説明

弾性ローラ、画像形成装置用定着装置及び画像形成装置

【課題】高品質の画像を形成すると共に画像形成装置の耐久性向上にも貢献し、複雑な積層乃至多層構成にする必要がなくて構造の簡素化に貢献する弾性ローラ、高品質の画像を形成すると共に画像形成装置の耐久性向上にも貢献する画像形成装置用定着装置、及び、高品質の画像を形成することができる、耐久性に優れた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2と、その軸体2の外周に設けられた弾性層3とを有し、前記弾性層の外径に対する前記軸体の直径の割合が25〜60%であることを特徴とする弾性ローラ1、この弾性ローラ1を備えた画像形成装置用定着装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は弾性ローラ、画像形成装置用定着装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、例えば、画像形成装置に使用することができ、画像の高精細化及び画像形成装置の耐久性向上に貢献する弾性ローラ、このような弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置、及び、このような弾性ローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。このような画像形成装置において、高品質の画像を形成するには、画像形成装置に装着された各種ローラがその軸方向にわたって均一な特性を有していることが求められる。
【0003】
各種ローラの内、特許文献1には加圧ローラとして、「中心部の芯金から表層に向って順次シリコーンゴム層、シリコーンスポンジ層、フッ素樹脂チューブ層の順に多層に積層して構成し、前記シリコーンゴム層とシリコーンスポンジ層との肉厚比が2:1〜7:1の範囲内であることを特徴とする」が提案されている。この特許文献1においては、前記構成の加圧ローラとすることにより、「用紙の紙しわ、トナーの離型性、ウォーミングアップ時間の短縮などの全ての諸問題を解決できる」との主張がなされている(特許文献1の段落番号0040参照)。また、特許文献2には定着ローラとして、「肉厚が0.5〜2.5mmの芯金の上に厚み0.15〜0.4mm、ゴム硬度1〜45°のゴム層を形成し、この上に20〜50μmの厚みのフッ素樹脂チューブの薄層を形成したことを特徴とする定着ローラ」が提案されている。この特許文献2では、「定着性が良好であり、かつ耐久性に優れたローラとすることができ、ひいてはすぐれたコストパフォーマンスの定着器とすることができるようになった」との主張がなされている(特許文献2の段落番号0037参照)。
【0004】
【特許文献1】実願平4−3871号(実開平5−59474号公報)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開平10−254278号公報
【0005】
ところで、画像形成装置内に装備される弾性ローラは、他の回転部材例えば加圧ローラと対接している。弾性ローラが他の回転部材と対接する場合、弾性ローラの周面と回転部材の周面とが軸線に平行な線接触をしているのではなく、弾性ローラの周面が回転部材の周面に押されるような形で窪んだ状態となることによって、弾性ローラの周面と回転部材の周面とが面接触をしている。このように、弾性ローラの周面と回転部材の周面とが面接触していると、例えば弾性ローラが定着ローラであり、回転部材が加圧ローラである場合には、搬送手段例えば搬送ベルトにより搬送されて来た記録体例えば記録紙の先端縁が弾性ローラの周面と回転部材の周面とで挟み込まれる。次いで、弾性ローラと回転部材の回転とにより、送り込まれてきた記録体が弾性ローラと回転部材との間を通過し、向こう側に送り出される。この場合、この弾性ローラが定着ローラである場合には、回転部材つまり加圧ローラとにより、記録体の表面に存在するトナーが溶融してトナーによる画像が記録体の表面に定着する。またこの弾性ローラが転写ローラである場合には、回転部材である感光ドラムの外周面に形成されているトナー現像を、転写ローラと回転部材との間に搬送されて来る記録体に転写すると共に、転写ローラと回転部材との挟み込みにより記録体を転写ローラと回転部材との間隙に通過させて行く。
【0006】
一般に、弾性ローラに回転部材が当接している状態では、弾性ローラの回転部材に当接する部位が窪んだ状態になっている。弾性ローラの表面が窪むように弾性ローラの表面に回転部材の表面が圧接した状態で静止した後に、弾性ローラと回転部材とが回転を開始すると弾性ローラの窪んだ部分が復元されずに歪を生じた状態で弾性ローラが回転することがある。そうすると、記録体の搬送が円滑に行われなくなる、所謂紙詰まりが発生する虞が生じる。また、弾性ローラの、回転部材の当接により生じる歪の復元が均一になされないことにより、弾性ローラが例えば定着ローラであると、弾性ローラと回転部材との間を通過する記録体に定着されるべき画像に乱れを生じる虞が著しくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明者が、例えば画像形成装置により記録体に形成される画像の品質、記録体の搬送、紙詰まりの発生状況等と、この画像形成装置に内蔵される各種の弾性ローラ例えば定着ローラとの相関について検討したところ、特定のシリコーンゴム組成物で形成されて成る弾性ローラの歪特性が上記画像の品質、記録体の搬送、紙詰まりの発生状況等と関連していることを示す知見を得た。この発明はこの知見に基づく。この発明は、高品質の画像を形成すると共に画像形成装置の耐久性向上にも貢献し、複雑な積層乃至多層構成にする必要がなくて構造の簡素化に貢献する弾性ローラ、高品質の画像を形成すると共に画像形成装置の耐久性向上にも貢献する画像形成装置用定着装置、及び、高品質の画像を形成することができる、耐久性に優れた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体と、その軸体の外周に設けられた弾性層とを有し、前記弾性層の外径に対する前記軸体の直径の割合が25〜60%であることを特徴とする弾性ローラであり、
