説明

弾性表面波フィルタとこれを用いた電子機器

【課題】本発明は、第1フィルタ部の入力部及び第2フィルタ部の入力部とアンテナとの出力側とをスイッチを介さずに接続した場合、第2フィルタ部の第2周波数帯におけるフィルタ特性の劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するために本発明の表面弾性波フィルタは、第1周波数帯の信号を通過させる第1フィルタ部19と、この第1フィルタ部19に対し並列に接続されると共に前記第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯の信号を通過させる第2フィルタ部20とを備える。そして、前記第1フィルタ部19は、入力部26に接続された第1共振子と、この第1共振子に接続された第2共振子と、前記第1共振子と前記第2共振子との間に一端が接続されグランドに他端が接続された第3共振子とを有するラダー型表面弾性波フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波フィルタとこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の弾性表面波フィルタについて図4を用いて説明する。図4において、受信装置1は、アンテナ2の出力側に直列接続され、第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号を切り替えるスイッチ3を有する。また、受信装置1は、スイッチ3の第1の出力4に接続され、第1周波数帯の信号を通過させる第1フィルタ部5と、スイッチ3の第2の出力6に接続され、第2周波数帯の信号を通過させる第2フィルタ部7を有する。さらに、受信装置1は、第1フィルタ部5の出力部8及び第2フィルタ部7の出力部9に接続された高周波IC10を有する。
【0003】
なお、受信装置1は、チャンネル切り替え制御部(図示せず)を有し、第1周波数帯が選択された場合、チャンネル切り替え制御部は、スイッチ3を第1フィルタ部5側に切り替え高周波IC10に第1周波数帯の信号を受信させる。また第2周波数帯が選択された場合、チャンネル切り替え制御部は、スイッチ3を第2フィルタ部7側に切り替え高周波IC10に第2周波数帯の信号を受信させる。
【0004】
次に、従来の第1フィルタ部5について図5を用いて説明する。図5において、第1フィルタ部5は、入力部11に一方が接続され他方が短絡された共振子13と、共振子13と高周波的に電磁結合する共振子14及び共振子15を有する。そして、共振子14の一方及び共振子15の一方は短絡され、各々の他方は第1フィルタ部5の出力部8に接続される。このような従来の弾性表面波フィルタをDMS(Double Mode SAW)フィルタという。なお、第2フィルタ部7も第1フィルタ部5と同様の構成である。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−166258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の受信装置1は、アンテナ2と第1フィルタ部5及び第2フィルタ部7との間に切り替え用のスイッチ3が存在したため、スイッチ3において受信信号レベルの低下(損失)が生じ、受信装置1の受信性能が劣化してしまう。またスイッチ3が存在するため、受信装置1の面積が大きくなる。そこで、第1フィルタ部5の入力部11及び第2フィルタ部7の入力部12とアンテナ2との出力側とをスイッチ3を介さずに接続すると、第2フィルタ部7の第2周波数帯におけるフィルタ特性が劣化するという問題があった。これは、第1フィルタ部5は、DMSフィルタであるので、信号通過帯域である第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯において十分インピーダンスが高くないからである。すなわち、DMSフィルタは、原理上、信号通過帯域の高域側において低インピーダンス化することで減衰量を得ているためである。
【0007】
そこで本発明は、このような問題を解決したもので、第1フィルタ部の入力部及び第2フィルタ部の入力部とアンテナとの出力側とをスイッチを介さずに接続した場合、第2フィルタ部の第2周波数帯におけるフィルタ特性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の表面弾性波フィルタは、第1周波数帯の信号を通過させる第1フィルタ部と、この第1フィルタ部に対し並列に接続されると共に前記第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯の信号を通過させる第2フィルタ部とを備える。そして、前記第1フィルタ部は、入力部と、この入力部に接続された第1共振子と、この第1共振子に接続された第2共振子と、前記第1共振子と前記第2共振子との間に一端が接続されグランドに他端が接続された第3共振子とを有するラダー型表面弾性波フィルタである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、第1フィルタ部はラダー型表面弾性波フィルタなので、第1フィルタ部の信号通過帯域である第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯における第1フィルタ部のインピーダンスを十分高くすることができる。その結果、第1フィルタ部の入力部と第2フィルタ部の入力部とアンテナの出力側とをスイッチを介さずに接続しても、第2フィルタ部の第2周波数帯におけるフィルタ特性の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明における実施の形態について図1、図2、及び図3を用いて説明する。
【0011】
図1において、受信装置16は、アンテナ17の出力側18に接続された第1フィルタ部19と、アンテナ17の出力側18に第1フィルタ部19と並列に接続された第2フィルタ部20とを有する。さらに、受信装置16は、第1フィルタ部19の出力側21に第1周波数帯受信端子22が接続されると共に第2フィルタ部20の出力側23に第2周波数帯受信端子24が接続された高周波IC25を有する。
