説明

弾性ローラ及び定着装置

【課題】加熱効率が高く長期間にわたって初期の機能を発揮する弾性ローラ、及び、加熱効率が高く長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができる定着装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成され、シリコーンゴムとシリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有する発泡弾性層3を備えて成り、アスカーC硬度が35〜55で熱伝導率が0.09〜0.175(W/m・k)であることを特徴とする弾性ローラ1、並びに、定着ローラと、定着ローラに巻回された無端ベルトと、定着ローラに圧接する加圧ローラと、無端ベルトに非接触となるように配置され、定着ローラを加熱する加熱手段とを備えて成る定着装置であって、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの少なくとも一方は前記弾性ローラ1であることを特徴とする定着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性ローラ及び定着装置に関し、さらに詳しくは、加熱効率が高く、長期間にわたって所期の機能を発揮する弾性ローラ、及び、加熱効率が高く、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。
【0003】
これらのローラの中でも、例えば、定着ローラ及び加圧ローラ等には、記録体に現像剤を定着させることを目的として、定着ローラと加圧ローラとが所定の圧力で当接することによって大きなニップ幅を長期間にわたって確保できること等が求められている。
【0004】
近年、画像形成装置の高速化及び省電力化を推進することが大きな目標となっている。この目標を達成する手段の1つとして、画像形成装置の定着装置に装着される定着ローラ及び/又は加圧ローラの断熱性を高めることが提案されている。
【0005】
ところが、定着ローラと加圧ローラとの大きなニップ幅を確保するには、通常、定着ローラ及び/又は加圧ローラに形成された弾性層の硬度を小さくすればよいが、そうすると、硬度を小さくしたことによって弾性層の耐久性が低下してしまい、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができなくなることがある。
【0006】
また、定着ローラ及び/又は加圧ローラの断熱性を高めるには、定着ローラ及び/又は加圧ローラにおける弾性層に断熱機能を発揮する空間又は中空部等を形成すればよいが、弾性層にこれらの空間又は中空部を形成すると、弾性層自体の硬度が低下してしまい、やはり、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができなくなることがある。
【0007】
このように、定着ローラ及び加圧ローラの弾性層において、耐久性と断熱性とはトレードオフの関係にあり、これらの特性を両立することが強く求められるようになってきた。
【0008】
例えば、フィルム加熱方式の加熱定着装置及び熱ローラ方式の加熱定着装置に用いられる加圧ローラに関する技術として、断熱性を高めた「加圧ローラ」が特許文献1に記載されている。具体的には、特許文献1には、「芯金の外周に弾性層および離型層が内側からこの順に形成された加圧ローラであって、該弾性層が無機系微少中空体を含むスポンジ状シリコーンゴムよりなることを特徴とする加圧ローラ」が記載されている。この特許文献1には、さらに、加圧ローラにおいて、「ローラ硬度(ASKER−C)が46゜以上60゜以下であること」(請求項4等参照。)、及び、「弾性層の熱伝導率が3×10−4(cal/cm・℃・sec)以下であること」(請求項5等参照。)等が記載されている。
【0009】
なお、内部に加熱用ヒータを具備した加圧ローラ及び加熱ローラを備え、これらに巻回される無端ベルトを備えていない直接加熱方式の定着装置において、加圧ロールの直径及び表面温度の制御を行いやすくすることによって定着性を良好にする技術として、特許文献2には、「内部に加熱用ヒータを具備する加熱ロールと、この加熱ロールと圧接する外周部に弾性層を有する加圧ロールとからなり、加熱ロールと加圧ロールを圧接回転しながら両ロール間に挟み込んだ用紙上のトナー像を定着する電子写真複写機の定着装置であって、前記加圧ロールの弾性層を熱伝導率8×10−4〜30×10−4(cal/cm・sec・℃)のシリコーンベースのゴム材料で構成したことを特徴とする電子写真複写機の定着装置」が記載されている。この加圧ロールの弾性層は、直接加熱方式の定着装置において、温度制御しやすくするために、非常に高い熱伝導率に調整されている。一方で、特許文献2には、内部に加熱用ヒータを具備しない加圧ローラ及び加熱ローラを備えた外部加熱方式の定着装置に関する技術については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−65544号公報
【特許文献2】特開昭61−209472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、加熱効率が高く、長期間にわたって初期の機能を発揮する弾性ローラを提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、加熱効率が高く、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成され、かつ、シリコーンゴムと前記シリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有する発泡弾性層を備えて成り、アスカーC硬度が35〜55で、熱伝導率が0.09〜0.175(W/m・k)であることを特徴とする弾性ローラであり、
