説明

強化シリコーン樹脂フィルムおよびその調製方法

強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、縮合硬化性シリコーン組成物およびカーボンナノ材料を含むナノ材料充填シリコーン組成物中に繊維強化材を含浸する工程と、この含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程とを含む方法、ならびに上記の方法に従って調製した強化シリコーン樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし。
【0002】
本発明は強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法に関し、より具体的には、縮合硬化性シリコーン組成物およびカーボンナノ材料を含むナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程と、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程を含む方法に関する。本発明はまた、前述の方法に従って調製される強化シリコーン樹脂フィルムにも関する。
【背景技術】
【0003】
シリコーン樹脂は、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高い耐酸化性、低い誘電率および高い透明性を含めた、特性のそれらのユニークな組合せによって、様々な応用に有用である。例えば、シリコーン樹脂は、自動車、電子機器、建築、電化製品および航空宇宙産業において、保護または誘電コーティングとして広く使われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン樹脂コーティングは様々な基材を保護するか、絶縁するかまたは結合するために使用されることができるが、自立型のシリコーン樹脂フィルムは低い引裂強度、高い脆さ、低いガラス転移温度および高い熱膨張係数のため限られた有用性を有する。従って、改善された機械的特性および熱特性を有する自立型のシリコーン樹脂フィルムについてのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、このナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む方法に関する。
【0006】
本発明はまた、上述した方法に従って調製される強化シリコーン樹脂フィルムにも関する。
【0007】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料が存在しない同じシリコーン組成物から調製したシリコーン樹脂フィルムと比較して、低い熱膨張係数、高い引張強さ、熱的に誘発されたひび割れに対する高い抵抗性を有する。
【0008】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械的強度および透明性を有するフィルムを必要とする応用に有用である。例えば、このシリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子回路基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙および衝撃耐性ウインドウの一体的要素として用いることが可能である。このフィルムは、透明または不透明な電極のための適切な基材でもある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aおよび図1Bは、それぞれ熱処理の前および後の実施例2の強化シリコーン樹脂フィルムの平面図(すなわち上面図)顕微鏡写真である。
【図2】熱処理の後の実施例3の強化シリコーン樹脂フィルムの平面図顕微鏡写真である。
【図3】熱処理の後の実施例4の強化シリコーン樹脂フィルムの平面図顕微鏡写真である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、それぞれ熱処理の前および後の比較例1の強化シリコーン樹脂フィルムの平面図顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面において、だけは、記号umはミクロンを表す。
【0011】
本明細書で用いられる場合、用語「シリコーン樹脂中の基Rの…mol%が水素、ヒドロキシ、または加水分解性(hydroslysable)基である」は、シリコーン樹脂中の基Rの総モル数に対する、樹脂中のケイ素に結合した水素、ヒドロキシ、または加水分解性(hydroslysable)基のモル数の比率を100倍したものと定義される。さらに、用語「シリコーン樹脂中の基Rの…mol%がヒドロキシまたは加水分解性(hydroslysable)基である」は、シリコーン樹脂中の基Rの総モル数に対する、樹脂中のヒドロキシまたは加水分解性(hydroslysable)基のモル数の比率を100倍したものと定義される。
【0012】
本発明に係る強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法は、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、このナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む。
【0013】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法の第1の工程では、繊維強化材は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化性シリコーン組成物と、カーボンナノ材料とを含むナノ材料充填シリコーン組成物中で含浸される。
【0014】
この縮合硬化性シリコーン組成物は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂を含むいかなる縮合硬化性シリコーン組成物であってもよい。典型的には、この縮合硬化性シリコーン組成物は、上述したシリコーン樹脂、ならびに任意に、ケイ素に結合した加水分解性基を有する架橋剤および/または縮合触媒を含む。
【0015】
縮合硬化性シリコーン組成物のシリコーン樹脂は、典型的には、Mおよび/もしくはDのシロキサン単位と組み合わせて、T単位、TおよびQのシロキサン単位またはTおよび/もしくはQのシロキサン単位を含む共重合体である。さらに、このシリコーン樹脂は、縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態について後述するゴムで変性したシリコーン樹脂であってもよい。
【0016】
第1の実施形態によれば、上記縮合硬化性シリコーン組成物は、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂を含む(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、Rは、R、−H、−OH、または加水分解性基であり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは、0〜0.95あるが、ただしこのシリコーン樹脂は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有する)。
【0017】
により表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有する。少なくとも3つの炭素原子を含む非環状ヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、分枝状または非分枝状の構造を有することができる。Rにより表されるヒドロカルビル基の例としては、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシル)、シクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル)、アリール(例えばフェニルおよびナフチル)、アルカリール(例えばトリルおよびキシリル)、アラルキル(例えばベンジルおよびフェネチル)、アルケニル(例えばビニル、アリルおよびプロペニル)、アリールアルケニル(例えばスチリルおよびシンナミル)、ならびにアルキニル(例えばエチニルおよびプロピニル)が挙げられるが、これらに限定されない。Rにより表されるハロゲン置換されたヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルおよび2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本願明細書で使用する場合、用語「加水分解性基」は、ケイ素に結合した基が室温(約23±2℃)〜100℃の任意の温度で、触媒の存在下または非存在下のいずれかで、数分(例えば30分)以内に水と反応してシラノール(Si−OH)基を形成することを意味する。Rにより表される加水分解性基の例としては、−Cl、−Br、−OR、−OCHCHOR、CHC(=O)O−、Et(Me)C=N−O−、CHC(=O)N(CH)−、および−ONH(式中、RはC〜Cのヒドロカルビル、またはC〜Cのハロゲン置換されたヒドロカルビルである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
