弾性表面波アクチュエータ
【課題】弾性表面波アクチュエータにおいて、簡単な構成で大型化を抑制すると共に精度良い位置検出を実現する。
【解決手段】弾性表面波アクチュエータ1は、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段2を有した圧電基板10と、圧電基板10の表面に配置され駆動用の弾性表面波により圧電基板10に対して相対的に移動される移動体3と、移動体3の圧電基板10に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4と、検出用励振手段4によって励振された弾性表面波w1が移動体3によって反射されて戻ってくる波w2を検出する表面波検出手段5と、移動体3の圧電基板10に対する相対移動を制御する制御手段6と、を備える。制御手段6は、弾性表面波w1が前記検出用励振手段4により励振されてから表面波検出手段5によって検出されるまでの時間に基づいて移動体3の相対的位置を検出して移動体3の移動を制御する。
【解決手段】弾性表面波アクチュエータ1は、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段2を有した圧電基板10と、圧電基板10の表面に配置され駆動用の弾性表面波により圧電基板10に対して相対的に移動される移動体3と、移動体3の圧電基板10に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4と、検出用励振手段4によって励振された弾性表面波w1が移動体3によって反射されて戻ってくる波w2を検出する表面波検出手段5と、移動体3の圧電基板10に対する相対移動を制御する制御手段6と、を備える。制御手段6は、弾性表面波w1が前記検出用励振手段4により励振されてから表面波検出手段5によって検出されるまでの時間に基づいて移動体3の相対的位置を検出して移動体3の移動を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度に位置決めを行うことのできる弾性表面波アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体からなる物体の表面に弾性表面波を伝搬させ、その弾性体と弾性表面波の伝搬面に圧接した物体とが弾性表面波の楕円振動によって互いに相対移動するようした、弾性表面波アクチェータが知られている。このような弾性表面波アクチュエータは、例えば、互いに圧接された2物体が固定体と移動体を構成し、これにより回転モータやリニヤモータが形成される。このような弾性表面波アクチュエータを高精度な位置制御に用いる場合、互いに相対移動する2物体の相対位置を精度良く検出してフィードバック制御することが求められる。
【0003】
弾性表面波アクチュエータにおける位置制御の例として、移動体の位置を読みとるために移動体の移動方向に沿って固定側の表面に設けた目盛と、その目盛を移動体側から光学的に読みとる手段と、フィードバック制御の手段と、を備えた弾性表面波モータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、弾性表面波アクチュエータとは異なるが、指が弾性表面波を遮ることにより、指の位置を検出するタッチパネルを構成した例がある。このタッチパネルでは、例えば矩形のタッチパネル面上の互いに対向する2辺のうち一辺に設けた弾性表面波励振用のいわゆる櫛形電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ、すだれ電極ともいう)と、前記一辺に対向する他辺に励振用の櫛形電極に対向させると共に所定の角度傾けて設けた弾性表面波受信用の櫛形電極と、を備えている。受信用の櫛形電極を傾けることにより、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向(Y方向とする)における位置の変化を弾性表面波を受信する時刻の変化(位相の変化)に換算している。そして、指の接触位置のY座標が受信信号の変化として検出される(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−69772号公報
【特許文献2】特開平10−240430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような弾性表面波アクチュエータにおいては、目盛を光学的に読みとる手段を構成するための部品点数増加、固定子の大きさの増加、これらに伴う材料コストや組み立て工数の増加などの問題がある。
【0006】
また、上述した特許文献2に示されるような弾性表面波の伝搬面における接触位置の検出方法を弾性表面波アクチュエータにおける2物体の圧接位置の検出に用いる場合、弾性表面波の伝搬方向の位置検出が必要であり、弾性表面波の励振用と受信用の櫛形電極を、弾性表面波の伝搬方向に沿ってその伝搬領域の両側に設ける必要がある。このため、長い櫛の歯を備えた櫛形電極のための広い面積が必要であり、弾性アクチュエータが大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成で大型化を抑制でき、精度良い位置検出を実現できるできる弾性表面波アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段を有した圧電基板と、前記圧電基板の表面に配置され前記駆動用励振手段によって励振された弾性表面波により当該圧電基板に対して相対的に移動される移動体と、を備えた弾性表面波アクチュエータにおいて、前記移動体の当該圧電基板に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段と、前記検出用励振手段によって励振された弾性表面波を検出する表面波検出手段と、前記移動体の相対的な移動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出用の弾性表面波が前記検出用励振手段により励振されてから前記表面波検出手段によって検出されるまでの時間に基づいて前記移動体の前記圧電基板に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、当該移動体の前記圧電基板に対する相対的な移動を制御するものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段と前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に共に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波が当該圧電基板と移動体の相対距離を規定する反射体によって反射されて戻ってきた波を検出するものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のうち前記検出用励振手段を備えていない方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波を直接検出するものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とを共通の手段で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して前記移動体の駆動と当該移動体の位置検出とを行うものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とは、互いに異なる周波数の弾性表面波を励振するものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段を複数備え、各励振手段による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて前記移動体の位置を算出するものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記駆動用励振手段の一部を用いて前記検出用励振手段を構成するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、検出用の弾性表面波が励振されてから検出されるまでの時間に基づいて移動体の圧電基板に対する相対的な位置を検出するので、弾性表面波アクチュエータに目盛やその読み取り手段を設ける必要がなく、大型化を抑制できる。また、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間を一方から他方に伝搬する弾性表面波や、一方から出て他方によって反射されて一方側に戻ってくる弾性表面波の走行時間に基づいて、2つの物体間の相対距離を求めることができるので、弾性表面波の伝搬方向、従って移動体の移動方向の一端、両端、及び/又は移動体に検出用励振手段や表面波検出手段を構成する櫛形電極を設ければよく、簡単な構成で位置検出できる。また、位置読み取りの精度は、走行時間読み取りの精度を上げることにより、容易に精度良くできる。
【0016】
請求項2の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)のいずれか一方から出て他方によって反射されて一方側に戻ってくる弾性表面波(反射波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めることができるので、位置検出用の弾性表面波の励振手段と検出手段の両方を一方側に形成できるので、構成がより簡単になる。
【0017】
請求項3の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間をいずれか一方から他方に伝搬する弾性表面波(直達波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めることができるので、位置検出用の弾性表面波の、例えば、反射による減衰が殆どなく、位置検出回路における増幅などが不要となって回路構成が簡単になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、駆動用と検出用の弾性表面波が互いに干渉することがないので、両弾性表面波を同時に励振させて伝搬させることができ、駆動中にリアルタイムで相対位置を検出できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間の反射波や直達波を移動体の移動方向の一方側または両側で、検出して複数の位置測定データを得ることができ、これらのデータの統計処理によって、弾性表面波の伝搬速度のばらつきなどの影響を解消して、相対位置をより精度良く求めることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。また、駆動用励振手段を構成する櫛形電極の全部を用いて検出用励振手段を形成する場合に比べて、検出用弾性表面波の波束の長さを短くでき、位置検出の精度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る弾性表面波アクチュエータについて、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1(a)(b)は本発明の第1実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の全体構成を模式的に示し、図2(a)〜(c)は弾性表面波アクチュエータ1における位置検出用の弾性表面波の送波と受波の信号強度と時間計測の様子を示す。弾性表面波アクチュエータ1は、図1(a)に示すように、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段2を有した圧電基板10と、圧電基板10の表面に配置され駆動用励振手段2によって励振された弾性表面波により圧電基板10に対して相対的に移動される移動体3と、を備えている。本図及び以下に示す図において、図の左右方向が移動体3の移動方向であり、この方向を圧電基板10及び弾性表面波アクチュエータ1の左右方向として引用する。
【0024】
弾性表面波アクチュエータ1は、さらに、移動体3の圧電基板10に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4と、検出用励振手段4によって励振された弾性表面波w1が移動体3によって反射されて戻ってくる波w2を検出する表面波検出手段5と、移動体3の圧電基板10に対する相対的な移動を制御する制御手段6と、を備えている。
【0025】
制御手段6は、検出用の弾性表面波w1が前記検出用励振手段4により励振されてから表面波検出手段5によって検出されるまでの時間に基づいて移動体3の圧電基板10に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、移動体3の圧電基板10に対する相対的な移動を制御する。移動体3の相対位置は、例えば、圧電基板10に設けられたX座標上の座標値で表される。以下、各構成と動作の詳細を説明する。まず、移動体3の駆動について説明し、その後移動体3の位置計測について説明する。
【0026】
