説明

弾性ローラの樹脂層の除去方法、弾性ローラの製造方法、弾性ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】電子写真プロセスに用いられる弾性ローラにおいて、凹みや傷などが生じた樹脂層、または電子写真プロセスによってトナーや紙粉によって汚染された樹脂層を除去し、弾性層を再度利用することを可能とする。
【解決手段】弾性ローラにある所定の条件で電子線を照射することによって、樹脂層を劣化させた後、弾性層から樹脂層を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置、プリンタ、静電記録装置等の電子写真画像形成装置に用いられる弾性ローラの樹脂層の除去方法に関する。また、本発明は、弾性ローラの製造方法、及びこの製造方法によって再生された弾性ローラ、この弾性ローラを有する電子写真プロセスカートリッジ、並びに電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置に用いられる帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、定着ローラ、転写ローラ等は、それぞれの役割に応じて特定の電気的特性や物理的特性を有する必要がある。このため、これらのローラとして、必要な弾性を持たせるための弾性層、及びその外周に電気的特性や物理的特性を満足するための樹脂層を設け、各層において機能分離を図った弾性ローラが多く使われている。
【0003】
(1)ところで、これら弾性ローラの製造時において樹脂層を塗工する際に、ほこりや気泡の混入によって凹凸などの不良が認められる場合がある。このように不良が生じた弾性ローラをそのまま電子写真画像形成装置に組み込んで使用すると、この不良に起因した画像弊害が現れる場合がある。このため、一般的に不良が生じた弾性ローラは電子写真画像形成装置や電子写真プロセスカートリッジには用いられない。
【0004】
(2)また、製品として使用後の弾性ローラについても、電子写真画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジの寿命以上に使用された場合、粉末現像剤(トナー)や紙粉の異物が弾性ローラの表面を汚染している場合が多い。特に、トナーを直接、搬送するために使用される現像ローラでは、現像ローラ表面に劣化したトナーが固着して表面の汚染が非常に顕著となる。
【0005】
このようにトナーや紙粉によって汚染された弾性ローラは、本来の電気的特性や物理的特性が変化している。このため、洗浄等の処理を行わずに、使用可能期間が経過した使用済みの弾性ローラをそのままの状態で、電子写真プロセスカートリッジや電子写真画像形成装置に組み込んで再利用すると、画像不良が発生する。従って、使用可能期間を経過した弾性ローラをそのまま電子写真画像形成装置や電子写真プロセスカートリッジに用いることは困難であった。
【0006】
しかしながら、近年、環境保護という観点から、これらの弾性ローラも廃棄せずに再利用できるようにすることが望まれていた。
そこで、再生方法として、弾性ローラの樹脂層を剥がし、再度、樹脂層を塗工する方法が考えられている。例えば、機械研磨することによって弾性ローラの樹脂層を除去し、研磨後の弾性層の表面上にディッピング法やロール塗工法、又はチューブ被覆などを用いて、新たに樹脂層を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
また、別の方法では、弾性ローラの樹脂層を有機溶剤によって溶解させ、弾性層から除去する方法が挙げられている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−171264号公報
【特許文献2】特開平6−308820公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の方法では、以下のような課題があった。
すなわち、耐久性を持たせる目的で、一般的に樹脂層と、その下地となる弾性層との間は、高い密着力で接着されている。このため、特許文献1に記載のように研磨によって弾性ローラの樹脂層を除去する場合、下地の弾性層の表面も研磨され、結果的に再利用する弾性層も研磨によって傷つける恐れがあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のように、樹脂層を溶解させるために有機溶剤を用いた場合、溶剤の多くは弾性ローラの弾性層に用いられる樹脂やゴムにダメージを与えることとなっていた。この結果、電気抵抗、硬度、表面粗さ、真円度等、電子写真画像形成装置に用いる各種弾性ローラに要求される性能が損なわれる恐れがあった。また、有機溶剤を用いることは環境面から見ても好ましくなかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、弾性層を損なうことなく弾性ローラの樹脂層を容易に除去することである。また、この方法を用いて、樹脂層を除去した後、新たに樹脂層を形成し、安定したローラ特性を有する弾性ローラや、この弾性ローラを具備した電子写真プロセスカートリッジ、及び電子写真画像形成装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有することを特徴とする。
1.軸芯体と、前記軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、前記弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラの樹脂層の除去方法であって、
前記弾性ローラの表面に電子線を、加速電圧50kV以上、150kV以下、かつ照射線量300kGy以上、1000kGy以下で照射する工程と、
前記弾性ローラから樹脂層を除去する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0011】
2.前記弾性ローラの表面に電子線を照射する際の電子線の入射角度が、前記弾性ローラ表面の接線方向に対して0度以上、30度以下であることを特徴とする上記1に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0012】
3.前記弾性ローラの表面への電子線の照射時に、前記弾性ローラを回転させることを特徴とする上記1又は2に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0013】
4.前記弾性ローラの表面への電子線の照射時に、前記弾性ローラの温度を110℃以上、150℃以下とすることを特徴とする上記1乃至3の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0014】
