説明

弾性シール材及びその製造方法

【課題】軽量、高反発弾性で薄型な弾性シール材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の弾性シール材は、内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下であるポリオレフィン系発泡成形体からなる。製造方法は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と、該成分(A)に分散された繊維状水溶性高分子(B)と、過酸化物架橋剤成分(C)と、発泡剤(D)とを含有する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を調製する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物調製工程と、前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を所望のシール材形状に発泡成形して発泡成形体(F)を得る発泡成形体成形工程と、前記発泡成形体(F)内部の繊維状水溶性高分子(B)を部分的または完全に除去して、内部に前記多数の線状通気孔を形成する繊維状水溶性高分子除去工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器や自動車などの部品間で用いられる防水性、防塵性、制振性、防音性などに好適で、柔軟性、及び反発弾性に優れた弾性シール材及びその製造方法に関する。本発明は、詳しくは、レーザープリンタやインクジェットプリンタなどのプリンタのトナーカートリッジやインクタンク周辺の出口やつなぎ目、自動車用エアコンと車体との継ぎ目、自動車のテールランプと車体との継ぎ目などの各種産業部品の連結部位の防水性、耐透湿性、防塵性、制振性、防音性などのシール特性を実現するために用いて好適な、柔軟性および反発弾性に優れた弾性シール材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記各種産業部品の連結部位のシールには、従来、汎用の軟質ポリウレタンフォームが多用されてきている。この汎用ウレタンフォームは、例えば、ポリエーテルポリオールを単独もしくは不飽和単量体重合ポリオール(以下、ポリマーポリオールと記す場合もある)と併用したポリオール成分と、ポリイソシアナート成分とを主原料とし、これに発泡剤と触媒および整泡剤を加えて所望のシール材形状と厚みに発泡成形したものである。このようにして得られた汎用ポリウレタンフォーム製の弾性シール材は、比較的フォーム密度の低い軽量なシール材である。
【0003】
例えば、自動車エアコン継ぎ目のシーリング部位やテールランプと車ボディーの継ぎ目のシール部位等に使用されている上記汎用ポリウレタンフォームは、軽量であるが、反発弾性が低い。そのため、その厚さを比較的厚くして圧縮時の弾性を確保している。しかし、厚みのある弾性シール材を高い圧縮率で圧縮することで、圧縮時の弾性シール材の密度が大きくなり、それに伴って剛性が高まる。シール材の剛性が高くなると、各種振動が継ぎ目のシール材を介して伝搬され易くなる。シール材を介して伝播分散された振動は、シール材を介して連結された各部品の表面で音に変換される。この音は車内外に伝搬する。この音は可聴音領域の耳障りな音、即ち騒音として感じられるので、抑制されることが求められている。
【0004】
上記振動の伝搬を抑制するためには、厚みを薄くし、圧縮率を低減した場合でも所定の反発弾性が得られるシール材が必要となるが、従来の汎用ウレタンフォームにおいては、反発弾性と低密度化とは相克関係にあり、低密度化を進めると、反発弾性が低いため、その厚さを比較的厚くして圧縮して使わざるを得ない。
【0005】
一方、特許文献1に記載のような高弾性ウレタン発泡体を用いると、厚みを薄くして、使用時の圧縮率を低減しても、所定の反発弾性が得られるが、高弾性ウレタン発泡体自体の硬度が高いことによる問題が発生する。即ち、シール材自体の硬度が高いと、使用時の圧縮率が低くても、硬度が高いために振動を伝搬しやすい。したがって、高弾性ウレタン発泡体を用いたシール材においても、所望の制振特性を得ることができない。
【0006】
【特許文献1】特表2001−526723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、防水性、耐透湿性、防塵性と同時に、制振性、防音性も良好な弾性シール材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、軽量で、反発弾性、低密度化を同時に満たす発泡成形体を用いて弾性シール材を構成すれば、防水性、耐透湿性、防塵性が良好で、同時に制振性、防音性にも優れた弾性シール材を得ることができるとの結論に至った。
【0009】
軽量で、反発弾性、低密度化を同時に満たす発泡成形体を実現するために、さらに検討を重ねたところ、内部に多数の線状通気孔を有するポリオレフィン系発泡成形体が目的の特性を有することを知るに至った。
【0010】
