説明

強化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物

組成物は、組成物の総重量を基準にして20重量%以上のガラス繊維、及びポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドを含む。ポリアミドは、60〜100モル%のテレフタル酸単位からなるジカルボン酸単位と、60〜100モル%の1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなるジアミン単位とからなる。ポリアミドは、ポリアミド1g当たりのアミン末端基含量が45マイクロモルを超える。また、この組成物はASTM D648に準拠して1.8MPaで測定した熱変形温度(HDT)が230℃以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミド組成物は広く用いられており、その特性は少なくとも部分的にはポリ(アリーレンエーテル)及びポリアミドの特性の結果である。その広範な用途にもかかわらず、脂肪族ポリアミドを用いる組成物は高い吸湿性のような短所を呈する可能性がある。ポリアミドの構造を変えて芳香族要素を導入することによってその物理的性質を改良する試みがなされている。これらの脂肪族−芳香族ポリアミドを用いた組成物では、幾つかの物理的性質が改良されるが、他の望ましい性質が低下してしまう。例えば、多くの脂肪族−芳香族ポリアミドは大多数のポリマーの分解温度を超える融解温度を有する。従って、これらの脂肪族−芳香族ポリアミドを大半のポリマーとブレンドすると、そのポリマーの少なくとも部分的な分解を起こしてしまう。ある種の脂肪族−芳香族ポリアミドは多くのポリマーの分解温度よりも低い融解温度を有するが、これらのポリアミドは通常大半の用途には不向きな寸法安定性を有しており、これらを用いるブレンドもまた通例寸法安定性に劣る。
【0003】
曲げ強さ、引張強さ及び熱変形温度のような物理的特性を改良するため、繊維状の非導電性充填材のような強化材がポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミドブレンドに配合されているが、上記の物理的性質の向上は引張伸び、衝撃強さ及び流動性を損なうことが多い。
【特許文献1】米国特許第4873276号明細書
【特許文献2】米国特許第6319986号明細書
【特許文献3】米国特許第6362263号明細書
【特許文献4】米国再発行特許第35509号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/088027号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1024171号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1170335号明細書
【特許文献8】特開2000−212434号公報
【特許文献9】特開2003−041117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、高い熱変形温度と加工性及び低い吸水性を併せもつポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記ニーズに対処すべく、組成物の総重量を基準にして20重量%以上の繊維状非導電性充填材、及びポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンドを含んでなる組成物であって、ポリアミドが、60〜100モル%のテレフタル酸単位を含むジカルボン酸単位と60〜100モル%の1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含むジアミン単位とからなり、ポリアミド1g当たりのアミン末端基含量が45マイクロモルを超え、熱変形温度(HDT)がASTM D648に準拠して1.8MPaで測定して230℃以上である組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書で開示する組成物は、繊維状非導電性充填材、任意成分としての耐衝撃性改良剤、及びポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドの相溶化ブレンドを含む。ポリアミドはジカルボン酸単位とジアミン単位からなる。ジカルボン酸単位の60モル%以上はテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上は1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である。芳香族単位と炭素数9の脂肪族単位との組合せによって、融解温度と低吸水性と寸法安定性の独特な組合せを有するポリアミドが得られ、これをポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドに使用すると、吸水性の低い組成物が得られる。この相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンドを、組成物の総重量を基準にして20重量%以上の繊維状非導電性充填材と組み合わせると、組成物はASTM D648に準拠して1.8MPaで測定したHDTが230℃以上となる。幾つかの実施形態では、この組成物はASTM D648に準拠して1.8MPaで測定して240℃以上、さらに具体的には250℃以上のHDTを有するる。
【0007】
一実施形態では、本組成物は、ASTM D648に準拠して0.45MPaで測定して260℃以上、具体的には265℃以上、さらに具体的には270℃以上のHDTを有する。
【0008】
対照的に、同様のポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミド組成物は、ASTM D648に準拠して1.8MPaで測定して230℃未満のHDTを有する。相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンドと繊維状非導電性充填材からなる組成物は、少量の繊維状非導電性充填材で高いHDTを達成することができる。繊維状非導電性充填材が少なくて済むということは、要するに、繊維状非導電性充填材の量が増加すると一般に引張伸びや衝撃強さのような物理的性質は悪影響を受けるので、これらの性質が優れることを意味する。
【0009】
本組成物は、ASTM D570で測定した24時間後の吸水性が0.3%以下、具体的には0.25%以下、さらに具体的には0.2%以下となる。
【0010】
