説明

弾性率、耐アルカリ性および耐熱性が高い弾性繊維を製造する方法

ここで開示されるのは、弾性率が高く、耐アルカリ性と耐熱性が高い弾性繊維を製造するための方法である。本方法は、ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に酢酸セルロースを前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素の総重量を基準にして1〜20重量%添加しそしてその混合物を均一に撹拌することで紡糸溶液を得、前記紡糸溶液を熟成させそして紡糸する段階を含んで成る。本方法に従うと、当該重合体の製造条件を急激に変えることなく弾性率が高くて耐熱性が高い弾性繊維を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性率が高くて耐アルカリ性および耐熱性が優れた弾性繊維を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に酢酸セルロースを前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素の総重量を基準にして1〜20重量%添加することで紡糸溶液を得て、前記溶液を熟成させそして紡糸することで弾性率が高くて耐アルカリ性および耐熱性が高い弾性繊維を製造する方法に関する。本方法に従うと、当該重合体の製造条件を急激に変えることなく弾性率が高くて耐熱性が高い弾性繊維を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は幅広く多様な用途で用いられている。例えば、弾性繊維はポリエステル繊維と一緒になって三方縦糸編みベルベット布のポリエステル糸をしっかりと保持する働きをする。そのような弾性繊維は良好な毛羽立て状態を形成しかつ維持するに充分なほど高い弾性率を持つと同時にポリエステルベルベット布の次の後処理段階で高温の染色および硬化処理に耐えるに充分な耐熱性を示す必要がある。最近、ベルベット布の付加価値を高める技術としてエンボス加工技術が注目を集めている。いろいろな模様をエンボス加工するには、そのベルベット布の毛羽立てた糸にバーニングアウト(burning−out)および印刷を受けさせて所望の色にする必要がある。そのような工程では不可避的に当該弾性繊維が優れた耐アルカリ性を持つ必要がある。具体的には、そのようなバーニングアウト工程で所望部位の毛羽立てたポリエステル糸を溶解させる目的で高濃度のアルカリ溶液(例えば主に苛性ソーダ溶液)が用いられ、それに印刷用溶液が加えられた後に染料を固着させる目的で高温処理が行われることから、そのような弾性繊維は、当該布に高温状態で残存するアルカリ溶液によって劣化することがないように、優れた耐アルカリ性を持つ必要がある。
【0003】
一般的な弾性繊維を用いてベルベット布を製造しようとする時にしばしば直面する問題は下記である。一般的な弾性繊維が示す弾性率は低いことから、毛羽立てた糸がせん断後に平らになることで弾性繊維が示すベルベット効果が劣るといった現象が起こってしまう。加えて、そのような弾性繊維は後処理の温度が高いことが理由で固有の弾性回復を失うことから、布が広がってしまい、極端なケースでは、弾性繊維の破断が起こってしまう。特に、バーニングアウトおよび印刷が要求されるエンボス加工技術で使用されるアルカリ溶液の濃度が高くかつ熱処理温度が高いと弾性繊維がひどく破断することでベルベット布の中に多数の穴が生じてしまう。
【0004】
そのような問題が理由で、ベルベット布製造業者は、弾性繊維の製造業者に弾性率が高くて耐熱性が高い弾性繊維を要求している。その上、バーニングアウトと印刷を受けさせたベルベット布を製造する業者は、耐アルカリ性が優れているばかりでなく弾性率が高くて耐熱性が優れた弾性繊維の供給も要求している。
【0005】
上述した問題を解決しようとして弾性繊維製造業者が採用する最も一般的な方法は、弾性繊維製造用重合体溶液の中に存在させるハードセグメント(hard segment)の含有量を高くしかつ側鎖を含有せず高い結合力を有する鎖伸長剤(chain extender)の使用を伴う。弾性繊維の弾性率はハードセグメントの含有量を多くすればするほど高くなる。鎖伸長剤を用いると弾性繊維の耐熱性が向上する。しかしながら、そのような工程は重合体溶液粘度の管理の点で困難であることから、そのような重合体溶液を用いて製造した弾性繊維の物性は均一でなくなり、そのような弾性繊維の小規模な製造が要求される場合には適切でない。他方で、弾性繊維はこれの固有の特性が理由で、ある程度ではあるが耐アルカリ性を持つ。しかし約25%から約30%の高濃度の苛性ソーダを160℃〜180℃のような高い温度で加えると容易に劣化する可能性がある。従って、バーニングアウト工程と印刷工程を個別に実施することが行われている。バーニングアウト工程と印刷工程を同時に進行させることを可能にする技術は今日まで確立されていない。
【0006】
従って、本技術分野では、弾性率が高くて耐熱性と耐アルカリ性が優れた弾性繊維を物性が均一でないことに関連した問題を全く伴うことなく容易に製造するに適した方法が求められている。
【0007】
水分吸収特性と生分解性を向上させたポリウレタン弾性繊維が富士紡による日本国特許公開第2000−303259号公報に開示されている。その公報によると、酢酸セルロースをポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に添加し、その混合物を均一に撹拌することで紡糸溶液を得、その溶液を紡糸してアセチルセルロース含有弾性繊維を生成し、そして前記アセチルセルロース含有弾性繊維をアルカリで処理することでポリウレタン弾性繊維を製造している。しかしながら、この公報には、その弾性繊維が耐アルカリ性を示すことも耐熱性を示すことも述べられていない。加えて、その弾性繊維が示す弾性率は上述した問題を解決するにはあまりにも低すぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上述した問題を解決する目的で研究を熱心かつ集中的に行い、その結果として、重合体溶液にアセチル化度が約28%から約72%の酢酸(二酢酸もしくは三酢酸)セルロースを前記重合体溶液の固体含有量(即ち重合体成分)を基準にして1〜20重量%添加し、その混合物を均一に撹拌することで紡糸溶液を得て、当該溶液を前もって決められた時間熟成させ、そしてその熟成させた溶液を紡糸すると、弾性率が高くて耐熱性と耐アルカリ性が優れた弾性繊維を重合粘度が急激に変化することも繊維製品の物性が不均一になることもなく容易に製造することができることを見出した。本発明はこのことが基になった発明である。
