説明

引込装置

【課題】ダンパの耐久性を高くすることができる引込装置を提供する。
【解決手段】引込装置のベース12上にスライダ14及びダンパベース22をスライド可能に設ける。ダンパベース22に、ベース12に係合してベース12に対してダンパベース22が長手方向にスライドできないようにしたり、ダンパベース22が長手方向にスライドできるようにするダンパロック28を設ける。弾性部材15の付勢力によってベース12に対してスライダ14が長手方向に相対的に移動にするとき、最初にダンパロック28によってベース12と一体になったダンパベース22がスライダ14に対して相対的に移動し、これにより第一のダンパ24が減衰力を発生させ、その後、ダンパロック28とベース12との係合が解除されて、スライダ14及びダンパベース22に対してベース12が相対的に移動し、これにより第二のダンパ25が減衰力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引戸、折り戸、引出し等の開閉体を人手で一方向に移動させるとき、アシストする力を発生させる引込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸には、閉じ方向に移動する引戸に閉じ方向にアシスト力を発生させる引込装置が取り付けられる場合がある。一般的な引込装置は自閉装置とも呼ばれ、引戸を人手で押してガイドレールに沿って閉じ方向へ移動させると、一定のところで、弾性部材による閉じ方向への付勢力が引戸に作用するようになっている。その後、引戸は、閉じ方向へ自動的に移動し、全閉位置で停止する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
枠の上部には、引戸の移動方向に伸びるガイドレールが取り付けられる。引込装置はガイドレール内に収納され、ローラによってガイドレールの長手方向にスライドできるようになっている。引戸は引込装置に吊り下げられる。引戸を人手で押して閉じ方向に移動させると、引込装置も閉じ方向に移動する。ガイドレールにはピンが固定されている。引込装置が閉じ方向に所定位置まで移動すると、引込装置のスライダがピンを捕捉する。すると、引込装置のベースとスライダとのロックが解除され、引込装置の弾性部材によってベースがスライダに向かって閉じ方向に移動する。スライダはピンを捕捉しているので、スライダは移動することはない。このため、ベースが閉じ方向に移動する。引込装置のベースには引戸が吊り下げられているので、ベースの閉じ方向への移動に伴って引戸が閉じ方向に移動する。
【0004】
弾性部材の付勢力によって引戸が枠や戸当たりに強く衝突するのを防止するために、引込装置にはダンパが装備される。特許文献2には、引込装置の中にロータリーダンパを二つ装備したものが開示されており、弾性部材の付勢力の大きさに応じた減衰力を発生させることにより、引戸の動きを滑らかにしている。すなわち、引込装置に作用する付勢力が大きい初期動作時は、ロータリーダンパを二つ作動させて減衰力を大きくし、引込装置に作用する付勢力が小さくなる引戸が閉じる直前には、ロータリーダンパを一つだけ作動させて減衰力を小さくしている。
【0005】
特許文献2に記載の引込装置において、引込装置の引込みフレームには、ロータリーダンパが長手方向に間隔をおいて二つ取り付けられており、ロータリーダンパにはピニオンが備えられている。枠に取り付けられるガイドレールには、ラックが備えられている。引戸に取り付けられた操作部材がキャッチ部材を作動させると、引張りコイルバネにより、引込みフレームがガイドレールに対して閉じ方向に移動し始め、同時にピニオンがラック上を移動するので、ロータリーダンパも回転して、所定の減衰力が得られる。さらに引込みフレームが移動すると、一つ目のピニオンがラックから外れるので、減衰力が適度に低減され、引戸は滑らかに全閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−285933号公報
【特許文献2】特開2006−200300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記引込装置では、所定の緩衝性能を得るために、ロータリーダンパを引戸の移動方向に二つ並べて使用している。引戸の閉じ方向に位置する方のロータリーダンパは、引込装置が作動し始めてから引戸が完全に閉じるまでの間、絶えず作動しているので耐久性に問題が生ずる。
【0008】