5.前記弾性ローラは、前記弾性層と樹脂層の熱膨張率の差が5.0%以上であることを特徴とする上記1乃至4の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0015】
6.前記弾性ローラは、前記弾性層の熱膨張率が5.0%以上であることを特徴とする上記1乃至5の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0016】
7.前記弾性ローラの前記弾性層は、シリコーンゴムを含有することを特徴とする上記1乃至6の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0017】
8.前記弾性ローラが、静電潜像を形成するための感光体に当接配置され前記感光体上に静電潜像を現像してトナー像を形成するために用いられる現像ローラであることを特徴とする上記1乃至7の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【0018】
9.軸芯体と、前記軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、前記弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラを準備する工程と、
上記1乃至8の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法により、前記樹脂層を除去する工程と、
樹脂層を除去した前記弾性ローラの外周上に新たに樹脂層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【0019】
10.上記9に記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【0020】
11.回転可能な感光体と、前記感光体に接触させて感光体表面に電荷を供給する帯電部材と、前記感光体に接触させて感光体表面に現像剤を供給する現像部材と、を有する電子写真プロセスカートリッジであって、
前記帯電部材及び現像部材の少なくとも一方の部材が、上記10に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【0021】
12.回転可能な感光体と、前記感光体に接触させて感光体表面に電荷を供給する帯電部材と、前記感光体表面に画像情報を記録する露光部材と、前記感光体に接触させて感光体表面に現像剤を供給する現像部材と、前記現像剤を転写材に転写する転写部材と、定着部材と、前記定着部材とニップ部を形成すると共にニップ部により転写材を圧接して搬送する加圧部材と、を具備する電子写真画像形成装置であって、
前記帯電部材及び現像部材の少なくとも一方の部材が、上記10に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像形成に影響を及ぼす樹脂層や表面が汚染された樹脂層を有する弾性ローラに対して、所定の条件で電子線を照射することによって弾性層にダメージを与えず樹脂層のみを容易に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〈弾性ローラの樹脂層の除去方法〉
本発明の樹脂層の除去方法の対象となる弾性ローラは、製造時に表面に凹みなどが生じた樹脂層や、使用可能枚数以上の画像形成の繰り返しによりその表面がトナーや紙粉によって汚染された樹脂層を有する弾性ローラである。そして、この弾性ローラに対して、加速電圧50kV以上、150kV以下、かつ照射線量300kGy以上、1000kGy以下の条件で電子線を照射することによって、樹脂層のみを弾性層表面から選択的に除去するものである。
【0024】
図1(a)は、弾性ローラに電子線を照射する方法の一例を説明する概略図である。
まず、弾性ローラ11を回転冶具(図示していない)に設置し、シャッター備え付けの投入口12から電子線照射装置13の内部へと運搬する。この後、シャッターを閉じ、電子線照射装置の内部雰囲気を窒素置換して、酸素濃度が100ppm以下になったことを確認してから、電子線を照射する。
【0025】
ここで、電子線照射装置における、電子線照射の原理は、以下の通りである。すなわち、典型的には、電子線加速用の真空チャンバーがあり、この真空チャンバー内にはフィラメント状の陰極が設けられている。そして、この陰極を加熱すると、その表面から熱電子が放出される。このように放出された熱電子は加速電圧によって加速された後、電子線として放出される。また、このフィラメントの形状やフィラメントの加熱温度を変えることによって、陰極から放出される電子線の数(照射線量)を調節することができる。
【0026】
また、このように弾性ローラの表面に照射された電子線は、樹脂層内で以下のような挙動を示すものと考えられる。
すなわち、弾性ローラ表面に照射された電子線は、樹脂層内で樹脂層を構成する材料と相互作用を繰り返しながら、樹脂層中を透過する。電子が樹脂層内を透過する際の電子と樹脂層の構成材料との相互作用によって、樹脂層を構成する材料の化学結合、及び樹脂層を構成する材料と弾性層を構成する材料の化学結合等が切断される。これにより、樹脂層の硬度の低下や、樹脂層の弾性層への接着性が低下して、樹脂層を弾性層の外周上から除去しやすくなる。
【0027】
また、本発明では、この電子線照射時の加速電圧と照射線量が所定範囲となっている点に特徴を有する。すなわち、電子線の加速電圧は50kV以上、150kV以下となっている。電子線の加速電圧が50kVより小さいと、樹脂層の表面のみにしか電子線が透過せず、樹脂層の内部にまで電子線を透過させることが困難となる。また、加速電圧が150kVより大きい場合、電子線が樹脂層を透過して弾性層にまで到達し、弾性層に影響を与えるため好ましくない。
【0028】
また、弾性ローラに照射する電子線の照射線量は300kGy以上、1000kGy以下とする必要がある。電子線の実際の照射線量は線量フィルムを用いることで、求めることが出来る。また、電子線の照射線量は、(電子線の照射時間(min))×(単位時間あたりの線量(kGy))で表される。また、(単位時間あたりの線量(kGy))は、[装置定数×電子電流(mA)]/照射対象物の移動速度 (m/min)で定義される。そのため、照射線量を調整する際には、照射時間や、対象物の移動速度などを変えて調整すればよい。
【0029】
照射線量が300kGyより少ないと、電子線照射によって樹脂層の材料成分の化学結合を効果的に切断させることができず、樹脂層のみを選択的に除去することが困難となる。また、照射線量が1000kGyより多い場合は、電子線が樹脂層を透過して弾性層にまで到達し、弾性層に影響を与えるため好ましくない。
【0030】
また、電子線を照射する際には回転冶具等を利用して弾性ローラを回転させることが好ましい。このように、弾性ローラを回転させることによって、電子線を樹脂層の周方向に均一に照射することが可能となる。
