弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法
【課題】応力を抑制することが可能な弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、圧電体により弾性波を励振する振動部11が露出するように、振動部11が形成された圧電基板10を封止する第1封止部13を設ける工程と、振動部11が空隙17に露出するように振動部11を覆い、かつ圧電基板10を個片化するためのダイシングライン18に対応した位置に切欠部19を形成した第2封止部14を、第1封止部13上に設ける工程と、第2封止部14を設ける工程の後に、第2封止部14を加熱する工程と、ダイシングライン18に沿って、第2封止部14及び圧電基板10を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有する弾性波デバイスの製造方法である。
【解決手段】本発明は、圧電体により弾性波を励振する振動部11が露出するように、振動部11が形成された圧電基板10を封止する第1封止部13を設ける工程と、振動部11が空隙17に露出するように振動部11を覆い、かつ圧電基板10を個片化するためのダイシングライン18に対応した位置に切欠部19を形成した第2封止部14を、第1封止部13上に設ける工程と、第2封止部14を設ける工程の後に、第2封止部14を加熱する工程と、ダイシングライン18に沿って、第2封止部14及び圧電基板10を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有する弾性波デバイスの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等にフィルタ又はデュプレクサとして用いられる弾性波デバイスチップには、小型化が要求されている。弾性波デバイスチップに用いる弾性波素子としては、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)を形成した弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子、及び圧電膜を電極で挟んだ圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)がある。例えば、特許文献1には、圧電基板のIDT等が形成された面の全体が封止部により覆われたSAWデバイスが記載されている。特許文献2には、圧電基板のダイシングラインへの異物の落下を抑制するため、封止部によりダイシングラインを覆うSAWデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−261582号公報
【特許文献2】特開2008−135998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、封止部を加熱した際に、圧電基板に大きな応力が加わる恐れがある。また、特許文献2記載の発明では、異物の落下を抑制することはできるが、封止部がダイシングラインを覆うため、特許文献1と同様に圧電基板に大きな応力が加わる恐れがある。なお、FBARの場合でも、圧電膜を設けた基板に大きな応力が加わることがある。
【0005】
このように基板に大きな応力が加わることにより、不良品の増加、及び弾性波デバイスの破損が生じる可能性が高まる。本発明は上記課題に鑑み、応力を抑制することが可能な弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体により弾性波を励振する振動部が露出するように、前記振動部が形成された基板を封止する第1封止部を設ける工程と、前記振動部が空隙に露出するように前記振動部を覆い、かつ前記基板を個片化するためのダイシングラインに対応した位置に切欠部を形成した第2封止部を、前記第1封止部上に設ける工程と、前記第2封止部を設ける工程の後に、前記第2封止部を加熱する工程と、前記ダイシングラインに沿って、前記第2封止部及び前記基板を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有する弾性波デバイスの製造方法である。本発明によれば、応力を抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記第1封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインが露出するように、前記第1封止部を設ける構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に応力を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通する電極を設ける工程を有し、前記第2封止部を設ける工程は、複数の前記電極間に前記切欠部が形成されるように、前記第2封止部を設ける工程である構成とすることができる。この構成によれば、気密性を高めることができる。また、電極の形成を良好に行うことができる。
【0009】
上記構成において、前記第2封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインに沿って前記基板が個片化された後に前記基板の辺となる複数の領域の各々の上に前記切欠部を有する第2封止部を設ける工程とすることができる。この構成によれば、より効果的に応力を抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記第2封止部を設ける工程は、形状が異なる複数の前記切欠部が形成されるように前記第2封止部を設ける工程とすることができる。
【0011】
本発明は、基板と、前記基板に設けられ、圧電体により弾性波を励振する振動部と、前記振動部が空隙に露出するように、前記基板上に設けられた第1封止部と、前記振動部が前記空隙に露出し、かつ前記基板の外周の一部に切欠部を有するように、前記第1封止部上に設けられた第2封止部と、を具備する弾性波デバイスである。本発明によれば、応力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、応力を抑制することが可能な弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、比較例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)は比較例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図2】図2(a)は、比較例2に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は、比較例3に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図3】図3(a)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図である。図3(b)は、図3(a)の拡大図である。