説明

引戸の跳ね上げ抑制部材

【課題】 鴨居70の案内溝71の溝底と引戸90の戸首部材20との間の隙間を埋める跳ね上げ抑制部材1の現地施工の施工性を向上させる。
【解決手段】鴨居70と、この鴨居70の案内溝71に案内される引戸90の戸首部材20との間の隙間を埋めるための跳ね上げ抑制部材1であり、案内溝71の溝底に固定される取り付けプレート2と、この取り付けプレート2に着脱可能に積層される複数枚の調整プレート3と、取り付けプレート2および調整プレート3間並びに各調整プレート3間を互いに着脱可能に結合する結合構造4とを備えている。跳ね上げ抑制部材1は、スライドアシスト装置10によるアシスト長さよりも長く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸のスライドアシスト装置によるアシスト動作開始時の引戸の跳ね上げを抑制する引戸の跳ね上げ抑制部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているようなドアークローザー(スライドアシスト装置)が知られている。このドアークローザーは、引戸を対象として設けられ、一旦開放または閉止された当該引戸を閉じるときおよび開くときに伸長状態とされた引きバネの付勢力で開閉動作をアシストするように構成されている。そして、一旦開かれた引戸を閉じるべく当該引戸に対し閉止方向に向けて力を加えると、伸長状態の引きバネの付勢力が作用し、この引きバネの付勢力で引戸を極めて軽く閉じることができる。
【0003】
具体的には、このドアークローザーは、引戸の上端側に付設された本体ボディと、この本体ボディ内に一端がフリー状態で収容される引きバネと、この引きバネのフリー端部に取り付けられ上方に突設されたキャッチ体(スライド部材)と、戸枠に下方に突出する態様で設けられたフック体(受け部材)とを備え、引戸開動作に伴いキャッチ体とフック体とが上下に係合して引きバネを所定量延伸した時点でフック体が本体ボディに停止保持され、引戸閉動作に伴いキャッチ体とフック体とが再係合してキャッチ体の停止保持状態が解除され引きバネの弾性収縮力で引戸の閉方向のスライドをアシストするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−156851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1記載のドアークローザーでは、スライド部材と受け部材とが上下に係合することで引戸の上縁部が制動され、これにより引戸が跳ね上がる場合があった。
【0006】
また、本発明者は、スライド部材と受け部材とを上下に係合するものではなく、スライド部材と受け部材とを横方向、すなわち引戸の側方側で係合させる引戸のスライドアシスト装置を提案している(特願2008−259964号)が、この種の引戸のスライドアシスト装置においても、例えば戸車の高さ調整機構を用いて引戸の一方側の高さを高くするなど引戸がスライド方向に対して傾いた場合には、これに応じてスライド部材と受け部材との相対的位置関係も傾き、引戸の閉動作の際における両部材の係合時に両部材が片当たりして引戸が顕著に跳ね上がる場合があることが分かった。
【0007】
ここで、引戸と戸枠との隙間にこれを埋める部材を介在させ、これにより跳ね上げを抑制することも考えられるが、隙間の広狭は種々存在し、この広狭それぞれの隙間に適合する跳ね上げ抑制部材を複数種類用意したのではコスト増に繋がる。しかも、この跳ね上げ抑制部材は見た目を良好にする観点から戸枠に取り付けられるが、例えば閉じ方向のスライドをアシストするスライドアシスト装置の場合、引戸を閉じ方向にスライドさせてスライド部材と受け部材とが係合するときに、引戸の閉じ方向端部上方に跳ね上げ部材を位置させる必要があり、その位置合わせが面倒であるという問題がある。
【0008】
本発明は、従来のかかる問題点を解消するべくなされたものであって、引戸のスライドアシスト装置を備える引戸における跳ね上げを簡単かつ確実に抑制することができ、しかも簡易に装着可能な引戸の跳ね上げ抑制部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明に係る引戸の跳ね上げ抑制部材は、構造物の開口部を開閉する引戸の頂部に設けられた枠体と、この枠体内に一端がフリー状態で収容される引きバネと、この引きバネのフリー端部に取り付けられたスライド部材と、前記構造物に取り付けられ引戸の移動範囲内の所定の範囲で前記スライド部材に対して係合する受け部材とを有し、引戸の一方向へのスライド時に前記スライド部材と受け部材とが係合することにより前記引きバネを伸長させ、反対方向のスライド時に前記スライド部材と受け部材とが係合することにより前記引きバネの付勢力を開き方向または閉じ方向のスライドアシスト力として引戸に付与するスライドアシスト装置を備える引戸の、前記反対方向のスライド時におけるスライド部材と受け部材との係合時の跳ね上げを抑制する引戸の跳ね上げ抑制部材であって、前記引戸の頂部と構造物との間における構造物側に固定される基台と、前記基台に着脱可能に積層される1枚又は複数枚の薄層プレート片とを備え、前記基台は、前記スライドアシスト装置によるアシスト長さよりも長く形成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
この発明において、スライドアシスト装置によるアシスト長さとは、引戸の一方向へのスライド操作の終点間近(具体的には、引戸が開放または閉止されてしまう若干前)において、当該引戸が予め伸長された引きバネの付勢力により移動が補助される場合の、補助の開始から終点までの引戸の移動距離のことである。
【0011】
この発明によれば、基台とこの基台に着脱可能に積層される1枚又は複数枚の薄層プレート片とを備えるので、例えば戸車の高さ調整機構を利用して引戸が傾き、これにより引戸と構造物との間に隙間が生じた場合でも、この隙間寸法に応じて薄層プレート片の積層枚数を基台に対して任意に積層することができ、隙間の広狭に応じて薄層プレート片の枚数を調整することにより簡単かつ確実に前記隙間を埋めることができる。このため、引戸の前記反対方向のスライド時におけるスライド部材と受け部材との係合の際に引戸の上部が制動されることにより引戸が跳ね上がろうとしても、前記基台と薄層プレート片とで構造物と引戸との間の隙間が埋められているため、引戸の跳ね上がりを簡単かつ確実に抑制することができる。
【0012】
また、前記基台は前記スライドアシスト装置によるアシスト長さよりも長く形成されているので、基台の一端を、例えば戸枠における引戸の案内溝の閉鎖(開放)側端面に突き合わせるなど、構造物における引戸の閉鎖(または開放)位置に対応する位置に合わせることにより、基台の他端部を、スライドアシスト開始時における引戸の一端部上方に確実に位置させることができる。このため、基台の構造物への装着にあたって、スライドアシスト装置におけるスライド部材と受け部材との係合開始位置を考慮して、基台の位置合わせを行う必要がなく、基台の一端を前記所定の位置(引戸の閉鎖または開放位置に対応する位置)に合わせるだけで、確実に両部材の係合時の引戸の跳ね上げを防止することができる。すなわち、この発明によれば、引戸の跳ね上げ抑制部材を簡易かつ効果的に装着することができる。
【0013】
この発明において、前記基台は、ブロック状または引戸もしくは引戸に備えられた前記枠体をガイドするためのガイドレール状に形成されるものであってもよいが、前記基台は、プレート状に形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0014】
すなわち、引戸には戸枠における鴨居の案内溝に沿って案内されることにより構造物の開口部を開閉するものがあるが、前記のように基台がプレート状に形成されている場合には、前記案内溝における天面に設置することができ、引戸と案内溝天面との隙間が狭い場合には、このプレート状の基台単独で隙間を埋めることもでき、使い勝手を向上させることができる。
【0015】
この発明において、前記基台の具体的構造を特に限定するものではないが、前記基台には、当該基台を構造物側に固定するための貫通孔が貫設されているとともに、前記薄層プレート片には、前記貫通孔に対応した位置に挿通孔が穿設されているのが好ましい(請求項3)。
【0016】
このように構成すれば、基台に所定枚数の薄層プレート片を積層した状態で、薄層プレート片の挿通孔および基台の貫通孔にネジを差し通し、構造物に螺着締結することができ、これにより引戸の跳ね上げ抑制部材が構造物に固定される。このように、基台に貫通孔を貫設するとともに、薄層プレート片に貫通孔と対向した挿通孔を穿設することによって、跳ね上げ抑制部材の構造物への取付作業の作業性を向上することができる。
【0017】
また、この発明において、前記薄層プレート片の具体的構造、特に薄層プレート片同士の結合および薄層プレート片と基台との結合構造を特に限定するものではなく、例えばネジ止め等により各部材を結合するものであってもよいが、前記薄層プレート片には、その一面側に設けられた少なくとも1つの結合突起と、他面側に凹設された前記結合突起が摺接状態で嵌り込み得る形状に設定された少なくとも1つの結合凹部とが設けられ、前記基台には前記係合突起に対応して凹設された係合凹部とを備えるのが好ましい(請求項4)。
【0018】
このように構成すれば、一の薄層プレート片の結合凹部に対し、他の薄層プレート片の結合突起を順次嵌め込んで行くことにより、複数枚の薄層プレート片を簡単に積層することができる。また、薄層プレート片の結合突起を基台の結合凹部に嵌め込むことによって薄層プレート片を基台に簡単に結合することができ、薄層プレート片の枚数を調節することで所望の厚み寸法の跳ね上げ抑制部材を容易に得ることができる。このように結合構造を、結合突起と結合凹部とで構成することにより、簡単な構造でありながら跳ね上げ抑制部材の厚さ寸法を容易に変更することができる。