このポリオレフィン系発泡成形体は、(i)ポリオレフィン系樹脂組成物中に特定寸法の繊維状水溶性高分子を分散させておき、これを発泡成形し、(ii)得られた発泡成形体から水洗等により前記繊維状水溶性高分子を除去することにより、得られる。得られる発泡成形体は、内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下の特性を有する。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明にかかる弾性シール材は、内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下であるポリオレフィン系発泡成形体からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる弾性シール材の製造方法は、内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下であるポリオレフィン系発泡成形体からなる弾性シール材を得る弾性シール材の製造方法であって、
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と、前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散された繊維状水溶性高分子(B)と、過酸化物架橋剤成分(C)と、発泡剤(D)とを含有する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を調製する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物調製工程と、
前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を所望のシール材形状に発泡成形して発泡成形体(F)を得る発泡成形体成形工程と、
前記発泡成形体(F)を水分に接触させて、内部の繊維状水溶性高分子(B)を部分的または完全に除去して、内部に前記多数の線状通気孔を形成する繊維状水溶性高分子除去工程と、
を有することを特徴とする。
【0013】
上記シール材形状とは、慣用のシール材に用いられている各種形状を意味する。すなわち、O−リング状、帯状、シート状、皿状などの各種形状であり、断面の形状としても、円状、矩形状、楕円状、長円状、台形状、多角形状、およびこれらの組み合わせからなる不定形状などが含まれる。
【0014】
上記構成において、前記線状通気孔の径寸法が0.1μm以上20μm以下であることが、好ましい。
【0015】
また、本発明の弾性シール材の25%硬さ(ILD)が170〜260N/314cmであり、通気性が10〜60L/minであることが、好ましい。
【0016】
なお、本発明の弾性シール材において、ポリオレフィン系発泡成形体の内部に形成される線状通気孔の平均径は、上述のように20μm以下が好ましく、下限値としては、0.1μm以上が好ましい。線状通気孔の平均径を0.1μm〜20μmとするためには、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)中に分散した繊維状水溶性高分子(B)の繊度を、概ねのところ1.0デシテックス〜15.0デシテックスに調整すればよい。
【0017】
上記構成において、前記繊維状水溶性高分子(B)の配合量が前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)100重量部に対して2〜50重量部であることが、好ましく、5〜30重量部とすることが、さらに好ましい。これら範囲内に設定することにより、線状通気孔をより安定的に分散形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)中に分散された繊維状ポリビニルアルコール(B)の部分的あるいは完全な溶解除去工程により、母材のポリオレフィン系発泡成形体の内部に多数の線状通気孔が形成される。
【0019】
したがって、母材のポリオレフィン系発泡成形体として、汎用の高発泡フォームや、クローズセルの発生率が高く且つフォームの骨格強度に富んだ反発弾性に優れた高発泡フォームを用いた場合でも、通気性が極めて優れ、柔軟性に富み、従来の高弾性フォームよりも密度の低い軽量な発泡成形体からなる弾性シール材が得られる。さらに、母材の内部に形成された多数の線状通気孔によって、弾性シール材に振動が作用した際の弾性シール材内部の気泡間の空気の循環による流出入が容易となる。このため振動伝達時の減衰性能が適度に向上し、振動吸収性が一層向上する。かかる振動が作用した際の制振性の向上は、圧縮率に対する応力によって確認することができる。この圧縮率に対する応力の好適な範囲は、ヒステリシス・ロス(JIS E7104)が20%以下、反発弾性(JIS K6400−3)が60%以下である場合に実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明にかかる弾性シール材は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と、該ポリオレフィン熱可塑性樹脂成分(A)に分散された繊維状水溶性高分子(B)と、過酸化物架橋剤成分(C)と、発泡剤(D)を含有する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を用いて製造することができる。以下、各成分について、説明する。
【0021】
(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A))
上記繊維状水溶性高分子(B)が分散されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)としては、水あるいは有機溶媒等の分散媒に含有された繊維状水溶性高分子(B)と高分子量のポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)との混合物から、上記分散媒を除去したものが使われる。
