弁装置
【課題】弁軸4のエッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、ボールベアリング5の外、内輪17、18を同時圧入することなく弁装置を製造して、シール部材8と内輪18との摺動を回避できるようにする。
【解決手段】弁装置は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間にカラー26を備え、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。これにより、内輪18を弁軸4に対して圧入するとともにシール部材8およびカラー26を弁軸4に装着して軸アセンブリ50を組み立て、外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、エッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、外、内輪17、18を同時圧入することなく弁装置を製造することができる。
【解決手段】弁装置は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間にカラー26を備え、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。これにより、内輪18を弁軸4に対して圧入するとともにシール部材8およびカラー26を弁軸4に装着して軸アセンブリ50を組み立て、外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、エッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、外、内輪17、18を同時圧入することなく弁装置を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路の開度を弁体の回動により可変する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁装置では、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備えるものが公知であり、スロットルバルブや、タンブル・ジェネレータ・バルブ(以下、TGVと呼ぶ)のようなエンジンの吸排気流路に配される各種の弁による流路の開度操作に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来の弁装置によれば、軸方向にボールベアリング101とシール部材102とが隣り合っており、ボールベアリング101の内輪103は、弁軸104に圧入されて弁軸104とともに回転し、シール部材102は、弁ハウジング105に圧入され弁軸104に対して相対的に静止している。このため、内輪103とシール部材102とが当接した状態で弁ハウジング105に組み込まれると、シール部材102が内輪103との摺動により劣化してしまう。
【0004】
そこで、このような摺動劣化を回避するために、ボールベアリング101、シール部材102および弁軸104を弁ハウジング105に組み込む工程に関して種々の組み込みパターンが考えられている。
【0005】
例えば、図4に示すように、ボールベアリング101の内輪103を弁軸104に対して圧入し、ボールベアリング101および弁軸104を含んでなる軸アセンブリ106を組み立てるとともに、シール部材102を弁ハウジング105に対して圧入しておき、シール部材102を圧入した弁ハウジング105に対して、ボールベアリング101の外輪107を圧入することで、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける。
【0006】
しかし、図4に示すパターンによれば、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける際に、弁軸104によってシール部材102が破損する虞がある。
すなわち、弁軸104には、弁体(図示せず)を取り付けるために窪み108やスリット(図示せず)が設けられ、窪み108やスリットの端は不可避的にエッジ109を形成してしまう。このため、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける際に、エッジ109がシール部材102を通過することによりシール部材102の内周部分を傷付ける虞がある。
【0007】
このような弁軸104のエッジ109によるシール部材102の破損を回避するため、図5に示すように、弁ハウジング105に弁軸104を装着しておき、弁軸104を装着した弁ハウジング105に対してシール部材102を圧入し、さらに、ボールベアリング101の内輪103を弁軸104に対して圧入するとともにボールベアリング101の外輪107を弁ハウジング105に対して圧入するパターンが考えられている。
【0008】
しかし、図5に示すパターンによれば、ボールベアリング101の内輪103および外輪107を、それぞれ弁軸104、弁ハウジング105に対して同時に圧入するため、内輪103、外輪107の圧入荷重を個々に管理できない。このため、エッジ109によるシール部材102の破損を回避することができるものの、ボールベアリング101や弁軸104の圧入が不十分となって抜け落ちの虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−023860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造して、シール部材と内輪との摺動を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の弁装置は、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備える。
【0012】
ボールベアリングは、外輪が弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が弁軸に対して圧入される。また、シール部材は、軸方向に関して流体流路とボールベアリングとの間に配され、弁ハウジングに対して圧入されて弁軸の外周面に摺接することで流体流路をシールする
そして、弁装置は、軸方向に関してシール部材とボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、カラーは、内輪との当接を回避しながら外輪およびシール部材に当接できる形状に設けられ、内輪とシール部材との当接を防止する。
【0013】