本明細書で用いる「ポリ(アリーレンエーテル)」とは次の式(I)の構造単位を複数含むものである。
【0011】
【化1】

式中、各構造単位について、各Qは独立にハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、炭素原子数1〜7のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、又はハロゲン原子と酸素原子の間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、又はハロゲン原子と酸素原子の間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシである。幾つかの実施形態では、各Qは独立にアルキル又はフェニル、例えばC1−4アルキルであり、各Qは独立に水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、通例ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する1以上のアミノアルキル含有末端基を有する分子からなるものでもよい。また、通例副生物のジフェノキノンが存在する反応混合物から得られる4−ヒドロキシビフェニル末端基が存在することも多い。
【0012】
ポリ(アリーレンエーテル)はホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、ブロックコポリマー(例えば、アリーレンエーテル単位とアルケニル芳香族化合物由来のブロックとを含むもの)及びこれらの1種以上を含む組合せのいずれの形態でよい。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を、適宜2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて含有するポリフェニレンエーテルがある。
【0013】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種類以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造できる。かかるカップリングでは概して触媒系が用いられる。触媒系は銅、マンガン又はコバルトの化合物のような1種類以上の重金属化合物を、通常は第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物又はこれらの2種以上の組合せのような他の各種物質と共に含んでいる。
【0014】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して3000〜40000原子質量単位(amu)の数平均分子量及び5000〜80000amuの重量平均分子量を有する。また、ポリ(アリーレンエーテル)は、クロロホルム中25℃で測定して0.10〜0.60dl/g、具体的には0.29〜0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)の組合せを使用することもできる。2つの固有粘度を使用する場合、正確な比の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び目標とする最終的物性にある程度依存する。
【0015】
本組成物はポリ(アリーレンエーテル)とポリアミド及び任意成分の耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして10〜70重量%のポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は15重量%以上、具体的には20重量%以上でよい。同じく上記範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は65重量%以下、具体的には60重量%以下でよい。
【0016】
脂肪族−芳香族ポリアミドは1種類以上のジカルボン酸由来の単位と1種類以上のジアミン由来の単位からなる。ジカルボン酸単位の総モル数を基準にして60〜100モル%はテレフタル酸から誘導される。この範囲内で、テレフタル酸単位の量は75モル%以上、具体的には90モル%以上でよい。
【0017】
テレフタル酸単位に加えて使用できる他のジカルボン酸単位の例としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸のような脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、並びにイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシ−二酢酸、1,3−フェニレンジオキシ−二酢酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸及び4,4′−ビフェニルジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸由来の単位がある。これらは単独で用いても2種類以上の組合せとして用いてもよい。一実施形態では、1種類以上のジカルボン酸単位における他のジカルボン酸単位の含量は25モル%以下、具体的には10モル%以下である。トリメリト酸、トリメシン酸及びピロメリト酸のような多官能性カルボン酸由来の単位も、組成物の溶融成形が可能である限り、含んでいてもよい。
【0018】
脂肪族−芳香族ポリアミドは1種類以上のジアミン由来の単位を含む。ジアミン単位の総モル数を基準にして60〜100モル%のジアミン単位は1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位から誘導される。この範囲内で、1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の量は75モル%以上、具体的には90モル%以上でよい。
【0019】
1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位とのモル比は100:0〜20:80、具体的には100:0〜50:50、さらに具体的には100:0〜50:40でよい。これをN/I比ともいう。
【0020】
