説明

弁装置

【課題】プランジャと摺動孔の内周面との接触面を小さくし安定した摺動性能を有してプランジャの摺動速度が遅くなることを抑えることができる小型軽量の弁装置を供する。
【解決手段】有底円筒状のプランジャ20が円筒状のプランジャボディ10の内側の摺動孔11に中心軸を同軸にして軸方向に摺動自在に嵌挿され、弾性部材30によりプランジャ20が閉弁方向に付勢され、油路の途中に設けられてプランジャ20の底面にかかる油圧が高まると弾性部材30の付勢力に抗してプランジャ20を弾性部材30側に移動させて開弁する弁装置において、プランジャ20が摺動孔11の内周面11sと摺接する大径部22Lと縮径した小径部22Sを備え、小径部22Sと摺動孔11の内周面11sとの間にボール40を介装した弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の経路途中に設けられる弁装置であって、有底円筒状のプランジャがプランジャボディの摺動孔に摺動自在に嵌挿され、弾性部材によりプランジャが閉弁方向に付勢される弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この弁装置は、プランジャに所定圧以上の圧力が加わると、プランジャが弾性部材の付勢力に抗して移動することで、開弁して流体を別の経路に流すものである。
この種の弁装置は、主としてリリーフバルブ装置として用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−332115号公報
【0004】
同特許文献1に開示されたリリーフバルブ装置は、有底円筒状のリリーフ弁体(プランジャ)が本体部(プランジャボディ)の摺動孔に摺動自在に嵌挿され、スプリング(弾性部材)によりリリーフ弁体が閉弁方向に付勢される。
有底円筒状のリリーフ弁体の底壁部が本体部の第1分岐通路との連結開口に臨み、リリーフ弁体の円筒部が本体部の第2分岐通路と連結するリリーフ孔部を移動により開閉する。
【0005】
第1分岐通路内の油圧が所定圧未満であると、スプリングの付勢力によりリリーフ弁体は底壁部が摺動孔より縮径された連結開口部に当接して連結開口を閉塞するとともに、リリーフ弁体の円筒部がリリーフ孔部を閉塞している。
第1分岐通路内の油圧が所定圧を越えるようなことがあると、スプリングの付勢力に抗してリリーフ弁体が移動し、連結開口を開きリリーフ孔部を開くと、連結開口とリリーフ孔部が連通して第1分岐通路内の潤滑油が第2分岐通路に流れ、第1分岐通路内の油圧を低下させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
該リリーフバルブ装置は、リリーフ弁体の円筒外周面全面が摺動孔の内周面に面接触する構造である。
リリーフ弁体と摺動孔との間には潤滑油が供給されて、本体部に対してリリーフ弁体が流体潤滑により円滑に摺動するようにしているが、状況によって部分的に潤滑油が排除されて金属すべり接触を起こす可能性があり、リリーフ弁体の円筒外周面全面が摺動孔の内周面に面接触して両者間の摺動接触面積が大きいと、金属すべり接触を起こす可能性が高く、金属すべり接触を起こすと、摩擦係数が大きくなり、摺動性能を低下させ、リリーフ弁体の摺動速度が遅くなる。
【0007】
また、リリーフ弁体の円筒外周面全面が摺動孔の内周面に面接触する構造であると、摺動孔に対するリリーフ弁体の姿勢が少しでも傾くと、リリーフ弁体の前後の外周端縁が摺動孔の内周面に強く接触して大きな摩擦を生じるので、リリーフ弁体はその外径に対する軸方向の幅長の割合を大きくする必要があり、安定した摺動性能を維持しつつ小型軽量化することが難しかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、プランジャと摺動孔の内周面との接触面を小さくし安定した摺動性能を有して、プランジャの摺動速度が遅くなることを抑えることができる小型軽量の弁装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、有底円筒状のプランジャが円筒状のプランジャボディの内側の摺動孔に中心軸を同軸にして軸方向に摺動自在に嵌挿され、弾性部材により前記プランジャが閉