説明

弾性体の取付構造

【課題】弾性体をガタが生じないように載置する。
【解決手段】開放ポケット5の底壁5aの四隅近傍に係合孔6を配設し、底壁上に載置するマット7の下面の対応する位置に前側と後側とでそれぞれ対となる各係合突部8・9を一体に設け、対となる係合突部に互いに対峙する平面部8a・9aを形成し、平面部に突条部8d・9dを突設し、平面部間の長さc1・c2および突条部間の長さb1・b2と各一対の係合孔6の最接近部分間の長さ(a1・a2)との関係をc1≧a1>b1(c2≧a2>b2)とする。一対の係合突部同士が、係合孔への挿入状態で互いに離される向きに弾性変形し、その弾性復元力により一対の係合突部を通る向きのガタを無くすことができ、弾性体に一体に係合突部を設けると共に内装部材に係合孔を設けるという簡単な構造で、弾性体の載置状態におけるガタ付きを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取り付けられた内装部材の一面に載置状態に取り付けられる弾性体の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車体には種々の内装部材が装着されており、例えば自動車のインストルメントパネルに内装部材としての収納トレイを設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−267145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように設けられた収納トレイにあっては、その中に収容された物品が振動などで外へ飛び出さないようにする必要があり、上記特許文献1にあっては、保持手段としてゴム系などの弾性部材を貼設した場合には摩擦力によって保持し得るとしている。一方、ポケット状の収容ポケットにおいて、例えばポケットの底面を、奥に至るに連れて下側になるように下向き傾斜に設けるようにした場合には、合成樹脂製の素地のままの場合には摩擦抵抗が小さいため、大きな加減速が生じて収容物が出てしまう虞がある。そのため、上記と同様に大きな摩擦抵抗が得られるゴムなどの弾性体からなるマットを載置したものがある。
【0004】
その場合に、単にマットを載置しただけではマット自体が横滑りする虞があるため、マットを収容ポケットに固定する必要がある。固定手段としてはねじ止めが確実であるが、取付作業が煩雑化してしまう。一方、マットの載置面(下面)に突部を形成し、収容ポケットの底面の対応する位置に係合孔を設け、突部を係合孔に挿入してマットの横滑りを防止する取付構造があり、その場合には取付作業は簡単である。
【0005】
しかしながら、弾性体からなるマットに設ける突部を高精度に形成することは、困難であり、加工コストが高騰化してしまうため、突部と係合孔との間にはガタが生じるという問題があった。ガタによる僅かな動きであっても、振動による上記収容物の飛び出しに影響があるため、そのようなガタをできるだけ無くすことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、弾性体をガタが生じないように載置し得ることを実現するために本発明に於いては、車体に取り付けられた内装部材(5)の一面に弾性体(7)を載置状態に取り付ける弾性体の取付構造であって、前記弾性体(7)の載置面(7a)に互いに離間するように設けられた少なくとも一対の係合突部(8・9)が一体に形成され、前記内装部材(5)が、前記係合突部(8・9)が挿入状態で係合し得る同数の係合孔(6)を有し、前記一対の係合突部(8・9)の最接近部分間の長さ(b1・b2)が、対応する一対の前記係合孔(6)の最接近部分間の長さ(a1・a2)よりも短いものとした。
【0007】
特に、前記一対の係合突部(8・9)の互いに対峙する部分にそれぞれ平面部(8a・9a)が形成され、前記一対の係合突部(8・9)の少なくとも一方の前記平面部(8a・9a)に突条部(8d・9d)が突設され、前記一対の係合突部(8・9)の前記平面部(8a・9a)間の長さ(c1・c2)が前記一対の前記係合孔(6)の最接近部分間の長さ(a1・a2)と同等もしくは長いと良く、さらに、前記係合突部(8・9)が、前記平面部(8a・9a)に沿って前記載置面(7a)に対して傾斜して設けられていると良い。また、前記係合突部(8・9)の突出方向の軸線を横切る断面形状が半円状部分を有すると良い。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、弾性体に設けた少なくとも一対の係合突部と、内装部材に設けた同数の係合孔とが、それぞれの最接近部分間の長さで、係合突部間の方を短くしたことから、一対の係合突部同士が、係合孔への挿入状態で互いに離される向きに弾性変形し得るため、その弾性復元力により一対の係合突部を通る向きのガタを無くすことができ、弾性体に一体に係合突部を設けると共に内装部材に係合孔を設けるという簡単な構造で、弾性体の載置状態におけるガタ付きを防止することができる。
【0009】