1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位に加えて使用できる他のジアミン単位の例としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン及び1,12−ドデカンジアミンのような線状脂肪族ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン及び5−メチル−1,9−ノナンジアミンのような枝分れ脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン及びトリシクロデカンジメチルアミンのような脂環式ジアミン、並びにp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4′−ジアミノジフェニルエーテルのような芳香族ジアミン由来の単位がある。これらは単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。一実施形態では、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン及び/又は1,12−ドデカンジアミン由来の単位を1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位と組み合わせる。
【0021】
脂肪族−芳香族ポリアミドは結晶性ポリアミドの公知の製造方法で製造すればよい。例えば、酸塩化物とジアミンを原料として用いる溶液重合又は界面重合、或いはジカルボン酸とジアミンを原料として用いる溶融重合、固相重合又は溶融押出重合で製造し得る。
【0022】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、濃硫酸中30℃で測定して、0.4〜3.0dl/g、具体的には0.5〜2.0dl/g、さらに具体的には0.6〜1.8dl/gの固有粘度を有する。
【0023】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、キャピラリー粘度測定法によって、剪断速度1000s−1及び温度330℃で測定して300〜3500ポアズの溶融粘度を有する。この範囲内で、溶融粘度は325ポアズ以上、具体的には350ポアズ以上でよい。同じくこの範囲内で、溶融粘度は3300ポアズ以下、具体的には3100ポアズ以下でよい。
【0024】
脂肪族−芳香族ポリアミドは、ポリアミド1g当たり45マイクロモル以上、具体的には50マイクロモル以上、さらに具体的にはポリアミド1g当たり55マイクロモル以上のアミン末端基含量を有する。アミン末端基含量の測定は、ポリアミドを、適宜加熱しながら、適当な溶媒に溶解し、ポリアミド溶液を、適当な指示法を用いて0.01規定塩酸(HCl)溶液で滴定すればよい。アミン末端基の量は、試料に添加したHCl溶液の体積、ブランクでのHClの使用体積、HCl溶液のモル濃度及びポリアミド試料の重量に基づいて計算される。
【0025】
相溶化ブレンドはさらに、ナイロン6、6/6、6/69、6/10、6/12、11、12、4/6、6/3、7、8、6T、変性6T、ポリフタルアミド(PPA)及びこれらの2種以上の組合せのような脂肪族ポリアミドを含んでいてもよい。
【0026】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド及び任意成分の耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして5〜80重量%の脂肪族−芳香族ポリアミドを含有し得る。この範囲内で、脂肪族−芳香族ポリアミドの量は10重量%以上、具体的には15重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、脂肪族−芳香族ポリアミドの量は70重量%以下、具体的には60重量%以下でよい。
【0027】
相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンドは相溶化剤を用いて形成される。本明細書で用いる「相溶化剤」という用語は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミド樹脂のいずれか又は双方と相互作用する多官能性化合物をいう。相互作用はこの相互作用は化学的なもの(例えばグラフト化)であっても、物理的なもの(例えば分散相の表面特性への影響)であってもよい。いずれの場合も、得られる相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物は、特に衝撃強さ、モールドニットライン強度及び/又は伸び率の向上に認められるような相溶性の向上を示す。本明細書で用いる「相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドブレンド」という用語は、相溶化剤で物理的及び/又は化学的に相溶化された組成物をいう。
【0028】
相溶化剤は2種類のいずれかに分類される多官能性化合物からなる。第一のタイプは、分子内に、a)炭素−炭素二重結合と、b)1以上のカルボン酸、無水物、エポキシ、イミド、アミド、エステル基又はこれらの機能的等価物とを有する。かかる多官能性化合物の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ヒドラジド、ジクロロマレイン酸無水物及び不飽和ジカルボン酸(例えば、アクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、t−エチルアクリル酸、ペンテン酸)がある。一実施形態では、相溶化剤は無水マレイン酸及び/又はフマル酸からなる。
【0029】
第二のタイプの多官能性相溶化剤化合物は、a)式(OR)で表される基(式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシル若しくはカルボニルジオキシ基である。)と、b)各々カルボン酸、酸ハロゲン化物、無水物、酸ハロゲン化物無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ及びこれらの塩から選択される同一又は異なる2以上の基とを有する。このタイプの相溶化剤の典型例は次の脂肪族ポリカルボン酸、酸エステル及び酸アミドである。
【0030】
(RO)R(COORII(CONRIIIIV
式中、Rは炭素原子数2〜20、具体的には2〜10の線状又は枝分れ飽和脂肪族炭化水素であり、Rは水素又は炭素原子数1〜10、具体的には1〜6、さらに具体的には1〜4のアルキル、アリール、アシル若しくはカルボニルジオキシ基であり、各RIIは独立に水素又は炭素原子数1〜20、具体的には1〜10のアルキル若しくはアリール基であり、各RIII及びRIVは独立に水素又は炭素原子数1〜10、具体的には1〜6、さらに具体的には1〜4のアルキル若しくはアリール基であり、mは1に等しく、(n+s)は2以上、具体的には2又は3に等しく、n及びsは各々0以上であり、(OR)はカルボニル基に対してα又はβ位であり、2以上のカルボニル基の間には2〜6個の炭素原子が介在する。当然ながら、R、RII、RIII及びRIVは各置換基の炭素原子数が6未満の場合はアリールとはなり得ない。