弁方向に付勢され、油路の途中に設けられて前記プランジャの底面にかかる油圧が高まると前記弾性部材の付勢力に抗して前記プランジャを前記弾性部材側に移動させて開弁する弁装置において、前記プランジャが前記摺動孔の内周面と摺接する大径部と縮径した小径部を備え、前記小径部と前記摺動孔の内周面との間にボールを介装した弁装置とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の弁装置において、前記プランジャは前記大径部が前記小径部より軸方向の幅長が小さく形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の弁装置において、前記ボールが前記プランジャの軸方向に少なくとも2個並んで設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の弁装置において、前記ボールが前記プランジャの周方向に少なくとも3箇所等間隔に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の弁装置において、前記プランジャボディの摺動孔の内周面に、前記ボールが転動可能に嵌合する軸方向に指向した溝条が周方向に少なくとも3条等間隔に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の弁装置において、前記プランジャは、底壁側に前記大径部が形成され、底壁と反対側に外径が前記大径部より小さく前記小径部より大きい中径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に前記小径部が形成され、前記プランジャボディの溝条は、摺動孔の内周面の前記プランジャの小径部に常に対向する所要軸方向位置に形成された溝条端面から前記中径部側に延設され、前記溝条に嵌合するボールは、軸方向で前記プランジャボディの溝条端面と前記プランジャの中径部のフランジ面との間に介装されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の弁装置において、前記プランジャボディの前記溝条端面が形成される前記所要軸方向位置は、前記溝条端面と前記プランジャの中径部の前記フランジ面との間にボールが挟まれたときに、少なくとも前記プランジャの底面が前記プランジャボディから突出しないようにした軸方向位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の弁装置によれば、プランジャが摺動孔の内周面と摺接する大径部と縮径した小径部を備え、同小径部とプランジャボディの摺動孔の内周面との間にボールを介装したので、プランジャは大径部のみが摺動孔の内周面と摺接し、その他小径部が転動するボールを介して相対移動自在に支持される。
したがって、大径部による摺動接触面積を小さくして金属すべり接触を起こす可能性を低くするとともに、ボールの転がり接触により摩擦係数を極力小さくし、プランジャを円滑に摺動させることができ、摺動速度が遅くなることを抑えることができる。
【0017】
プランジャは大径部のみが摺動孔の内周面と摺接し、ボールの介在により他の部分は摺動孔の内周面と接触せずにクリアランスを有するので、プランジャの姿勢が多少傾くことがあったとしてもクリアランスにより特にプランジャの両端の外周端縁の接触が回避されるため、プランジャはその外径に対する軸方向の幅長の割合を大きくする必要がなく、よって安定した摺動性能を維持しながらプランジャの軸方向の幅長を縮小して小型化し、軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項2記載の弁装置によれば、プランジャは大径部が小径部より軸方向の幅長が小さく形成されているので、プランジャの大径部とプランジャボディの摺動孔の内周面との摺動接触面積を減らして金属すべり接触を起こす可能性を低くし、プランジャを円滑にかつ安定して摺動させることができる。