【0009】
従って、本発明の目的は、弾性率が高くて耐熱性と耐アルカリ性に優れた弾性繊維を穏やかな工程条件下で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの面に従い、弾性繊維の製造方法を提供し、この方法は、ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に酢酸セルロースを前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素の総重量を基準にして1〜20重量%添加することで紡糸溶液を得て、前記溶液を前もって決められた時間熟成させ、そして前記熟成させた溶液を紡糸する段階を含んで成る。
【0011】
本発明の別の面に従い、本方法で生成した弾性率が高くて耐アルカリ性と耐熱性が高い弾性繊維を提供する。
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いるに適したポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液を本技術分野で公知の手順を用いて得る。例えば、有機ジイソシアネートを高分子量ジオールと反応させることでポリウレタン前駆体を生成する。そのポリウレタン前駆体を有機溶媒に溶解させた後、その結果として得た前駆体溶液をジアミンと反応させることで鎖を伸長させる。モノアミンを用いてその鎖伸長反応を停止させることで、ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液を得る。
【0014】
本発明で使用可能な有機ジイソシアネートの例には、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、水添p,p−メチレンジイソシアネートなどが含まれる。前記高分子量ジオールとして、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリカーボネートジオールを用いてもよく、それら全部の数平均分子量を好適には1,750から2,050にする。一方、鎖伸長剤として用いるジアミンはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヒドラジンなどであってもよく、そして連鎖停止剤として用いるモノアミンはジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミンなどであってもよい。前記重合体溶液を得る目的で用いることができる適切な有機溶媒の例には、これらに特に限定するものでないが、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドなどが含まれる。
【0015】
必要ならば、前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に、更に、曇り剤(dulling agents)、紫外線安定剤、抗酸化剤、NOガス抗黄色化剤、抗粘着剤、染色促進剤および抗塩素剤から選択した少なくとも1種の添加剤を入れてもよい。
【0016】
本発明の方法に従い、前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に前記酢酸セルロースを前記重合体の総重量を基準にして1〜20重量%添加した後、その混合物を均一に撹拌することで紡糸溶液を得る。その添加する酢酸セルロースの量を1重量%未満にすると、その添加効果は無視出来るほどになってしまう。他方、酢酸セルロースの量が20重量%を超えると、均一な混合が困難になってしまう。前記酢酸セルロースは二酢酸セルロースまたは三酢酸セルロースであってもよく、それのアセチル化度を好適には約28%から約72%にする。前記紡糸溶液を30℃〜70℃に28〜38時間放置することで熟成させた後に紡糸することで、弾性率が高くて耐熱性と耐アルカリ性が優れた最終的弾性繊維を生成する。本発明者らが行った研究に従い、添加剤としての酢酸セルロースと重合体溶液の撹拌を均一に行うことと熟成によって前記重合体と酢酸セルロースの間のウレタン結合、尿素結合および水素結合の形成を可能にすることから、そのような段階は、弾性糸が持つ弾性率の向上および耐アルカリ性および耐熱性の向上に直接的な影響を与える。従って、前記段階に最適な条件を設定することが重要である。本発明の方法に従い、前記酢酸セルロースを前記重合体溶液を得る目的で用いた有機溶媒と同じ有機溶媒に溶解させ、その結果として得た溶液を7〜8時間均一に撹拌した後、その均一な溶液を前記重合体溶液に添加する。その後、その結果として得た混合物を少なくとも2時間均一に撹拌する。この時点で酢酸セルロース添加パーセントを高くすると共に撹拌時間を30分間延長する。撹拌後、前記酢酸セルロースと重合体溶液の混合物に熟成を約28〜38時間受けさせた後、紡糸用ノズルに通して紡糸することで、最終的な弾性繊維を生成する。
【0017】
以下の具体的実施例および比較実施例を参照することで、本発明の構成および効果をより詳細に説明する。しかしながら、本実施例は説明の目的で示すものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを518gおよび数平均分子量が1,800のポリテトラメチレンエーテルグリコールを2,328g用いて、これらを撹拌しながら85℃で90分間互いに反応させることで、イソシアネート基を両末端位に含有するポリウレタン前駆体を生成した。このポリウレタン前駆体を室温になるまで冷却した後、4,643gのN,N’−ジメチルアセトアミドに溶解させることで、ポリウレタン前駆体溶液を得た。その後、1,889gのN,N’−ジメチルアセトアミドにプロピレンジアミンを54gとジエチルアミンを9.1g溶解させ、その結果として生じた溶液を10℃以下の前記ポリウレタン前駆体溶液に添加することで、セグメント化ポリウレタン尿素溶液を生成した。