【0031】
適当なポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸などがあり、例えば無水物及び水和酸のような各種市販形態のものがある。一実施形態では、相溶化剤はクエン酸からなる。本発明で有用なエステルの具体例としては、例えば、クエン酸アセチル並びにモノ−及び/又はクエン酸ジステアリルなどがある。本発明で有用な適当なアミドとしては、例えば、N,N′−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N,N′−ジドデシルクエン酸アミド及びN−ドデシルリンゴ酸がある。誘導体としては、これらの塩、例えばアミンとの塩並びにアルカリ及びアルカリ(土類)金属塩がある。代表的な適当な塩としては、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カリウム及びクエン酸カリウムがある。
【0032】
これらの相溶化剤はメルトブレンドに直接添加してもよいし、或いはポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドのいずれか又は双方と予め反応させてもよい。一実施形態では、相溶化剤の少なくとも一部をメルト中又は適当な溶媒の溶液中でポリ(アリーレンエーテル)の全部又は一部と予め反応させる。かかる予備反応によって、相溶化剤がポリマーと反応して、ポリ(アリーレンエーテル)を官能化すると考えられる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を無水マレイン酸、フマル酸及び/又はクエン酸と予め反応させると、無水物及び/又は酸−官能化ポリフェニレンエーテルを形成することができ、これは非官能化ポリフェニレンエーテルよりもポリアミドとの相溶性に優れている。
【0033】
相溶化剤の使用量は選択した個々の相溶化剤及び相容化剤を添加する個々のポリマー系に依存する。
【0034】
一実施形態では、相溶化剤は、ポリ(アリーレンエーテル)、脂肪族−芳香族ポリアミド及び任意成分の耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして0.05〜2.0重量%の量で使用する。この範囲内で、相溶化剤の量は0.1重量%以上、具体的には0.2重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、相溶化剤の量は1.75重量%以下、具体的には1.5重量%以下でよい。
【0035】
繊維状非導電性充填材はアスペクト比が1を超える慣用充填材であればどんなものでもよい。かかる充填材はウィスカー、ニードル、ロッド、チューブ、ストランド、細長いプレートレット、ラメラ状プレートレット、楕円、超微細繊維、ナノファイバー及びナノチューブ、細長いフラーレンなどの形態で存在することができる。かかる充填材が凝集形態で存在する場合、アスペクト比が1を超える凝集体も本発明の目的に十分である。繊維状充填材の非限定的な具体例としては、無機短繊維、1種以上のケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム半水和物を始めとするブレンドから誘導されたもののような加工鉱物繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素のようなセラミック繊維、並びに3M社(米国ミネソタ州セイントポール)からNEXTEL(登録商標)という商標で市販されているアルミニウム、ホウ素及びケイ素の混成酸化物から得られた繊維がある。また、繊維状充填材には、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅を始めとする単結晶繊維すなわち「ウィスカー」もある。ガラス繊維、玄武岩繊維のような繊維状充填材、例えば織物用ガラス繊維及び石英も包含される。
【0036】
加えて、有機強化用繊維状充填材及び合成強化用繊維も本発明に使用できる。これには、繊維を形成し得る有機ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートその他のポリエステル、ポリアリーレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、高い熱安定性を有する強力繊維、例えば芳香族ポリアミド、ポリアラミド繊維、例えばKevlar(Du Pont社の製品)、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド繊維、例えばポリイミド2080及びPBZ繊維(いずれもDow Chemical社製)、並びにポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、芳香族ポリイミド又はポリエーテルイミドなどが挙げられる。これらの繊維の組合せも使用できる。
【0037】
かかる繊維状非導電性充填材は、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の形態で供給でき、単独で使用してもよいし、或いは例えば交織構造、コア/シース構造、サイドバイサイド構造、オレンジタイプ構造もしくはマトリックスアンドフィブリル構造、その他繊維製造業者に公知の方法で他の種類の繊維と組み合わせても使用できる。典型的な交織構造には、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維及び芳香族ポリイミド繊維−ガラス繊維がある。繊維状非導電性充填材は、例えば、ロービング、0〜90度織物のような織物繊維補強材、連続ストランドマットやチョップトストランドマットやティッシューや紙やフェルトのような不織繊維補強材、並びに三次元織物補強材、プリフォーム及び編組の形態で供給できる。
【0038】
一実施形態では、ガラス繊維を、非導電性繊維状充填材として使用し得る。有用なガラス繊維は、当業者に公知のあらゆるタイプの繊維形成性ガラス組成物から形成でき、一般に「E−ガラス」、「A−ガラス」、「C−ガラス」、「D−ガラス」、「R−ガラス」、「S−ガラス」並びにフッ素フリー及び/又はホウ素フリーのE−ガラス誘導体として公知の繊維形成性のガラス組成物から製造されたものが挙げられる。殆どの強化材マットはE−ガラスから形成されたガラス繊維からなる。
【0039】
