説明

張力センサおよび同張力センサを採用した車両用電動パーキングブレーキ装置

【課題】 張力センサの構成部品である圧縮コイルスプリングの製作精度に起因する検出精度の悪化を抑制する。
【解決手段】 張力センサTSは、スプリングケース51、シャフト52、圧縮コイルスプリング53、マグネットケース55を備え、スプリングケース51に設けた検出素子61、マグネットケース55に設けたマグネット62を備える。張力センサTSでは、軸方向の引張力が作用して圧縮コイルスプリング53が圧縮変形するとき、マグネット62と検出素子61が相対移動し前記引張力が検出可能である。シャフト52とスプリングケース51の取付孔51a間に所定量の径方向隙間が設けられ、シャフト52とマグネットケース55の支持孔55a間に所要量の径方向隙間が設けられている。スプリングケース51とマグネットケース55間にマグネットケース55をスプリングケース51に対して設定方向に移動させるガイド手段(56,59)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル等の索条に作用する引張力を検出可能な張力センサおよび同張力センサを採用した車両用電動パーキングブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
張力センサを採用した車両用電動パーキングブレーキ装置の一つとして、電気モータと、この電気モータの回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構と、この変換機構の出力部に連結されて前記直線駆動力をパーキングブレーキに伝達するケーブルを備えるとともに、前記ケーブルに作用する引張力を検出可能な張力センサと、前記電気モータの回転駆動を制御する電気制御装置を備えていて、前記電気モータの正回転駆動により前記ケーブルが引っ張られて前記パーキングブレーキが解除状態から制動状態とされ、前記電気モータの逆回転駆動により前記ケーブルがリリースされて前記パーキングブレーキが制動状態から解除状態とされるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−161101号公報
【0003】
上記した公報の電動パーキングブレーキ装置においては、前記ケーブルに作用する引張力を検出可能な張力センサとして、スプリングケースに設けた取付孔に軸方向にて移動可能に組付けられて一部が前記スプリングケース内に収容され残部が前記スプリングケース外に突出するシャフト(上記公報ではロッドと記載されている)と、このシャフトにおけるケース内部位の外周に同軸的に配置され一端にて前記スプリングケースに係合し他端にて前記シャフトに係合する圧縮コイルスプリングと、前記シャフトの外周に支持孔にて組付けられて前記シャフトとともに軸方向に一体的に移動可能でマグネットを支持するマグネットケースと、前記スプリングケースに一体的に組付けられて前記マグネットとにより移動量検出手段(マグネットと検出素子の相対移動量を検出する手段)を構成する検出素子とを備えていて、前記スプリングケースと前記シャフト間に軸方向の引張力が作用して前記圧縮コイルスプリングが圧縮変形するとき、前記マグネットと前記検出素子が相対移動して前記引張力が検出可能であるものが採用されている。
【発明の開示】
【0004】
上記した張力センサでは、シャフトがスプリングケースに対して軸方向に移動可能に組付けられているため、シャフトとスプリングケース間の摺動抵抗を小さくすべく、スプリングケースに設けた取付孔とシャフトの外周間に所定量の隙間(シャフトの円滑な軸方向移動を確保するための隙間)を設ける必要があるが、マグネットケースがシャフトに対して軸方向に一体的に移動可能であるため、マグネットケースの支持孔とシャフトの外周間に上記した隙間を設ける必要はない。
【0005】
このため、スプリングケースに設けた取付孔とシャフトの外周間に所定量の隙間を設け、マグネットケースの支持孔とシャフトの外周間に上記した隙間を設けないように設定すると、圧縮コイルスプリングにおける各軸方向端面が圧縮コイルスプリングの軸心に対して直角に形成されなくて、これらの平行度が悪いこと等(圧縮コイルスプリングの製作精度)に起因して、シャフトがスプリングケースに対して傾くことがあり、このシャフトの傾きによってマグネットと検出素子間に不測の相対移動が生じて、引張力の検出精度を悪化させるおそれがある。なお、圧縮コイルスプリングがシャフトの外周にて自由に回転可能な構成であると、上記したシャフトの傾きは圧縮コイルスプリングの回転に応じて変化する。