そこで、本発明は、ダンパの耐久性を高くすることができる引込装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、枠に対して移動可能な開閉体を一方向に移動させるとき、前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える引込装置であって、前記枠及び前記開閉体の一方に取り付けられるトリガーピンと、前記枠及び前記開閉体の他方に取り付けられ、前記トリガーピンを捕捉して前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える引込装置本体と、を備え、前記引込装置本体は、前記枠及び前記開閉体の他方に取り付けられ、前記開閉体の移動方向に細長く伸びるベースと、前記トリガーピンを捕捉可能なトリガーキャッチャを有すると共に、このトリガーキャッチャが前記トリガーピンを捕捉した状態で前記ベースに対して長手方向に相対的にスライド可能なスライダと、前記ベースと前記スライダとの間に架け渡され、前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的にスライドするように付勢力を与え、これにより前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える弾性部材と、前記弾性部材の付勢力によって前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的に移動するのに抵抗して減衰力を発生させるダンパ機構と、を有し、
前記ダンパ機構は、減衰力を発生させるダンパ源になる第一及び第二のダンパと、前記ベースに長手方向にスライド可能に設けられるダンパベースと、前記ダンパベースに設けられ、前記ベースに対して前記ダンパベースが前記長手方向にスライドできないように前記ベースに係合したり、前記ベースに対して前記ダンパベースが前記長手方向にスライドできるように前記ベースとの係合を解除したりするダンパロックと、を含み、前記弾性部材の付勢力によって前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的に移動するとき、最初に、前記ダンパロックによって前記ベースと一体になった前記ダンパベースが前記スライダに対して相対的に移動し、これにより前記第一のダンパが減衰力を発生させ、その後、前記ダンパロックと前記ベースとの係合が解除されて、前記スライダ及び前記ダンパベースに対して前記ベースが相対的に移動し、これにより前記第二のダンパが減衰力を発生させる引込装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最初に第一のダンパを作動させ、その後、第一のダンパから第二のダンパに切り換えて第二のダンパを作動させることができる。引込装置が作動し始めてから開閉体が閉じるまでの間、第一又は第二のダンパが作動し続けることがないので、ダンパの耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における引込装置の外観図(図中(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は正面図を示す)
【図2】ガイドレールの詳細図(図中(A)はトリガーピン位置の断面図を示し、図中(B)は皿ねじ位置の断面図を示し、図中(C)はガイドレールの長手方向に沿った断面図を示し、図中(D)は正面図を示す)
【図3】引込装置本体の平面図(図中(A)は組み立てた状態を示し、図中(B)は部品の主要部を分解した状態を示す)
【図4】引込装置本体の断面図(図中(A)は組み立てた状態を示し、図中(B)は部品の主要部を分解した状態を示す)
【図5】ベースを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は断面図を示す)
【図6】スライダを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は底面図を示し、図中(D)は断面図を示し、図中(E)は左正面図を示し、図中(F)は右正面図を示す)
【図7】トリガープッシャを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は左正面図を示し、図中(D)は右正面図を示す)
【図8】トリガーキャッチャを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は底面図を示し、図中(D)は右正面図を示す)
【図9】誤動作復帰カムを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は右正面図を示す)
【図10】ダンパベースを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は左正面図を示し、図中(D)は右正面図を示す)