一般に公称フィラメント径約4.0〜約35.0μmの工業生産ガラス繊維、及び公称フィラメント径約9.0〜約30.0μmの最も一般的に生産されているE−ガラス繊維を使用することができる。これらのフィラメントは、例えば水蒸気若しくは空気ブローイング、火炎ブローイング又は機械的引出しなどの常法で製造される。一実施形態では、フィラメントは機械的引出しによって製造される。繊維断面の丸くないものを使用することもできる。ガラス繊維はサイジング処理しても、しなくてもよい。サイジング処理したガラス繊維は、通常、その表面の少なくとも一部が、ポリマーマトリックス材料との相溶性の観点から選択されるサイジング剤組成物で被覆されている。サイジング剤組成物は、繊維ストランドとのマトリックス材料の濡れ性を高め、複合材の目標物性の達成に役立つ。
【0040】
ガラス繊維として、サイジング処理したガラスストランドがある。ガラス繊維を製造する際、多くのフィラメントを同時に形成し、コーティング剤でサイジング処理した後、束ねていわゆるストランドにすることができる。また、最初にフィラメントからストランド自体を形成した後サイジング処理してもよい。約1/4インチ以下の長さ、好ましくは約1/8インチの長さのチョップトストランドの形態でガラス繊維を使用してもよい。また、所望に応じて、長さが約1/4インチよりも長くてもよい。
【0041】
本組成物はさらに耐衝撃性改良剤を含んでいてもよい。有用な耐衝撃性改良剤としては、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンのブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマー、官能化ポリオレフィンエラストマー及びこれらの2種以上の組合せがある。
【0042】
ブロックコポリマーは、(A)アルケニル芳香族化合物由来の1以上のブロックと(B)共役ジエン由来の1以上のブロックとを含むコポリマーである。水素化ブロックコポリマーは、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基含量を水素化によって低減したものである。ブロック(A)と(B)の配置には、線状構造と、枝分れ鎖を有するいわゆるラジアルテレブロック構造がある。
【0043】
代表的な構造として、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック又はB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)及びペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック又はB−A−B−A−Bブロック)構造を始めとする線状構造、並びにAブロックとBブロックを合計6以上有する線状構造がある。一実施形態では、構造はジブロック、トリブロック、テトラブロック又はこれらの組合せであり、具体的には、A−Bジブロック、A−B−Aトリブロック又はこれらの組合せである。
【0044】
ブロック(A)をなすアルケニル芳香族化合物は次式で表される。
【0045】
【化2】

式中、R及びRは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、R及びRは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、塩素原子、臭素原子などを表し、R〜Rは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表すか、或いはRとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成するか、或いはRとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成する。
【0046】
アルケニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、クロロスチレンなど及びこれらのアルケニル芳香族化合物を1種以上含む組合せがある。一実施形態では、アルケニル芳香族化合物はスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレンから選択される。別の実施形態では、アルケニル芳香族化合物はスチレンである。
【0047】
共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどがある。
【0048】
水素化ブロックコポリマーは、共役ジエンに加えて、少量の低級オレフィン性炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、ジシクロペンタジエン、非共役ジエンなどを含有していてもよい。
【0049】
ブロックコポリマー中のアルケニル芳香族化合物由来の繰返し単位の含量に特に制限はない。適当なアルケニル芳香族含量はブロックコポリマーの総重量を基準にして10〜90重量%である。この範囲内で、アルケニル芳香族含量は、40重量%以上、具体的には50重量%以上、さらに具体的には55重量%以上である。同じくこの範囲内で、アルケニル芳香族含量は85重量%以下、具体的には75重量%以下である。
【0050】
水素化ブロックコポリマー主鎖中での共役ジエンの結合様式には特に制限はない。例えば、共役ジエンが1,3−ブタジエンである場合、約1〜約99%が1,2−結合で、残りが1,4−結合で結合していてもよい。
【0051】
水素化ブロックコポリマーは、共役ジエン由来の脂肪族鎖部分の不飽和結合の50%未満、具体的には20%未満、さらに具体的には10%未満が還元されずに残る程度に水素化する。アルケニル芳香族化合物由来の芳香族不飽和結合は約25%まで水素化し得る。
【0052】
水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量が約5000〜約500000AMUであるのが好ましい。この範囲内で、数平均分子量は、好ましくは約10000AMU以上、さらに好ましくは約30000AMU以上、さらに一段と好ましくは約45000AMU以上である。この範囲内で、数平均分子量は、好ましくは約300000AMU以下、さらに好ましくは約200000AMU以下、さらに一段と好ましくは約150000AMU以下である。
【0053】
水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して5000〜500000AMUの数平均分子量を有る。この範囲内で、数平均分子量は10000AMU以上、具体的には30000AMU以上、さらに具体的には45000AMU以上である。同じくこの範囲内で、数平均分子量は300000AMU以下、具体的には200000AMU以下、さらに具体的には150000AMU以下である。
【0054】