【0022】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)は、特に限定されず、高弾性のポリオレフィン系フォームや汎用のポリオレフィン系フォームを製造する場合に通常使用されるあらゆるタイプのものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、等の汎用ポリマーや、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム、またポリオレフィン系、ポリスチレン系、等の熱可塑性エラストマーが挙げられることができる。
本発明のポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)として、2種以上のポリオレフィン材料を混合して用いてもよい。そのような組み合わせの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)等の組み合わせがある。
【0023】
(繊維状水溶性高分子(B))
繊維状水溶性高分子(B)として用いられるものに、繊維状ポリビニルアルコール、デンプ系のアミロース,アミロペクチン、タンパク質系のゼラチン,シルク(フィブロイン),カゼイン、ファイバー状の多糖類系のブルラン,グアーガム分解物,大豆多糖,寒天,セルローズ,アラビノキシラン,アルギン酸ナトリウム,カラギーナン,ペクチンなどが挙げられる。
【0024】
なお、本発明でいう「繊維状水溶性高分子」には、初期形状が繊維状でポリオールに分散させる時に叩解して好適な繊度に調整可能なものばかりでなく、配合時には粒状やフィルム状であって、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散する時あるいは過酸化物架橋剤成分(C)やその他の成分と攪拌発泡成形する際に、さらに剪断力を加えることにより叩解してフィブリル化(小繊維化)し、調製後の発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)中に好適な繊度の繊維状として存在することが可能となるものも、含まれる。
【0025】
上記繊維状水溶性高分子(B)の一種である繊維状ポリビニルアルコールの市販品としては、株式会社クラレ製の「クラロン」が挙げられる。この繊維状水溶性高分子(B)は、低温から沸騰水までの水あるいは水蒸気などの、さまざまな温度、状態の水分に溶解可能な易水溶性であり、所望の溶解温度を有する銘柄を選択し、用いることができる。
【0026】
繊繊維状水溶性高分子(B)は、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)中に分散した時点で、繊度(太さ)が、通常、1.0〜15.0デシテックスであることが好ましい。また、この繊繊維状水溶性高分子(B)の平均長さは、通常、1.0mm〜100mmであり、好ましくは1.0〜50mmである。発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)に分散された繊繊維状水溶性高分子(B)の繊度と平均長さが、上記範囲にあると、製造された弾性シール材に組み付け荷重が作用した際の弾性シール材内部の圧縮抵抗を好適な範囲とすることができる。かかる良好な圧縮性が得られる線状通気口の径寸法としては、0.1μm〜20μmが相当する範囲である。
【0027】
周知のように、繊維(糸)の太さは、長さと重さの相互関係から割り出すが、繊維の断面は円形でないため、直径で太さを表すことができず、「長さ」と「質量」の関係でその太さを表す。その表示方法は、長さを基準とした「恒長式表示法」と重さを基準とした「恒重式表示法」があり、本発明では、前者の恒長式表示法の一種であるデシテックス(dtex)にて、繊維状水溶性高分子(B)の太さを規定する。
【0028】
デシテックス(dtex)は、すべての単繊維、糸、繊維束に共通に用いられて恒長式の太さ表示方法であり、糸の長さ10000mに対し、糸の重さ1gを1デシテックスと表示する。
すなわち、本発明で用いる繊度の単位(dtex)は、糸の長さをL(m)、糸の重さをW(g)で示すと、下記の式で表される。
dtex(テックス)=10000×W(g)/L(m)
【0029】
上述のように、本発明で用いる繊維状水溶性高分子(B)の発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)中に分散した時の繊度を、1.0〜15.0デシテックス(dtex)とするには、繊維状水溶性高分子(B)をポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)中に混練り分散する際の剪断力を適宜に制御して繊維状水溶性高分子(B)を叩解し、フィブリル化(小繊維化)する。
【0030】
前記繊維状水溶性高分子(B)の配合量は、前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)100重量部に対して2〜50重量部、更に5〜30重量部とすることが、線状通気孔を安定的に分散形成する上で、好ましい。
【0031】
繊維状水溶性高分子(B)をポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散する場合、直接混練り分散が好ましいが、その他分散媒として、水を用いることができ、その他、1価あるいは多価のアルコール等の親水性有機溶媒も使用することができる。