により表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、典型的には1〜8個の炭素原子、あるいは3〜6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含む非環状ヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、分枝状または非分枝状の構造を有することができる。Rにより表されるヒドロカルビル基の例としては、非分枝状および分枝状のアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル)、シクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル)、フェニル、アルカリール(例えばトリルおよびキシリル)、アラルキル(例えばベンジルおよびフェネチル)、アルケニル(例えばビニル、アリルおよびプロペニル)、アリールアルケニル(例えばスチリル)、ならびにアルキニル(例えばエチニルおよびプロピニル)が挙げられるが、これらに限定されない。Rにより表されるハロゲン置換されたヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニルおよびジクロロフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
シリコーン樹脂の式(I)において、添え字w、x、yおよびzは、モル分率である。添え字wは、典型的に0〜0.95、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3の値を有し、添え字xは典型的には0〜0.95、あるいは0〜0.7、あるいは0〜0.25の値を有し、添え字yは、典型的には0〜1、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値を有し、添え字zは、典型的には0〜0.95、あるいは0〜0.7、あるいは0〜0.15の値を有する。また、和y+zは、典型的には0.05〜1、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。さらに、和w+xは、典型的には0〜0.95、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。
【0021】
典型的には、シリコーン樹脂中の基Rの少なくとも10mol%、あるいは少なくとも50mol%、あるいは少なくとも80mol%は水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。
【0022】
シリコーン樹脂は、典型的には500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(M)を有する。ここでこの分子量は、小角レーザー光散乱検出器、または屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標品を用いるゲル透過クロマトグラフィにより測定されるものである。
【0023】
25℃でのシリコーン樹脂の粘度は、典型的には0.01〜100,000Pa・s、あるいは0.1〜10,000Pa・s、あるいは1〜100Pa・sである。
【0024】
シリコーン樹脂は、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)RSiO3/2単位(すなわちT単位)およびSiO4/2単位(すなわちQ単位)、またはRSiO3/2単位(すなわちT単位)および/またはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含む(式中、RおよびRは上に記載され例示されたとおりである)。例えば、シリコーン樹脂は、T樹脂、TQ樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MQ樹脂、DQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、DTQ樹脂またはMDTQ樹脂であり得る。
【0025】
シリコーン樹脂の例としては、限定されるわけではないが、以下の式を有する樹脂が挙げられる:
(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(MeSiO1/20.8(SiO4/20.2、(MeSiO3/20.67(PhSiO3/20.33、(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.40(PhSiO2/20.1(PhMeSiO2/20.05、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、および(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.5(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外側の数の添え字はモル分率を意味し、かつ添え字nはシリコーン樹脂が500〜50,000の数平均分子量を有するような値を有する)。また、前述の式では、単位の配列は特定されない。
【0026】
縮合硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態は、単一のシリコーン樹脂または2つ以上の異なるシリコーン樹脂(各々は上記のとおり)を含む混合物を含むことができる。
【0027】
ケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を含むシリコーン樹脂を調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、有機溶媒(例えばトルエン)中でシラン前駆体の適切な混合物を同時加水分解することによって、調製される。例えば、シリコーン樹脂は、式RSiXを有するシランと式RSiXを有するシランとをトルエン中で同時加水分解することにより調製することができる(式中、RはC〜C10ヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビル(hydrocarby)であり、RはR、−Hまたは加水分解性基であり、かつXは加水分解性基であるが、ただしRが加水分解性基である場合、Xは加水分解反応においてRより反応性である)。塩酸およびシリコーン加水分解物は分離され、この加水分解物は残留する酸を除去するために水で洗浄され、穏やかな縮合触媒の存在下で加熱され、樹脂は必要な粘度まで「増粘される(body)」(すなわち、縮合される)。必要に応じて、樹脂は、ケイ素に結合したヒドロキシ基の含量を減らすために、有機溶媒中で縮合触媒でさらに処理できる。
【0028】
縮合硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態はさらなる成分を含むことができるが、それは、シリコーン樹脂が硬化して、後述するような低い熱膨張係数、高い引張強さおよび高い弾性率を有する硬化したシリコーン樹脂を形成することをその成分が妨げない場合に限る。さらなる成分の例としては、接着促進剤、染料、色素、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、流動性調整用添加物、有機溶媒、架橋剤および縮合触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