図3(c)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図4】図4(a)から図4(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図5】図5(a)から図5(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図6】図6は、実施例2に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【図7】図7は、実施例3に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【図8】図8は、実施例4に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例の説明の前に、比較例としてSAWデバイスの例について説明する。まず比較例1について説明する。図1(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)は比較例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図1(a)及び図1(b)では、個片化前の弾性波デバイスを図示している。また、図1(b)は、図1(a)のA−A及びB−Bに沿った断面図であり、左側はA−A断面、右側はB−B断面を示す。図1(a)では、ウェハ状の圧電基板に4個の弾性波デバイス100R−1が形成された状態を示している。なお、ウェハ状態のものを弾性波デバイスとし、ウェハ状態のものが個片化され弾性波デバイスチップが形成される。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、比較例1に係る弾性波デバイス100R−1では、圧電体からなる圧電基板110上に振動部111、配線112、及び第1封止部113が設けられる。第1封止部113上には第2封止部114が設けられる。また、第1封止部113及び第2封止部114を貫通し、配線112と電気的に接続された貫通電極115が設けられている。貫通電極115の表面には、電極116が設けられている。振動部111は、IDT及び反射器を含み弾性波を励振する。振動部111は、振動部111上に形成された空隙117に露出する。振動部111と電極116との間は、配線112及び貫通電極115を介して電気的に接続される。第1封止部113及び第2封止部114は、振動部111を封止し、振動部111への水分及び異物の浸入等を抑制する。これにより、振動部111が保護され、弾性波デバイス100R−1の特性は良好に確保される。ウェハとして形成された圧電基板110は、ダイシングライン118において個片化される。これにより、1枚のウェハから複数の弾性波デバイスチップが取得される。
【0016】
第1封止部113及び第2封止部114は、例えば感光性エポキシ樹脂等の樹脂からなり、露光及び現像により成形される。また第1封止部113及び第2封止部114は、熱硬化性を有し、加熱されることにより硬化する。それぞれの加熱・硬化工程において、圧電基板110を炉に投入して加熱を行う際、圧電基板110と、第1封止部113及び第2封止部114との熱膨張係数の差により、圧電基板110に応力がかかることがある。特に、比較例1においては、第1封止部113及び第2封止部114が圧電基板110の全体を覆うように設けられている。従って、圧電基板110には大きな応力が加わる恐れがある。応力により、圧電基板110に反りが生じることがある。圧電基板110に反りが生じると、例えば吸着ツールにより圧電基板110が十分に吸着されず、弾性波デバイスの移動・搬送中に落下が生じて圧電基板110が割れるなど、不良品の発生が増大することがある。
【0017】
次に比較例2及び3について説明する。図2(a)は、比較例2に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は、比較例3に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【0018】
図2(a)に示すように、比較例2に係る弾性波デバイス100R−2では、第1封止部113及び第2封止部114が、ダイシングライン118上には設けられていない。従って、圧電基板110に加わる応力は抑制される。しかしながら、例えば、貫通電極115の材料となる金属、及び電極116の材料となる半田等の異物が、圧電基板110のダイシングライン118に落ち込むことがある。これにより、ダイシング工程が困難となる恐れがある。
【0019】
図2(b)に示すように、比較例3に係る弾性波デバイス100R−3では、第1封止部13はダイシングライン118上には設けられず、第2封止部114はダイシングライン118を覆うように設けられる。第2封止部114はダイシングライン118を保護する蓋として機能し、異物の落ち込みを抑制することができる。しかしながら、第2封止部114は圧電基板110の全体を覆うように設けられているため、比較例1と同様に圧電基板110に大きな応力が加わる恐れがある。以上のように、封止部(第1封止部113及び第2封止部114)には、振動部111の保護だけでなく、応力の抑制、及びダイシングラインの保護も要求される。
【0020】
次に、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図3(a)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図である。図3(b)は、図3(a)中央部の破線に囲まれた領域Sの拡大図である。図3(c)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図3(a)における切断線A−Aに沿った断面をQ1に示し、図3(a)における切断線B−Bに沿った断面をQ2に示している。
【0022】
図3(a)及び図3(c)に示すように、実施例1に係る弾性波デバイス100は、圧電体からなる圧電基板10、振動部11、配線12、第1封止部13、第2封止部14、電極16、及び貫通電極15を備える。振動部11、配線12、及び第1封止部13は圧電基板10上に設けられている。SAWデバイスの場合、振動部11は圧電体である圧電基板10の表面に形成される。圧電基板10は、圧電作用により振動部11に含まれるIDTにおいて電気エネルギーを弾性表面波の振動に変換(又はその逆の変換)すると共に、素子全体を支持する基板としての役割を持つ。第2封止部14は、振動部11を覆うように、第1封止部13上に設けられている。つまり、第1封止部13及び第2封止部14は、圧電基板10を封止する。振動部11は、第1封止部13及び第2封止部14に囲まれた空隙17に露出する。このため、振動部11による弾性波の励振は妨げられない。貫通電極15は、第1封止部13を貫通し、第2封止部14内に延在している。貫通電極15の下端部は配線12と電気的に接続され、また貫通電極15の上面には、第2封止部14から露出するように電極16が設けられている。すなわち、振動部11と電極16との間は、配線12及び貫通電極15を介して電気的に接続されている。電極16は、弾性波デバイス100と外部とを接続する外部接続端子として機能する。
【0023】