これにより、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともにシール部材を弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリングおよびシール部材を含んでなる軸アセンブリを組み立て、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造することができる。
【0014】
さらに、軸アセンブリを組み立てる際にシール部材とボールベアリングとの間にカラーを配して弁軸に装着しておくことで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付けるときに懸念される内輪とシール部材との当接を確実に回避できる。
【0015】
以上により、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造して、シール部材と内輪との摺動を回避することができる。
【0016】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の弁装置によれば、カラーは、弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が弁ハウジングに径方向に圧接している。
これにより、カラーの内周部は、弁軸の外周面との間に径方向のクリアランスを形成できる。このため、カラーと弁軸との摺動を回避することができる。
【0017】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の弁装置によれば、カラーの外周面は、弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されている。
これにより、カラーの弁ハウジングに対する圧入が容易になる。
【0018】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の弁装置によれば、弁ハウジングは、カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、およびシール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、第1被圧接面は第2被圧接面よりも外周側に設けられ、第1被圧接面と第2被圧接面との間には、カラーと軸方向に対向する段面が形成されている。そして、カラーは、シール部材に当接する突起を有し、突起により段面との間に軸方向のクリアランスを形成している。
【0019】
これにより、各部材の軸方向に関する寸法公差を、カラーと段面との間の軸方向のクリアランスにより吸収することができる。このため、軸方向に関する寸法公差を吸収できずに、例えば、カラーの内周部が弁軸の外周面に摺接してしまう事態を回避できる。また、突起によりシール部材を押圧することができるので、シール部材がカラーの方に向かって飛び出すのを阻止することができる。このため、シール部材の外周面と第2被圧接面との圧接面積の低下を防止してシール能力の低減を回避できる。
【0020】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の弁装置の製造方法は、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともに、シール部材およびカラーを弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリング、シール部材およびカラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備える。
これにより、請求項1の手段と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は弁装置の全体図であり、(b)は(a)の部分拡大図である(実施例)。
【図2】(a)は軸アセンブリの全体図であり、(b)は(a)の部分拡大図であり、(c)はカラーの断面図である(実施例)。
【図3】(a)は第1工程の説明図であり、(b)は第2工程の説明図である(実施例)。
【図4】(a)はボールベアリングの弁軸への圧入による軸アセンブリの組立てを示す説明図であり、(b)はシール部材の弁ハウジングへの圧入を示す説明図であり、(c)は軸アセンブリの弁ハウジングへの組付けを示す説明図である(従来例)。
【図5】(a)は弁軸の弁ハウジングへの装着を示す説明図であり、(b)はシール部材の弁ハウジングへの圧入を示す説明図であり、(c)はボールベアリングの弁軸および弁ハウジングへの圧入を示す説明図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の弁装置は、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備える。
【0023】
ボールベアリングは、外輪が弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が弁軸に対して圧入される。また、シール部材は、軸方向に関して流体流路とボールベアリングとの間に配され、弁ハウジングに対して圧入されて弁軸の外周面に摺接することで流体流路をシールする。
そして、弁装置は、軸方向に関してシール部材とボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、カラーは、内輪との当接を回避しながら外輪およびシール部材に当接できる形状に設けられ、内輪とシール部材との当接を防止する。
【0024】
また、カラーは、弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が弁ハウジングに径方向に圧接している。
さらに、カラーの外周面は、弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されている。
【0025】
また、弁ハウジングは、カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、およびシール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、第1被圧接面は第2被圧接面よりも外周側に設けられ、第1被圧接面と第2被圧接面との間には、カラーと軸方向に対向する段面が形成されている。そして、カラーは、シール部材に当接する突起を有し、突起により段面との間に軸方向のクリアランスを形成している。
【0026】
また、実施形態の弁装置の製造方法は、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともに、シール部材およびカラーを弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリング、シール部材およびカラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備える。