【0019】
この場合において、前記係合突起と前記係合凹部の具体的構成を特に限定するものではないが、前記係合突起と前記係合凹部とは、それぞれ左右対称位置に設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0020】
このように構成すれば、平置きされた1枚の薄層プレート片に対し他の1枚の薄層プレート片を平面視で180°回動させるようにして複数の薄層プレート片をそれぞれ互い違いに積層していくことにより、各突起が相手方の結合凹部にそれぞれ嵌り込んで複数の薄層プレート片が一体的に結合される。これにより薄層プレート片の複数枚の積層にあたって、係合突起と係合凹部との位置が異なる複数種類の薄層プレート片を用意する必要がなく、1種類の薄層プレート片で複数枚の薄層プレート片を積層することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る引戸の跳ね上げ抑制部材によれば、スライド部材と受け部材とを有する引戸のスライドアシスト装置を備える引戸において、スライド部材と受け部材との係合開始時の跳ね上げを簡単かつ確実に抑制することができ、しかも簡易かつ確実に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る跳ね上げ抑制部材が適用された、スライドアシスト装置、鴨居、敷居および引戸を備えてなる引戸装置を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】本発明に係る跳ね上げ抑制部材の一実施形態を示す斜視図であり、図2(A)は、分解斜視図、図2(B)は、組み立て斜視図である。
【図3】跳ね上げ抑制部材の構成要素の一実施形態を示す平面図であり、図3(A)は、取り付けプレートを示す平面図であり、図3(B)は、調整プレートを示す平面図である。因みに図3(B)−「1」および図3(B)−「2」は、調整プレート3を平面上で互いに180°位相変化された状態をそれぞれ示している。
【図4】図2(B)のIV−IV線視の断面図である。
【図5】跳ね上げ抑制部材の鴨居に対する第1の取り付け方法を説明するための説明図であり、図5(A)は、鴨居に固定された取り付けプレートに1枚目の調整プレートを結合させようとしている状態、図5(B)は、2枚目の調整プレートを1枚目の調整プレートに結合させようとしている状態、図5(C)は、3枚目の調整プレートを2枚目の調整プレートに結合させようとしている状態、図5(D)は、鴨居に固定された跳ね上げ抑制部材が当該鴨居の案内溝の溝底と戸首部材との間の隙間に介設された状態をそれぞれ示している。
【図6】跳ね上げ抑制部材の鴨居に対する第2の取り付け方法を説明するための説明図であり、(A)は、予め組み付けられた跳ね上げ抑制部材が鴨居の所定の位置に当接された状態、(B)は、跳ね上げ抑制部材を鴨居にねじ止めしつつある状態、(C)は、鴨居に固定された跳ね上げ抑制部材が当該鴨居の案内溝の溝底と戸首部材との間の隙間に介設された状態をそれぞれ示している。
【図7】左側の戸首部材を示す一部切り欠き分解斜視図である。
【図8】図7に示す戸首部材の組み立て斜視図であり、引戸が閉止された状態を示している。
【図9】図7に示す戸首部材の組み立て斜視図であり、引戸が開放された状態を示している。
【図10】図8の円内の図のX−X線断面図である。
【図11】スライドアシスト装置の作用を説明するための平面視の一部断面説明図であり、(A)は、引戸が閉止されることによって舌片が係合姿勢に姿勢設定されたスライドアシスト装置が最左端に位置した状態、(B)は、引戸の開放動作によってコイルスプリングが伸張しつつある状態、(C)は引戸が所定距離だけ移動したことにより引掛け部材の舌片が角孔に到達してピン回りに時計方向に回動して解除姿勢に姿勢変化し、角孔を介して角筒体内へ没入した状態、(D)は、解除姿勢に姿勢設定された舌片がトリガーの係合条を遣り過ごしてコイルスプリングの付勢力を維持したまま引戸が開放動作を継続している状態をそれぞれ示している。
【図12】スライドアシスト装置の作用を説明するための平面視の一部断面説明図であり、(A)は、一旦開放された引戸を閉止操作することにより、引掛け部材の三角ブロックの前方右縁部がトリガーの係合条に係合した状態、(B)は、舌片が角孔から抜け出して解除姿勢から係合姿勢へ姿勢変化し、これによって舌片の右角部が係合条に係合した状態をそれぞれ示している。
【図13】跳ね上げ抑制部材が鴨居用案内溝の左右の端部の溝底に設けられることによる作用について説明するための説明図であり、(A)は、引戸が前屈しながら閉止されつつある状態、(B)は、引戸が完全に閉じられた状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1を基に本発明に係る引戸装置100について説明する。図1は、本発明に係る跳ね上げ抑制部材1が適用された、スライドアシスト装置10、鴨居(構造物の一部)70、敷居80および引戸90を備えてなる引戸装置100を示す一部切り欠き斜視図である。なお、図1においてX方向を左右方向、Y方向を前後方向といい、特に−Xを左方、+Xを右方、−Yを前方、+Yを後方という。因みに、本発明における「引戸の側方」とは、Y方向をいうものとする。そして、図1に示す例において、引戸90は、左右のいずれかの一方向へ向かうと開放され、他方向へ向かうと閉止されるのであるが、以下、左方へ向かうと閉止され、右方へ向かうと開放されるとして説明する。
【0024】
まず、図1を基に、引戸装置100に適用されるスライドアシスト装置10について説明する。本実施形態にかかるスライドアシスト装置10は、頂部が鴨居70に設けられた下面開放の鴨居70の案内溝71に遊嵌され、かつ、下縁部が敷居80に開閉方向へ延びるように設けられた案内溝81に嵌め込まれた状態で左右方向に正逆移動して開閉可能とされた、いわゆる立て付け戸を対象とするものである。鴨居70の案内溝71は、溝幅寸法が、後述する角筒体(枠体)30の前後幅寸法に後述する引掛け部材49の角筒体30からの突出量を加えた寸法より若干広めに設定されている。
【0025】
そして、本実施形態においては、前記引掛け部材49と後述のスライドブロック45とで、図7〜図9に示すように、角筒体30内をガイドスリット33に案内されつつ正逆移動する本発明に係るスライド部材450が形成されている。
【0026】
一方、引戸装置100の構成要件の一つである引戸90は、平らな板状の戸本体91と、この戸本体91の上縁部に設けられる目隠し板92と、この戸本体91の下縁部に取り付けられた左右方向一対に戸車93とを備えている。
【0027】
戸本体91内の下部には、当該戸本体91に対する戸車93の相対的な高さ位置を調整するための図略の高さ位置調整機構が設けられている。この高さ位置調整機構を操作することで戸本体91の傾きを調整することができる。
【0028】
そして、このような引戸90に適用される引戸装置100の他の構成要件であるスライドアシスト装置10は、戸本体91の上縁部の左右対称位置に取り付けられる左右一対の戸首部材20と、この戸首部材20に対応して前記鴨居70の案内溝71の前方内壁73(図10)に固定された左右一対のトリガー(受け部材)60とを備えている。一対のトリガー60は、引戸90を開閉するに際し、一対の戸首部材20の内の対応した一方側のスライド部材450と係合させるためのものであり、鴨居70の案内溝71の前方内壁73の左右対称位置にそれぞれ取り付けられている。
【0029】
スライドアシスト装置10がそれぞれ左右一対で設けられる理由は、引戸90を開くときと閉じるときとの双方でスライドアシスト装置10のアシスト機能を享受し得るようにするためである。
【0030】
前記各戸首部材20の前後幅寸法は、引戸90の厚み寸法より若干小さめ(具体的には引戸90の厚み寸法の略2/3)に設定されている。かかる各戸首部材20の対向端面には、それぞれ装着隙間291を有する直方体状の二股片29が固定されている。各装着隙間291は、二股片29の対向面に上下方向に延びるように設けられている。二股片29の前後幅寸法が戸首部材20のそれより若干大きめに設定され、これによって二股片29の前縁部が戸首部材20から前方へ向けて突出した状態(図8)になっている。
【0031】
そして、目隠し板92の左右の端部は、これら一対の二股片29の各装着隙間291に嵌め込まれることにより、一対の戸首部材20間に形成された間隙が埋められ、これによってこの部分を通した向こう側が目隠しされるようになっている。
【0032】
このような引戸装置100において、例えば引戸90が傾いていることにより起こる閉め残しを解消するべく、前記高さ位置調整機構によって戸車93の高さ位置が調整される場合がある。これにより引戸90が傾いた状態で開閉された場合に起こる当該引戸90の端部の跳ね上がりが防止されるが、それでも調整後の状態によっては閉止時に引戸9が跳ね上がる場合もある。かかる跳ね上がりを抑制するべく鴨居70の案内溝71の両端部の溝底(天井面)に、図1に示すように、跳ね上げ抑制部材1が積層されるのである。
【0033】
図2は、本発明に係る跳ね上げ抑制部材1の一実施形態を示す斜視図であり、図2(A)は、分解斜視図、図2(B)は、組み立て斜視図である。因みに、図2(B)では、鴨居70に固定された跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間に介設された状態を示している。