例えば、このシリコーン組成物は、架橋剤および/または縮合触媒をさらに含むことができる。架橋剤は式RSiX4−qを有することができる(式中、RはC〜CのヒドロカルビルまたはC〜Cのハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、かつqは0または1である)。Rによって表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基、ならびにXにより表される加水分解性基は、上に記載され例示されたとおりである。
【0030】
架橋剤の例としては、アルコキシシラン(例えばMeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH4、Si(OCおよびSi(OC)、有機アセトキシシラン(例えばCHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCHおよびCH=CHSi(OCOCH)、有機イミノオキシシラン(例えばCHSi[O−N=C(CH)CHCH、Si[O−N=C(CH)CHCHおよびCH=CHSi[O−N=C(CH)CHCH)、有機アセトアミドシラン(例えばCHSi[NHC(=O)CHおよびCSi[NHC(=O)CH)、アミノシラン(例えばCHSi[NH(s−C)]およびCHSi(NHC11)、ならびに有機アミノオキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
架橋剤は、単一のシラン、または2つ以上の異なるシラン(各々は上記のとおり)の混合物であり得る。また、三官能性および四官能性シランを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらのシランの多くは市販されている。
【0032】
存在する場合は、シリコーン組成物中の架橋剤の濃度は、そのシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な量である。架橋剤の正確な量は、硬化の所望の程度に依存するが、その量は、シリコーン樹脂中のケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基のモル数に対する架橋剤中のケイ素に結合した加水分解性基のモル数の比率が増加するにつれて、一般に増加する。典型的に、架橋剤の濃度は、シリコーン樹脂中のケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基1モル当たり0.2〜4モルのケイ素に結合した加水分解性基を提供するのに十分な量である。架橋剤の最適量は、日常的な試験によって、容易に決定できる。
【0033】
上記したように、縮合硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態は、少なくとも1つの縮合触媒をさらに含むことができる。縮合触媒は、Si−O−Si結合を形成するためにケイ素に結合したヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進するために典型的に使用されるいかなる縮合触媒であってもよい。縮合触媒の例としては、アミン、カルボン酸と鉛、スズ、亜鉛および鉄との錯体が挙げられるが、これらに限定されない。特に、縮合触媒は、スズ(II)およびスズ(IV)化合物(例えばジラウリン酸スズ、ジオクチル酸スズおよびテトラブチルスズ)、およびチタン化合物(例えばチタンテトラブトキシド)から選択できる。
【0034】
存在する場合は、縮合触媒の濃度は、シリコーン樹脂の総重量に基づいて、典型的に0.1〜10%(重量/重量)、あるいは0.5〜5%(重量/重量)、あるいは1〜3%(重量/重量)である。
【0035】
第2の実施形態によれば、縮合硬化性シリコーン組成物は、(A)(i)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(II)を有するシリコーン樹脂および(ii)(i)の加水分解性前駆体から選択される有機ケイ素化合物、ならびに式RSiO(RSiO)SiR(III)を有するシリコーンゴムを、水、縮合触媒および有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することによって調製されたゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、RはR、−OHまたは加水分解性基であり、RはRまたは加水分解性基であり、mは2〜1,000であり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし上記シリコーン樹脂(II)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基を有し、シリコーンゴム(III)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した加水分解性基を有し、かつシリコーン樹脂(II)中のケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンゴム(III)中のケイ素に結合した加水分解性基のモル比は0.01〜1.5である)と、(B)縮合触媒とを含む。
【0036】
構成成分(A)は、(i)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(II)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂および(ii)(i)の加水分解性前駆体から選択される有機ケイ素化合物と、式RSiO(RSiO)SiR(III)を有する少なくとも1つのシリコーンゴムとを水、縮合触媒および有機溶媒の存在下で反応させて、可溶な反応生成物を形成することにより調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂である(式中、R、w、x、y、z、y+zおよびw+xは、式(I)を有するシリコーン樹脂について上に記載され例示されたとおりであり、RおよびRにより表される加水分解性基は、Rについて上で記載され例示されたとおりであり、かつmは2〜1,000の値を有するが、ただしシリコーン樹脂(II)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基を有し、シリコーンゴム(III)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した加水分解性基を有し、かつシリコーン樹脂(II)中のケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンゴム(III)中のケイ素に結合した加水分解性基のモル比は、0.01〜1.5である)。本願明細書で使用する場合、用語「可溶性反応生成物」は、構成成分(A)を調製するための反応の生成物がその有機溶媒と混和性であり、沈殿物または懸濁を形成しないことを意味する。
【0037】
典型的には、シリコーン樹脂(i)中の基Rの少なくとも10mol%、あるいは少なくとも50mol%、あるいは少なくとも80mol%は、ヒドロキシまたは加水分解性基である。
【0038】
シリコーン樹脂(i)は、典型的には500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(M)を有し、ここでこの分子量は小角レーザー光散乱検出器、または屈折指標検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標品を用いるゲル透過クロマトグラフィにより測定される。
【0039】
25℃でのシリコーン樹脂(i)の粘度は、典型的には0.01〜100,000Pa・s、あるいは0.1〜10,000Pa・s、あるいは1〜100Pa・sである。
【0040】
