説明

弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置及び制御方法

【課題】 弾性体アクチュエータで駆動される可動機構を応答性良くかつ位置決め精度良く制御できる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置及び方法を提供する。
【解決手段】 流体圧駆動アクチュエータ1の内部圧力を圧力計測手段9で計測し、流体圧駆動アクチュエータにより発生する駆動トルクをトルクセンサー7で計測し、可動機構の変位量を計測し、変位の目標値と計測値とが入力されて位置誤差を位置誤差補償手段12で補償し、位置誤差補償手段の出力と駆動トルクの計測値とが入力されて駆動トルク誤差を駆動トルク誤差補償手段25で補償し、駆動トルク誤差補償手段の出力と圧力差の計測値とが入力され圧力差誤差を圧力差誤差補償手段15で補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧駆動アクチュエータ等、弾性体の変形により動作する弾性体アクチュエータにより駆動される可動機構を制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットロボットなどの家庭用ロボットの開発が盛んに行われており、将来は家事支援ロボット等、より実用的な家庭用ロボットが実用化されるものと期待されている。家庭用ロボットは、家庭内に入り、人間と共生する必要があるため、従来の産業用ロボットなどとは必要とされる仕様が異なる。
【0003】
産業用ロボットでは、電気モータや減速器が用いられて駆動機構が駆動され、高ゲインのフィードバック制御により、繰り返し精度0.1mm等といった高い手先位置精度が実現されている。しかしながら、このような電気モータにより駆動される可動機構は、剛性が高く、柔らかさに欠ける場合が多く、安全性という面で問題が多い。
【0004】
これに対し、家庭用ロボットでは、繰り返し精度0.1mm等といった高い精度は必ずしも必要とせず、人間との接触時に危害を与えないなど安全性が重視される。したがって、従来の産業用ロボットのように電気モータにより駆動される可動機構は、家庭用ロボットなど安全性が重視される分野に適しているとは言えず、柔軟で安全なロボットアームが必要とされている。
【0005】
こうした課題に対し、例えば、マッキベン型の空気圧アクチュエータを利用したロボットアームが提案されている。マッキベン型の空気圧アクチュエータは、ゴム材料で構成された管状弾性体の外表面に繊維コードで構成された拘束手段が配設され、管状弾性体の両端部を封止部材で気密封止する構造となっている。流体注入出手段を通じて空気等の圧縮性流体により内圧を管状弾性体の内部空間に与えると、管状弾性体が主に半径方向に膨張しようとするが、拘束手段の作用により、管状弾性体の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮する。このマッキベン型のアクチュエータは主に弾性体で構成されるため、柔軟性があり、安全で軽量なアクチュエータであるという特徴を有する。
【0006】
さらに、このマッキベン型のアクチュエータは出力重量比が大きく、軽量でありながら高出力である特徴も有している。したがって、ロボットアーム等の可動機構を駆動する場合に減速機構を使わず、リンク機構等によりダイレクトドライブ的に駆動することが可能であり、減速機が介在することから来る関節剛性のかたさは無く、アクチュエータの柔軟性も相まって、柔軟な可動機構を実現することができる。
【0007】
しかしながら、マッキベン型のアクチュエータ等、空気等の流体圧によって動作する流体圧駆動アクチュエータでは、流体の圧縮性による弾性的性質や流路抵抗等の影響により応答性が悪い等、弾性体アクチュエータは制御が難しいという課題をかかえている。
【0008】
こうした課題に対し、従来技術としては、特許文献1において、サーボモータと流体圧駆動アクチュエータを組み合わせて駆動するロボットアームについて、遅延回路を具備することにより所望の軌道を描くことができる制御装置を開示している。
【0009】
また、減速機構を使わず、リンク機構等によりダイレクトドライブ的に駆動する場合、アーム等の構造材に作用する重力、慣性力、遠心力、コリオリ力等の影響が無視できなくなり制御精度が悪化するため、計算トルク法等の、動力学を考慮した制御法により制御する必要があり、さらに、正確な関節トルクを実現するために関節トルクフィードバック制御等を行う必要がある。
【0010】
こうした課題に対し、従来技術としては、特許文献2において、モータで駆動するロボットアームについて、計算トルク法を用いるとともに、トルク目標値とトルク現在値の差であるトルク偏差に基づき演算したトルク制御値からモータの現在角速度に基づく値を減算した指令値をモータに供給するトルクフィードバック制御を行うことにより、安定かつ高精度なトルク制御を実現し、ロボットアームに望みの運動をさせることが可能な制御装置を開示している。
【0011】
【特許文献1】特許公報第2583272号
【特許文献2】特許公報第3324298号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された遅延回路を具備する制御装置では、目標動作に対する遅延が常に発生するため、応答性が悪く、リアルタイム性が必要な作業を実行することはできない。また、サーボモータと流体駆動アクチュエータの組み合わせの場合のみ効果を発揮し、流体駆動アクチュエータのみで構成されるロボットアームでは効果を発揮することはできない。
【0013】
また、特許文献2に開示されたトルクフィードバック制御系を具備する制御装置は、モータで駆動されるロボットアームに対して有効であり、そのままでは弾性体アクチュエータにより駆動されるロボットアームに適用することはできない。
【0014】
従って、本発明の目的は、上記従来の課題を解決し、弾性体アクチュエータで駆動されるロボットアーム等の可動機構を応答性良く、かつ、重力、慣性力、遠心力、コリオリ力等の影響なく位置や力を高精度で制御できる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0016】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償手段により補償された上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0019】
本発明の第13態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値と上記計測された上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値とから、出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【0020】
本発明の第14態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記計測された上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【0021】
本発明の第15態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力、及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1態様の制御装置によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少ない、高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【0023】
また、本発明の第2態様の制御装置によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を上記駆動力フィードバック制御系の内部に構成し、かつ、目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【0024】
また、本発明の第3態様の制御装置によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を上記駆動力フィードバック制御系とは独立に構成し、かつ、目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【0025】
また、本発明の第13態様の制御方法によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少ない、高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【0026】
また、本発明の第14態様の制御方法によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を上記駆動力フィードバック制御系の内部に構成し、かつ、目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【0027】
また、本発明の第15態様の制御方法によれば、駆動力誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力をフィードバックする駆動力フィードバック制御系を構成し、かつ、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする内部状態フィードバック制御系を上記駆動力フィードバック制御系とは独立に構成し、かつ、目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度な弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明にかかる実施の形態を説明する前に、本発明の種々の態様について、まず、説明する。
【0029】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0030】
本発明の第2態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0031】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償手段により補償された上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0032】
本発明の第4態様によれば、上記目標内部状態決定手段は、上記出力の目標値が入力されるとともに上記内部状態の目標値を決定することを特徴とする第2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0033】
本発明の第5態様によれば、上記目標内部状態決定手段は、上記弾性体アクチュエータの上記出力と上記弾性体アクチュエータの上記内部状態との関係を多項式で近似し、上記多項式により上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値より上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を計算して決定することを特徴とする第2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0034】
本発明の第6態様によれば、上記目標内部状態決定手段は、上記弾性体アクチュエータの上記出力と上記弾性体アクチュエータの上記内部状態との関係をテーブルとして記憶するメモリをさらに備え、上記テーブルにより上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値より上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定することを特徴とする第2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0035】