請求項2は、200℃、5時間の加熱後における前記弾性層の圧縮永久歪が10%以下であることを特徴とする前記請求項1に記載の弾性ローラであり、
請求項3は、前記弾性層のアスカーC硬度が20〜60である前記請求項1又は2に記載の弾性ローラであり、
請求項4は、前記弾性層は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の弾性ローラであり、
請求項5は、前記弾性層はシリコーンゴム組成物の単層構造を有して成る前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラであり、
請求項6は、前記弾性ローラが定着ローラである前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性ローラであり、
請求項7は、請求項6に記載の定着ローラを備えた画像形成装置用定着装置であり、
請求項8は、請求項1〜6の何れか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、弾性層が弾性体で形成され、前記弾性層の外径に対する前記軸体の直径の割合が25〜60%であるから、この弾性ローラが回転部材例えば加圧ローラに当接したまま静止した状態が継続することによってこの弾性ローラの周面に弾性ローラの軸線方向に見て凹状の歪が生じていても、弾性ローラが回転することにより弾性ローラのそれまでの回転部材による押圧を受けなくなると、弾性ローラの前記凹状の歪が解消されて弾性ローラにおける回転部材により圧接を受けない部位が円周面に近い状態に復帰する。その結果として、この弾性ローラが画像形成装置に配設された場合には、所定の圧力でかつ弾性ローラの軸方向にわたって均一に、加圧ローラ等の回転部材に当接する。故に、この発明に係る弾性ローラは、回転部材に対して、その軸方向にわたって均一に圧接乃至当接することができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができると共に、弾性ローラ及び/又は回転部材における偏摩耗等が生じることなく、画像形成装置の耐久性向上にも十分に貢献することができる。例えば、画像形成装置に装備された定着装置における加圧ローラ及び定着ローラの少なくとも一方のローラとして、この発明に係る弾性ローラが使用される場合には、所定の圧力でかつ弾性ローラの軸方向にわたって均一に転写紙等の記録体に当接又は圧接して、記録体に転写された現像剤例えばトナーによる静電画像を均一に加熱及び/又は加圧することができるうえ、弾性ローラにおける偏摩耗等が生じることがないから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができると共に、画像形成装置の耐久性向上にも十分に貢献することができる。
【0010】
また、この発明に係る弾性ローラはその弾性層が弾性体で形成されているので、前記特許文献1及び2に記載されたような、異なる材質による複数構成にする必要がないので、この発明は、低廉な製造コストで、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る弾性ローラの一例について図面を参照しながら説明することによりこの発明を詳細に説明する。
【0012】
図1に示されるように、この発明の一例である弾性ローラ1は、軸体2と、その外周面に形成された弾性層3とを備え、好ましくは、例えば図2に示されるように、画像形成装置30等に配設される。
【0013】
前記軸体は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0014】
前記弾性層は弾性体で形成される。前記弾性体は、通常、弾性を有する限り制限がなく、またその材質や硬度や強度に関して特に制限されるものではないが、一般にゴム材質で構成される。ゴム材質としては、シリコーンゴム或いはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられ、これら一種又は二種以上の混合ゴム又は変性ゴムを用いることができる。また、上記したゴム材質は、ミラブルタイプまたは液状タイプのものを任意に選択する事が可能である。この弾性ローラを定着ローラとする場合には、弾性層の好適なゴム材質はシリコーンゴム又はシリコーン変性ゴムが好ましく、それらの原料としてシリコーンゴムコンパウンドを挙げることができる。
【0015】
前記シリコーンゴムコンパウンドとしては、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材と、及び各種の添加剤とを含有するシリコーンゴム組成物を挙げることができる。
【0016】
このビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HVR:Heat Vulcanizing Rubber)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後の工程で、発泡剤及び架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独又は二種以上を混合して用いることができる。
【0017】
前記シリカ系充填材としては、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業(株)製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材のシリコーンゴム組成物における配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、通常5〜100質量部であるのがよい。
【0018】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含有するシリコーンゴムコンパウンドは、例えば信越化学工業(株)製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等として容易に入手することができる。
【0019】