【0006】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、スプリングケースに設けた取付孔に軸方向にて移動可能に組付けられて一部が前記スプリングケース内に収容され残部が前記スプリングケース外に突出するシャフトと、このシャフトにおけるケース内部位の外周に同軸的に配置され一端にて前記スプリングケースに係合し他端にて前記シャフトに係合する圧縮コイルスプリングと、前記シャフトの外周に支持孔にて組付けられて前記シャフトとともに軸方向に一体的に移動可能でマグネットを支持するマグネットケースと、前記スプリングケースに一体的に組付けられて前記マグネットとにより移動量検出手段を構成する検出素子を備えていて、前記スプリングケースと前記シャフト間に軸方向の引張力が作用して前記圧縮コイルスプリングが圧縮変形するとき、前記マグネットと前記検出素子が相対移動して前記引張力が検出可能である張力センサにおいて、前記シャフトと前記スプリングケースの取付孔間に所定量の径方向隙間を設けるとともに、前記シャフトと前記マグネットケースの支持孔間に所要量の径方向隙間を設け、前記スプリングケースと前記マグネットケース間に前記マグネットケースを前記スプリングケースに対して設定方向に移動させるガイド手段を設けたことに特徴がある。
【0007】
この場合において、前記マグネットケースは前記シャフトの外周に一体的に組付けた環状シートの座面に軸方向にて弾撥的に係合した状態で前記シャフトの外周に組付けられていて、前記座面は前記シャフトの軸心に中心がある球面形状に形成されていることも可能である。また、前記ガイド手段は、前記スプリングケースまたは前記マグネットケースに一体的に固着されて設定方向に延びるガイドピンと、前記マグネットケースまたは前記スプリングケースに設けられて前記ガイドピンの外周に前記ガイドピンの軸方向に沿って摺動可能に嵌合されるガイド孔を備えていることも可能である。
【0008】
上記した本発明の張力センサにおいては、圧縮コイルスプリングにおける各軸方向端面が圧縮コイルスプリングの軸心に対して直角に形成されなくて、これらの平行度が悪いこと等に起因して、シャフトがスプリングケースに対して傾くことがあっても、このシャフトの傾きは、スプリングケースに対してガイド手段により移動方向を規定されているマグネットケースの支持孔内にてシャフトが傾動することにより吸収される。このため、圧縮コイルスプリングにおける軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフトがスプリングケースに対して傾動しても、マグネットケースがスプリングケースに対して殆ど傾動しないようにすることが可能である。したがって、マグネットケースに設けたマグネットとスプリングケースに設けた検出素子間に生じる不測の相対移動(マグネットケースのスプリングケースに対する傾動に伴うもの)を小さくすることが可能であり、かかる相対移動に伴う引張力の検出精度悪化を抑制することが可能である。
【0009】
また、本発明は、スプリングケースに設けた取付孔に軸方向にて移動可能に組付けられて一部が前記スプリングケース内に収容され残部が前記スプリングケース外に突出するシャフトと、このシャフトにおけるケース内部位の外周に同軸的に配置され一端にて前記スプリングケースに係合し他端にて前記シャフトに係合する圧縮コイルスプリングと、前記シャフトの外周に支持孔にて組付けられて前記シャフトとともに軸方向に一体的に移動可能で検出素子を支持する検出素子ケースと、前記スプリングケースに一体的に組付けられて前記検出素子とにより移動量検出手段を構成するマグネットを備えていて、前記スプリングケースと前記シャフト間に軸方向の引張力が作用して前記圧縮コイルスプリングが圧縮変形するとき、前記マグネットと前記検出素子が相対移動して前記引張力が検出可能である張力センサにおいて、前記シャフトと前記スプリングケースの取付孔間に所定量の径方向隙間を設けるとともに、前記シャフトと前記検出素子ケースの支持孔間に所要量の径方向隙間を設け、前記スプリングケースと前記検出素子ケース間に前記検出素子ケースを前記スプリングケースに対して設定方向に移動させるガイド手段を設けたことに特徴がある。
【0010】
この場合において、前記検出素子ケースは前記シャフトの外周に一体的に組付けた環状シートの座面に軸方向にて弾撥的に係合した状態で前記シャフトの外周に組付けられていて、前記座面は前記シャフトの軸心に中心がある球面形状に形成されていることも可能である。また、前記ガイド手段は、前記スプリングケースまたは前記検出素子ケースに一体的に固着されて設定方向に延びるガイドピンと、前記検出素子ケースまたは前記スプリングケースに設けられて前記ガイドピンの外周に前記ガイドピンの軸方向に沿って摺動可能に嵌合されるガイド孔を備えていることも可能である。
【0011】