本発明の第7態様によれば、上記弾性体アクチュエータは、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータであること特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0036】
本発明の第8態様によれば、上記流体圧駆動アクチュエータは、中空弾性体と、上記中空弾性体の気密封止を行う1組の封止部材と、上記中空弾性体の中空内部に対して流体の注入あるいは注出が可能となる流体通過部材とを有する弾性膨張収縮構造体であること特徴とする第7の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0037】
本発明の第9態様によれば、上記弾性体アクチュエータの上記内部状態は流体圧力であり、上記内部状態計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記流体圧力を計測する圧力計測手段であること特徴とする第7の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0038】
本発明の第10態様によれば、上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの変位であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記変位を計測する変位計測手段であること特徴とする第1又は2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0039】
本発明の第11態様によれば、上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの変位速度であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記変位速度を計測する変位速度計測手段であることを特徴とする第1又は2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0040】
本発明の第12態様によれば、上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの力であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの力を計測する力計測手段であること特徴とする第1又は2又は3の態様に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を提供する。
【0041】
本発明の第13態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値と上記計測された上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値とから、出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【0042】
本発明の第14態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記計測された上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【0043】
本発明の第15態様によれば、弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力、及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法を提供する。
【0044】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。図1において、101は目標出力生成手段であり、弾性膨張収縮構造体1より構成される弾性体アクチュエータにより駆動される弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の変位、発生力等の出力の目標値を生成する。104は弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に接続される出力計測手段であり、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の出力の計測値を計測して、計測値を出力誤差補償手段103にそれぞれ入力する。103は目標出力生成手段101からの目標値が入力される出力誤差補償手段であり、出力計測手段104により計測される弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の出力の計測値を目標値に追従させるように制御を行う。105は弾性体アクチュエータが発生する駆動力の誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段であり、出力誤差補償手段103の出力と、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に接続された駆動力計測手段107により計測された駆動力との差が入力される。106は駆動力誤差補償手段105からの駆動力誤差補償情報の出力情報と内部状態計測手段108からの内部状態計測値の差が入力されて内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段であり、内部状態誤差補償手段106からの内部状態誤差補償情報の出力情報がそれぞれの弾性体アクチュエータ1に入力されてそれぞれの弾性体アクチュエータ1の内部状態計測値をそれぞれの目標値に追従させるように制御を行う。108は弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102を構成する各弾性体アクチュエータである弾性膨張収縮構造体1に接続される内部状態計測手段であり、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の各弾性膨張収縮構造体1の内部圧力である内部状態計測値をそれぞれ測定して、内部状態計測値を内部状態誤差補償手段106に入力する。
【0045】
次に、第1実施形態の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の具体的な例について、制御対象として弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の一例であるロボットアーム10の制御装置を例に取り、説明を行う。
【0046】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の制御対象となるロボットアーム10の構成を示す図である。図2において、1−1a、1−1b、1−2a、1−2b、1−3a、1−3b、1−4a、1−4b、1−5a、1−5b、1−6a、1−6b(これらは個別の弾性膨張収縮構造体に対する参照符号であり、代表的に弾性膨張収縮構造体を指し示すときには参照符号1で示す。)は弾性膨張収縮構造体である。弾性膨張収縮構造体1は図3に示すように、ゴム材料で構成されて駆動部として機能する管状の中空弾性体2の外表面に、材料的には伸びにくい樹脂又は金属の繊維コードで網目状に編んで、管状弾性体2の膨張による半径方向の変形が軸方向の長さの収縮に変換される一方、管状弾性体2の収縮による半径方向の変形が軸方向の長さの膨張に変換されるように構成された変形方向規制部材3が配設され、管状弾性体2の両端部を封止部材4でそれぞれ気密封止する構造となっている。内部に圧縮性流体が通過する流体の流路を有して上記弾性体2の中空内部に対して流体の注入あるいは注出が可能となる管状の流体通過部材5を通じて空気等の圧縮性流体を供給し、供給された圧縮性流体により内圧を管状弾性体2の内部空間に与えると、管状弾性体2が主に半径方向に膨張しようとするが、変形方向規制部材3の作用により、管状弾性体2の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮するため、直動駆動の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102として利用可能である。
【0047】
図2のロボットアーム10では、1組の弾性膨張収縮構造体1,1を関節軸を支点に対向するように配設し、1組の弾性膨張収縮構造体1,1のうちのどちらか一方の弾性膨張収縮構造体1が収縮しかつ他方の弾性膨張収縮構造体1が伸張すると、支点を介して力が作用して関節軸が回転する拮抗型駆動構造とすることにより、関節軸での正逆回転運動を実現することができる。具体的には、弾性膨張収縮構造体1−1aと弾性膨張収縮構造体1−1b(弾性膨張収縮構造体1−1bは弾性膨張収縮構造体1−1aの背後に位置するため図示せず。)の拮抗駆動により第1関節軸6−1を正逆回転駆動し、弾性膨張収縮構造体1−2aと弾性膨張収縮構造体1−2bの拮抗駆動により第2関節軸6−2を正逆回転駆動し、弾性膨張収縮構造体1−3aと弾性膨張収縮構造体1−3bの拮抗駆動により第3関節軸6−3を正逆回転駆動し、弾性膨張収縮構造体1−4aと弾性膨張収縮構造体1−4bの拮抗駆動により第4関節軸6−4を正逆回転駆動し、弾性膨張収縮構造体1−5aと弾性膨張収縮構造体1−5bの拮抗駆動により第5関節軸6−5を正逆回転駆動し、弾性膨張収縮構造体1−6aと弾性膨張収縮構造体1−6bの拮抗駆動により第6関節軸6−6を正逆回転駆動する構造となっている。
【0048】
図2の9−1a,9−1b,9−2a,9−2b,9−3a,9−3b,9−4a,9−4b,9−5a,9−5b,9−6a,9−6bは、弾性膨張収縮構造体1−1a、1−1b、1−2a、1−2b、1−3a、1−3b、1−4a、1−4b、1−5a、1−5b、1−6a、1−6bのそれぞれの内部状態計測手段の一例である圧力センサであり、それぞれの流体通過部材5(流体注入出口)に配設され、それぞれの弾性膨張収縮構造体内の圧力を計測する。
【0049】
詳しくは、上記ロボットアーム10は、6自由度のロボットアームであって、固定壁301に対して、上下方向軸沿いに横方向沿いの平面内で正逆回転する第1関節軸6−1と、上下方向沿いの平面内で正逆回転する第2関節軸6−2と、第2腕308と第1腕311との間で上下方向沿いの平面内で相互に正逆回転とする第3関節軸6−3と、第2腕308と第1腕311との間で第3関節軸6−3と直交する軸方向に正逆回転とする第4関節軸6−4と、第1腕311と手313との間で上下方向沿いの平面内で相互に正逆回転とする第5関節軸6−5と、第1腕311と手313との間で第5関節軸6−5と直交する軸方向に正逆回転とする第6関節軸6−6とより構成されている。
【0050】
第1関節軸6−1では、上下端部が軸受け304と305で回転自在にかつ上下方向沿いに支持された回転軸303の両側に円形支持体302,302が回転自在に連結され、かつ、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1b(ただし、弾性膨張収縮構造体1−1bは弾性膨張収縮構造体1−1aの背後に配設されるため図示せず。)の各一端部が固定壁301に連結されるとともに各他端部が上記各円形支持体302の支持軸314に連結されている。よって、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bの拮抗駆動により、第1関節軸6−1の回転軸303の上下軸Z回りに横方向沿いの平面内でロボットアームの第1腕311と第2腕308と手313とを一体的に正逆回転運動させることができる。なお、上側の軸受け305は支持棒306で固定壁301に支持されている。
【0051】
第2関節軸6−2では、回転軸303の両側に固定された2つの円形支持体302,302と、回転軸303の固定壁301側に回転軸303の長手方向と直交して固定された支持体307,307との間には、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bが連結されて、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bの拮抗駆動により、第2関節軸6−2の支持軸314の横軸回りに上下方向沿い面内でロボットアーム10の第1腕311と第2腕308と手313とを一体的に正逆回転させる。