また、大径部の軸方向の幅長を小さくすることで、プランジャの小型軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項3記載の弁装置によれば、ボールがプランジャの軸方向に少なくとも2個並んで設けられるので、プランジャの移動においてプランジャボディの摺動孔の中心軸に対しプランジャの中心軸を同軸に維持することができ、姿勢を安定に保った状態でプランジャを円滑に摺動することができる。
ボールをプランジャの軸方向に2個以上設けることで、小径のボールを用いてもプランジャの姿勢を安定に保つことができ、弁装置の小型化を図ることができる。
【0020】
請求項4記載の弁装置によれば、ボールがプランジャの周方向に少なくとも3箇所等間隔に設けられるので、必要最小限の支持箇所によりプランジャボディの摺動孔の中心軸に対しプランジャの中心軸を同軸に維持することができ、3箇所とすることで部品点数を最小限に抑えることができる。
【0021】
請求項5記載の弁装置によれば、プランジャボディの摺動孔の内周面に、ボールが転動可能に嵌合する軸方向に指向した溝条が周方向に少なくとも3条等間隔に形成されるので、周方向でのボールの位置決めがなされ、安定してプランジャを移動自在に支持することができる。
【0022】
請求項6記載の弁装置によれば、プランジャは、底壁側に前記大径部が形成され、底壁と反対側に外径が前記大径部より小さく小径部より大きい中径部が形成され、大径部と中径部との間に小径部が形成され、プランジャボディの溝条は、摺動孔の内周面のプランジャの小径部に常に対向する所要軸方向位置に形成された溝条端部から中径部側に延設され、溝条に嵌合するボールは、軸方向でプランジャボディの溝条端部とプランジャの中径部との間に介装されるので、プランジャに弾性部材の付勢力以外に外力が加わらないときに、弾性部材の付勢力により移動したプランジャは、その中径部がプランジャボディの溝条端部との間にボールを挟んで停止させられ、プランジャの抜け止めとなっているため、別途抜け止めのための特別な部材を必要とせず、部品点数を少なく抑えることができる。
ボールを挟んで抜け止めとする機構は、プランジャボディ内であってプランジャの軸方向幅内に構成されるので、弁装置を小型化を維持できる。
【0023】
請求項7記載の弁装置によれば、プランジャボディの溝条端面が形成される所要軸方向位置を、溝条端面とプランジャの中径部のフランジ面との間にボールが挟まれたときに、少なくともプランジャの底面がプランジャボディから突出しないようにした軸方向位置とすることで、組立て時に、プランジャがプランジャボディから突出しないので、組立て性がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図8に基づいて説明する。
本実施の形態に係る弁装置は、リリーフバルブ装置1であり、図1に該リリーフバルブ装置1の閉弁状態の縦断面図を図示し、図2に同横断面図を図示する。
また、図3には開弁状態の該リリーフバルブ装置1の縦断面図を図示する。
【0025】
円筒状のプランジャボディ10の内側の摺動孔11に、有底円筒状のプランジャ20が摺動自在に嵌挿され、スプリング30によりプランジャ20が閉弁方向に付勢されている。
なお、本実施の形態においては、有底円筒状のプランジャ20の底壁部21がある側(図1において左側)を前側とし、その反対側(図1において右側)を後側と決めておく。
【0026】
円筒状のプランジャボディ10は、図4および図5に図示するように、内径Diの内周面11sが摺動孔11を形成している。
プランジャボディ10の前側部分を径方向に貫通してリリーフ孔12,12が対称位置に穿孔されている。
【0027】
摺動孔11の内周面11sには、前側のリリーフ孔12,12より僅かに後方位置から軸方向に指向して後方に向けて溝条13が、周方向に3条等間隔に刻設されている。
溝条13は、前端に溝条端面13aが形成され、後端は後方に抜けている。
溝条13の断面形状は、略半円形状をなし、後記するボール40が半分程嵌合して転動することができる。
【0028】
摺動孔11の内周面11sの後端近傍に後記するサークリップ51を係止する環状内周溝14が周方向に形成されている。
なお、プランジャボディ10のリリーフ孔12,12より前の前端部外周にシール部材55を嵌合する環状外周溝15が周方向に亘り形成されている。
【0029】