請求項2は、定着ローラと、前記定着ローラに巻回された無端ベルトと、前記無端ベルトを介して前記定着ローラに圧接する加圧ローラと、前記無端ベルトに非接触となるように配置され、前記定着ローラを加熱する加熱手段とを備えて成る定着装置であって、前記定着ローラ及び前記加圧ローラの少なくとも一方は請求項1に記載の弾性ローラであることを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る弾性ローラは、シリコーンゴムとこのシリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有する発泡弾性層を備え、アスカーC硬度が35〜55で熱伝導率が0.09〜0.175(W/m・k)であるから、この発泡弾性層は損傷することなく多量のセルを包含して高い加熱効率を発揮することができるにもかかわらず、大きなニップ圧及びニップ幅を長期間にわたって確保することができる。したがって、この発明によれば、加熱効率が高く、長期間にわたって所期の機能を発揮する弾性ローラを提供することができる。
【0015】
また、この発明によれば、この発明に係る定着装置は、この発明に係る弾性ローラを備えているから、加熱効率が高く、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明に係る弾性ローラにおける一実施例の弾性ローラを示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る定着装置を具備した画像形成装置を示す概略説明図である。
【図3】図3は、トラバース押圧ローラによる押圧処理を実施するための押圧処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、プランジ押圧ローラによる押圧処理を実施するための押圧処理装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、実施例において弾性ローラの加熱試験を実施するための試験機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る弾性ローラは、軸体の外周面に形成され、かつ、シリコーンゴムと、このシリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有する発泡弾性層を備えて成る。したがって、この発明に係る弾性ローラは、軸体と前記発泡弾性層を備えていればよく、これらに加えて他の層又は膜等を備えていてもよい。
【0018】
前記構成を有するこの発明に係る弾性ローラは、アスカーC硬度が35〜55である。この弾性ローラのアスカーC硬度が35未満であると、例えばこの弾性ローラに当接する被当接体とのニップ圧が不足し、一方、アスカーC硬度が55を超えると、被当接体とのニップ幅が不足して回転トルクが高くなることがある。すなわち、この弾性ローラが前記範囲のアスカーC硬度を有していると、例えば定着装置に装着されたときに大きなニップ圧及びニップ幅を長期間にわたって確保することができる。この発明に係る弾性ローラのアスカーC硬度は、35〜50であるのが好ましく、40〜45であるのが特に好ましい。アスカーC硬度(1kg荷重)は、JIS K6253に準拠して測定することができる。この発明に係る弾性ローラのアスカーC硬度は、例えば、弾性ローラの発泡弾性層を形成する発泡シリコーンゴム組成物に含有されるゴム、発泡剤及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層の成形条件等により、調整することができる。
【0019】
この発明に係る弾性ローラは、熱伝導率が0.09〜0.175(W/m・k)である。この発明に係る弾性ローラが前記範囲の熱伝導率を有していると、高い加熱効率を発揮することができる。この発明に係る弾性ローラの熱伝導率は、0.12〜0.16(W/m・k)であるのがより好ましく、0.13〜0.15(W/m・k)であるのが特に好ましい。熱伝導率は、熱伝導率計(商品名「迅速熱伝導率計:QTM−500」、京都電子工業株式会社製)を用いて、JIS R2251 耐火物の熱伝導率の試験方法−第2部:熱線法(平行法)に準じて、この発明に係る弾性ローラにおける発泡弾性層と同様の組成を有する試験片(100mm×20mm×5mm)を同様に作製し、この試験片の24℃での熱導電率を測定し、測定開始から60秒後の値として求めることができる。前記熱伝導率は、例えば、弾性ローラの発泡弾性層を形成する発泡シリコーンゴム組成物に含有されるシリカ系充填材の配合量等を変更することにより、また、発泡剤を増減させ、硬度を変更することにより、調整することができる。
【0020】
そして、このように、この発明に係る弾性ローラが前記範囲のアスカーC硬度及び熱伝導率を有していると、この発明に係る弾性ローラの発泡弾性層が多量のセルを包含することにより、外部からの加熱によってこの弾性ローラが所定の表面温度に加熱されると、その熱が発泡弾性層の内部に拡散しにくく、その表面に留まって、高い加熱効率を発揮する。その結果、この発明に係る弾性ローラは、外部からの加熱によって短時間で所定の表面温度に到達することができるにもかかわらず、大きなニップ圧及びニップ幅を長期間にわたって確保することができる。すなわち、この発明に係る弾性ローラが前記範囲のアスカーC硬度及び熱伝導率を有していると、耐久性と断熱性とを両立することができる。その結果、この発明に係る弾性ローラを備えた定着装置は速やかに起動可能となり予熱時間を大幅に短縮することができる。
【0021】
また、この発明に係る弾性ローラの表面が前記のようにして所定の表面温度に加熱されると、前記したように、弾性ローラの発泡弾性層が断熱性に優れているから、この発明に係る弾性ローラの表面に与えられた熱が発泡弾性層の内部に拡散しにくく、その表面に留まる。故に、画像形成装置の待機時において、この発明に係る弾性ローラを常時加熱又は保温する必要性は従来の定着装置に比してそれほど高くなく、加熱エネルギー量を低減することができる。したがって、この発明に係る弾性ローラは、外部から加熱される定着ローラ及び/又は加圧ローラとして特に好適に用いられる。
【0022】
ところで、この発明に係る弾性ローラの内部にヒータを収納して、このヒータでこの発明に係る弾性ローラの表面を加熱しようとすると、発泡弾性層内に存在するセルにより発泡弾性層の断熱性が高くなっているから、この発明に係る弾性ローラの表面を所定の温度にまで速やかに上昇させることができないことがある。したがって、この発明に係る弾性ローラは、その表面温度が所定の温度まで速やかに昇温され、かつ、前記所定の温度を長時間保持するという目的を達成するためには、その内部にヒータ等の熱源が収納されることなく、例えば非接触状態で加熱可能な加熱手段を備えた定着装置に使用されるのが好適である。
【0023】