この発明における弾性層は、前記シリコーンゴムコンパウンドと、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、さらに必要に応じて加えられる発泡剤、反応制御剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を用いて形成することができる。
【0020】
この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウニキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練することにより、得ることができる。
【0021】
前記付加反応架橋剤としては、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよい。好適なオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個のケイ素原子結合水素原子を有するものが好適に用いられる。
bcSiO(4-b-c)/2 (1)
但し、式(1)において、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
【0022】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0023】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物における前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。
【0024】
前記付加反応触媒としては、例えば、周期律表第9族又は第10族の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、所謂触媒量で十分であり、通常、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。
【0025】
前記発泡剤としては、前記シリコーンゴムコンパウンドを発泡させることができる限り種々の発泡剤を使用することができ、また、従来から発泡ゴムに用いられる発泡剤をも使用することができる、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続気泡を形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立気泡を形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。
【0026】
この発明における弾性層における発泡状態としては独立気泡で形成されてなるのが好ましい。その場合、好適な弾性層を形成するために好適な発泡剤としては、有機系発泡剤が好適である。好適な発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の含有量は、発泡剤の種類によって相違するが、弾性層のアスカーC硬度が20〜60、好ましくは30〜50となるように調整するのがよい。なお、前記アスカーC硬度は、JIS K 6253に準拠して測定されることが、できる。弾性層のアスカーC硬度が前記範囲内にあると、この弾性ローラが例えば定着ローラである場合に、加圧ローラとこの定着ローラとで記録体上のトナーを良好に定着させ、また定着ムラを防止することができる。アスカーC硬度が前記範囲内にある弾性層とするための発泡剤の含有量は、具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の含有量が、0.1質量部未満であると、形成される弾性層に十分な気泡を形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、シリコーンゴム発泡体としての形態を維持することができなくなり、弾性層の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1'−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その含有量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。
【0027】
独立気泡を有する前記弾性層としては、その気泡の平均粒径が100〜800μm、特に200〜500μmであるのが、望ましい。独立気泡の平均粒径は電子顕微鏡で観察される視野内に存在する気泡における最大径についての算術平均で求めることができる。独立気泡の平均粒径が前記範囲内にあると、この弾性層は適度の弾性を有するに到り、回転部材例えば感光体に当接することにより生じた弾性ローラ表面の歪が、回転部材との当接を離脱すること容易に解消されることができる。
【0028】
前記反応制御剤としては、公知の反応制御剤を制限なく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。
【0029】
前記各種の添加剤として、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるシリコーン発泡ゴムから成る弾性層のアスカーC硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0030】
なお、この発明における弾性層は、例えばシリコーンゴムコンパウンドを付加反応により発泡させることにより製造され、しかもこの発明の目的を阻害しない限り、前記付加反応触媒とともに有機過酸化物架橋剤を使用することができる。
【0031】
前記有機過酸化物架橋剤は、例えば単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。
【0032】
この発明において重要なことの一つは、弾性層の外径に対する前記軸体の直径の割合が25〜60%、好ましくは26〜58%であること、である。
【0033】
前記割合が前記下限値を下回ると、また前記割合が前記上限値を上回ると、回転部材に当接する弾性ローラにおける弾性層の歪が大きくなり、しかも弾性ローラにおける前記回転部材に当接する部位が前記回転部材の当接から離脱しても歪が解消されず、歪を残した状態で弾性ローラが回転することにより、記録体搬送に支障を生じ、記録体に形成される画像品質が低下するといった不都合を生じてしまう。このような現象は、弾性層が弾性体特に前記特定のシリコーン発泡ゴムで形成される場合に多く見られる。