一方、プランジャ20は、図6および図7に図示するように、前端の底壁部21と底壁部21から後方へ延出する円筒部22とから有底円筒状をなし、円筒部22の前端部は最大の外径Dを有する大径部22Lが形成され、同大径部22Lから後方へ最小の外径Dを有する小径部22Sが延出し、円筒部22の後端部は、大径部22Lの外径Dより小さく、小径部22Sの外径Dより大きい外径Dの中径部22Mが形成されている。
【0030】
小径部22Sが軸方向に最も長尺であり、同小径部22Sと前端の大径部22Lとの段差部に大径フランジ面22Lfが形成され、同小径部22Sと後端の中径部22Mとの段差部に中径フランジ面22Mfが形成されている。
前側の大径フランジ面22Lfと後側の中径フランジ面22Mfとは小径部22Sを挟んで対向している。
【0031】
プランジャ20の前端の大径部22Lの外径Dが、プランジャボディ10の摺動孔11の内径Diより僅かに小さく、プランジャ20の大径部22Lがプランジャボディ10の摺動孔11の内周面に摺接してプランジャ20がプランジャボディ10の摺動孔11に嵌挿される。
なお、プランジャ20の大径部22Lの外周面と摺動孔11の内周面とは、その間に潤滑油が供給されて流体潤滑の下で摺接する。
【0032】
プランジャボディ10の摺動孔11にプランジャ20を嵌挿する際に、ボール40が介装される。
図8に示すように、プランジャボディ10を、前側を下にして鉛直方向に指向して立て、摺動孔11の上方開口からプランジャ20を下側にした底壁部21から嵌挿し、円筒部22の小径部22Sの上部が摺動孔11の上部開口端より上方に露出した状態で保持し、摺動孔11の内周面11sに刻設された3条の溝条13と同溝条13に対向する小径部22Sの外周面との間にボール40を摺動孔11の上部開口から挿入する。
【0033】
ボール40は、溝条13の最底部と対向する小径部22Sの外周面との距離に略等しい直径を有するもので、1本の溝条13に対して3個のボール40が嵌挿される。
図8に示すように、嵌挿されたボール40の最も下のボール40は、プランジャ20の大径部22Lの大径フランジ面22Lfに受け止められて保持され、残りの2個のボール40はその上に順次重なり軸方向(鉛直方向)に一列に並ぶ。
【0034】
各溝条13に3個ずつボール40を嵌挿した後、プランジャ20を摺動孔11内にさらに嵌挿して後端の中径部22Mが摺動孔11内に没すると、小径部22Sが完全に摺動孔11内に入り、プランジャボディ10を横にしても小径部22Sに嵌挿されたボール40は中径部22Mに妨げられて外部に落下することはない。
【0035】
そして、プランジャ20を摺動孔11内にさらに嵌挿していくと、図1に示すように、軸方向に3個並んだボール40がプランジャボディ10の溝条端面13aとプランジャ20の後端の中径部22Mの中径フランジ面22Mfとの間に挟まれてプランジャ20は停止し、これ以上は嵌挿できず、プランジャ20の抜け止めを構成している。
このプランジャ20の嵌挿が停止した状態で、プランジャ20の前端面はプランジャボディ10の前端開口面と同一面をなす(図1参照)。
【0036】
このように、プランジャボディ10の溝条端面13aとプランジャ20の中径フランジ面22Mfとの間にボール40が挟まれたときに、プランジャ20の前端面がプランジャボディ10のから突出しないので、組立て性がよい。
【0037】
こうしてプランジャボディ10の摺動孔11に嵌挿されたプランジャ20の円筒部22内に後方からコイル状のスプリング30が挿入され、スプリング30の端部にワッシャ50を当てスプリング30を圧縮しながら押し込み、サークリップ51をワッシャ50に当てプランジャボディ10の摺動孔11の環状内周溝14に係止してスプリング30の後端を固定し、圧縮されたスプリング30によりプランジャ20を前方に付勢する。
以上のように、本リリーフバルブ装置1は、ボール40を介装するにもかかわらず、組み付けが簡単にできる。
【0038】
図1は、プランジャ20の底壁部21に圧力が加わらない状態を示しており、スプリング30の付勢力によりプランジャ20が最も前方に位置して抜け止めされて停止しており、プランジャ20の底壁部21と大径部22Lがプランジャボディ10の前端開口を閉塞して、前端開口とリリーフ孔12,12との連通を断ち閉弁状態を示している。