特に、この発明に係る弾性ローラの発泡弾性層が、シリコーンゴムと特定量のシリカ系充填材と発泡剤とを含有する発泡シリコーンゴム組成物で形成されていると、発泡弾性層は、後述するように、発泡弾性層における、セルを含有するセル構造が損傷することなく多量のセルを包含することができる。したがって、この発明に係る弾性ローラにおける発泡弾性層は後述する発泡シリコーンゴム組成物で形成されるのが好ましい。
【0024】
この発明に係る弾性ローラは、装着される定着装置等に応じて任意の寸法に調整される。定着装置に装着される弾性ローラは、通常、30〜40mmの外径に調整されることが多いが、この発明に係る弾性ローラは、耐久性と断熱性に優れているから、所望により、その外径は、例えば、大きなニップ圧及びニップ幅を確保するために、これまで困難とされていた50mm以上に調整されることもできる。
【0025】
この発明に係る弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3とを備えている。
【0026】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0027】
前記発泡弾性層3は、軸体2の外周面に形成されている。この発泡弾性層3は、シリコーンゴムと、このシリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有している。前記シリコーンゴムは、後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有されるシリコーンゴム(又はその架橋硬化体)と基本的に同様である。前記シリカ系充填材は、後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有されるシリカ系充填材と基本的に同様である。発泡弾性層3におけるシリカ系充填材の含有量は、シリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部である。シリカ系充填材の含有量が前記範囲内にあると、断熱性を高めるため発泡弾性層3に多量のセルを形成しても、発泡弾性層3のアスカーC硬度が必要以上に低下することなく発泡弾性層3の損傷を長期間にわたって防止することができるから、発泡弾性層3が高い断熱性と耐久性とを両立することができる。発泡弾性層3におけるシリカ系充填材の含有量は、より一層高い断熱性と耐久性とを両立することができる点で、シリコーンゴム100質量部に対して45〜70質量部であるのが好ましく、50〜60質量部であるのが特に好ましい。発泡弾性層3には、前記シリコーンゴム及びシリカ系充填材に加えて、前記発泡シリコーンゴム組成物に含有される各種の添加剤又はそれらの複合体等が含有されていてもよい。
【0028】
発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において発泡弾性層3の外周面及び端面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有していると、発泡弾性層3の硬度を低下させることができ、一方、発泡弾性層3の断熱性を向上させることができる。ここで、発泡弾性層3に有するセルは、発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域をいう。発泡弾性層3に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。
【0029】
このような発泡弾性層3は、弾性ローラ1が前記範囲のアスカーC硬度となるような硬度を有しているのが好ましい。この例においては、発泡弾性層3は弾性ローラ1の最外層であるから、通常、発泡弾性層3は弾性ローラ1のアスカーC硬度と同じアスカーC硬度を有する。
【0030】
発泡弾性層3は、発泡弾性層3に形成されるセルの平均セル径、発泡弾性層3の発泡倍率等が調整されているのが、この発明の効果をより一層高めることができる点で、好ましい。例えば、発泡弾性層3の平均セル径は、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましく、発泡弾性層3の発泡倍率は、180〜420%であるのが好ましく、200〜350%であるのが特に好ましい。発泡弾性層3の発泡倍率が前記範囲内にあると、前記特定量のシリカ系充填材によって前記範囲内のアスカーC硬度を有する発泡弾性層3に多量のセルを形成することができる。
【0031】
発泡弾性層3において、その発泡倍率及び平均セル径は、発泡弾性層3を形成する後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤又は発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。前記発泡倍率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。また、セルの平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。
【0032】
この発泡弾性層3は、弾性ローラ1が前記範囲の熱伝導率となるような熱伝導率を有しているのが好ましい。この例においては、発泡弾性層3は弾性ローラ1の最外層であるから、通常、発泡弾性層3は弾性ローラ1の熱伝導率と同じ熱伝導率を有する。
【0033】
発泡弾性層3の密度は、0.395〜0.7(g/cm)であるのが好ましく、0.42〜0.6(g/cm)であるのが特に好ましい。密度が前記範囲内にあると、この発明の効果をより一層高めることができる。発泡弾性層3の密度は、電子密度計(水中置換法 水温23℃)によって測定することができる。
【0034】
発泡弾性層3の形態は特に限定されず、例えば、発泡弾性層3は、その軸線方向にわたって均一な外径に調整された所謂ストレート形状でもよく、また、中央部における外径がその両端部における外径よりも大きくなるように調整された所謂クラウン形状であってもよく、さらに、中央部における外径がその両端部における外径よりも小さくなるように調整された所謂逆クラウン形状であってもよい。この例において、発泡弾性層3は、図1に示されるように、前記ストレート形状に形成されている。
【0035】