【図11】ダンパロックを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は左正面図を示す)
【図12】リニアダンパの側面図
【図13】ロータリーダンパを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は左正面図を示す)
【図14】引戸が閉じる場合の引込装置の動作を説明する平面図(図中(A)は引込開始の状態を示し、図中(B)はダンパ切り替え時の状態を示し、図中(C)は完全閉まり状態を示す)
【図15】引戸が閉じる場合の引込装置の動作を説明する断面図(図中(A)は引込開始の状態を示し、図中(B)はダンパ切り替え時の状態を示し、図中(C)は完全閉まり状態を示す)
【図16】トリガーキャッチャが回転し、スライド可能になる状態の詳細図
【図17】引戸が開く場合の引込装置の動作を説明する平面図(図中(A)は完全閉まり状態を示し、図中(B)は開き開始状態を示し、図中(C)はダンパロックがベースのロック孔に係合する状態を示し、図中(D)はダンパベースとベースが一体となって移動する状態を示す)
【図18】引戸が開く場合の引込装置の動作を説明する断面図(図中(A)は完全閉まり状態を示し、図中(B)は開き開始状態を示し、図中(C)はダンパロックがベースのロック孔に係合する状態を示し、図中(D)はダンパベースとベースが一体となって移動する状態を示す)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は引込装置の外観図を示す。引戸1の枠の上部には、引戸1の移動方向に細長く伸びるガイドレール2が固定される。細長く伸びる引込装置本体4はガイドレール2内に挿入され、その長さ方向の両端部に設けた戸車5,6によってガイドレール2内をスムーズに移動できるようになっている。引込装置本体4には引戸1が吊り下げられる。引戸1の開閉方向の動きと連動して引込装置本体4がガイドレール2内を移動する。引戸1は位置調整ユニット7を介して戸車5に連結される。引込装置本体4に対する引戸1の上下方向及び幅方向の位置は位置調整ユニット7によって調整できるようになっている。
【0013】
ガイドレール2には、トリガーピン8が装備されている。このトリガーピン8は引戸が閉じ方向へ移動し、引込装置本体4が作動を始める位置に固定される。引込装置本体4のカバー9には、引込装置本体4がトリガーピン8に向かって移動するときに、トリガーピン8を受け入れるスリット9aが形成される。
【0014】
図2は、ガイドレール2の詳細図を示す。ガイドレール2は断面略四角形に形成され、皿ねじ11によって枠に固定される。ガイドレール2の天井部には、トリガーピン8がガイドレール2内に突出するように固定される。ガイドレール2の底部には、ガイドレール2の長さ方向の全長に渡るスリット2aが形成される。引込装置本体4の戸車5,6は、ガイドレール2の底部の上面を走行する。戸車5,6からはスリット2aを介して戸車5,6と引戸1とを連結する連結軸5a(図1参照)が突出する。
【0015】
図3及び図4は、引込装置本体4の詳細図を示す。図3は引込装置本体4の平面図を示し、図4は引込装置本体4の垂直断面図を示す。図中(A)は組み立てた状態を示し、図中(B)は部品の主要部を分解した状態を示す。引込装置本体4は、ガイドレール2の長さ方向に細長く伸びるベース12と、ベース12に対して長さ方向にスライド可能なスライダ14と、を備える。
【0016】
図3に示すように、ベース12の長手方向の両端部には戸車5,6の回転軸17,16が固定され、戸車5,6は回転軸17,16の周りを回転可能になっている。ベース12には、幅方向の両側にスライダ14を案内する一対の側壁12aが形成される。スライダ14はベース12の側壁12aに案内されてベース12の長手方向にスライドする。ベース12とスライダ14との間には弾性部材としての引っ張りコイルばね15が架け渡される。スライダ14は引っ張りコイルばね15の付勢力によってベース12内を自動的にスライドする。
【0017】
スライダ14には、トリガーピン8を捕捉するためのトリガーキャッチャ18が組み込まれる。トリガーキャッチャ18はトリガープッシャ19の閉じ方向の先端部に水平面内で回転可能に支持される。誤動作復帰カム20もトリガープッシャ19に水平面内で回転可能に支持される。トリガーキャッチャ18の回転軸18a及び係止片18b(図4参照)は、誤動作復帰カム20の開口20aを貫通し、スライダ14に形成されたトリガーキャッチャ案内スリット14a及びベース12に形成されたトリガーキャッチャ案内溝12bに長手方向にスライド可能に挿入される。トリガープッシャ19とスライダ14との間には圧縮コイルばね21が架け渡される。
【0018】