【実施例】
【0027】
〔実施例の構成〕
実施例の弁装置1の構成を、図面に基づいて説明する。
弁装置1は、流体流路の開度を弁体2の回動により可変するものであり、例えば、エンジン(図示せず)のシリンダ内でタンブルを発生させるためのタンブル・ジェネレータ・バルブ(TGV)に適用され、エンジンへの吸気流路に組み込まれてタンブル発生用の流路(以下、「タンブル流路3」と呼ぶ)の開度操作に利用されている。
【0028】
この弁装置1は、図1、図2に示すように、タンブル流路3の開度を可変する弁体2と、弁体2を保持して回動する弁軸4と、弁軸4を軸受けするボールベアリング5と、ボールベアリング5を保持するとともにタンブル流路3の一部を形成する弁ハウジング6と、弁ハウジング6に保持されてタンブル流路3をボールベアリング5による軸受け領域7からシールするシール部材8とを備える。
【0029】
弁軸4には、弁体2を取り付けるための窪み12が設けられ、窪み12の部分にはネジ穴13が貫通している。そして、弁体2は、ネジ締結により弁軸4に取り付けられている。また、窪み12の端はエッジ14を形成する。なお、弁軸4は、周知の減速機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)の出力が伝達され、モータの出力により駆動されて回動する。
【0030】
ボールベアリング5は、ボール16を介して外輪17と内輪18とが相対的に回動することができる周知の構造を有するものであり、外輪17が弁ハウジング6に対して圧入されるとともに内輪18が弁軸4に対して圧入されている。また、外輪17と内輪18との間には、グリース等の潤滑剤が充填され、潤滑剤は、シール板19によって流出が抑制されている。
【0031】
シール部材8は、例えば、金属環22を内蔵するゴム製のオイルシールであって周知の構造を有しており、内周側に2つの環状のシールリップ23を有する。また、シール部材8は、弁ハウジング6に対して圧入され、軸方向に関してタンブル流路3とボールベアリング5との間に配される。そして、シールリップ23が弁軸4の外周面24に摺接することで、タンブル流路3が軸受け領域7に対してシールされる。
【0032】
すなわち、シール部材8は、エンジンからの吹返し燃料の飛沫がタンブル流路3から軸受け領域7の方に達して外気に放出してしまうのを阻止したり、吸入負圧により軸受け領域7を介して外気がタンブル流路3に漏れ込むのを阻止したりすることができる。
なお、シール部材8は、ボールベアリング5よりも径小である。
【0033】
〔実施例の特徴〕
実施例の弁装置1の特徴を、図1〜図3を用いて説明する。
弁装置は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間に、ボールベアリング5と略同一径のカラー26を備える。
【0034】
また、弁ハウジング6は、弁軸4の軸受け領域7を形成する第1圧入穴27、タンブル流路3を軸受け領域7からシールするためのシール領域28を形成する第2圧入穴29、および、第2圧入穴29とタンブル流路3とを連通する貫通穴30を同軸的に有し、弁軸4は、第1圧入穴27、第2圧入穴29、貫通穴30およびタンブル流路3を貫通するように配されている。
【0035】
ここで、第2圧入穴29は、第1圧入穴27よりもタンブル流路3の側に設けられ、第1圧入穴27よりも径小である。そして、第1圧入穴27にボールベアリング5およびカラー26が圧入されて軸受け領域7が形成され、第2圧入穴29にシール部材8が圧入されてシール領域28が形成される。
【0036】
すなわち、第1圧入穴27を形成する内周面は、カラー26の外周面および外輪17により径方向に圧接される第1被圧接面33であり、第2圧入穴29を形成する内周面は、シール部材8の外周面34により径方向に圧接される第2被圧接面35である。そして、第2圧入穴29が第1圧入穴27よりも径小であることから、第1被圧接面33は第2被圧接面35よりも外周側にあり、第1被圧接面33と第2被圧接面35との間には、円環状の第1段面36が形成されている。
【0037】
カラー26は、例えば、PBTやPET等のポリエステル樹脂、または、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂を素材として、弁軸4が貫通する空洞38を有するように円環状に成形されている(図2(c)参照)。そして、カラー26は、弁ハウジング6に対して圧入される円環状の本体39と、本体39の圧入方向の先端に設けられ円環状の突起40とを有する。
【0038】
本体39は、後端部分の外周面が円筒状に設けられて第1被圧接面33に圧接する圧接面41をなし、先端部分の外周面が先端に向かってテーパ状に縮径するテーパ面42をなす。
ここで、空洞38を形成する本体39の内周面43は、弁軸4の外周面24との間に径方向のクリアランスaを形成するように設けられている。また。空洞38の後端部は拡径して本体39の後端面44に開口しており、後端面44は、空洞38の拡径開口構造により、内輪18との当接を回避しながら外輪17に当接することができる。
【0039】
突起40は、第2圧入穴29よりも径小となるように、かつ、弁軸4の外周面24に摺接しないように、本体39の先端面45から先端に向かって突出している。そして、突起40は、先端に向かう突出構造によりシール部材8の後端に当接する。
以上により、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。
【0040】
また、突起40は、シール部材8の後端に当接することで、先端面45と第1段面36との間に軸方向のクリアランスbを形成している。
なお、シール部材8は、第2被圧接面35の先端側にある第2段面46との間に、軸方向のクリアランスcを形成するように圧入される。また、先端面45では、空洞38が拡径することなく開口している。
【0041】
〔実施例の製造方法〕
実施例の弁装置1の製造方法を、図3を用いて説明する。
弁装置1の製造方法は、弁軸4、ボールベアリング5、シール部材8およびカラー26を含んでなる軸アセンブリ50を組み立てる第1工程と、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付ける第2工程とを備える。
【0042】
ここで、第1工程では、ボールベアリング5の内輪18を弁軸4に対して圧入するとともに、シール部材8およびカラー26を弁軸4に装着することで軸アセンブリ50を組み立てる。また、第2工程では、軸アセンブリ50を構成するボールベアリング5の外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付ける。