発泡弾性層3の厚さは、特に限定されず、通常、2〜20mmに調整されることができる。この弾性ローラ1は耐久性と断熱性に優れているから、発泡弾性層3の厚さは、大きなニップ圧及びニップ幅を確保するために、これまで困難とされていた厚さに調整することもでき、例えば、15mm以上に調整することもできる。この発明において、発泡弾性層3の厚さは、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
【0036】
前記発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、発泡剤と、特定量のシリカ系充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する。このような発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を好ましく挙げることができる。
【0037】
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、特定量のシリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
【0038】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとして、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KE−77VBS」等が挙げられる。
【0039】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」、並びに、東新化成株式会社製の商品名「セライトスーパーフロス」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、40〜100質量部であり、45〜70質量部であるのが好ましく、50〜60質量部であるのが特に好ましい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0040】
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続気泡を形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立気泡を形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。この発明においては、前記発泡弾性層3を容易に形成することができる点で、発泡剤は、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であるのがよい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0041】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0042】
前記付加反応触媒は、シリコーン生ゴムの付加反応に通常用いられる触媒であればよく、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられる。付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して1〜1,000ppmであるのがよい。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0043】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を特に制限されることなく用いることができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0045】
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記各種添加剤は、例えば、カーボンブラック等の導電性付与剤等の前記添加剤を特に制限されることなく、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0047】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有する発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。特に、前記範囲のシリカ系充填材を含有する発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KE-151KU」、「KE-9510U」及び「KE-981U」等が挙げられる。
【0048】
前記したように、シリコーンゴムと、発泡剤と、特定量のシリカ系充填材とを含有する発泡シリコーンゴム組成物によれば、前記特性を有する発泡弾性層3を形成することができるから、この発明において、アスカーC硬度及び/又は熱伝導率を調整するために、発泡弾性層3及び発泡シリコーンゴム組成物に、セルの代わりになる中空体例えば無機系微小中空体等を含有させなくてもよい。
【0049】
発泡シリコーンゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0050】
この発明に係る弾性ローラは、シリコーンゴムと、発泡剤と、特定量のシリカ系充填材とを含有する発泡シリコーンゴム組成物を発泡硬化して発泡弾性層3を形成する工程を含む製造方法によって、製造することができる。
【0051】
この製造方法においては、まず、軸体2を準備する。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック若しくは金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。この軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。
【0052】
この製造方法においては、次いで、このようにして作製した軸体2の外周面に、発泡シリコーンゴム組成物、好ましくは有機系発泡剤を含有する発泡シリコーンゴム組成物を、押出成形による連続加熱成形、プレス、インジェクションによる型成形等によって、加熱成形する。発泡シリコーンゴム組成物の加熱成形においては、まず、所望により接着層又はプライマー層が形成された軸体2の外周面に発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物を配置する。軸体2の外周面に発泡シリコーンゴム組成物を配置する方法としては、例えば、押出機等により軸体2と発泡シリコーンゴム組成物とを一体に分出して、軸体2の外周面に発泡シリコーンゴム組成物を配置する方法、また、軸体2を収納する金型に発泡シリコーンゴム組成物を注入して、軸体2の外周面に発泡シリコーンゴム組成物を配置する方法等が挙げられる。これらの中でも、押出機等により軸体2と発泡シリコーンゴム組成物とを一体に分出しする方法が、作業が容易で連続して行うことができる点で、好ましい。