このプランジャボディ10の前端開口を塞ぐプランジャ20の底壁部21の前面に、油圧が作用する。
【0039】
プランジャ20の底壁部21に所定圧以上の油圧が加わると、スプリング30の付勢力に抗してプランジャ20が後方に押されて摺動孔11内を後方に摺動し、図3に示すように、プランジャボディ10の前端開口とリリーフ孔12,12が連通して開弁状態となり、オイルをリリーフ孔12,12に逃がすことができる。
【0040】
以上のように作動する本リリーフバルブ装置1は、プランジャ20がプランジャボディ10の摺動孔11の内周面と摺接する大径部22Lと縮径した小径部22Sを備え、同小径部22Sとプランジャボディ10の摺動孔11の内周面11sとの間にボール40を介装したので、プランジャ20は大径部22Lのみが摺動孔11の内周面11sと摺接するとともに、長尺の小径部22Sが転動するボール40を介して相対移動自在に支持される。
【0041】
したがって、プランジャ20の大径部22Lによる摺動接触面積を小さくして金属すべり接触を起こす可能性を低くするとともに、ボール40の転がり接触により摩擦係数を極力小さくしてプランジャ20を円滑に摺動させることができ、摺動速度が遅くなることを抑えることができる。
【0042】
本リリーフバルブ装置1のプランジャ20は、大径部22Lが小径部22Sより軸方向の幅長が小さく形成されているので、プランジャ20の大径部22Lとプランジャボディ10の摺動孔11の内周面11sとの摺動接触面積を減らして金属すべり接触を起こす可能性を低くし、プランジャ20を円滑にかつ安定して摺動させることができる。
また、大径部22Lの軸方向の幅長を小さくすることで、プランジャ20の小型軽量化を図ることができる。
【0043】
プランジャ20は前端の大径部22Lのみが摺動孔11の内周面11sと摺接し、ボール40の介在により後端の中径部22Mは摺動孔11の内周面11sと接触せずにクリアランスを有するので、プランジャ20の姿勢が多少傾くことがあったとしてもクリアランスにより特に中径部22Mの外周端縁の接触が回避されるため、プランジャ20はその外径に対する軸方向の幅長の割合を大きくする必要がなく、よって安定した摺動性能を維持しながらプランジャ20の軸方向の幅長を縮小して小型化し、軽量化を図ることができる。
【0044】
ボール40がプランジャ20の軸方向に3個並んで設けられるので、プランジャ20の移動においてプランジャボディ10の摺動孔11の中心軸に対しプランジャ20の中心軸を同軸に維持することが容易にでき、姿勢を安定に保った状態でプランジャ20を円滑に摺動することができる。
ボール40を軸方向に2個並べて設けてもよいが、好ましくは3個以上並べる方がよい。
ボール40をプランジャ20の軸方向に3個以上設けることで、小径のボール40を用いてもプランジャ20の姿勢を安定に保つことができ、リリーフバルブ装置1の小型化を図ることができる。
【0045】
また、ボール40がプランジャ20の周方向に3箇所等間隔に設けられるので、必要最小限の支持箇所によりプランジャボディ10の摺動孔11の中心軸に対しプランジャ20の中心軸を同軸に維持することができ、部品点数を最小限に抑えることができる。
なお、ボール40がプランジャ20の周方向に4箇所以上等間隔に設けてもよい。
【0046】
プランジャボディ10の摺動孔11の内周面11sに、ボール40が転動可能に嵌合する軸方向に指向した溝条13が周方向に3条等間隔に形成されるので、周方向でのボール40の位置決めがなされ、安定してプランジャ20を移動自在に支持することができる。
【0047】
プランジャ20は、底壁部21側に大径部22Lが形成され、底壁部21と反対側に外径が大径部22Lより小さく小径部22Sより大きい中径部22Mが形成され、大径部22Lと中径部22Mとの間に小径部22Sが形成されており、一方プランジャボディ10の溝条13は、摺動孔11の内周面11sのプランジャ20の小径部22Sに常に対向する所要軸方向位置に形成された溝条端面13aから中径部22M側に延設され、溝条13に嵌合するボール40は、軸方向でプランジャボディ10の溝条端面13aとプランジャ20の中径部22Mの中径フランジ面22Mfとの間に介装される。
【0048】