圧電基板10は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電基板10は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよい。その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波が励振される。従って、圧電基板10は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよく、その表面形状は、平面の他に、円柱面やさらに一般的な曲面からなる面形状でもよい。
【0027】
駆動用励振手段2は、圧電基板10の表面に2つの電極を互いに噛み合わせて形成した、いわゆる櫛形電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)によって構成される。櫛形電極の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる電極に属し、励振する弾性表面波の波長λの半分の長さのピッチで配列されている。2つの櫛形電極に高周波電圧印加用の電気回路21から高周波(MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに変換されて、圧電基板10の表面に弾性表面波が励振される。励振された弾性表面波の振幅は、電極に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波の波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。
【0028】
移動体3は、例えば、シリコンのような硬い材料でできており、圧電基板10に接触する面(底面)には複数の突起(不図示)が設けられている。このような突起は、例えば、シリコンのエッチング工法で製作される。移動体3を形成する材料は、シリコンでなくても硬い材料であればよい。移動体3には、図1(b)に示すように、予圧付与手段4によって予圧Fが加えられており、圧電基板10における弾性表面波の伝搬領域の表面に押圧されている。
【0029】
上述の移動体3が押圧された状態で、駆動用励振手段2によって弾性表面波が励振されると、弾性表面波の楕円振動に伴う駆動力が摩擦力を介して移動体3に伝達される。すると、移動体3は、弾性表面波の伝搬方向とは逆の方向に駆動される。すなわち、図1(a)に示す右側の駆動用励振手段2を動作させると、移動体3は右に移動し、左側の駆動用励振手段2を動作させると、移動体3は左に移動する。
【0030】
移動体3の底面の突起は、弾性表面波の駆動力を効率よく移動体3に伝達するためのものである。また、突起無しで弾性表面波の駆動力を効率良く移動体3に伝達できるならば、底面の突起は不要である。なお、予圧Fの大きさによって移動体3の移動の速度、加速度が変化する。移動体3の移動速度は、励信信号の大きさの関数であり、移動距離は、励振信号の大きさと信号継続長の関数である。
【0031】
なお、圧電基板10と移動体3は、互いに相対的に移動する関係にある。従って、弾性表面波アクチュエータ1が移動子と固定子とからなるリニアモータや回転モータを形成する場合、圧電基板10を固定子とすると、移動体3が移動子であり、逆に、移動体3を固定子とすると、圧電基板10が移動子となる。固定されているか移動するかなどは、相対的なものである。本明細書では、圧電基板10が固定され、移動体3が移動するとして記述するが、弾性表面波アクチュエータ1の動作がこれに限定されるものではない。なお、以下において、例えば、櫛形電極の形成された圧電基板10と移動体3とを合わせて、弾性表面波アクチュエータ1の本体部分と称することがある。
【0032】
位置検出用励振手段4は、上述の駆動用励振手段2と同様に、櫛形電極によって構成され、電気回路41から所定の信号強度に基づく高周波電圧を櫛形電極に印加することにより、位置検出用の弾性表面波w1(送波)を励振する。また、表面波検出手段5は、位置検出用励振手段4の櫛形電極を用いて構成される。つまり、弾性表面波w2(受波)が位置検出用励振手段4の櫛形電極を通過するときに、波の機械的エネルギが電気的エネルギに変換されて電極間に電圧が発生する。そこで、電極間に発生した電圧に基づいて、電気回路41において、弾性表面波w2の信号が得られる。
【0033】
ところで、移動体3の位置を検出すると共にその位置を制御するには、駆動用励振手段2が励振する弾性表面波によって移動体3を移動させ、位置検出用励振手段4が励振する位置検出用の弾性表面波では移動体3を移動させないことが必要である。これは、駆動用の弾性表面波の振幅(エネルギ)を位置検出用の弾性表面波の振幅(エネルギ)よりも十分小さくすることによって達成できる。位置検出用の弾性表面波の振幅は、励振用の電圧を低くすることの他に、櫛形電極の歯の数を減らすことによっても小さくできる。励振時間が同じ場合、櫛形電極の歯の数が少ない方が、伝搬する弾性表面波の波束の長さを短くできる利点がある。すなわち、波束の長さが短いほど、送波w1と、受波w2間の干渉を減らすことができ、受波w2を明瞭に検出できる。
【0034】
送波w1の信号と、受波w2の信号とが得られると、図2(a)に示すように信号のピーク値の時刻、図2(b)に示すように信号の立上り時刻、図2(c)に示すように信号の立下りの時刻などを基準にして、信号の時間間隔Δtが得られる。この時間間隔Δtは、位置検出用の弾性表面波の送波から受波までの時間、つまり、移動体3間での往復の時間である。そこで、弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、移動体3の位置xが、x=C×Δt/2、と求められる。
【0035】
このような本発明の弾性表面波アクチュエータ1においては、圧電基板10に目盛やその読み取り手段を設ける必要がなく、大型化を抑制できる。また、相対移動する圧電基板10と移動体3の間を往復する送波w1と受波w2の走行時間に基づいて、2つの物体間の相対距離を求めることができるので、弾性表面波の伝搬方向、従って移動体3の移動方向(X方向)の一端または両端に検出用励振手段4や表面波検出手段5を構成する櫛形電極を設ければよく、簡単な構成で移動体3の位置検出が可能である。また、位置読み取りの精度は、走行時間読み取りの精度を上げることにより、容易に向上できる。
【0036】
弾性表面波アクチュエータ1は、このようにして取得した位置データに基づいて、駆動用励振手段2によって励振する弾性表面波の振幅や励振時間を制御することができ、移動体3を高精度に位置決め制御することができる。弾性表面波アクチュエータ1は、例えば、カメラのレンズを移動させるズーム機構や、CD、DVD、HDDなどのデジタルストレージ機器におけるピックアップの位置制御機構、デジタルカメラにおける手ぶれ位置補正機構、リニヤ振動モータ、産業用精密位置決め機構などに応用できる。また、移動体3の相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、移動体3の移動を制御する方法は、種々の弾性表面波アクチュエータに適用できる。例えば、弾性表面波アクチュエータが、一方向に弾性表面波を励振する一方向IDTから成る駆動用励振手段2や検出用励振手段4を備えたものや、エネルギ環流型の駆動用励振手段2を備えたものであってもよい。このことは、以下に述べる実施形態においても同様である。
【0037】
(第2実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第2実施形態について説明する。図3(a)〜(c)は、第2実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の一部主要本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の底面に、位置検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4、及び表面波検出手段5を設けたものである。検出用励振手段4と表面波検出手段5は、同じ櫛形電極を共用して構成される。移動体3は、圧電基板10と同様に、圧電材料で形成される。圧電基板10の端部には、弾性表面波反射構造体11が設けられている。
【0038】
移動体3の検出用励振手段4によってで励振された弾性表面波w1は、圧電基板10上を伝搬し、弾性表面波反射構造体11によって反射されて、逆進する弾性表面波w2となって、移動体3の表面波検出手段5によって検出される。弾性表面波反射構造体11は、例えば、弾性表面波を全反射する、いわゆる「反射器」と呼ばれる櫛形電極で構成される。弾性表面波反射構造体11は、他の反射構造体であってもよい。
【0039】
上述の第1実施形態と、この第2実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4と表面波検出手段5が、圧電基板10と移動体3のいずれか一方に共に備えられ、表面波検出手段5は、検出用励振手段4によって励振され送波された弾性表面波が圧電基板10と移動体3の相対距離を規定する反射体(移動体3、又は、弾性表面波反射構造体11)によって反射されて戻ってきた波w2を検出している。
【0040】
(第3実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体の一部を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4が、圧電基板10と移動体3のいずれか一方に備えられ、表面波検出手段5が、圧電基板10と移動体3のうち検出用励振手段4を備えていない方に備えられたものである。表面波検出手段5は、検出用励振手段4によって励振され送波された弾性表面波を(反射なしに)、直接検出する。
【0041】
すなわち、この弾性表面波アクチュエータ1は、位置検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4を移動体3に、表面波検出手段5を圧電基板10に設けたものである。また、第3実施形態の変形例として、逆に、検出用励振手段4を圧電基板10に、表面波検出手段5を移動体3に設けてもよい。
【0042】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板10と移動体3)の間をいずれか一方から他方に伝搬する弾性表面波(直達波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めるので、位置検出用の弾性表面波の、例えば、反射による減衰が殆どなく、位置検出ようの回路における増幅などが不要となって回路構成が簡単になる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第4実施形態について説明する。図5は本発明の第4実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示し、図6は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動波、位置検出用の送波w1と受波w2の各信号強度c,a,bと相互の時間関係を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図5に示すように、駆動用励振手段2と検出用励振手段4とを共通の櫛形電極で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して移動体3の駆動と移動体3の位置検出とを行うものである。
【0044】
さらに、上述の共通の櫛形電極を用いて、表面波検出手段5をも構成している。このような、3つの手段を共通の櫛形電極で構成する場合は、図6に示すように、駆動波の電気信号c、位置検出用の送波w1の信号a、受波w2の信号bの三者が、時間的にずれている必要がある。駆動波信号cは、移動体3を駆動して移動させるために信号強度が他の信号の強度より大きく、受波w2の信号bは、反射による減衰を受けているので、送波w1の信号aの強度よりも強度が小さく成っている。信号a,bと、信号cが重ならないためには、励振の時間長さと共に励振のタイミングをも調整している。
【0045】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、検出用励振手段4や、表面波検出手段5を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトなものを実現できる。また、励振用の電気回路の共通化と簡素化ができる。
【0046】
(第5実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第5実施形態について説明する。図7は、本発明の第5実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示し、図8は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動用、及び位置検出用の弾性表面波の周波数分布を示し、図9は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動用の弾性表面波(駆動波)、位置検出用の送波w1と受波w2の信号強度c,a1,b1等と時間関係を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図7に示すように、駆動用励振手段2と、表面波検出手段5と共用される検出用励振手段4と、を備え、移動体3によって反射された弾性表面波(受波w2)を検出するものであり、駆動用励振手段2と検出用励振手段4とが、互いに異なる周波数f1,f2の弾性表面波を励振するものである。