【0031】
弾性ローラの表面に対する電子線を照射する際の電子線の照射角度は、弾性ローラ表面の接線方向に対して0度以上、30度以下であることが好ましい。ここで、「照射角度」とは、図2に示すように、照射窓21の中心から引かれる垂線と、この垂線と弾性ローラ22の表面とが接する点を基準として引かれる接線と、がなす角度を表す。なお、この照射角度は、0度から90度で定義する。電子線の照射角度を30度以下とすることによって電子線の侵入長を短くすることが出来るため、電子線による弾性層への影響を抑えることが可能となる。なお、この電子線の照射角度は、電子線照射時における弾性ローラの位置と照射窓21の位置を調節することによって、0度から90度の範囲で任意に設定することができる。
【0032】
電子線を照射する際の弾性ローラの温度は110℃以上、150℃以下にしておくことが好ましい。電子線照射時に、弾性ローラをこの温度範囲内に置くことによって、弾性層、樹脂層がともに熱膨張することとなる。この際、弾性層と樹脂層の熱膨張率の違いによって、弾性層、樹脂層の間の界面で歪みが生じるため、これらの層の界面で剥離を起こしやすくなる。この結果、電子線照射後、樹脂層を除去する際に、より容易に樹脂層を除去しやすくなる。
【0033】
また、このとき、弾性層と樹脂層との熱膨張率の差が5.0%以上であることが好ましい。弾性層と樹脂層との熱膨張率の差が5.0%以上であることにより、より界面での歪みが大きくなり、容易に樹脂層の除去を行うことができるようになる。なお、「膨張率」は実施例に記載の式(1)によって定義される。
【0034】
なお、弾性ローラの温度を調節するための加熱装置14は、図1(b)に示すように、電子線照射装置の前に設置しても良い。また、図1(c)に示すように、加熱装置14は電子線照射装置内に設置しても構わない。また、加熱方法としてはオーブンや赤外線ランプなど既知の方法を自由に用いることが出来るが、加熱時間を大幅に短縮できることから赤外線ランプを用いることが好ましい。
【0035】
弾性ローラに電子線を照射後、樹脂層を除去する方法については特に限定されない。この樹脂層の除去方法としては例えば、樹脂層に粘着テープを貼り付けた後、粘着テープの粘着力を利用して粘着テープと共に弾性層から樹脂層を除去する方法や、手で剥す等の方法が挙げられる。特に、粘着ローラを使用する方法は、樹脂層の除去工程を連続的に行うことが出来ることから、好ましい。
【0036】
〈弾性ローラ〉
本発明の除去方法を使用する弾性ローラの概略図を図3に示す。図3(A)はこの弾性ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、図3(B)は弾性ローラの長手方向に垂直な断面を表したものである。図3に示されるように、本発明の樹脂層の除去方法を適用する弾性ローラは、軸芯体31の外周上に弾性層32が設けられ、更にこの弾性層32の外周上に樹脂層33が設けられている。
【0037】
この弾性ローラは、静電潜像を形成するための感光体に当接配置され感光体上に静電潜像を現像してトナー像を形成するために用いられる現像部材(現像ローラ)であることが好ましい。この現像ローラは、所定圧力で感光体に当接配置されると共に、回転しながらトナーを感光体まで搬送するように構成されている。このため、現像ローラの樹脂層は、感光体やトナー量規制部材などとの当接によって劣化したトナーによる汚染が激しい。このトナーによって汚染された樹脂層の除去に本発明の樹脂層の除去方法を好適に適用することができる。
【0038】
(a)軸芯体
弾性ローラの軸芯体31の材料は、電子写真プロセス中に掛かる負荷に十分に耐えうるものであれば特に限定されない。また、用途に応じて弾性ローラに導電性が求められる場合には、軸芯体31には炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、導電性樹脂など導電性を有する素材の中から適宜、選択して用いれば良い。軸芯体31の材料は、強度の観点から金属製のものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0039】
さらに防錆対策として、軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきを使用できるが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他、各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni―P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。これらのめっき膜の厚みは0.05μm以上が好ましいが、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0040】
(b)弾性層
軸芯体31の外周上には、少なくとも1層以上の弾性層32が設けられる。また、弾性ローラの軸芯体の外周上に設けられる弾性層32に用いられる材料としては、以下のものが挙げられる。
・フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム。
これらの材料は単独で使用しても構わないし、又は複数種を組み合わせて用いても良い。これらの材料の中でも、シリコーンゴムを用いることが好ましい。シリコーンゴムは比較的、熱膨張率が大きいため、容易に弾性層に高い熱膨張率を持たせることが可能となる。また、シリコーンゴムは耐熱性に優れることから、加熱工程を経ても弾性層が影響を受けず、再利用する際に弾性層として好ましい物性を維持することが可能となる。
【0041】
この弾性層の熱膨張率は5.0%以上であることが好ましい。弾性層の熱膨張率が5.0%以上であることによって、弾性層と樹脂層の界面で歪みが生じて、樹脂層の剥離を起こしやすくなる。
【0042】
この弾性層を導電化する際には、弾性層中にイオン導電機構、又は電子導電機構を有する導電付与剤を添加するのが良い。このイオン導電機構を有する導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。
・LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaClの周期律表第1族金属の塩。
・NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等のアンモニウム塩
・Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族金属の塩
・上記周期律表第1族金属の塩、アンモニウム塩、周期律表第2族金属の塩と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールやそれらの誘導体との錯体。