上記した本発明の張力センサにおいては、圧縮コイルスプリングにおける各軸方向端面が圧縮コイルスプリングの軸心に対して直角に形成されなくて、これらの平行度が悪いこと等に起因して、シャフトがスプリングケースに対して傾くことがあっても、このシャフトの傾きは、スプリングケースに対してガイド手段により移動方向を規定されている検出素子ケースの支持孔内にてシャフトが傾動することにより吸収される。このため、圧縮コイルスプリングにおける軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフトがスプリングケースに対して傾動しても、検出素子ケースがスプリングケースに対して殆ど傾動しないようにすることが可能である。したがって、検出素子ケースに設けた検出素子とスプリングケースに設けたマグネット間に生じる不測の相対移動(検出素子ケースのスプリングケースに対する傾動に伴うもの)を小さくすることが可能であり、かかる相対移動に伴う引張力の検出精度悪化を抑制することが可能である。
【0012】
また、電気モータと、この電気モータの回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構と、この変換機構の出力部に連結されて前記直線駆動力をパーキングブレーキに伝達するケーブルを備えるとともに、前記ケーブルに作用する引張力を検出可能な張力センサと、前記電気モータの回転駆動を制御する電気制御装置を備えていて、前記電気モータの正回転駆動により前記ケーブルが引っ張られて前記パーキングブレーキが解除状態から制動状態とされ、前記電気モータの逆回転駆動により前記ケーブルがリリースされて前記パーキングブレーキが制動状態から解除状態とされるように構成した車両用電動パーキングブレーキ装置において、前記張力センサとして、上記した張力センサを採用することも可能である。この場合には、ケーブルに作用する引張力の検出精度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した自動車用の電動パーキングブレーキ装置を示していて、この電動パーキングブレーキ装置は、電気モータ11の出力である回転駆動力を減速して伝達する減速機構Aと、この減速機構Aを介して伝達される電気モータ11の回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構Bと、この変換機構Bにより変換された直線駆動力によって駆動されるとともに直線駆動力を二つの出力部に分配するイコライザ12を備えている。
【0014】
また、電動パーキングブレーキ装置は、イコライザ12の各出力部12a,12bに連結されて直線駆動力を各パーキングブレーキ13,14に伝達する一対のケーブル15,16と、一方のケーブル15におけるインナーワイヤ15aに作用する引張力を検出可能な張力センサTSと、電気モータ11の回転駆動を制御する電気制御装置ECUを備えている。
【0015】
なお、電気モータ11と変換機構B間の回転駆動伝達系(例えば、減速機構Aと変換機構Bの連結部位)に、ワンウェイ動力伝達機構(図示省略)が介装されることもある。ワンウェイ動力伝達機構は、電気モータ11から変換機構Bへの回転駆動力は伝達するが、変換機構Bから電気モータ11への回転駆動力の伝達は阻止して、電気モータ11の正回転駆動停止時に、パーキングブレーキ13,14の制動状態を保持可能である。
【0016】
電気モータ11は、電気制御装置ECUによって作動を制御されるようになっていて、運転者が制動スイッチSW1を操作することにより正方向に回転駆動され、運転者が解除スイッチSW2を操作することにより逆方向に回転駆動されるようになっている。減速機構Aは、入力歯車21、中間大歯車22、中間小歯車23および出力歯車24によって構成されていて、ハウジング31とこのハウジング31の一側に組付けたケーシング32間の収容部内に組み込まれている。
【0017】
入力歯車21は、電気モータ11の出力軸11aに形成されていて、出力軸11aと一体的に回転する。中間大歯車22は、ハウジング31とケーシング32に支持された支持軸33上に回転自在に組付けられていて、入力歯車21と常時噛合している。中間小歯車23は、中間大歯車22と一体的に形成されていて、支持軸33上に回転自在に組付けられており、出力歯車24に常時噛合している。出力歯車24は、ねじ軸41の端部にトルク伝達可能に組付けられている。
【0018】
変換機構Bは、出力歯車24に対して同軸的かつ一体回転可能に連結されたねじ軸41を入力要素とし、このねじ軸41に螺合して組付けたナット42を出力要素とする構成であり、ねじ軸41が正方向に回転駆動されることによりナット42が図1右方の解除位置(図示位置)から図1左方の制動位置に向けてねじ軸41の軸線方向に移動され、また、ねじ軸41が逆方向に回転駆動されることによりナット42が図1右方の解除位置に向けてねじ軸41の軸線方向に移動されるようになっている。
【0019】