【0047】
上述の周波数は、例えば、駆動用励振手段2で発生する弾性表面波はf1=10MHz、位置検出用励振手段4で発生する弾性表面波はf2=30MHzとする。このとき、移動体3による弾性表面波の反射率Rが、例えば、図8に示すように、f2=30MHzに中心を有する分布であると、周波数f2の波だけを反射することができる。なお、周波数の組合せを逆にする場合、移動体3による弾性表面波の反射率を、f1=10MHzに中心を有する分布にすればよい。
【0048】
上述のように、駆動用の弾性表面波の周波数f1と、位置検出用の弾性表面波の周波数f2とをずらすのは、互いの弾性表面波が干渉しないようにするためである。このようにすれば、駆動用と検出用の弾性表面波が互いに干渉することがないので、両弾性表面波を同時に励振させて伝搬させることができ、駆動用弾性表面波を励振しながら移動体3を移動させている最中に、位置検出用の弾性表面波を励振してリアルタイムでその相対位置を検出できる。すなわち、駆動用弾性表面波と位置検出用弾性表面波とは、互いに周波数が異なるので、表面波検出手段5では位置検出用弾性表面波の信号のみが受信される。
【0049】
ただし、移動体3が移動している最中に移動体3の位置を測定する場合、位置検出用の弾性表面波が移動体3によって反射した後も移動体3が移動しているので、この移動による補正が必要である。また、駆動用電極で発生した弾性表面波では移動体は動き、位置検出用の櫛歯電極で発生した弾性表面波では移動体は動かないことが必要である。ここで、例えば、図7に示す弾性表面波アクチュエータ1の左側の駆動用励振手段2を動作させ、検出用励振手段4と表面波検出手段5とを用いて移動体3の位置を検出する場合を説明する。この場合、移動体3は、左方に移動する。
【0050】
上述の状況のもとで、図9に示すように、駆動波の信号cが存在している間は移動体3が移動し続けており、この間に測定した送波の信号a1,a2,a3と、これに対応する受波の信号b1,b2,b3との時間間隔Δt1,Δt2,Δt3は、移動体3が近付くことから、次第に短くなる。その後、駆動波の励振が止むことによって、移動体3の相対移動が停止し、移動体3の位置が変化しないので、信号a4,a5と、これに対応する受波の信号b4,b5との時間間隔Δt4,Δt5が一定となる。
【0051】
(第6実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第6実施形態について説明する。図10は、本発明の第6実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4を複数備え、各励振手段4による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて移動体3の位置を算出するものである。例えば、この弾性表面波アクチュエータ1は、図10に示すように、検出用励振手段4及びこれと兼用の表面波検出手段5を移動体3の移動領域の左右に備えている。すなわち移動体3の左右の距離が検出される。
【0052】
上述の構成のもとで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離をL1、右側の検出用励振手段4から移動体3までの距離をL2、左右の検出用励振手段4間の距離をL0とする。そして、左側の検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w1を励振してから反射波w2を検出するまでの時間をΔt1、右側の検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w3を励振してから反射波w4を検出するまでの時間をΔt2とする。また、弾性表面波の伝搬速度をCとする。
【0053】
単独の検出用励振手段4しか設けていない場合、移動体3の距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
しかしながら、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化すると、距離L1は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δtl×ΔC、の誤差が生じる。なお、このような伝搬速度のばらつきは、圧電基板10の材料ロットの特性ばらつきの他に、例えば、動作環境(温度や湿度)の変化などに起因して発生する。
【0054】
一方、本実施形態のように、検出用励振手段4が左右に設けられている場合、移動体3の距離L1は、既知の距離L0を用いて以下のようにして求められる。
L1=L0×L1/(L1+L2)、
=L0×(Δt1×C/2)/(Δt1×C/2+Δt2×C/2)、
=L0×Δt1/(Δt1+Δt2)。
この式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の進行速度が、C+ΔC、に変化しても、距離L1の値は変化しないことになる。つまり、検出用励振手段4を複数設け、以下のように計算して移動体の位置を求めることにより、精度良く移動体3の位置を検出することができる。
L1=L0×Δt1/(Δt1+Δt2)。
【0055】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板10板と移動体3の間の反射波や直達波(上記例では、反射波w2,w4のみ)を移動体3の移動方向の一方側または両側で、検出して複数の位置測定データを得ることができ、これらのデータの統計処理によって、弾性表面波の伝搬速度Cのばらつきなどの影響を解消して、相対位置をより精度良く求めることができる。
【0056】
(第7実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第7実施形態について説明する。図11(a)(b)は本発明の第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の駆動状態と移動体3の位置測定の状態を示す。また、図12(a0)〜(a3)は図5に示した弾性表面波アクチュエータ1における位置検出を示し、図11(b0)〜(b3)は、図11(b)に示した弾性表面波アクチュエータ1における位置検出を示す。この第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1は、駆動用励振手段2の一部を用いて検出用励振手段4及び表面波検出手段5を構成するものである。
【0057】
図11(a)において、駆動用励振手段2の櫛形電極は、例えば、電極対(交差指電極対)が全部で20対あり、そのうちの2対が他の18対と電気的に分離可能にするスイッチSWを介して互いに接続されると共に、電気回路21に接続されている。20対の櫛形電極によって、駆動波w0が励振される。また、図11(b)において、分離可能な2対がスイッチSWによって分離されて電気回路21に接続されている。この2対の櫛形電極によって、位置検出用の弾性表面波w1は励振される。電気回路21は、駆動用の弾性表面波を励振するための高周波電圧を発生する回路であると共に、位置検出用の弾性表面波の励振、及び表面波検出を行う電気回路41を兼ねている。
【0058】
このような第7実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の位置を検出する際に、2対の櫛形電極しか用いないので、20対全体を用いて弾性表面波を励振する場合に比べて、弾性表面波の励振領域を短く(波の伝搬方向の長さを短く)することができるので、励振される弾性表面波の波束を短くしてパルス状にすることができる。波束が短いということは、移動体3が櫛形電極の近傍にある場合でも、移動体3からの反射波を明瞭に検知できることを意味する。
【0059】
上述の位置検出用の弾性表面波の波束の長さの影響について、図11(a0)〜(b3)により説明する。図11(a0)に示すように、櫛形電極の幅x1が広いと、図11(a1)に示すように、少なくとも幅x1以上の長さの送波w1が生成され、この送波w1は、図11(a1)(a2)に示すように、移動体3で反射された後、櫛形電極の存在領域において受波w2と重なってしまう。この櫛形電極は、受波w2を受信する表面波検出手段5を兼ねているので、移動体3が櫛形電極の近くに存在して送波w1と受波w2が重なった状態では、正しく受波の信号を得ることが困難である。
【0060】
他方、図11(b0)に示すように、櫛形電極の幅x2が(x1よりも)狭いと、図11(b1)に示すように、波束の長さが(x1よりも)短い送波w1が生成され、この送波w1は、図11(b1)(b2)に示すように、移動体3で反射された後、櫛形電極の存在領域において受波w2と重なることがない。従って、移動体3が櫛形電極の近くに存在しても、送波w1と受波w2が重なることがなく、より正しく受波の信号を得ることができる。
【0061】
実施形態7の弾性波アクチュエータ1によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。また、駆動用励振手段を構成する櫛形電極の全部を用いて検出用励振手段を形成する場合に比べて、検出用弾性表面波の波束の長さを短くでき、位置検出の精度を上げることができる。
【0062】
(第8実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第8実施形態について説明する。図13(a)(b)は、弾性表面波アクチュエータ1における移動体3による反射波の減衰とその抑制について示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の圧電基板10に対向する底面に、配列ピッチpが、弾性表面波の波長λ、整数nを用いて、p=n×λ/2、となる突起31を複数備えたものである。
【0063】
突起の配列ピッチpが、p=n×λ/4、の場合、図13(a)に示すように、入射波w1が、各突起によって反射された反射波r1,r2,・・は、位相が180゜ずれているので互いに打ち消し合うので、反射波全体の波w2の振幅は減衰してしまう。ところが、p=n×λ/2、の場合、図13(b)のように、各反射波r1,r2,r3,・・が互いに強め合うので、全体の反射波w2は減衰が殆どなく、反射波w2の信号の検出が腰囲になる。
【0064】
(第9実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第9実施形態について説明する。図14は本発明の第9実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図14に示すように、圧電基板10の移動体3が移動する移動領域の左側に検出用励振手段4兼表面波検出手段5を設け、右両に表面波検出手段5を設け、位置検出用の弾性表面波w1が移動体3で反射した波w2と、移動体3によって反射せずに直進した波w0とを検出して移動体3の位置を検出するものである。
【0065】
このような弾性表面波アクチュエータ1は、弾性表面波の伝搬速度のばらつきを解消して精度よく移動体3の位置を検出することができる。ここで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、検出用励振手段4と右側の表面波検出手段5との間隔L0、検出用励振手段4において位置検出用の弾性表面波w1を励振してから反射波w2を検出するまでの時間Δt1、右側の表面波検出手段5が直進波w0を検出するまでの時間Δt0を定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
【0066】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt2、L0を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。
L1=L0×(L1/L0)、
=L0×(Δt1×C/2)/(Δt0×C)、
=L0×(Δt1/Δt0)/2。
【0067】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。
【0068】
(第10実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第10実施形態について説明する。図15は、本発明の第10実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図15に示すように、圧電基板10の移動体3が移動する移動領域の左側に検出用励振手段4兼表面波検出手段5を設け、そのさらに左側に追加の検出用励振手段40を設け、位置検出用の弾性表面波w1が移動体3で反射した波w2と、追加の検出用励振手段40によって励振された波w4と、を表面波検出手段5よって検出して移動体3の位置を検出するものである。
【0069】
