及び二次側流路2bを形成した背面側部材1bとをボルトB、B1…にて相互に着脱自在に取付けている。
【0008】
正面側部材1aにおける背面側部材1bとの接合面7には、一次側流路2aの二次側流路2bとの連通口周囲に仕切板3の正面周縁を当接支持する段部8を設け、該段部8の周囲に仕切板3の周面を囲繞する枠部9を突設している。
又、段部8における仕切板3の正面周縁との当接箇所にはOリング溝を凹設し、該Oリング溝にOリングRを装填している。
【0009】
背面側部材1bにおける正面側部材1aとの接合面10には、二次側流路2bの一次側流路2aとの連通口周囲に仕切板3と共に枠部9を挿嵌する嵌合凹部11を設け、該嵌合凹部11の内壁に当接する枠部9外周面に凹設したOリング溝にOリングR1を装填している。
そして、弁箱1が構成された状態、即ち接合面7、10同士が接合されると共に、嵌合凹部11に仕切板3と共に枠部9が挿嵌された状態の嵌合凹部11において、仕切板3の背面には、該背面に正面が上下摺動自在に当接する滑り弁体4を配置している。
【0010】
背面側部材1bの上部中央には、滑り弁体4の上端中央に下端を螺着した弁棒12を、上下動自在に挿通する弁棒12より大径で雌ねじを螺刻した螺嵌穴13を設け、該螺嵌穴13には、これより上方へ突出する弁棒12を挿通支持する筒状のホルダー14の下端をOリングR2を介して水密状に螺挿している。
【0011】
ホルダー14の内部は、弁棒12をOリングR3を介して水密状に摺動支持する案内穴14aと、該案内穴14aより上方に連続して、且つ弁棒12より大径なねじ穴14bを設けている。
ねじ穴14bには、案内穴14aより突出した弁棒12上端に、これを空転支持する様に連結したハンドル15付きスピンドル16の下端を螺挿している。
又、ホルダー14の上端部には、スピンドル16を挿通した押さえナット17を螺着している。
【0012】
仕切板3は、ポリアセタール等の合成樹脂製にして、図3にも示す様に、入口5の口径よりも大きく、正面及び背面を鉛直に形成することで肉厚を一様と成した方形平板の中央に、横長な3つの不動弁口3aと、3つの不動板弁3bを上から順に交互に形成している。
不動板弁3bは不動弁口3aよりも縦横が若干長く設定され、中央2本の板弁3bの正面側にあっては、夫々の上下に配される不動弁口3aへ一次側からの流体をスムーズに二次側へ流動させられる様に断面山形状に形成している。
又、段部8に正面が当接する仕切板3の下端縁を、他1本の板弁3bとして流用している。
【0013】
滑り弁体4は、ステンレス等の金属製にして、図4にも示す様に、仕切板3と同様な方形板状に(図示例では横幅を仕切板3と同一、高さを仕切板3より若干短く)形成され、その上方から下方へ向かうに従い徐々に薄肉となる様に背面を傾斜させ、正面は仕切板3の背面と同様に鉛直面と成している。
そして、不動板弁3b(の背面)と同大な可動板弁4bと、不動弁口3aと同形な可動弁口4aを上から順に交互に形成している。
尚、図示例において、最上段の可動板弁4bは、その上下幅(高さ)を他の可動板弁4bより若干拡幅し、その中央に弁棒12の下端を螺着するねじ孔を設けているが、他の可動板弁4bと同大と成しても良い。
【0014】
本実施例において、仕切板3を合成樹脂製とし、滑り弁体4を金属製としたものを示したが、仕切板3及び滑り弁体4の素材は何ら限定されるものでなく、更に仕切板3と滑り弁体4は図示例の様に方形板でなくとも、例えば円板形状、楕円形状であっても良く、この場合、弁箱1において仕切板3及び滑り弁体4に関わる内部形状、例えば段部8や枠部9の形状は、仕切板3及び滑り弁体4の形態に応じ適宜設定される。
【0015】
上記の様に構成されたバルブにあっては、ハンドル15を回転操作することにより、スピンドル16はねじ穴14bに沿って回転しながら上下動する。
スピンドル16が回転しても、弁棒12が回転することはなく、スピンドル16の上下動のみが弁棒12に伝動されるため、弁棒12を介して滑り弁体4が上下動する。
これにより、滑り弁体4の正面が仕切板3の背面を上下摺動する。
【0016】
滑り弁体4が上限に達すると、図1、2に示す様に、仕切板3と滑り弁体4の各不動弁口3aと各可動弁口4aが合致すると共に、各不動板弁3bと各可動板弁4bが合致し、弁口3a、4a同士が連通して全開状態となり、弁口3a、4aを通じて一次側流路2aから二次側流路2bへ流体が流動する。
この時、仕切板3における中央2本の不動板弁3bの一次側に面する正面側が断面山型に形成されているため、かかる不動板弁3bの上下に位置して連通する弁口3a、4aへ一次側からの流体がスムーズに二次側へ流動させられる。
【0017】
又、ハンドル15の回転操作により、滑り弁体4が下限に達すると、図3に示す様に、仕切板3の各不動弁口3aと各不動板弁3bに対し、滑り弁体4の各可動弁口4aと各可動板弁4bが互い違いに位置し、各不動弁口3aが各可動板弁4bによって水密状に閉塞されると共に、各可動弁口4aが各不動板弁3bによって水密状に閉塞されて流路2が一次側と二次側に遮断されて閉弁状態となる。
【0018】
そして、弁口3a、4aの開度を調整する様に滑り弁体4の上下位置をハンドル15の回転操作にて調節して、弁口3a、4aと板弁3b、4b相互の食い違い度合を変更することにより、流量を調整する。
尚、金属製の滑り弁体4の長期的な上下摺動によって合成樹脂製の仕切板3の背面が磨耗し、シール性が損なわれた場合などには、背面側部材1bから正面側部材1aを取り外して仕切板3を交換することで対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】開弁時の正面図である。
【図2】図1の中央縦断面図である。
【図3】閉弁時の中央縦断面図である。
【図4】仕切板の背面図である。
【図5】滑り弁体の正面図である。
【符号の説明】
【0020】
2 流路
3 仕切板
3a 不動弁口
3b 不動板弁
4 滑り弁体
4a 可動弁口
4b 可動板弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を一次側と二次側に区画すると共に、複数の横長スリット状の不動弁口と、該不動弁口の上下幅より拡幅した複数の不動板弁とを上下方向で交互に平行配列した仕切板と、該仕切板の一面に上下摺動自在に当接すると共に、不動弁口と同形で合致可能にして、且つ不動板弁で水密閉塞可能な可動弁口と、不動板弁に合致可能にして、且つ不動弁口を水密閉塞可能な可動板弁とを上下方向で交互に平行配列した滑り弁体とを備え、開弁状態で不動弁口に可動弁口が合致すると共に、不動板弁に可動板弁が合致し、閉弁状態で不動弁口は可動板弁に水密閉塞され、可動弁口は不動板弁に水密閉塞されることを特徴とする弁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−31979(P2010−31979A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195571(P2008−195571)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000165295)兼工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】