・上記周期律表第1族金属の塩、アンモニウム塩、周期律表第2族金属の塩と、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体。
・第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤。脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤。ベタイン等の両性界面活性剤。
【0043】
電子導電機構による導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。
・カーボンブラック、グラファイト等の炭素系物質。
・アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅―ニッケル合金等の金属或いは合金。
・酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等の金属酸化物。
・各種フィラーに銅、ニッケル、または銀等で導電性金属めっきを施した物質。
【0044】
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は、粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することができる。これらの導電付与剤の中でも、導電性の制御が容易で経済的であるとの理由から、カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0045】
(c)樹脂層
次に、樹脂層33について説明する。弾性層32の外周上には、樹脂層33が設けられる。樹脂層33に用いられる材料としては以下のものが挙げられる。
・エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、珪素樹脂、ポリエステル樹脂。
・スチロール系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、水系樹脂。
【0046】
また、弾性層上に、樹脂層33用の塗工液を塗布する方法としては、ディッピング法、ロール塗工法、リングコート法、スプレー塗工法など一般的に知られた塗工法を用いることが出来る。
【0047】
さらに、これらの樹脂層33には導電性を付与することが出来る。導電性を付与する手法としては、上記弾性層の導電性を付与する方法と同様の手法を用いることが可能である。
【0048】
この樹脂層33の厚みとしては、1μm以上、200μmとすることが好ましい。樹脂層33が1μmより薄いと、電子線を照射した際に電子が容易に樹脂層を透過してしまい、弾性層への影響を無視できない場合がある。また、樹脂層33が200μmより厚いと、電子線を樹脂層全体に透過させることが困難となり、電子線の影響が樹脂層全域に及ばない恐れがある。電子線の影響を弾性層に与えず、樹脂層のみに効率良く与えるためには、樹脂層の厚みは5μm以上、50μm以下であることがより好ましい。
【0049】
(弾性ローラの製造方法)
また、本発明の弾性ローラの樹脂層の除去方法を利用することにより、軸芯体と、軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラを製造することができる。すなわち、この弾性ローラの製造方法は、以下の工程を有する。
【0050】
軸芯体と、軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラを準備する工程。
上記弾性ローラの樹脂層の除去方法により、樹脂層を除去する工程。
樹脂層を除去した弾性ローラの外周上に新たに樹脂層を形成する工程。
【0051】
上記のように、樹脂層の除去、及び新たな樹脂層の形成を行うことによって、弾性ローラを再生させて、再使用することができる。この弾性ローラの製造方法では、弾性層を劣化させることがなく軸芯体及び弾性層を再利用できるため、コスト削減を図ることができると共に環境負荷を小さくすることができる。
【0052】
なお、樹脂層の形成方法としては、樹脂層用の材料を溶媒に溶解又は分散させて樹脂層用塗工液を形成した後、これを弾性層の外周上に塗布、乾燥させることによって形成することができる。この樹脂層用塗工液の塗布方法としては特に限定されるわけではなく、ディッピング法、ロール塗工法、リングコート法、スプレー塗工法など一般に知られている塗工法を用いることが出来る。
【0053】
(電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置)
次に、本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置の一例を、図7を用いて説明する。
図7の電子写真画像形成装置では、回転可能な感光体701が設けられている。そして、この感光体701に接触させて感光体表面に電荷を供給する帯電部材702と、感光体701に接触させて感光体表面にトナーを供給する現像部材703が設けられている。
【0054】
更に、以下の各構成要素が設けられている。
・感光体701の表面に画像情報を記録するためのレーザー光704を発生する露光部材716。
・トナー705を転写材706に転写する転写部材707。
・定着部材708。
・定着部材708とニップ部を形成すると共にニップ部により転写材を圧接して搬送する加圧部材709。
【0055】
この電子写真画像形成装置では、帯電部材702により、感光体701の表面に対し、所定の極性で電荷が供給され、一様になるように帯電処理される。この後、レーザー光704により、感光体701の表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。
【0056】
次に、この静電潜像は、現像部材703により供給されるトナー705によって、トナー画像として可視化される。また、給紙部材710によって搬送された転写材706は、転写部材707まで運ばれると共に感光体701上に可視化されたトナー画像は、裏面から転写部材707によって加圧、電圧を印加されて転写材706に転写される。
【0057】
このトナー画像が転写された転写材706は更に、定着部材708と加圧部材709によって構成された定着部へ搬送され、像定着を受け、画像形成物として出力される。この後、感光体701はその上に残存するトナー、ごみ等を除くためにクリーニング部材711によりクリーニングされ、再び帯電過程に進む。この際、除電部材によって感光体701表面に残っている電荷を除去する工程が組まれる場合もある。また、クリーニング部材711によって除去されたトナーは、廃トナー容器712へ集められる。
【0058】