【0034】
この発明に係る弾性ローラは、回転部材に当接する弾性ローラにおける弾性層の圧縮永久歪が10%以下であることが好ましい。前記弾性層の圧縮永久歪が10%以下であると歪の復元が迅速になる。この歪の復元の迅速性は弾性層が弾性体特に前記特定のシリコーン発泡ゴムで形成される場合に多く見られる。
【0035】
ここで弾性ローラの圧縮永久歪は、以下のようにして測定することができる。先ず、研磨により直径を29mmにして成る弾性ローラの周側面であって、弾性ローラの軸線方向に沿う3点にマーキングをし、その位置での弾性ローラの外径をレーザー測定機により常温下で測定する。図4(A)に示されるように、このときの弾性ローラ1の外径は、Dである。図3に示されるように、弾性ローラにおけるマーキング部分が圧縮板10,10に接触するように、弾性ローラ1を圧縮板10、10で挟持し、この状態で弾性ローラ1を圧縮治具11で締め付ける。なお、スペーサ12の厚み(上部の圧縮板10に接するスペーサ12の上端面から下部の圧縮板10に接触するスペーサ12の下端面までの長さ)は25mm(研磨により直径を35mmにした弾性ローラの場合は31mm)であり、圧縮治具で締め付ける程度は、圧縮板を相互に4mm近接移動させる程度である。前記圧縮治具で弾性ローラを締め付けた状態で、圧縮治具を200℃の乾燥機に入れて5時間そのまま加熱する。5時間が経過した後に、乾燥機から前記圧縮治具を取り出し、直ちに圧縮治具から弾性ローラを取り外し、取り外された弾性ローラを常温で18時間放置する。放置時間が経過してから、弾性ローラにおける弾性層のマーキングした部位3点の外径(図4(B)に示される長さD)をレーザー測定機により常温下で測定する。弾性層の圧縮永久歪(D)を、[(D−D)/(D−25)]×100〔%〕の式に従って算出する(研磨により直径を35mmにした弾性ローラの場合は弾性層の圧縮永久歪(D)を、[(D−D)/(D−31)]×100〔%〕の式に従って算出する)。この圧縮永久歪(Dx)は、弾性ローラにおける弾性層を200℃で5時間圧縮加熱し、次いで常温にて18時間開放放置するという熱履歴に暴露したときの、弾性層の圧縮永久歪を示す。この発明に係る弾性ローラは、弾性層の圧縮永久歪が10%以下であると、この弾性ローラを組み込んでなる画像形成装置は、高品質の画像を記録体に形成することができ、また記録体の搬送トラブルを生じることが極めて少なくなる。
【0036】
この発明の弾性ローラは、例えば次のようにして製造することができる。まず、図1に示されるように、軸体2の外周面に、必要に応じて予め、接着剤又はプライマーを、スプレー法、浸漬法等によって、塗布し、その外周面に接着層又はプライマー層を形成しておくのがよい。プライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。その一例として、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
【0037】
次いで、接着層又はプライマー層が形成された軸体2と共に、前記のようにして調製した付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、押出成形する。このとき、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、所望する弾性層の全長に対して、109〜190%の長さに押出成形されるのが好ましく、120〜150%の長さに押出成形されるのが特に好ましい。付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が前記範囲の長さになるように押出成形されると、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が硬化して成る未切断弾性層における両端部近傍と中央部近傍との物性、例えば、硬度等が均一にならないことがあっても、未切断弾性層の両端部近傍を切断することによって、ほぼ均一な物性、例えば、硬度等を有する弾性層を形成することができる。なお、押出成形される付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の長さは、生産性を考慮して、所望する弾性層の全長に対して190%の長さを上限とすることができるが、均一な物性を有する弾性層を形成するには、必ずしも190%を上限とする必要はなく、200%でも、300%でもよい。
【0038】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を押出成形する場合に、押出成形される付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の長さよりも軸体の全長が短いときには、軸体の両端部に延長軸体を接続すればよい。具体的には、軸体の両端部における各端面に雌ねじを切り、延長軸体の一端面にこの雌ねじに螺合する雄ねじを切り、雌ねじと雄ねじとを螺合させることにより、延長軸体が接続された軸体とすることができる。
【0039】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の押出成形は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋するのに十分な条件で行われればよく、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の押出成形は、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、通常、100〜500℃、特に200〜400℃、加熱時間は数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱することにより、行われる。
【0040】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、所望により、さらに、二次加熱が行われてもよい。二次加熱は、前記条件で架橋された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物をより確実に架橋させる工程であり、二次加熱によって、弾性層3の物性が安定するという効果が得られる。二次加熱は、例えば、前記の条件で押出成形されてなる付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
【0041】
次いで、このようにして形成された未切断弾性層は、所望の長さを有する弾性層となるように、未切断弾性層の両端部近傍それぞれが、切断され、好ましくは、同じ長さで切断される。例えば、未切断弾性層が、所望とする弾性層の全長に対して109%の長さに形成されている場合には、未切断弾性層の各端部を、合計9%だけ切断し、好ましくは、各端部からそれぞれ4.5%ずつ合計9%だけ切断すればよく、所望とする弾性層の全長に対して190%の長さに形成されている場合には、未切断弾性層の各端部を、合計90%だけ切断し、好ましくは、各端部からそれぞれ45%ずつ合計90%だけ切断すればよい。未切断弾性層の切断は、未切断弾性層を切断することができる方法で行われればよく、例えば、カッター等の切断刃を備えた切断機、より具体的には、サイドカット機を用いて、未切断弾性層を切断することができる。
【0042】
前記未切断弾性層又は前記のようにして両端部が切断された弾性層は、所望により、仕上げ工程として、所望の大きさ及び形状等に調整する研削工程及び/又は研磨工程等が施される。研削工程及び/又は研磨工程は、従来から利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。また、研削工程及び/又は研磨工程後に、研削カス、研磨カス、異物等を除去するため、所望により、前記未切断弾性層又は弾性層は洗浄されてもよい。洗浄は、例えば、水等を用いた湿式洗浄及び/又はウエス等を用いたふき取り洗浄、送風洗浄等が挙げられる。
【0043】
かくしてこの発明に係る弾性ローラが形成される。このようにして製造された弾性ローラは、画像形成装置の各種ローラ、例えば、転写ローラ、現像ローラ、帯電ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、紙送りローラ等に、特に定着ローラに、好適に使用される。この弾性ローラが定着ローラとして使用されると、画像形成装置用定着装置が得られる。
【0044】
この発明に係る弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置(以下、定着装置と称することがある。)及び画像形成装置の一例を、図2を参照して、説明する。
【0045】
この発明に係る画像形成装置30は、図2に示されるように、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、像担持体31に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31を帯電させる帯電手段32例えば帯電ローラと、像担持体31の上方に設けられ、像担持体31に静電潜像を形成する露光手段33と、像担持体31に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に一定の層厚で現像剤42を供給し、静電潜像を現像する現像手段40と、像担持体31の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体31から被転写体36例えば転写紙上に転写する転写手段34例えば転写ローラと、被転写体36の搬送方向の下流に設けられ、被転写体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させる定着手段35例えば定着装置と、被転写体36に転写されず像担持体31に残留した現像剤42及び/又は像担持体31に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段37とを備えている。すなわち、像担持体31は、その回転方向において、上流側から順に、クリーニング手段37、帯電手段32、露光手段33、現像手段40及び転写手段34によって、各作用を受ける。
【0046】
前記像担持体31は、従来公知の像担持体を用いることができ、少なくともその表面に設けられる感光層は、例えば、有機系、アモルファスシリコン、Se系合金又はこれらを組み合わせた材料等を用いて形成される。像担持体31が円筒状の場合は、像担持体31は、アルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型した後、表面に感光層等を形成する方法等の公知の製法により製造することができる。また、ベルト状の像担持体を用いることも可能である。前記帯電手段32は、像担持体31を帯電させることができればよく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器、コロトロン帯電器等の帯電器を用いることができる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。前記露光手段33は、露光により像担持体31に静電潜像を形成することができればよく、例えば、像担持体31の表面に、半導体レーザー(LD)光、発光ダイオード(LED)光、液晶シャッタ(LCS)光等の光源、又はこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等を用いることができる。前記転写手段34は、現像された静電潜像を像担持体31から転写紙36上に転写することができればよく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器等を用いることができる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。また、転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。前記クリーニング手段37としては、像担持体31上の現像剤42及び/又はゴミ等を除去することができればよく、公知のクリーニング装置、クリーニングローラ等を用いることができる。