このような弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第9実施形態と同様に、弾性表面波の伝搬速度のばらつきを解消して精度よく移動体3の位置を検出することができる。ここで、2つの検出用励振手段40,4の間の距離L3、検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、検出用励振手段40において弾性表面波w4を励振してから表面波検出手段5が検出するまでの時間Δt4、検出用励振手段4からの波w1が、移動体3によって反射した波w2を、表面波検出手段5が検出するまでの時間Δt1を定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
【0070】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt4、L4を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。なお、以下の式で、距離L4の一方は、既知の値を用いる。
L1=L4×(L1/L4)、
=L4×(Δt1×C/2)/(Δt3×C)、
=L4×(Δt1/Δt3)/2。
【0071】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。なお、上記、追加の検出用励振手段40は、その左側に設けている駆動用励振手段2によって兼用することができる。この場合、検出用励振手段40は、不要となる。
【0072】
(第11実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第11実施形態について説明する。図16(a)(b)は本発明の第11実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの移動体3周辺の要部を示し、図17は移動体3による弾性表面波の偏向の様子を示し、図18は弾性表面波アクチュエータ1を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3が位置検出用の弾性表面波w1の伝搬方向を偏向して、振れ角が略90゜の方向に向かう波w2とするものである。
【0073】
弾性表面波の偏向は、図16(a)(b)に示すように、移動体3の外形形状を円形にしたり、四角形にしてその辺と弾性表面波の伝搬方向との間に角度を設けたり、図17に示すように、移動体3の下面に所定の間隔で配列された突起32を設けることによって行われる。突起32は、例えば、結晶格子におけるX線のブラッグ反射の原理によって構成される。弾性表面波の伝搬方向は、このように、移動体3の形状や、その突起の配置と形状で制御できる。
【0074】
弾性表面波の伝搬方向を変えることにより、圧電基板10の長手方向(移動体3の移動方向)の長さを短くして、その方向の省スペース化ができる。偏向された位置検出用の弾性表面波w2は、図18に示すように、移動体3の移動方向の側方に設けられた表面波検出手段5によって検出され、移動体3の位置が求められる。
【0075】
図19は、上述の図18に示した弾性表面波アクチュエータ1の変形例を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の移動方向の両側に表面波検出手段5を設けたものである。この構成によると、移動体3が、移動方向に対して直交する方向に位置ずれたとしても、精度良く移動体3の位置を検出できる。
【0076】
ここで、左側に設けた検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、移動体3から両側の表面波検出手段5a,5bまでの距離La,Lb、検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w1を励振してから表面波検出手段5a,5bが弾性表面波を検出するまでの時間Δta,Δtbを定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、表面波検出手段5a、従って時間Δtaのみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式となる。
L1=Δta×C−La。
【0077】
ところが、移動体3が移動を繰り返すうちに、移動方向に垂直な方向における位置がずれ、距離Laが変化すると、上式で計算されるL1の精度が低下する。ここで、2つの表面波検出手段5a,5b、従って、Δta,Δtb,La,Lbを用いると、距離L1は以下の用に求められる。
L1=(Δta+Δtb)×C−(La+Lb)。
【0078】
上式において、(La+Lb)の値が常に一定なので、移動体3の位置が移動方向に垂直な方向にずれても、距離L1は影響されない。よって、距離L1を高い精度で求めることができる。
【0079】
(第12実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第12実施形態について説明する。図20(a)(b)は本発明の第12実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分と移動体3を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4を圧電基板10に設け、弾性表面波を検出する2つの表面波検出手段5c、5dを移動体3に設けたものである。なお、表面波検出手段は複数設けることができる。
【0080】
ここで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、移動体3に設けた2つの表面波検出手段5c,5d間の距離L4、検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波を励振してから表面波検出手段5cが弾性表面波を検出するまでの時間Δt1、表面波検出手段5dが弾性表面波を検出するまでの時間Δt4と定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体までの距離L1は、次式となる。
L1=Δt1×C。
【0081】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt4、L4を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。なお、以下の式で、距離L4の一方は、既知の値を用いる。
L1=L4×(L1/L4)、
=L4×(Δt1×C)/(Δt4×C−Δt1×C)、
=L4×Δt1/(Δt4−Δt1)。
【0082】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。
【0083】
以上に説明した各実施形において、検出用励振手段4は、駆動用励振手段2よりも移動体3に近い方に配置している。このような配置によると、検出用励振手段4の櫛形電極の設計が容易になる。また、位置検出用弾性表面波の伝搬経路を短くでき、その検出時間を短くすることができる。また、位置検出用の弾性表面波の伝搬経路上に駆動用励振手段2を介在させないことにより、もともと信号強度の小さな位置検出用弾性表面波の信号劣化を防ぐことができ、移動体の位置をより正確に検出できる。
【0084】
なお、上述した距離L1の計算等は、例えば、移動体3の大きさや、各櫛形電極の縁の影響等について、説明の簡単化のため単純化したモデルに基づいて示したものがある。適宜修正して距離L1を求めることができる。また、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの全体構成を示す模式図、(b)は同弾性表面波アクチュエータ本体側面図。
【図2】(a)(b)(c)は同弾性表面波アクチュエータにおける位置検出用の弾性表面波の送波と受波の信号強度と時間計測の様子を示すグラフ。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の平面図、(b)は同側面図、(c)は同弾性表面波アクチュエータの移動体の底面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図6】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動波、位置検出用の送波と受波の信号強度と時間関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第5実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図8】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動用、及び位置検出用の弾性表面波の周波数分布のグラフ。
【図9】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動波、位置検出用の送波と受波の信号強度と時間関係を示すグラフ。
【図10】本発明の第6実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図11】(a)は本発明の第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの駆動状態を示す模式図、(b)は同弾性表面波アクチュエータの移動体の位置を測定している状態を示す模式図。
【図12】(a0)は図5に示した弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(a1)〜(a3)は(a0)の弾性表面波アクチュエータにおける位置検出に係る送波と受波の位置関係を示すグラフ、(b0)は図11(b)に示した弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(b1)〜(b3)は(b0)の弾性表面波アクチュエータにおける位置検出に係る送波と受波の位置関係を示すグラフ。
【図13】(a)は弾性表面波アクチュエータの移動体による弾性表面波の反射波の減衰を説明する図、(b)は本発明の第8実施形態に係る弾性表面波アクチュエータにおける弾性表面波の減衰を抑制した反射波の図。
【図14】本発明の第9実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図15】本発明の第10実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図16】(a)(b)は本発明の第11実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの移動体周辺の要部平面図。
【図17】同上弾性表面波アクチュエータにおける移動体による弾性表面波の偏向を説明する底面図。
【図18】同上弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図19】同上弾性表面波アクチュエータ本体の変形例を示す斜視図。
【図20】(a)は本発明の第12実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(b)は同弾性表面波アクチュエータの移動体を底面から見た斜視図。
【符号の説明】
【0086】
1 弾性表面波アクチュエータ
2 駆動用励振手段
3 移動体
4 検出用励振手段
5 表面波検出手段
6 制御手段
10 圧電基板
11 反射用構造体(反射体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度に位置決めを行うことのできる弾性表面波アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体からなる物体の表面に弾性表面波を伝搬させ、その弾性体と弾性表面波の伝搬面に圧接した物体とが弾性表面波の楕円振動によって互いに相対移動するようした、弾性表面波アクチェータが知られている。このような弾性表面波アクチュエータは、例えば、互いに圧接された2物体が固定体と移動体を構成し、これにより回転モータやリニヤモータが形成される。このような弾性表面波アクチュエータを高精度な位置制御に用いる場合、互いに相対移動する2物体の相対位置を精度良く検出してフィードバック制御することが求められる。
【0003】
弾性表面波アクチュエータにおける位置制御の例として、移動体の位置を読みとるために移動体の移動方向に沿って固定側の表面に設けた目盛と、その目盛を移動体側から光学的に読みとる手段と、フィードバック制御の手段と、を備えた弾性表面波モータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、弾性表面波アクチュエータとは異なるが、指が弾性表面波を遮ることにより、指の位置を検出するタッチパネルを構成した例がある。このタッチパネルでは、例えば矩形のタッチパネル面上の互いに対向する2辺のうち一辺に設けた弾性表面波励振用のいわゆる櫛形電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ、すだれ電極ともいう)と、前記一辺に対向する他辺に励振用の櫛形電極に対向させると共に所定の角度傾けて設けた弾性表面波受信用の櫛形電極と、を備えている。受信用の櫛形電極を傾けることにより、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向(Y方向とする)における位置の変化を弾性表面波を受信する時刻の変化(位相の変化)に換算している。そして、指の接触位置のY座標が受信信号の変化として検出される(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−69772号公報