一方、現像部材703には、その表面にトナー供給部材713によりトナー705がトナー貯槽714から供給される。また、この現像部材703には、均一厚みになるように、それぞれトナー供給部材713、トナー量規制部材715が当接されている。現像部材703上に存在し、感光体701で静電潜像を現像する際に使用されなかったトナーは、トナー供給部材713で一旦、現像部材703から掻き落とされる。また、帯電部材702、現像部材703および転写部材707はバイアス印加電源により必要電圧が印加されている。
【0059】
なお、本発明の電子写真プロセスカートリッジは、少なくとも上記感光体701と、帯電部材702と、現像部材703と、を有する。そして、帯電部材702及び現像部材703の少なくとも一方の部材が、上記樹脂層を除去後、新たに樹脂層を設けた弾性ローラである。
また、本発明の電子写真画像形成装置は、感光体701と、帯電部材702と、露光部材716と、現像部材703と、転写部材707と、定着部材708と、加圧部材709と、を具備する。そして、帯電部材702及び現像部材703の少なくとも一方の部材が、上記樹脂層を除去後、新たに樹脂層を設けた弾性ローラであることが好ましい。
【実施例】
【0060】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
1.弾性ローラの作成
(弾性層の形成)
直径8mm、長さ250mmのSUS製の軸芯体の表面に、シリコーンゴムとの接着性を向上させる目的で、プライマー(東レ・ダウ・コーニング社製:DY39−051)処理を行った。
【0061】
両末端をビニル基に置換したジメチルポリシロキサン100質量部に、充填剤として石英粉末7質量部、カーボンブラック(電気化学工業製デンカブラック、粉状品)10質量部を配合して液状シリコーンゴムのベース材料とした。このベース材料を二つに分け、一方の材料には硬化触媒として白金化合物を微量配合した。この材料をベース材料Aとした。もう一方の材料にはオルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H基含有量0.8質量%)3質量部及び微量の硬化遅延剤を配合し、これをベース材料Bとした。
【0062】
この後、ベース材料Aに対してベース材料Bを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムとした。このようにして得られた液状シリコーンゴムを軸芯体を設置した金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を温度150℃で5分間加熱し、冷却後、脱型した。この後、さらに温度180℃で2時間加熱し、硬化反応を完結させ、軸芯体上に導電性弾性層を有する弾性層ローラを作製した。このとき、作製した弾性層ローラの外径は16mmであった。
【0063】
この弾性層ローラを温度23度、湿度55%RHの環境で24時間以上、放置した後、弾性層ローラの表面硬度を測定した。なお、硬度測定には、高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1を用い、一般ゴム用のタイプAで測定した。弾性層ローラを長手方向に対して中心および両端部から50mmずつ内側の3点について、円周方向に120°ずつ、ずらしながら、計9点を測定し、9点の平均を弾性層ローラの表面硬度の値とした。このようにして弾性層ローラの表面硬度を測定した結果、25.3度であった。
【0064】
(弾性層の熱膨張率の測定方法)
上記のようにして得た弾性層ローラを温度23度、湿度55%RHで設定された空間に24時間以上、放置した後、弾性層ローラの外径をレーザー測長機(キーエンス社製:LS−7500)によって測定した。この際、弾性層ローラの中心部分の外径測定を行いながら、弾性層ローラを1周させ、その最大値を弾性層ローラの外径とした。その後、弾性層ローラを温度150度に設定したオーブンに2時間放置し、温度150度での弾性層ローラの外径を上記方法と同様にして測定した。
【0065】
この測定結果から、弾性層ローラの外径の変化を求め、以下の式(1)から導かれる値を弾性層の熱膨張率と定義した。
【0066】
【数1】

【0067】
この測定方法で、上記弾性層の熱膨張率を測定したところ、7.2%であった。
【0068】
(樹脂層の形成)
下記材料を混合した。
・ポリウレタンポリオールプレポリマー(三井武田ケミカル社製:タケラックTE5060) 100質量部
・イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製:コロネート2521)
77質量部
・カーボンブラック(三菱化学社製:MA100) 24質量部
・ウレタン粒子(根上工業社製:C400透明) 24質量部。
【0069】
更に、メチルエチルケトンを加え、サンドミルで1時間、分散した。分散後の固形分が20〜30質量%となるようさらにメチルエチルケトンを加え、樹脂層用塗工液とした。この樹脂層用塗工液を、図4に示す塗料の循環機構を有する塗布装置を用いて塗工を行った。
【0070】
図4に示す塗布装置には、浸漬槽41が設けられている。浸漬槽41は、弾性層ローラの外径よりわずかに大きな内径と、弾性層ローラの軸方向長さより長い深さを備えた円筒形の槽を有し、その内部には弾性層ローラを充填できるようになっている。この浸漬槽41はその軸方向が垂直方向となるように設置され、その上端部外周には環状の液受け部が設けられている。この液受け部は、その底面に接続された管により攪拌タンク43に接続されており、浸漬槽41内への弾性層ローラの浸漬時などに浸漬槽から溢れた樹脂層用塗工液を収容して攪拌タンク43まで導くことができるようになっている。
【0071】
一方、浸漬槽41の底部は、管を介して樹脂層用塗工液を循環させる液送ポンプ42に接続され、更に、液送ポンプ42と攪拌タンク43を接続する管によって攪拌タンク43に接続されている。そして、液送ポンプ42により、攪拌タンク43内の樹脂層用塗工液を浸漬槽41内まで供給できるようになっている。また、この攪拌タンク43には、内部に収納する樹脂層用塗工液を攪拌するための攪拌翼が設けられている。
【0072】
この塗布装置には、浸漬槽41の上部に、弾性層ローラを備え付けた昇降板を浸漬槽41の軸方向に昇降可能な昇降装置44が設けられ、弾性層ローラを浸漬槽41中に進入、後退することが可能となっている。そして、弾性層ローラの弾性層上に樹脂層を形成する際には、この昇降板を下降させることによって、弾性層ローラを、樹脂層用塗工液を満たした浸漬槽41内に浸漬させることによって、弾性層上に樹脂層用塗工液の塗膜を形成する。このように塗膜が形成されたローラは、昇降装置44を上昇させることによって浸漬槽41から取り出す。この後、弾性層ローラを昇降装置44から取り外し、更に温度140℃にて60分間、加熱処理することでコーティングされた樹脂層用塗工液の硬化を行い、弾性ローラを得た。この状態の弾性ローラをサンプルA群とする。