【0032】
なお、前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)の沸騰点は、繊維状水溶性高分子(B)の分散媒である有機溶媒に比較して充分に高いため、繊維状水溶性高分子(B)の分散媒が有機溶媒である場合には、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と繊維状水溶性高分子(B)との混合物から有機溶媒を蒸留によって除去することができる。
【0033】
繊維状水溶性高分子(B)の分散媒が水の場合には、蒸留を低温でかつ必要に応じて減圧下で脱水することにより、分散安定度の高い繊維状水溶性高分子の分散マスターバッチが得られる。
【0034】
また、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)として、幾種かのポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分を混合して用いる場合には、上述のように繊維状水溶性高分子(B)をポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散させて繊維状水溶性高分子分散ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分のマスターバッチを調製し、この繊維状水溶性高分子分散ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分に他のポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分を併用して使用する。
【0035】
(過酸化物架橋剤成分(C))
過酸化物架橋剤成分(C)としては、特に限定されず、好ましく用いられる具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,−トリメチルシ5クロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0036】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブリル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが 好ましく、なかでも1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0037】
上記過酸化物架橋剤成分(C)は、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)100重量部に対して、通常0.05〜2.5重量部程度の配合が好ましい。
【0038】
本発明においては、上記過酸化物架橋剤成分(C)による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパンN,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
これら助剤の配合量によっても、射出時の発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)の流動性や発泡性の調整を適宜行うことができる。
【0039】
部分架橋を電子線、中性子線、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の電離性放射線の照射により行う場合は、架橋剤を配合しなくともよいが、電離性放射線の照射による分岐および部分架橋処理に際しては、その助剤として、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマ−を配合することができる。
【0040】
(発泡剤(D))
前述したポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)に配合される発泡剤(D)としては、熱分解してガスを発生する熱分解型発泡剤があり、具体的には、アゾジカーボンアミド(ADCA)、ジエチルアゾカルボキレート、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、3,3−ジスルホンヒドラシドフェニルスルホン酸、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジンなどの有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤等が挙げられる。
【0041】
特に有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、トリヒドラジノトリアジンが好ましく、無機発泡剤としては、炭酸水素ナトリウムが好ましい。また、炭酸水素ナトリウムとクエン酸モノナトリウムおよびグリセリン脂肪酸エステルを混合させて用いてもよい。
【0042】
これらの発泡剤の選択で、発泡剤の分解ピーク温度は、組み合わせて使用する有機化酸化物の分解ピーク温度に対して、分解ピーク温度の高いものを選択する。
またこれらの発泡剤は単独または複数の組合せ、またいわゆる分解助剤を併用して用いることができる。
また、発泡助剤、湿潤剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤および充填剤は、上記混練のいずれかの段階において配合する。
【0043】
(その他の成分)