【0052】
第3関節軸6−3では、2つの円形支持体302,302に一端が固定された第2腕用リンク308の円形支持体302側には、支持体309,309が第2腕用リンク308の長手方向と直交して固定されるとともに、第2腕用リンク308の先端側には、第1腕用リンク311の一端に第1腕用リンク311の長手方向に直交して固定された支持体310が回転可能に連結されている。第2腕用リンク308の支持体309,309と、第1腕用リンク311の一端に固定された支持体310との間には、弾性膨張収縮構造体1−3a及び1−3bが連結されて、弾性膨張収縮構造体1−3a及び1−3bの拮抗駆動により、第3関節軸6−3の支持軸315の横軸回りに上下方向沿い面内でロボットアーム10の第1腕311と第2腕308とを相対的に正逆回転させる。
【0053】
第4関節軸6−4では、2つの円形支持体302,302に一端が固定された第2腕用リンク308の円形支持体302側でかつ支持体309,309と第2腕用リンク308の長手方向とにそれぞれ直交して支持体325,325が固定され、この支持体325,325と、第1腕用リンク311の一端に固定された支持体310との間には、弾性膨張収縮構造体1−4a及び1−4bが連結されて、弾性膨張収縮構造体1−4a及び1−4bの拮抗駆動により、第3関節軸6−3と直交する第4関節軸6−4回りにロボットアーム10の第1腕311と第2腕308とを相対的に正逆回転させる。
【0054】
第5関節軸6−5では、第1腕311の支持体310と、手313の一端に固定されかつ第1腕311に回転可能に連結された支持体312との間には、弾性膨張収縮構造体1−5a及び1−5bが連結されて、弾性膨張収縮構造体1−5a及び1−5bの拮抗駆動により、第5関節軸6−5の支持軸326の横軸回りに上下方向沿い面内で手313を第1腕311に対して正逆回転させる。
【0055】
第6関節軸6−6では、第1腕311の支持体310と、手313の一端に固定されかつ第1腕311に回転可能に連結された支持体312との間には、弾性膨張収縮構造体1−5a及び1−5bとは90度位相を異ならせて弾性膨張収縮構造体1−6a及び1−6bが連結されて、弾性膨張収縮構造体1−6a及び1−6bの拮抗駆動により、第5関節軸6−5と直交する第6関節軸6−6回りに手313を第1腕311に対して正逆回転させる。
【0056】
弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1b、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2b、弾性膨張収縮構造体1−3a及び1−3b、弾性膨張収縮構造体1−4a及び1−4b、弾性膨張収縮構造体1−5a及び1−5b、弾性膨張収縮構造体1−6a及び1−6bのそれぞれには、後述するように、流量比例電磁弁18が接続され、すべての流量比例電磁弁18は制御コンピュータ19に接続されて、制御コンピュータ19の制御により、流量比例電磁弁18を介して、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1b、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2b、弾性膨張収縮構造体1−3a及び1−3b、弾性膨張収縮構造体1−4a及び1−4b、弾性膨張収縮構造体1−5a及び1−5b、弾性膨張収縮構造体1−6a及び1−6bのそれぞれの収縮・伸張動作を制御する。また、各関節軸には出力計測手段の一例である変位計測手段の一例としてのエンコーダ8−1、8−2,8−3,8−4,8−5,8−6及び、駆動力計測手段の一例である駆動トルク計測手段の一例としてのトルクセンサー7−1,7−2,7−3,7−4,7−5,7−6が配設されており、エンコーダ8(エンコーダ8−1、8−2,8−3,8−4,8−5,8−6の総称。)により関節軸の関節角度が、トルクセンサー7(トルクセンサー7−1,7−2,7−3,7−4,7−5,7−6の総称。)により弾性膨張収縮構造体を拮抗駆動させることで発生する駆動トルクが測定可能である。また、各弾性膨張収縮構造体1には内部状態計測手段107の一例である圧力計測手段の一例としての圧力センサ9(圧力センサ9−1a,9−1b,9−2a,9−2b,9−3a,9−3b,9−4a,9−4b,9−5a,9−5b,9−6a,9−6bの総称。)が配設されており、圧力センサ9により各弾性膨張収縮構造体1の駆動により変化する上記弾性膨張収縮構造体1の内部圧力(内部状態の一例)が測定可能となっている。
【0057】
以上のような構造とすれば、多自由度を生かし、物体の把持・運搬など、ロボットアーム10として基本的な機能を実現することができる。
【0058】
図4は本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアーム10を駆動するための空気圧供給系の構成を示す図である。図4ではロボットアーム10の第3関節軸を正逆回転駆動する部分のみを記し、他の部分は省略している。図4において、16は例えばコンプレッサー等の空気圧源、17は空気圧フィルタ17a、空気圧減圧弁17b、及び空気圧用ルブリケータ17cが1組になった空気圧調整ユニットである。18は例えば電磁石の力でスプール弁などを駆動することで流量を制御する5ポート流量制御電磁弁である。19は制御部の一例としての例えば一般的なパーソナルコンピュータにより構成された制御コンピュータであり、D/Aボード20が搭載されており、5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値を出力することにより、それぞれの流体通過部材5を流れるそれぞれの空気の流量を独立して制御可能とする。また、制御コンピュータ19には、ロボットアーム10の動作プログラムなどを予め記憶させるメモリ19aが搭載されている。
【0059】
次に、図4に示す空気圧供給系の動作について説明する。空気圧源16により生成された高圧空気は、空気圧調整ユニット17により減圧され、例えば600kPaといった一定圧力に調整され、5ポート流量制御電磁弁18に供給される。5ポート流量制御電磁弁18の開度は、制御コンピュータ19よりD/Aボード20を介して出力される電圧指令値に比例して制御される。制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に正の電圧指令値が入力された場合には、空気圧回路記号のAで示した状態になり、空気圧源16側から弾性膨張収縮構造体1−3a側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気が弾性膨張収縮構造体1−3a側に供給される。また、弾性膨張収縮構造体1−3b側は、大気圧側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気流が弾性膨張収縮構造体1−3b側から大気中へ排気される。したがって、図4に示すように、弾性膨張収縮構造体1−3aの全長が縮み、弾性膨張収縮構造体1−3bの全長が伸びることにより、電圧指令値の絶対値に比例した速度で第3関節軸6−3は右回転運動を行う。一方、制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に負の電圧指令値が入力された場合には、空気圧回路記号のBで示した状態になり、弾性膨張収縮構造体の動作は逆となり(すなわち、弾性膨張収縮構造体1−3aの全長が伸び、弾性膨張収縮構造体1−3bの全長が縮むことにより)、第3関節軸6−3は左回転運動を行う。
【0060】
すなわち、5ポート流量制御電磁弁18から弾性膨張収縮構造体1側に供給された空気流は、流体通過部材5により封止部材4を通過し、管状弾性体2の内部に到達し、管状弾性体2の内圧を発生させる。管状弾性体2は発生した内圧により膨張するが、変形方向規制部材3の網目状に組まれた繊維コードの拘束作用(規制作用)により、膨張による半径方向の変形が規制されて軸方向の長さの収縮に変換され、図3の下側に示すように弾性膨張収縮構造体1の全長が短くなる。一方、5ポート流量制御電磁弁18から空気を大気中に排気し、管状弾性体2の内圧を減ずれば、管状弾性体2の弾性力により復元して膨張が解消されて、弾性膨張収縮構造体1の全長は図3の上側に示すように伸張する。この結果、図3において、右端で固定されていると考えると、上記伸縮により、管状弾性体2の左端では距離dの差があることになる。したがって、第1実施形態における弾性膨張収縮構造体1は、空気圧を供給制御することにより直動変位のアクチュエータとして機能させることが可能である。伸張・短縮量は弾性膨張収縮構造体1の内圧に概ね比例するので、図4のように制御コンピュータ19で5ポート流量制御電磁弁18を制御して弾性膨張収縮構造体1に供給される空気流量を制御すれば、弾性膨張収縮構造体1の全長を制御できることになる。
【0061】
図2に示すロボットアーム10では、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bによる拮抗駆動、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bによる拮抗駆動、弾性膨張収縮構造体1−3aと1−3bによる拮抗駆動、弾性膨張収縮構造体1−4aと1−4bによる拮抗駆動、弾性膨張収縮構造体1−5aと1−5bによる拮抗駆動、弾性膨張収縮構造体1−6aと1−6bによる拮抗駆動のために、図5に示すように、拮抗する弾性膨張収縮構造体1それぞれに対して5ポート流量制御電磁弁18が配設されて同様の空気圧供給系が構成されており、制御コンピュータ19よりD/Aボード20を介してそれぞれの5ポート流量制御電磁弁18に出力される電圧指令値により、ロボットアーム10のすべての関節軸を同時に正逆回転駆動することができるようになっている。
【0062】
図6は、例えば上記制御コンピュータ19内に備えられた、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構成を示す図である。ただし、図6において、10は弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であり、かつ弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の一例であって図2に示すロボットアームである。ロボットアーム10からはそれぞれの関節軸のエンコーダ8により計測される関節角の現在値(関節角度ベクトル)q=[q,q,q,q,q,qと、それぞれの関節軸に配設されたトルクセンサー7により計測される駆動トルクの現在値τ=[τ,τ,τ,τ,τ,τで発生する駆動トルクと、それぞれの弾性膨張収縮構造体1の圧力センサ9により計測される弾性膨張収縮構造体1の内圧P=[P1a,P1b,P2a,P2b,P3a,P3b,P4a,P4b,P5a,P5b,P6a,P6bとが出力される。ただし、q,q,q,q,q,qは、それぞれ、第1関節軸6−1、第2関節軸6−2、第3関節軸6−3、第4関節軸6−4、第5関節軸6−5、第6関節軸6−6の関節角度である。また、τ,τ,τ,τ,τ,τは、それぞれ、第1関節軸6−1、第2関節軸6−2、第3関節軸6−3、第4関節軸6−4、第5関節軸6−5、第6関節軸6−6を回転させる駆動トルクである。また、P1a,P1b,P2a,P2b,P3a,P3b,P4a,P4b,P5a,P5b,P6a,P6bはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1a、1−1b、1−2a、1−2b、1−3a、1−3b、1−4a、1−4b、1−5a、1−5b、1−6a、1−6bの内圧である。
【0063】
また、13はロボットアーム10からそれぞれ出力された圧力センサ9により計測された弾性膨張収縮構造体1のそれぞれの内圧Pすなわち計測値Pが入力される圧力差計算手段であり、圧力センサ9の計測値Pより、圧力差ΔP=[ΔP,ΔP,ΔP,ΔP,ΔP,ΔP=[P1a−P1b,P2a−P2b,P3a−P3b,P4a−P4b,P5a−P5b,P6a−P6bが圧力差計算手段13で計算されて、圧力差計算手段13から出力される。
【0064】