図3(a)及び図3(b)中の点線Cは、第1封止部13の外周端部を示す。破線Dは、圧電基板10の個片化後に、第2封止部14の外周端部となる部分を示す。第2封止部14は、複数のダイシングライン18の各々に沿って平行する切欠部19a、19b、及び19s(以下、これらを総称して切欠部19と称する場合がある。このことは、切欠部619、719及び819の各々についても同様である。)を有する。なお、ダイシングライン18は、平面図では便宜的に実線で、断面図では破線で示してある。図3(a)及び図3(b)に示すように、第2封止部14は、個片化後の圧電基板10の辺となる複数の領域の各々の上に切欠部19を有する。複数の切欠部19の各々は、各ダイシングライン18上であって、隣り合う電極16の間に形成されている。切欠部19の内端(振動部11側の端面)は、第1封止部13の外周端部とほぼ一致している。従って、切欠部19にあっては、第1封止部13及び第2封止部14を積層方向に連通した空間が形成されている。積層方向とは、圧電基板10の厚さ方向である。図3(b)に破線の円で囲んだように、切欠部19の角20aは90°の角度を有する。つまり切欠部19の平面形状は長方形である。切欠部19のうち、図3(a)中における弾性波デバイスの左辺及び右辺に設けられている切欠部を切欠部19aとする。切欠部19のうち、上辺及び下辺に設けられている切欠部を切欠部19bとする。前述の如く、第2封止部14は、切欠部19の内端において第1封止部13の外周端とほぼ一致し、かつ切欠部19以外の部位においては第1封止部13よりも外側にせり出し、圧電基板10の外形とほぼ一致した形状を有する。弾性波デバイス100の長さL1は例えば1mm、幅W1は例えば0.9mmである。切欠部19aの長さL2は例えば0.1mm、幅W2は例えば0.05mmである。切欠部19bの長さL3は例えば0.05mm、幅W3は例えば0.3mmである。なお、長さ方向は図3(a)の積層方向、幅方向は図3(a)の左右方向とした。
【0024】
圧電基板10は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)又はニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電体からなる。振動部11及び配線12は、例えばアルミニウム(Al)合金等の金属からなる。アルミニウム合金とは、アルミニウムを含む合金であり、例えばアルミニウムを主成分として、銅(Cu)を添加した合金等である。第1封止部13及び第2封止部14は、例えば熱硬化性を有する感光性エポキシ樹脂等の樹脂からなる。貫通電極15は、例えば配線12に近い方からチタン(Ti)及び金(Au)を積層した下地層の上に、ニッケル(Ni)及び金(Au)を設けて形成される。電極16は、例えば錫銀(SnAg)等の半田からなる。
【0025】
次に、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法について説明する。図4(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【0026】
図4(a)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、アルミニウム(Al)を主成分とする金属層を圧電基板10上面の全体に形成後、一般的なリソグラフィーにより金属層をパターニングし、エッチングにより金属層の不要部分を除去して、圧電基板10上に振動部11及び配線12を設ける。このように、振動部11及び配線12は、同じ金属材料層からなる。図4(b)に示すように、例えば液状の感光性樹脂13aを、圧電基板10、振動部11及び配線12上に塗布する。図4(c)に示すように、マスク21aを介してUV(Ultra Violet;紫外線)を照射し、感光性樹脂13aの露光処理を行う。UVは、マスク21aの斜線部分では遮断され、空白部分は透過する。
【0027】
現像工程を経て、図4(d)に示すように、感光性樹脂13aのうち、UVの照射された部分は残存し、UVの照射されなかった部分は除去される。残された感光性樹脂13aパターンは、所定温度でかつ所定時間加熱処理され、硬化する。これにより、圧電基板10上に、選択的に第1封止部13が成形される。すなわち、ダイシングライン18を含む圧電基板10の外周部、振動部11、配線12の一部が選択的に表出された状態をもって第1封止部13が成形される。これにより、振動部11は開口11Wにより、また配線12の一部は開口12W1において表出される。一方、かかる第1封止部13は、その外周端部がダイシングライン18から離間して、すなわち個々の弾性波デバイスチップごとに分離して配設される。
【0028】
次いで、保護フィルム22に貼り付けられた感光性樹脂14aを、図4(e)に示すように、例えば、ラミネータ23を用いて第1封止部13上に粘着・積層する。このとき、感光性樹脂14aは、第1封止部13上を覆って被着されるため、少なくともダイシングライン18、振動部11及び配線12は、感光性樹脂14aにより覆われる。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、マスク21bを介して感光性樹脂14aに対してUVを選択的に照射し、露光処理を行う。保護フィルム22を除去した後、現像工程を経て、図5(b)に示すように、感光性樹脂14aからなる第2封止部14を形成する。感光性樹脂14aのうち、UVの照射された部分が残存し、UVの照射されなかった部分は除去される。残された感光性樹脂14aパターンは、所定温度で且つ所定時間加熱処理され、硬化する。これにより、圧電基板10上に選択的に第2封止部14が成形される。形成された第2封止部14には、前記第1封止部13に設けられた電極配設用開口12W1に連通する開口12W2と共に、圧電基板10のダイシングラインに対応した位置に平面形状が矩形状の開口19sが選択的に配設されている。かかる矩形状の開口19sは、個片化される圧電基板10の外形に対応し、且つその一辺に少なくとも一つ配設されている。
【0030】
かかる第2封止部14の配置により、前記図3(a)に於ける切断線A−Aに沿った断面に於いては、振動部11上には、第1封止部13と第2封止部14とによって囲まれた空隙17が形成される。また、第2封止部14に設けられた矩形状の開口19sに於いて、ダイシングライン18に沿って、当該圧電基板10が表出される。一方、前記図3(a)に於ける切断線B−Bに沿った断面に於いては、矩形状の開口19sが位置しないことにより、第2封止部14が第1封止部13を越えてダイシングライン18上に延在している。
【0031】
次いで、図5(c)に示すように、例えばメッキ法等により、前記開口12W1に連通する開口12W2内に貫通電極15を形成する。貫通電極15形成後に、半田ペーストを貫通電極15上に設け、半田リフロー処理を行い、電極16を形成する。
【0032】
しかる後、図5(d)に示すように、ダイシング法により、ダイシングライン18に沿って、圧電基板10及び第2封止部14を切断する。これにより個片化された複数の弾性波デバイスチップ100aが形成される。かかるダイシング処理により、前記開口19sは分割され、それぞれの弾性波デバイスチップの第2封止部14における切欠部19a又は切欠部19bを形成する。
【0033】
このような実施例1によれば、第1封止部13上に感光性樹脂14aを被着し、パターニング後に加熱処理して硬化させ第2封止部14を形成するが、パターニングされた感光性樹脂層には矩形状の開口19sが配設されていることにより、加熱に伴う感光性樹脂層の変形が防止・抑制される。従って、圧電基板10にもたらされる応力が減少・緩和されて、圧電基板10自体或いは圧電素子領域に於ける破損が防止・抑制される。なお、前記開口19sを除き、ダイシングライン上には感光性樹脂14aが存在することから、ダイシング処理の際、ダイシングライン上に異物が落ち込むことが抑制される。また、電極16を形成する際の半田リフロー処理は、加熱処理時間が短く、圧電基板10に応力をもたらすことは生じない。