シリコーン樹脂(i)は、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)、RSiO3/2単位(すなわちT単位)およびSiO4/2単位(すなわちQ単位)、またはRSiO3/2単位(すなわちT単位)および/もしくはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含む(式中、RおよびRは上に記載され例示されたとおりである)。例えば、このシリコーン樹脂は、T樹脂、TQ樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MQ樹脂、DQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、DTQ樹脂またはMDTQ樹脂であり得る。
【0041】
シリコーン樹脂(i)としての使用に適しているシリコーン樹脂の例としては、以下の式を有する樹脂が含まれるが、これらに限定されるわけではない:(MeSiO3/2、(PhSiO3/2、(PhSiO3/20.4(MeSiO3/20.45(PhSiO3/20.1(PhMeSiO2/20.05、および(PhSiO3/20.3(SiO4/20.1(MeSiO2/20.2(PhSiO2/20.4(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外側の数の添え字はモル分率を意味し、かつ添え字nはこのシリコーン樹脂が500〜50,000の数平均分子量を有するような値を有する)。また、前述の式では、単位の配列は特定されない。
【0042】
シリコーン樹脂(i)は、単一のシリコーン樹脂、または各々が式(II)を有する2つ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってよい。
【0043】
シリコーン樹脂(i)としての使用に適しているシリコーン樹脂を調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くは市販されている。例えば、シリコーン樹脂は、典型的には、式(I)を有するシリコーン樹脂について上で記載したとおり、有機溶媒(例えばトルエン)中でシラン前駆体の適切な混合物を同時加水分解することにより調製される。
【0044】
上記有機ケイ素化合物は、式(II)を有するシリコーン樹脂の(ii)加水分解性前駆体であってよい。本願明細書で使用する場合、「加水分解性前駆体」という用語は、式(II)を有するシリコーン樹脂の調製のための出発物質(前駆体)としての使用に適している加水分解性基を有するシランを指す。この加水分解性前駆体は、式RSiX、RSiX、RSiXおよびSiXにより表すことができる(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、RはRまたは加水分解性基であり、かつXは加水分解性基である)。加水分解性前駆体の例としては、以下の式を有するシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:MeViSiCl、MeSiCl、MeSi(OEt)、PhSiCl、MeSiCl、MeSiCl、PhMeSiCl、SiCl、PhSiCl、PhSi(OMe)、MeSi(OMe)、PhMeSi(OMe)、およびSi(OEt)(式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり、かつPhはフェニルである)。
【0045】
加水分解性基を有するシランを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。
【0046】
シリコーンゴムの式(III)において、RおよびRは上に記載され例示されているとおりであり、添え字mは、典型的には2〜1,000、あるいは4〜500、あるいは8〜400の値を有する。
【0047】
式(III)を有するシリコーンゴムの例としては、以下の式を有するシリコーンゴムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:
(EtO)SiO(MeSiO)55Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)16Si(OEt)、(EtO)SiO(MeSiO)386Si(OEt)および(EtO)MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)(式中、Meはメチルであり、かつEtはエチルである)。
【0048】
式(III)を有するシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴム、または各々が式(III)を有する2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってよい。例えば、このシリコーンゴムは、約15のdp(重合度)(式III中のmの値により表される)を有する第1のシリコーンゴム、および約350のdpを有する第2のシリコーンゴムを含むことができる。
【0049】
ケイ素に結合した加水分解性基を含むシリコーンゴムを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。
【0050】
構成成分(A)のゴムで変性されたシリコーン樹脂の調製において使用される縮合触媒は、縮合硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態について上で記載して例示したとおりである。特に、チタン化合物は、構成成分(A)の調製に用いられる適切な縮合触媒である。
【0051】
上記有機溶媒は、少なくとも1つの有機溶媒である。有機溶媒は、構成成分(A)を調製するための条件(後述する)下で有機ケイ素化合物、シリコーンゴムまたはゴムで変性されたシリコーン樹脂と反応せず、かつ上述した構成成分と混和性であるいかなる非プロトン性または双極性の非プロトン性有機溶媒であってよい。
【0052】
有機溶媒の例としては、飽和脂肪族炭化水素(例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよびドデカン)、脂環式炭化水素(例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレン)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサン)、ケトン(例えばメチルイソブチルケトン(MIBK))、ハロゲン化アルカン(例えばトリクロロエタン)、ならびにハロゲン化芳香族炭化水素(例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼン)が挙げられるが、これらに限定されない。有機溶媒は、単一の有機溶媒、または2つ以上の異なる有機溶媒(各々は上で定義されたとおりである)を含む混合物であってよい。
【0053】
有機ケイ素化合物、シリコーンゴム、縮合触媒および有機溶媒は、任意の順序で混合できる。典型的には、有機ケイ素化合物、シリコーンゴムおよび有機溶媒は、縮合触媒の導入の前に混合される。
【0054】
式(II)を有するシリコーン樹脂中のケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーンゴム中のケイ素に結合した加水分解性基のモル比は、典型的には0.01〜1.5、あるいは0.05〜0.8、あるいは0.2〜0.5である。
【0055】
反応混合物中の水の濃度は、有機ケイ素化合物中の基Rの性質およびシリコーンゴム中のケイ素に結合した加水分解性基の性質に依存する。有機ケイ素化合物が加水分解性基を含む場合、水の濃度は有機ケイ素化合物およびシリコーンゴム中の加水分解性基の加水分解をもたらすのに十分な濃度である。例えば、水の濃度は、典型的には、合わせた有機ケイ素化合物およびシリコーンゴム中の加水分解性基1モルあたり0.01〜3モル、あるいは0.05〜1モルである。有機ケイ素化合物が加水分解性基を含まない場合、痕跡量(例えば100ppm)の水だけが、反応混合物において必要とされる。痕跡量の水は、反応物質および/または溶媒に通常存在する。
【0056】
縮合触媒の濃度は、有機ケイ素化合物とシリコーンゴムとの縮合反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、縮合触媒の濃度は、有機ケイ素化合物の重量に基づいて、0.01〜2%(重量/重量)、あるいは0.01〜1%(重量/重量)、あるいは0.05〜0.2%(重量/重量)である。
【0057】
有機溶媒の濃度は、典型的には、反応混合物の総重量に基づいて、10〜95%(重量/重量)、あるいは20〜85%(重量/重量)、あるいは50〜80%(重量/重量)である。
【0058】