【特許文献2】特開平10−240430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような弾性表面波アクチュエータにおいては、目盛を光学的に読みとる手段を構成するための部品点数増加、固定子の大きさの増加、これらに伴う材料コストや組み立て工数の増加などの問題がある。
【0006】
また、上述した特許文献2に示されるような弾性表面波の伝搬面における接触位置の検出方法を弾性表面波アクチュエータにおける2物体の圧接位置の検出に用いる場合、弾性表面波の伝搬方向の位置検出が必要であり、弾性表面波の励振用と受信用の櫛形電極を、弾性表面波の伝搬方向に沿ってその伝搬領域の両側に設ける必要がある。このため、長い櫛の歯を備えた櫛形電極のための広い面積が必要であり、弾性アクチュエータが大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成で大型化を抑制でき、精度良い位置検出を実現できるできる弾性表面波アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段を有した圧電基板と、前記圧電基板の表面に配置され前記駆動用励振手段によって励振された弾性表面波により当該圧電基板に対して相対的に移動される移動体と、を備えた弾性表面波アクチュエータにおいて、前記移動体の当該圧電基板に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段と、前記検出用励振手段によって励振された弾性表面波を検出する表面波検出手段と、前記移動体の相対的な移動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出用の弾性表面波が前記検出用励振手段により励振されてから前記表面波検出手段によって検出されるまでの時間に基づいて前記移動体の前記圧電基板に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、当該移動体の前記圧電基板に対する相対的な移動を制御するものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段と前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に共に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波が当該圧電基板と移動体の相対距離を規定する反射体によって反射されて戻ってきた波を検出するものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のうち前記検出用励振手段を備えていない方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波を直接検出するものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とを共通の手段で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して前記移動体の駆動と当該移動体の位置検出とを行うものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とは、互いに異なる周波数の弾性表面波を励振するものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記検出用励振手段を複数備え、各励振手段による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて前記移動体の位置を算出するものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータにおいて、前記駆動用励振手段の一部を用いて前記検出用励振手段を構成するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、検出用の弾性表面波が励振されてから検出されるまでの時間に基づいて移動体の圧電基板に対する相対的な位置を検出するので、弾性表面波アクチュエータに目盛やその読み取り手段を設ける必要がなく、大型化を抑制できる。また、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間を一方から他方に伝搬する弾性表面波や、一方から出て他方によって反射されて一方側に戻ってくる弾性表面波の走行時間に基づいて、2つの物体間の相対距離を求めることができるので、弾性表面波の伝搬方向、従って移動体の移動方向の一端、両端、及び/又は移動体に検出用励振手段や表面波検出手段を構成する櫛形電極を設ければよく、簡単な構成で位置検出できる。また、位置読み取りの精度は、走行時間読み取りの精度を上げることにより、容易に精度良くできる。
【0016】
請求項2の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)のいずれか一方から出て他方によって反射されて一方側に戻ってくる弾性表面波(反射波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めることができるので、位置検出用の弾性表面波の励振手段と検出手段の両方を一方側に形成できるので、構成がより簡単になる。
【0017】
請求項3の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間をいずれか一方から他方に伝搬する弾性表面波(直達波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めることができるので、位置検出用の弾性表面波の、例えば、反射による減衰が殆どなく、位置検出回路における増幅などが不要となって回路構成が簡単になる。
【0018】
請求項4の発明によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、駆動用と検出用の弾性表面波が互いに干渉することがないので、両弾性表面波を同時に励振させて伝搬させることができ、駆動中にリアルタイムで相対位置を検出できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板と移動体)の間の反射波や直達波を移動体の移動方向の一方側または両側で、検出して複数の位置測定データを得ることができ、これらのデータの統計処理によって、弾性表面波の伝搬速度のばらつきなどの影響を解消して、相対位置をより精度良く求めることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。また、駆動用励振手段を構成する櫛形電極の全部を用いて検出用励振手段を形成する場合に比べて、検出用弾性表面波の波束の長さを短くでき、位置検出の精度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る弾性表面波アクチュエータについて、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1(a)(b)は本発明の第1実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の全体構成を模式的に示し、図2(a)〜(c)は弾性表面波アクチュエータ1における位置検出用の弾性表面波の送波と受波の信号強度と時間計測の様子を示す。弾性表面波アクチュエータ1は、図1(a)に示すように、駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段2を有した圧電基板10と、圧電基板10の表面に配置され駆動用励振手段2によって励振された弾性表面波により圧電基板10に対して相対的に移動される移動体3と、を備えている。本図及び以下に示す図において、図の左右方向が移動体3の移動方向であり、この方向を圧電基板10及び弾性表面波アクチュエータ1の左右方向として引用する。
【0024】
弾性表面波アクチュエータ1は、さらに、移動体3の圧電基板10に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4と、検出用励振手段4によって励振された弾性表面波w1が移動体3によって反射されて戻ってくる波w2を検出する表面波検出手段5と、移動体3の圧電基板10に対する相対的な移動を制御する制御手段6と、を備えている。
【0025】
制御手段6は、検出用の弾性表面波w1が前記検出用励振手段4により励振されてから表面波検出手段5によって検出されるまでの時間に基づいて移動体3の圧電基板10に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、移動体3の圧電基板10に対する相対的な移動を制御する。移動体3の相対位置は、例えば、圧電基板10に設けられたX座標上の座標値で表される。以下、各構成と動作の詳細を説明する。まず、移動体3の駆動について説明し、その後移動体3の位置計測について説明する。
【0026】
圧電基板10は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電基板10は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよい。その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波が励振される。従って、圧電基板10は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよく、その表面形状は、平面の他に、円柱面やさらに一般的な曲面からなる面形状でもよい。
【0027】
駆動用励振手段2は、圧電基板10の表面に2つの電極を互いに噛み合わせて形成した、いわゆる櫛形電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)によって構成される。櫛形電極の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる電極に属し、励振する弾性表面波の波長λの半分の長さのピッチで配列されている。2つの櫛形電極に高周波電圧印加用の電気回路21から高周波(MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに変換されて、圧電基板10の表面に弾性表面波が励振される。励振された弾性表面波の振幅は、電極に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波の波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。
【0028】
移動体3は、例えば、シリコンのような硬い材料でできており、圧電基板10に接触する面(底面)には複数の突起(不図示)が設けられている。このような突起は、例えば、シリコンのエッチング工法で製作される。移動体3を形成する材料は、シリコンでなくても硬い材料であればよい。移動体3には、図1(b)に示すように、予圧付与手段4によって予圧Fが加えられており、圧電基板10における弾性表面波の伝搬領域の表面に押圧されている。
【0029】
上述の移動体3が押圧された状態で、駆動用励振手段2によって弾性表面波が励振されると、弾性表面波の楕円振動に伴う駆動力が摩擦力を介して移動体3に伝達される。すると、移動体3は、弾性表面波の伝搬方向とは逆の方向に駆動される。すなわち、図1(a)に示す右側の駆動用励振手段2を動作させると、移動体3は右に移動し、左側の駆動用励振手段2を動作させると、移動体3は左に移動する。
【0030】
移動体3の底面の突起は、弾性表面波の駆動力を効率よく移動体3に伝達するためのものである。また、突起無しで弾性表面波の駆動力を効率良く移動体3に伝達できるならば、底面の突起は不要である。なお、予圧Fの大きさによって移動体3の移動の速度、加速度が変化する。移動体3の移動速度は、励信信号の大きさの関数であり、移動距離は、励振信号の大きさと信号継続長の関数である。
【0031】
なお、圧電基板10と移動体3は、互いに相対的に移動する関係にある。従って、弾性表面波アクチュエータ1が移動子と固定子とからなるリニアモータや回転モータを形成する場合、圧電基板10を固定子とすると、移動体3が移動子であり、逆に、移動体3を固定子とすると、圧電基板10が移動子となる。固定されているか移動するかなどは、相対的なものである。本明細書では、圧電基板10が固定され、移動体3が移動するとして記述するが、弾性表面波アクチュエータ1の動作がこれに限定されるものではない。なお、以下において、例えば、櫛形電極の形成された圧電基板10と移動体3とを合わせて、弾性表面波アクチュエータ1の本体部分と称することがある。
【0032】
位置検出用励振手段4は、上述の駆動用励振手段2と同様に、櫛形電極によって構成され、電気回路41から所定の信号強度に基づく高周波電圧を櫛形電極に印加することにより、位置検出用の弾性表面波w1(送波)を励振する。また、表面波検出手段5は、位置検出用励振手段4の櫛形電極を用いて構成される。つまり、弾性表面波w2(受波)が位置検出用励振手段4の櫛形電極を通過するときに、波の機械的エネルギが電気的エネルギに変換されて電極間に電圧が発生する。そこで、電極間に発生した電圧に基づいて、電気回路41において、弾性表面波w2の信号が得られる。
