説明

弾性表面波デバイス

【課題】本発明は、主として無線通信機器にて使用される弾性表面波デバイスに関して、弾性表面波デバイスの電気的特性を向上させることを目的とするものである。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、圧電体基板1と、この圧電体基板1の表面に設けた櫛型電極2と、前記圧電体基板1の裏面に設けた支持層5を備え、弾性表面波デバイスを構成する圧電体基板1の裏面に設けられる支持層5を多結晶体で形成するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として無線通信機器にて使用される弾性表面波デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の弾性表面波デバイスは、圧電体基板上に櫛型電極を設けた構造となっているのであるが、圧電体基板の温度特性を低減させる手段として、圧電体基板より線膨張係数の小さく圧電体基板との密着性を有するシリコン等の支持基板を貼り合わせた構造が知られている。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−96677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧電体基板を薄くすることにより、櫛型電極で発生したバルク波の圧電体基板の裏面反射により弾性表面波デバイスの電気的特性が劣化してしまうという問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決し電気的特性の優れた弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明は、弾性表面波デバイスを構成する圧電体基板の裏面に設けられる支持層を多結晶体で形成したのである。
【発明の効果】
【0007】
この構成により、バルク波の圧電体基板裏面での反射を抑制でき弾性表面波デバイスの電気的特性を向上させることが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0009】
図1は弾性表面波デバイスを模式的に示したものであり、その基本構造はタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの圧電体基板1の上面に櫛型電極2を配置した構造を示している。
【0010】
そして、圧電体基板1の下面には図2に示すごとく、アルミナからなるベース層3とシリコンからなる密着層4から形成した支持層5が、密着層4を接合面として圧電体基板1に接合した構造となっている。
【0011】
ここで、この密着層4及びベース層3はそれぞれ図3に示すごとく各構成材料の多結晶体により構成しており、これにより弾性表面波デバイスの温度特性の改善を図るとともに電気的特性を向上させている。
【0012】
すなわち、圧電体基板1と接する支持層5部分つまり密着層4が圧電体基板1より線膨張係数が小さいシリコンで構成されているため弾性表面波デバイスの温度特性が改善されるとともに、密着層4を多結晶構造とすることで内部に粒界が生じ、この粒界の存在により櫛型電極2から放射されたバルク波が乱反射により、位相のずれた反射波同士で打ち消しあうようになり、この結果として薄型化に伴う弾性表面波デバイスの電気的特性の劣化を抑制できるからである。なお、多結晶構造における結晶粒子の大きさを櫛型電極から放射されるバルク波の波長程度に設定することでバルク波の発散性をより高めることが出来る。
【0013】
また、支持層5を密着層4とベース層3の多層構造とした理由は、密着層4が圧電体基板1との密着性がよく線膨張係数が小さい多結晶構造のシリコンを用いることで弾性表面波デバイスの温度特性の改善を図り、さらに電気的特性の向上を図ったものであるが、より剛性が高く線膨張係数が小さくシリコンとの密着性を有するアルミナをベース層3として支持層5を多層構造化することにより、さらに温度特性の改善が望めるのである。
【0014】
さらに、このベース層3を密着層4と同様に多結晶構造としたことで、密着層4を透過したバルク波を密着層4と同様に散乱させることができ電気的特性の劣化もより抑制できるのである。
【0015】
なお、この一実施形態においては弾性表面波デバイスとして一対の櫛型電極2を用いた模式的な構造を用いて説明したが、櫛型電極2を梯子型に組み合わせたラダー型フィルタや、複数の櫛型電極2を圧電体基板1の伝播方向に配置した縦モード型フィルタ、また、このような弾性表面波フィルタを適宜組み合わせた分波器や共用器といったものが弾性表面波デバイスとして挙げられ同様の作用効果を奏することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る弾性表面波デバイスは、温度特性の抑制及び電気的特性を向上できるという効果を有するものであり、主として無線通信機器に用いられる弾性表面波フィルタや弾性表面波デュプレクサなどの弾性表面波デバイス等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態における弾性表面波デバイスの斜視図
【図2】同弾性表面波デバイスの断面図
【図3】同弾性表面波デバイスの支持層部分を示す詳細図
【符号の説明】
【0018】
1 圧電体基板
2 櫛型電極
3 ベース層
4 密着層
5 支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体基板と、
この圧電体基板の表面に設けた櫛型電極と、
前記圧電体基板の裏面に設けた支持層を備え、
前記支持層は多結晶構造であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
支持層は圧電体基板と接する部分に配置した密着層と、この密着層を介して前記圧電体基板を支持するベース層とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−205777(P2008−205777A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38997(P2007−38997)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】