【0043】
〔実施例の効果〕
実施例の弁装置1は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間に配されるカラー26を備え、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。
【0044】
これにより、ボールベアリング5の内輪18を弁軸4に対して圧入するとともにシール部材8を弁軸4に装着して、弁軸4、ボールベアリング5およびシール部材8を含んでなる軸アセンブリ50を組み立て、ボールベアリング5の外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、弁軸4のエッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、ボールベアリング5の内輪18および外輪17を同時圧入することなく弁装置1を製造することができる。
【0045】
さらに、軸アセンブリ50を組み立てる際にシール部材8とボールベアリング5との間にカラー26を配して弁軸4に装着しておくことで、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付けるときに懸念される内輪18とシール部材8との当接を確実に回避できる。
以上により、弁軸4のエッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、ボールベアリング5の内輪18および外輪17を同時圧入することなく弁装置1を製造して、シール部材8と内輪18との摺動を回避することができる。
【0046】
また、カラー26は、弁ハウジング6に対して圧入され、外周面の一部である圧接面41が弁ハウジング6に径方向に圧接している。
これにより、カラー26の内周部は、弁軸4の外周面24との間に径方向のクリアランスaを形成できる。このため、カラー26と弁軸4との摺動を回避することができる。
【0047】
また、カラー26の外周面は、弁ハウジング6に対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されてテーパ面42をなす。
これにより、カラー26の弁ハウジング6に対する圧入が容易になる。
【0048】
また、弁ハウジング6は、カラー26の圧接面41により径方向に圧接される第1被圧接面33、およびシール部材8の外周面34により径方向に圧接される第2被圧接面35を有し、第1被圧接面33は第2被圧接面35よりも外周側に設けられ、第1被圧接面33と第2被圧接面35との間には、カラー26と軸方向に対向する第1段面36が形成されている。そして、カラー26は、シール部材8に当接する突起40を有し、突起40により第1段面36と先端面45との間に軸方向のクリアランスbを形成している。
【0049】
これにより、各部材の軸方向に関する寸法公差をクリアランスbにより吸収することができる。このため、軸方向に関する寸法公差を吸収できずに、例えば、カラー26の内周部が弁軸4の外周面24に摺接してしまう事態を回避できる。また、突起40によりシール部材8を押圧することができるので、シール部材8がカラー26の方に向かって飛び出すのを阻止することができる。このため、シール部材8の外周面34と第2被圧接面35との圧接面積の低下を防止してシール能力の低減を回避できる。
【0050】
〔変形例〕
実施例の弁装置1は、TGVに適用されていたが、スロットルバルブ等のエンジンの吸排気流路に配される他の弁に適用してもよく、エンジンの吸排気流路に配される弁以外の弁に適用してもよい。
また、カラー26の形状および寸法、シール部材8の形状および寸法、ならびに、ボールベアリング5の形状および寸法等は、実施例の態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 弁装置
2 弁体
3 タンブル流路
4 弁軸
5 ボールベアリング
6 弁ハウジング
7 軸受け領域
8 シール部材
17 外輪
18 内輪
24 外周面(弁軸の外周面)
26 カラー
33 第1被圧接面
34 外周面(シール部材の外周面)
35 第2被圧接面
36 第1段面
40 突起
41 圧接面(カラーの外周面)
42 テーパ面(カラーの外周面)
50 軸アセンブリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路の開度を弁体の回動により可変する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁装置では、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備えるものが公知であり、スロットルバルブや、タンブル・ジェネレータ・バルブ(以下、TGVと呼ぶ)のようなエンジンの吸排気流路に配される各種の弁による流路の開度操作に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来の弁装置によれば、軸方向にボールベアリング101とシール部材102とが隣り合っており、ボールベアリング101の内輪103は、弁軸104に圧入されて弁軸104とともに回転し、シール部材102は、弁ハウジング105に圧入され弁軸104に対して相対的に静止している。このため、内輪103とシール部材102とが当接した状態で弁ハウジング105に組み込まれると、シール部材102が内輪103との摺動により劣化してしまう。
【0004】
そこで、このような摺動劣化を回避するために、ボールベアリング101、シール部材102および弁軸104を弁ハウジング105に組み込む工程に関して種々の組み込みパターンが考えられている。
【0005】
例えば、図4に示すように、ボールベアリング101の内輪103を弁軸104に対して圧入し、ボールベアリング101および弁軸104を含んでなる軸アセンブリ106を組み立てるとともに、シール部材102を弁ハウジング105に対して圧入しておき、シール部材102を圧入した弁ハウジング105に対して、ボールベアリング101の外輪107を圧入することで、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける。
【0006】
しかし、図4に示すパターンによれば、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける際に、弁軸104によってシール部材102が破損する虞がある。