【0073】
なお、樹脂層用塗工液の塗布に好適な粘度は、以下の手順で決定した。
最初に、樹脂層用塗工液の粘度を変えて、各粘度で弾性層ローラ上に樹脂層用塗工液を塗布し、弾性ローラを作製した。そして各粘度で得られた弾性ローラについて、長手方向の中心部及び両端から50mmの部分(3箇所)から、剃刀を用いて図6に示すような弾性層61と樹脂層62からなる半月型のサンプルを切り出した。1サンプルについて、光学顕微鏡を用いて場所を変えながら樹脂層62の厚みを10点測定し、弾性ローラ1本について、合計3サンプル×10点=計30点の樹脂層厚みの平均値を求めた。そして、各樹脂層用塗工液の粘度で得られた弾性ローラの樹脂層の厚みを求めた。この測定によって、樹脂層厚みが20±1μmとなる粘度を求め、塗工粘度を決定した。
【0074】
(樹脂層の熱膨張率の測定方法)
軸芯体に直接、上記樹脂層用塗工液を塗布し、上記と同様にして樹脂層用塗工液の硬化を行うことにより樹脂層ローラを作製した。この樹脂層ローラを温度23度、湿度55%RHの環境に24時間以上、放置した後、樹脂層ローラの外径をレーザー測長機(キーエンス社製:LS−7500)によって測定した。この際、樹脂層ローラ中心部分の外径測定を行いながら、樹脂層ローラを1周させ、その最大値を樹脂層ローラの外径とした。その後、樹脂層ローラを温度150度設定のオーブンに2時間放置し、温度150度での樹脂層ローラの外径を上記方法と同様にして測定した。
【0075】
この測定結果から、樹脂層ローラの外径の変化を求め、弾性層の熱膨張率を求める式と同じ下記式(1)を用いて計算を行った。
【0076】
【数2】

【0077】
この測定方法で、樹脂層の熱膨張率を測定したところ、1.7%であった。
【0078】
[実施例1]
サンプルA群から、弾性ローラの外観を調査し、樹脂層に凹みや凸などが認められた1本の弾性ローラを選択し、電子線の照射を行った。電子線の照射には、最大加速電圧150kV、電子電流最大40mAの電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用いた。なお、この装置が設置されているチャンバーの温度は25℃に設定した。また、照射時は雰囲気を窒素置換することによって、チャンバー内の酸素濃度を80〜100ppmとなるように設定した。
【0079】
電子線照射装置の加速電圧を80kV、電子電流を20mAに設定した。その後、ダミーとして、弾性ローラと同様の形状を有する金属ローラ表面に線量フィルムを貼り付け、電子線の照射線量の測定を行った。線量測定の際には、金属ローラを30rpmで回転させ、照射角度は90度となるよう金属ローラの位置を調整した。この条件で、照射時間を変えて、照射線量が300kGyとなるような照射時間を算出した。このようにして電子線照射量が300kGyとなる照射条件を決定し、この照射条件下で、金属ローラの代わりに弾性ローラを投入して電子線を照射した。
【0080】
電子線照射が終わった弾性ローラを図5に示す装置に組み込み、樹脂層を除去した。なお、図5の装置では弾性ローラ51と粘着ローラ52の軸芯体を、それぞれ回転軸に固定することが出来る。そして、それぞれの回転軸を駆動モーターにつなげ、弾性ローラと粘着ローラがカウンター回転になるよう、30rpmで回転させることにより、樹脂層を粘着ローラ表面に接着させて引き剥がした。回転開始から1分後に回転を止め、樹脂層の除去を終了し、弾性層ローラを得た。
【0081】
(評価方法)
・弾性層ローラの表面観察
樹脂層の除去が終わった弾性層ローラの表面状態を目視により観察した。そして、以下の基準に従って評価を行った。
弾性層の表面全体に光沢が出ており、きれいに樹脂層が除去できた場合を「A」、
弾性層の表面にごく軽微に樹脂層が残留している部分がある、又は弾性層表面にわずかに傷が確認できるレベルであれば「B」、
樹脂層が残留している部分が多い、又は弾性層表面に樹脂層を除去したことによる傷が確認できる場合には「C」。
【0082】
・弾性層ローラの表面硬度の測定
樹脂層の除去が終わった弾性層ローラの表面硬度を、以下のようにして測定した。まず、樹脂層の除去が終了した弾性層ローラを温度23度、湿度55%RHの環境に24時間以上、放置した後、この環境において測定を行った。
【0083】
硬度測定には高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1を用い、一般ゴム用のタイプAで測定した。弾性層ローラを長手方向に対して中心及び両端部から50mmずつ内側の3点について、円周方向に120°ずつ、ずらしながら計9点を測定し、9点の平均を弾性層ローラの表面硬度の値とした。そして、以下の基準に従って評価を行った。
弾性層の表面硬度が初期状態に比べ、±1以内であれば「A」、
弾性層の表面硬度が初期状態に比べ、±1を超え、±2以内であれば「B」、
弾性層の表面硬度が初期状態に比べ、±2を超えてずれていた場合は「C」。
これらの評価結果を表1に示す。
【0084】
・画像評価
上記樹脂層の除去を行った弾性層ローラに再度、上記(樹脂層の形成)に記載の方法と同様にして樹脂層を形成し、弾性ローラを得た。これらの弾性ローラを現像ローラとして、電子写真プロセスカートリッジに組み込み、Canon社製 LBP5500を使用して、ベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力して画像評価を行った。
【0085】
画像を目視で判断し、以下の基準に従って評価を行った。
画像上、特に、弾性ローラ由来の問題が無ければ「A」、
弾性ローラピッチで傷跡等の画像弊害がわずかに確認できる場合には「B」、
明らかに弾性ローラ由来の濃度ムラやかぶりなどの弊害が確認された場合には「C」。
【0086】
[実施例2]
(連続通紙試験)
サンプルA群から外観に不良が認められない弾性ローラを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に組み込み、連続通紙試験を行った。この電子写真画像形成装置としてはCanon製 LBP5500、電子写真プロセスカートリッジとしては、この電子写真画像形成装置専用のEP−85(公称寿命8000枚)を用いた。
【0087】
上記弾性ローラを組み込んだ電子写真プロセスカートリッジを、温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間、放置した後、同環境において電子写真画像形成装置本体に搭載し、印字率を2%として画像出力を行った。そして、公称寿命が径過した後も画像出力を続け、最終的に画像に白抜けが発生する状態まで通紙を行った。この後、この弾性ローラを電子写真プロセスカートリッジから取り出し、顕微鏡で弾性ローラの表面を観察したところ、弾性ローラ表面はトナー固着によって汚染されていることが確認された。また、これと同条件で画像出力を行うことによって、トナーによって表面が汚染された弾性ローラを複数本、作製した。これらの弾性ローラをサンプルB群とした。