【0019】
この重合体溶液に紫外線安定剤、抗酸化剤、NOガス抗黄色化剤、染色促進剤、マグネシウム基の抗粘着剤およびチタン基の曇り剤を添加した。その結果として得た溶液を均一に撹拌した。この均一な溶液に、アセチル化度が45%の二酢酸セルロースをN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして1重量%入れることで生成した溶液を加えた。その後、この混合物に脱泡を2時間受けさせた後、熟成を40℃で35時間受けさせることで紡糸溶液を得た。この紡糸溶液に乾式紡糸を250℃の紡糸温度で受けさせ、延伸を1.3の延伸比で受けさせることで太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成した。そのようにして生成したポリウレタン尿素弾性繊維を巻き取った。
【0020】
590本のポリウレタン尿素弾性繊維を縦糸にし、50デニールのポリエステル糸で編んだ後、染色することでベルベット布を製造した。そのベルベット布にバーニングアウトおよび印刷工程を受けさせた。そのベルベット布の糸に耐熱性および耐アルカリ性に関する測定を受けさせ、かつベルベット布に力保持に関する測定を受けさせた。加えて、バーニングアウトを受けさせる前の布の毛羽立った状態およびバーニングアウトを受けさせた後の布に生じる穴も評価した。その結果を表1に示す。
【0021】
(実施例2)
二酢酸セルロース(アセチル化度:45%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして5重量%入れることで生成した溶液を前記重合体溶液に添加し、均一な撹拌を4時間実施すること以外は、実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0022】
(実施例3)
二酢酸セルロース(アセチル化度:45%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして10重量%入れることで生成した溶液を前記重合体溶液に添加し、均一な撹拌を6.5時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0023】
(実施例4)
二酢酸セルロース(アセチル化度:45%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして15重量%入れることで生成した溶液を前記重合体溶液に添加し、均一な撹拌を9.5時間実施すること以外は、実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0024】
(実施例5)
二酢酸セルロース(アセチル化度:45%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして20重量%入れることで生成した溶液を前記重合体溶液に添加し、均一な撹拌を12時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0025】
(実施例6)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして1重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0026】
(実施例7)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして5重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0027】
(実施例8)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして10重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0028】
(実施例9)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして15重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0029】
(実施例10)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして20重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0030】
(比較実施例1)
二酢酸セルロース(アセチル化度:45%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに前記重合体溶液の固体含有量を基準にして25重量%入れることで生成した溶液を前記重合体溶液に添加し、均一な撹拌を9.5時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0031】
(比較実施例2)
三酢酸セルロース(アセチル化度:65%)をN,N’−ジメチルアセトアミドに110℃で30分かけて溶解させた後、その結果として生じた溶液を前記重合体溶液に前記三酢酸セルロースの量が前記重合体溶液の固体含有量を基準にして25重量%になるように添加し、均一な撹拌を2時間実施すること以外は実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0032】
(比較実施例3)
二酢酸セルロースを添加しないこと以外は、実施例1に示した様式と同じ様式で太さが40デニールのポリウレタン尿素弾性繊維を生成して巻き取った。その後、ベルベット布を実施例1に示した様式と同じ様式で製造した後、それにバーニングアウトおよび印刷を受けさせた。このベルベット布の特性を測定しかつ評価して、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
