説明

弾性表面波デバイスおよびその製造方法

【課題】従来の弾性表面波デバイスでは、耐湿特性と電気的特性の両方を同時に向上させることが難しいという問題があった。
【解決手段】基板1と、この基板1の上面に設けた櫛型電極2と、この櫛型電極2を覆う保護膜4とを備え、櫛形電極2を構成する電極指3の上面の保護膜4の厚さと、電極指3の側面の保護膜4の厚さとをほぼ等しくしたものであり、これにより挿入損失の劣化が少なく、耐湿性の向上した弾性表面波デバイスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に携帯電話等に用いられる、弾性表面波デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の弾性表面波デバイスについて説明する。
【0003】
近年、弾性表面波デバイスの小型軽量化への要望が強く、チップサイズパッケージ化が検討されている。そのような中で、従来の弾性表面波デバイスでは電極が湿度に対して弱いため、気密封止を行う必要があり、これが小型化への妨げとなっていた。そこで電極を耐湿性を持った膜で覆うという検討が行われてきた。
【0004】
しかしながら、電極を耐湿膜で覆うと、これが電極の振動を妨げ、挿入損失が増加するという問題を有していた。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−198321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、電極上に保護膜を形成することによって耐湿性を向上させ、挿入損失の劣化の少ない弾性表面波デバイスを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために本発明は、基板と、この基板の上面に設けた櫛型電極と、この櫛形電極を覆う保護膜とを備え、櫛型電極を構成する電極指の上面の保護膜の厚さと、電極指の側面の保護膜の厚さとをほぼ等しくした構造を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上に形成された電極を覆うように保護膜を形成し、かつその保護膜の厚さを、電極指の上面と側面とでほぼ等しくすることによって耐湿性を向上させ、挿入損失の劣化の少ない弾性表面波デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明について説明する。
【0010】
図1は本発明の実施の形態1における弾性表面波デバイスの要部の断面図である。
【0011】
タンタル酸リチウム等からなる基板1の上面に櫛型電極2と、この櫛型電極2を覆う窒化ケイ素等からなる保護膜4を形成したものである。ここで、電極指3の上面の保護膜4の厚さをt1、電極指3の側面の保護膜4の厚さをt2、電極指3の間の保護膜4の厚さをt3とする。t1を約5nmとし、t2をほぼt1と等しくしたものである。
【0012】
通常このような保護膜を形成する場合、RFスパッタ、DCスパッタ、ECRスパッタ、CVD等を用いて形成するが、いずれの場合でも電極側面への回り込みが十分ではなく、側面の膜厚t2は、上面の膜厚t1の30%程度にしかならない。保護膜としての耐湿性を考えると、その厚さが重要となってくる。即ち一定の耐湿基準を満たそうとすると、もっとも薄いところでも一定の膜厚を確保する必要があり、電極側面の保護膜の厚さを確保するには、電極指上面の保護膜の厚さをさらに厚くする必要があり、結果として弾性表面波デバイスとしての挿入損失の増加に繋がる。
【0013】
そこで本実施の形態1では、電極指上面の保護膜の厚さと電極側面の保護膜の厚さをほぼ等しくすることにより、電極指上面の保護膜の厚さを最小限にすることができ、挿入損失の増加も最小限に抑えられる。
【0014】
なお、電極指3の間の保護膜は、耐湿性に影響を与えるものではないため、薄い方が良く、電極指上面の保護膜の厚さより薄くする方が望ましい。
【0015】
また、保護膜は窒化ケイ素以外にも、酸化窒化ケイ素あるいは酸化ケイ素でも良く、またこれらを積層した膜であっても良い。
【0016】
次に、この保護膜を形成するための製造方法について説明する。
【0017】
基板の上面に櫛型電極を設け、この櫛型電極の上に窒化ケイ素の保護膜を形成する工程において、基板側にRFデバイスを印加しながらスパッタリングで成膜を行う、いわゆるバイアススパッタリング法を用いた。窒化ケイ素ターゲットをスパッタリングすることにより基板上に窒化ケイ素を堆積させると同時に、バイアスにより基板上の窒化ケイ素の一部をスパッタリングする。つまり窒化ケイ素を堆積させながら一部を削ることにより、保護膜の形状をコントロールしたもので、これにより電極指上面の保護膜の厚さと、側面の保護膜の厚さをほぼ等しくしたものである。上面の保護膜の厚さt1と側面の保護膜の厚さt2の比t2/t1は、0.8以上が望ましく、1より大きくする必要はない。
【0018】
また、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタは、低温成膜ができるのが特長であり、バイアスをかけることは、その特長を減殺することになり、使われていなかった。しかしながらECRスパッタにおいても、RFバイアスをかけながらスパッタすることにより、上面と側面の保護膜の厚さをほぼ等しくすることができ、これによって従来よりも上面の保護膜の厚さが薄くても、耐湿性が向上することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、基板上に形成された電極を覆うように保護膜を形成し、かつその保護膜の形状を電極指上面の厚さと電極指側面の厚さをほぼ等しくすることによって、耐湿性および電気的特性が優れた弾性表面波デバイスを実現するものであり、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性表面波デバイスの要部の断面図
【符号の説明】
【0021】
1 基板
2 櫛型電極
3 電極指
4 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板の上面に設けた櫛型電極と、この櫛型電極を覆う保護膜とを備え、前記櫛型電極を構成する電極指の上面の保護膜の厚さと、前記電極指の側面の保護膜の厚さとをほぼ等しくした弾性表面波デバイス。
【請求項2】
電極指の上面の保護膜の厚さより、隣り合う前記電極指の間の前記保護膜の厚さを薄くした請求項1記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
保護膜は、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、および酸化ケイ素の少なくとも1種類からなる請求項1記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
基板の上面に櫛型電極を設け、この櫛型電極の上に保護膜を形成する工程において、前記基板にRFバイアスをかけながら、スパッタリングすることにより前記保護膜を形成する弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項5】
基板にRFバイアスをかけながら、電子サイクロトロン共鳴スパッタリングを行うことにより、保護膜を形成する請求項4記載の弾性表面波デバイスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−41589(P2006−41589A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214040(P2004−214040)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】