【0053】
この製造方法においては、このようにして、軸体2の外周面に発泡シリコーンゴム組成物を配置した後、軸体2と共に発泡シリコーンゴム組成物を加熱する。発泡シリコーンゴム組成物の加熱は、発泡シリコーンゴム組成物に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋し、かつ、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、発泡シリコーンゴム組成物は、通常、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、170〜500℃程度、特に200〜400℃に加熱され、数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱される。このようして、発泡シリコーンゴム組成物を加熱すると、発泡材が発泡すると共に、シリコーンゴムが架橋して、セルを含有するゴム硬化体が形成される。このゴム硬化体は、所望により、さらに、二次加熱が行われてもよい。二次加熱は、前記条件で加熱されたゴム硬化体をより確実に硬化させる工程であり、二次加熱によって、発泡シリコーンゴム組成物が硬化して成るゴム硬化体の物性が安定するという効果が得られる。二次加熱は、例えば、前記の条件で加熱されたゴム硬化体を、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
【0054】
この製造方法において、前記特性を有する弾性ローラを容易に形成する方法の1つとして、このようにして成形されたゴム硬化体を押圧処理する方法が挙げられる。ゴム硬化体を押圧処理すると、得られる弾性ローラは前記特性を有し、耐久性と断熱性とを両立することができる。押圧処理としては、ゴム硬化体5の表面を所定の条件で圧接する方法であればよく、例えば、トラバース押圧ローラによる押圧処理、プランジ押圧ローラによる押圧処理等が挙げられる。
【0055】
<トラバース押圧ローラによる押圧処理>
この押圧方法には、図3に示される押圧処理装置80が用いられる。図3に示されるように、この押圧処理装置80は、ゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして固定する固定手段82、例えば、軸体2を両端から挟持して固定する1組の挟持部材と、固定手段82に連結され、固定手段82を介してゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして回転させる回転手段83、例えば、モータと、ゴム硬化体5を押圧するトラバース押圧ローラ84と、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の軸線方向に相対的に移動させると共に、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の中心方向に移動させ、ゴム硬化体5に対する押圧量dを調整する移動調整手段85と、トラバース押圧ローラ84を回転可能に支持し、移動調整手段85上を移動可能に装着された押圧ローラ支持治具86とを備えている。ここで、トラバース押圧ローラ84は、軸体とその外周面に形成された円筒体とを備えている。
【0056】
このトラバース押圧ローラ84における軸体の寸法及び材料等は特に限定されず、例えば、図3に示されるトラバース押圧ローラ84における軸体は、その外径が8〜15mmに調整され、例えば、弾性ローラ1の軸体2と同様の材料で形成されている。また、トラバース押圧ローラ84における円筒体の寸法及び材料等は特に限定されず、例えば、図3に示されるトラバース押圧ローラ84における円筒体は、その外径が15〜100mm、軸線方向の長さが10〜200mmに調整されている。この円筒体は、各種樹脂、各種金属等で形成され、ゴム硬化体5に圧接する。トラバース押圧ローラ84における円筒体は、所望の発泡弾性層3を形成するには、特定の硬度を有することが重要であり、この押圧処理装置80におけるトラバース押圧ローラ84において、円筒体の硬度は、ゴム硬化体5よりも大きな硬度に調整されていればよく、例えば、HRC硬度で33〜43であるのが好ましい。
【0057】
この押圧処理装置80を用いてゴム硬化体5を押圧処理するには、まず、前記のようにして作製したゴム硬化体5を軸体2の両端から挟持して1組の固定手段82に固定する。次いで、図3に示されるように、移動調整手段85を操作して、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の一方の端部近傍において、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の中心方向に移動させ、ゴム硬化体5に対する押圧量d、すなわち、ゴム硬化体5がトラバース押圧ローラ84によって押し込まれた量が所定の値d、例えば、1〜20mmになるように、好ましくは2〜15mmになるように、トラバース押圧ローラ84の位置を、適宜調整する。
【0058】