すなわち、弁軸104には、弁体(図示せず)を取り付けるために窪み108やスリット(図示せず)が設けられ、窪み108やスリットの端は不可避的にエッジ109を形成してしまう。このため、軸アセンブリ106を弁ハウジング105に組み付ける際に、エッジ109がシール部材102を通過することによりシール部材102の内周部分を傷付ける虞がある。
【0007】
このような弁軸104のエッジ109によるシール部材102の破損を回避するため、図5に示すように、弁ハウジング105に弁軸104を装着しておき、弁軸104を装着した弁ハウジング105に対してシール部材102を圧入し、さらに、ボールベアリング101の内輪103を弁軸104に対して圧入するとともにボールベアリング101の外輪107を弁ハウジング105に対して圧入するパターンが考えられている。
【0008】
しかし、図5に示すパターンによれば、ボールベアリング101の内輪103および外輪107を、それぞれ弁軸104、弁ハウジング105に対して同時に圧入するため、内輪103、外輪107の圧入荷重を個々に管理できない。このため、エッジ109によるシール部材102の破損を回避することができるものの、ボールベアリング101や弁軸104の圧入が不十分となって抜け落ちの虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−023860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造して、シール部材と内輪との摺動を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の弁装置は、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備える。
【0012】
ボールベアリングは、外輪が弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が弁軸に対して圧入される。また、シール部材は、軸方向に関して流体流路とボールベアリングとの間に配され、弁ハウジングに対して圧入されて弁軸の外周面に摺接することで流体流路をシールする
そして、弁装置は、軸方向に関してシール部材とボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、カラーは、内輪との当接を回避しながら外輪およびシール部材に当接できる形状に設けられ、内輪とシール部材との当接を防止する。
【0013】
これにより、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともにシール部材を弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリングおよびシール部材を含んでなる軸アセンブリを組み立て、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造することができる。
【0014】
さらに、軸アセンブリを組み立てる際にシール部材とボールベアリングとの間にカラーを配して弁軸に装着しておくことで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付けるときに懸念される内輪とシール部材との当接を確実に回避できる。
【0015】
以上により、弁軸のエッジによりシール部材を傷つけることなく、また、ボールベアリングの内輪および外輪を同時圧入することなく弁装置を製造して、シール部材と内輪との摺動を回避することができる。
【0016】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の弁装置によれば、カラーは、弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が弁ハウジングに径方向に圧接している。
これにより、カラーの内周部は、弁軸の外周面との間に径方向のクリアランスを形成できる。このため、カラーと弁軸との摺動を回避することができる。
【0017】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の弁装置によれば、カラーの外周面は、弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されている。
これにより、カラーの弁ハウジングに対する圧入が容易になる。
【0018】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の弁装置によれば、弁ハウジングは、カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、およびシール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、第1被圧接面は第2被圧接面よりも外周側に設けられ、第1被圧接面と第2被圧接面との間には、カラーと軸方向に対向する段面が形成されている。そして、カラーは、シール部材に当接する突起を有し、突起により段面との間に軸方向のクリアランスを形成している。
【0019】
これにより、各部材の軸方向に関する寸法公差を、カラーと段面との間の軸方向のクリアランスにより吸収することができる。このため、軸方向に関する寸法公差を吸収できずに、例えば、カラーの内周部が弁軸の外周面に摺接してしまう事態を回避できる。また、突起によりシール部材を押圧することができるので、シール部材がカラーの方に向かって飛び出すのを阻止することができる。このため、シール部材の外周面と第2被圧接面との圧接面積の低下を防止してシール能力の低減を回避できる。
【0020】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の弁装置の製造方法は、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともに、シール部材およびカラーを弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリング、シール部材およびカラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備える。
これにより、請求項1の手段と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は弁装置の全体図であり、(b)は(a)の部分拡大図である(実施例)。
【図2】(a)は軸アセンブリの全体図であり、(b)は(a)の部分拡大図であり、(c)はカラーの断面図である(実施例)。
【図3】(a)は第1工程の説明図であり、(b)は第2工程の説明図である(実施例)。
【図4】(a)はボールベアリングの弁軸への圧入による軸アセンブリの組立てを示す説明図であり、(b)はシール部材の弁ハウジングへの圧入を示す説明図であり、(c)は軸アセンブリの弁ハウジングへの組付けを示す説明図である(従来例)。