本発明の弾性シール材を得るための発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物には、上記成分(A)、(B)、(C)および(D)以外に、必要に応じて、慣用の架橋剤、各種触媒、整泡剤などの他の成分を配合してもよい。
【0044】
架橋剤としては、ジエタノールアミンや、ポリオキシエチレンテトラオールなどを用いるができる。
【0045】
上記触媒としては、特に限定されず、ポリウレタンを製造する場合に用いられる慣用の各種触媒を用いることができる。例えば、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N''−ペンタメチルジエチレンアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,1,2−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−取り置きしエチレン−N,N−ジメチルアミン等のアミン;又はこれらの有機酸塩;及びスタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフタン酸亜鉛などの有機金属が、挙げられる。
【0046】
上記整泡剤としては、アルキレンポリエーテル変成シリコン系界面活性剤が使用される。またフッ素系面活性剤も用いることもできる。
【0047】
(弾性シール材の製造方法)
本発明の弾性シール材は、上述の成分(A)〜(D)の主原料と、その他の成分を適宜に組み合わせて発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を調製し、得られた発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を所望のシート材形状に発泡成形してシート材形状の発泡成形体(F)を得て(シート材形状発泡成形体成形工程)、得られたシート材形状の発泡成形体(F)を水分に接触させて、内部の繊維状水溶性高分子(B)を部分的または完全に除去して、内部に前記多数の線状通気孔を形成する(繊維状水溶性高分子除去工程)ことにより、得ることができる。
【0048】
発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)は、混練り物とし、その後、発泡させて発泡成形体とする。混練りは、何回かに分割して行うか、段階的に行って、最終的に未発泡状態の発泡性熱可塑性樹脂組成物(E)を得る。
【0049】
混練手段としては、V型ブラベンダー、タンブルブラベンダー、リボンブラベンダー、ヘンシェルブラベンダー、バンバリ−ミキサ−、ミクシングロ−ル、ニ−ダ−などや、押出し機、などの公知の混練機を用いることができる。
【0050】
発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)は、混練時に熱をかける(動的架橋する)ことにより部分的に架橋させてもよく、温度をかけずに非架橋状態で混練りし、得られた混練物に熱をかける(静的架橋する)ことにより部分的に架橋させてもよい。どちらの場合も、架橋温度は、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)に含まれる発泡剤(D)の発泡温度以下の温度に設定する。なお、成形前の混練物は、部分架橋せず、ほぼ全体が未架橋状態としてもよい。部分架橋状態にするか、未架橋状態にするかは、成形時の操作性によって、適宜に選択される。
【0051】
次に、上記混練物を所望のシール材形状に成形し、得られた成形物に発泡温度以上の温度をかけて発泡成形体を得る。この時の発泡温度により未発泡成形体中の未架橋部分が架橋され、発泡成形体全体の架橋が完成する。
【0052】
混練物の発泡は、熱風循環炉、赤外線加熱、高周波加熱、ソルト浴上加熱による常圧発泡法、加熱プレスによる加圧発泡法、また射出成形機で金型中での射出発泡、押し出し発泡等によって、実現することができる。
【0053】
なお、熱分解型発泡剤による発泡に代えて、揮発性溶剤や水等の蒸気圧によって樹脂を発泡させることもできる。この場合、熱分解型発泡剤を混練しない発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を一旦調製し、この樹脂組成物(E)に発泡剤(D)として二酸化炭素ガスや窒素ガス、水蒸気、揮発性溶剤等のガス圧によって樹脂を発泡させる発ガス成分を分散あるいは含浸させる。揮発性溶剤や水などの発泡剤(D)を混入した樹脂組成物(E)を加熱することにより、樹脂組成物(E)内にガスを発生させ、これにより発泡成形体を得る。上記発ガス成分の樹脂組成物(E)への混入は、射出成形やスタンピング成形、または押出し成形による成形時に、成形機から発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を出す直前に、行うことが好ましい。
【0054】
上記繊維状水溶性高分子除去工程では、シート材形状に成形した発泡成形体(F)を、水,温水,沸騰水または水蒸気から選択した水分に接触(浸漬もしくは暴露)することで、部分または全体を溶解除去する。この繊維状水溶性高分子除去工程により、通気性と柔軟性に優れた弾性シール材が得られる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明にかかる弾性シール材及びその製造方法の実施例を説明する。以下に示す実施例は、本発明を説明するための好適な例示であり、なんら本発明を限定するものではない。
【0056】
(実施例1)