次いで、回転手段83を起動して固定手段82に固定されたゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして回転させる。このときのゴム硬化体5の回転数は、所望の発泡弾性層3を形成することができる点で、好ましくは5〜1500rpm/min、特に好ましくは10〜1000rpm/minに調整される。ゴム硬化体5を回転させると、ゴム硬化体5を押圧しているトラバース押圧ローラ84はゴム硬化体5と共に回転する。この状態を維持しつつ、移動調整手段85を起動して、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の一方の端部から他方の端部にかけて一方向(図3に示された矢印の方向)に移動させる。このとき、押圧ローラ13の移動速度は、所望の発泡弾性層3を形成することができる点で、好ましくは20〜1200mm/min、特に好ましくは50〜900mm/minに調整される。この押圧方法では、トラバース押圧ローラ84の前記一方向への移動に加えて、トラバース押圧ローラ84を前記他方の端部から前記一方の端部へと逆方向に移動させてもよく、また、トラバース押圧ローラ84の前記一方向への移動と前記逆方向への移動とを1サイクルとして、トラバース押圧ローラ84の移動を複数サイクル行ってもよい。このようにしてゴム硬化体5を押圧処理することができる。この押圧処理装置80を用いた方法では、前記した、ゴム硬化体5の回転速度、トラバース押圧ローラ84の移動回数及び押圧量dによって、発泡弾性層3の各物性等を適宜調整することができる。なお、この押圧処理装置80は1本のトラバース押圧ローラ84を装備しているが、押圧処理装置80は、例えば、固定手段82に固定されたゴム硬化体5に対向してゴム硬化体5の外周方向に等間隔に複数(例えば、2本、3本又は4本以上)のトラバース押圧ローラ84を装備していてもよい。
【0059】
<プランジ押圧ローラによる押圧処理>
この押圧方法には、図4に示される押圧処理装置81が用いられる。図4に示される押圧処理装置81は、前記トラバース押圧ローラ84、移動調整手段85及び押圧ローラ支持治具86に代えてプランジ押圧ローラ87及び押圧ローラ支持治具88を備えていること以外は、前記押圧処理装置81と基本的に同様に構成されている。このプランジ押圧ローラ87は、軸体とその外周面に形成された円筒体とを備え、好ましくはその軸線方向の長さがゴム硬化体5の軸線方向の長さよりも長く設定されていること以外は、トラバース押圧ローラ84と基本的に同様に構成されている。プランジ押圧ローラ87における円筒体は、好ましくは軸線方向の長さが200〜350mmに調整されている。この押圧処理装置81を用いた処理は、プランジ押圧ローラ87で押圧量dとなるようにゴム硬化体5の軸線方向にわたって押圧した状態を維持しつつプランジ押圧ローラ87を移動させることなくゴム硬化体5を所定時間回転させること以外は、前記押圧処理装置80を用いた処理と基本的に同様にして、実施される。そして、この押圧処理装置81を用いた方法では、前記した、ゴム硬化体5の回転速度及び回転時間並びにプランジ押圧ローラ87の押圧量dによって、発泡弾性層3の各物性等を適宜調整することができる。なお、この押圧処理装置81は1本のプランジ押圧ローラ87を装備しているが、押圧処理装置81は、例えば、固定手段82に固定されたゴム硬化体5に対向してゴム硬化体5の外周方向に等間隔に複数(例えば、2本、3本又は4本以上)のプランジ押圧ローラ87を装備していてもよい。
【0060】
前記押圧処理に加えて又は代えて、例えば、トラバース押圧ローラ84による局部押圧処理、ピッチングマシーン方式による押圧処理等を採用することができる。
【0061】
前記押圧処理は、ゴム硬化体5のアスカーC硬度が2〜15低下する条件で実施されるのが好ましく、5〜10低下する条件で実施されるのが特に好ましい。このような条件でゴム硬化体5を押圧処理すると、弾性ローラとしたときの耐久性と断熱性とを高い水準で両立できることに加えて、硬度低下が激しい、印字初期から連続使用8時間相当分の硬度低下率を軽減でき耐久性のさらなる向上を図ることができると共に、ニップ幅の変動率も軽減できる。アスカーC硬度が前記範囲だけ低下する条件は、ゴム硬化体5の発泡倍率、厚さ等に応じて、例えば、前記条件の中から適宜選択される。したがって、ゴム硬化体5に押圧処理を施す場合には、製造される弾性ローラのアスカーC硬度が前記範囲内となるように、予め、ゴム硬化体5のアスカーC硬度が高くなる発泡シリコーンゴム組成物を用いるのがよい。
【0062】
この製造方法においては、このようにして成形されたゴム硬化体は、前記押圧処理の前又は後に、発泡弾性層3に要求される形状に応じて、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施される。例えば、発泡弾性層3がストレート形状に形成される場合には、発泡弾性層3の一方の端部から他方の端部にわたる外径が均一になるように、ゴム硬化体に研削工程等が施される。研削工程、研磨工程及び/又は切削工程は、従来利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。また、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程後に、研削カス、研磨カス、異物等を除去するため、所望によりこれらの工程が施されてなる発泡弾性層3を洗浄してもよい。洗浄は、例えば、水等を用いた湿式洗浄及び/又はウエス等を用いたふき取り洗浄、送風洗浄等が挙げられる。
【0063】
このようにして、前記範囲のアスカーC硬度及び熱伝導率を有する弾性ローラを製造することができる。
【0064】
この発明に係る弾性ローラは、前記特性及び効果を有しているから画像形成装置に具備される定着装置に装着される定着ローラ及び/又は加圧ローラとして好適に用いられる。特に、この発明に係る弾性ローラは、前記特性及び効果を有しているから、定着ローラ及び/又は加圧ローラを外部から非接触状態で加熱するように構成された定着装置に装着される定着ローラ及び/又は加圧ローラとして好適に用いられる。また、この発明に係る弾性ローラは、前記特性及び効果を有しているから高精細高速化された画像形成装置に具備される定着装置に装着される定着ローラ及び/又は加圧ローラとして好適に用いられる。
【0065】
この発明に係る弾性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、発泡弾性層3は、単層構造とされているが、この発明においては二層以上の複層構造とされてもよい。
【0066】
また、弾性ローラ1は、軸体2と発泡弾性層3とを備えているが、この発明に係る弾性ローラは、軸体と、その外周面に形成された発泡弾性層と、発泡弾性層の外周面上に形成されたチューブ層とを備えていてもよい。発泡弾性層の外表面にチューブ層が形成されていると、現像剤の離型性を向上させることができる。チューブ層は、一層構造とされても、二層以上が積層された積層構造とされてもよい。チューブ層は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。チューブ層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、チューブ層は、金属製スリーブであってもよく、スリーブを形成する金属としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料が挙げられる。