【0088】
サンプルB群から一本の弾性ローラを選択し、実施例1と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この結果、弾性ローラ表面がトナーによって汚染されていても、実施例1と同様に問題なく、樹脂層の除去を行うことが可能であった。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例3]
照射線量が500kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例2と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例4]
照射線量が1000kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例2と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例5]
加速電圧の設定を120kVとした以外は、実施例2と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例6]
照射線量が500kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例5と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0093】
[実施例7]
照射線量が1000kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例5と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例8]
加速電圧の設定を150kVとした以外は、実施例2と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例9]
照射線量が500kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例8と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0096】
[実施例10]
照射線量が1000kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例8と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
[実施例11]
電子線照射装置の手前に赤外線ランプを設置することにより、弾性ローラの温度を調節するための加熱装置を設けた。サンプルB群から一本の弾性ローラを選択し、弾性ローラの表面温度を110℃まで加熱した状態で、電子線照射装置に投入した。電子線の照射条件は実施例1と同様の条件で行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0098】
[実施例12]
弾性ローラの表面温度を150℃まで加熱した以外は、実施例11と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
[実施例13]
弾性ローラの表面温度を165℃まで加熱した以外は、実施例11と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0100】
[実施例14]
電子線の照射角度を60度とした以外は、実施例10と同様の条件で樹脂層の除去を行った。この照射角度において、実施例1と同様にして、線量フィルムを使用して、照射線量の測定を再度行い、所望の照射線量を得られるようにした。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
[実施例15]
電子線の照射角度を30度とした以外は、実施例10と同様の条件で樹脂層の除去を行った。この照射角度において、実施例1と同様にして、線量フィルムを使用して、照射線量の測定を再度行い、所望の照射線量を得られるようにした。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0102】
[実施例16]
電子線の照射角度を0度とした以外は、実施例10と同様の条件で樹脂層の除去を行った。この照射角度において、実施例1と同様にして、線量フィルムを使用して、照射線量の測定を再度行い、所望の照射線量が得られるようにした。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0103】
[実施例17]
(導電性弾性層の作製)
弾性層の原材料として、以下の材料を10リットルニーダーで混練した後、メルカプトベンゾチアゾール1質量部、硫黄1質量部を添加し、更に2本ロールにて混練することによりゴム組成物とした。
・NBRのN235S(JSR社製:アクリロニトリル36wt%)
100質量部
・導電剤として、MTカーボンブラックの商品名サーマックスローフォームN990(CANCAB社製) 50質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・ステアリン酸 1質量部
得られたゴム組成物を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、直径8mm、長さ250mmのSUM製の軸芯体を中心として、同軸状に円筒形に押出し、ゴム部分端部を切断して樹脂部分の長さを232mmとした。この後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、直径16mmの弾性層ローラを得た。この弾性層ローラの熱膨張率を測定したところ、4.8%であった。
【0104】
(樹脂層の作製)
実施例1と同様の方法で行った。
上記方法において、複数本の弾性ローラを作成した後、ローラ外観に不良が見られたローラに対して、電子線照射時の弾性ローラの温度を150度にした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0105】
[比較例1]
サンプルB群から1本の弾性ローラを選択し、以下の処理を行った。
照射線量が100kGyとなるように電子線の照射時間を調節した以外は、実施例6と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行ったが、樹脂層がほとんど除去できなかったため、弾性層の硬度については測定不能であった。
【0106】
[比較例2]