【0033】
ところで、移動体3の位置を検出すると共にその位置を制御するには、駆動用励振手段2が励振する弾性表面波によって移動体3を移動させ、位置検出用励振手段4が励振する位置検出用の弾性表面波では移動体3を移動させないことが必要である。これは、駆動用の弾性表面波の振幅(エネルギ)を位置検出用の弾性表面波の振幅(エネルギ)よりも十分小さくすることによって達成できる。位置検出用の弾性表面波の振幅は、励振用の電圧を低くすることの他に、櫛形電極の歯の数を減らすことによっても小さくできる。励振時間が同じ場合、櫛形電極の歯の数が少ない方が、伝搬する弾性表面波の波束の長さを短くできる利点がある。すなわち、波束の長さが短いほど、送波w1と、受波w2間の干渉を減らすことができ、受波w2を明瞭に検出できる。
【0034】
送波w1の信号と、受波w2の信号とが得られると、図2(a)に示すように信号のピーク値の時刻、図2(b)に示すように信号の立上り時刻、図2(c)に示すように信号の立下りの時刻などを基準にして、信号の時間間隔Δtが得られる。この時間間隔Δtは、位置検出用の弾性表面波の送波から受波までの時間、つまり、移動体3間での往復の時間である。そこで、弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、移動体3の位置xが、x=C×Δt/2、と求められる。
【0035】
このような本発明の弾性表面波アクチュエータ1においては、圧電基板10に目盛やその読み取り手段を設ける必要がなく、大型化を抑制できる。また、相対移動する圧電基板10と移動体3の間を往復する送波w1と受波w2の走行時間に基づいて、2つの物体間の相対距離を求めることができるので、弾性表面波の伝搬方向、従って移動体3の移動方向(X方向)の一端または両端に検出用励振手段4や表面波検出手段5を構成する櫛形電極を設ければよく、簡単な構成で移動体3の位置検出が可能である。また、位置読み取りの精度は、走行時間読み取りの精度を上げることにより、容易に向上できる。
【0036】
弾性表面波アクチュエータ1は、このようにして取得した位置データに基づいて、駆動用励振手段2によって励振する弾性表面波の振幅や励振時間を制御することができ、移動体3を高精度に位置決め制御することができる。弾性表面波アクチュエータ1は、例えば、カメラのレンズを移動させるズーム機構や、CD、DVD、HDDなどのデジタルストレージ機器におけるピックアップの位置制御機構、デジタルカメラにおける手ぶれ位置補正機構、リニヤ振動モータ、産業用精密位置決め機構などに応用できる。また、移動体3の相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、移動体3の移動を制御する方法は、種々の弾性表面波アクチュエータに適用できる。例えば、弾性表面波アクチュエータが、一方向に弾性表面波を励振する一方向IDTから成る駆動用励振手段2や検出用励振手段4を備えたものや、エネルギ環流型の駆動用励振手段2を備えたものであってもよい。このことは、以下に述べる実施形態においても同様である。
【0037】
(第2実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第2実施形態について説明する。図3(a)〜(c)は、第2実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の一部主要本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の底面に、位置検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4、及び表面波検出手段5を設けたものである。検出用励振手段4と表面波検出手段5は、同じ櫛形電極を共用して構成される。移動体3は、圧電基板10と同様に、圧電材料で形成される。圧電基板10の端部には、弾性表面波反射構造体11が設けられている。
【0038】
移動体3の検出用励振手段4によってで励振された弾性表面波w1は、圧電基板10上を伝搬し、弾性表面波反射構造体11によって反射されて、逆進する弾性表面波w2となって、移動体3の表面波検出手段5によって検出される。弾性表面波反射構造体11は、例えば、弾性表面波を全反射する、いわゆる「反射器」と呼ばれる櫛形電極で構成される。弾性表面波反射構造体11は、他の反射構造体であってもよい。
【0039】
上述の第1実施形態と、この第2実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4と表面波検出手段5が、圧電基板10と移動体3のいずれか一方に共に備えられ、表面波検出手段5は、検出用励振手段4によって励振され送波された弾性表面波が圧電基板10と移動体3の相対距離を規定する反射体(移動体3、又は、弾性表面波反射構造体11)によって反射されて戻ってきた波w2を検出している。
【0040】
(第3実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体の一部を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4が、圧電基板10と移動体3のいずれか一方に備えられ、表面波検出手段5が、圧電基板10と移動体3のうち検出用励振手段4を備えていない方に備えられたものである。表面波検出手段5は、検出用励振手段4によって励振され送波された弾性表面波を(反射なしに)、直接検出する。
【0041】
すなわち、この弾性表面波アクチュエータ1は、位置検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段4を移動体3に、表面波検出手段5を圧電基板10に設けたものである。また、第3実施形態の変形例として、逆に、検出用励振手段4を圧電基板10に、表面波検出手段5を移動体3に設けてもよい。
【0042】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板10と移動体3)の間をいずれか一方から他方に伝搬する弾性表面波(直達波)の走行時間に基づいて、2つの物体間の距離を求めるので、位置検出用の弾性表面波の、例えば、反射による減衰が殆どなく、位置検出ようの回路における増幅などが不要となって回路構成が簡単になる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第4実施形態について説明する。図5は本発明の第4実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示し、図6は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動波、位置検出用の送波w1と受波w2の各信号強度c,a,bと相互の時間関係を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図5に示すように、駆動用励振手段2と検出用励振手段4とを共通の櫛形電極で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して移動体3の駆動と移動体3の位置検出とを行うものである。
【0044】
さらに、上述の共通の櫛形電極を用いて、表面波検出手段5をも構成している。このような、3つの手段を共通の櫛形電極で構成する場合は、図6に示すように、駆動波の電気信号c、位置検出用の送波w1の信号a、受波w2の信号bの三者が、時間的にずれている必要がある。駆動波信号cは、移動体3を駆動して移動させるために信号強度が他の信号の強度より大きく、受波w2の信号bは、反射による減衰を受けているので、送波w1の信号aの強度よりも強度が小さく成っている。信号a,bと、信号cが重ならないためには、励振の時間長さと共に励振のタイミングをも調整している。
【0045】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、検出用励振手段4や、表面波検出手段5を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトなものを実現できる。また、励振用の電気回路の共通化と簡素化ができる。
【0046】
(第5実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第5実施形態について説明する。図7は、本発明の第5実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示し、図8は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動用、及び位置検出用の弾性表面波の周波数分布を示し、図9は、弾性表面波アクチュエータ1における駆動用の弾性表面波(駆動波)、位置検出用の送波w1と受波w2の信号強度c,a1,b1等と時間関係を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図7に示すように、駆動用励振手段2と、表面波検出手段5と共用される検出用励振手段4と、を備え、移動体3によって反射された弾性表面波(受波w2)を検出するものであり、駆動用励振手段2と検出用励振手段4とが、互いに異なる周波数f1,f2の弾性表面波を励振するものである。
【0047】
上述の周波数は、例えば、駆動用励振手段2で発生する弾性表面波はf1=10MHz、位置検出用励振手段4で発生する弾性表面波はf2=30MHzとする。このとき、移動体3による弾性表面波の反射率Rが、例えば、図8に示すように、f2=30MHzに中心を有する分布であると、周波数f2の波だけを反射することができる。なお、周波数の組合せを逆にする場合、移動体3による弾性表面波の反射率を、f1=10MHzに中心を有する分布にすればよい。
【0048】
上述のように、駆動用の弾性表面波の周波数f1と、位置検出用の弾性表面波の周波数f2とをずらすのは、互いの弾性表面波が干渉しないようにするためである。このようにすれば、駆動用と検出用の弾性表面波が互いに干渉することがないので、両弾性表面波を同時に励振させて伝搬させることができ、駆動用弾性表面波を励振しながら移動体3を移動させている最中に、位置検出用の弾性表面波を励振してリアルタイムでその相対位置を検出できる。すなわち、駆動用弾性表面波と位置検出用弾性表面波とは、互いに周波数が異なるので、表面波検出手段5では位置検出用弾性表面波の信号のみが受信される。
【0049】
ただし、移動体3が移動している最中に移動体3の位置を測定する場合、位置検出用の弾性表面波が移動体3によって反射した後も移動体3が移動しているので、この移動による補正が必要である。また、駆動用電極で発生した弾性表面波では移動体は動き、位置検出用の櫛歯電極で発生した弾性表面波では移動体は動かないことが必要である。ここで、例えば、図7に示す弾性表面波アクチュエータ1の左側の駆動用励振手段2を動作させ、検出用励振手段4と表面波検出手段5とを用いて移動体3の位置を検出する場合を説明する。この場合、移動体3は、左方に移動する。
【0050】
上述の状況のもとで、図9に示すように、駆動波の信号cが存在している間は移動体3が移動し続けており、この間に測定した送波の信号a1,a2,a3と、これに対応する受波の信号b1,b2,b3との時間間隔Δt1,Δt2,Δt3は、移動体3が近付くことから、次第に短くなる。その後、駆動波の励振が止むことによって、移動体3の相対移動が停止し、移動体3の位置が変化しないので、信号a4,a5と、これに対応する受波の信号b4,b5との時間間隔Δt4,Δt5が一定となる。
【0051】
(第6実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第6実施形態について説明する。図10は、本発明の第6実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4を複数備え、各励振手段4による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて移動体3の位置を算出するものである。例えば、この弾性表面波アクチュエータ1は、図10に示すように、検出用励振手段4及びこれと兼用の表面波検出手段5を移動体3の移動領域の左右に備えている。すなわち移動体3の左右の距離が検出される。
【0052】
上述の構成のもとで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離をL1、右側の検出用励振手段4から移動体3までの距離をL2、左右の検出用励振手段4間の距離をL0とする。そして、左側の検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w1を励振してから反射波w2を検出するまでの時間をΔt1、右側の検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w3を励振してから反射波w4を検出するまでの時間をΔt2とする。また、弾性表面波の伝搬速度をCとする。
【0053】