【図5】(a)は弁軸の弁ハウジングへの装着を示す説明図であり、(b)はシール部材の弁ハウジングへの圧入を示す説明図であり、(c)はボールベアリングの弁軸および弁ハウジングへの圧入を示す説明図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の弁装置は、流体流路の開度を可変する弁体と、弁体を保持して回動する弁軸と、弁軸を軸受けするボールベアリングと、ボールベアリングを保持するとともに流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、弁ハウジングに保持されて流体流路をボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備える。
【0023】
ボールベアリングは、外輪が弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が弁軸に対して圧入される。また、シール部材は、軸方向に関して流体流路とボールベアリングとの間に配され、弁ハウジングに対して圧入されて弁軸の外周面に摺接することで流体流路をシールする。
そして、弁装置は、軸方向に関してシール部材とボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、カラーは、内輪との当接を回避しながら外輪およびシール部材に当接できる形状に設けられ、内輪とシール部材との当接を防止する。
【0024】
また、カラーは、弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が弁ハウジングに径方向に圧接している。
さらに、カラーの外周面は、弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されている。
【0025】
また、弁ハウジングは、カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、およびシール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、第1被圧接面は第2被圧接面よりも外周側に設けられ、第1被圧接面と第2被圧接面との間には、カラーと軸方向に対向する段面が形成されている。そして、カラーは、シール部材に当接する突起を有し、突起により段面との間に軸方向のクリアランスを形成している。
【0026】
また、実施形態の弁装置の製造方法は、ボールベアリングの内輪を弁軸に対して圧入するとともに、シール部材およびカラーを弁軸に装着して、弁軸、ボールベアリング、シール部材およびカラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、ボールベアリングの外輪を弁ハウジングに対して圧入することで、軸アセンブリを弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備える。
【実施例】
【0027】
〔実施例の構成〕
実施例の弁装置1の構成を、図面に基づいて説明する。
弁装置1は、流体流路の開度を弁体2の回動により可変するものであり、例えば、エンジン(図示せず)のシリンダ内でタンブルを発生させるためのタンブル・ジェネレータ・バルブ(TGV)に適用され、エンジンへの吸気流路に組み込まれてタンブル発生用の流路(以下、「タンブル流路3」と呼ぶ)の開度操作に利用されている。
【0028】
この弁装置1は、図1、図2に示すように、タンブル流路3の開度を可変する弁体2と、弁体2を保持して回動する弁軸4と、弁軸4を軸受けするボールベアリング5と、ボールベアリング5を保持するとともにタンブル流路3の一部を形成する弁ハウジング6と、弁ハウジング6に保持されてタンブル流路3をボールベアリング5による軸受け領域7からシールするシール部材8とを備える。
【0029】
弁軸4には、弁体2を取り付けるための窪み12が設けられ、窪み12の部分にはネジ穴13が貫通している。そして、弁体2は、ネジ締結により弁軸4に取り付けられている。また、窪み12の端はエッジ14を形成する。なお、弁軸4は、周知の減速機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)の出力が伝達され、モータの出力により駆動されて回動する。
【0030】
ボールベアリング5は、ボール16を介して外輪17と内輪18とが相対的に回動することができる周知の構造を有するものであり、外輪17が弁ハウジング6に対して圧入されるとともに内輪18が弁軸4に対して圧入されている。また、外輪17と内輪18との間には、グリース等の潤滑剤が充填され、潤滑剤は、シール板19によって流出が抑制されている。
【0031】
シール部材8は、例えば、金属環22を内蔵するゴム製のオイルシールであって周知の構造を有しており、内周側に2つの環状のシールリップ23を有する。また、シール部材8は、弁ハウジング6に対して圧入され、軸方向に関してタンブル流路3とボールベアリング5との間に配される。そして、シールリップ23が弁軸4の外周面24に摺接することで、タンブル流路3が軸受け領域7に対してシールされる。
【0032】
すなわち、シール部材8は、エンジンからの吹返し燃料の飛沫がタンブル流路3から軸受け領域7の方に達して外気に放出してしまうのを阻止したり、吸入負圧により軸受け領域7を介して外気がタンブル流路3に漏れ込むのを阻止したりすることができる。
なお、シール部材8は、ボールベアリング5よりも径小である。
【0033】
〔実施例の特徴〕
実施例の弁装置1の特徴を、図1〜図3を用いて説明する。
弁装置は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間に、ボールベアリング5と略同一径のカラー26を備える。
【0034】
また、弁ハウジング6は、弁軸4の軸受け領域7を形成する第1圧入穴27、タンブル流路3を軸受け領域7からシールするためのシール領域28を形成する第2圧入穴29、および、第2圧入穴29とタンブル流路3とを連通する貫通穴30を同軸的に有し、弁軸4は、第1圧入穴27、第2圧入穴29、貫通穴30およびタンブル流路3を貫通するように配されている。
【0035】
ここで、第2圧入穴29は、第1圧入穴27よりもタンブル流路3の側に設けられ、第1圧入穴27よりも径小である。そして、第1圧入穴27にボールベアリング5およびカラー26が圧入されて軸受け領域7が形成され、第2圧入穴29にシール部材8が圧入されてシール領域28が形成される。
【0036】