21はロボットアーム10から出力されたそれぞれの関節軸のエンコーダ8により計測された関節角の現在値qである関節角度ベクトルqが入力される順運動学計算手段であり、ロボットアーム10の関節角度ベクトルqから手先位置・姿勢ベクトルrへの変換の幾何科学的計算を順運動学計算手段21で行う。
【0065】
11は目標軌道生成手段であり、目標とするロボットアーム10の動作を実現するための手先位置・姿勢目標ベクトルrが目標軌道生成手段11から出力される。
【0066】
出力誤差補償手段103は、一例として、出力された位置誤差を補償するように位置誤差補償手段12と逆動力学計算手段24とから構成される。位置誤差補償手段12には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qより順運動学計算手段21により計算される手先位置・姿勢ベクトルrと、目標軌道生成手段11より出力される手先位置・姿勢目標ベクトルrとの誤差rが入力され、位置誤差修正出力uが位置誤差補償手段12から逆動力学計算手段24に向けて出力される。逆動力学計算手段24では、下記の式(1)で示されるロボットアームの運動方程式に基づく式により、手先位置・姿勢誤差rを修正するための位置誤差修正トルクτが計算され、逆動力学計算手段24から出力誤差補償情報として出力される。
【0067】
【数1】


ただし、M(q)は慣性行列、
【0068】
【数2】


は遠心力とコリオリ力を表す項、g(q)は重力負荷を表す項、J(q)はヤコビ行列である。
【0069】
25は駆動力誤差補償手段105の一例である駆動トルク誤差補償手段であり、逆動力学計算手段24から出力される位置誤差修正トルクτと、トルクセンサー7により計測されるトルクの現在値τとの差であるトルク誤差τが駆動トルク誤差補償手段25に入力され、駆動トルク誤差補償手段25からは、駆動トルクの誤差を補償するように、トルク誤差修正圧力差ΔPτが駆動力誤差補償情報として出力される。
【0070】
15は内部状態誤差補償手段106の一例である圧力差誤差補償手段であり、駆動トルク誤差補償手段25から出力されたトルク誤差修正圧力差ΔPτから、圧力差計算手段13から出力された現在の圧力差ΔPを減算した値(圧力差誤差ΔP)が圧力差誤差補償手段15に入力され、圧力差誤差補償手段15からは、内部圧力状態の誤差を補正するように、圧力差誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。圧力差誤差修正出力uは、D/Aボード20を介してそれぞれの5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値として与えられて、各関節軸6が正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。
【0071】
以上のように構成される制御装置に関しての制御動作の原理について説明する。
【0072】
制御動作の基本は、位置誤差補償手段12による手先位置・姿勢誤差rのフィードバック制御(位置制御)である。位置誤差補償手段12として、例えば、PID補償器を使用すれば、手先位置・姿勢誤差rが0に収束するように制御が働き、目標とするロボットアーム10の動作が実現する。
【0073】
また、逆動力学計算手段24が配設されることにより、ロボットアーム10に発生する慣性力や遠心力等の動力学的影響が補償されるため、図2に示されるロボットアーム10のように、関節を駆動するのに減速機を使わないダイレクトドライブ的駆動方法をとる場合でも、精度の良い動作を実現することができる。
【0074】
しかしながら、逆動力学計算手段24による動力学的影響の補償が有効に機能するためには、弾性体アクチュエータ1により関節駆動力として所望のトルクを発生させる仕組みが必要である。
【0075】
こうした課題に対応するための手段が、駆動トルク誤差補償手段25によるトルクフィードバック制御である。駆動トルク誤差補償手段25には、位置誤差修正トルクτと、トルクセンサー7により計測されるトルクの現在値τとの差であるトルク誤差τが入力され、トルク誤差τが0になるように駆動トルク誤差補償手段25が動作する。すなわち、駆動トルク誤差補償手段25により、位置誤差を修正するのに必要なトルクである位置誤差修正トルクτを正確に実現し、逆動力学計算手段24による動力学的影響の補償が有効に機能する。
【0076】
しかしながら、弾性体アクチュエータ、例えば図2に示す空気等の流体によって動作するアクチュエータ1により駆動される場合、弾性体アクチュエータ1の弾性的要素、すなわち流体の圧縮性や流路抵抗等の影響により、応答性が悪くなり、トルクフィードバック制御だけでは精度良く制御することができない。
【0077】
こうした課題に対応するための手段が、圧力差誤差補償手段15による圧力差ΔPのフィードバック制御である。圧力差誤差補償手段15にはトルク誤差修正出力ΔPτが駆動トルク誤差補償手段25から入力されるため、トルク誤差τが発生すると圧力差誤差補償手段15が動作し、トルク誤差τが0に収束するように圧力差の制御が働く。したがって、図6に示す制御系のようにトルク制御を行うトルクフィードバックループの内側に、圧力差の制御を行う内部圧力フィードバックループを構成することにより、応答性の悪さを補償し、トルク制御性能の向上を実現可能である。
【0078】
以上の原理に基づく制御プログラムの実際の動作ステップについて、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0079】
ステップ1では、ロボットアーム10の各関節軸のエンコーダ8により計測された関節角度データ(関節変数ベクトル又は関節角度ベクトルq)が上記制御装置にそれぞれ取り込まれる。
【0080】
次いで、ステップ2では、ロボットアーム10の運動学計算に必要なヤコビ行列J等の計算が逆動力学計算手段24により行われ、次いで、ステップ3では、ロボットアーム10からの関節角度データ(関節角度ベクトルq)からロボットアーム10の現在の手先位置・姿勢ベクトルrが順運動学計算手段21により計算される(順運動学計算手段21での処理)。
【0081】
次いで、ステップ4では、制御装置の制御コンピュータ19内のメモリ19aに予め記憶されていたロボットアーム10の動作プログラムに基づき、目標軌道計算手段11によりロボットアーム10の手先位置・姿勢目標ベクトルrが計算される。
【0082】
次いで、ステップ5では、手先位置・姿勢目標ベクトルrと現在の手先位置・姿勢ベクトルrの差である手先位置・姿勢の誤差rが計算され、次いで、ステップ6では、手先位置・姿勢の誤差rから位置誤差修正出力uが位置誤差補償手段12により計算される(位置誤差補償手段12での処理)。
【0083】
位置誤差補償手段12の具体例としてはPID補償器が考えられる。PID補償器の場合、ステップ6では、手先位置・姿勢の誤差rに比例ゲインを乗算した値、手先位置・姿勢の誤差rの微分値に微分ゲインを乗算した値、及び手先位置・姿勢の誤差rの積分値に積分ゲインを乗算した値の3つの値の合計値が位置誤差修正出力uとなる。定数の対角行列である比例、微分、積分の3つのゲインを適切に調整することにより、位置誤差が0に収束するように制御が働く。
【0084】
次いで、ステップ7では、動力学計算に必要な慣性行列M(q)、遠心力・コリオリ力項
【0085】
【数3】


、重力項g(q)の計算が行われ、次いで、ステップ8で、上記式(1)を使い、位置誤差修正トルクτが計算される(逆動力学計算手段24での処理)。
【0086】
次いで、ステップ9では、位置誤差修正トルクτから、トルクセンサー7の計測値τを減算することによりトルク誤差τが計算される。
【0087】
次いで、ステップ10では、トルク誤差τからトルク誤差修正圧力差ΔPτが駆動トルク誤差補償手段25により計算される(駆動トルク誤差補償手段25での処理)。駆動トルク誤差補償手段25の具体例としてはPID補償器が考えられる。PID補償器の場合、ステップ10では、トルク誤差τに比例ゲインを乗算した値、トルク誤差τの微分値に微分ゲインを乗算した値、及びトルク誤差τの積分値に積分ゲインを乗算した値の3つの値の合計値がトルク誤差修正圧力差ΔPτとなる。
【0088】
次いで、ステップ11では、内部状態計測手段107の一例である圧力センサ9によりそれぞれ計測された弾性体アクチュエータ1のそれぞれの内部圧力値が制御装置に取り込まれ、拮抗駆動される弾性体アクチュエータ1の内部圧力間の現在の圧力差ΔPが圧力差計算手段13により計算される。
【0089】
次いで、ステップ12では、ステップ10で駆動トルク誤差補償手段25により計算されたトルク誤差修正圧力差ΔPτから、ステップ11で圧力差計算手段13により計算した現在の圧力差ΔPを減算した圧力差誤差ΔPを圧力差誤差補償手段15で計算する(圧力差誤差補償手段15での処理)。次いで、ステップ13では、圧力差誤差ΔPより圧力差誤差修正出力uが圧力差誤差補償手段15で計算される(圧力差誤差補償手段15での処理)。圧力差誤差補償手段15としては、例えば、PID補償器が考えられる。
【0090】
次いで、ステップ14では、圧力差誤差修正出力uが圧力差誤差補償手段15からロボットアーム10に、具体的には、ロボットアーム10の制御コンピュータ19内のD/Aボード20を通じ、それぞれの流量制御弁18に与えられ、それぞれの流量制御弁18がそれぞれの弾性体アクチュエータ1内の圧力を変化させることにより、ロボットアーム10のそれぞれの関節軸の正逆回転運動が発生する。
【0091】
以上のステップ1〜ステップ14が制御の計算ループとして繰り返し実行されることにより、ロボットアーム10の動作の制御が実現する。
【0092】
以上のように、上記第1実施形態の制御装置によれば、駆動トルク誤差補償手段25を配設して(駆動トルク誤差補償手段は、実際には、制御プログラムの一部として記述され、制御コンピュータにより実行される。)、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、圧力差誤差補償手段15を駆動トルク誤差補償手段25と弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102との間にさらに配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の各弾性膨張収縮構造体1の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少ない、高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0093】