ねじ軸41は、ケーブル15,16の移動方向を軸方向として配置されていて、二条の台形雄ねじ(雄ねじの条数や形状は適宜変更可能である)を有しており、ハウジング31に対して軸方向に移動不能かつ回転可能に組付けられている。ナット42は、連結ピン43を介してイコライザ12と連結されていて、イコライザ12を揺動可能(連結ピン43周りに回動可能)に支持している。
【0020】
イコライザ12は、ナット42に作用する直線駆動力を二つの出力部に等分に分配するものであり、その中央部にてナット42に揺動可能に組付けられている。また、イコライザ12は、一方の出力部であるアーム部12aにて、一方のケーブル15におけるインナーワイヤ15aの一端と張力センサTSを介して連結され、他方の出力部であるアーム部12bにて、他方のケーブル16におけるインナーワイヤ16aの一端と直接に連結されている。
【0021】
一方のケーブル15は、インナーワイヤ15aと、このインナーワイヤ15aの両端部以外の外周を被覆するアウターチューブ15bによって構成されていて、インナーワイヤ15aの他端部は、一方のパーキングブレーキ13の作動部に連結されている。他方のケーブル16は、インナーワイヤ16aと、このインナーワイヤ16aの両端部以外の外周を被覆するアウターチューブ16bによって構成されていて、インナーワイヤ16aの他端部は、他方のパーキングブレーキ14の作動部に連結されている。
【0022】
張力センサTSは、ケーブル15におけるインナーワイヤ15aの引張力を検出して電気制御装置ECUに出力するものであり、図2〜図4にて詳細に示したように、スプリングケース51と、シャフト52を備えるとともに、大小一対の圧縮コイルスプリング53、54を備えている。また、張力センサTSは、マグネットケース55と、ガイドピン56および引張コイルスプリング57を備えている。
【0023】
スプリングケース51は、ロアーケース51Aと、これの上部に固着されたアッパーケース51Bによって構成されている。ロアーケース51Aは、シャフト52を軸方向にて移動可能に組付けるための取付孔51a(図3参照)と、インナーワイヤ15aの一端部を組付けるための切欠51b(図2および図3参照)を有していて、大小一対の圧縮コイルスプリング53、54を内部に収容している。ロアーケース51Aの取付孔51aは、シャフト52の外径より所定量大径であり、シャフト52と取付孔51a間には所定量の径方向隙間(シャフト52の円滑な軸方向移動を確保するための隙間)が設けられている。
【0024】
アッパーケース51Bは、引張コイルスプリング57の係止部51cを有するとともに、ホールIC素子(検出素子)61をそれぞれ内蔵した一対のアーム部51dを有していて、ロアーケース51Aの圧縮コイルスプリング53、54を収容している部分をカバーしている。また、ロアーケース51Aとアッパーケース51Bには、ガイドピン56を嵌合固定するための取付孔51eが形成されている。
【0025】
シャフト52は、中間部にてロアーケース51Aの取付孔51aに軸方向にて移動可能に組付けられている。また、シャフト52は、一部がスプリングケース51内に収容され、残部がスプリングケース51外に突出していて、スプリングケース51外に突出している部分にて、マグネットケース55を支持するとともに、イコライザ12のアーム部12aに連結ピン19を介して連結されている。
【0026】
圧縮コイルスプリング53は、圧縮コイルスプリング54に比して線径が大であってばね定数が大であり、シャフト52におけるケース内部位の外周に同軸的に配置されている。また、圧縮コイルスプリング53は、一端にてスプリングケース51に係合し、他端にてシャフト52のフランジ部52aに係合していて、取付荷重が略ゼロの状態で組み込まれている。
【0027】
圧縮コイルスプリング54は、圧縮コイルスプリング53に比して線径が小であってばね定数が小であり、シャフト52に設けた取付穴52bに組付けられている。また、圧縮コイルスプリング54は、圧縮コイルスプリング53に対して同軸的に配置されていて、取付穴52bから突出する端部にてリテーナ58を介してスプリングケース51に係合している。この圧縮コイルスプリング54の取付荷重は、圧縮コイルスプリング53の両端部の軸方向隙間をゼロとする程度の小さいものであって、シャフト52は圧縮コイルスプリング54により圧縮コイルスプリング53を殆ど撓ませない程度の弱い力にて圧縮コイルスプリング53に向けて軸方向に付勢されている。
【0028】
マグネットケース55は、シャフト52におけるケース外部位の外周に支持孔55aにて組付けられていて、一つの圧縮コイルスプリング71と、一対の環状シートプレート72,73および一対のクリップ74,75を用いてシャフト52に対して軸方向および径方向に移動可能で傾動可能に結合されており、シャフト52とともに軸方向に一体的に移動可能である。マグネットケース55の支持孔55aは、シャフト52の外径より所要量大径であり、シャフト52とマグネットケース55の支持孔55a間には所要量の径方向隙間(シャフト52が支持孔55a内にて所要量傾動可能な隙間)が設けられている。