反応は、典型的には室温(約23±2℃)〜180℃、あるいは室温〜100℃の温度で実施される。
【0059】
反応時間は、有機ケイ素化合物およびシリコーンゴムの構造および温度を含めたいくつかの要因に依存する。構成成分は、典型的には、縮合反応を完了するのに十分な期間の間反応できる。これは、29Si NMR分光測定法によって測定する場合に、もともとシリコーンゴム中に存在したケイ素に結合した加水分解性基の少なくとも95mol%、あるいは少なくとも98mol%、あるいは少なくとも99mol%が縮合反応において消費されるまで、構成成分を反応させることを意味する。反応の時間は、典型的に室温(約23±2℃)〜100℃の温度で、1〜30時間である。最適反応時間は、下記の実施例の節に記載される方法を使用して、日常的な試験で決定できる。
【0060】
ゴムで変性されたシリコーン樹脂は、縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態においては、単離または精製なしで用いることができるし、または樹脂は、気化の従来の方法によって、大部分の溶媒から分離することもできる。例えば、反応混合物は、減圧下で加熱してもよい。
【0061】
縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態の構成成分(B)は、少なくとも1つの縮合触媒であり、この触媒は、シリコーン組成物の第1の実施形態について上で記載され例示されたとおりである。特に、亜鉛化合物およびアミンは、本発明のシリコーン組成物の構成成分(B)としての使用に適している。
【0062】
構成成分(B)の濃度は、典型的には、構成成分(A)の重量に基づいて、0.1〜10%(重量/重量)、あるいは0.5〜5%(重量/重量)、あるいは1〜3%(重量/重量)である。
【0063】
縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態はさらなる成分を含むことができるが、それは、シリコーン樹脂が硬化して、後述するような低い熱膨張係数、高い引張強さおよび高い弾性率を有する硬化したシリコーン樹脂を形成することをその成分が妨げない場合に限る。さらなる成分の例としては、接着促進剤、染料、色素、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、流動性調整用添加物、架橋剤および有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
例えば、縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態は、式RSiX4−qを有する架橋剤をさらに含むことができる(式中、R、X、およびqは、第1の実施形態の架橋剤について上に記載され例示されたとおりである)。架橋剤は、単一のシラン、または2つ以上の異なるシラン(各々は上記のとおり)の混合物であり得る。
【0065】
存在する場合は、縮合硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態中の架橋剤の濃度は、構成成分(A)のゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な量である。架橋剤の正確な量は、硬化の所望の程度に依存するが、その量は、ゴムで変性されたシリコーン樹脂中のケイ素に結合したヒドロキシ基または加水分解性基のモル数に対する架橋剤中のケイ素に結合した加水分解性基のモル数の比率が増加するにつれて、一般に増加する。典型的には、架橋剤の濃度は、ゴムで変性されたシリコーン樹脂中のケイ素に結合したヒドロキシ基または加水分解性基1モル当たり0.2〜4モルのケイ素に結合した加水分解性基を提供するのに十分な量である。架橋剤の最適量は、日常的な試験によって、容易に決定できる。
【0066】
上記ナノ材料充填シリコーン組成物のカーボンナノ材料は、約200nm未満の少なくとも1つの物理的な寸法(例えば粒径、繊維径、層厚)を有するいかなるカーボン材料であってもよい。カーボンナノ材料の例としては、約200nm未満の3つの寸法を有するカーボンナノ粒子(例えば量子ドット、中空球およびフラーレンなど)、約200nm未満の2つの寸法を有する繊維状カーボンナノ材料(例えばナノチューブ(例えば単層ナノチューブおよび多層ナノチューブ)およびナノ繊維(例えば、軸方向に整列配置されたプレートレット、およびヘリングボーン型(herringbone)またはフィッシュボーン型(fishbone)ナノ繊維)、ならびに約200nm未満の1つの寸法を有する層をなしたカーボンナノ材料、例えばカーボンナノプレートレット(例えば膨張黒鉛およびグラフェンシート)が挙げられるが、これらに限定されない。カーボンナノ材料は、導電性であってもよいし、半導電性であってもよい。
【0067】
カーボンナノ材料は、上述したカーボンナノ材料を高い温度で酸化性酸または酸の混合物で処理することにより調製される酸化されたカーボンナノ材料であってよい。例えば、カーボンナノ材料は、濃硝酸および濃硫酸の混合物(1:3 体積/体積、炭素1gあたり25mL)中で、40〜150℃の温度で1−3時間、その材料を加熱することによって、酸化できる。
【0068】
カーボンナノ材料は、単一のカーボンナノ材料であってもよいし、または少なくとも2つの異なるカーボンナノ材料(各々は上記のとおり)を含む混合物であってもよい。
【0069】
カーボンナノ材料の濃度は、典型的には、ポリマー層の総重量に基づいて0.0001〜99%(重量/重量)であり、あるいは0.001〜50%(重量/重量)、あるいは0.01〜25%(重量/重量)、あるいは0.1〜10%(重量/重量)、あるいは1〜5%(重量/重量)である。
【0070】
カーボンナノ材料を調製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、カーボンナノ粒子(例えば、フラーレン)ならびに繊維状カーボンナノ材料(例えば、ナノチューブおよびナノ繊維)は、以下の方法のうちの少なくとも1つを使用して調製できる:アーク放電、レーザーアブレーションおよび触媒的化学気相成長。アーク放電プロセスにおいて、2本の黒鉛ロッド間のアーク放電は、ガス雰囲気に応じて、単層ナノチューブ、多層ナノチューブおよびフラーレンを生成する。レーザーアブレーション法では、金属触媒を載せる黒鉛ターゲットは、管炉中でレーザーによって照射を受け、単層および多層のナノチューブを生成する。触媒的化学気相成長法では、カーボン含有ガスまたはガス混合物は、金属触媒を含む管炉に500〜1000℃の温度で(そして、様々な圧力で)導入され、カーボンナノチューブおよびナノ繊維を生成する。カーボンナノプレートレットは、黒鉛のインターカレーションおよび膨張化(exfoliation)により調製できる。
【0071】
ナノ材料充填シリコーン組成物は、単一部分にシリコーン樹脂およびカーボンナノ材料を含む一部組成物(one−part composition)であってもよいし、あるいは2以上部分にこれらの構成要素を含む多部組成物(multi−part composition)であってもよい。このシリコーン組成物が縮合触媒を含む場合、その組成物は、典型的には、シリコーン樹脂および縮合触媒が別々の部分に存在する二部組成物である。
【0072】
強化材が高い弾性率および高い引張強さを有するならば、繊維強化材は、繊維を含むいかなる強化材であってもよい。繊維強化材は、典型的に、25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有する。例えば、この強化材は、典型的には3〜1,000GPa、あるいは3〜200GPa、あるいは10〜100GPaの25℃でのヤング率を有する。さらにこの強化材は、典型的には、少なくとも50MPaの25℃での引張強さを有する。例えば、この強化材は、典型的には50〜10,000MPa、あるいは50〜1,000MPa、あるいは50〜500MPaの25℃での引張強さを有する。
【0073】
繊維強化材は、織布(例えば布)、不織布(例えばマットまたはロービング)、または束ねられていない(個々の)繊維であってよい。強化材中の繊維は、典型的には円筒形状であり、1〜100μm、あるいは1〜20μm、あるいは1〜10μmの直径を有する。束ねられていない繊維は連続的なものでもよく(これは繊維がほぼ破断しない形で強化シリコーン樹脂フィルムの全体にわたって延びることを意味する)、またはぶつ切りのものでもよい。