引戸1が開いた状態では、図3に示すように、スライダ14はベース12の閉じ方向の端部のロック位置にいる。ベース12の底面のスライダ14が動作する領域には、長手方向に伸びる直線溝12b−1と、直線溝12b−1の閉じ方向の端部で側方に折れ曲がる係止溝12b−2と、からなるトリガーキャッチャ案内溝12bが形成される。トリガーキャッチャ18の係止片18bが係止溝12b−2に入ると、スライダ14がロックされる。トリガープッシャ19及び圧縮コイルばね21は、トリガーキャッチャ18の係止片18bが係止溝12b−2に入った状態を保持し、ひいてはスライダ14のロック位置を保持する。誤動作復帰カム20は、誤動作によりスライダ14のロックが外れた場合でも、スライダ14をロック位置に復帰させるために設けられる。
【0019】
ベース12の一対の側壁12a間には、ダンパベース22がスライド可能に組み込まれる。ベース12の底部には長手方向に離間して一対のダンパベース案内溝12cが形成される。ダンパベース22にはダンパベース案内溝12c内に入り込む一対の脚部22gが長手方向に離間して形成される。ダンパベース22は、ベース12の一対の側壁12a及びダンパベース案内溝12cに案内されてベース12を長手方向にスライドする。
【0020】
ダンパベース22には、第一のダンパとしてのリニアダンパ24及び第二のダンパとしてのロータリーダンパ25が固定される。リニアダンパ24は、筒状のダンパ本体24aと、ダンパ本体24aに対して伸縮可能なロッド24bと、からなり、ロッド24bが縮むことによって減衰力を発生させる。ロータリーダンパ25は、円盤状のダンパ本体25aと、ダンパ本体25aに対して回転可能な回転軸25bと、からなり、回転軸25bが回転することによって減衰力を発生させる。回転軸25bにはピニオン27が一体に結合される。
【0021】
リニアダンパ24のダンパ本体24a及びロータリーダンパ25のダンパ本体25aは、ダンパベース22に結合される。リニアダンパ24のロッド24bはスライダ14に連結される。スライダ14がダンパベース22に向かって相対的に移動すると、リニアダンパ24の減衰力が発生する。ベース12の、引戸の閉じ方向と反対側にはラック26が設けられており、ロータリーダンパ25のピニオン27がラック26に噛み合う。ダンパベース22がベース12の閉じ方向とは反対側の端部に向かって相対的に移動すると、ロータリーダンパ25が回転し、減衰力が発生する。
【0022】
図4に示すように、ダンパベース22の閉じ方向の端部には、ダンパロック28が垂直面内で回転可能に取り付けられる。ベース12にはダンパロック28に係合するダンパロック係合部としてのロック孔12dが形成される。ダンパロック28がベース12のロック孔12dに係合すると、ダンパベース22がロックされ、ベース12に対してダンパベース22が長手方向にスライドできなくなる。ダンパロック28とベース12のロック孔12dとの係合が解除されると、ベース12に対してダンパベース22が長手方向にスライドできるようになる。
【0023】
引込装置本体4の各部品の構造は以下のとおりである。
【0024】
図5はベース12を示す。細長く伸びるベース12の長さ方向の両端部には、戸車5,6に連結される連結部12eが形成される。ベース12の閉じ方向とは反対側の端部には、引っ張りコイルばねの一端が連結される壁部12fが形成される。ベース12の幅方向の両側には、一対の側壁12aが形成される。一対の側壁12aでベース12に対してスライダ14が長手方向にスライドするのを案内し、またベース12に対してダンパベース22が長手方向にスライドするのを案内する。
【0025】
ベース12の閉じ方向側の底部には、長手方向に伸びる直線溝12b−1と、直線溝12b−1の閉じ方向の端部で側方に折れ曲がる係止溝12b−2と、からなるトリガーキャッチャ案内溝12bが形成される。このトリガーキャッチャ案内溝12bにはトリガーキャッチャ18の回転軸18a及び係止片18bが挿入される。
【0026】
トリガーキャッチャ案内溝12bの閉じ方向とは反対側の端部には、ダンパロックに係合するダンパロック係合部として四角形のロック孔12dが形成される。ロック孔12dの閉じ方向とは反対側の側面12d−1は、上方から下方に向かってロック孔12dの奥行が長くなるように傾斜させられる。図4に示すように、スライダ14がリニアダンパ24のロッド24bを押したときにも、ダンパロック28とロック孔12dとの係合を確実にするためである。
【0027】
ベース12の底部には、ダンパベース22を案内する一対のダンパベース案内溝12cが長手方向に離間して形成される。ベース12の側壁にはラック26が形成される。
【0028】