また、上記第1実施形態の制御方法によれば、駆動トルク誤差補償手段25を配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、圧力差誤差補償手段15を駆動トルク誤差補償手段25と弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102との間にさらに配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の各弾性膨張収縮構造体1の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少ない、高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0094】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。図8において、101は目標出力生成手段であり、弾性体アクチュエータ1により駆動される弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の変位、発生力等の出力の目標値を生成する。104は弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に接続される出力計測手段であり、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の出力の計測値を計測して、計測値を出力誤差補償手段103にそれぞれ入力する。103は目標出力生成手段101からの出力目標値と出力計測手段104からの出力計測値との出力誤差が入力されて出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段であり、出力誤差補償手段103により出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力することにより、出力計測手段104により計測される弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の出力の計測値を目標値に追従させるように制御を行う。105は弾性体アクチュエータ1が発生する駆動力の誤差を補償する駆動力誤差補償手段であり、出力誤差補償手段103からの出力誤差補償情報の出力と、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に接続された駆動力計測手段107により計測された駆動力との差が駆動力誤差補償手段105に入力されて、駆動力の誤差を補償するような駆動力誤差補償情報を出力する。109は目標出力生成手段101が生成する出力目標値が入力される目標内部状態決定手段であり、上記出力の目標値より、弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の弾性体アクチュエータ1の内部状態目標値を決定する。106は駆動力誤差補償手段105から出力される駆動力誤差補償情報及び目標内部状態決定手段109から出力される出力情報の和と、内部状態計測手段108から出力される内部状態計測値の差が入力されて内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段であり、内部状態誤差補償手段106からの内部状態誤差補償情報の出力情報が弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102のそれぞれの弾性体アクチュエータ1に入力されて、それぞれの弾性体アクチュエータ1の内部状態計測値を目標値に追従させるように制御を行う。108は弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の各弾性体アクチュエータ1に接続される内部状態計測手段であり、各弾性体アクチュエータ11の内部圧力である内部状態計測値108を内部状態計測手段で測定して、内部状態計測値を内部状態誤差補償手段106に入力する。
【0095】
次に、第2実施形態の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の具体的な例について、制御対象として弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の一例であるロボットアーム10の制御装置を例に取り、説明を行う。ロボットアーム10の詳細は第1実施形態と同様であるので詳細は省略する。
【0096】
図9は本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の構成をより具体的に示す図である。
【0097】
図9において、26は、目標内部状態決定手段109の一例としての目標圧力差決定手段である。目標圧力差計算手段26には、目標軌道生成手段11より出力される目標関節角度ベクトルqが入力され、目標関節角度ベクトルqより目標圧力差(圧力差の目標値)ΔP=[ΔP1d,ΔP2d,ΔP3d,ΔP4d,ΔP5d,ΔP6dが目標圧力差計算手段26で算出され、目標圧力差計算手段26から圧力差誤差補償手段15に向けて、圧力差の目標値が出力される。ただし、ΔP1d,ΔP2d,ΔP3d,ΔP4d,ΔP5d,ΔP6dはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの、弾性膨張収縮構造体1−3aと1−3bの、弾性膨張収縮構造体1−4aと1−4b、弾性膨張収縮構造体1−5aと1−5b、弾性膨張収縮構造体1−6aと1−6bの圧力差の目標値である。
【0098】
内部状態誤差補償手段106の一例である圧力差誤差補償手段15には、目標圧力差計算手段26から出力される目標圧力差ΔPに、駆動トルク誤差補償手段105からのトルク誤差修正圧力差ΔPτを加算し、圧力差計算手段13からの現在の圧力差ΔPを減算した値(圧力差誤差ΔP)が入力され、圧力差誤差補償手段15からは、内部圧力状態の誤差を補正するように、圧力差誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。圧力差誤差修正出力uは、D/Aボード20を介してそれぞれの5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値として与えられて、各関節軸6が正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。
【0099】
以上のように構成される制御装置に関しての制御動作の原理について説明する。
【0100】
制御動作の基本は、位置誤差補償手段12による手先位置・姿勢誤差rのフィードバック制御(位置制御)である。位置誤差補償手段12として、例えば、PID補償器を使用すれば、手先位置・姿勢誤差rが0に収束するように制御が働き、目標とするロボットアーム10の動作が実現する。
【0101】
また、逆動力学計算手段24が配設されることにより、ロボットアーム10に発生する慣性力や遠心力等の動力学的影響が補償されるため、図2に示されるロボットアーム10のように、関節を駆動するのに減速機を使わないダイレクトドライブ的駆動方法をとる場合でも、精度の良い動作を実現することができる。
【0102】
しかしながら、逆動力学計算手段24による動力学的影響の補償が有効に機能するためには、弾性体アクチュエータ1により関節駆動力として所望のトルクを発生させる仕組みが必要である。
【0103】
こうした課題に対応するための手段が、駆動トルク誤差補償手段25によるトルクフィードバック制御である。駆動トルク誤差補償手段25には、位置誤差修正トルクτと、トルクセンサー7により計測されるトルクの現在値τとの差であるトルク誤差τが入力され、トルク誤差τが0になるように駆動トルク誤差補償手段25が動作する。すなわち、駆動トルク誤差補償手段25により、位置誤差を修正するのに必要なトルクである位置誤差修正トルクτを正確に実現し、逆動力学計算手段24による動力学的影響の補償が有効に機能する。
【0104】
しかしながら、弾性体アクチュエータ、例えば図2に示す空気等の流体によって動作するアクチュエータにより駆動される場合、弾性体アクチュエータの弾性的要素、すなわち流体の圧縮性や流路抵抗等の影響により応答性が悪く、トルクフィードバック制御だけでは精度良く制御することができない。
【0105】
こうした課題に対応するための手段が、圧力差誤差補償手段15による圧力差ΔPのフィードバック制御である。圧力差誤差補償手段15にはトルク誤差修正出力ΔPτが駆動トルク誤差補償手段25から入力されるため、トルク誤差τが発生すると圧力差誤差補償手段15が動作し、トルク誤差τが0に収束するように圧力差の制御が働く。したがって、図9に示す制御系のようにトルク制御を行うトルクフィードバックループの内側に、圧力差の制御を行う内部圧力フィードバックループを構成することにより、応答性の悪さを補償し、トルク制御性能の向上を実現可能である。
【0106】
しかしながら、圧力差誤差補償手段15を設けるだけでは、応答性は改善されるが、位置の定常偏差が発生し、位置決め精度を向上させることはできないという問題が残る可能性がある。これは、目標関節角度ベクトルqを実現するのに必要な圧力差を目標値として圧力差誤差補償手段15に入力していない点に起因する。
【0107】
こうした課題に対応するための手段が、目標圧力差計算手段26である。図3に示す1組の弾性膨張収縮構造体1,1の拮抗駆動による関節軸の正逆回転駆動を行う場合、関節角度と1組の弾性膨張収縮構造体1の内部圧力差の関係は、例えば、図10のようになる。図10は、一例として、全長250mm、内径10mmの弾性膨張収縮構造体(マッキベン型空気圧人工筋)を使用した場合の結果である。図10中に示したように、測定結果は、ほぼ直線で近似することができる。したがって、目標圧力差ΔPを計算する式として直線を表す1次式
【数4】


を使うことができる。ただし、A、bは係数であり、図10の測定結果より求めることができる。したがって、目標圧力差計算手段26において、式(4)により目標関節角度ベクトルqから目標圧力差ΔPを計算して圧力差誤差補償手段15に入力することにより、定常偏差の小さい高精度な位置制御を実現することができる。
【0108】
図11は、本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の他の構成を示す図である。
【0109】
図11の制御装置では、目標内部状態決定手段109が、図9とは別の例として、目標圧力差計算手段26と近似逆運動学計算手段27とから構成される。近似逆運動学計算手段27には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qより順運動学計算手段21により計算される手先位置・姿勢ベクトルrと目標軌道生成手段11より出力される手先位置・姿勢目標ベクトルrとの誤差rと、関節角度ベクトルの現在値qとが入力されて、誤差rと、関節角度ベクトルの現在値qから計算されるヤコビ行列Jより、q=J-1の計算式により関節角度ベクトルの誤差qが近似的に算出される。目標圧力差計算手段26には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、近似逆運動学計算手段27で計算された関節角度ベクトルの誤差qとの加算に基づく目標関節角度ベクトルqとして、q=q+J(q)−1が入力され、目標関節角度ベクトルqより、目標圧力差(圧力差の目標値)ΔP=[ΔP1d,ΔP2d,ΔP3d,ΔP4d,ΔP5d,ΔP6dが目標圧力差計算手段26で算出され、目標圧力差計算手段26から圧力差誤差補償手段15に向けて、圧力差の目標値が出力される。
【0110】
このような図11に示す構成であっても、図9の構成と同様に、目標圧力差ΔPを計算し、圧力差誤差補償手段15に入力することにより、定常偏差の小さい高精度な位置制御を実現することができる。
【0111】
図15は、本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置のさらに他の構成を示す図である。
【0112】
図15の制御装置は、図8の制御装置の具体例である図9の制御装置と比べて、目標軌道生成手段11は目標関節角度ベクトルqを出力する点、順運動学計算手段21が無く、関節角度ベクトルqがフィードバックされ、目標関節角度ベクトルqと関節角度ベクトルqの差である関節角度ベクトルの誤差qが位置誤差補償手段12に入力される点、目標圧力差計算手段26に目標関節ベクトルqが入力される点が異なり、他の部分は同じ構成である。したがって、図15の制御装置によれば、目標関節ベクトルqが与えられることにより、関節角度ベクトルqが目標関節ベクトルqとなるように制御される。
【0113】
図14は本発明に係る制御装置の性能を検証した実験結果を示している。図14の実験結果は、本発明に係る制御装置の構成をとることによる効果を分かりやすくするため、図15に示す制御装置により、図2に示すロボットアーム10の第6関節6−6のみを動作させ、第6関節6−6の回転角qの制御を行った結果である。第6関節6−6を駆動する弾性膨張収縮構造体1は、管状弾性体2の全長が17cm、内径が1cmとした。関節軸6−3と6−4の交点及び関節軸6−5と6−6の交点間の距離は28cmとした。ハンド部には錘を付加し、関節軸6−6周りの慣性モーメントが0.0045kgmとなるようにした。また、空気圧源16から供給される高圧空気は、空気圧調整ユニット17により圧力が0.6MPaに調整され、5ポート流量制御電磁弁18に供給される。
【0114】
図14において実線で示した結果が、図8の第2実施形態の制御装置、より具体的には図15の構成で示される制御装置による制御結果である。目標値は0°と35°とで2秒ごとにステップ状に変化する目標値とした。
【0115】