【0034】
また、図3は、跳ね上げ抑制部材1の構成要素の一実施形態を示す平面図であり、図3(A)は、取り付けプレート2を示す平面図であり、図3(B)は、調整プレート3を示す平面図である。因みに図3(B)−「1」および図3(B)−「2」は、調整プレート3を平面上で互いに180°位相変化された状態をそれぞれ示している。さらに、図4は、図2(B)のIV−IV線視の断面図である。
【0035】
なお、図2および図4においては、鴨居70および戸首部材20を、跳ね上げ抑制部材1を挟持する部材として簡素化して原理的に示しているので、詳細な部分では実際のものとは異なっている。
【0036】
まず、図2に示すように、跳ね上げ抑制部材1は、鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材(枠体)20との間の隙間を埋めるために設けられるものであり、鴨居70の案内溝71の溝底に固定される取り付けプレート(基台)2と、この取り付けプレート2に着脱自在に積層される1枚または複数枚の調整プレート(薄層プレート片)3と、調整プレート3を取り付けプレート2に装着するとともに、調整プレート3が複数枚の場合、当該複数の調整プレート3同士を積層状態で互いに結合する結合構造4とを有する基本構成を備えている。
【0037】
前記取り付けプレート2は、案内溝71の延びる方向に対応した長さ寸法がスライドアシスト装置10によるアシスト長さの1.5倍よりも短く、かつ、アシスト長さより長く設定されている。調整プレート3は、本実施形態においては、取り付けプレート2と同一長さに設定されている。なお、アシスト長さとは、引戸90をスライド操作するに際し、当該引戸90が開放または閉止されてしまう若干前の段階で、予め伸長されていたコイルスプリング50の付勢力により移動が補助(アシスト)される場合の、補助の開始から終点までの引戸90の移動距離のことである。
【0038】
こうすることによって跳ね上げ抑制部材1を無駄に長くすることが回避された上で、跳ね上げ抑制部材1の一端を、鴨居70の案内溝71の側端面に突き合わせることで設置位置を設定することにより、跳ね上げ抑制部材1の他端部を、スライドアシスト開始時における引戸90の一端部上方に確実に位置させることができる。このため、跳ね上げ抑制部材1の戸枠(鴨居70および敷居80)への装着にあたって、スライドアシスト装置10における後述のスライドブロック45とトリガー60との係合開始位置を考慮して、跳ね上げ抑制部材1の位置合わせを行う必要がなく、跳ね上げ抑制部材1の一端を鴨居70の案内溝71の端壁に合わせるだけで、開閉したときの引戸90の跳ね上げを確実に防止することができる。すなわち、跳ね上げ抑制部材1を上記のように長さ設定することで、引戸90の跳ね上げ抑制部材1を簡易かつ効果的に装着することができ、現地施工の施工性を格段に向上させることができる。
【0039】
前記取り付けプレート2は、平面視で短冊のような矩形状を呈している。かかる取り付けプレート2には、長手方向へ延びる中心線L上の中央位置に上方に向かって先窄まりの円錐台孔(貫通孔)2aが貫設されている。また、取り付けプレート2には、円錐台孔2aの孔心から中心線Lに沿って一方向(図3(A)に示す例では右方)側へ短尺距離S1だけ離間した位置に後述の円柱突起5が摺接状態で嵌入される内側嵌入円孔(結合凹部)2bが貫設されているとともに、同他方向(図3に示す例では左方)側に長尺距離S2だけ離間した位置に前記円柱突起5が摺接状態で嵌入される外側嵌入円孔(結合凹部)2cが貫設されている。
【0040】
前記円錐台孔2aには、下方からネジNが差し通され、鴨居70の下面にねじ込まれて螺着されることにより、取り付けプレート2が、図3(B)および図4に示すように、鴨居70の下面側に固定される。かかる取り付けプレート2に着脱可能に調整プレート3が積層される。
【0041】
このような短冊形状を呈した取り付けプレート2は、長尺側の寸法が60mmに、短尺側の寸法が20mmに、厚み寸法が2mmに設定されている。また、前記短尺距離S1は12mmに、前記長尺距離S2は20mmに設定されている。
【0042】
前記調整プレート3は、長手方向へ延びる中心線L上の中央位置に穿設された、前記円錐台孔2aに対応する中央部貫通孔(挿通孔)3aを有している。
【0043】
また、調整プレート3には、中央部貫通孔3aの孔心から図3における長手方向の左右に向けて短尺距離S1だけ離間した位置の一方側(図3(B)―「1」に示す例では右方側、図3(B)―「2」に示す例では左方側)に後述の円柱突起5が圧入固定される内側圧入円孔3bが貫設されているとともに、同他方側(図3(B)―「1」に示す例では左方側、図3(B)―「2」に示す例では右方側)には、円柱突起5が摺接状態で嵌入される内側嵌入孔(結合凹部)3cが貫設されている。
【0044】
さらに、調整プレート3には、前記中央部貫通孔3aの孔心から中心線L上で左右に前記短尺距離S1より長い長尺距離S2だけそれぞれ離間した位置の一方側(図3(B)−「1」に示す例では右方側、図3(B)―「2」に示す例では左方側)に、後述の円柱突起5が摺接状態で嵌入される外側嵌入円孔(結合凹部)3dが貫設されているとともに、同他方側(図3(B)−「1」に示す例では左方側、図3(B)―「2」に示す例では右方側)に円柱突起5が圧入固定される外側圧入円孔3eが貫設されている。
【0045】
すなわち、本実施形態においては、調整プレート3における圧入孔と嵌入孔とは、長手方向に延びる中心線に沿って端から同一の並び順で2組が左右対称位置に設けられているのである。
【0046】
そして、前記内側圧入円孔3bおよび前記外側圧入円孔3eには、円柱突起(結合突起、図3および図4において点描で表示)5が圧入されて固定される。
【0047】
かかる円柱突起5は、圧縮弾性変形が可能な合成樹脂材料によって形成され、軸心方向の長さ寸法が調整プレート3の厚み寸法の2倍弱に設定されている。このような円柱突起5は、図2(A)および図4に示すように、内側圧入円孔3bおよび外側圧入円孔3eに圧入される圧入部5aと、この圧入部5aの端面から同心で延設された圧入部5aより大径の頭部5bとを備えている。
【0048】
前記圧入部5aの軸心方向の長さは、調整プレート3の厚み寸法と略同一または若干長めに設定されている。なお、圧入部5aが調整プレート3の厚みより若干長めに設定されている場合には、その先端面が調整プレート3の下面と面一とされ、これによって調整プレート3の上面から若干上方に突出した状態とされる。
【0049】
また、頭部5bの軸心方向の長さ(厚み)は、調整プレート3の厚み寸法より若干小さめに設定されている。これによって円柱突起5の全体長が調整プレート3の厚み寸法の2倍弱に設定されているのと相俟って当該頭部5bが各嵌入円孔2b,2c、3b,3eに嵌入された状態で各嵌入円孔2b,2c、3b,3eから外部に突出するようなことが起こらないようになっている。
【0050】
前記内側圧入円孔3bおよび外側圧入円孔3eは、孔径寸法が円柱突起5の圧入部5aの径寸法より若干小径に設定されている。従って、圧入部5aが内側圧入円孔3bおよび外側圧入円孔3eに圧入された状態で円柱突起5が容易に外れることはない。
【0051】
これに対し内側嵌入孔3cおよび外側嵌入円孔3dは、円柱突起5の頭部5bより僅かに小径に設定されている。従って、頭部5bは、挿脱可能に摺接状態で内側嵌入孔3cおよび外側嵌入円孔3dに嵌り込むため、一旦嵌り込んだ頭部5bは、外力が作用しない限りこの状態を継続することができる一方、外力を加えることによって当該頭部5bを各嵌入孔3c,3dから容易に取り外すことができる。
【0052】
また、取り付けプレート2には、その下面側の短手方向の各下縁部が面取りされることによって形成された一対の傾斜縁部2dが設けられているとともに、調整プレート3の下面側の短手方向の各下縁部にも面取りされることによって形成された一対の傾斜縁部3fが形成されている。取り付けプレート2および調整プレート3にかかる傾斜縁部2d,3fが形成されていることにより、積層されて連結された複数枚の調整プレート3を分離させるとき、この傾斜縁部2d,3fの部分にドライバー等の工具を差し込むことによって結合状態の調整プレート3を容易に剥がすことができる。
【0053】
また、本実施形態においては、取り付けプレート2と調整プレート3との間、並びに各調整プレート3間を互いに着脱可能に結合する結合構造4は、取り付けプレート2に設けられた内側嵌入円孔2bおよび外側嵌入円孔2c、調整プレート3に設けられた内側圧入円孔3b、内側嵌入孔3c、外側嵌入円孔3dおよび外側圧入円孔3e並びに各圧入孔3b,3eに圧入部5aが圧入されるとともに、頭部5bが各嵌入円孔2b,2c,3c,3dに摺接状態で着脱可能に嵌入される円柱突起5によって構成されている。
【0054】
以下、このような跳ね上げ抑制部材1の鴨居70に対する取り付け方法について、図5および図6を基に、必要に応じて他の図面も参照しながら説明する。なお、図5および図6に示す例では、1枚の取り付けプレート2と3枚の調整プレート3とで跳ね上げ抑制部材1が形成される場合を示している。
【0055】
まず、図5は、跳ね上げ抑制部材1の鴨居70に対する第1の取り付け方法を説明するための説明図であり、図5(A)は、鴨居70に固定された取り付けプレート2に1枚目の調整プレート3を結合させようとしている状態、図5(B)は、2枚目の調整プレート3を1枚目の調整プレート3に結合させようとしている状態、図5(C)は、3枚目の調整プレート3を2枚目の調整プレート3に結合させようとしている状態、図5(D)は、鴨居70に固定された跳ね上げ抑制部材1が当該鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間の隙間に介設された状態をそれぞれ示している。