【0012】
アンテナ17は、例えば、VHF(Very High Frequency)帯用のアンテナであり、約90MHzから約220MHz帯を受信する。
【0013】
第1フィルタ部19は、例えば、ラダー型表面弾性波フィルタからなり、アンテナ17からの信号のうち、第1周波数帯であるVHF帯7チャンネルの信号を通過させる。つまり、第1フィルタ部19は、第1周波数帯であるVHF帯7チャンネル以外の信号を減衰させ、特にVHF帯7チャンネルの上下隣接妨害の関係にある8チャンネル及び6チャンネルの信号を減衰させる。
【0014】
第2フィルタ部20は、例えば表面弾性波フィルタからなり、アンテナ17からの信号のうち、第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯であるVHF8チャンネルの信号を通過させる。つまり、第2フィルタ部20は、第2周波数帯であるVHF帯8チャンネル以外の信号を減衰させ、特にVHF帯8チャンネルの上下隣接妨害の関係にある9チャンネル及び7チャンネルの信号を減衰させる。
【0015】
次にラダー型表面弾性波フィルタである第1フィルタ部19について説明する。図2において、第1フィルタ部19は、入力部26に直列接続された第1共振子28と、この第1共振子28に直列接続された第2共振子29と、第1共振子28と第2共振子29との間にシャントに接地接続された第3共振子30とを有する。
【0016】
次に、この第1フィルタ部19の等価回路を図2と図3とを用いて説明する。第1共振子28は、後に説明する直列共振周波数帯や並列共振周波数帯を含む周波数帯の近傍において、等価回路31で表される。この等価回路31は、入力部26に直列接続された直列インダクタ32と、この直列インダクタ32に直列接続された直列容量33と、これら直列インダクタ32及び直列容量33に対し並列接続された並列容量34とからなる。なお、第2共振子29及び第3共振子30も第1共振子28と同様の等価回路で表すことができ、図3に示すように、第2共振子29は等価回路35で表され、第3共振子30は等価回路36で表される。
【0017】
等価回路31は、直列インダクタ32と直列容量33で決まる固有の直列共振周波数帯と、直列インダクタ32と直列容量33と並列容量34で決まる固有の並列共振周波数帯とを有する。並列共振周波数帯は、直列共振周波数帯よりも高い周波数帯である。そして、等価回路31,35は直列接続されているので、等価回路31,35の直列共振周波数帯f1が第1フィルタ部19の信号通過帯域となり、等価回路31,35の並列共振周波数帯f2が第1フィルタ部19の信号阻止帯域となる。また、等価回路36は並列接続されているので、等価回路36の直列共振周波数帯f3が第1フィルタ部19の信号阻止帯域となり、等価回路36の並列共振周波数帯f4が第1フィルタ部19の信号通過帯域となる。つまり、直列接続される等価回路31,35の直列共振周波数帯f1と並列接続される等価回路36の並列共振周波数帯f4とを略同じ周波数帯とすることにより、この周波数帯f1(=f4)が、第1フィルタ部19の信号通過帯域である第1周波数帯となる。なお、等価回路31,35の直列共振周波数帯f1(=等価回路36の並列共振周波数帯f4)と、等価回路31,35の並列共振周波数帯f2と、等価回路36の直列共振周波数帯f3の大小は、f3<f1<f2となる。
【0018】
上記構成により、入力部26に直列接続される第1共振子28が存在するため、第1フィルタ部19は、第1共振子28の直列共振周波数帯f1より高い周波数帯である第1共振子28の並列共振周波数帯f2で十分に高いインピーダンスとなる。この第1共振子28の並列共振周波数帯f2を第2フィルタ部20の信号通過帯域である第2周波数帯とすることで、第1フィルタ部19の入力部26と第2フィルタ部20の入力部27とアンテナ17の出力側18とをスイッチを介さずに接続しても、第2フィルタ部20の第2周波数帯におけるフィルタ特性の劣化を抑制することができる。
【0019】
さらに、第2フィルタ部20が表面弾性波フィルタである場合、第2フィルタ部20の第1周波数帯において、高い減衰量が得られる。すなわち、第2フィルタ20の第1周波数帯における反射係数は十分大きいので、第2フィルタ部20の入力部27にリアクタンス素子37をシャントに接地接続することにより、第2フィルタ部20の第1周波数帯におけるインピーダンスを十分大きくすることができる。その結果、第1フィルタ部19の入力部26と第2フィルタ部20の入力部27とアンテナ17の出力側18とをスイッチを介さずに接続しても、第1フィルタ部の第1周波数帯におけるフィルタ特性の劣化を抑制することができる。
【0020】
上記構成により、受信信号の損失原因となるスイッチを介さずに、高周波IC25は第1周波数帯の信号を第1フィルタ部19から受信し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を第2フィルタ部20から受信する。その結果、高周波フロントエンド部16の受信性能を向上させることができる。また、スイッチが配置されないので、受信装置16の面積を小型にすることができる。
【0021】
なお、本実施の形態の図1においては第1フィルタ部19および第2フィルタ部20を個別のフィルタとして記載しているが、第1フィルタ部19と第2フィルタ部20は一体のフィルタでも良い。これにより、高周波フロントエンド部16の面積を小型にすることができる。
【0022】