【0034】
一方、前記第1封止部13は、前述の如く、その端部がダイシングライン18から離間して即ち個々の弾性波デバイスチップ100a毎に分離して配設されており、ダイシング工程の際には、ダイシング処理の対象部位とはならない。従って、かかるダイシング処理を効率的に実施することができる。かかる第1封止部13は、相互に分離して設けられているため、上記感光性樹脂14aの加熱・硬化処理の際にも、応力の増加に寄与しない。
【0035】
図3(a)に示すように、切欠部19は、隣り合う電極16の間に配置されている。従って、切欠部19と電極16との間の距離は大きく、気密性を高く保つことができる。また、このように、切欠部19と電極16との間の距離が大きいことから、第2封止部14の上面(表面)に於いて、電極16の周囲、即ち、第2封止部14の開口12W2の周囲には比較的広い平坦面が生じる。前述の如く、電極16を半田リフロー処理により形成する際には、十分な半田量を得る為に、電極材料である半田ペーストを、貫通電極15の上面から開口12W2の周囲の比較的広い範囲に配置する必要がある。これに対し、上記比較的広い平坦面の存在は、所望量の半田ペーストの被着を容易とする。
【0036】
更に、前記第1の実施例にあっては、切欠部19は図3(a)に示すように、個片化後の圧電基板10の各辺に対応してそれぞれ設けられている。従って、より効果的に応力を抑制することができる。勿論、かかる切欠部19は、圧電基板10の複数の辺のうち、一部の辺、例えば対向する2辺に沿って配設される構成とすることもできる。但し、応力の抑制・緩和のためには、切欠部19は圧電基板10の各辺に対応して設けられることが好ましい。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、図3(a)に示される切欠部19の形状を変更した例である。図6は、実施例2に係る弾性波デバイス100Kを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0038】
実施例2に係る弾性波デバイス100Kにあっては、図6において破線の円20bで囲んだように、第2封止部14の切欠部619における隅部は、点線で示した第1封止部13の外周端部に対して90°以上の角度(鈍角)を有している。かかる鈍角部を含む切欠部619を形成する際には、前記開口19sの平面形状は6角形とされる(図示せず)。このように、切欠部619a又は619bの形状を変更した場合でも、応力を抑制することが可能である。
【実施例3】
【0039】
実施例3は、図3(a)に示される切欠部19の形状を変更した別の例である。図7は、実施例3に係る弾性波デバイス100Lを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0040】
実施例3に係る弾性波デバイス100Lにあっては、図7において破線の円20cで囲んだように、第2封止部14の切欠部719の隅部は、点線で示した第1封止部13の外周端部に対して円弧状を有している。かかる、円弧状部を含む切欠部719を形成する際には、前記開口19sの平面形状は、両端に半円部を有する矩形とされる(図示せず)。このように、切欠部719a又は719bの形状を変更した場合でも、応力を抑制することが可能である。
【実施例4】
【0041】
実施例4は、図3に示される切欠部19が、更に異なるパターンを有する例である。図8は、実施例4に係る弾性波デバイス100Mを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0042】
実施例4に係る弾性波デバイス100Mにあっては、図8において破線の楕円20dで囲んだように、第2封止部14における複数の切欠部819のうち、弾性波デバイスチップの上辺に設けられた切欠部819b内に、1つの凸部24を配設している。ちなみに、下辺にある切欠部819bには凸部24を配設していない。かかる凸部24を含む切欠部819を形成する際には、例えば両端に半円部を有する矩形状開口を、ダイシングラインに沿って相互に離間して配置する(図示せず)。
【0043】
選択された辺の切欠部819内に凸部24を配設することにより、他の辺に在る切欠部との平面パターンの相違が生じ、もって弾性波デバイスチップに於ける方向(端子位置)を示すことができ、個々の弾性波デバイスチップの試験及び/或いは支持基板への実装工程の効率化を図ることができる。かかる凸部24の形状、占有面積、個数等は、特に制限されるものではないが、切欠部819を設けることの本来の目的を満たす範囲内、即ち熱処理時の応力の減少・緩和が実行される範囲で選択される必要がある。また、凸部24の配設箇所も、方位(端子位置)を示す他、必要とされる目的に沿って選択されることは可能である。
【0044】
実施例1〜4において、弾性波デバイスチップ100aはSAWデバイスチップであるとしたが、弾性波デバイスを、例えば弾性境界波デバイス、ラブ波デバイスチップ、及びFBARデバイスチップ等、他の弾性波デバイスチップとしてもよい。FBARを用いる場合、圧電基板10の代わりに、例えばシリコン(Si)からなる基板を用いる。また、振動部11は、圧電体からなる圧電薄膜を挟む上部電極及び下部電極とが重なる領域である。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
圧電基板 10
振動部 11
配線 12
第1封止部 13
第2封止部 14
電極 16
空隙 17
ダイシングライン 18
切欠部 19、19a、19b、19d、619a、619b、719a、719b、819a、819b
開口 19s
凸部 24
弾性波デバイス 100、100K、100L、100M
弾性波デバイスチップ 100a
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等にフィルタ又はデュプレクサとして用いられる弾性波デバイスチップには、小型化が要求されている。弾性波デバイスチップに用いる弾性波素子としては、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)を形成した弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子、及び圧電膜を電極で挟んだ圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)がある。例えば、特許文献1には、圧電基板のIDT等が形成された面の全体が封止部により覆われたSAWデバイスが記載されている。特許文献2には、圧電基板のダイシングラインへの異物の落下を抑制するため、封止部によりダイシングラインを覆うSAWデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−261582号公報
【特許文献2】特開2008−135998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、封止部を加熱した際に、圧電基板に大きな応力が加わる恐れがある。また、特許文献2記載の発明では、異物の落下を抑制することはできるが、封止部がダイシングラインを覆うため、特許文献1と同様に圧電基板に大きな応力が加わる恐れがある。なお、FBARの場合でも、圧電膜を設けた基板に大きな応力が加わることがある。