【0056】
跳ね上げ抑制部材1を鴨居70の下面側に取り付けるには、まず、図5(A)に示すように、取り付けプレート2を鴨居70の案内溝71の溝底に沿わせ、かつ、その長手方向の一方の端縁を案内溝71の端壁に当接させた状態にする。引き続き取り付けプレート2の円錐台孔2aに貫通させたネジNを鴨居70の所定位置にねじ込むことによって当該取り付けプレート2を鴨居70に固定する。かかる簡単な操作で取り付けプレート2を位置決め状態で鴨居70に容易に取り付けることができ、現地作業の作業性を向上させることができる。
【0057】
ついで、この状態の取り付けプレート2の下面側に1枚目の調整プレート3を積層するのであるが、このとき、取り付けプレート2の円錐台孔2aに調整プレート3の中央部貫通孔3aを対向させた状態で、さらに取り付けプレート2の内側嵌入円孔2bおよび外側嵌入円孔2cにそれぞれ調整プレート3の円柱突起5を対向させる。
【0058】
この状態で調整プレート3を、図5(A)に矢印で示すように、下から取り付けプレート2に押し付けることにより、各円柱突起5の頭部5bがそれぞれ内側および外側の嵌入円孔2b,2cに摺接状態で嵌入し、これによって1枚目の調整プレート3は、図5(B)に示すように、取り付けプレート2に結合される。
【0059】
ついで、図5(B)に矢印で示すように、2枚目の調整プレート3を1枚目の調整プレート3の下面側に押し付ける。このとき、2枚目の調整プレート3は、平面視で180°回わされ(反転され)、これによって2枚目の調整プレート3の各円柱突起5は、1枚目の調整プレート3の内外の嵌入円孔2b,2cに対向した状態になっている。従って、2枚目の調整プレート3の円柱突起5の頭部5bは、それぞれ1枚目の調整プレート3の内外の嵌入孔3c,3dに摺接状態で嵌入され、これによって2枚目の調整プレート3が、図5(C)に示すように、1枚目の調整プレート3に結合された状態になる。
【0060】
引き続き、3枚目の調整プレート3についても2枚目の調整プレート3の場合と同様に、図5(C)に矢印で示すように、2枚目の調整プレート3に押し付けられ、3枚目の調整プレート3の各円柱突起5の頭部5bが2枚目の調整プレート3の内外の嵌入孔3c,3dに嵌入される。
【0061】
これによって、図5(D)に示すように、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70に取り付けられた状態になる。そして、引き続き引戸90が閉じられることにより、戸首部材20が跳ね上げ抑制部材1の下方に位置すると、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間の隙間に介設された状態になる。
【0062】
因みに、跳ね上げ抑制部材1は、その長さ寸法が引戸90の移動をコイルスプリング50の付勢力でアシストする前記アシスト長さより長く設定されているため、コイルスプリング50の付勢力が戸本体91に作用する前に引戸90の戸首部材20は跳ね上げ抑制部材1の下部に潜り込んだ状態になる。従って、コイルスプリング50の付勢力で引戸90の進行方向の先端がたとえ跳ね上がっても、戸首部材20は、そのときにはすでに跳ね上げ抑制部材1の下方に潜り込んだ状態になっているため、引戸90の跳ね上がりは、跳ね上げ抑制部材1によって確実に抑制される。
【0063】
ついで、図6は、跳ね上げ抑制部材1の鴨居70に対する第2の取り付け方法を説明するための説明図であり、図6(A)は、予め組み付けられた跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の所定の位置に当接された状態、図6(B)は、跳ね上げ抑制部材1を鴨居70にねじ止めしつつある状態、図6(C)は、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間の隙間に介設された状態をそれぞれ示している。
【0064】
第2の取り付け方法にあっては、予め互いに結合された3枚の調整プレート3が取り付けプレート2に結合されて跳ね上げ抑制部材1がまず形成される。この予め形成された跳ね上げ抑制部材1は、まずその端部が案内溝71の端壁に当接された状態とされる。引き続き、跳ね上げ抑制部材1は、取り付けプレート2の円錐台孔2aが、鴨居70に予め設けられている装着孔72(鴨居70が木材の場合は錐等で穿設された穿設孔であり、鴨居70が金属製の場合は、予め螺設されたネジ孔)に対向された状態で、ネジNが、図6(A)に矢印で示すように、各調整プレート3の中央部貫通孔3aおよび取り付けプレート2の円錐台孔2aを介して装着孔72に向かわされる。
【0065】
ネジNの先端が、図6(B)に示すように、装着孔72に到達すると、ネジNは、ドライバー等の工具によって装着孔72にねじ込まれ、これによって跳ね上げ抑制部材1は、図6(C)に示すように、鴨居70に取り付けられることになる。
【0066】
そして、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70に装着された後に、引き続き引戸90が閉じられることにより、戸首部材20が跳ね上げ抑制部材1の下方に位置すると、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間の隙間に介設された状態になる。
【0067】
このような跳ね上げ抑制部材1は、本実施形態においては、スライドアシスト装置10が適用された引戸装置に適用される。
【0068】
以下、かかる引戸のスライドアシスト装置10について、図7〜図10を基に必要に応じて図1も参照しながらさらに詳細に説明する。図7は、左側の戸首部材20を示す一部切り欠き分解斜視図であり、図8および図9はその組み立て斜視図である。そして、特に図8は、引戸90が閉止された状態、図9は、引戸90が開放された状態をそれぞれ示している。図8および図9における円外にはトリガー60を図示していない代わりに、円内にはトリガー60と舌片492との相対的な位置関係を示している。また、図10は、図8の円内の図のX−X線断面図である。なお、図7〜図10においてXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。
【0069】
さらに、図7〜図10においては、左右対称に一対で設けられた戸首部材20およびトリガー60の内の左側のもののみを示している。右側のものは、左側のものと左右対称に形成されていることを除いてその構成は左側のものと同一である。そして、左側の戸首部材20は、引戸90を閉じるときに当該閉止操作をアシストし、右側の戸首部材20は、引戸90を開くときに当該開放操作をアシストする。
【0070】
まず図7に示すように、本実施形態に係る引戸のスライドアシスト装置10は、戸本体91の上縁部の左右対称位置に取り付けられる左右一対の戸首部材20と、この戸首部材20に対応して前記鴨居70の案内溝71の前方内壁73に設けられた左右一対のトリガー60とを備えている。
【0071】
一対のトリガー60は、引戸90を開閉するに際し、一対の戸首部材20の内の対応した方の後述する舌片492と係合させるためのものであり、鴨居70の案内溝71の前方内壁73(図10)の左右対称位置にそれぞれ取り付けられている。
【0072】
前記戸首部材20は、第1エッジブロック22および第2エッジブロック23がそれぞれの端部に嵌め込まれる角筒体30と、この角筒体30に内装されるショックアブソーバ40と、このショックアブソーバ40と平行に角筒体30に内装されるコイルスプリング50と、前記ショックアブソーバ40およびコイルスプリング50を介して前記第2エッジブロック23と対向配置され、かつ、角筒体30内で移動可能に内装されたスライドブロック(スライド部材)45と、このスライドブロック45に装着され、かつ、引戸90の開閉操作で前記トリガー60と係合したり係合が解除されたりする舌片492とを備えて構成されている。前記ショックアブソーバ40は、長さ寸法が角筒体30の左右方向の寸法の略半分に設定されている。
【0073】
そして、本実施形態におけるバネ力伝達機構は、鴨居70に設けられたトリガー60と、コイルスプリング50のフリー端部側に取り付けられたスライドブロック45と、このスライドブロック45に取り付けられた引戸90の移動範囲内の所定の範囲でトリガー60と係合する引掛け部材49とを備えて構成されている。
【0074】
前記第1エッジブロック22は、図7に示す角筒体30の左端部に装着されるものであり、角筒体30に内嵌される略直方体条のブロック本体221と、このブロック本体221の左端面から左方へ向けて延設されたブロック本体221より若干大きい食み出しブロック222と、ブロック本体221の右端面から右方へ向かって突設された平面視でL字状を呈する台座ブロック223とを備えている。
【0075】
前記ブロック本体221は、四囲が角筒体30の内壁面に当接状態で角筒体30に内装される。かかるブロック本体221には、上下の面にネジ孔221aが螺設され、角筒体30を貫通したネジSがこれらのネジ孔221aに螺着されることにより、第1エッジブロック22が角筒体30に固定される。
【0076】
前記食み出しブロック222は、左右方向から見た形状が角筒体30の端面視の形状と同一に設定され、これによって第1エッジブロック22が角筒体30に内嵌された状態で食み出しブロック222の周面は角筒体30の周面と面一になる。かかる食み出しブロック222には、上下方向に延びた貫通孔222aが穿設され、この貫通孔222aにネジSが挿通されて引戸90の上面に螺設された図略のネジ孔に螺着されて締結されることにより、戸首部材20の左端部が引戸90に固定されるようになっている。