サンプルB群から1本の弾性ローラを選択し、以下の処理を行った。照射線量が1400kGyとなるよう電子線の照射時間を調節した以外は、実施例6と同様の方法で樹脂層の除去を行った。この後、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1の結果より、加速電圧50kV以上、150kV以下、かつ照射線量300kGy以上、1000kGy以下とすることにより、「表面観察」、「表面硬度測定」、「画像評価」において良好な結果が得られることが分かる。また、電子線照射時の弾性ローラの温度を110℃以上、150℃以下とした実施例11及び12では、「表面観察」、「表面硬度測定」、「画像評価」が「A」であった。このため、電子線照射時の弾性ローラの温度を110℃以上、150℃以下とすることにより、弾性層に影響を与えずに樹脂層を効果的に除去できることが分かる。
【0109】
更に、電子線の入射角度が0度以上、30度以下である、実施例15、16では、「表面観察」、「表面硬度測定」、「画像評価」としてより良好な結果が得られた。このため、電子線の入射角度が0度以上、30度以下とすることにより、弾性層に影響を与えずに樹脂層を効果的に除去できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の電子線の照射工程の一例を説明する概略図である。
【図2】本発明の電子線の照射角度を説明する概略図である。
【図3】本発明の弾性ローラの樹脂層の除去方法を適用する弾性ローラの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の弾性ローラの製造方法で使用する塗布装置の一例を説明する概略図である。
【図5】本発明の樹脂層の除去工程で使用する装置の一例を示す概略図である。
【図6】樹脂層の厚みを測定するためのサンプルを説明する概略図である。
【図7】本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置の一例を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0111】
11…弾性ローラ
12…投入口
13…電子線照射装置
14…加熱装置
21…照射窓
22…弾性ローラ
31…軸芯体
32…弾性層
33…樹脂層
41…浸漬槽
42…液送ポンプ
43…撹拌タンク
44…昇降装置
51…弾性ローラ
52…粘着ローラ
61…弾性層
62…樹脂層
701…感光体
702…帯電部材
703…現像部材
704…レーザー光
705…トナー
706…転写材
707…転写部材
708…定着部材
709…加圧部材
710…給紙部材
711…クリーニング部材
712…廃トナー容器
713…トナー供給部材
714…トナー貯槽
715…トナー量規制部材
716…露光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、前記軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、前記弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラの樹脂層の除去方法であって、
前記弾性ローラの表面に電子線を、加速電圧50kV以上、150kV以下、かつ照射線量300kGy以上、1000kGy以下で照射する工程と、
前記弾性ローラから樹脂層を除去する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項2】
前記弾性ローラの表面に電子線を照射する際の電子線の入射角度が、前記弾性ローラ表面の接線方向に対して0度以上、30度以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項3】
前記弾性ローラの表面への電子線の照射時に、前記弾性ローラを回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項4】
前記弾性ローラの表面への電子線の照射時に、前記弾性ローラの温度を110℃以上、150℃以下とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項5】
前記弾性ローラは、前記弾性層と樹脂層の熱膨張率の差が5.0%以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項6】
前記弾性ローラは、前記弾性層の熱膨張率が5.0%以上であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項7】
前記弾性ローラの前記弾性層は、シリコーンゴムを含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項8】
前記弾性ローラが、静電潜像を形成するための感光体に当接配置され前記感光体上に静電潜像を現像してトナー像を形成するために用いられる現像ローラであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法。
【請求項9】
軸芯体と、前記軸芯体の外周上に少なくとも1層の弾性層と、前記弾性層の外周上に樹脂層と、を有する弾性ローラを準備する工程と、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の弾性ローラの樹脂層の除去方法により、前記樹脂層を除去する工程と、
樹脂層を除去した前記弾性ローラの外周上に新たに樹脂層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項11】
回転可能な感光体と、前記感光体に接触させて感光体表面に電荷を供給する帯電部材と、前記感光体に接触させて感光体表面に現像剤を供給する現像部材と、を有する電子写真プロセスカートリッジであって、
前記帯電部材及び現像部材の少なくとも一方の部材が、請求項10に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項12】
回転可能な感光体と、前記感光体に接触させて感光体表面に電荷を供給する帯電部材と、前記感光体表面に画像情報を記録する露光部材と、前記感光体に接触させて感光体表面に現像剤を供給する現像部材と、前記現像剤を転写材に転写する転写部材と、定着部材と、前記定着部材とニップ部を形成すると共にニップ部により転写材を圧接して搬送する加圧部材と、を具備する電子写真画像形成装置であって、
前記帯電部材及び現像部材の少なくとも一方の部材が、請求項10に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−3257(P2009−3257A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165168(P2007−165168)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】