一方、図14において破線で示した結果が図17の構成で示されるように、ロボットアーム10から出力される関節角度ベクトルの現在値qと、目標軌道生成手段11より出力される目標関節角度ベクトルqと差である、関節角度ベクトルの誤差qが0となるように制御するような、単純な位置制御のみの構成の場合の結果である。
【0116】
図14を見ればわかるように、本第2実施形態の制御装置の構成によれば、単純な位置制御のみの場合と比べて、制御精度が向上することが確認された。
【0117】
以上のように、上記第2実施形態の制御装置によれば、駆動トルク誤差補償手段25を配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、圧力差誤差補償手段15を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102と駆動トルク誤差補償手段25との間に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段26をさらに配設して、目標圧力差を駆動トルク誤差補償手段25と圧力差誤差補償手段15との間に入力してフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0118】
また、上記第2実施形態の制御方法によれば、駆動トルク誤差補償手段25を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、圧力差誤差補償手段15を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102と駆動トルク誤差補償手段25との間に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段26をさらに配設して、目標圧力差を駆動トルク誤差補償手段25と圧力差誤差補償手段15との間に入力してフィードフォワードすることにより、応答性が良く、動力学的な影響が少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0119】
なお、図11の制御系では、目標内部状態決定手段109への入力を手先位置・姿勢の誤差rとしたが、誤差rは目標値と計測値の差であり、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qより順運動学計算手段21により計算される手先位置・姿勢ベクトルrと、目標軌道生成手段11より出力される手先位置・姿勢目標ベクトルrとの誤差rが近似逆運動学計算手段23aに入力されるようにブロック線図は変形できることから、目標値を入力とする場合と、誤差を入力とする場合に本質的な違いはない。
【0120】
(第3実施形態)
図12は本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。
【0121】
図12に示す第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の構成要素は、図8に示す第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置と同様であるが、各ブロックの入出力関係が異なっている。図12の制御装置では、内部状態誤差補償手段106に内部状態がフィードバックされるループが、駆動力誤差補償手段105に駆動力がフィードバックされるループの内部にあるのではなく、独立して存在する構成となっており、内部状態誤差補償手段106からの内部状態誤差補償情報の出力と駆動力誤差補償手段105からの駆動力誤差補償情報の出力を加算した信号により弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102を駆動する構成となっている。
【0122】
次に、第3実施形態の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の具体的な例について、制御対象として弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の一例であるロボットアーム10の制御装置を例に取り、説明を行う。ロボットアーム10の詳細は第1実施形態と同様であるので詳細は省略する。
【0123】
図13は本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構成をより具体的に示す図である。図13に示す制御装置では、圧力差誤差補償手段15の出力と駆動トルク誤差補償手段の出力を加算した信号がロボットアーム10に入力される。
【0124】
このような構成とすることにより、目標圧力差計算手段26において、例えば、式(4)により目標関節角度ベクトルqから目標圧力差ΔPを計算し、目標圧力差計算手段26から圧力差誤差補償手段15に目標圧力差ΔPを入力することにより、第2実施形態の制御装置の場合と同様に、定常偏差の小さい高精度な位置制御を実現することができる。
【0125】
図16は、本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置のさらに他の構成を示す図である。
【0126】
図16の制御装置は、図12の制御装置の具体例である図13の制御装置と比べて、目標軌道生成手段11は目標関節角度ベクトルqを出力する点、順運動学計算手段21が無く、関節角度ベクトルqがフィードバックされ、目標関節角度ベクトルqと関節角度ベクトルqの差である関節角度ベクトルの誤差qが位置誤差補償手段12に入力される点、目標圧力差計算手段26に目標関節ベクトルqが入力される点が異なり、他の部分は同じ構成である。したがって、図16の制御装置によれば、目標関節ベクトルqが与えられることにより、関節角度ベクトルqが目標関節ベクトルqとなるように制御される。
【0127】
図14は本発明に係る制御装置の性能を検証した実験結果を示している。実験の詳細は上記第2実施形態において説明したので省略する。
【0128】
図14において一点鎖線で示した結果が図12の第3実施形態の制御装置、より具体的には図16の構成で示される制御装置による制御結果である。
【0129】
図14を見ればわかるように、第3実施形態の制御装置の構成によれば、第2実施形態の場合と同様に、単純な位置制御のみの場合と比べて、制御精度が向上することが確認された。
【0130】
以上のように、上記第3実施形態の制御装置によれば、駆動トルク誤差補償手段25を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段26及び圧力差誤差補償手段15を、駆動トルク誤差補償手段25とは別に、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の内部状態をフィードバックする、トルクフィードバック制御系とは独立な圧力制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0131】
また、上記第3実施形態の制御方法によれば、駆動トルク誤差補償手段25を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段26及び圧力差誤差補償手段15を、駆動トルク誤差補償手段25とは別に、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の内部状態をフィードバックする、トルクフィードバック制御系とは独立な圧力制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少なく、さらに、定常偏差も小さい高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。

(第4実施形態)
図18は、図8に示す弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置を、図19に示すようにロボットアーム400により治具407を把持し、固定面406に垂直な方向(x方向)に力Fで押しつける力制御を行うと同時に、固定面406に平行な方向(y、z方向)に位置制御を行う作業に応用した場合の制御装置の構成を具体的に示す図である。図18では、図8の具体例の一つである図11に示す制御装置と同じ構成の箇所は同じ番号を付し、以下ではその説明を省略する。また、図19において、405は手313に配置された力センサーであり、手先が発生する力ベクトルF=[F,F,F,M,M,M、すなわち、固定面406に治具407が押さえつけられる力を測定する。ただし、F,F,Fは、それぞれ、x方向、y方向、z方向の並進力、M,M,Mは、それぞれ、x軸回りの力モーメント、y軸回りの力モーメント、z軸回りの力モーメントを表している。そのほかの構造は図2に示すロボットアーム10と同様であるので詳細な説明は省略する。
図18に示す制御装置では、図11に示す制御装置と比べて、出力誤差補償手段103の構成が異なり、また、ロボットアーム400から出力として関節角度ベクトルqに加えてロボットアーム400の手先が発生する力ベクトルFが力センサ405により出力される点が異なる。
図18において、401は位置誤差抽出手段であり、位置誤差rが入力され、位置制御を行う方向(y、z方向)の位置誤差rexのみを抽出し、位置誤差補償手段12へと出力する。位置制御を行う方向の位置誤差の抽出は、図19中に示した座標軸xとx、yとy、zとzがそれぞれ平行の場合、下記の式(5)により実行される。

【数5】


402は力誤差抽出手段であり、手先が発生する力ベクトルFと、目標軌道生成手段11より出力される手先が発生する目標力ベクトルFとの誤差である力誤差Fが入力され、力制御を行う方向(x方向)の力誤差Fexのみを抽出し、力誤差補償手段403へと出力する。力制御を行う方向の力誤差の抽出は、図19中に示した座標軸xとx、yとy、zとzがそれぞれ平行の場合、下記の式(6)により実行される。
【数6】


力誤差補償手段403からは力誤差修正出力uが力−トルク変換手段404に向けて出力される。力−トルク変換手段404では、下記の式(7)で示される式により、力誤差Fを修正するための力誤差修正トルクτが計算され出力される。
【数7】


出力誤差補償手段103からは位置誤差修正トルクτと力誤差修正トルクτが加算された値が出力誤差補償情報として出力される。
制御動作の基本は、位置誤差補償手段12による手先位置・姿勢誤差rのフィードバック制御(位置制御)と、力誤差補償手段403による手先が発生する力Fのフィードバック制御(力制御)を同時に実現する位置と力のハイブリッド制御である。位置誤差補償手段12として、例えば、PID補償器を使用し、力誤差補償手段403として、例えばPI補償器を使用すれば、手先位置・姿勢誤差rが0に収束するように制御が働き、かつ、手先が発生する力誤差Fが0に収束するように制御が働くため、目標とするロボットアーム400の動作が実現する。
以上のように、駆動トルク誤差補償手段25、および、圧力差誤差補償手段15を備えることにより、応答性良く、精度の高いトルクフィードバック制御が可能となるため、応答性良く、精度の高い力制御が実現する。したがって、図19に示した治具407の固定面406である壁面への押しつけ制御を様々な作業に応用することにより、例えば、窓拭き動作や、机の天面拭き動作等、実用的な作業を、安全性高く実現することが可能となる。
【0132】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態として、図1に示した弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の他の具体的な例について、弾性体アクチュエータとして導電性高分子アクチュエータを使用する場合を例に取り、説明を行う。ロボットアーム10の詳細は、弾性体アクチュエータとして導電性高分子アクチュエータを使用する以外は第1実施形態と同様であるので詳細は省略する。
【0133】
図19は、本発明にかかる第5実施形態の導電性高分子アクチュエータの一例としての人工筋肉アクチュエータ301の概略を示した断面図である。また、図20にその外形図を示す。
【0134】