図6はスライダ14の詳細図を示す。スライダ14には、その閉じ方向側に長手方向に伸びる直線スリット14a−1と、直線スリット14a−1の閉じ方向の端部で側方に折れ曲がる係止スリット14a−2と、からなるトリガーキャッチャ案内スリット14aが形成される。このトリガーキャッチャ案内スリット14aは、ベース12のトリガーキャッチャ案内溝12bに対応していて、スライダ14を上下方向に貫通する。スライダ14がロック位置まで移動すると、トリガーキャッチャ案内スリット14aとトリガーキャッチャ案内溝12bとが重なる。このとき、トリガーキャッチャ18の係止片18b(図4参照)が、トリガーキャッチャ案内スリット14aの係止スリット14a―2及びトリガーキャッチャ案内溝12bの係止溝12b−2に入り込むように回転する(図3参照)。圧縮コイルばね21はトリガープッシャ19を閉じ方向に押すので、トリガーキャッチャ18の係止片18bが係止スリット14a−2及び係止溝12b−2に嵌まった状態が保持され、これによりスライダ14のロック位置が保持される。
【0029】
スライダ14には、トリガープッシャ19をスライド可能に案内する案内バー14cが形成される。スライダ14には、圧縮コイルばね21の内側に嵌まる突起部14dが形成される。スライダ14の閉じ方向と反対側の端部には、リニアダンパ24のロッド24bの先端に連結される連結スリット14eが形成される。図4に示すように、ロッド24bの先端には止め輪24cが取り付けられる。止め輪24cを連結スリット14eに嵌めることで止め輪24cとスライダ14が結合される。
【0030】
図6に示すように、スライダ14の閉じ方向と反対側の端部には、ダンパロック28に当接してダンパロック28を回転させる操作片14fが形成される(図15B参照)。スライダ14の底面には、操作片14fによるダンパロック28の回転動作を許容するための凹部14gが形成される。
【0031】
図7は、トリガープッシャ19を示す。トリガープッシャ19の閉じ方向の反対側の端部には、圧縮コイルばね21の内側に嵌まる突起部19aが形成される。トリガープッシャ19の閉じ方向の端部には、孔19bが空けられる。この孔19bにトリガーキャッチャ18の回転軸18aが回転可能に嵌められる。トリガープッシャ19の底部側には、スライダ14の案内バー14cに案内される案内溝19cが形成される。さらにトリガープッシャ19の底面側には、ベース12の直線溝12b−1にスライド可能に嵌まる突起部19dが形成される。
【0032】
図8は、トリガーキャッチャ18を示す。トリガーキャッチャ18は円盤状の本体部18cと、本体部18cから下方に突出する回転軸18aと、本体部の下方に回転軸18aと隣接して設けられる係止片18bと、を有する。本体部18cの上面には、トリガーピン8を受け入れるためのトリガーピン受入溝18dが形成される。トリガーピン受入溝18dの周囲は壁で囲まれているが、その一部にトリガーピン8が入り込む入口部18eが形成される。トリガーキャッチャ18の回転軸18a及び係止片18bは、ベース12のトリガーキャッチャ案内溝12bに嵌まり込む。
【0033】
図9は、誤動作復帰カム20を示す。誤動作復帰カム20は、トリガーキャッチャ18に嵌められた後、トリガーキャッチャ18と共にトリガープッシャ19に回転可能に支持される。誤動作復帰カム20には、トリガーキャッチャ18の回転軸18a及び係止片18bが嵌められる扇形の開口20aが形成される。この扇形の開口20aは、誤動作復帰カム20に対するトリガーキャッチャ18の回転を許容できるように、トリガーキャッチャ18の回転軸18a及び係止片18bの大きさよりも大きく形成される。誤動作復帰カム20の閉じ方向側の端部には、スリット20bが入れられ、これにより誤動作復帰カム20は上下方向に二股に分かれている。上側のピース20cには、トリガーピン8を捕まえることができるように係止片20dが形成される。
【0034】
誤動作によりスライダ14がロック位置から外れていると、トリガーキャッチャ18のトリガーピン受入溝18dの入口部18eがトリガーピン8を受け入れられる状態にならないので、引戸1を閉じ方向に移動させてスライダ14をトリガーピン8に近付けてもトリガーキャッチャ18がトリガーピン8を捕捉することができない。このような場合でも、誤動作復帰カム20の上側のピース20cが撓み、上側のピース20cの係止片20dがトリガーピン8を捕捉する。このため、スライダ14をロック位置に復帰させることができる。
【0035】
図10は、ダンパベース22を示す。ダンパベース22は、リニアダンパ24のダンパ本体が取り付けられるリニアダンパ据付部22aと、リニアダンパ据付部22aの閉じ方向の端部に設けられるダンパロック連結ブラケット22cと、リニアダンパ据付部22aの閉じ方向とは反対側に設けられ、ロータリーダンパ25のダンパ本体25aが取り付けられる板状のロータリーダンパ据付部22bと、を備える。