【0074】
繊維強化材は、典型的には、有機混入物質を除去するために、使用の前に熱処理される。例えば、繊維強化材は、典型的には、適切な時間の間(例えば2時間)、高温(例えば575℃)で、空気中で加熱される。
【0075】
繊維強化材の例としては、ガラス繊維、石英繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維(例えばケブラー(登録商標)およびノーメックス(登録商標)、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、および炭化ケイ素繊維を含む強化材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
繊維強化材は、様々な方法を使用して、ナノ材料充填シリコーン組成物中で含浸できる。例えば、第1の方法によれば、繊維強化材は、(i)ナノ材料充填シリコーン組成物を剥離ライナーに塗布してシリコーンフィルムを形成し、(ii)繊維強化材をそのフィルムに包埋し、そして(iii)包埋された繊維強化材に上記ナノ材料充填シリコーン組成物を塗布し、含浸された繊維強化材を形成することによって、含浸させることができる。
【0077】
工程(i)において、上記のナノ材料充填シリコーン組成物は、剥離ライナーに塗布されシリコーンフィルムを形成する。剥離ライナーは、後述するように、シリコーン樹脂が硬化した後、強化シリコーン樹脂フィルムを損傷なしに層間剥離によって取り除くことができる表面を有するいかなる剛性または可撓性材料であってもよい。剥離ライナーの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
ナノ材料充填シリコーン組成物は、スピンコーティング、浸漬、噴霧、ブラッシング、押出またはスクリーン印刷などの従来のコーティング技術を使用して、剥離ライナーに塗布されることができる。シリコーン組成物は、下記の工程(ii)で繊維強化材を包埋するのに十分な量で塗布される。
【0079】
工程(ii)において、繊維強化材は、シリコーン膜に包埋される。繊維強化材は、単に強化材をフィルム上に配置して、フィルムのシリコーン組成物が強化材を飽和させることによって、シリコーンフィルムに包埋させることが可能である。
【0080】
工程(iii)において、ナノ材料充填シリコーン組成物は、包埋された繊維強化材に塗布され、含浸された繊維強化材を形成する。シリコーン組成物は、工程(i)について上に記載したとおり、従来の方法を使用して包埋された繊維強化材に塗布することができる。
【0081】
第1の方法は、(iv)含浸された繊維強化材に第2の剥離ライナーを塗布してアセンブリを形成する工程、および(v)そのアセンブリを圧縮する工程をさらに含むことができる。また、第1の方法は工程(ii)の後でかつ工程(iii)の前に、包埋された繊維強化材からガスを除去する工程、および/または工程(iii)の後でかつ工程(iv)の前に、含浸された繊維強化材からガスを除去する工程をさらに含むことができる。
【0082】
アセンブリは、過剰なシリコーン組成物および/または入り込んだ空気を除去して、含浸された繊維強化材の厚みを減らすために圧縮することができる。アセンブリは、従来の設備(例えばステンレス鋼ローラー、液圧プレス、ゴムローラーまたは積層ロールセット)を使用して圧縮できる。アセンブリは、典型的には1,000Pa〜10MPaの圧力で、室温(約23±2℃)〜50℃の温度で圧縮される。
【0083】
包埋された繊維強化材または含浸された繊維強化材は、室温(約23±2℃)〜60℃の温度で、包埋された強化材中に入り込んだ空気を除去するのに十分な期間、それを真空にさらすことによって、ガスを除去することができる。
【0084】
あるいは第2の方法によれば、繊維強化材は、(i)繊維強化材を剥離ライナー上に置き、(ii)繊維強化材をナノ材料充填シリコーン組成物に包埋し、そして(iii)包埋された繊維強化材にナノ材料充填シリコーン組成物を塗布して含浸された繊維強化材を形成することによって、ナノ材料充填シリコーン組成物中で含浸できる。この第2の方法は、(iv)第2の剥離ライナーを含浸された繊維強化材に塗布してアセンブリを形成する工程、および(v)このアセンブリを圧縮する工程をさらに含むことができる。第2の方法において、工程(iii)〜(v)は、ナノ材料充填シリコーン組成物中に繊維強化材を含浸させる第1の方法について上に記載したとおりである。また、第2の方法は、工程(ii)の後でかつ工程(iii)の前に、包埋された繊維強化材からガスを除去する工程、および/または工程(iii)の後でかつ工程(iv)の前に、含浸された繊維強化材からガスを除去する工程をさらに含むことができる。
【0085】
工程(ii)において、繊維強化材は、ナノ材料充填シリコーン組成物に包埋される。強化材は、単に強化材を組成物で覆って、組成物にその強化材を飽和させることによって、ナノ材料充填シリコーン組成物中に包埋することが可能である。
【0086】
さらに、繊維強化材が織布または不織布である場合、その強化材は、ナノ材料充填シリコーン組成物にそれを通すことによって、その組成物中で含浸できる。布は、典型的には、室温(約23±2℃)で1〜1,000cm/秒の速度でナノ材料充填シリコーン組成物を通過する。
【0087】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法の第2の工程では、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂が硬化される。シリコーン樹脂を硬化させるための条件は、樹脂中のケイ素に結合した基の性質に依存する。例えば、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂がケイ素に結合したヒドロキシ基を含む場合、そのシリコーン樹脂は含浸された繊維強化材を加熱することによって、硬化(すなわち、架橋)できる。例えば、このシリコーン樹脂は、典型的には、含浸された繊維強化材を1〜50時間の間、50〜250℃の温度で加熱することによって硬化できる。シリコーン組成物が縮合触媒を含む場合、そのシリコーン樹脂は、典型的にはより低い温度で、例えば室温(〜23±2℃)〜200℃で硬化できる。
【0088】
また、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂がケイ素に結合した水素原子(例えばシリコーン組成物の第1の実施形態のシリコーン樹脂)を含む場合、そのシリコーン樹脂は、100〜450℃の温度で0.1〜20時間の間、含浸された繊維強化材を水分または酸素にさらすことによって硬化できる。シリコーン組成物が縮合触媒を含む場合、シリコーン樹脂は典型的にはより低い温度で、例えば室温(〜23±2℃)〜400℃で硬化できる。
【0089】
さらに、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂がケイ素に結合した加水分解性基を含む場合、そのシリコーン樹脂は、含浸された繊維強化材を室温(〜23±2℃)〜250℃、あるいは100〜200℃の温度で、1〜100時間の間、湿分にさらすことによって硬化できる。例えば、シリコーン樹脂は、典型的には含浸された繊維強化材を、ほぼ室温(約23±2℃)〜150℃の温度で0.5〜72時間の間30%の相対湿度にさらすことによって硬化できる。硬化は、加熱、高湿度への曝露および/または組成物への縮合触媒の添加により加速できる。
【0090】
含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂は、縮合硬化性シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸させるために使用される上記の方法に依存して、大気圧または大気圧未満の圧力で硬化できる。例えば、含浸された繊維強化材が第1および第2の剥離ライナーとの間に囲まれない場合、そのシリコーン樹脂は空気中で大気圧で典型的に硬化する。あるいは含浸された繊維強化材が第1および第2の剥離ライナーとの間に囲まれている場合、シリコーン樹脂は典型的には減圧下で硬化される。例えば、そのシリコーン樹脂は、1,000〜20,000Pa、あるいは1,000〜5,000Paの圧力下で加熱できる。シリコーン樹脂は、従来の真空バッグ加圧プロセス(vacuum bagging process)を使用して減圧下で硬化できる。典型的なプロセスでは、ブリーダー(bleeder)(例えばポリエステル)が含浸した繊維強化材にわたって付与され、ブリーザー(breather)(例えば、ナイロン、ポリエステル)がこのブリーダーにわたって付与され、真空ノズルを備えている真空バッグ用フィルム(例えばナイロン)がこのブリーザーにわたって付与され、このアセンブリはテープで封止され、真空(例えば1,000Pa)が密封されたアセンブリに適用され、必要に応じて、真空にされたアセンブリは上記のとおりに加熱される。