すなわち、第1圧入穴27を形成する内周面は、カラー26の外周面および外輪17により径方向に圧接される第1被圧接面33であり、第2圧入穴29を形成する内周面は、シール部材8の外周面34により径方向に圧接される第2被圧接面35である。そして、第2圧入穴29が第1圧入穴27よりも径小であることから、第1被圧接面33は第2被圧接面35よりも外周側にあり、第1被圧接面33と第2被圧接面35との間には、円環状の第1段面36が形成されている。
【0037】
カラー26は、例えば、PBTやPET等のポリエステル樹脂、または、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂を素材として、弁軸4が貫通する空洞38を有するように円環状に成形されている(図2(c)参照)。そして、カラー26は、弁ハウジング6に対して圧入される円環状の本体39と、本体39の圧入方向の先端に設けられ円環状の突起40とを有する。
【0038】
本体39は、後端部分の外周面が円筒状に設けられて第1被圧接面33に圧接する圧接面41をなし、先端部分の外周面が先端に向かってテーパ状に縮径するテーパ面42をなす。
ここで、空洞38を形成する本体39の内周面43は、弁軸4の外周面24との間に径方向のクリアランスaを形成するように設けられている。また。空洞38の後端部は拡径して本体39の後端面44に開口しており、後端面44は、空洞38の拡径開口構造により、内輪18との当接を回避しながら外輪17に当接することができる。
【0039】
突起40は、第2圧入穴29よりも径小となるように、かつ、弁軸4の外周面24に摺接しないように、本体39の先端面45から先端に向かって突出している。そして、突起40は、先端に向かう突出構造によりシール部材8の後端に当接する。
以上により、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。
【0040】
また、突起40は、シール部材8の後端に当接することで、先端面45と第1段面36との間に軸方向のクリアランスbを形成している。
なお、シール部材8は、第2被圧接面35の先端側にある第2段面46との間に、軸方向のクリアランスcを形成するように圧入される。また、先端面45では、空洞38が拡径することなく開口している。
【0041】
〔実施例の製造方法〕
実施例の弁装置1の製造方法を、図3を用いて説明する。
弁装置1の製造方法は、弁軸4、ボールベアリング5、シール部材8およびカラー26を含んでなる軸アセンブリ50を組み立てる第1工程と、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付ける第2工程とを備える。
【0042】
ここで、第1工程では、ボールベアリング5の内輪18を弁軸4に対して圧入するとともに、シール部材8およびカラー26を弁軸4に装着することで軸アセンブリ50を組み立てる。また、第2工程では、軸アセンブリ50を構成するボールベアリング5の外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付ける。
【0043】
〔実施例の効果〕
実施例の弁装置1は、軸方向に関してシール部材8とボールベアリング5との間に配されるカラー26を備え、カラー26は、内輪18との当接を回避しながら外輪17およびシール部材8に当接できる形状に設けられ、内輪18とシール部材8との当接を防止する。
【0044】
これにより、ボールベアリング5の内輪18を弁軸4に対して圧入するとともにシール部材8を弁軸4に装着して、弁軸4、ボールベアリング5およびシール部材8を含んでなる軸アセンブリ50を組み立て、ボールベアリング5の外輪17を弁ハウジング6に対して圧入することで、弁軸4のエッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、ボールベアリング5の内輪18および外輪17を同時圧入することなく弁装置1を製造することができる。
【0045】
さらに、軸アセンブリ50を組み立てる際にシール部材8とボールベアリング5との間にカラー26を配して弁軸4に装着しておくことで、軸アセンブリ50を弁ハウジング6に組み付けるときに懸念される内輪18とシール部材8との当接を確実に回避できる。
以上により、弁軸4のエッジ14によりシール部材8を傷つけることなく、また、ボールベアリング5の内輪18および外輪17を同時圧入することなく弁装置1を製造して、シール部材8と内輪18との摺動を回避することができる。
【0046】
また、カラー26は、弁ハウジング6に対して圧入され、外周面の一部である圧接面41が弁ハウジング6に径方向に圧接している。
これにより、カラー26の内周部は、弁軸4の外周面24との間に径方向のクリアランスaを形成できる。このため、カラー26と弁軸4との摺動を回避することができる。
【0047】
また、カラー26の外周面は、弁ハウジング6に対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されてテーパ面42をなす。
これにより、カラー26の弁ハウジング6に対する圧入が容易になる。
【0048】
また、弁ハウジング6は、カラー26の圧接面41により径方向に圧接される第1被圧接面33、およびシール部材8の外周面34により径方向に圧接される第2被圧接面35を有し、第1被圧接面33は第2被圧接面35よりも外周側に設けられ、第1被圧接面33と第2被圧接面35との間には、カラー26と軸方向に対向する第1段面36が形成されている。そして、カラー26は、シール部材8に当接する突起40を有し、突起40により第1段面36と先端面45との間に軸方向のクリアランスbを形成している。
【0049】
これにより、各部材の軸方向に関する寸法公差をクリアランスbにより吸収することができる。このため、軸方向に関する寸法公差を吸収できずに、例えば、カラー26の内周部が弁軸4の外周面24に摺接してしまう事態を回避できる。また、突起40によりシール部材8を押圧することができるので、シール部材8がカラー26の方に向かって飛び出すのを阻止することができる。このため、シール部材8の外周面34と第2被圧接面35との圧接面積の低下を防止してシール能力の低減を回避できる。
【0050】
〔変形例〕
実施例の弁装置1は、TGVに適用されていたが、スロットルバルブ等のエンジンの吸排気流路に配される他の弁に適用してもよく、エンジンの吸排気流路に配される弁以外の弁に適用してもよい。
また、カラー26の形状および寸法、シール部材8の形状および寸法、ならびに、ボールベアリング5の形状および寸法等は、実施例の態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 弁装置
2 弁体
3 タンブル流路
4 弁軸
5 ボールベアリング
6 弁ハウジング
7 軸受け領域
8 シール部材
17 外輪
18 内輪