繊維状水溶性高分子として繊維状ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「クラロンK−II、EQ5−R」;繊度が2.0デシテックス、平均長さが4.0mm)を用い、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分として、ポリプロピレンとエチレンプロピレンジエンターポリマーの混練物を用いた。繊維状ポリビニルアルコールはポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分に分散させた。この繊維状ポリビニルアルコールの配合量は、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、14.7重量部(発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して15.0重量部とした。
【0057】
前記繊維状ポリビニルアルコール分散ポリオール50重量部に対して、ポリマーポリオール50重量部、発泡剤としてアゾジカーボンアミド10.0重量部、整泡剤1.0重量部、架橋剤を0.4重量部を配合混練りして、発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0058】
次に上記配合の発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物を用いて、縦500mm×横500mm×厚さ75mmのポリオレフィン系発泡成形体のテストピースを発泡成形した。
【0059】
続いて、上記テストピースの発泡成形体を温水70℃に浸漬させ、内部の繊維状ポリビニルアルコールを完全に溶解除去し、弾性シール材のサンプル(S1)を得た。
【0060】
(実施例2)
上記実施例1において、繊維状ポリビニルアルコールとして同じ製品(株式会社クラレ製、商品名「クラロンK−II、EQ5−R」)を用いたが、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分に分散する時の剪断力を実施例1より低めに制御したこと以外、実施例1と同様にして弾性シール材のサンプル(S2)を得た。
【0061】
(実施例3)
上記実施例1において、繊維状ポリビニルアルコールをポリオレフィン系熱可塑性樹脂成物100重量部に対して30重量部となるように配合し、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂に分散する時の剪断力を実施例2より低めに制御したこと以外、実施例2と同様にして、弾性シール材のサンプル(S3)を得た。
【0062】
(比較例1)
汎用モールドウレタンフォームを、下記に示した配合により、実施例1と同様のサイズに作製した(サンプルC1)。
配合組成は、ポリエーテルポリオール70重量部、ポリマーポリオール30重量部、発泡剤として水4.0重量部とハイドロフルオロエーテル「HFE−254pc」を5.0重量部、整泡剤1.0重量部、触媒としてトリエチレンジアミン希釈溶液(33%)を0.28部とジブチルチンジウラレート0.06重量部、トリレンジイソシアナート「(T−80)INDEX100」を100重量部とした。
【0063】
(比較例2)
振動吸収の改善を目的として開発された高弾性モールドフォームを、下記に示した配合を用いて実施例1と同様のサイズに作製した(サンプルC2)。
配合組成は、ポリエーテルポリオール50重量部、ポリマーポリオール50重量部、発泡剤として水2.8重量部、整泡剤1.0重量部、触媒としてトリエチルジアミン希釈溶液(33%)を0.4重量部とテトラヘキサメチレンジアイン0.3重量部、ジフェニルメタンジイソシアナート/トリレンジイソシアナート「(=20/80)INDEX105」105重量部とした。
【0064】
(比較例3)
上記実施例1において、繊維状ポリビニルアルコールをポリウレタン組成物100重量部に対して1重量部となるように配合したこと以外、実施例1と同様にして、弾性シール材のサンプル(C3)を得た。
【0065】
(比較例4)
上記実施例1において、繊維状ポリビニルアルコールをポリウレタン組成物100重量部に対して51重量部となるように配合したこと以外、実施例1と同様にして、弾性シール材のサンプル(C4)を得た。
【0066】
(評価)
上記実施例1〜3で得られたサンプルS1〜S3、及び比較例1〜4で得られたサンプルC1〜C4に対して、フォーム密度(kg/m)、25%硬さ(ILD)(N/314cm)、反発弾性(%)、ヒステリシス・ロス(%)、通気性(L/min)、及び線状通気孔の径寸法(μm)を測定した。
【0067】
上記各評価試験の準拠標準(JIS規格)及び方法は、以下のようである。
(フォーム密度)
各発泡成形体サンプルからスキン部を除いて、縦横100mm、高さ50mmの寸法に切り出し、この切り出しサンプルにつき、重量を測定して、得られた重量を体積で除すことにより、算出した。
【0068】
(25%硬さ(ILD))
JIS K6400−2に準拠して測定した。
【0069】
(反発弾性)
各発泡成形体サンプルからスキン部を除いて、縦横100mm、高さ50mmの寸法に切り出し、この切り出しサンプルをJIS K6400−3に準拠して測定することにより、求めた。
【0070】
(ヒステリシス・ロス)
各発泡成形体サンプルからスキン部を除いて、縦横100mm、高さ50mmの寸法に切り出し、この切り出しサンプルをJIS E7104に準拠してヒステリシス・ロスを求めた。
【0071】
(通気性)