特に、一対の係合突部に互いに対峙する平面部を形成し、少なくとも一方の平面部に突状部を設けることにより、一対の係合突部間の最接近部分の一部が突状部の突出端となるため、係合孔の対応する縁の形状を簡単な直線状に形成しても、突状部が係合孔に係合することができ、平面部で係合させる場合よりも寸法管理が容易になる。さらに、係合突部が平面部に沿って載置面に対して傾斜していることにより、係合突部が平面部に直交する向きに傾斜することから、例えば一対の係合突部を平面部に沿う方向にさらに一対配設して計4個の係合突部を設けた場合に、平面部に沿う方向のガタを傾斜に対する弾性変形により吸収することができる。
【0010】
また、係合突部をその断面形状に半円状部分を有するように形成することにより、平面部以外の半円状部分に拡頭形状を形成することができ、半円周に渡って係合孔に抜け止めされるようになり、抜け止め構造も容易に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車のセンターコンソール1を示す要部斜視図である。センターコンソール1は、運転席と助手席との前方にあるインストルメントパネル2の車幅方向中央部分に配設されており、図ではインストルメントパネル2と一体的に車体に取り付けられる内装部材としてのコントロールパネル3と、コントロールパネル3の下側に配設されかつ互いに積み重ねられた状態に設けられた収容ポケットとしての蓋付きポケット4および開放ポケット5とにより構成されている。
【0012】
図示例のコントロールパネル3にあっては、上部に空調装置の吹き出し口3aが設けられ、その下側部分に複数の搭載機器用の各開口3b・3cが設けられている。例えば、その一つの開口3bには図示されない表示装置が臨み、他の開口3bには図示されないオーディオ機器の操作パネル面が臨むようにされている。なお、コントロールパネル3は、車幅方向両縁部の所定位置に一体的に設けられた複数の結合用耳部3aを介してねじ止めなどによりインストルメントパネル2と一体化されるようになっている。
【0013】
上記した開放ポケット5にあっては、図2に示されるように、左右と奥の三方に壁が立設され、センターコンソール1としての組み付け状態で車室側に臨む前面と蓋付きポケット4の下面に臨むことになる上面とが開放された矩形箱状に形成されている。そして、その底壁5aの四隅近傍に、図において前側と後側とにそれぞれ一対の係合孔6が設けられている。
【0014】
開放ポケット5の底壁5aの表面には、図3に示される弾性体としてのマット7が載置される。マット7は、自重で撓み得る程度の可撓性を有する例えばゴム製の薄板状弾性体からなるものであって良い。なお、開放ポケット5の底壁5aの表面は、車室側となる前面側が一段高くなるように形成されており、マット7もその形状に合わせた形状に形成されている。また、マット7における底壁5aの前縁部分に対応する端部7aは、底壁5aの前側に垂れ下がるように下向きに曲折されている。
【0015】
図4・図5に示されるように、マット7の下面となる載置面7bには、上記各係合孔6に対応する位置であって、組み付け状態で開口側となる一対の前側係合突部8と、奥側となる一対の後側係合突部9とがそれぞれ突設されている。また、前側係合突部8および後側係合突部9にあっては、それぞれ対同士で対称形に形成されている。
【0016】
前側係合突部8および後側係合突部9にあっては上記対称形の他に突出長さの違いを除いて略同一形状に形成されているため、一方の後側係合突部9を示す図6を参照して、その形状について説明する。図6に示されるように、係合突部9はD字形断面形状の筒形をなし、D字形の直線部分が全体として平坦面からなる平面部9aにより形成されていると共に、載置面7bから突出する軸部9bと、軸部9bの突出端側に同軸に設けられた拡頭部9cとを有している。
【0017】
軸部9bは同一太さに形成され、拡頭部9cは、平面部9aおいて軸部9bより拡幅された台形状に形成されている。そして、平面部9aには、係合突部9の突出方向に延在するリブ形状の突条部9dが突設されている。上記したように各係合突部9(8)にあっては対同士で対称形であることから、各平面部9aは互いに対峙し、各突条部9dは互いに対向する向きに突設されている。
【0018】
そして、図2および図5に示されるように、各一対の前側係合孔6および後側係合孔6の各最接近部分間の長さをa1・a2とし、各一対の前側係合突部8および後側係合突部9の各最接近部分となる互いに対向する各突条部8d・9d間の長さをb1・b2とし、同じく互いに対峙する各平面部8a・9a間の長さをc1・c2とすると、c1≧a1>b1(c2≧a2>b2)の関係を有するようにそれぞれ設定されている。
【0019】