【0047】
前記定着手段35は、被転写体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。図2において、無端ベルトを備えた定着手段35はこの発明に係る定着装置とされている。この定着装置35は、図2にその断面が示されるように、被転写体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻き掛けられた無端ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を被転写体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、被転写体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0048】
画像形成装置30は、像担持体31の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段37と帯電手段32との間又は転写手段34とクリーニング手段37との間に、備えていてもよい。除電手段は、例えば、タングステンランプ、LED等を用いることができ、光除電手段に用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられ、照射光強度としては、通常、像担持体31の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力が設定される。
【0049】
画像形成装置30における現像手段40は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されている。例えば、現像手段40は、図2に示されるように、像担持体31に対向する位置に開口部を有し、現像剤42を収納する現像剤収納部41と、現像剤収納部41の開口部に、像担持体31に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に現像剤42を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体44と、現像剤担持体44に当接して設けられ、現像剤担持体44に現像剤42を供給する回転可能な現像剤供給手段43と、現像剤担持体44の上方に設けられ、現像剤担持体44に当接して現像剤42の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。
【0050】
前記現像剤収納部41に収納される現像剤42としては、摩擦により帯電可能で、被転写体36に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。一成分系の現像剤は、一般に、樹脂と色剤とその他添加剤とを含み、樹脂は、定着方式に応じて選択される。熱定着方式の場合には、樹脂として、例えば、スチレン/アクリル系共重合体、スチレン/ブタジエン系共重合体が、圧力定着方式の場合には、例えば、ワックス類、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/ブタジエンラバー混合ワックス状樹脂等が選択される。色剤としては、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、各種染顔料等が用いられ、その他添加剤としては、例えば、帯電制御剤、導電制御剤、補強剤、離型剤等が用いられる。磁性現像剤の場合には、さらに、フェライト等の磁性粉を現像剤42の合計質量に対して数十質量%含有する。一成分系の現像剤は、通常、2〜8μC/g程度の帯電特性を有している。
【0051】
現像手段40における現像剤供給手段43は、現像剤担持体44と接触して、現像剤42を現像剤担持体44に供給することができるように構成されていればよく、例えば、導電性を有する弾性層を備えた現像ローラ等が挙げられる。なお、現像剤担持体44に供給される現像剤42を均一に混合する攪拌機が現像剤収納部41内に設けられてもよい。
【0052】
現像手段40における現像剤担持体44は、現像剤規制部材45と接触して、現像剤42を帯電させる。したがって、現像剤担持体44は、現像剤規制部材45と接触して、現像剤42を帯電させることができるように構成されていればよく、例えば、導電性を有する弾性層を備えた現像ローラ等が挙げられる。例えば、このような現像剤担持体44、特に現像ローラとして、この発明に係る弾性ローラ1を使用することができる。
【0053】
現像剤規制部材45は、図2に示されるように、所定の圧力で現像剤担持体44の表面に当接するように、現像手段40の開口部に、配置されている。この現像剤規制部材45は、現像剤担持体44に接触して、現像剤担持体44に付着した現像剤42を一定の層厚に調整すると共に、現像剤42を帯電させることができればよく、例えば、支持体と、支持体に装着され、現像剤担持体44に当接するブレードとから成っていてもよい。この支持体は、弾性を有する材料、例えば、ステンレス鋼等によって形成されて成り、ブレードを支持し、現像剤担持体44にブレードを適切な圧力で当接させる。ブレードは、弾性を有する材料、例えば、ステンレス鋼等又は弾性を有する薄板状等に形成されて成り、現像剤担持体44に当接し、現像剤42の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤42を帯電させる。ブレードは、その表面に、現像剤42を帯電させる表面層(図示しない。)を有していてもよい。
【0054】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電手段32の帯電ローラ、現像手段40の現像ローラ、転写手段34の転写ローラ、定着手段35の定着ローラ、加圧ローラ又は無端ベルト支持ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ及び加圧ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。