【0091】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法は、硬化したシリコーン樹脂フィルムを剥離ライナー(1層または多層)から分離する工程をさらに含むことができる。硬化したシリコーン樹脂フィルムは、機械的に剥離ライナーからその層を剥ぐことによって、剥離ライナーから分離することができる。
【0092】
各含浸について同じナノ材料充填シリコーン組成物が用いられるならば、本発明の方法は、含浸する工程および硬化させる工程を繰り返してシリコーン樹脂フィルムの厚みを増加させる工程をさらに含むことができる。
【0093】
本発明の方法は、コーティングを強化シリコーン樹脂フィルムの少なくとも一部分の上に形成する工程をさらに含むことができるが、ただしこれは、コーティング、およびフィルムの硬化したシリコーン樹脂が厚み、ポリマー組成、架橋密度およびカーボンナノ材料または繊維強化材の濃度を含めた多数の物理的および化学的特性のうちの少なくとも1つにおいて異なる場合に限る。コーティングの例としては、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂または縮合硬化性シリコーン樹脂を硬化させることにより調製される硬化したシリコーン樹脂、有機シルセスキオキサン樹脂のゾルを硬化することによって調製される硬化したシリコーン樹脂、無機酸化物(例えば酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素および二酸化チタン)、無機窒化物(例えば窒化ケイ素および窒化ガリウム)、金属(例えば銅、銀、金、ニッケルおよびクロム)、ならびにシリコン(例えばアモルファスシリコン、微結晶シリコンおよび多結晶シリコン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的に、10〜99%(重量/重量)、あるいは30〜95%(重量/重量)、あるいは60〜95%(重量/重量)、あるいは80〜95%(重量/重量)の硬化したシリコーン樹脂を含む。また、強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には15〜500μm、あるいは15〜300μm、あるいは30〜125μm、あるいは20〜150μm、あるいは30〜125μmの厚みを有する。
【0095】
強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には、柔軟性がASTM規格D522−93a、方法Bに記載されているようにして測定される場合、そのフィルムが3.2mm以下の直径を有する円筒状鋼鉄心棒の上で割れずに曲げることが可能であるような柔軟性を有する。
【0096】
この強化シリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料が存在しない同じシリコーン組成物から調製したシリコーン樹脂フィルムと比較して、低い線形熱膨張係数(CTE)、高い引張強さ、高い弾性率および熱的に誘発されるひび割れに対する高い抵抗性を有する。例えば、このフィルムは、室温(約23±2℃)〜200℃の温度で、典型的に0〜80μm/m℃、あるいは0〜20μm/m℃、あるいは2〜10μm/m℃のCTEを有する。また、このフィルムは、典型的には25℃で50〜200MPa、あるいは80〜200MPa、あるいは100〜200MPaの引張強さを有する。さらに、この強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には25℃で2〜10GPa、あるいは2〜6GPa、あるいは3〜5GPaのヤング率を有する。
【0097】
強化シリコーン樹脂フィルムの透明性は、硬化したシリコーン樹脂の組成、フィルムの厚み、ならびに繊維強化材の屈折率などの多くの要因に依存する。この強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には、電磁スペクトルの可視領域で、少なくとも5%、あるいは少なくとも10%、あるいは少なくとも25%、あるいは少なくとも45%の透明性(%透過率)を有する。
【0098】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械的強度および透明性を有するフィルムを必要としている応用に有用である。例えば、このシリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子回路基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙および衝撃耐性ウインドウの一体的要素として使用することが可能である。フィルムは、透明または不透明な電極のための適切な基板でもある。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、本発明の強化シリコーン樹脂フィルムをよりよく例示するために示されるが、これらは、添付の特許請求の範囲に詳細に記述される本発明を限定すると見なされるべきものではない。特に明記しない限り、実施例において、報告される部数および割合(%)は、重量によるものである。実施例では以下の材料を使用した。
【0100】
パイログラフプロダクツ社(Pyrograf Products,Inc.)(オハイオ州、シーダービル)から市販されている、パイログラフ(Pyrograf)(登録商標)−III等級HHT−19カーボンナノ繊維は、直径100〜200nmおよび長さ30,000〜100,000nmを有する熱処理(最高3000℃)されたカーボンナノ繊維である。
【0101】
エスディーシーテクノロジーズ社(SDC Technologies,Inc.)(カリフォルニア州、アナハイム)から市販されている、SDC MP101 クリスタルコートレジン(Crystal Coat Resin)は、メタノール、2−プロパノール、水および酢酸(約1−2%)の混合物中に、本質的にMeSiO3/2単位およびSiO4/2単位からなるシリコーン樹脂を31%(重量/重量)で含む溶液である。
【0102】
ガラスファブリック(Glass Fabric)は、平織りおよび37.5μmの厚みを有するスタイル106の電気ガラス布(electrical glass fabric)を575℃で6時間加熱することにより調製される熱処理されたガラス布である。未処理のガラス布は、ジェイピーエスガラス(JPS Glass)(サウスカロライナ州、スレーター)から得た。
【0103】
(実施例1)
この実施例は、化学的に酸化されたカーボンナノ繊維の調製を示す。パイログラフ(Pyrograf)(登録商標)−IIIカーボンナノ繊維(2.0g)、12.5mLの濃硝酸および37.5mLの濃硫酸を、冷却器、温度計、テフロン(登録商標)コートの磁気撹拌子および温度制御器を備えている500mLの3つ口フラスコの中で順次混合した。この混合物を80℃まで加熱し、この温度に3時間保った。次いでこの混合物を、フラスコを1ガロン(約3.8リットル)のバケツ中のドライアイスの層に置くことによって、冷却した。この混合物を、ナイロン膜(0.8μm)を含むブフナー漏斗に注ぎ込み、カーボンナノ繊維を減圧濾過によって、集めた。膜上に残っているナノ繊維を、濾液のpHが洗浄水のpHに等しくなるまで、脱イオン水で数回洗浄した。最後の洗浄後、このカーボンナノ繊維を、続けて真空を適用しながらさらに15分間、漏斗に保った。次いで、フィルター膜上に支持されたナノ繊維を、100℃で1時間、オーブン中に置いた。このカーボンナノ繊維を、フィルター膜から除去し、乾燥した密封されたガラスジャーで保存した。
【0104】
(実施例2)
実施例1の酸化したカーボンナノ繊維(0.031g)および50.0gのSDC MP101 クリスタルコートレジン(Crystal Coat Resin)を、ガラスバイアル中で混合した。このバイアルを、30分間、超音波浴に置いた。次いでこの混合物を、2000回転/分で30分間、遠心分離をかけた。上澄み組成物を、シリコーン樹脂フィルムを調製するために用いた。