【0029】
また、マグネットケース55には、ホールIC素子61とによって移動量検出手段(ホールIC素子61とマグネット62の相対移動量を検出する手段)を構成するマグネット62が内蔵されて支持されるとともに、ガイドピン56に嵌合されてマグネットケース55をスプリングケース51に対してガイドピン56に沿った設定方向に移動させるためのガイドスリーブ59が一体的に固着されている。また、マグネットケース55には、引張コイルスプリング57の係止部55bが設けられている。
【0030】
ガイドピン56は、一端にてスプリングケース51の取付孔51eに嵌合固定されていて、スプリングケース51に一体的に固着されており、設定方向(インナーワイヤ15aの張力が作用する方向に対して平行な方向)に延出している。このガイドピン56の外周には、ガイドスリーブ59がその内孔(ガイド孔)59aにてガイドピン56の軸方向に沿って摺動可能に嵌合されている。
【0031】
引張コイルスプリング57は、一端にてスプリングケース51に設けた係止部51cに係止されるとともに、他端にてマグネットケース55に設けた係止部55bに係止されていて、マグネットケース55の係止部55bがスプリングケース51の係止部51cに向けて小さな荷重で付勢されている。これにより、スプリングケース51の一部(アーム部51d)とマグネットケース55の一部が係合した状態で、ガイドピン56とガイドスリーブ59間の隙間がゼロとされ、マグネットケース55の移動方向がガイドピン56に沿った方向とされる。
【0032】
上記のように構成したこの実施形態においては、制動スイッチSW1が操作されると、電気モータ11が正回転駆動されて、変換機構Bのねじ軸41が正回転され、これに伴ってナット42とイコライザ12が図1の右方位置(解除位置)から図1の左方位置(制動位置)に向けてねじ軸41の軸方向に移動する。このため、両ケーブル15,16のインナーワイヤ15a,16aが引っ張られて両パーキングブレーキ13,14が解除状態から制動状態とされる。
【0033】
このとき(両ケーブル15,16のインナーワイヤ15a,16aが引っ張られるとき)には、張力センサTSにて、スプリングケース51とシャフト52間に軸方向の引張力が作用して、圧縮コイルスプリング53が圧縮変形し、スプリングケース51とシャフト52間に相対移動が生じて、ホールIC素子61とマグネット62が相対移動し、上述した引張力が検出される。この引張力は、電気制御装置ECUに入力され、その値が高設定値になると、電気制御装置ECUからの制御信号に基づいて、電気モータ11の正回転駆動が停止される。なお、電気モータ11の正回転駆動停止時には、ねじ軸41の逆回転が変換機構Bおよび減速機構A等により規制されて保持されるため、両パーキングブレーキ13,14の制動状態が保持される。
【0034】
また、解除スイッチSW2が操作されると、電気モータ11が逆回転駆動されて、変換機構Bのねじ軸41が逆回転され、これによりナット42とイコライザ12が図1の左方位置(制動位置)から図1の右方位置(解除位置)に移動する。このため、両ケーブル15,16のインナーワイヤ15a,16aが緩められて両パーキングブレーキ13,14が制動状態から解除状態とされる。
【0035】
このとき(両ケーブル15,16のインナーワイヤ15a,16aが緩められるとき)には、張力センサTSにて、圧縮コイルスプリング53の復帰変形により、スプリングケース51とシャフト52間に相対移動が生じて、ホールIC素子61とマグネット62が相対移動し、スプリングケース51とシャフト52間に作用する軸方向の引張力が検出される。この引張力は、電気制御装置ECUに入力され、その値が低設定値になると、電気制御装置ECUからの制御信号に基づいて、電気モータ11の逆回転駆動が停止される。
【0036】
ところで、上記した実施形態においては、図1〜図4に示したように、シャフト52とロアーケース51Aの取付孔51aとの間に所定量の径方向隙間が設けられ、シャフト52とマグネットケース55の支持孔55a間に所要量の径方向隙間が設けられている。また、スプリングケース51とマグネットケース55間に、マグネットケース51をスプリングケース51に対して設定方向に移動させるためのガイドピン56とガイドスリーブ59(ガイド手段)が設けられていて、ガイドスリーブ59にはガイドピン56の外周にガイドピン56の軸方向に沿って摺動可能に嵌合されるガイド孔59aが設けられている。
【0037】