【0036】
リニアダンパ据付部22aの幅方向の両端には、内側に向かって折り曲げられる一対の爪部22dが設けられ、リニアダンパ24のダンパ本体24aは一対の爪部22d間に幅方向に挟まれる。リニアダンパ据付部22aの長手方向の両端部には、一対の端部壁22eが形成され、ダンパ本体24aは一対の端部壁22e間に長手方向に挟まれる。ダンパロック連結ブラケット22cは、リニアダンパ据付部22aから閉じ方向に向かって突出する。ダンパロック連結ブラケット22cには、ダンパロック28がスプリングピンを介して回転可能に連結される。ダンパロック28はスプリングピンによってベースのロック孔12dに付勢される。板状のロータリーダンパ据付部22bの底部には、ロータリーダンパ25のダンパ本体25aを位置決めするための位置決め突起22fが形成される。
【0037】
図11はダンパロック28を示す。ダンパロック28には、ダンパベース22にダンパロック28を連結するためのスプリングピンが挿入される貫通穴28aが形成される。ダンパロック28はこの貫通穴28aを中心に垂直面内でシーソーのように回転する。ダンパロック28の閉じ方向の端部の上面には、スライダ14の凹部14gの閉じ方向とは反対側14g−1(図6(D)参照)に係合するスライダ側フック28bが形成され、ダンパロック28の下側の長手方向の中央部には、ベース12のロック孔12dの閉じ方向とは反対側12d−1(図5(C)参照)に係合するベース側フック28cが形成される。
【0038】
図12はリニアダンパ24を示す。リニアダンパ24は筒状のダンパ本体24aと、ダンパ本体24aに対して伸縮可能なロッド24bと、を備える。ダンパ本体24a内にはピストン(図示せず)が設けられ、ピストンがロッド24bに結合されている。ダンパ本体24a内にはオイルが充填される。ロッド24bの伸縮に伴って、ピストンがダンパ本体内を移動し、オイルの粘性抵抗によって減衰力が発生する。ピストンにはオイルが通過可能なオリフィスが形成されることもある。
【0039】
図13はロータリーダンパ25を示す。ロータリーダンパ25は、円盤状のダンパ本体25aと、ダンパ本体25aに対して回転可能な回転軸25bと、回転軸25bに結合されるピニオン27と、を備える。ダンパ本体25a内にはオイルが充填される。回転軸25bにはロータ(図示せず)が結合される。ダンパ本体25a内でロータが回転すると、オイルの粘性抵抗により減衰力が発生する。ダンパ本体25aには一対の張出し部25cが形成され、この張出し部25cがダンパベース22に結合される。
【0040】
以下に、引戸1が閉じる場合の引込装置の動作を説明する。図14は引込装置の平面図を示し、図15は引込装置の断面図を示す。図14及び図15中、(A)は引込開始の状態を示し、(B)はダンパ切り替え時の状態を示し、(C)は完全閉まり状態を示す。
【0041】
引戸1を人手で閉じ方向に移動させると、引戸1と共に引込装置本体4が閉じ方向に移動する。図中(A)に示すように、スライダ14が引込開始位置まで移動すると、トリガーキャッチャ18がトリガーピン8に当接する。すると、トリガーキャッチャ18が回転してトリガーピン8を捕捉し、スライダ14がベース12に対してスライド可能になる。スライダ14とベース12との間には引っ張りコイルばね15が介在しているので、スライダ14をスライドさせようとする引っ張り力が働く。トリガーキャッチャ18はガイドレール2に固定されたトリガーピン8を捕捉しているので、トリガーキャッチャ18が移動することなく、ベース12が閉じ方向に移動する。
【0042】
ベース12の閉じ方向の移動に伴い、引戸1が閉じ方向に移動を始めるため、引戸1を閉じる力が軽減される。このとき、ロッド24bがリニアダンパ24のダンパ本体24aの方向に移動するため、リニアダンパ24による減衰力が発生する。引っ張りコイルばね15のばね力が大きな初期動作時にリニアダンパ24が作動し、大きな減衰力を発生させるので、引戸1の動作を滑らかにすることが可能となる。
【0043】
図16は、トリガーキャッチャ18が回転し、スライド可能になる状態の詳細図を示す。図中(1−1)、(2−1)、(3−1)、(4−1)はトリガーキャッチャ18が回転する前の状態を示し、(1−2)、(2−2)、(3−2)、(4−2)はトリガーキャッチャ18が回転した後の状態を示す。図16の上段(1−1)、(1−2)はトリガーピン8及びトリガーキャッチャ18の平面図を示し、上から二段目(2−1)、(2−2)はトリガーキャッチャ18の平面図を示し、上から三段目(3−1)、(3−2)はトリガーキャッチャ18を取り外した状態を示し、最下段(3−1)、(3−2)はトリガーキャッチャ18及び誤動作復帰カム20を取り外した状態を示す。