【0055】
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、像担持体31が、図2の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段37により、その表面の現像剤42及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段32により、一様に帯電される。次いで、露光手段33により画像が露光され、像担持体31の表面に静電潜像が形成される。
【0056】
一方、現像手段40において、現像剤42が現像剤供給手段43によって現像剤担持体44に供給され、現像剤担持体44が図2に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体44の表面に付着した現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤担持体44に当接した現像剤規制部材45との間を通過する。このとき、現像剤42は、所望の層厚に規制されると共に、現像剤42を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤規制部材45との間を通過することによって、現像剤担持体44の表面上における現像剤42の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材45と現像剤担持体44及び/又は現像剤42との摩擦帯電等により、現像剤担持体44上の現像剤42が所望のように帯電される。
【0057】
次いで、このようにして現像手段40から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42が像担持体31に供給され、像担持体31に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段40は、像担持体31に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体31上に現像された現像剤像は、搬送手段により、像担持体31と転写手段34との間に搬送される被転写体36上に、像担持体31及び/又は転写手段34によって転写される。次いで、現像剤像が転写された被転写体紙36は、搬送手段により定着手段35に搬送され、定着手段35により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として被転写体36に定着される。このようにして、被転写体36に画像を形成することができる。
【0058】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、無端ベルト支持ローラ、クリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されているので、この発明に係る弾性ローラ1が使用されたローラは、被当接体に対して、その軸方向にわたって均一に作用することができ、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。例えば、像担持体31に当接するように配設された現像ローラ44として、この発明の係る弾性ローラ1が使用される場合には、所定の圧力でかつ現像ローラ44の軸方向にわたって均一に像担持体31に当接し、現像剤42を均一な厚さで精度よく、像担持体31に付着させることができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0059】
この発明に係る画像形成装置30において、像担持体31、帯電手段32、露光手段33、転写手段34、定着手段35及びクリーニング手段37は、図2に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0060】
また、画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【0061】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。二成分系の現像剤は、通常、10〜25μC/g程度の帯電特性を有している。
【実施例】
【0062】
(実施例1〜7)
シリコーンゴムコンパウンド「KE−153U」(信越化学工業株式会社、商品名)100質量部に対して、付加反応架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサン2質量部、発泡剤としてジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、触媒として塩化白金酸の触媒量を加え、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調合した。このとき、弾性層におけるアスカーC硬度を20〜60になるように発泡剤の添加量を調整した。実施例7については、触媒として塩化白金酸の代わりに有機過酸化物であるベンゾイルパーオキサイドを触媒量加えた。
【0063】
また、表1に示される直径及び軸線長さを有し、かつSUM22に無電解ニッケルメッキを施して成る金属製軸体の表面をトルエンで洗浄し、プライマーとして「プライマーNo.101A/B」(信越化学工業株式会社、商品名)を塗布した。
【0064】
さらに、プライマー処理して成るこの金属製軸体を、ギヤオーブンにて150℃の温度にて30分間焼成処理し、常温にて30分間以上冷却した後、プライマー処理した金属製軸体とシリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体押出し、それをIR炉にて焼成処理して、スポンジローラ原形を形成した。それをさらにギヤオーブンにて200℃の温度にて5時間加熱処理し、常温にて1時間以上放置した後、円筒研削盤にて外径29mm又は外径35mmに研削し、弾性ローラを得た。得られた弾性ローラを前記した圧縮永久歪の測定方法により測定し、圧縮永久歪(D)の値を表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