単独の検出用励振手段4しか設けていない場合、移動体3の距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
しかしながら、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化すると、距離L1は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δtl×ΔC、の誤差が生じる。なお、このような伝搬速度のばらつきは、圧電基板10の材料ロットの特性ばらつきの他に、例えば、動作環境(温度や湿度)の変化などに起因して発生する。
【0054】
一方、本実施形態のように、検出用励振手段4が左右に設けられている場合、移動体3の距離L1は、既知の距離L0を用いて以下のようにして求められる。
L1=L0×L1/(L1+L2)、
=L0×(Δt1×C/2)/(Δt1×C/2+Δt2×C/2)、
=L0×Δt1/(Δt1+Δt2)。
この式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の進行速度が、C+ΔC、に変化しても、距離L1の値は変化しないことになる。つまり、検出用励振手段4を複数設け、以下のように計算して移動体の位置を求めることにより、精度良く移動体3の位置を検出することができる。
L1=L0×Δt1/(Δt1+Δt2)。
【0055】
このような弾性表面波アクチュエータ1によれば、相対移動する2つの物体(圧電基板10板と移動体3の間の反射波や直達波(上記例では、反射波w2,w4のみ)を移動体3の移動方向の一方側または両側で、検出して複数の位置測定データを得ることができ、これらのデータの統計処理によって、弾性表面波の伝搬速度Cのばらつきなどの影響を解消して、相対位置をより精度良く求めることができる。
【0056】
(第7実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第7実施形態について説明する。図11(a)(b)は本発明の第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の駆動状態と移動体3の位置測定の状態を示す。また、図12(a0)〜(a3)は図5に示した弾性表面波アクチュエータ1における位置検出を示し、図11(b0)〜(b3)は、図11(b)に示した弾性表面波アクチュエータ1における位置検出を示す。この第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1は、駆動用励振手段2の一部を用いて検出用励振手段4及び表面波検出手段5を構成するものである。
【0057】
図11(a)において、駆動用励振手段2の櫛形電極は、例えば、電極対(交差指電極対)が全部で20対あり、そのうちの2対が他の18対と電気的に分離可能にするスイッチSWを介して互いに接続されると共に、電気回路21に接続されている。20対の櫛形電極によって、駆動波w0が励振される。また、図11(b)において、分離可能な2対がスイッチSWによって分離されて電気回路21に接続されている。この2対の櫛形電極によって、位置検出用の弾性表面波w1は励振される。電気回路21は、駆動用の弾性表面波を励振するための高周波電圧を発生する回路であると共に、位置検出用の弾性表面波の励振、及び表面波検出を行う電気回路41を兼ねている。
【0058】
このような第7実施形態の弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の位置を検出する際に、2対の櫛形電極しか用いないので、20対全体を用いて弾性表面波を励振する場合に比べて、弾性表面波の励振領域を短く(波の伝搬方向の長さを短く)することができるので、励振される弾性表面波の波束を短くしてパルス状にすることができる。波束が短いということは、移動体3が櫛形電極の近傍にある場合でも、移動体3からの反射波を明瞭に検知できることを意味する。
【0059】
上述の位置検出用の弾性表面波の波束の長さの影響について、図11(a0)〜(b3)により説明する。図11(a0)に示すように、櫛形電極の幅x1が広いと、図11(a1)に示すように、少なくとも幅x1以上の長さの送波w1が生成され、この送波w1は、図11(a1)(a2)に示すように、移動体3で反射された後、櫛形電極の存在領域において受波w2と重なってしまう。この櫛形電極は、受波w2を受信する表面波検出手段5を兼ねているので、移動体3が櫛形電極の近くに存在して送波w1と受波w2が重なった状態では、正しく受波の信号を得ることが困難である。
【0060】
他方、図11(b0)に示すように、櫛形電極の幅x2が(x1よりも)狭いと、図11(b1)に示すように、波束の長さが(x1よりも)短い送波w1が生成され、この送波w1は、図11(b1)(b2)に示すように、移動体3で反射された後、櫛形電極の存在領域において受波w2と重なることがない。従って、移動体3が櫛形電極の近くに存在しても、送波w1と受波w2が重なることがなく、より正しく受波の信号を得ることができる。
【0061】
実施形態7の弾性波アクチュエータ1によれば、検出用励振手段を構成する櫛形電極を専用に設ける必要がなく、大型化を抑制したコンパクトな弾性表面波アクチュエータを実現できる。また、励振用の電気回路の簡素化ができる。また、駆動用励振手段を構成する櫛形電極の全部を用いて検出用励振手段を形成する場合に比べて、検出用弾性表面波の波束の長さを短くでき、位置検出の精度を上げることができる。
【0062】
(第8実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第8実施形態について説明する。図13(a)(b)は、弾性表面波アクチュエータ1における移動体3による反射波の減衰とその抑制について示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の圧電基板10に対向する底面に、配列ピッチpが、弾性表面波の波長λ、整数nを用いて、p=n×λ/2、となる突起31を複数備えたものである。
【0063】
突起の配列ピッチpが、p=n×λ/4、の場合、図13(a)に示すように、入射波w1が、各突起によって反射された反射波r1,r2,・・は、位相が180゜ずれているので互いに打ち消し合うので、反射波全体の波w2の振幅は減衰してしまう。ところが、p=n×λ/2、の場合、図13(b)のように、各反射波r1,r2,r3,・・が互いに強め合うので、全体の反射波w2は減衰が殆どなく、反射波w2の信号の検出が腰囲になる。
【0064】
(第9実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第9実施形態について説明する。図14は本発明の第9実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図14に示すように、圧電基板10の移動体3が移動する移動領域の左側に検出用励振手段4兼表面波検出手段5を設け、右両に表面波検出手段5を設け、位置検出用の弾性表面波w1が移動体3で反射した波w2と、移動体3によって反射せずに直進した波w0とを検出して移動体3の位置を検出するものである。
【0065】
このような弾性表面波アクチュエータ1は、弾性表面波の伝搬速度のばらつきを解消して精度よく移動体3の位置を検出することができる。ここで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、検出用励振手段4と右側の表面波検出手段5との間隔L0、検出用励振手段4において位置検出用の弾性表面波w1を励振してから反射波w2を検出するまでの時間Δt1、右側の表面波検出手段5が直進波w0を検出するまでの時間Δt0を定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
【0066】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt2、L0を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。
L1=L0×(L1/L0)、
=L0×(Δt1×C/2)/(Δt0×C)、
=L0×(Δt1/Δt0)/2。
【0067】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。
【0068】
(第10実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第10実施形態について説明する。図15は、本発明の第10実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、図15に示すように、圧電基板10の移動体3が移動する移動領域の左側に検出用励振手段4兼表面波検出手段5を設け、そのさらに左側に追加の検出用励振手段40を設け、位置検出用の弾性表面波w1が移動体3で反射した波w2と、追加の検出用励振手段40によって励振された波w4と、を表面波検出手段5よって検出して移動体3の位置を検出するものである。
【0069】
このような弾性表面波アクチュエータ1は、上述の第9実施形態と同様に、弾性表面波の伝搬速度のばらつきを解消して精度よく移動体3の位置を検出することができる。ここで、2つの検出用励振手段40,4の間の距離L3、検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、検出用励振手段40において弾性表面波w4を励振してから表面波検出手段5が検出するまでの時間Δt4、検出用励振手段4からの波w1が、移動体3によって反射した波w2を、表面波検出手段5が検出するまでの時間Δt1を定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式で求められる。
L1=Δt1×C/2。
【0070】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt4、L4を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。なお、以下の式で、距離L4の一方は、既知の値を用いる。
L1=L4×(L1/L4)、
=L4×(Δt1×C/2)/(Δt3×C)、
=L4×(Δt1/Δt3)/2。
【0071】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。なお、上記、追加の検出用励振手段40は、その左側に設けている駆動用励振手段2によって兼用することができる。この場合、検出用励振手段40は、不要となる。
【0072】
(第11実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第11実施形態について説明する。図16(a)(b)は本発明の第11実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの移動体3周辺の要部を示し、図17は移動体3による弾性表面波の偏向の様子を示し、図18は弾性表面波アクチュエータ1を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3が位置検出用の弾性表面波w1の伝搬方向を偏向して、振れ角が略90゜の方向に向かう波w2とするものである。
【0073】
弾性表面波の偏向は、図16(a)(b)に示すように、移動体3の外形形状を円形にしたり、四角形にしてその辺と弾性表面波の伝搬方向との間に角度を設けたり、図17に示すように、移動体3の下面に所定の間隔で配列された突起32を設けることによって行われる。突起32は、例えば、結晶格子におけるX線のブラッグ反射の原理によって構成される。弾性表面波の伝搬方向は、このように、移動体3の形状や、その突起の配置と形状で制御できる。
【0074】
弾性表面波の伝搬方向を変えることにより、圧電基板10の長手方向(移動体3の移動方向)の長さを短くして、その方向の省スペース化ができる。偏向された位置検出用の弾性表面波w2は、図18に示すように、移動体3の移動方向の側方に設けられた表面波検出手段5によって検出され、移動体3の位置が求められる。
【0075】
図19は、上述の図18に示した弾性表面波アクチュエータ1の変形例を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、移動体3の移動方向の両側に表面波検出手段5を設けたものである。この構成によると、移動体3が、移動方向に対して直交する方向に位置ずれたとしても、精度良く移動体3の位置を検出できる。
【0076】
ここで、左側に設けた検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、移動体3から両側の表面波検出手段5a,5bまでの距離La,Lb、検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波w1を励振してから表面波検出手段5a,5bが弾性表面波を検出するまでの時間Δta,Δtbを定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、表面波検出手段5a、従って時間Δtaのみにより求めた移動体3までの距離L1は、次式となる。
L1=Δta×C−La。
【0077】