図19において、311は酸化還元反応に伴って膨張収縮変形する導電性高分子製の矩形の伸縮体である伸縮板であり、円筒形のケース321、円板状のフタ322によって囲まれた空間を満たす電解質托体層である電解液313の液中の大略中央部に配置されている。電解液としては、NaPF、TBAPFなどの電解質を水、もしくはプロピレンカーボネートなどの有機溶媒に溶解させたものや、BMIPFなどのイオン性液体が利用可能である。特に、アニオンとしてPFを含む電解質は、導電性高分子であるポリピロールとの組み合わせで大きな変位が得られることから望ましい。
【0135】
導電性高分子の伸縮板311を構成する導電性高分子としては、ポリピロール、ポリアニリン、又はポリメトキシアニリン等が利用可能だが、ポリピロールは変位が大きい点で望ましい。また、導電性高分子の伸縮板311の厚みは数十μm程度であるのが望ましい。それより薄いと強度的に弱く、それより厚いと導電性高分子の伸縮板311の内部まで十分にイオンが出入りできなくなるので望ましくない。
【0136】
導電性高分子の伸縮板311の長手方向の両端には、ロッド323a、323bが接続されており、ロッド323aは、フタ322に設けられたシール部材324aを貫通して、ロッド323bは、ケース321に設けられたシール部材324bを貫通して、それぞれ、フタ322及びケース321の外部に突出している。
【0137】
導電性高分子の伸縮板311に接続された配線は、フタ322に備えられたシール部材324c、スイッチ304、電流測定装置326を経て電源303に接続されている。電源303のもう一方の極には、対電極325が接続されている。対電極325は、フタ322に備えられたシール部材324dを通して、ケース321内の空間に充填された電解液313と接している。
【0138】
また、電源303、スイッチ304は図示しない制御装置によって、電流測定装置326の情報をもとに適宜、電圧調整、オンオフされ、人工筋肉アクチュエータ301の動作が制御される。
【0139】
次に、この人工筋肉アクチュエータ301の作用を説明する。
【0140】
導電性高分子の伸縮板311が収縮する原因としては、アニオン(陰イオン)の出入り、カチオン(陽イオン)の出入り、高分子構造の変化等があるが、図19(A)、図19(B)及び図19(C)による動作原理の説明では、ポリピロールなどの材料系においてアニオンのドープ、アンドープが主たる変形のメカニズムとされていることから、アニオンの出入りについて述べることにする。
【0141】
図19(A)はスイッチオフの状態で導電性高分子の伸縮板311に電圧を印加していない状態を示し、図19(B)は導電性高分子の伸縮板311に正の電位を印加した場合を示している。導電性高分子の伸縮板311に電圧が印加されると、電圧無印加時に電解質托体層である電解液313に均質に存在したアニオンが、正電極側の導電性高分子の伸縮板311側に引き寄せられ、導電性高分子の伸縮板311内に入り込むようになる。この酸化過程に伴って導電性高分子の伸縮板311が伸長し、ロッド323a、323bによって導電性高分子の伸縮板311の伸び方向の変位が取り出せるようになる。また、図19(C)は導電性高分子の伸縮板311に負電圧を印加した場合を示す。導電性高分子の伸縮板311に存在したアニオンは、対向する対電極325の方に引き寄せられ、電解質托体層である電解液313中に離脱するようになり、この還元過程に伴って導電性高分子の伸縮板311は収縮し、ロッド323a、323bによって縮み方向の変位が取り出せるようになる。
【0142】
以上のようなアニオンの出入りにより動作する導電性高分子アクチュエータの変位量、あるいは、発生力は、注入される電荷量におおよそ比例することが知られているので、本第5実施形態では内部状態を計測するときの内部状態量として電荷量を使用する。
【0143】
図21は、本発明の第5実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の制御対象であるロボットアーム10を駆動するための電源系の構成を示す図である。図21ではロボットアーム10の第3関節軸6−3を正逆回転駆動する部分のみを記し、他の部分は省略している。図21において、351−3a、351−3bは駆動電源であり、電圧可変電源352−3a、352−3b、および、電流計353−3a、353−3bから構成され、導電性高分子アクチュエータ301−3a、301−3b(弾性膨張収縮構造体1−3aと弾性膨張収縮構造体1−3bの一例)に接続され、電圧を印加する。19は制御部の一例としての例えば一般的なパーソナルコンピュータにより構成された制御コンピュータであり、D/Aボード20が搭載されており、電圧可変電源351−3a、351−3bに電圧指令値を出力することにより、それぞれの導電性高分子アクチュエータ301−3a、301−3bに印加される電圧値を独立して制御することが可能であり、それにより導電性高分子アクチュエータ301−3a、301−3bが駆動される。また、制御コンピュータ19にはA/Dボード354が搭載されており、電流計353−3a、353−3bで計測される電流値を制御コンピュータ19に取り込むことが可能である。
【0144】
図18は本発明の第5実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の制御装置の構成を示す図である。図18において、201は内部状態誤差補償手段106の一例である電荷量誤差補償手段である。電荷量誤差補償手段201には、駆動トルク誤差補償手段105の一例である駆動トルク誤差補償手段25からのトルク誤差修正電荷量cτから、駆動電源(導電性高分子アクチュエータ301−3aの場合には駆動電源351−3a、導電性高分子アクチュエータ301−3bの場合には駆動電源351−3b)で計測される電流iが電荷量計算手段202において積分されることにより得られる現在の電荷量cを減算した値(電荷量誤差c)が入力され、電荷量誤差補償手段201からは、導電性高分子アクチュエータ301−3a又は導電性高分子アクチュエータ301−3bに注入される電荷量の誤差を補正するように、電荷量誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。電荷量誤差修正出力uは、D/Aボード20を介してそれぞれの電源に電圧指令値として与えられて、第3関節軸6−3が正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。他の関節軸6−1〜6−2、6−4〜6−6においてもそれぞれの関節軸に対して、上記制御装置の同様な制御により、それぞれ正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。
【0145】
以上の第5実施形態の制御装置によれば、駆動トルク誤差補償手段25を配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102により発生される駆動トルクをフィードバックするトルクフィードバック制御系を構成し、かつ、電荷量誤差補償手段201を上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102と駆動トルク誤差補償手段25との間に配設して、上記弾性体アクチュエータ駆動型可動機構102の内部状態をフィードバックする制御系を構成することにより、応答性が良く、動力学的な影響の少ない高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0146】
なお、上記第2及び第3実施形態では、目標圧力差計算手段26において関節角度と圧力差の関係を1次方程式で近似したが、これに限られるわけではなく、2次方程式など多次元の多項式でも近似できることは言うまでもない。このように、弾性体アクチュエータ1の出力と弾性体アクチュエータ1の内部状態の関係を多項式で近似する場合には、上記目標内部状態決定手段105が、上記多項式により上記弾性体アクチュエータ1の出力の目標値より上記弾性体アクチュエータ1の内部状態の目標値を計算し決定する。また、多項式で近似するのではなく、上記目標内部状態決定手段105により、上記弾性体アクチュエータ1の出力と上記弾性体アクチュエータ1の内部状態の関係(例えば、関節角度と圧力差の関係)を制御装置の制御コンピュータ19内のメモリ19a(図4参照)にテーブルとして記憶させておき、テーブルに基づき、上記弾性体アクチュエータ1の出力の目標値(例えば関節角度の目標値)から上記弾性体アクチュエータ1の内部状態の目標値(例えば圧力差の目標値)を導出するという構成とすることもできる。
【0147】
また、上記第3実施形態では、目標内部状態決定手段109を目標圧力差計算手段26としたが、これに限られるわけではなく、図11の構成の場合と同様に、近似逆運動学計算手段27と目標圧力差計算手段26とからなる構成の場合でも同様である。
【0148】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を変位速度計測手段の一例としての変位速度センサとし、上記弾性体アクチュエータの出力値を上記弾性体アクチュエータの変位速度として変位速度制御を行う場合でも同様である。
【0149】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を力計測手段の一例としての力センサとし、上記弾性体アクチュエータの出力値を上記弾性体アクチュエータで発揮される力として力制御を行う場合でも同様である。
【0150】
また、上記各実施形態では、内部状態計測手段108の一例としてセンサを設けるとしたが、オブザーバ(観測器)を設け、内部状態を推定し、内部状態の推定値を使用する場合でも同様の効果を発揮する。
【0151】
また、上記各実施形態では、駆動力計測手段107の一例としてトルクセンサー7を設けるとしたが、オブザーバ(観測器)を設け、駆動力を推定し、駆動力の推定値を使用する場合でも同様の効果を発揮する。
【0152】
また、上記第5実施形態では弾性体アクチュエータは、電気的刺激により駆動するアクチュエータとして、導電性高分子アクチュエータを例に説明を行ったが、これに限られるわけではなく、誘電体ポリマー、各種ゲル等の弾性体を電気的刺激により駆動するアクチュエータの場合でも、内部状態として電位又は電荷量等を採用することにより同様の効果を発揮する。
【0153】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置及び制御方法は、弾性体アクチュエータにより動作するロボットアームの手先位置の軌道制御等の位置制御を行う制御装置及び制御方法として有用である。また、ロボットアームに限らず、生産設備等における弾性体アクチュエータによる回転機構の制御装置及び制御方法や、リニアスライダやプレス装置等の弾性体アクチュエータによる直動機構の制御装置及び制御方法としても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームの構造を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する弾性膨張収縮構造体の構造及び動作を示す図であって、上側は減圧状態、下側は加圧状態を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームを圧縮性流体である空気により駆動するための空気圧供給系の動作を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームを圧縮性流体である空気により駆動するための空気圧供給系の構成を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構造を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御プログラムの実際の動作ステップのフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構造を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータの弾性膨張収縮構造体による拮抗駆動における関節角度と内部圧力差の関係を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の他の構造を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の概念を示すブロック線図である。