【0077】
前記台座ブロック223は、引掛け部材49の後面側を受けるものであり、ブロック本体221の前後方向の略中央部から右方へ向かって突設された受台223aと、この受台223aの右縁部から後方へ向かって折り返された状態の脚部223bとからなっている。脚部223bの後縁部は、角筒体30の後方内壁面に当止されるように寸法設定されている。
【0078】
前記第2エッジブロック23は、ショックアブソーバ40およびコイルスプリング50の右端部を取り付けるためのものである。かかる第2エッジブロック23は、内壁面に当接状態で角筒体30に嵌入されるように寸法設定され、二股片29の左端面から一体的に延設されている。かかる第2エッジブロック23には、その左面下部位置にショックアブソーバ40の右端部を嵌入するための円孔231が凹設されているとともに、この円孔231の上方位置には、上方に向かって突設された左右方向から見てY字状のY字片232が設けられている。このY字片232は、コイルスプリング50の右端部を係止するためのものである。
【0079】
また、第2エッジブロック23の上下の面には、上下方向に延びたネジ孔233がそれぞれ螺設されている。そして、第2エッジブロック23が右面開口から角筒体30内へ差し込まれた状態で、角筒体30を貫通したネジSをネジ孔233に螺着して締結することにより、第2エッジブロック23が角筒体30に固定される。
【0080】
さらに、第2エッジブロック23には、前記円孔231に対応した位置に、当該円孔231を横断した状態でかしめ孔234が穿設されている。このかしめ孔234は、ショックアブソーバ40の右端部が円孔231に嵌入された状態で、当該ショックアブソーバ40を貫通するピンPを通して当該ピンPにかしめ処理を施させるためのものである。
【0081】
一方、第2エッジブロック23と一体の前記二股片29には、上下方向に延びた貫通孔292が穿設され、ネジSをこの貫通孔292を通して引戸90の上縁面に螺設された図略のネジ孔に螺着し締結することで戸首部材20の右端部が引戸90に固定されることになる。
【0082】
前記角筒体30は、金属板を端面視でコ字状を呈する前面側が開放状態の第1アングル材31と、この第1アングル材31に全長に亘って前方から外嵌される後面側が開放状態の端面視でコ字状を呈する第2アングル材32とからなっている。
【0083】
前記第1アングル材31には、その上下の横板314における前後のエッジブロック22,23の各ネジ孔221a,233に対応した位置にネジ孔315がそれぞれ螺設されているとともに、前記第2アングル材32には、その上下の横板323における前後の前記ネジ孔315に対応した位置にはネジSを挿通して前記第2エッジブロック23のネジ孔233に螺着させるための挿通孔324がそれぞれ穿設されている。
【0084】
従って、第1アングル材31に第2アングル材32を外嵌して角筒体30を形成させた状態で、当該角筒体30の左端部に第1エッジブロック22のブロック本体221を嵌め込むとともに、角筒体30の右端部に第2エッジブロック23を嵌め込んだ状態で、ネジSを角筒体30の前後の挿通孔324およびネジ孔315を介して第1エッジブロック22のネジ孔221aおよび第2エッジブロック23のネジ孔233にそれぞれ螺着することによって、第1アングル材31および第2アングル材32が一体化されるとともに、角筒体30に第1および第2エッジブロック22,23が固定される。
【0085】
そして、本実施形態においては、左右方向へ延びるガイドスリット33およびこのガイドスリット33に連設された上下幅寸法がガイドスリット33のそれより広い角孔34が第2アングル材32の縦板321側に設けられている。ガイドスリット33は、第2アングル材32の縦板321の左右方向の中央部より若干左方位置を始点にして左方へ延びるように設けられている。角孔34は、かかるガイドスリット33の左端部に連設されている。角孔34は、縦板321の略全上下幅に亘るように大きく形成されている。
【0086】
前記ショックアブソーバ40は、図8に示すように、前記角筒体30に内装されるものであり、角筒体30内で左方側に配設される内筒体41と、この内筒体41に摺接状態で右方から外嵌される外筒体42とを備えている。かかるショックアブソーバ40は、スライドアシスト装置10による引戸90の開閉操作のアシスト時に、当該引戸90が急激に移動するのを緩衝して穏やかにアシストさせるためのものである。
【0087】
かかる緩衝作用のために、ショックアブソーバ40の適所に図略の一方弁が設けられ、内筒体41が外筒体42から引き出されるときは、当該一方弁が開放して空気がショックアブソーバ40内に容易に吸入される一方、内筒体41が外筒体42に押し込まれるときは当該一方弁が半開状態とされ、これによる気流に対する大きな抵抗の付与で内筒体41の外筒体42への押し込み速度が緩やかになるようになされている。
【0088】
前記内筒体41の左端部には、挿通孔416aの穿設された第1ブラケット416が設けられているとともに、外筒体42の右端部には、挿通孔426aの穿設された第2ブラケット426が設けられている。第1ブラケット416の挿通孔416aは、ピンPを通してスライドブロック45に内筒体41を連結するためのものである。
【0089】
また、第2ブラケット426の挿通孔426aは、外筒体42の右端部を第2エッジブロック23の円孔231に嵌入した状態で、かしめ孔234に差し通されたピンPを挿通させるものであり、こうすることで外筒体42の右端部が第2エッジブロック23に固定される。
【0090】
前記コイルスプリング50は、第2エッジブロック23とスライドブロック45との間に介設されてスライドブロック45に付勢力を付与するためのものである。かかるコイルスプリング50の各端部には、円形係止片55が同心で固定されている。これらの円形係止片55の左方のものがスライドブロック45に係止されるとともに、右方のものが第2エッジブロック23に係止され、これによってコイルスプリング50がスライドブロック45および第2エッジブロック23間に張設されるようになっている。
【0091】
前記スライドブロック45は、引戸90の開閉動作をアシストするべく、当該アシスト力(具体的にはコイルスプリング50の付勢力)を蓄積するとき、および蓄積されたアシスト力(コイルスプリング50の付勢力)を引戸90の開閉動作に与えるときに角筒体30内を摺動するものである。
【0092】
かかるスライドブロック45は、直方体状を呈したブロック基体451と、このブロック基体451の左前方角部の上下方向の中央部が切り欠かれることによって形成された上下一対の軸支板452と、これら一対の軸支板452間の右方位置でブロック基体451から前方に向かって突設された突設片453と、ブロック基体451の右端部に形成された二股部分の隙間が上下方向へ延びて上部が開放状態のY字片454とを備えている。
【0093】
前記一対の軸支板452に引掛け部材49を装着するための装着空間46が形成されている。かかる一対の軸支板452には、その前方左角部に上下方向に延びたかしめ孔452aがそれぞれ穿設されている。そして引掛け部材49の適所が装着空間46に嵌め込まれた状態で、引掛け部材49を貫通するようにかしめ孔452aにピンPを差し込み、かしめ止めすることで引掛け部材49がスライドブロック45に装着された状態になる。
【0094】
前記突設片453は、上下寸法が前記ガイドスリット33の上下寸法より僅かに短めに設定され、これによってスライドブロック45が角筒体30に内装された状態で、ガイドスリット33から前方に向かって外部に突出するようになされている。
【0095】
本実施形態のスライドブロック45は、突設片453が設けられているため、引戸90を急激に開閉操作した場合、この突設片453がトリガー60の係合条66と係合し、これによってスライドブロック45の急激な移動がショックアブソーバ40の作用で抑えられるため、結果として引戸90の急激な開閉を抑制することができる。
【0096】
前記Y字片454は、コイルスプリング50の左の円形係止片55を係止するためのものであり、当該円形係止片55の軸の部分をY字片454の隙間に嵌め込むことでコイルスプリング50は、その左端がスライドブロック45に装着される。一方、コイルスプリング50の右端部の円形係止片55は、前記のように第2エッジブロック23のY字片232に係止される。左右の円形係止片55がスライドブロック45および第2エッジブロック23の各Y字片454,232に係止されることにより、コイルスプリング50がスライドブロック45および第2エッジブロック23間に介設された状態になる。
【0097】
また、ブロック基体451には、その右端面における第2エッジブロック23の前記円孔231に対向した位置に内筒体41の左端部を嵌め込むための円孔455が凹設されているとともに、この円孔455を横断するように前後方向へ延びたかしめ孔456が穿設されている。そして、内筒体41の左端部が円孔455に嵌入された状態で、ピンPがかしめ孔456および第1ブラケット416の挿通孔416aにそれぞれ嵌入してかしめ止めされることにより、内筒体41がスライドブロック45に連結される。
【0098】
前記引掛け部材49は、スライドブロック45に装着された状態で、引戸90の開閉動作に応じ(具体的には、左側のスライドアシスト装置10については引戸90の閉止操作時、右側のスライドアシスト装置10については、引戸90の開放操作時)トリガー60と係合してスライドブロック45の鴨居70に対する相対移動を阻止するためのものである。