ところが、移動体3が移動を繰り返すうちに、移動方向に垂直な方向における位置がずれ、距離Laが変化すると、上式で計算されるL1の精度が低下する。ここで、2つの表面波検出手段5a,5b、従って、Δta,Δtb,La,Lbを用いると、距離L1は以下の用に求められる。
L1=(Δta+Δtb)×C−(La+Lb)。
【0078】
上式において、(La+Lb)の値が常に一定なので、移動体3の位置が移動方向に垂直な方向にずれても、距離L1は影響されない。よって、距離L1を高い精度で求めることができる。
【0079】
(第12実施形態)
次に、弾性表面波アクチュエータ1の第12実施形態について説明する。図20(a)(b)は本発明の第12実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ1の本体部分と移動体3を示す。この弾性表面波アクチュエータ1は、検出用励振手段4を圧電基板10に設け、弾性表面波を検出する2つの表面波検出手段5c、5dを移動体3に設けたものである。なお、表面波検出手段は複数設けることができる。
【0080】
ここで、左側の検出用励振手段4から移動体3までの距離L1、移動体3に設けた2つの表面波検出手段5c,5d間の距離L4、検出用励振手段4において位置検出用弾性表面波を励振してから表面波検出手段5cが弾性表面波を検出するまでの時間Δt1、表面波検出手段5dが弾性表面波を検出するまでの時間Δt4と定義する。弾性表面波の伝搬速度Cを用いて、時間Δt1のみにより求めた移動体までの距離L1は、次式となる。
L1=Δt1×C。
【0081】
ところが、圧電基板10の材料ロットのばらつきなどにより、弾性表面波の伝搬速度Cが、C+ΔC、に変化すると、距離L1の計測結果は、L1=Δt1×(C+ΔC)、となり、Δt1×ΔC、の誤差が生じる。ここで、上述のΔt4、L4を用いると、移動体3までの距離L1は、以下のように求められる。なお、以下の式で、距離L4の一方は、既知の値を用いる。
L1=L4×(L1/L4)、
=L4×(Δt1×C)/(Δt4×C−Δt1×C)、
=L4×Δt1/(Δt4−Δt1)。
【0082】
上述の最後の式にはCが含まれていないので、たとえ、弾性表面波の伝搬速度が、C+ΔC、に変化したとしても、距離L1の値は変化しない。従って、高精度に移動体3の位置を検出することができる。
【0083】
以上に説明した各実施形において、検出用励振手段4は、駆動用励振手段2よりも移動体3に近い方に配置している。このような配置によると、検出用励振手段4の櫛形電極の設計が容易になる。また、位置検出用弾性表面波の伝搬経路を短くでき、その検出時間を短くすることができる。また、位置検出用の弾性表面波の伝搬経路上に駆動用励振手段2を介在させないことにより、もともと信号強度の小さな位置検出用弾性表面波の信号劣化を防ぐことができ、移動体の位置をより正確に検出できる。
【0084】
なお、上述した距離L1の計算等は、例えば、移動体3の大きさや、各櫛形電極の縁の影響等について、説明の簡単化のため単純化したモデルに基づいて示したものがある。適宜修正して距離L1を求めることができる。また、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの全体構成を示す模式図、(b)は同弾性表面波アクチュエータ本体側面図。
【図2】(a)(b)(c)は同弾性表面波アクチュエータにおける位置検出用の弾性表面波の送波と受波の信号強度と時間計測の様子を示すグラフ。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の平面図、(b)は同側面図、(c)は同弾性表面波アクチュエータの移動体の底面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の平面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図6】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動波、位置検出用の送波と受波の信号強度と時間関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第5実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図8】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動用、及び位置検出用の弾性表面波の周波数分布のグラフ。
【図9】同上弾性表面波アクチュエータにおける駆動波、位置検出用の送波と受波の信号強度と時間関係を示すグラフ。
【図10】本発明の第6実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図11】(a)は本発明の第7実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの駆動状態を示す模式図、(b)は同弾性表面波アクチュエータの移動体の位置を測定している状態を示す模式図。
【図12】(a0)は図5に示した弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(a1)〜(a3)は(a0)の弾性表面波アクチュエータにおける位置検出に係る送波と受波の位置関係を示すグラフ、(b0)は図11(b)に示した弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(b1)〜(b3)は(b0)の弾性表面波アクチュエータにおける位置検出に係る送波と受波の位置関係を示すグラフ。
【図13】(a)は弾性表面波アクチュエータの移動体による弾性表面波の反射波の減衰を説明する図、(b)は本発明の第8実施形態に係る弾性表面波アクチュエータにおける弾性表面波の減衰を抑制した反射波の図。
【図14】本発明の第9実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図15】本発明の第10実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図16】(a)(b)は本発明の第11実施形態に係る弾性表面波アクチュエータの移動体周辺の要部平面図。
【図17】同上弾性表面波アクチュエータにおける移動体による弾性表面波の偏向を説明する底面図。
【図18】同上弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図。
【図19】同上弾性表面波アクチュエータ本体の変形例を示す斜視図。
【図20】(a)は本発明の第12実施形態に係る弾性表面波アクチュエータ本体の斜視図、(b)は同弾性表面波アクチュエータの移動体を底面から見た斜視図。
【符号の説明】
【0086】
1 弾性表面波アクチュエータ
2 駆動用励振手段
3 移動体
4 検出用励振手段
5 表面波検出手段
6 制御手段
10 圧電基板
11 反射用構造体(反射体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段を有した圧電基板と、前記圧電基板の表面に配置され前記駆動用励振手段によって励振された弾性表面波により当該圧電基板に対して相対的に移動される移動体と、を備えた弾性表面波アクチュエータにおいて、
前記移動体の当該圧電基板に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段と、
前記検出用励振手段によって励振された弾性表面波を検出する表面波検出手段と、
前記移動体の相対的な移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出用の弾性表面波が前記検出用励振手段により励振されてから前記表面波検出手段によって検出されるまでの時間に基づいて前記移動体の前記圧電基板に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、当該移動体の前記圧電基板に対する相対的な移動を制御することを特徴とする弾性表面波アクチュエータ。
【請求項2】
前記検出用励振手段と前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に共に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波が当該圧電基板と移動体の相対距離を規定する反射体によって反射されて戻ってきた波を検出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項3】
前記検出用励振手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のうち前記検出用励振手段を備えていない方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波を直接検出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とを共通の手段で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して前記移動体の駆動と当該移動体の位置検出とを行うことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とは、互いに異なる周波数の弾性表面波を励振することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項6】
前記検出用励振手段を複数備え、各励振手段による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて前記移動体の位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項7】
前記駆動用励振手段の一部を用いて前記検出用励振手段を構成することを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項1】
駆動用の弾性表面波を励振する駆動用励振手段を有した圧電基板と、前記圧電基板の表面に配置され前記駆動用励振手段によって励振された弾性表面波により当該圧電基板に対して相対的に移動される移動体と、を備えた弾性表面波アクチュエータにおいて、
前記移動体の当該圧電基板に対する相対位置の検出に用いる検出用の弾性表面波を励振する検出用励振手段と、
前記検出用励振手段によって励振された弾性表面波を検出する表面波検出手段と、
前記移動体の相対的な移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出用の弾性表面波が前記検出用励振手段により励振されてから前記表面波検出手段によって検出されるまでの時間に基づいて前記移動体の前記圧電基板に対する相対的な位置を検出し、その位置データを用いて、当該移動体の前記圧電基板に対する相対的な移動を制御することを特徴とする弾性表面波アクチュエータ。
【請求項2】
前記検出用励振手段と前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に共に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波が当該圧電基板と移動体の相対距離を規定する反射体によって反射されて戻ってきた波を検出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項3】
前記検出用励振手段は、前記圧電基板と移動体のいずれか一方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記圧電基板と移動体のうち前記検出用励振手段を備えていない方に備えられ、前記表面波検出手段は、前記検出用励振手段によって励振され送波された弾性表面波を直接検出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とを共通の手段で構成し、その励振手段の動作を時間的に分割して行わせることにより駆動用及び検出用の弾性表面波を時間的に分離して励振して前記移動体の駆動と当該移動体の位置検出とを行うことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動用励振手段と前記検出用励振手段とは、互いに異なる周波数の弾性表面波を励振することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項6】
前記検出用励振手段を複数備え、各励振手段による弾性表面波に基づく複数の位置検出値に基づいて前記移動体の位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【請求項7】
前記駆動用励振手段の一部を用いて前記検出用励振手段を構成することを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−259670(P2007−259670A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84379(P2006−84379)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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