図7に示されるように係合突部9が係合孔6に挿入した組み付け状態において、拡頭部9cが係合孔6の外側(底壁5aの裏側)に位置して、その拡径部分が底壁5aの係合孔6の縁に係合することによりマット7が抜け止めされる。そして、上記各長さの関係c2>a2>b2により、突条部9dが係合孔6の内周面に押し付けられるように係合突部9が弾性変形するため、その弾性復元力により一対の係合突部9間に互いに相手に向かう係合力が係合孔6に作用する。これにより、係合突部9(8)と係合孔6との間に加工誤差などがあって、係合孔6と平面部9aとの間に加工誤差による間隙が生じる場合においても、前記加工誤差等により生じ得る間隙よりも突条部9d(8d)の高さが十分大きければ上記長さの関係が保持され、図5の矢印Sに示されるように一対の係合突部9(8)同士を結ぶ線の方向へのガタを防止することができる。また、前記一対の係合突部9(8)同士を結ぶ線と直交する方向へのガタを抑えるために、前記平面部8a・9a間の距離c1およびc2は加工誤差を考慮した上で出来るだけa1・a2と一致するよう設定することが好ましい。一致する場合においては、前記突条部に加えて平面部8a・9aの両端部によってより高い位置規制効果を奏する。
【0020】
また、係合突部8・9は、図4に示されるように、平面部8a・9aに沿って載置面7bに対して所定角度θ傾斜(後傾)している。これにより、図示例のように各一対の係合突部8・9をマット7の四隅に配設した場合に、係合孔6が底壁5bの表面(載置面7b)に対して直交して穿設されていることにより、取付状態で係合突部8・9の傾斜に対する弾性変形が生じ得るため、上記一対の係合突部9(8)同士を結ぶ線に直交する係合突部8・9同士を結ぶ線の方向に対してもガタ付きを防止することができる。また、開放ポケット5を車体に組み付けた後にマット7を取り付ける場合には、開放ポケット5の開口側から奥に向けて滑らすようにマット7を移動させて取り付けることにより、係合突部8・9を係合孔6に容易に挿入させることが可能となり、取付作業を簡単に行うことができるという効果もある。
【0021】
また、係合孔6はD字形の孔に形成され、係合突部8・9も対応するD字形の断面形状となるように半円状部分を有する形状に形成されていることから、D字形の直線部分により平面部8d・9dを形成した場合に、半円状部分に拡頭部8c・9cを形成することができ、対応する係合孔6の半円周部分に拡頭部8c・9cを係合させることができる。平面部8d・9dにより上記長さの関係を確保できると共に、半円周部分の係合により抜け止めを確保でき、抜け止めかつガタ付き防止を好適に達成することができる。
【0022】
なお、図示例の係合孔6および係合突部8・9の軸線に直交する断面形状は、それぞれD字形に形成されているが、D字形に限定されるものではなく、例えば四角形断面であっても良い。また、突条部8d・9dを対となる各係合突部8・9に設けたが、いずれか一方に設けるだけでも本発明の効果を奏し得る
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用された自動車のセンターコンソールを示す要部斜視図である。
【図2】本発明に基づく開放ポケットを正面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に基づくマットを表面側から見た斜視図である。
【図4】図3の矢印IV線から見たマットの側面図である。
【図5】図4の矢印V線から見たマットの下面を示す図である。
【図6】図5の矢印VI線から見た係合突部を示す要部拡大斜視図である。
【図7】図1の矢印VII−VII線に沿って見た要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
5 開放ポケット(内装部材)
7 マット(弾性体)
7a 載置面
8・9 係合突部
8a・9a 平面部
8d・9d 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた内装部材の一面に弾性体を載置状態に取り付ける弾性体の取付構造であって、
前記弾性体の載置面に互いに離間するように設けられた少なくとも一対の係合突部が一体に形成され、
前記内装部材が、前記係合突部が挿入状態で係合し得る同数の係合孔を有し、
前記一対の係合突部の最接近部分間の長さが、対応する一対の前記係合孔の最接近部分間の長さよりも短いことを特徴とする弾性体の取付構造。
【請求項2】
前記一対の係合突部の互いに対峙する部分にそれぞれ平面部が形成され、
前記一対の係合突部の少なくとも一方の前記平面部に突条部が突設され、
前記一対の係合突部の前記平面部間の長さが前記一対の前記係合孔の最接近部分間の長さと同等もしくは長いことを特徴とする請求項1に記載の弾性体の取付構造。
【請求項3】
前記係合突部が、前記平面部に沿って前記載置面に対して傾斜して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の弾性体の取付構造。
【請求項4】
前記係合突部の突出方向の軸線を横切る断面形状が半円状部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弾性体の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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