【0105】
ガラス布(38.1cm×8.9cm)を、約5cm/秒の速度でその布を組成物に通すことによって、前出の組成物を含浸させた。次いで、含浸させた布を、室温で換気フード中で垂直に吊り下げて乾燥させ、次いで以下のサイクルに従って空気循環オーブン中で硬化した:1℃/分で室温から75℃まで、75℃で1時間、1℃/分で75℃から100℃まで、100℃で1時間、そして1℃/分で100℃から125℃まで、125℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、シリコーン樹脂フィルムを室温まで放冷した。含浸、乾燥および硬化の工程を繰り返して、フィルムの厚みを増加させた。
【0106】
次いで強化シリコーン樹脂フィルムを、空気循環オーブン中で以下の条件下で熱処理した:5℃/分で室温から400℃まで、400℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、フィルムを室温まで放冷した。熱処理の前後の強化シリコーン樹脂フィルムの顕微鏡写真を、それぞれ図1Aおよび図1Bに示す。両方のフィルムは、ひび割れを含まない。
【0107】
(実施例3)
パイログラフ(登録商標)−IIIカーボンナノ繊維(0.0.031g)および50.0gのSDC MP101 クリスタルコートレジンを、ガラスバイアル中で混合した。このバイアルを、30分間、超音波浴に置いた。次いでこの混合物を、2000回転/分で30分間、遠心分離をかけた。上澄み組成物を用いて、実施例2の方法に従って強化シリコーン樹脂フィルムを調製した。
【0108】
硬化後、この強化シリコーン樹脂フィルムを、空気循環オーブン中で以下の条件下で熱処理した:5℃/分で室温から400℃まで、400℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、フィルムを室温まで放冷した。熱処理の後の強化シリコーン樹脂フィルムの顕微鏡写真を図2に示す。このフィルムは、ひび割れを含む。
【0109】
(実施例4)
実施例1の酸化したカーボンナノ繊維(0.155g)および50.0gのSDC MP101 クリスタルコートレジンを、ガラスバイアル中で混合した。このバイアルを、30分間、超音波浴に置いた。次いでこの混合物を、2000回転/分で30分間、遠心分離をかけた。上澄み組成物を用いて、実施例2の方法に従って強化シリコーン樹脂フィルムを調製した。
【0110】
硬化後、この強化シリコーン樹脂フィルムを、窒素雰囲気のオーブン中で以下の条件下で熱処理した:5℃/分で室温から575℃まで、575℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、フィルムを室温まで放冷した。熱処理の後の強化シリコーン樹脂フィルムの顕微鏡写真を図3に示す。このフィルムは、ひび割れがない。
【0111】
(比較例1)
ガラス布(38.1cm×8.9cm)を、約5cm/秒速度でその布をSDC 耐摩耗性コーティング MP101に通すことによって、その組成物を含浸させた。次いで含浸した布を、室温で換気フード中で垂直に吊り下げて乾燥させ、次いで50℃で10分間、空気循環オーブン中で加熱した。含浸および乾燥の工程を繰り返し、フィルムの厚みを増加させた。
【0112】
次いで、含浸させたガラス布を、以下のサイクルに従って加熱した:1℃/分で室温から75℃まで、75℃で1時間、1℃/分で75℃から100℃まで、100℃で1時間、そして1℃/分で100℃から125℃まで、125℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、シリコーン樹脂フィルムを室温まで放冷した。
【0113】
次いでこの非強化のシリコーン樹脂フィルムを、空気循環オーブン中で以下の条件下で熱処理した:5℃/分で室温から400℃まで、400℃で1時間。オーブンのスイッチを切り、フィルムを室温まで放冷した。熱処理の前後のこの非強化のシリコーン樹脂フィルムの顕微鏡写真を、それぞれ図4Aおよび4Bに示す。この熱処理フィルムは、多くのひび割れを含む。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、前記ナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
前記含浸された繊維強化材の前記シリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記縮合硬化性シリコーン組成物が、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂を含む(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、Rは、R、−H、−OH、または加水分解性基であり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは、0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縮合硬化性シリコーン組成物が、(A)(i)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(II)を有するシリコーン樹脂および(ii)(i)の加水分解性前駆体から選択される有機ケイ素化合物、ならびに式RSiO(RSiO)SiR(III)を有するシリコーンゴムを、水、縮合触媒および有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することによって調製されたゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、RはR、−OHまたは加水分解性基であり、RはRまたは加水分解性基であり、mは2〜1,000であり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂(II)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基を有し、前記シリコーンゴム(III)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した加水分解性基を有し、かつ前記シリコーン樹脂(II)中のケイ素に結合したヒドロキシまたは加水分解性基に対する前記シリコーンゴム(III)中のケイ素に結合した加水分解性基のモル比は0.01〜1.5である)と、(B)縮合触媒とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノ粒子、繊維状カーボンナノ材料および層をなしたカーボンナノ材料から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維強化材がガラス繊維または石英繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ材料充填シリコーン組成物中の前記カーボンナノ材料の濃度が、前記ナノ材料充填シリコーン組成物の総重量に基づいて、0.001〜50%(重量/重量)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記強化シリコーン樹脂フィルムの少なくとも一部分の上にコーティングを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングが硬化したシリコーン樹脂である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または請求項7に記載の方法に従って調製された強化シリコーン樹脂フィルム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−519382(P2010−519382A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550874(P2009−550874)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/001317
【国際公開番号】WO2008/103229
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】