このため、この実施形態の張力センサTSにおいては、圧縮コイルスプリング53における各軸方向端面が圧縮コイルスプリング53の軸心に対して直角に形成されなくて、これらの平行度が悪いこと等に起因して、シャフト52がスプリングケース51に対して図5に例示したように傾くことがあっても、このシャフト52の傾きは、スプリングケース51に対してガイドピン56とガイドスリーブ59(ガイド手段)により移動方向を規定されているマグネットケース55の支持孔55a内にてシャフト52が傾動することにより吸収される。このため、圧縮コイルスプリング53における軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフト52がスプリングケース51に対して傾動しても、マグネットケース55がスプリングケース51に対して殆ど傾動しないようにすることが可能であり、マグネットケース55に設けたマグネット62とスプリングケース51に設けたホールIC素子61間に生じる不測の相対移動をS1とすることが可能である。
【0038】
これに対して、図6に例示したように、ガイドピン56とガイドスリーブ59を設けず、シャフト52にマグネットケース55を殆ど傾動しないように嵌合した場合には、圧縮コイルスプリング53における軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフト52がスプリングケース51に対して傾くことがあると、このシャフト52の傾きに伴って、マグネットケース55がシャフト52とともに傾動する。このため、マグネットケース55に設けたマグネット62とスプリングケース51に設けたホールIC素子61間に生じる不測の相対移動がS2(S1<S2)となる。
【0039】
したがって、この実施形態の張力センサTSにおいては、ガイドピン56とガイドスリーブ59を設けず、シャフト52にマグネットケース55を殆ど傾動しないように嵌合した場合(図6に例示した場合)の不測の相対移動S2に比して、マグネットケース55に設けたマグネット62とスプリングケース51に設けたホールIC素子61間に生じる不測の相対移動S1(S1<S2)と小さくすることが可能であり、かかる相対移動に伴う引張力の検出精度悪化を抑制することが可能である。
【0040】
上記した実施形態においては、スプリングケース51に対するマグネットケース55の移動方向を規定する移動方向規定手段として、ガイドピン56とガイドスリーブ59からなるガイド手段と、引張コイルスプリング57を採用して実施したが、図7〜図9に示したように、スプリングケース51に対するマグネットケース55の移動方向を規定する移動方向規定手段として、一対のガイドピン56,56と一対のガイドスリーブ59,59からなるガイド手段を採用して実施する(引張コイルスプリング57に代えて図9右方のガイドピン56とガイドスリーブ59からなるガイド手段を採用して実施する)ことも可能である。
【0041】
また、上記した実施形態においては、図3右方の環状シートプレート73として平板を採用して、マグネットケース55を受ける環状シートプレート73の座面が平面である場合について説明したが、この環状シートプレート73に代えて、図10に示したように、マグネットケース55を受ける座面がスプリングケース51の取付孔51a内にあるシャフト52の軸心に中心がある球面形状である環状シート173を採用して実施することも可能である。
【0042】
図10に示した実施形態では、環状シート173の座面がスプリングケース51の取付孔51a内にあるシャフト52の軸心に中心がある球面形状であるため、圧縮コイルスプリング53における軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフト52がスプリングケース51に対して図11に例示したように傾くことがあっても、このシャフト52の傾きは、スプリングケース51に対してガイドピン56とガイドスリーブ59(ガイド手段)により移動方向を規定されているマグネットケース55の支持孔55a内にてシャフト52および環状シート173が傾動することにより吸収される。
【0043】
このため、圧縮コイルスプリング53における軸方向端面の平行度が悪いこと等に起因して、シャフト52がスプリングケース51に対して傾動しても、マグネットケース55がスプリングケース51に対して全く移動しないようにすることが可能である。したがって、マグネットケース55に設けたマグネット62とスプリングケース51に設けたホールIC素子61間に生じる不測の相対移動がゼロとなり、上記した各実施形態に比して引張力の検出精度を向上させることが可能である。なお、環状シート173の座面中心はスプリングケース51の取付孔51a内にあるシャフト52の軸心に一致させるのが望ましいが、必ずしも一致させて実施する必要はなく適宜変更可能である。
【0044】