【0005】
このように基板に大きな応力が加わることにより、不良品の増加、及び弾性波デバイスの破損が生じる可能性が高まる。本発明は上記課題に鑑み、応力を抑制することが可能な弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体により弾性波を励振する振動部が露出するように、前記振動部が形成された基板を封止する第1封止部を設ける工程と、前記振動部が空隙に露出するように前記振動部を覆い、かつ前記基板を個片化するためのダイシングラインに対応した位置に切欠部を形成した第2封止部を、前記第1封止部上に設ける工程と、前記第2封止部を設ける工程の後に、前記第2封止部を加熱する工程と、前記ダイシングラインに沿って、前記第2封止部及び前記基板を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有する弾性波デバイスの製造方法である。本発明によれば、応力を抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記第1封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインが露出するように、前記第1封止部を設ける構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に応力を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通する電極を設ける工程を有し、前記第2封止部を設ける工程は、複数の前記電極間に前記切欠部が形成されるように、前記第2封止部を設ける工程である構成とすることができる。この構成によれば、気密性を高めることができる。また、電極の形成を良好に行うことができる。
【0009】
上記構成において、前記第2封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインに沿って前記基板が個片化された後に前記基板の辺となる複数の領域の各々の上に前記切欠部を有する第2封止部を設ける工程とすることができる。この構成によれば、より効果的に応力を抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記第2封止部を設ける工程は、形状が異なる複数の前記切欠部が形成されるように前記第2封止部を設ける工程とすることができる。
【0011】
本発明は、基板と、前記基板に設けられ、圧電体により弾性波を励振する振動部と、前記振動部が空隙に露出するように、前記基板上に設けられた第1封止部と、前記振動部が前記空隙に露出し、かつ前記基板の外周の一部に切欠部を有するように、前記第1封止部上に設けられた第2封止部と、を具備する弾性波デバイスである。本発明によれば、応力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、応力を抑制することが可能な弾性波デバイス、及び弾性波デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、比較例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)は比較例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図2】図2(a)は、比較例2に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は、比較例3に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図3】図3(a)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図である。図3(b)は、図3(a)の拡大図である。図3(c)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図4】図4(a)から図4(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図5】図5(a)から図5(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図6】図6は、実施例2に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【図7】図7は、実施例3に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【図8】図8は、実施例4に係る弾性波デバイスを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例の説明の前に、比較例としてSAWデバイスの例について説明する。まず比較例1について説明する。図1(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)は比較例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図1(a)及び図1(b)では、個片化前の弾性波デバイスを図示している。また、図1(b)は、図1(a)のA−A及びB−Bに沿った断面図であり、左側はA−A断面、右側はB−B断面を示す。図1(a)では、ウェハ状の圧電基板に4個の弾性波デバイス100R−1が形成された状態を示している。なお、ウェハ状態のものを弾性波デバイスとし、ウェハ状態のものが個片化され弾性波デバイスチップが形成される。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、比較例1に係る弾性波デバイス100R−1では、圧電体からなる圧電基板110上に振動部111、配線112、及び第1封止部113が設けられる。第1封止部113上には第2封止部114が設けられる。また、第1封止部113及び第2封止部114を貫通し、配線112と電気的に接続された貫通電極115が設けられている。貫通電極115の表面には、電極116が設けられている。振動部111は、IDT及び反射器を含み弾性波を励振する。振動部111は、振動部111上に形成された空隙117に露出する。振動部111と電極116との間は、配線112及び貫通電極115を介して電気的に接続される。第1封止部113及び第2封止部114は、振動部111を封止し、振動部111への水分及び異物の浸入等を抑制する。これにより、振動部111が保護され、弾性波デバイス100R−1の特性は良好に確保される。ウェハとして形成された圧電基板110は、ダイシングライン118において個片化される。これにより、1枚のウェハから複数の弾性波デバイスチップが取得される。
【0016】
第1封止部113及び第2封止部114は、例えば感光性エポキシ樹脂等の樹脂からなり、露光及び現像により成形される。また第1封止部113及び第2封止部114は、熱硬化性を有し、加熱されることにより硬化する。それぞれの加熱・硬化工程において、圧電基板110を炉に投入して加熱を行う際、圧電基板110と、第1封止部113及び第2封止部114との熱膨張係数の差により、圧電基板110に応力がかかることがある。特に、比較例1においては、第1封止部113及び第2封止部114が圧電基板110の全体を覆うように設けられている。従って、圧電基板110には大きな応力が加わる恐れがある。応力により、圧電基板110に反りが生じることがある。圧電基板110に反りが生じると、例えば吸着ツールにより圧電基板110が十分に吸着されず、弾性波デバイスの移動・搬送中に落下が生じて圧電基板110が割れるなど、不良品の発生が増大することがある。