(比較例1〜5)
比較例1〜4については、表1に示される直径及び軸線長さを有し、前記実施例と同様の処理をして成る金属製軸体と前記実施例で使用したのと同じ付加反応型発泡シリコーンゴム配合物とを用いて前記実施例と同様にしてスポンジローラ原型を形成した。そのスポンジローラ原型を前記実施例と同様に処理することにより弾性ローラを得た。この弾性ローラにつき、前記実施例と同様にして弾性ローラの圧縮永久歪(D)を測定した。その結果を表2に示した。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例1〜7及び比較例1〜4で作製した弾性ローラの耐久性を、以下の方法で、図5に示される耐久性試験装置70を用いて、試験した。この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた外部ヒータ73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。
【0069】
実施例1〜7及び比較例1〜4で作製した弾性ローラを、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図5に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における弾性層が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71の外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。
【0070】
次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで8時間連続稼動し、弾性ローラ76における弾性層の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で24時間放置した。
【0071】
その結果、実施例1〜7で作製した弾性ローラは、試験後に、弾性層の軸方向にわたって、変形ムラがなく、また、弾性層の偏摩耗等は確認できなかった。したがって、この結果から、実施例1〜7で作製した弾性ローラを画像形成装置に配設した場合には、被当接体に対して、その軸方向にわたって均一に作用することができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができると共に、画像形成装置の耐久性向上にも十分に貢献することができることが分かった。一方、比較例1〜4で作製した弾性ローラは、試験後に、弾性層の変形ムラ及び/又は偏摩耗等が確認できた。したがって、比較例1〜4で作製した弾性ローラは、画像形成装置に配設された場合には、画像の高品質化及び画像形成装置の耐久性向上に十分に貢献することができないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、弾性ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す要部概略図である。
【図3】図3は、弾性ローラの圧縮永久歪を測定するために、弾性ローラを圧縮治具で締め付けた状態を示す説明図である。
【図4】図4は、弾性ローラの径を示す説明図であり、図4(A)は圧縮治具で締め付ける以前の弾性ローラにおける径(D)を示す説明図であり、図4(B)は歪を有する弾性ローラにおける径(Dx)を示す説明図である。
【図5】図5は、耐久性試験装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1 弾性ローラ
2 軸体
3 弾性層
10 圧接板
11 圧縮治具
12 スペーサ
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 被転写体
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
53 定着ローラ
54 無端ベルト支持ローラ
55 無端ベルト
56 加圧ローラ
70 耐久性試験装置
71 加熱ローラ
72 内部ヒータ
73 外部ヒータ
74 試験ローラ装着部
75 押圧力調整手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、その軸体の外周に設けられた弾性層とを有し、前記弾性層の外径に対する前記軸体の直径の割合が25〜60%であることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
200℃、5時間の加熱後における前記弾性層の圧縮永久歪が10%以下であることを特徴とする前記請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記弾性層のアスカーC硬度が20〜60である前記請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記弾性層は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を成形してなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の弾性ローラ。
【請求項5】
前記弾性層はシリコーンゴム組成物の単層構造を有して成る前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラ。
【請求項6】
前記弾性ローラが定着ローラである前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性ローラ。
【請求項7】
請求項6に記載の定着ローラを備えた画像形成装置用定着装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−3480(P2008−3480A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175335(P2006−175335)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】