また、上記各実施形態においては、スプリングケース51にホールIC素子61を一体的に組付けて、シャフト52に組付けられるケース(マグネットケース)にマグネット62が支持されるように構成して実施したが、スプリングケース(51)にマグネット(62)を一体的に組付けて、シャフト(52)に組付けられるケース(検出素子ケース)にホールIC素子(61)が支持されるように構成して実施することも可能である。
【0045】
また、上記各実施形態においては、スプリングケース51にガイドピン56を一体的に設けるとともに、マグネットケース55(または検出素子ケース)にガイドスリーブ59を一体的に設けて実施したが、スプリングケースにガイドスリーブを一体的に設けるとともに、マグネットケース(または検出素子ケース)にガイドピンを一体的に設けて実施することも可能である。
【0046】
上記各実施形態においては、スプリングケース51外にホールIC素子61とマグネット62を配設して実施したが、スプリングケース内にホールIC素子とマグネットを配設して実施することも可能である。この場合には、シャフトのスプリングケース内部分にマグネットケース(または検出素子ケース)を支持する支持部を設定する必要がある。
【0047】
また、上記各実施形態においては、本発明による張力センサを車両用電動パーキングブレーキ装置の張力センサとして採用した実施形態について説明したが、本発明による張力センサを他の種々な装置の張力センサとして採用可能であり、上記実施形態に限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による張力センサを車両用電動パーキングブレーキ装置の張力センサとして採用した一実施形態を示す一部破断平面図である。
【図2】図1に示した張力センサの拡大平面図である。
【図3】図1および図2に示した張力センサの内部構造を示す断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図3に示した張力センサにおいてシャフトがスプリングケースに対して傾動したときの作動説明図である。
【図6】図3に示した張力センサのガイドピンとガイドスリーブを無くし、シャフトにマグネットケースを殆ど傾動しないように嵌合した実施形態(比較のための実施形態)において、シャフトがスプリングケースに対して傾動したときの作動説明図である。
【図7】図2に示した張力センサの引張コイルスプリングに代えてガイドピンとガイドスリーブを採用した実施形態の図2相当の平面図である。
【図8】図7に示した張力センサの内部構造を示す断面図である。
【図9】図8の9−9線に沿った断面図である。
【図10】図3に示した張力センサの右方の環状シートプレートに代えて球面形状の座面を備えた環状シートを採用した実施形態の図3相当の断面図である。
【図11】図10に示した張力センサにおいてシャフトがスプリングケースに対して傾動したときの作動説明図である。
【符号の説明】
【0049】
11…電気モータ、12…イコライザ、13,14…パーキングブレーキ、15,16…ケーブル、21…入力歯車、22…出力歯車、23…中間大歯車、24…中間小歯車、31…ハウジング、32…ケーシング、41…ねじ軸、42…ナット、TS…張力センサ、51…スプリングケース、51a…取付孔、52…シャフト、53…圧縮コイルスプリング、54…圧縮コイルスプリング、55…マグネットケース、55a…支持孔、56…ガイドピン、57…引張コイルスプリング、59…ガイドスリーブ、59a…ガイド孔、61…ホールIC素子(検出素子)、62…マグネット、A…減速機構、B…変換機構、ECU…電気制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングケース(51)に設けた取付孔(51a)に軸方向にて移動可能に組付けられて一部が前記スプリングケース(51)内に収容され残部が前記スプリングケース(51)外に突出するシャフト(52)と、このシャフト(52)におけるケース内部位の外周に同軸的に配置され一端にて前記スプリングケース(51)に係合し他端にて前記シャフト(52)に係合する圧縮コイルスプリング(53)と、前記シャフト(52)の外周に支持孔(55a)にて組付けられて前記シャフト(52)とともに軸方向に一体的に移動可能でマグネット(62)を支持するマグネットケース(55)と、前記スプリングケース(51)に一体的に組付けられて前記マグネット(62)とにより移動量検出手段を構成する検出素子(61)を備えていて、前記スプリングケース(51)と前記シャフト(52)間に軸方向の引張力が作用して前記圧縮コイルスプリング(53)が圧縮変形するとき、前記マグネット(62)と前記検出素子(61)が相対移動して前記引張力が検出可能である張力センサ(TS)において、