【0017】
次に比較例2及び3について説明する。図2(a)は、比較例2に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は、比較例3に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図である。
【0018】
図2(a)に示すように、比較例2に係る弾性波デバイス100R−2では、第1封止部113及び第2封止部114が、ダイシングライン118上には設けられていない。従って、圧電基板110に加わる応力は抑制される。しかしながら、例えば、貫通電極115の材料となる金属、及び電極116の材料となる半田等の異物が、圧電基板110のダイシングライン118に落ち込むことがある。これにより、ダイシング工程が困難となる恐れがある。
【0019】
図2(b)に示すように、比較例3に係る弾性波デバイス100R−3では、第1封止部13はダイシングライン118上には設けられず、第2封止部114はダイシングライン118を覆うように設けられる。第2封止部114はダイシングライン118を保護する蓋として機能し、異物の落ち込みを抑制することができる。しかしながら、第2封止部114は圧電基板110の全体を覆うように設けられているため、比較例1と同様に圧電基板110に大きな応力が加わる恐れがある。以上のように、封止部(第1封止部113及び第2封止部114)には、振動部111の保護だけでなく、応力の抑制、及びダイシングラインの保護も要求される。
【0020】
次に、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図3(a)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する平面図である。図3(b)は、図3(a)中央部の破線に囲まれた領域Sの拡大図である。図3(c)は、実施例1に係る個片化前の弾性波デバイスを例示する断面図であり、図3(a)における切断線A−Aに沿った断面をQ1に示し、図3(a)における切断線B−Bに沿った断面をQ2に示している。
【0022】
図3(a)及び図3(c)に示すように、実施例1に係る弾性波デバイス100は、圧電体からなる圧電基板10、振動部11、配線12、第1封止部13、第2封止部14、電極16、及び貫通電極15を備える。振動部11、配線12、及び第1封止部13は圧電基板10上に設けられている。SAWデバイスの場合、振動部11は圧電体である圧電基板10の表面に形成される。圧電基板10は、圧電作用により振動部11に含まれるIDTにおいて電気エネルギーを弾性表面波の振動に変換(又はその逆の変換)すると共に、素子全体を支持する基板としての役割を持つ。第2封止部14は、振動部11を覆うように、第1封止部13上に設けられている。つまり、第1封止部13及び第2封止部14は、圧電基板10を封止する。振動部11は、第1封止部13及び第2封止部14に囲まれた空隙17に露出する。このため、振動部11による弾性波の励振は妨げられない。貫通電極15は、第1封止部13を貫通し、第2封止部14内に延在している。貫通電極15の下端部は配線12と電気的に接続され、また貫通電極15の上面には、第2封止部14から露出するように電極16が設けられている。すなわち、振動部11と電極16との間は、配線12及び貫通電極15を介して電気的に接続されている。電極16は、弾性波デバイス100と外部とを接続する外部接続端子として機能する。
【0023】
図3(a)及び図3(b)中の点線Cは、第1封止部13の外周端部を示す。破線Dは、圧電基板10の個片化後に、第2封止部14の外周端部となる部分を示す。第2封止部14は、複数のダイシングライン18の各々に沿って平行する切欠部19a、19b、及び19s(以下、これらを総称して切欠部19と称する場合がある。このことは、切欠部619、719及び819の各々についても同様である。)を有する。なお、ダイシングライン18は、平面図では便宜的に実線で、断面図では破線で示してある。図3(a)及び図3(b)に示すように、第2封止部14は、個片化後の圧電基板10の辺となる複数の領域の各々の上に切欠部19を有する。複数の切欠部19の各々は、各ダイシングライン18上であって、隣り合う電極16の間に形成されている。切欠部19の内端(振動部11側の端面)は、第1封止部13の外周端部とほぼ一致している。従って、切欠部19にあっては、第1封止部13及び第2封止部14を積層方向に連通した空間が形成されている。積層方向とは、圧電基板10の厚さ方向である。図3(b)に破線の円で囲んだように、切欠部19の角20aは90°の角度を有する。つまり切欠部19の平面形状は長方形である。切欠部19のうち、図3(a)中における弾性波デバイスの左辺及び右辺に設けられている切欠部を切欠部19aとする。切欠部19のうち、上辺及び下辺に設けられている切欠部を切欠部19bとする。前述の如く、第2封止部14は、切欠部19の内端において第1封止部13の外周端とほぼ一致し、かつ切欠部19以外の部位においては第1封止部13よりも外側にせり出し、圧電基板10の外形とほぼ一致した形状を有する。弾性波デバイス100の長さL1は例えば1mm、幅W1は例えば0.9mmである。切欠部19aの長さL2は例えば0.1mm、幅W2は例えば0.05mmである。切欠部19bの長さL3は例えば0.05mm、幅W3は例えば0.3mmである。なお、長さ方向は図3(a)の積層方向、幅方向は図3(a)の左右方向とした。
【0024】
圧電基板10は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)又はニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電体からなる。振動部11及び配線12は、例えばアルミニウム(Al)合金等の金属からなる。アルミニウム合金とは、アルミニウムを含む合金であり、例えばアルミニウムを主成分として、銅(Cu)を添加した合金等である。第1封止部13及び第2封止部14は、例えば熱硬化性を有する感光性エポキシ樹脂等の樹脂からなる。貫通電極15は、例えば配線12に近い方からチタン(Ti)及び金(Au)を積層した下地層の上に、ニッケル(Ni)及び金(Au)を設けて形成される。電極16は、例えば錫銀(SnAg)等の半田からなる。
【0025】
次に、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法について説明する。図4(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【0026】
図4(a)に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、アルミニウム(Al)を主成分とする金属層を圧電基板10上面の全体に形成後、一般的なリソグラフィーにより金属層をパターニングし、エッチングにより金属層の不要部分を除去して、圧電基板10上に振動部11及び配線12を設ける。このように、振動部11及び配線12は、同じ金属材料層からなる。図4(b)に示すように、例えば液状の感光性樹脂13aを、圧電基板10、振動部11及び配線12上に塗布する。図4(c)に示すように、マスク21aを介してUV(Ultra Violet;紫外線)を照射し、感光性樹脂13aの露光処理を行う。UVは、マスク21aの斜線部分では遮断され、空白部分は透過する。