【0099】
かかる引掛け部材49は、平面視で左方に向かって先細りに形成された三角形状を呈する三角ブロック491と、この三角ブロック491の前面左半分の部分に固定された平面視で左方へ向かって先細りの舌片492とを備えている。前記三角ブロック491は、スライドブロック45の一対の軸支板452間に形成された前記装着空間46に装着されるものであり、上下寸法が装着空間46の上下寸法より僅かに小さめに設定されている。
【0100】
かかる三角ブロック491は、左右方向の略中央部に上下方向に延びた前記かしめ孔452aの対応する挿通孔491aが穿設されている。そして、ピンPがこれらかしめ孔452aおよび挿通孔491aに貫通された状態でかしめ止めされることにより、引掛け部材49がピンP回りに回動可能に軸支された状態でスライドブロック45に装着される。
【0101】
前記舌片492は、上下寸法がガイドスリット33の上下寸法より長く、かつ、角孔34の上下寸法より短く設定されているとともに、左右寸法が角孔34の左右寸法より若干短めに設定されている。そして、舌片492がガイドスリット33の範囲内にあるときは、当該舌片492は、図8に示すように、ガイドスリット33から角筒体30の外部に突出した状態になっている。
【0102】
この状態で、舌片492の右角部492aが、図8の円内に示すように、トリガー60の後述の係合条66に当接している。従って、この状態で引戸90を開放するべく右方へ移動させると、舌片492の右角部492aが係合条66に当止してスライドブロック45がこれ以上右方へ移動しなくなるため、スライドブロック45がその位置に残ったまま角筒体30のみが右方へ移動することになる。この移動によってコイルスプリング50は伸張し、付勢力が蓄積されていく。
【0103】
そして、引戸90の開放操作を継続すると、ついには舌片492がガイドスリット33を相対的に通り越して角孔34へ到達する。この角孔34へ到達した舌片492は、その傾斜面492bが角孔34の左縁部と係合して当該傾斜面492bが角孔34の左縁部に誘導され、図9に示すように、ピンP回りに時計方向へ回動して角筒体30内へ没入する。
【0104】
そして、角筒体30内へ没入した舌片492は、その右角部492aが角孔34の右縁部と係合しているため、コイルスプリング50は伸張状態を維持したまま、舌片492が係合条66を通過して戸首部材20はさらに右方へ移動することができる。
【0105】
逆に、閉止された引戸90を開放していくとき(すなわち、引戸90を左方へ移動させるとき)は、引戸90がある程度開放された状態で引掛け部材49の三角ブロック491の前方右縁部491bが係合条66と係合し、これによって引掛け部材49がピンP回りに反時計方向に回動して舌片492が角孔34から外部へ抜け出す。これによりコイルスプリング50の付勢力で引掛け部材49がガイドスリット33を相対的に右方へ移動しつつ引戸90がコイルスプリング50の付勢力によって開放されることになる。
【0106】
ところで、この種のアシスト装置にあっては、引掛け部材49の舌片492がトリガー60の係合条66と係合し損なって適正にコイルスプリング50を伸張し得なくなったり、あるいはコイルスプリング50の付勢力をスライドアシスト力として付与することができなくなったりするなど、スライドアシスト装置10として正常に機能し得なくなるような場合がある。
【0107】
また、引戸90を閉めきったり開ききったりしたとき、係合姿勢から解除姿勢に姿勢変更しなければならないはずの舌片492が、係合姿勢のままになっているような場合もある。このような場合、従来の装置では、引戸90を鴨居70から外してスライドアシスト装置10を調整する必要があった。
【0108】
そこで、引掛け部材49の下部を、図10に示すように、鴨居70の案内溝71から下方へ向けて突出させるように構成することで、舌片492の下端部が鴨居70から外部に露出しているので、舌片492が正常に動作しなくなったような場合、これを一別することができるとともに、誤動作が生じている場合には、舌片492の露出している部分を手で操作することにより簡単に正常な状態に調整することができるようになった。
【0109】
前記トリガー60は、引戸90の開閉操作時に引掛け部材49の舌片492と係合させるためのものであり、引戸90が開放されたり閉止されたりしたときに、舌片492とスライドブロック45の突設片453との間に位置するように前方内壁73の側に取り付けられている。
【0110】
かかるトリガー60は、金属板を所定の形状にプレス処理することによって形成され、左右方向から見て1段の階段状に形成されており、図7に示すように、板状の上部ブラケット片64と、この上部ブラケット片64より下方位置に位置設定される下部ブラケット片65と、上部ブラケット片64の前縁部と下部ブラケット片65の後縁部との間に架設された上下方向に延び、かつ、後方へ向けて膨出した係合条66とを備えている。係合条66は、上下寸法が鴨居70の案内溝71の前方内壁73の上下長と同一に設定されている。
【0111】
また、上部および下部ブラケット片64,65には、それらの中央部に貫通孔67がそれぞれ穿設されている。そして、上部ブラケット片64が鴨居70の案内溝71の溝底(天面)に当接されるとともに、下部ブラケット片65が鴨居70の案内溝71より前方の下面に当接された状態で、それぞれの貫通孔67,67に木ネジMを差し通して鴨居70へねじ込むことにより、トリガー60が、図7に示すように、鴨居70に固定される。
【0112】
以下、図11および図12を基に、本実施形態に係るスライドアシスト装置10の作用について説明する。図11および図12は、スライドアシスト装置10の作用を説明するための平面視の一部断面説明図であり、図11(A)は、引戸90が閉止されることによって舌片492が係合姿勢に姿勢設定されたスライドアシスト装置10が最左端に位置した状態、図11(B)は、引戸90の開放動作によってコイルスプリング50が伸張しつつある状態、図11(C)は引戸90が所定距離だけ移動したことにより引掛け部材49の舌片492が角孔34に到達してピンP回りに時計方向に回動して解除姿勢に姿勢変化し、角孔34を介して角筒体30内へ没入した状態、図11(D)は、解除姿勢に姿勢設定された舌片492がトリガー60の係合条66を遣り過ごしてコイルスプリング50の付勢力を維持したまま引戸90が開放動作を継続している状態をそれぞれ示している。
【0113】
また、図12(A)は、一旦開放された引戸90を閉止操作することにより、引掛け部材49の三角ブロック491の前方右縁部491bがトリガー60の係合条66に係合した状態、図12(B)は、舌片492が角孔34から抜け出して解除姿勢から係合姿勢へ姿勢変化し、これによって舌片492の右角部492aが係合条66に係合した状態をそれぞれ示している。なお、図11および図12におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。
【0114】
まず、図11(A)に示すように、引戸90が閉止された状態では、引掛け部材49の舌片492はガイドスリット33から前方へ突出した係合姿勢に設定され、かつ、舌片492の右角部492aがトリガー60の係合条66に係合した状態になっている。このとき、コイルスプリング50は、付勢力が略発生しない最小長さになっている。
【0115】
この状態で引戸90を右方へ移動させて開放していくと、舌片492は、その右角部492aがトリガー60の係合条66と係合していて右方へ移動することができないため、結局、図11(B)に示すように、スライドブロック45がこの位置に残留したまま角筒体30のみが右方へ移動していくことになる。従って、角筒体30のこの移動により、コイルスプリング50が伸張していき、付勢力が蓄積されていく。
【0116】
そして、角筒体30の移動が進行して舌片492が角孔34に対応した状態になると、舌片492の右角部492aが係合条66によって左方へ向かって相対的に押圧されているとともに、傾斜面492bの左端部が角孔34の左縁部に案内されるため、舌片492は、ピンP回りに時計方向へ向けて回動し、これによって、図11(C)に示すように、角孔34を介して角筒体30内に没入した解除姿勢へ姿勢変更する。
【0117】
ついで、解除姿勢に姿勢変更された舌片492は、コイルスプリング50の付勢力で右方へ引っ張られ、舌片492の右角部492aが角孔34の右縁の前後の部分に当止する(図11(D))。これによってスライドブロック45は、角筒体30に対し相対的に右方へ向けて移動し得なくなっているとともに、コイルスプリング50は、最大の付勢力が保持された状態になっている。解除姿勢に姿勢設定された舌片492は、係合条66との係合状態が解除されるため、引戸90は、図11(D)に示すように、舌片492が係合条66を遣り過ごしつつ開放することができる。
【0118】
そして、一旦開放された引戸90を左方へ移動させて開けていくと、今度は、図12(A)に示すように、三角ブロック491の前方右縁部491bが係合条66に干渉し、これによって舌片492は、ピンP回りに反時計方向に向けて回動して係合条66に対する解除姿勢から係合条66に係合する係合姿勢へと姿勢変更する(図12(B))。
【0119】
そして、舌片492は、この姿勢変更によって角孔34から抜け出し、当該舌片492の右角部492aが角孔34の右縁部へ係止されていた状態が解消されるため、引掛け部材49は、その三角ブロック491がガイドスリット33に入り込み得るようになる。
【0120】