【0067】
チューブ層を形成するには、前記製造方法において、前記材料を発泡弾性層の外径とほぼ同じ内径を有する円筒状に予め形成した管体に、発泡弾性層を挿入して、発泡弾性層の外表面に形成することができる。このようにチューブ層を形成すると、発泡弾性層の表面に存在する凹凸形状に大きく影響されず、平滑な表面を有するチューブ層を形成することができる。なお、チューブ層は、前記材料を、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、発泡弾性層の外周面に塗布した後、硬化及び/又は架橋して、形成されてもよい。
【0068】
次に、この発明に係る弾性ローラを備えた定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。
【0069】
図2に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図3に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。
【0070】
前記定着手段35は、加熱手段57と無端ベルト55とを備えた定着装置である。すなわち、この定着装置35は、図2にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻回された無端ベルト55と、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接する加圧ローラ56と、無端ベルト55に非接触となるように配置され、無端ベルト55を介して外部から定着ローラ53を加熱する加熱手段57とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53及び加圧ローラ56はそれぞれ、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。この定着装置35においてこの発明に係る弾性ローラが定着ローラ53及び加圧ローラ56の少なくとも一方として装着されている。前記加熱手段57は、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法、並びに、誘導加熱方法等が採用される。この加熱手段57は、定着ローラ53における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着装置35のいずれに配置されてもよいが、図2に示されるように、定着ローラ53の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ53に略並行に配置されるのがよい。前記誘導加熱方法には加熱用コイルが用いられ、この加熱用コイルは、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0071】
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給されて静電潜像が現像され、この現像剤像が像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
【0072】
この発明に係る定着装置35及び画像形成装置30は、定着ローラ53及び加圧ローラ56の少なくとも一方としてこの発明に係る弾性ローラが採用されているから、加熱効率が高く、長期間にわたって現像剤を記録体に定着させることができる。
【0073】
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0074】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径15mm×長さ370mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体をギアーオーブンを用いて180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
【0076】
次いで、シリコーン生ゴム「KE-77VBS」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部に対して、表面処理されたシリカ「セライトスーパーフロス」(東新化成株式会社製:商品名)を60質量部配合し、シリコーンゴムコンパウンドを調製した。調製したシリコーンゴムコンパウンド100質量部に、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)3質量部と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)を適量と、有機系発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを調製した。
【0077】
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aとを、押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを250℃で10分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを二次加熱し、常温にて1時間以上放置した後、円筒研削機で外径35mmに研削した。
【0078】
次いで、このゴム硬化体5を図3に示す押圧処理装置80を用いて下記条件にて前記押圧方法1「トラバース押圧ローラによる押圧処理」を施した。この押圧処理装置80におけるトラバース押圧ローラ84は、外径15mmの金属製軸体の外周面に、外径50mm、軸線方向の長さ50mmの鉄(S45C)製円筒体を備えていた。この円筒体の硬度は前記ゴム硬化体よりも大きな値を有していた(具体的には、HRC硬度で33〜43の範囲内であった。)。このトラバース押圧ローラ84のゴム硬化体5に対する押圧量dを5mmに調整した後、ゴム硬化体5を回転数200rpm/minで回転させた状態で、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5における一方の端部から他方の端部へと一方向(図に示された矢印の方向)に、移動速度150mm/minで、移動させた。次いで、同条件で、ゴム硬化体5における前記他方の端部から前記一方の端部へとトラバース押圧ローラ84を逆方向に移動させた。このようにして、外径35mmの発泡弾性層3を備えた、実施例1の弾性ローラを作製した。