【0044】
図16の上段に示すように、トリガーピン8がトリガーキャッチャ18に当接すると、トリガーキャッチャ18が回転する。
【0045】
図16の上から二段目に示すように、トリガーキャッチャ18の回転に伴い、トリガーキャッチャ18の係止片18bがスライダ14の係止スリット14a−2及びベース12の係止溝12b−2から抜け出る。
【0046】
図16の上から三段目に示すように、トリガーキャッチャ18の回転に伴い、誤動作復帰カム20も回転する。誤動作復帰カム20の扇形の開口20aの開き角度は係止片18bよりも大きいので、誤動作復帰カム20の回転角度はトリガーキャッチャ18よりも小さくなる。このため、誤動作復帰カム20が回転してもスライダ14からはみ出すことはない。
【0047】
図16の最下段に示すように、トリガーキャッチャ18の回転に伴い、トリガーキャッチャ18の回転軸18aを支持するトリガープッシャ19は、閉じ方向とは反対側に後退し、圧縮コイルばね21を縮める。
【0048】
再び図14(B)及び図15(B)に示すように、ベース12がダンパ切り替え位置まで移動すると、ロッド24bがダンパ本体24aの中に完全に収容され、リニアダンパ24による減衰力が消滅する。これと同時に、スライダ14がスプリングピンのばね力に抗してダンパロック28を回転させて、ダンパロック28とベース12との係合を外す。回転したダンパロック28はスライダ14の凹部14g内に入り込み、ベース12がダンパベース22に対して、引戸1の閉じ方向に移動を始める。ダンパベース22の閉じ方向と反対側の端部には、ロータリーダンパ25が装備されているため、ベース12に装備されているラック26とロータリーダンパ25のピニオン27が噛合い、ロータリーダンパ25が回転する。ロータリーダンパ25の回転によって減衰力が発生する。リニアダンパ24の動作が終了した後も、ロータリーダンパ25に切り換わり、引戸1が全閉状態になるまでロータリーダンパ25が減衰力を発生させる。このため、全閉時の衝突や騒音の発生を防ぐことが可能となる。引き込み動作の後半では引っ張りコイルばね15の引っ張り力も小さくなるので、ロータリーダンパ25が発する減衰力も小さくて済む。
【0049】
最終的には、図14(C)及び図15(C)に示すように、引戸が完全に閉の状態になる。
【0050】
次に、引戸が開く場合の引込装置の動作を説明する。図17は引込装置の平面図を示し、図18は引込装置の断面図を示す。図17及び図18中、(A)は完全閉まり状態を示し、(B)は開き開始状態を示し、(C)はダンパロックがベース12のロック孔に係合する状態を示し、(D)はダンパベース22とベース12が一体となって移動する状態を示す。
【0051】
図17(A)及び図18(A)に示すように、引戸1が完全に閉じた状態では、スライダ14の凹部14gにダンパロック28が入り込んでいるため、スライダ14に対して、引戸1の移動とともにベース12が移動できる状態になっている。
【0052】
図18(B)に示すように、引戸1の開き動作が開始すると、ダンパロック28のスライダ側フック28bがスライダ14の凹部14gに係合するので、スライダ14及びダンパベース22に対してベース12が開き方向に移動する。このとき、ロータリーダンパ25のピニオン27は、ベース12に装備されたラック26と噛合いながら回転する。ロータリーダンパ25は、引戸1が開く時の回転方向には減衰力が発生しないように設定されているため、引戸1を開け始める時の荷重は、引っ張りコイルばね15を伸ばすことによって発生する弾性力のみである。
【0053】
図18(C)に示すように、ベース12のロック孔12dがダンパロック位置まで移動すると、ダンパロック28のベース側フック28cがスプリングピンのばね力によってロック孔12dに嵌まり、ダンパベース22はベース12と一体で移動するようになる。ベース12が引戸1の開き方向に移動するため、リニアダンパ24のダンパ本体24aからロッド24bが引き出される。
【0054】
図17(D)及び図18(D)に示すように、リニアダンパ24のダンパ本体24aからロッド24bが完全に引き出され、スライダ14がベース12のロック位置まで移動すると、圧縮コイルばね21の弾性力により、トリガーキャッチャ18及び誤動作復帰カム20が回転し、スライダ14がロック位置に固定される。このとき、トリガーキャッチャ18がトリガーピン8を解放するので、引込装置を動作させないで引戸を移動させることができるようになる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。例えば本発明の引込装置は、引戸だけでなく、折り戸、引出し等の開閉体の開閉動作をアシストするのに用いられてもよい。また、上記実施形態では、第一のダンパとしてリニアダンパを使用し、第二のダンパとしてロータリーダンパを使用しているが、第一及び第二のダンパとして減衰力の異なるリニアダンパを使用してもよいし、第一及び第二のダンパとして減衰力の異なるロータリーダンパを使用してもよい。上記実施形態では、トリガーキャッチャとスライダとが別体であるが、トリガーキャッチャとスライダとが一体であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…引戸