各発泡成形体サンプルからスキン部を除いて、縦横100mm、高さ50mmの寸法に切り出し、この切り出しサンプルをJIS K6400−7に準拠して測定することにより、求めた。
【0072】
(振動伝達率の測定)
0.5kgfの錘でサンプルを加振器盤面に片面を接着剤を介して固定し、これに上下方向に振動を加え、錘の上に設置した応答用センサーで、振動数(Hz)に対する振動伝達率を検出した。1(Hz)から100(Hz)間に現われたピークトップの振動伝達率を読み取った。
【0073】
(線状通気孔の径寸法の測定)
発泡成形体中の気泡により形成されたセルの径寸法は、一般的に100μm〜500μmであり、50μm以下となることはほとんどない。一方、繊維状水溶性高分子が最も強く叩解され、繊度が最も小さくなった場合、この小さい繊度の繊維状水溶性高分子の溶解除去により形成される線状通気孔の径寸法は、0.01μm程の小さなものとなり得る。また、繊維状水溶性高分子の配合量が多く、互いに凝集して束になった場合には、その束状の水溶性高分子の溶解除去により形成される線状通気孔の径寸法は、50μm程度の大きなものとなり得る。
【0074】
このように線状通気孔の径の上限値は、50μm程度であり、気泡によるセルの径の下限値は、100μm程度である。すなわち、発泡成形体の断面に現れる孔の寸法が50μm以下の範囲を観察すれば、発泡成形体内に形成されている線状通気孔の径寸法の範囲を知ることができる。
したがって、本実施例及び比較例の発泡成形体サンプルの線状通気孔の径寸法は、以下のようにして測定した。
【0075】
各ポリオレフィン発泡成形体サンプルからスキン部を除いて、発泡方向が縦方向に一致するようにして、縦横100mm、高さ50mmの寸法に切り出す。この切り出しサンプル(サンプル数は5点)の中央を通るようにして前記発泡方向に対して、垂直にスライスし、そのスライス断面を走査型電子顕微鏡で観察し、線状通気孔の径寸法を確認した。確認方法としては、前記スライス断面に現れている通気孔を視野の上で観察し得る走査型電子顕微鏡の倍率に基づいて、存在する通気孔を、0.01〜0.1μm径、0.1〜10μm径、10〜20μm径、20〜30μm径、30〜40μm径、40〜50μm径、50μm径以上の径別グループに分類する方法を用いた。すなわち、10〜20μm径、20〜30μm径、30〜40μm径、40〜50μm径、50μm径以上の径別については、約1300倍の倍率で任意の5サンプルにつき100μm角内における存在の有無を観察し、0.1〜10μm径については、約3000倍の倍率で任意の5サンプルにつき30μm角内における存在の有無を観察し、また0.01〜0.1μm径については、約10000倍の倍率で任意の5サンプルにつき10μm角内における存在の有無を観察し、それらの結果から線状通気孔の径寸法の存在範囲を決定した。
【0076】
上記ヒステリシス・ロスと通気性が低いほど、弾性シール材の弾性が高くなり、反発弾性が小さいほど、組み付け時の沈み込み速度が小さくなり、シート材はゆっくりと圧縮される。
【0077】
上記評価結果を下記(表1:実施例1〜3)および(表2:比較例1〜4)に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
上記(表1)及び(表2)において、反発弾性、通気性はいずれも弾性シール材のコア部での値である。
【0081】
(表1)から分かるように、比較例1の汎用フォームは反発弾性が低く、振動伝達率に難点のある弾性シール材であり、また、比較例2は、フォーム密度と反発弾性が高く、振動伝達率の評価が極めて悪い為、静音性に劣る。
【0082】
これに対して、実施例1は通気性が極めて優れており、しかも反発弾性のかなり高い弾性シール材であるから、厚さが薄くても、つなぎ目等の間隙両界面でしっかりと密着がとれ、防塵、防水などのシール性がとれると同時に、振動伝達率が低い為、静音性にも非常に良好である。
【0083】
また、実施例の弾性シール材は、ヒステリシス・ロス(%)が22%以下である。これに対して、比較例の弾性シール材は、ヒステリシス・ロス(%)が22%以上である。つまり、実施例の弾性シール材は、比較例の弾性シール材に比べて、ヒステリシス・ロスが低くなっている。先に述べたように、ヒステリシス・ロスが低いほど、弾性シール材の弾性が高くなる。したがって、実施例の弾性シール材は、比較例の弾性シール材に比べて、高い弾性を持っている。
【0084】
また、実施例の弾性シール材は、反発弾性(%)が47〜55であるのに対し、比較例の弾性シール材は、反発弾性(%)が48〜83である。先に述べたように、反発弾性が小さいほど、つなぎ目などの間隙での振動時の圧縮回復時の追従反力が小さくなり、防塵や防水などの基本シール性が乏しくなる傾向となり、弾性シール材を厚くし、詰め込むと、基本シール性能は良くなる傾向はあるものの、振動の伝達率が大きく、静音性が悪い。したがって、実施例の弾性シール材は、比較例の弾性シール材に比べて、基本シールと同時に静音も良好なシール特性が得られる。
【0085】
比較例4で得られた弾性シール材が、反発弾性が低い値になっているにもかかわらず、シール時の振動伝達率が悪いのは、次のような理由によると考えられる。すなわち、比較例4の弾性シール材の組成配合で、繊維状ポリビニルアルコールがポリオレフィン組成物100重量部に対して51重量部と配合量が多くなっている。そのため、発泡成形時に、叩解して混練り分散された繊維同士が隣接し過ぎることになる。その結果、繊維状水溶性高分子除去工程後、単独線状通気孔も多いが、隣接合体したものも多くなる。そのため、径寸法が5μm以上の連続気泡孔を多く形成され、それにより通気度が大きく、ヒステリシス・ロスも大きい値になり、基本シール性に劣ることになる。