GPCで測定した水素化ブロックコポリマーの分子量分布に特に制限はない。コポリマーの重量平均分子量/数平均分子量の比はいかなる値であってもよい。
【0055】
代表的な水素化ブロックコポリマーは、それぞれスチレン−ブタジエン及びスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマーの水素化によって得られるスチレン−(エチレン−ブチレン)ジブロック及びスチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロックコポリマーである。
【0056】
適当な水素化ブロックコポリマーとしては、例えば、Kraton Polymers社(以前はShell Chemical社の一部門)からKRATON(登録商標)G1650、G1651及びG1652として、並びに旭化成(株)からタフテック(TUFTEC;登録商標)H1041、H1043、H1052、H1062、H1141及びH1272として市販されているものがある。
【0057】
代表的な非水素化ブロックコポリマーとしては、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)並びにこれらの組合せがある。
【0058】
適当な非水素化ブロックコポリマーは数々の供給元から市販されており、例えばPhillips Petroleum社からSOLPRENEという商品名で、Shell Chemical社からKRATONという商品名で、またクラレ(株)からセプトン(SEPTON)という商品名で市販されている。
【0059】
他の有用な耐衝撃性改良剤としては、カルボン酸基、エステル、酸無水物、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基、シラノール基、カルボキシレート及びこれらの官能基2種以上の組合せからなる群から選択される1以上の官能基を含有する官能化ポリオレフィンエラストマーがある。ポリオレフィンエラストマーは、ポリアミドと混和性のポリオレフィンであり、線状ランダムコポリマー、線状ブロックコポリマー、並びにシェルがポリアミドと混和性でポリアミドと反応性の官能基を含むコア−シェル型コポリマーがある。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン−エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチレン−ヘキセンコポリマー又はエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーがある。上記の官能基を含むモノマーはポリオレフィンとグラフト重合又はポリオレフィンモノマーと共重合し得る。一実施形態では、ポリオレフィンエラストマーの構造単位はエチレン並びにプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンのような1種以上のC3−8オレフィンから誘導される。
【0060】
適当な官能化ポリオレフィンエラストマーは多くの供給元から、例えばDuPont社からELVALOYという商品名で市販されている。
【0061】
耐衝撃性改良剤の種類又は各種耐衝撃性改良剤の組合せの選択は、少なくとも部分的に、ポリアミドの融解温度及び耐衝撃性改良剤の温度プロフィールに基づいて行い得る。
【0062】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド及び耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして3〜30重量%の耐衝撃性改良剤を含み得る。この範囲内で、耐衝撃性改良剤の量は4重量%以上、具体的には5重量%以上でよい。同じくこの範囲内で、耐衝撃性改良剤の量は、25重量%以下、具体的には20重量%以下でよい。
【0063】
本組成物は、溶融混合又はドライブレンドと溶融混合の組合せによって製造できる。溶融混合は単軸又は二軸押出機、或いは成分に剪断力を加えることができる類似の混合装置で実施できる。
【0064】
最初にすべての成分を加工装置に加えてもよい。場合によっては、繊維の破断を抑制するため繊維状非導電性充填材を下流で添加するのが望ましい。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)を、適宜耐衝撃性改良剤のような他の成分及び適宜ポリアミドの一部と共に、相溶化剤と予備コンパウンディングしてもよい。幾つかの実施形態では、予備コンパウンディングした成分をペレット化した後、組成物の残りの成分と共に混合してもよい。ポリアミドを2つの部分に分けて添加する場合、ポリアミドの残りの部分は最初の成分を混合した後で加える。押出機を使用する場合、ポリアミドの第二の部分は下流の供給口を介して供給するとよい。加工処理に複数の別個の押出機を使用してもよいが、各種成分の添加に適合した複数の供給口を長手方向に有する単一の押出機で調製するとプロセスが簡単になる。組成物中の揮発性不純物を除去するため押出機の1以上のベント口を介してメルトを真空に引くのが往々にして有利である。充填材や強化材のような添加剤を含む幾つかの実施形態では、添加剤はマスターバッチの一部として組成物の他の成分に導入するのが有利であることがある。例えば、導電性充填材をポリアミドと共に溶融混合して導電性マスターバッチを形成し、導電性マスターバッチを、通常は押出機の供給口の下流で、残りの成分に加えるのが有用であることが多い。
【0065】
本組成物はさらに、酸化防止剤、難燃剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、無機小粒子(例えば、粘土、雲母及びタルク)、導電性充填材(例えば、導電性カーボンブラック、炭素フィブリル、炭素繊維及びカーボンナノチューブ)、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の添加剤を有効量含んでいてもよい。これらの添加剤は当技術分野において公知であり、その有効量及び配合方法も同様に公知である。添加剤の有効量は広範囲にわたるが、通常は組成物全体の重量を基準にして50重量%以上の量で存在する。ヒンダードフェノール、チオ化合物及び各種脂肪酸由来のアミドのような幾つかの添加剤は一般に組成物の総重量を基準にして合計で2重量%の量で存在する。
【0066】