4…引込装置本体
8…トリガーピン
12…ベース
12d…ロック孔(ダンパロック係合部)
14…スライダ
15…引っ張りコイルばね(弾性部材)
18…トリガーキャッチャ
22…ダンパベース
24…リニアダンパ(第一のダンパ)
24a…ダンパ本体
24b…ロッド
25…ロータリーダンパ(第二のダンパ)
25a…ダンパ本体
25b…回転軸
28…ダンパロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠に対して移動可能な開閉体を一方向に移動させるとき、前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える引込装置であって、
前記枠及び前記開閉体の一方に取り付けられるトリガーピンと、
前記枠及び前記開閉体の他方に取り付けられ、前記トリガーピンを捕捉して前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える引込装置本体と、を備え、
前記引込装置本体は、
前記枠及び前記開閉体の他方に取り付けられ、前記開閉体の移動方向に細長く伸びるベースと、
前記トリガーピンを捕捉可能なトリガーキャッチャを有すると共に、このトリガーキャッチャが前記トリガーピンを捕捉した状態で前記ベースに対して長手方向に相対的にスライド可能なスライダと、
前記ベースと前記スライダとの間に架け渡され、前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的にスライドするように付勢力を与え、これにより前記開閉体に前記一方向に付勢力を与える弾性部材と、
前記弾性部材の付勢力によって前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的に移動するのに抵抗して減衰力を発生させるダンパ機構と、を有し、
前記ダンパ機構は、
減衰力を発生させるダンパ源になる第一及び第二のダンパと、
前記ベースに長手方向にスライド可能に設けられるダンパベースと、
前記ダンパベースに設けられ、前記ベースに対して前記ダンパベースが前記長手方向にスライドできないように前記ベースに係合したり、前記ベースに対して前記ダンパベースが前記長手方向にスライドできるように前記ベースとの係合を解除したりするダンパロックと、を含み、
前記弾性部材の付勢力によって前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的に移動するとき、
最初に、前記ダンパロックによって前記ベースと一体になった前記ダンパベースが前記スライダに対して相対的に移動し、これにより前記第一のダンパが減衰力を発生させ、
その後、前記ダンパロックと前記ベースとの係合が解除されて、前記スライダ及び前記ダンパベースに対して前記ベースが相対的に移動し、これにより前記第二のダンパが減衰力を発生させる引込装置。
【請求項2】
前記ダンパベースには、前記ダンパロックが回転可能に設けられ、
前記ベースには、前記ダンパロックに係合するダンパロック係合部が形成され、
前記弾性部材の付勢力によって前記ベースに対して前記スライダが前記長手方向に相対的に移動するとき、
前記スライダが前記ダンパロック係合部に係合した状態の前記ダンパロックを回転させ、これにより前記ダンパロックと前記ベースとの係合が解除されることを特徴とする請求項1に記載の引込装置。
【請求項3】
前記第一のダンパが発生させる減衰力は前記第二のダンパが発生させる減衰力よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の引込装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−174272(P2011−174272A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38302(P2010−38302)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(592166126)株式会社中尾製作所 (31)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】