したがって、プランジャ20にスプリング30の付勢力以外に外力が加わらないときに、スプリング30の付勢力により移動したプランジャ20は、その中径部22Mの中径フランジ面22Mfがプランジャボディ10の溝条端面13aとの間にボール40を挟んで停止させられ、プランジャ20の抜け止めとなっている。
そのため、別途抜け止めのための特別な部材を必要とせず、部品点数を少なく抑えることができる。
【0049】
前記特許文献1におけるリリーブバルブ装置は、リリーフ弁体(プランジャ)の底壁部が臨む本体部(プランジャボディ)の連結開口が、摺動孔より内径を縮小して形成されていて、この縮径された連結開口にリリーフ弁体が当接して抜け止めを構成している。
このような構造であると、リリーフ弁体に油圧が加わり、スプリングの付勢力に抗してリリーフ弁体が移動し連結開口が開こうとするとき、油圧が作用するリリーフ弁体の底壁部前面の作用面積が連結開口の開口面積から摺動孔の断面積に瞬時に拡大変化するので、所定圧で油圧を抜くようにスプリング等を調整するのが容易ではなかった。
【0050】
これに対して、本リリーブバルブ装置1は、プランジャ20の中径部22Mの中径フランジ面22Mfとプランジャボディ10の溝条端面13aとの間にボール40を挟んで抜け止めとしていて、プランジャ20の底壁部21に油圧が作用する面積は、常に変化しない構造としているので、所定圧で圧力を抜くようにスプリング等を設定することが容易にできる。
【0051】
また、プランジャの抜け止めに、プランジャボディの連結開口部に圧入ピンを直径方向に貫通させ、プランジャが当接して抜けないようにした構造のものもあるが、特別に圧入ピンを必要として部品点数が多く、組み付けも面倒となる。
これに対して、本リリーブバルブ装置1は、抜け止めのための特別の部品を必要とせず、組み付けも容易である。
【0052】
さらに、連結開口を縮径したり(特許文献1)、連結開口部に圧入ピンを設けたりすることは、そのための連結開口部をプランジャボディの軸方向端部に必要とするので、その分プランジャボディが軸方向に大きくなってしまうが、本リリーブバルブ装置1は、かかる連結開口部を必要としないので、プランジャボディを小型化することができる。
【0053】
本リリーブバルブ装置1を内燃機関の潤滑系のオイル通路に使用した例を、図9に図示し説明する。
内燃機関のクランクケース01の右側面にクラッチカバー02が締結され、クランクケース01とクラッチカバー02との間でポンプ駆動軸04がクランク軸03と平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
このポンプ駆動軸04のクランクケース01側端部にオイルポンプ05が設けられ、クラッチカバー02側にウォータポンプ09が設けられている。
オイルポンプ05とクラッチカバー02に突設されたオイルフィルタ06との間をオイル通路07が連結している。
【0054】
オイル通路07は、クランクケース01側でオイルポンプ05のポンプ室側面から左方向に延びたオイル通路07aから垂直に屈曲したオイル通路07bを経てさらに垂直に屈曲して右方向に延びるオイル通路07cが形成され、オイル通路07cはクラッチカバー02側のオイル通路07dに連通し、オイル通路07dの端部で垂直に分岐して一方の分岐通路07eがオイルフィルタ06に至り、他方の分岐通路07fがポンプ駆動軸04とオイル通路07dとの間に配置された本リリーフバルブ装置1に連通している。
【0055】
分岐通路07fは、左方に屈曲して内径を拡大してクラッチカバー02内に開口しており、同開口部にリリーフバルブ装置1のプランジャボディ10の前端部がシール部材55を介して嵌入される。
オイル通路07の油圧がプランジャ20の底壁部21にかかっており、同油圧が所定圧を越えると、スプリング30の付勢力に抗してプランジャ20が摺動孔11内を後方に摺動し、プランジャボディ10の前端開口とリリーフ孔12が連通して開弁状態となり、オイルをリリーフ孔12に逃がすことができる。
【0056】