【0079】
(実施例2及び3)
前記シリコーンゴムコンパウンドにおける前記シリカの配合量を45質量部(実施例2)又は95質量部(実施例3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各弾性ローラを製造した。
(実施例4及び5)
前記有機系発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部を3.0質量部(実施例4)又は1.0質量部(実施例5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、各弾性ローラを製造した。
【0080】
(比較例1)
前記シリコーンゴムコンパウンドにおける前記シリカの配合量を30質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例2)
前記シリコーンゴムコンパウンドにおける前記シリカの配合量を105質量部に変更して実施例1と同様にして、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させたが、この組成物を成形できず、弾性ローラを製造できなかった。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1におけるゴム硬化体5のアスカーC硬度(1kg荷重)、並びに、製造した実施例1〜5及び比較例1の各弾性ローラのアスカーC硬度(1kg荷重)を前記方法に従って測定した結果を第1表に示す。また、形成された各発泡弾性層3の発泡倍率、平均セル径及び密度を前記方法に従って測定した結果を第1表に示す。各実施例及び比較例の弾性ローラにおける発泡弾性層を形成するために調製した各付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、150mm×500mm×10mmの寸法に2本ロールで成形し、250℃で10分間加熱した後、200℃で7時間二次加硫して、発泡シートを作製した。この発泡シート表面のスキン層面をスライサーで除去して、所定寸法(100mm×20mm×5mm)にカットして試験片とし、前記方法に従って測定した熱伝導率を各実施例及び比較例の弾性ローラの熱伝導率とした。その結果を第1表に示す。
【0082】
(加熱試験)
実施例1〜5及び比較例1の弾性ローラの加熱効率を、下記試験機70を用いて、圧接10分後における弾性ローラの表面温度で、評価した。この試験機70は、図5に示されるように、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを備えている。実施例1〜5及び比較例1の各弾性ローラを試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、保温材73及び内部ヒータ72を起動して加熱ローラ71の表面温度を200℃に調節した。加熱ローラ71の表面温度が200℃に到達した後に、弾性ローラ76を加熱ローラ71に周方向2mmのニップ幅となるように圧接させて、加熱ローラ71を回転速度130rpmで回転させ、圧接後から弾性ローラ76の表面温度を1分毎に10分後まで赤外線温度計で測定した。その結果を第1表に示す。圧接後から10分後の表面温度が180℃以上であれば、従来の定着装置に装着される定着ローラと比較して加熱効率が高く、低加熱効率による実用上の不都合が生じることはない。
【0083】
【表1】

【0084】
第1表に示されるように、実施例1〜5の弾性ローラはいずれもアスカーC硬度が35〜55の範囲内であった。その結果、これらの弾性ローラは、定着装置に装着されたときに大きなニップ圧及びニップ幅を長期間にわたって確保できるから、長期間にわたって初期の機能例えば現像剤定着性を発揮できることが十分に推測できる。
【符号の説明】
【0085】
1、76 弾性ローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
5 加熱硬化体
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 被転写体
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
53 定着ローラ
54 無端ベルト支持ローラ
55 無端ベルト
56 加圧ローラ
57 加熱手段
70 耐久試験装置
71 加熱ローラ
72 内部ヒータ
73 外部ヒータ
74 試験ローラ装着部
75 押圧力調整手段
80、81 押圧処理装置
82 固定手段
83 回転手段
84 トラバース押圧ローラ
85 移動調整手段
86、88 押圧ローラ支持治具
87 プランジ押圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成され、かつ、シリコーンゴムと前記シリコーンゴム100質量部に対して40〜100質量部のシリカ系充填材とを含有する発泡弾性層を備えて成り、
アスカーC硬度が35〜55で、熱伝導率が0.09〜0.175(W/m・k)であることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
定着ローラと、前記定着ローラに巻回された無端ベルトと、前記無端ベルトを介して前記定着ローラに圧接する加圧ローラと、前記無端ベルトに非接触となるように配置され、前記定着ローラを加熱する加熱手段とを備えて成る定着装置であって、
前記定着ローラ及び前記加圧ローラの少なくとも一方は請求項1に記載の弾性ローラであることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−231129(P2010−231129A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81094(P2009−81094)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】