【0027】
現像工程を経て、図4(d)に示すように、感光性樹脂13aのうち、UVの照射された部分は残存し、UVの照射されなかった部分は除去される。残された感光性樹脂13aパターンは、所定温度でかつ所定時間加熱処理され、硬化する。これにより、圧電基板10上に、選択的に第1封止部13が成形される。すなわち、ダイシングライン18を含む圧電基板10の外周部、振動部11、配線12の一部が選択的に表出された状態をもって第1封止部13が成形される。これにより、振動部11は開口11Wにより、また配線12の一部は開口12W1において表出される。一方、かかる第1封止部13は、その外周端部がダイシングライン18から離間して、すなわち個々の弾性波デバイスチップごとに分離して配設される。
【0028】
次いで、保護フィルム22に貼り付けられた感光性樹脂14aを、図4(e)に示すように、例えば、ラミネータ23を用いて第1封止部13上に粘着・積層する。このとき、感光性樹脂14aは、第1封止部13上を覆って被着されるため、少なくともダイシングライン18、振動部11及び配線12は、感光性樹脂14aにより覆われる。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、マスク21bを介して感光性樹脂14aに対してUVを選択的に照射し、露光処理を行う。保護フィルム22を除去した後、現像工程を経て、図5(b)に示すように、感光性樹脂14aからなる第2封止部14を形成する。感光性樹脂14aのうち、UVの照射された部分が残存し、UVの照射されなかった部分は除去される。残された感光性樹脂14aパターンは、所定温度で且つ所定時間加熱処理され、硬化する。これにより、圧電基板10上に選択的に第2封止部14が成形される。形成された第2封止部14には、前記第1封止部13に設けられた電極配設用開口12W1に連通する開口12W2と共に、圧電基板10のダイシングラインに対応した位置に平面形状が矩形状の開口19sが選択的に配設されている。かかる矩形状の開口19sは、個片化される圧電基板10の外形に対応し、且つその一辺に少なくとも一つ配設されている。
【0030】
かかる第2封止部14の配置により、前記図3(a)に於ける切断線A−Aに沿った断面に於いては、振動部11上には、第1封止部13と第2封止部14とによって囲まれた空隙17が形成される。また、第2封止部14に設けられた矩形状の開口19sに於いて、ダイシングライン18に沿って、当該圧電基板10が表出される。一方、前記図3(a)に於ける切断線B−Bに沿った断面に於いては、矩形状の開口19sが位置しないことにより、第2封止部14が第1封止部13を越えてダイシングライン18上に延在している。
【0031】
次いで、図5(c)に示すように、例えばメッキ法等により、前記開口12W1に連通する開口12W2内に貫通電極15を形成する。貫通電極15形成後に、半田ペーストを貫通電極15上に設け、半田リフロー処理を行い、電極16を形成する。
【0032】
しかる後、図5(d)に示すように、ダイシング法により、ダイシングライン18に沿って、圧電基板10及び第2封止部14を切断する。これにより個片化された複数の弾性波デバイスチップ100aが形成される。かかるダイシング処理により、前記開口19sは分割され、それぞれの弾性波デバイスチップの第2封止部14における切欠部19a又は切欠部19bを形成する。
【0033】
このような実施例1によれば、第1封止部13上に感光性樹脂14aを被着し、パターニング後に加熱処理して硬化させ第2封止部14を形成するが、パターニングされた感光性樹脂層には矩形状の開口19sが配設されていることにより、加熱に伴う感光性樹脂層の変形が防止・抑制される。従って、圧電基板10にもたらされる応力が減少・緩和されて、圧電基板10自体或いは圧電素子領域に於ける破損が防止・抑制される。なお、前記開口19sを除き、ダイシングライン上には感光性樹脂14aが存在することから、ダイシング処理の際、ダイシングライン上に異物が落ち込むことが抑制される。また、電極16を形成する際の半田リフロー処理は、加熱処理時間が短く、圧電基板10に応力をもたらすことは生じない。
【0034】
一方、前記第1封止部13は、前述の如く、その端部がダイシングライン18から離間して即ち個々の弾性波デバイスチップ100a毎に分離して配設されており、ダイシング工程の際には、ダイシング処理の対象部位とはならない。従って、かかるダイシング処理を効率的に実施することができる。かかる第1封止部13は、相互に分離して設けられているため、上記感光性樹脂14aの加熱・硬化処理の際にも、応力の増加に寄与しない。
【0035】
図3(a)に示すように、切欠部19は、隣り合う電極16の間に配置されている。従って、切欠部19と電極16との間の距離は大きく、気密性を高く保つことができる。また、このように、切欠部19と電極16との間の距離が大きいことから、第2封止部14の上面(表面)に於いて、電極16の周囲、即ち、第2封止部14の開口12W2の周囲には比較的広い平坦面が生じる。前述の如く、電極16を半田リフロー処理により形成する際には、十分な半田量を得る為に、電極材料である半田ペーストを、貫通電極15の上面から開口12W2の周囲の比較的広い範囲に配置する必要がある。これに対し、上記比較的広い平坦面の存在は、所望量の半田ペーストの被着を容易とする。
【0036】
更に、前記第1の実施例にあっては、切欠部19は図3(a)に示すように、個片化後の圧電基板10の各辺に対応してそれぞれ設けられている。従って、より効果的に応力を抑制することができる。勿論、かかる切欠部19は、圧電基板10の複数の辺のうち、一部の辺、例えば対向する2辺に沿って配設される構成とすることもできる。但し、応力の抑制・緩和のためには、切欠部19は圧電基板10の各辺に対応して設けられることが好ましい。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、図3(a)に示される切欠部19の形状を変更した例である。図6は、実施例2に係る弾性波デバイス100Kを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0038】
実施例2に係る弾性波デバイス100Kにあっては、図6において破線の円20bで囲んだように、第2封止部14の切欠部619における隅部は、点線で示した第1封止部13の外周端部に対して90°以上の角度(鈍角)を有している。かかる鈍角部を含む切欠部619を形成する際には、前記開口19sの平面形状は6角形とされる(図示せず)。このように、切欠部619a又は619bの形状を変更した場合でも、応力を抑制することが可能である。
【実施例3】
【0039】
実施例3は、図3(a)に示される切欠部19の形状を変更した別の例である。図7は、実施例3に係る弾性波デバイス100Lを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0040】