代表的な難燃剤としては、ハロゲン化難燃剤、環状ホスフェートを始めとする有機ホスフェート、塩化窒化リン、リンエステルアミドのようなリン−窒素結合を含有する化合物、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシド、塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、モノ−、ジ−及びポリ−ホスフイン酸エステル/塩、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、赤リン、メラミンポリホスフェート、メレムホスフェート、メラムホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミン、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛のような亜鉛化合物、並びにこれらの1種以上を含む組合せがある。難燃剤は通例、「Tests for Flammability of Plastic Materials,UL94」と題するUnderwriter′s Laboratory Bulletin 94のような所定の難燃性規格に合格するのに充分な難燃性を有する組成物を得るのに充分な量で使用される。関係する難燃性規格は最終用途に応じて決定し得る。
【0067】
組成物は通例、押出機から吐出後にペレット化し、次いでペレットを射出成形、圧縮成形、異形押出、フィルム及びシート押出、ガス支援射出成形及び押出成形のような低剪断又は高剪断成形プロセスで二次成形することができる。フィルム及びシート押出法としてはメルトキャスティング、インフレートフィルム押出及びカレンダリングを挙げることができるが、これらに限定されない。共押出及び積層法を用いて複合多層フィルム又はシートを形成することもできる。この単層又は多層基材にさらに単一又は複数層のコーティングを設けて、耐擦過性、耐紫外光性、美観などの追加の性質を付与することもできる。コーティングはロール塗り、吹付け塗工、浸漬、刷毛塗り又は流し塗りのような通常の塗工技術によって塗工し得る。本発明のフィルム及びシートは、組成物を適当な溶媒に溶解した溶液又は懸濁液を基材、ベルト又はロール上にキャストしてから溶媒を除去することによって製造することもできる。
【0068】
配向フィルムは、インフレーション法によって、或いは慣用の延伸技術を用いてキャスト又はカレンダーフィルムを熱変形温度付近で延伸することによって製造できる。例えば、多軸同時延伸にはラジアル延伸パントグラフを使用することができるし、x−y方向延伸パントグラフを用いて平面x−y方向で同時又は逐次に延伸することができる。また、逐次一軸延伸セクションを有する装置、例えば縦方向に延伸するため速度の異なるロールセクションと横断方向に延伸するためのテンターセクションとを備えた機械を用いて一軸及び二軸延伸を達成することができる。
【0069】
組成物は第一のシートと第二のシートとを有する多層シートにしてもよく、第一のシートは第一面と第二面をもつ熱可塑性ポリマーからなり、第一のシートの第一面を複数のリブの第一面上に配置し、第二のシートは第一面と第二面を有する熱可塑性ポリマーからなり、第二のシートの第一面を上記複数のリブの第一面とは反対側の第二面上に配置する。
【0070】
上記フィルム及びシートはさらに、特に限定されないが、熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形及び圧縮成形を始めとする賦形及び二次成形プロセスによって成形品に熱可塑加工し得る。また、多層成形品は、以下に述べる通り、単層又は多層フィルム又はシート基材上に熱可塑性樹脂を射出成形することによって形成することもできる。
【0071】
1.単層又は多層熱可塑性基材を準備する。基材は適宜表面に例えばスクリーン印刷又はトランスファー染料を用いて1以上の色を有していてもよい。
【0072】
2.例えば基材を三次元形状に賦形及びトリミングし、基材の三次元形状と合致する表面をもつ金型に嵌め込むことなどによって、基材を金型の立体形状に合致させる。
【0073】
3.基材背後の金型キャビティー内に熱可塑性樹脂を射出して、(i)永久接合した一体三次元製品を製造するか、或いは(ii)印刷基材から模様又は美的効果を射出成形樹脂に転写し、印刷基材を取り出し、美的効果を成形樹脂に付与する。
【0074】
当業者には自明であろうが、上記物品にさらに、特に限定されないが、熱硬化、テクスチャー化、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び真空蒸着を始めとする一般的な硬化及び表面修飾処理を施して表面外観を変更したりその物品に追加の機能性を付与してもよい。
【0075】
従って、本発明の別の実施形態は上記組成物から製造した物品、シート及びフィルムに関する。
【実施例】
【0076】
本明細書に記載した様々な実施形態を以下の非限定的な実施例でさらに例証する。
【0077】
以下の実施例は、表Iに記載の材料を用いて製造した。また、これらの実施例は1重量%未満の安定剤及び酸化防止剤も含有する。表II及び表IIIに示す量は重量%である。以下の実施例で使用する重量%は組成物の総重量を基準にして求めたものである。
【0078】
【表1】

これらの実施例の熱変形温度(HDT)はASTM D648に準拠して1.82及び0.45MPaで試験した。熱変形温度の値は摂氏温度で示す。幾つかの実施例では、ASTM D256(ノッチ付アイゾット、NI)を用いて23℃で衝撃強さを試験した。ノッチ付アイゾットの値はJ/m単位で示す。幾つかの実施例では、ASTM D3763(多軸衝撃、MAI)を用いて23℃で衝撃強さを試験した。多軸衝撃値はJ単位で示す。PA9Tの溶融粘度はキャピラリー粘度測定法で測定した。曲げ弾性率はASTM D790によって測定し、その値はMPa単位で示し、破断点伸び率%はASTM D638によって測定した。
【0079】
例1〜10
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、耐衝撃性改良剤及びフマル酸(表IIに示す)をWerner and Pfleider社製30mm二軸押出機の供給口に加え、スクリュー速度350回転/分、供給速度13.6kg/時、温度305℃で溶融混合した。ガラス繊維は下流で加えた。材料をペレット化し、ペレットを射出成形し、熱変形温度、ノッチ付アイゾット衝撃強さ及び/又は多軸衝撃強さを試験した。配合及び結果を表IIに示す。
【0080】
【表2】

例3〜5の対比から分かる通り、ガラスを10重量%配合した場合、ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミドの相溶化ブレンドを含む組成物と、ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドの相溶化ブレンドを含む組成物は、1.8MPa及び0.45MPaにおいて完全に又は実質的に同じ熱変形温度値を有する。対照的に、例6〜7と実施例8〜10との対比から分かる通り、ガラス繊維が20重量%を超える場合、ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族−芳香族ポリアミドの相溶化ブレンドを含む組成物の熱変形温度(実施例8〜10)は、ポリ(アリーレンエーテル)/脂肪族ポリアミドの相溶化ブレンドを含む組成物の熱変形温度(例6〜7)よりも驚くほど高い。