注:
1) 糸が示す耐熱性を下記の手順で評価した:糸サンプルを100%引き伸ばして、それに湿式熱処理を130℃で1時間受けさせる。その熱処理を5回(5サイクル)繰り返す。その糸サンプルの耐熱性を熱処理前の糸サンプルの長さ(「初期長」)と5回目のサイクル後の長さ(「ダウンロード値」)の間の差のパーセントとして表す。
【0035】
2) 糸が示す耐アルカリ性を下記の手順で評価した:糸サンプルを25%(25重量%)のNaOH水溶液に浸漬して、150℃に加熱する。糸サンプルの耐アルカリ性を糸サンプルの分解に要する時間として表す。
【0036】
3) 布の力保持を下記の手順で評価した:最終的な処理を受けさせた布を切断して布サンプル(1インチx30cm)を作成する。この布サンプルをInstron Co.のグリップで測定用布サンプルの長さが20cmになるように保持する。この保持を5回(5サイクル)繰り返す。布サンプルの力保持を布サンプルに1回目のサイクルを受けさせた後の長さ(「アップロード値」)と5回目のサイクルを受けさせた後の長さ(「ダウンロード値」)の間の差のパーセントとして表す。
【0037】
4) バーニングアウト前の毛羽立ち状態の評価では、ベルベット布にせん断および背景染色を受けさせた後の毛羽立った糸の直立度を目で検査することで評価を行った。毛羽立った糸が真っすぐで直立している時には、その毛羽立ち状態は「O」であると判断した。一方、毛羽立った糸の数本が平らになった時には、その状態は「Δ」であると判断した。
【0038】
5) バーニングアウトを受けさせた後の布に生じる穴を目視検査で評価した。
【0039】
表1に示すように、本発明の方法を用いると重合および紡糸粘度を均一に管理することが可能になることから、そのような弾性繊維は均一な物性、高い弾性率、向上した耐熱性および向上した耐アルカリ性を示す。従って、本発明の方法を一般的なベルベット布または連続的なバーニングアウトおよび印刷が要求される特殊なベルベット布に適用すると、弾性繊維の劣化が生じず、かつ毛羽立たせた糸および布の状態が安定に保持されると言った利点が得られる。
【0040】
本発明の好適な実施形態を説明の目的で開示してきたが、本分野の技術者は、添付請求の範囲に開示するような本発明の範囲および精神から逸脱することなくいろいろな修飾、付加および置換を行うことができることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性繊維の製造方法であって、
ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液に酢酸セルロースを前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素の総重量を基準にして1〜20重量%添加しそしてその混合物を均一に撹拌することで紡糸溶液を得、
前記紡糸溶液を熟成させ、そして
前記熟成させた溶液を紡糸する、
段階を含んで成る方法。
【請求項2】
前記酢酸セルロースはアセチル化度が28%〜72%の二酢酸セルロースもしくは三酢酸セルロースである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリウレタンもしくはポリウレタン尿素溶液が有機ジイソシアネートと高分子量ジオールを反応させてポリウレタン前駆体を生成し、前記ポリウレタン前駆体を有機溶媒に溶解させ、そして前記前駆体溶液を逐次的にジアミンそしてモノアミンと反応させることで得た溶液である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機ジイソシアネートをジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートおよび水添p,p−メチレンジイソシアネートから成る群から選択し、前記高分子量ジオールをポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリカーボネートジオールから成る群から選択し、前記ジアミンをエチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヒドラジンから成る群から選択し、そして前記モノアミンをジエチルアミン、モノエタノールアミンおよびジメチルアミンから成る群から選択し、そして前記有機溶媒をN,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキサイドから成る群から選択する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記紡糸溶液に更に曇り剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、NOガス抗黄色化剤、抗粘着剤、染色促進剤および抗塩素剤から選択した少なくとも1種の添加剤も入れる請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記酢酸セルロースを添加した後に行う均一な撹拌を少なくとも2時間実施しそして前記紡糸溶液を30℃〜70℃に28〜38時間放置することで熟成させる請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の方法で作られた弾性繊維。
【請求項8】
請求項7記載の弾性繊維を用いて製造されたベルベット布。

【公表番号】特表2007−504370(P2007−504370A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525271(P2006−525271)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002031
【国際公開番号】WO2005/021847
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501434948)ヒョスン・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】HYOSUNG CORPORATION
【Fターム(参考)】