【図13】本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構造を示す図である。
【図14】本発明の第2及び第3実施形態に係る制御装置の性能を検証した実験結果を示す図である。
【図15】図8の第2実施形態の制御装置のより具体的な構成を示すブロック線図である。
【図16】図12の第3実施形態の制御装置のより具体的な構成を示すブロック線図である。
【図17】図14において破線で示した結果にかかる、単純な位置制御のみの構成を示すブロック線図である。
【図18】本発明の第4実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構造を示す図であり、
【図19】本発明の第4実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームの構造を示す図であり、
【図20】本発明の第5実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の構造を示す図である。
【図21】本発明の第5実施形態にかかる導電性高分子アクチュエータの概略を示した断面図である。
【図22】本発明の第5実施形態にかかる導電性高分子アクチュエータの概略を示した外形図である。
【図23】本発明の第5実施形態にかかる弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動するための電源系の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0156】
1、1−1a、1−1b、1−2a、1−2b、1−3a、1−3b、1−4a、1−4b、1−5a、1−5b、1−6a、1−6b 弾性膨張収縮構造体
2 管状弾性体
3 変形方向規制部材
4 封止部材
5 流体通過部材
6、6−1、6−2、6−3、6−4、6−5、6−6 関節軸
8 エンコーダ(出力計測手段の一例である変位計測手段の一例)
9 圧力センサ(内部状態計測手段の一例である圧力計測手段の一例)
10 ロボットアーム
11 目標軌道生成手段
12 位置誤差補償手段
13 圧力差計算手段
15 圧力差誤差補償手段
16 空気圧源
17 空気圧調整ユニット
18 5ポート流量制御電磁弁
19 制御コンピュータ
19a メモリ
20 D/Aボード
21 順運動学計算手段
22 逆運動学計算手段
23a,23b 近似逆運動学計算手段
24 逆動力学計算手段
25 駆動トルク誤差補償手段
26 目標圧力差計算手段
27 近似逆運動学計算手段
101 目標出力生成手段
102 弾性体アクチュエータ駆動型可動機構
103 出力誤差補償手段
104 出力計測手段
105 駆動力誤差補償手段
106 内部状態誤差補償手段
107 駆動力計測手段
108 内部状態計測手段
109 目標内部状態決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項2】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記駆動力誤差補償手段からの上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項3】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を出力する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を出力する駆動力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を出力する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記出力の計測値とが入力されるとともに出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を出力する出力誤差補償手段と、
上記出力誤差補償手段からの上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力計測手段からの上記駆動力の計測値の出力が入力されるとともに駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を出力する駆動力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を出力する目標内部状態決定手段と、
上記目標内部状態決定手段からの上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態計測手段からの上記内部状態の計測値の出力が入力されるとともに内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を出力する内部状態誤差補償手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により出力された上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償手段により補償された上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項4】
上記目標内部状態決定手段は、上記出力の目標値が入力されるとともに上記内部状態の目標値を決定することを特徴とする請求項2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項5】
上記目標内部状態決定手段は、上記弾性体アクチュエータの上記出力と上記弾性体アクチュエータの上記内部状態との関係を多項式で近似し、上記多項式により上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値より上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を計算して決定することを特徴とする請求項2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項6】
上記目標内部状態決定手段は、上記弾性体アクチュエータの上記出力と上記弾性体アクチュエータの上記内部状態との関係をテーブルとして記憶するメモリをさらに備え、上記テーブルにより上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値より上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定することを特徴とする請求項2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項7】
上記弾性体アクチュエータは、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータであること特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項8】
上記流体圧駆動アクチュエータは、中空弾性体と、上記中空弾性体の気密封止を行う1組の封止部材と、上記中空弾性体の中空内部に対して流体の注入あるいは注出が可能となる流体通過部材とを有する弾性膨張収縮構造体であること特徴とする請求項7に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項9】
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態は流体圧力であり、上記内部状態計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記流体圧力を計測する圧力計測手段であること特徴とする請求項7に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項10】
上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの変位であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記変位を計測する変位計測手段であること特徴とする請求項1又は2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項11】
上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの変位速度であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの上記変位速度を計測する変位速度計測手段であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項12】
上記弾性体アクチュエータの上記出力は上記弾性体アクチュエータの力であり、上記出力計測手段は、上記弾性体アクチュエータの力を計測する力計測手段であること特徴とする請求項1又は2又は3に記載の弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御装置。
【請求項13】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記出力の目標値と上記計測された上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値とから、出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法。
【請求項14】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記計測された上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記駆動力誤差補償情報の出力、及び上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法。
【請求項15】
弾性体アクチュエータの弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法であって、
上記弾性体アクチュエータの駆動により変化する上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測して上記内部状態の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより発生される駆動力を計測して上記駆動力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力を計測して上記出力の計測値を得て、
上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の出力の目標値と上記出力の計測値とから出力誤差を補償するように出力誤差補償情報を得て、
上記出力誤差補償情報の出力、及び上記駆動力の計測値の出力から駆動力誤差を補償するように駆動力誤差補償情報を得て、
上記弾性体アクチュエータの上記内部状態の目標値を決定して上記内部状態の目標値を得て、
上記内部状態の目標値の出力、及び上記内部状態の計測値の出力から内部状態誤差を補償するように内部状態誤差補償情報を得て、
上記内部状態誤差補償情報及び上記駆動力誤差補償情報に基づき上記弾性体アクチュエータにより駆動される上記可動機構の上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータ駆動型可動機構の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−18791(P2006−18791A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281768(P2004−281768)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】