本リリーフバルブ装置1は小型化されているため、図9に示すように、オイルポンプ05に近接して配置でき、しかもウォータポンプ09とオイルポンプ05の間に設けながらも、ウォータポンプ09とオイルポンプ05の共通のポンプ駆動軸04が長くなることも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態に係る閉弁状態のリリーフバルブ装置の縦断面図である。
【図2】同横断面図である。
【図3】開弁状態の同リリーフバルブ装置の縦断面図である。
【図4】プランジャボディの縦断面図である。
【図5】同プランジャボディの後面図(図4のV矢視図)である。
【図6】プランジャの縦断面図である。
【図7】同プランジャの後面図(図6のVII矢視図)である。
【図8】同リリーフバルブ装置の組み付け途中の分解断面図である。
【図9】内燃機関の潤滑オイル通路を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…リリーフバルブ装置、
10…プランジャボディ、11…摺動孔、12…リリーフ孔、13…溝条、13a…溝条端面、14…環状内周溝、15…環状外周溝、
20…プランジャ、21…底壁部、22…円筒部、22L…大径部、22Lf…大径フランジ面、22M…中径部、22Mf…中径フランジ面、22S…小径部、
30…スプリング、40…ボール、50…ワッシャ、51…サークリップ、55…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状のプランジャが円筒状のプランジャボディの内側の摺動孔に中心軸を同軸にして軸方向に摺動自在に嵌挿され、弾性部材により前記プランジャが閉弁方向に付勢され、油路の途中に設けられて前記プランジャの底面にかかる油圧が高まると前記弾性部材の付勢力に抗して前記プランジャを前記弾性部材側に移動させて開弁する弁装置において、
前記プランジャが前記摺動孔の内周面と摺接する大径部と縮径した小径部を備え、
前記小径部と前記摺動孔の内周面との間にボールを介装したことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記プランジャは前記大径部が前記小径部より軸方向の幅長が小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記ボールが前記プランジャの軸方向に少なくとも2個並んで設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の弁装置。
【請求項4】
前記ボールが前記プランジャの周方向に少なくとも3箇所等間隔に設けられることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の弁装置。
【請求項5】
前記プランジャボディの摺動孔の内周面に、前記ボールが転動可能に嵌合する軸方向に指向した溝条が周方向に少なくとも3条等間隔に形成されることを特徴とする請求項4記載の弁装置。
【請求項6】
前記プランジャは、底壁側に前記大径部が形成され、底壁と反対側に外径が前記大径部より小さく前記小径部より大きい中径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に前記小径部が形成され、
前記プランジャボディの溝条は、摺動孔の内周面の前記プランジャの小径部に常に対向する所要軸方向位置に形成された溝条端面から前記中径部側に延設され、
前記溝条に嵌合するボールは、軸方向で前記プランジャボディの溝条端面と前記プランジャの中径部のフランジ面との間に介装されることを特徴とする請求項1記載の弁装置。
【請求項7】
前記プランジャボディの前記溝条端面が形成される前記所要軸方向位置は、前記溝条端面と前記プランジャの中径部の前記フランジ面との間にボールが挟まれたときに、少なくとも前記プランジャの底面が前記プランジャボディから突出しないようにした軸方向位置であることを特徴とする請求項6記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−264523(P2009−264523A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116626(P2008−116626)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】