また、上記構成において、第1フィルタ部19の第2周波数帯における入力インピーダンスが、誘導性である場合は、第2フィルタ部20の第2周波数帯における入力インピーダンスを容量性として、第1フィルタ部19の入力部26と第2フィルタ部20の入力部27を接続しても良い。すなわち、第1フィルタ部の第2周波数帯における入力インピーダンスが誘導性であるため、アンテナ17と第2フィルタ部20との間に、一方が接地接続されたインダクタの他方を接続したことと等価になる。これにより、第2フィルタ部20の第2周波数帯における容量性リアクタンス成分が小さくなった結果、整合がとれて挿入損失を低減することができる。また、第1フィルタ部19の第2周波数帯における入力インピーダンスが、容量性である場合は、第2フィルタ部20の第2周波数帯における入力インピーダンスを誘導性として、第1フィルタ部19の入力部26と第2フィルタ部20の入力部27を接続しても良い。これにより、第2フィルタ部20の第2周波数帯における誘導性リアクタンス成分が小さくなり、挿入損失を低減することができる。なお、第1周波数帯における、第1フィルタ部19のインピーダンスと第2フィルタ部20のインピーダンスについても、同様である。
【0023】
なお、第2周波数帯の信号が第1フィルタ部19へ流入する量は、特に高周波帯域において第1フィルタ部19の第2周波数帯における抵抗成分よりもリアクタンス成分に支配される。よって、第1フィルタ部19の第2周波数帯におけるリアクタンス成分の絶対値を高く設定することが望ましい。特に、第1フィルタ部19の第2周波数帯におけるリアクタンス成分の絶対値を、特性インピーダンス(例えば、50オーム)に2を乗じた数値よりも高く設定することにより、第2フィルタ部20の第2周波数帯における損失を1dB以下に抑えることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の弾性表面波フィルタは、ラダー型表面弾性波フィルタである第1フィルタ部の入力部及び第2フィルタ部の入力部とアンテナとの出力側とがスイッチを介さずに接続されているため、高周波フロントエンド部の受信性能を向上させることができ、自動車に搭載されるテレビや携帯端末などの電子機器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波フロントエンド部のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における第1フィルタ部の回路図
【図3】本発明の実施の形態1における第1フィルタ部の等価回路図
【図4】従来の高周波フロントエンド部のブロック図
【図5】従来の弾性表面波フィルタの回路図
【符号の説明】
【0026】
16 高周波フロントエンド部
17 アンテナ
19 第1フィルタ部
20 第2フィルタ部
25 高周波IC
28 第1共振子
29 第2共振子
30 第3共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数帯の信号を通過させる第1フィルタ部と、この第1フィルタ部に対し並列に接続されると共に前記第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯の信号を通過させる第2フィルタ部を備え、前記第1フィルタ部は、入力部と、この入力部に接続された第1共振子と、この第1共振子に接続された第2共振子と、前記第1共振子と前記第2共振子との間にシャントに接地接続された第3共振子とを有する弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記第1フィルタ部の前記第1周波数帯における入力インピーダンスが容量性である場合、前記第2フィルタ部の前記第1周波数帯における入力インピーダンスが誘導性である請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記第1フィルタ部の前記第1周波数帯における入力インピーダンスが誘導性である場合、前記第2フィルタ部の前記第1周波数帯における入力インピーダンスが容量性である請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
前記第2フィルタ部の前記第2周波数帯における入力インピーダンスが容量性である場合、前記第1フィルタ部の前記第2周波数帯における入力インピーダンスが誘導性である請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
前記第2フィルタ部の前記第2周波数帯における入力インピーダンスが誘導性である場合、前記第1フィルタ部の前記第2周波数帯における入力インピーダンスが容量性である請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
前記第1フィルタ部と前記第2フィルタ部とは同一の筺体内に形成された請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項7】
前記第1フィルタ部の前記第2周波数帯における入力インピーダンスの虚数部の絶対値は、特性インピーダンスに2を乗じた値以上である請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項8】
アンテナと、このアンテナの出力側に接続されると共に第1周波数帯の信号を通過させる第1フィルタ部と、前記アンテナの出力側に前記第1フィルタ部に対し並列に接続されると共に前記第1周波数帯の高域側に隣接する第2周波数帯の信号を通過させる第2フィルタ部と、前記第1フィルタ部及び前記第2フィルタ部の出力側に接続された高周波ICとを備え、前記第1フィルタ部は、入力部と、この入力部に接続された第1共振子と、この第1共振子に接続された第2共振子と、前記第1共振子と前記第2共振子との間にシャントに接地接続された第3共振子とを有する電子機器。
【請求項9】
前記アンテナの出力側と前記第2フィルタ部の入力部との間にシャントに接地接続されたリアクタンス素子を有する請求項8に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−194897(P2007−194897A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10911(P2006−10911)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】