実施例3に係る弾性波デバイス100Lにあっては、図7において破線の円20cで囲んだように、第2封止部14の切欠部719の隅部は、点線で示した第1封止部13の外周端部に対して円弧状を有している。かかる、円弧状部を含む切欠部719を形成する際には、前記開口19sの平面形状は、両端に半円部を有する矩形とされる(図示せず)。このように、切欠部719a又は719bの形状を変更した場合でも、応力を抑制することが可能である。
【実施例4】
【0041】
実施例4は、図3に示される切欠部19が、更に異なるパターンを有する例である。図8は、実施例4に係る弾性波デバイス100Mを例示する平面図であり、個片化された後の弾性表面波デバイスチップを示している。
【0042】
実施例4に係る弾性波デバイス100Mにあっては、図8において破線の楕円20dで囲んだように、第2封止部14における複数の切欠部819のうち、弾性波デバイスチップの上辺に設けられた切欠部819b内に、1つの凸部24を配設している。ちなみに、下辺にある切欠部819bには凸部24を配設していない。かかる凸部24を含む切欠部819を形成する際には、例えば両端に半円部を有する矩形状開口を、ダイシングラインに沿って相互に離間して配置する(図示せず)。
【0043】
選択された辺の切欠部819内に凸部24を配設することにより、他の辺に在る切欠部との平面パターンの相違が生じ、もって弾性波デバイスチップに於ける方向(端子位置)を示すことができ、個々の弾性波デバイスチップの試験及び/或いは支持基板への実装工程の効率化を図ることができる。かかる凸部24の形状、占有面積、個数等は、特に制限されるものではないが、切欠部819を設けることの本来の目的を満たす範囲内、即ち熱処理時の応力の減少・緩和が実行される範囲で選択される必要がある。また、凸部24の配設箇所も、方位(端子位置)を示す他、必要とされる目的に沿って選択されることは可能である。
【0044】
実施例1〜4において、弾性波デバイスチップ100aはSAWデバイスチップであるとしたが、弾性波デバイスを、例えば弾性境界波デバイス、ラブ波デバイスチップ、及びFBARデバイスチップ等、他の弾性波デバイスチップとしてもよい。FBARを用いる場合、圧電基板10の代わりに、例えばシリコン(Si)からなる基板を用いる。また、振動部11は、圧電体からなる圧電薄膜を挟む上部電極及び下部電極とが重なる領域である。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
圧電基板 10
振動部 11
配線 12
第1封止部 13
第2封止部 14
電極 16
空隙 17
ダイシングライン 18
切欠部 19、19a、19b、19d、619a、619b、719a、719b、819a、819b
開口 19s
凸部 24
弾性波デバイス 100、100K、100L、100M
弾性波デバイスチップ 100a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体により弾性波を励振する振動部が露出するように、前記振動部が形成された基板を封止する第1封止部を設ける工程と、
前記振動部が空隙に露出するように前記振動部を覆い、かつ前記基板を個片化するためのダイシングラインに対応した位置に切欠部を形成した第2封止部を、前記第1封止部上に設ける工程と、
前記第2封止部を設ける工程の後に、前記第2封止部を加熱する工程と、
前記ダイシングラインに沿って、前記第2封止部及び前記基板を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有することを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインが露出するように、前記第1封止部を設けることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通する電極を設ける工程を有し、
前記第2封止部を設ける工程は、複数の前記電極間に前記切欠部が形成されるように、前記第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインに沿って前記基板が個片化された後に前記基板の辺となる複数の領域の各々の上に前記切欠部を有する第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第2封止部を設ける工程は、形状が異なる複数の前記切欠部が形成されるように前記第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板に設けられ、圧電体により弾性波を励振する振動部と、
前記振動部が空隙に露出するように、前記基板上に設けられた第1封止部と、
前記振動部が前記空隙に露出し、かつ前記基板の外周の一部に切欠部を有するように、前記第1封止部上に設けられた第2封止部と、を具備することを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項1】
圧電体により弾性波を励振する振動部が露出するように、前記振動部が形成された基板を封止する第1封止部を設ける工程と、
前記振動部が空隙に露出するように前記振動部を覆い、かつ前記基板を個片化するためのダイシングラインに対応した位置に切欠部を形成した第2封止部を、前記第1封止部上に設ける工程と、
前記第2封止部を設ける工程の後に、前記第2封止部を加熱する工程と、
前記ダイシングラインに沿って、前記第2封止部及び前記基板を、その積層方向に切断分離して、弾性波デバイスチップに分割する工程と、を有することを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインが露出するように、前記第1封止部を設けることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1封止部及び前記第2封止部を貫通する電極を設ける工程を有し、
前記第2封止部を設ける工程は、複数の前記電極間に前記切欠部が形成されるように、前記第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2封止部を設ける工程は、前記ダイシングラインに沿って前記基板が個片化された後に前記基板の辺となる複数の領域の各々の上に前記切欠部を有する第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第2封止部を設ける工程は、形状が異なる複数の前記切欠部が形成されるように前記第2封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板に設けられ、圧電体により弾性波を励振する振動部と、
前記振動部が空隙に露出するように、前記基板上に設けられた第1封止部と、
前記振動部が前記空隙に露出し、かつ前記基板の外周の一部に切欠部を有するように、前記第1封止部上に設けられた第2封止部と、を具備することを特徴とする弾性波デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−170025(P2012−170025A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31440(P2011−31440)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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