そして、図12(B)に示すように、舌片492が係合条66に係合し、且つ、三角ブロック491がガイドスリット33に入り込んだ状態では、弾性変形で伸張しているコイルスプリング50の付勢力は、角筒体30を左方へ移動させるように作用するため、結果として引戸90は、スライドアシスト装置10のアシストにより角筒体30を介し左方へ自動的に移動して閉止される。
【0121】
本実施形態に係るスライドアシスト装置10に関し、図7〜図12では、引戸90を閉じるときにアシストする引戸90の左側に設けられるものを例に挙げて説明したが、右側のものは、左側のものと左右対称に形成され、引戸90を開放するときにアシストするようになされている以外、構成および作用効果の点で左側のものと同様である。
【0122】
そして、本実施形態に係る引戸装置100においては、鴨居70の案内溝71の溝底(天井面)の左右端部に、図1および図10に示すように、本実施形態に係る跳ね上げ抑制部材1が取り付けられている。鴨居70の案内溝71の溝底に跳ね上げ抑制部材1が設けられる理由は、以下のとおりである。すなわち、引戸90が開閉操作されるときであって、コイルスプリング50の付勢力が作用した状態になっているときには、コイルスプリング50の付勢力によって当該引戸90の上部が引っ張られるため、引戸90は、閉止直前または全開直前に進行方向に向けて前屈みに傾き加減になる。
【0123】
一方、引戸90の戸首の上面と鴨居70の案内溝71の溝底(天井面)との間には、通常隙間が存在する。従って、コイルスプリング50によって前屈み状態の引戸90が開閉されて戸枠に衝突したとき、当該引戸90は、その反動で進行方向の先端が前記隙間の方向に向けて大きく跳ね上がり、安定した開閉操作が困難になるという不都合が生じる。かかる不都合を解消するべく、鴨居70の案内溝71の溝底の左右の端部に跳ね上げ抑制部材1が取り付けられるのである。
【0124】
以下、図13を基に、必要に応じて他の図面も参照しながら、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70の案内溝71の左右の端部の溝底に設けられることによる作用について説明する。図13は、当該作用を判り易く説明するために示した説明図であり、図13(A)は、引戸90が前屈しながら閉止されつつある状態、図13(B)は、引戸90が完全に閉じられた状態をそれぞれ示している。なお、図13におけるXによる方向表示は、図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方)である。また、図13では、引戸90が閉じられるときを例に挙げて示しているが、引戸90が開かれるときも同様であるため開かれるときの図示および説明は省略する。
【0125】
まず開放されていた引戸90が閉じられ始めるときには、図9および図11(D)に示すように、引掛け部材49の舌片492の三角ブロック491の右角部492aが角孔34の右縁部に係止されているため、引戸90にコイルスプリング50の付勢力が作用しない状態になっている。
【0126】
ついで、引戸90の左方へ向かう閉止の進行によって引掛け部材49の三角ブロック491の前方右縁部491b(図7)が、図13(A)に示すように、トリガー60の係合条66に干渉すると、三角ブロック491は、図12(A)および図12(B)に示すように、ピンP周りに回動し、これによって舌片492の右角部492aの角孔34右縁部に対する係合が解除される。これにより舌片492の右角部492aが鴨居70と一体のトリガー60の係合条66に係合するとともに、引掛け部材49は、ガイドスリット33に案内されつつ角筒体30に対して左方へ向けて移動可能になる。
【0127】
従って、以後、引戸90は、コイルスプリング50の付勢力によって左方へ向かう閉止動作がアシストされることになるのであるが、その前に突設片453が係合条66に衝突したとき、当該突設片453の上下方向に延びる前方縁部は、係合条66に対し、図13(A)に示すように、上部が左方へ向かった状態の斜めになっていて、まず最初にその上縁部が係合条66に衝突するため、引戸90には図13(A)に点線矢印で示すように、時計方向へ向かうモーメントが作用し、これによって引戸90は、その左端上部が鴨居70の案内溝71の溝底へ向かうことになる。
【0128】
従って、案内溝71の溝底に跳ね上げ抑制部材1が設けられていない場合には、引戸90がコイルスプリング50の付勢力で閉止されるに際し、引戸90の左端上角部が上方へ跳ね上がり、案内溝71の溝底と衝突して騒音を発したりするという不都合が生じるのであるが、本実施形態においては、鴨居70の案内溝71の左端部の溝底に跳ね上げ抑制部材1が設けられているため、引戸90の跳ね上がりは、図13(B)に示すように跳ね上げ抑制部材1によって阻止される。これにより、引戸90を、跳ね上がらせない状態でスムーズに閉じることができる。
【0129】
以上詳述したように、本実施形態に係る跳ね上げ抑制部材1は、鴨居70と、この鴨居70に対向配置された敷居80との間に介設される引戸90の戸首部材20と鴨居70の案内溝71の溝底との間の隙間を埋めるためのものであり、案内溝71の溝底に固定される取り付けプレート2と、この取り付けプレート2に着脱可能に積層される複数枚の調整プレート3と、取り付けプレート2および調整プレート3間並びに各調整プレート3間を互いに着脱可能に結合する結合構造4とを備えている。
【0130】
かかる構成の跳ね上げ抑制部材1によれば、鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間に形成された隙間を埋めるべく、当該隙間寸法に応じて調整プレート3の積層枚数を結合構造4を介して任意に設定することができ、隙間を埋めるための跳ね上げ抑制部材1の厚さ設定の自由度を向上させることができる。また、従来のように各種の隙間寸法に合わせてそれぞれ所定の厚みを有する複数種類の跳ね上げ抑制部材を予め用意しておく必要がなくなり、その分跳ね上げ抑制部材の製造コストの低減化に貢献することができるとともに、現地施工の施工性を向上させることができる。
【0131】
そして、取り付けプレート2はスライドアシスト装置10によるアシスト長さよりも長く形成されているため、取り付けプレート2の一端を、鴨居70の案内溝71内の左右方向の端壁に突き合わせることにより、取り付けプレート2を案内溝71内で確実に位置決めすることができる。従って、取り付けプレート2の構造物への装着に当たり、各部材の相対的な位置関係を考慮する必要がなくなり、現場での跳ね上げ抑制部材1の取り付け作業の作業性を大幅に向上させることができる。
【0132】
また、取り付けプレート2および調整プレート3の長さ寸法は、スライドアシスト装置10におけるアシスト長さ寄りも長く、かつ、アシスト長さの1.5倍よりも短く形成されているため、跳ね上げ抑制部材1が長過ぎることによるコストアップを抑えた上で、引戸90の進行方向の上縁部が跳ね上げ抑制部材1により確実に捕らえることができる。
【0133】
また、本実施形態に係る結合構造4は、調整プレート3の一面側に設けられた2つの円柱突起5と、この2つの円柱突起5に対応するように穿設された当該円柱突起5が摺接状態で嵌り込み得る2つの嵌入孔(内側および外側嵌入孔3c,3d)と、円柱突起5に対応して取り付けプレート2に穿設された内側および外側嵌入円孔2b,2cとを備えて構成されている。
【0134】
結合構造4をこのように構成すれば、一の調整プレート3の内側および外側嵌入孔3c,3dに対し、他の調整プレート3の円柱突起5を順次嵌め込んで行くことにより、複数枚の調整プレート3を積層状態で結合することができる。また、調整プレート3の円柱突起5を取り付けプレート2の内側および外側嵌入円孔2b,2cに嵌め込むことによって調整プレート3を取り付けプレート2に結合することができ、調整プレート3の枚数を調節することで所望の厚み寸法の跳ね上げ抑制部材1を容易に得ることができる。このように結合構造4を、円柱突起5と内側および外側嵌入孔3c,3dとで構成することにより、簡単な構造でありながら跳ね上げ抑制部材1の厚さ寸法を容易に変更することができる。
【0135】
また、取り付けプレート2には、当該取り付けプレート2を鴨居70に固定するための円錐台孔2aが貫設されているとともに、調整プレート3には、円錐台孔2aに対応した位置に中央部貫通孔3aが穿設されている。
【0136】
従って、取り付けプレート2に所定枚数が積層された調整プレート3を結合した状態で、調整プレート3の中央部貫通孔3aおよび取り付けプレート2の円錐台孔2aにネジNを差し通し、鴨居70の案内溝71の溝底に螺着締結することにより、跳ね上げ抑制部材1が鴨居70に固定される。このように、取り付けプレート2に円錐台孔2aを貫設するとともに、調整プレート3に円錐台孔2aに対応した中央部貫通孔3aを穿設することによって、跳ね上げ抑制部材1の鴨居70への取り付け作業を容易に行うことができる。
【0137】
そして、特に調整プレート3における円柱突起5と嵌入円孔3c,3dとは、両者が同一の位置関係を保持しつつ複数組が、長手方向に延びる中心線上において、等ピッチで設けられているため、平置きされた1枚の調整プレート3に対し他の1枚の調整プレート3を平面視で180°回動させるようにして複数の調整プレート3をそれぞれ互い違いに積層していくことにより、各円柱突起5を相手方の嵌入円孔3c,3dにそれぞれ嵌り込ませることができ、結果として1種類の調整プレート3で済ませることができるため、複数種類の調整プレート3を製造すら場合に比べて調整プレート3の製造コストの低減化に貢献することができる。
【0138】