前記シャフト(52)と前記スプリングケース(51)の取付孔(51a)間に所定量の径方向隙間を設けるとともに、前記シャフト(52)と前記マグネットケース(55)の支持孔(55a)間に所要量の径方向隙間を設け、前記スプリングケース(51)と前記マグネットケース(55)間に前記マグネットケース(55)を前記スプリングケース(51)に対して設定方向に移動させるガイド手段(56,59)を設けたことを特徴とする張力センサ(TS)。
【請求項2】
請求項1に記載の張力センサ(TS)において、前記マグネットケース(55)は前記シャフト(52)の外周に一体的に組付けた環状シート(173)の座面に軸方向にて弾撥的に係合した状態で前記シャフト(52)の外周に組付けられていて、前記座面は前記シャフト(52)の軸心に中心がある球面形状に形成されていることを特徴とする張力センサ(TS)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の張力センサ(TS)において、前記ガイド手段は、前記スプリングケース(51)または前記マグネットケース(55)に一体的に固着されて設定方向に延びるガイドピン(56)と、前記マグネットケース(55)または前記スプリングケース(51)に設けられて前記ガイドピン(56)の外周に前記ガイドピン(56)の軸方向に沿って摺動可能に嵌合されるガイド孔(59a)を備えていることを特徴とする張力センサ(TS)。
【請求項4】
スプリングケースに設けた取付孔に軸方向にて移動可能に組付けられて一部が前記スプリングケース内に収容され残部が前記スプリングケース外に突出するシャフトと、このシャフトにおけるケース内部位の外周に同軸的に配置され一端にて前記スプリングケースに係合し他端にて前記シャフトに係合する圧縮コイルスプリングと、前記シャフトの外周に支持孔にて組付けられて前記シャフトとともに軸方向に一体的に移動可能で検出素子を支持する検出素子ケースと、前記スプリングケースに一体的に組付けられて前記検出素子とにより移動量検出手段を構成するマグネットを備えていて、前記スプリングケースと前記シャフト間に軸方向の引張力が作用して前記圧縮コイルスプリングが圧縮変形するとき、前記マグネットと前記検出素子が相対移動して前記引張力が検出可能である張力センサにおいて、
前記シャフトと前記スプリングケースの取付孔間に所定量の径方向隙間を設けるとともに、前記シャフトと前記検出素子ケースの支持孔間に所要量の径方向隙間を設け、前記スプリングケースと前記検出素子ケース間に前記検出素子ケースを前記スプリングケースに対して設定方向に移動させるガイド手段を設けたことを特徴とする張力センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の張力センサにおいて、前記検出素子ケースは前記シャフトの外周に一体的に組付けた環状シートの座面に軸方向にて弾撥的に係合した状態で前記シャフトの外周に組付けられていて、前記座面は前記シャフトの軸心に中心がある球面形状に形成されていることを特徴とする張力センサ。
【請求項6】
請求項5または6に記載の張力センサにおいて、前記ガイド手段は、前記スプリングケースまたは前記検出素子ケースに一体的に固着されて設定方向に延びるガイドピンと、前記検出素子ケースまたは前記スプリングケースに設けられて前記ガイドピンの外周に前記ガイドピンの軸方向に沿って摺動可能に嵌合されたガイド孔を備えていることを特徴とする張力センサ。
【請求項7】
電気モータ(11)と、この電気モータ(11)の回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構(B)と、この変換機構(B)の出力部に連結されて前記直線駆動力をパーキングブレーキ(13,14)に伝達するケーブル(15,16)を備えるとともに、前記ケーブル(15)に作用する引張力を検出可能な張力センサ(TS)と、前記電気モータ(11)の回転駆動を制御する電気制御装置(ECU)を備えていて、前記電気モータ(11)の正回転駆動により前記ケーブル(15,16)が引っ張られて前記パーキングブレーキ(13,14)が解除状態から制動状態とされ、前記電気モータ(11)の逆回転駆動により前記ケーブル(15,16)がリリースされて前記パーキングブレーキ(13,14)が制動状態から解除状態とされるように構成した車両用電動パーキングブレーキ装置において、前記張力センサ(TS)として、請求項1乃至6の何れか一項に記載の張力センサ(TS)を採用したことを特徴とする車両用電動パーキングブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−309516(P2008−309516A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155126(P2007−155126)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】