24 外周面(弁軸の外周面)
26 カラー
33 第1被圧接面
34 外周面(シール部材の外周面)
35 第2被圧接面
36 第1段面
40 突起
41 圧接面(カラーの外周面)
42 テーパ面(カラーの外周面)
50 軸アセンブリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路の開度を可変する弁体と、この弁体を保持して回動する弁軸と、この弁軸を軸受けするボールベアリングと、このボールベアリングを保持するとともに前記流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、前記弁ハウジングに保持されて前記流体流路を前記ボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備え
前記ボールベアリングは、外輪が前記弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が前記弁軸に対して圧入され、
前記シール部材は、軸方向に関して前記流体流路と前記ボールベアリングとの間に配され、前記弁ハウジングに対して圧入されて前記弁軸の外周面に摺接することで前記流体流路をシールする弁装置において、
軸方向に関して前記シール部材と前記ボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、
このカラーは、前記内輪との当接を回避しながら前記外輪および前記シール部材に当接できる形状に設けられ、前記内輪と前記シール部材との当接を防止することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記カラーは、前記弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が前記弁ハウジングに径方向に圧接していることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
前記カラーの外周面は、前記弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の弁装置において、
前記弁ハウジングは、前記カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、および前記シール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、
前記第1被圧接面は前記第2被圧接面よりも外周側に設けられ、前記第1被圧接面と前記第2被圧接面との間には、前記カラーと軸方向に対向する段面が形成され、
前記カラーは、前記シール部材に当接する突起を有し、この突起により前記段面との間に軸方向のクリアランスを形成していることを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の弁装置の製造方法において、
前記ボールベアリングの前記内輪を前記弁軸に対して圧入するとともに、前記シール部材および前記カラーを前記弁軸に装着して、前記弁軸、前記ボールベアリング、前記シール部材および前記カラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、
前記ボールベアリングの前記外輪を前記弁ハウジングに対して圧入することで、前記軸アセンブリを前記弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備えることを特徴とする弁装置の製造方法。
【請求項1】
流体流路の開度を可変する弁体と、この弁体を保持して回動する弁軸と、この弁軸を軸受けするボールベアリングと、このボールベアリングを保持するとともに前記流体流路の一部を形成する弁ハウジングと、前記弁ハウジングに保持されて前記流体流路を前記ボールベアリングによる軸受け領域からシールするシール部材とを備え
前記ボールベアリングは、外輪が前記弁ハウジングに対して圧入されるとともに内輪が前記弁軸に対して圧入され、
前記シール部材は、軸方向に関して前記流体流路と前記ボールベアリングとの間に配され、前記弁ハウジングに対して圧入されて前記弁軸の外周面に摺接することで前記流体流路をシールする弁装置において、
軸方向に関して前記シール部材と前記ボールベアリングとの間に配されるカラーを備え、
このカラーは、前記内輪との当接を回避しながら前記外輪および前記シール部材に当接できる形状に設けられ、前記内輪と前記シール部材との当接を防止することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記カラーは、前記弁ハウジングに対して圧入され、自身の外周面が前記弁ハウジングに径方向に圧接していることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
前記カラーの外周面は、前記弁ハウジングに対する圧入方向の先端部分においてテーパ状に形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の弁装置において、
前記弁ハウジングは、前記カラーの外周面により径方向に圧接される第1被圧接面、および前記シール部材の外周面により径方向に圧接される第2被圧接面を有し、
前記第1被圧接面は前記第2被圧接面よりも外周側に設けられ、前記第1被圧接面と前記第2被圧接面との間には、前記カラーと軸方向に対向する段面が形成され、
前記カラーは、前記シール部材に当接する突起を有し、この突起により前記段面との間に軸方向のクリアランスを形成していることを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の弁装置の製造方法において、
前記ボールベアリングの前記内輪を前記弁軸に対して圧入するとともに、前記シール部材および前記カラーを前記弁軸に装着して、前記弁軸、前記ボールベアリング、前記シール部材および前記カラーを含んでなる軸アセンブリを組み立てる第1工程と、
前記ボールベアリングの前記外輪を前記弁ハウジングに対して圧入することで、前記軸アセンブリを前記弁ハウジングに組み付ける第2工程とを備えることを特徴とする弁装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2010−265943(P2010−265943A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116153(P2009−116153)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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