そして、本実施形態に係る引戸装置100は、鴨居70および敷居80に沿って正逆移動することで開閉可能に戸枠に装着された引戸90の開閉動作をアシストするスライドアシスト装置10が設けられてなるものであり、特に鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間に、鴨居70の案内溝71の溝底に、引戸90の進行方向の前端側の上端部が跳ね上がるのを防止する跳ね上げ抑制部材1が固定されてなるものである。
【0139】
かかる引戸装置100によれば、跳ね上げ抑制部材1を鴨居70の案内溝71の溝底と戸首部材20との間に介設することにより、引戸90が開閉されて戸枠に衝突したときの跳ね上がりを抑えることができる。従って、引戸90にスライドアシスト装置10が適用され、開閉時にコイルスプリング50の付勢力が作用することで跳ね上がりが起き易いような引戸装置100の場合であっても、引戸90の閉止動作を安定させることができる。
【0140】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0141】
(1)本発明の対象となる戸が吊戸の場合、戸本体の上部側面に枠体が側方に突出して設けられる場合がある。このような場合、スライドアシスト装置によるアシスト範囲に亘って、枠体の上面および側面に対向する断面視L字状のガイドレールが設けられ、このガイドレールに受け部材が取り付けられるが、跳ね上げ抑止部材は、このような吊戸にも適用可能である。この場合、ガイドレールの枠体上面に対向する天井部を基台とし、この天井部に調整プレート3を積層するようにすればよい。
【0142】
(2)上記の実施形態の跳ね上げ抑制部材1においては、調整プレート3に設けられる円柱突起5と嵌入円孔3c,3dとは2組とされているが、2組に限定されるものではなく、1組でもよいし、3組以上でもよい。
【0143】
(3)上記の実施形態においては、結合突起として円柱突起5が採用されているが、円柱突起5であることに限定されるものではなく、四角柱状や多角柱状など各種の形状のものを採用することができる。これに合わせて取り付けプレート2および調整プレート3に設けられる結合凹部が円孔2b、2c、3c、3dであることに限定されるものではなく、三角孔、四角孔あるいは多角孔等の他の形状の孔を採用してもよい。
【0144】
(4)上記の実施形態においては、取り付けプレート2および調整プレート3に設けられる結合凹部として貫通孔である円孔2b、2c、3c、3dが採用されているが、かかる貫通孔に代えて文字どおりの凹部としてもよい。
【0145】
(5)上記の実施形態における調整プレート3は、図2〜図6に示す例では、3枚とされているが、当然のことながら3枚未満でもよいし4枚以上であってもよい。
【0146】
(6)上記の実施形態においては、調整プレート3に設けられる結合突起として、各円孔3c、3dに圧入される円柱突起5が採用されているが、例えば、射出成形法による調整プレート3の製造時に調整プレート3に一体的に円柱突起5を形成させるようにしてもよい。
【0147】
(7)上記の実施形態においては、跳ね上げ抑制部材1が適用される引戸90として底部に戸車93が設けられた、いわゆる立て付け戸を例に挙げて説明したが、本発明は、引戸が立て付け戸であることに限定されるものではなく、引戸が所定のレールに吊持された、いわゆる吊り戸であってもよい。
【0148】
(8)上記の実施形態においては、調整プレート3が取り付けプレート2と同一の長さ寸法に設定されているが、本発明は、調整プレート3が取り付けプレート2と同一の長さ寸法に設定されることに限定されるものではなく、調整プレート3を取り付けプレート2より短尺とし、取り付けプレート2における案内溝71の終端側の端部と反対側の端部に当該短尺の取り付けプレート2を取り付けるようにしてもよい。この場合でも、取り付けプレート2における調整プレート3の取り付け位置が予め定まっているので、調整プレート3の位置決めを容易に行うことができる。
【0149】
(9)上記の実施形態においては、トリガー60が鴨居70の案内溝71の側壁に設けられ、スライド部材450とトリガー60とが引戸90の側方で係合するように構成されたスライドアシスト装置10に基づいて説明しているが、スライドアシスト装置は、これに限定されるものではない。すなわち、従来のアシスト装置のようにトリガーを案内溝71の溝底(天井面)に設け、引戸90の上方でスライド部材とトリガーとが係合するようなタイプのスライドアシスト装置にも当然に適用することができる。
【0150】
この場合、取り付けプレート2を延設してその先端部にトリガーを一体的に設けるようにしてもよい。このように構成すれば、トリガーの位置決めを容易に行うことができる。なお、このように取り付けプレート2を延設した場合でも、調整プレート3の取り付け位置は、スライド部材450とトリガー60とが係合する際の引戸90の先端部の上方に位置するように位置決めされている。
【符号の説明】
【0151】
1 跳ね上げ抑制部材 2 取り付けプレート(基礎プレート片)
2a 円錐台孔(貫通孔) 2b 内側嵌入円孔(結合凹部)
2c 外側嵌入孔(結合凹部) 2d 傾斜縁部
3 調整プレート(薄層プレート片)
3a 中央部貫通孔(挿通孔) 3b 内側圧入円孔
3c 内側嵌入円孔(結合凹部) 3d 外側嵌入円孔(結合凹部)
3e 外側圧入円孔 3f 傾斜縁部
4 結合構造 5 円柱突起
5a 圧入部 5b 頭部
100 引戸装置 10 スライドアシスト装置
20 戸首部材(枠体) 22 第1エッジブロック
221 ブロック本体 221a ネジ孔
222 はみ出しブロック 222a 貫通孔
223 台座ブロック 223a 受台
223b 脚部 23 第2エッジブロック
231 円孔 232 Y字片
233 ネジ孔 234 かしめ孔
29 二股片 291 装着隙間
292 貫通孔 30 角筒体
31 第1アングル材 314 横板
315 ネジ孔 32 第2アングル材
321 縦板 323 横板
324 挿通孔 33 ガイドスリット
34 角孔 40 ショックアブソーバ
40 円筒部材 41 内筒体
416 ブラケット 416a 挿通孔
42 外筒体 426 ブラケット
426a 挿通孔 45 スライドブロック
451 ブロック基体 452 軸支板
452a かしめ孔 453 突設片
454 Y字片 455 円孔
456 かしめ孔 46 装着空間
49 引掛け部材 491 三角ブロック
491a 挿通孔 491b 前方右縁部
492 舌片 492a 右角部
492b 傾斜面 50 コイルスプリング
55 円形係止片 60 トリガー(受け部材)
64 上部ブラケット片 65 下部ブラケット片
66 係合条 67 貫通孔
70 鴨居(構造物の一部) 71 鴨居用案内溝
72 装着孔 73 前方内壁
80 敷居 81 案内溝
90 引戸 91 戸本体
92 目隠し板 93 戸車
L 中心線 M 木ネジ
N ネジ P ピン
S ネジ S1 短尺距離
S2 長尺距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の開口部を開閉する引戸の頂部に設けられた枠体と、この枠体内に一端がフリー状態で収容される引きバネと、この引きバネのフリー端部に取り付けられたスライド部材と、前記構造物に取り付けられ引戸の移動範囲内の所定の範囲で前記スライド部材に対して係合する受け部材とを有し、引戸の一方向へのスライド時に前記スライド部材と受け部材とが係合することにより前記引きバネを伸長させ、反対方向のスライド時に前記スライド部材と受け部材とが係合することにより前記引きバネの付勢力を開き方向または閉じ方向のスライドアシスト力として引戸に付与するスライドアシスト装置を備える引戸の、前記反対方向のスライド時におけるスライド部材と受け部材との係合時の跳ね上げを抑制する引戸の跳ね上げ抑制部材であって、
前記引戸の頂部と構造物との間における構造物側に固定される基台と、
前記基台に着脱可能に積層される1枚又は複数枚の薄層プレート片とを備え、
前記基台は、前記スライドアシスト装置によるアシスト長さよりも長く形成されていることを特徴とする引戸の跳ね上げ抑制部材。
【請求項2】
前記基台は、プレート状に構成されていることを特徴とする請求項1記載の引戸の跳ね上げ抑制部材。
【請求項3】
前記基台には、当該基台を構造物側に固定するための貫通孔が貫設されているとともに、前記薄層プレート片には、前記貫通孔に対応した位置に挿通孔が穿設されていることを特徴とする請求項1または2記載の引戸の跳ね上げ抑制部材。
【請求項4】
前記薄層プレート片には、その一面側に設けられた少なくとも1つの結合突起と、他面側に凹設された前記結合突起が摺接状態で嵌り込み得る形状に設定された少なくとも1つの結合凹部とが設けられ、前記基台には前記係合突起に対応して凹設された係合凹部とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の引戸の跳ね上げ抑制部材。
【請求項5】
前記係合突起と前記係合凹部とは、それぞれ左右対称位置に設けられていることを特徴とする請求項4記載の引戸の跳ね上げ抑制部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−32714(P2011−32714A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179564(P2009−179564)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000145895)株式会社小林製作所 (21)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【Fターム(参考)】