【0086】
本実施例の弾性シール材において、優れたシール性が得られる理由は、適切な繊維状水溶性高分子材料(種類、量)が配合されたポリオレフィン成形体から繊維状水溶性高分子が除去されたことによりポリオレフィン成形体内に生じる線状通気孔が、ポリオレフィン成形体内の多数の独立発泡部を相互に連通させると共に、ポリオレフィン成形体の外気に開口させるからであり、多数の線状通気孔が弾性シール材の圧縮時に内部の圧縮空気を徐放するからである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の弾性シール材は、ポリオレフィン中に繊維状水溶性高分子を配合することにより内部に多数の繊維状水溶性高分子を分散させたポリオレフィン発泡成形体を作成し、この発泡成形体から部分的または完全に繊維状水溶性高分子を除去することで、多数の線状通気孔を有するものとなっている。本発明の弾性シール材は、通気性は悪いが、実際の連続気泡率(現行通気度測定では検出できない数ミクロン以下の気孔)が極めて多く存在すると予想され、かつ組み付け時の圧縮速度を小さくすることができて、高い弾性率を持ちながらも、柔軟性を実現できる。また、本発明の弾性シール材は、繊維状水溶性高分子が除去された分、従来の弾性シール材よりも密度が小さくなる。
【0088】
以上の理由により、本発明によれば、高い弾性率を維持しつつ、軽くかつ柔軟で、シール性に優れ、薄型化が可能であり、精密機器や自動車などの部品間で用いられる防水性、防塵性、制振性、防音性などの用途として総合的に優れた弾性シール材を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下であるポリオレフィン系発泡成形体からなる弾性シール材。
【請求項2】
前記線状通気孔の径寸法が0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性シール材。
【請求項3】
25%硬さ(ILD)が170〜260N/314cmであり、通気性が10〜60L/minであることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性シール材。
【請求項4】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と、前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散された繊維状水溶性高分子(B)と、過酸化物架橋剤成分(C)と、発泡剤(D)を含有する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を所定のシール材形状に発泡成形し、得られた発泡成形体中の繊維状水溶性高分子を部分的または完全に洗浄除去することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性シール材。
【請求項5】
前記繊維状水溶性高分子(B)の配合量が前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)100重量部に対して2〜50重量部であることを特徴とする請求項4に記載の弾性シール材。
【請求項6】
内部に多数の線状通気孔を有し、ヒステリシス・ロスが22%以下、反発弾性が60%以下であるポリオレフィン系発泡成形体からなる弾性シール材を得る弾性シール材の製造方法であって、
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)と、前記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分(A)に分散された繊維状水溶性高分子(B)と、過酸化物架橋剤成分(C)と、発泡剤(D)とを含有する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を調製する発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物調製工程と、
前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)を所望のシール材形状に発泡成形して発泡成形体(F)を得る発泡成形体成形工程と、
前記発泡成形体(F)を水分に接触させて、内部の繊維状水溶性高分子(B)を部分的または完全に除去して、内部に前記多数の線状通気孔を形成する繊維状水溶性高分子除去工程と、
を有することを特徴とする弾性シール材の製造方法。
【請求項7】
前記線状通気孔の径寸法が0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の弾性シール材の製造方法。
【請求項8】
前記繊維状水溶性高分子(B)の配合量が前記発泡性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物(E)100重量部に対して2〜50重量部であることを特徴とする請求項6または7に記載の弾性シール材の製造方法。

【公開番号】特開2010−47709(P2010−47709A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214375(P2008−214375)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】