【0081】
以上、様々な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲内において様々な変更をなすことができ、本発明の要素を均等物で置換できることは当業者には明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の開示内容に適合させるため、本発明の本質的な技術的範囲内で数多くの修正を施すことができる。本発明は、本明細書において本発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【0082】
引用した特許、特許出願その他の文献は全て援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量を基準にして20重量%以上のガラス繊維、及び
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンド
を含んでなる組成物であって、
ポリアミドが60〜100モル%のテレフタル酸単位を含むジカルボン酸単位と60〜100モル%の1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含むジアミン単位とからなり、ポリアミドがポリアミド1g当たり45マイクロモルを超えるアミン末端基含量を有しており、さらに組成物がASTM D648に準拠して1.8MPaで測定して230℃以上の熱変形温度(HDT)を有する組成物。
【請求項2】
組成物の総重量を基準にして20重量%以上のガラス繊維、及び
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの相溶化ブレンド
を含んでなる組成物であって、
ポリアミドが60〜100モル%のテレフタル酸単位を含むジカルボン酸単位と60〜100モル%の1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含むジアミン単位とからなり、ポリアミドがポリアミド1g当たり45マイクロモルを超えるアミン末端基含量を有しており、さらに組成物がASTM D648に準拠して0.45MPaで測定して260℃以上の熱変形温度(HDT)を有する組成物。
【請求項3】
さらに耐衝撃性改良剤を含んでおり、耐衝撃性改良剤が、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンのブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマー、官能化ポリオレフィンエラストマー又はこれらの2種以上の組合せからなる、請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ポリ(アリーレンエーテル)、脂肪族−芳香族ポリアミド及び任意成分の耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、ポリ(アリーレンエーテル)が10〜70重量%の量で存在し、脂肪族−芳香族ポリアミドが5〜80重量%の量で存在し、耐衝撃性改良剤が3〜30重量%の量で存在する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
アミン末端基含量が50マイクロモル以上である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドの相溶化ブレンドがさらに脂肪族ポリアミドを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
ポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドの相溶化ブレンドが、炭素−炭素二重結合と1以上のカルボン酸、無水物、エポキシ、イミド、アミド、エステル基又はこれらの機能的等価物とを有する多官能性化合物、式(OR)で表される基(式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシル若しくはカルボニルジオキシ基である。)とカルボン酸、酸ハロゲン化物、無水物、酸ハロゲン化物無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ及びこれらの塩から選択される同一又は異る2以上の基とを有する多官能性化合物及びこれらの多官能性化合物2種以上の組合せから選択される相溶化剤とポリ(アリーレンエーテル)と脂肪族−芳香族ポリアミドとの反応生成物である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
相溶化剤がクエン酸、フマル酸、無水マレイン酸又はこれらの2種以上の組合せからなる、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
さらに、酸化防止剤、難燃剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、無機小粒子、導電性充填材、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤又はこれらの2種以上を含む混合物を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
組成物がさらに、カーボンブラック、炭素繊維、炭素フィブリル、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及びこれらの導電性充填材2種以上の組合せから選択される導電性充填材を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の組成物。

【公表番号】特表2007−502891(P2007−502891A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523968(P2006−523968)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026590
【国際公開番号】WO2005/017042
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】