説明

弾性表面波素子の製造方法、弾性表面波素子

【課題】小型、薄型の実現と、パッケージングが容易で、しかも、高信頼性を有する弾性表面波素子の製造方法を提供する。
【解決手段】弾性表面波素子10の製造方法は、半導体基板20の表面に櫛歯形状のIDT電極60が形成される弾性表面波素子10の製造方法であって、半導体基板20の能動面側表面に絶縁層21〜23を形成する工程と、絶縁層23の表面全体に基台層30を形成する工程と、基台層30の表面を平坦化処理する工程と、平坦化処理された基台層30の表面に圧電体51を形成する工程と、圧電体51の表面にIDT電極60を形成する工程と、基台層30の表面周縁部に、基台層30の表面からIDT電極60の表面までの高さよりも高く、圧電体51及びIDT電極60を取り囲むバンク41を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子の製造方法、及びこの製造方法によって製造される弾性表面波素子に関し、詳しくは、半導体基板の表面周縁部にバンクを形成して中央部に凹部を設け、この凹部の内部にIDT電極を形成する弾性表面波素子の製造方法と、弾性表面波素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、携帯電話に代表される携帯型の電子機器が普及してきており、しかも、高機能化と小型化が要求されている。従って、携帯型の電子機器に用いられる電子デバイスも当然ながら小型化が要求される。
このような電子デバイスの小型化技術としては、従来、半導体素子チップを備える機能デバイスユニットにおいて、表面に凹部が形成された絶縁性の基板と、この基板がシリコン(Si基板)であり、その凹部の底面、側面及び上面に絶縁膜が形成され、この絶縁膜によって形成された溝内に、前記凹部の底面から側面を経て上面まで連続するようにパターン形成された配線層を形成し、基板の凹部内において、半導体素子チップが、前記配線層との間でフリップチップ実装され、上述の凹部を樹脂封止してなる機能デバイスユニット、及び機能デバイスユニットの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、セラミックからなるモジュール基板に設けられた凹部内に弾性表面波素子(チップ状態)を配置し、周辺回路が実装されたサブ基板を弾性表面波素子に電気的に接続するとともに、サブ基板にて弾性表面波素子を凹部内に封止する弾性表面波素子モジュールの製造方法というものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−33410号公報(第5,6頁、図2)
【特許文献2】特開平5−152881号公報(第3,4頁、図2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1では、半導体素子チップを絶縁性を有する基板の凹部内にフリップチップ実装し、その後、樹脂封止することにより機能デバイスユニットを形成しているが、たとえ、基板の凹部内に半導体素子チップを収納する構造であっても、半導体素子チップに対して基板の底部の厚さ及び、封止樹脂層の厚さ分だけ厚くなってしまう他、この基板の分だけ大きくなってしまう。この半導体素子チップを、後述する本発明の弾性表面波素子に置き換えて考えることができるが、上述したような理由から薄型、小型の弾性表面波素子の実現は困難である。
【0006】
また、電子機器等に、この半導体素子チップを機能デバイスユニットに搭載する場合には、さらに外部回路との接続をしなければならず、基板にフリップチップ実装した後、再度、外部回路との接続工程を行うことになり、少なくとも2度の実装工程が必要となる。従って、製造工程が長くなると共に、半導体素子チップを実装する基板を有することからコスト低減は困難である。
【0007】
また、前述した特許文献2によれば、モジュール基板に設けられた凹部内に弾性表面波素子(チップ状態)を配置し、サブ基板にて弾性表面波素子を凹部内に封止しているため、弾性表面波素子の表面を汚染等から保護することができるが、モジュール基板、弾性表面波素子、サブ基板がそれぞれ単体で構成された状態で実装して弾性表面波素子モジュールを構成するため、薄型化には限界があり、また実装工程等、製造工程が多くなるという課題を有している。
【0008】
さらに、弾性表面波素子のIDT電極形成領域は、所定の共振特性を得るためには平坦性、平滑性が重要な要素であることが知られており、前述した特許文献2のように、モジュール基板の凹部底部に設けられる配線パターン表面の平坦性、平滑性を得ることは困難であることが推測され、高精度な共振周波数等の特性を実現することは難しいと考えられる。
【0009】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、小型、薄型化の実現と、パッケージングが容易で、しかも、高信頼性を有する弾性表面波素子と、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の弾性表面波素子の製造方法は、半導体基板の表面に櫛歯形状のIDT電極が形成される弾性表面波素子の製造方法であって、前記半導体基板の能動面側表面に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の表面全体に基台層を形成する工程と、前記基台層の表面を平坦化処理する工程と、平坦化処理された前記基台層の表面に圧電体を形成する工程と、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、前記基台層の表面周縁部に、前記基台層の表面から前記IDT電極の表面までの高さよりも高く、且つ、前記圧電体を取り囲むバンクを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、半導体基板は、例えばSiを基材として発振回路等の回路素子を含み、弾性表面波素子は、この半導体基板上に圧電体とIDT電極を形成することにより構成される。本発明による弾性表面波素子は、圧電体及びIDT電極をバンクによって取り囲まれた凹部内に形成しているため、IDT電極表面が、バンク表面よりも突出することがなく、その後のパッケージングにおいて、治具等がIDT電極に接触してIDT電極を損傷する機会を減じ、信頼性の高い弾性表面波素子を提供することができる。
また、外形形状が半導体基板の範囲内にあり、突出するものがなく小型化が実現できる。
【0012】
上述した製造方法は、ウエハの状態で、半導体製造プロセスで一貫して製造することができ、また、前述した特許文献2のように、チップ化された弾性表面波素子、サブ基板、モジュール基板を実装する工程が不要で、製造工程の短縮化と製造コストの低減を可能にする。
【0013】
さらに、圧電体が形成される基台層を、突出部のない絶縁層の表面全体にわたって形成した後、基台層表面を平坦化処理しているため、弾性表面波素子領域の優れた平坦性、平滑性が得られることにより、高精度な共振特性を実現することができる。
なお、平坦化処理としては、例えば、CMP(Chemical and Mechanical Polishing)等の手段を採用することが好適である。
【0014】
また、前記基台層を形成する工程が、一層の絶縁層を形成する工程であることが好ましい。基台層を形成する絶縁層としては、例えば窒化シリコン(SiN)が用いられる。
【0015】
基台層は、半導体基板の能動面側表面に設けられる絶縁層の表面に形成される。この絶縁層を仮に酸化シリコン(SiO2)とすれば、SiNは、通常の半導体製造プロセスによって容易に形成することができる。また、SiNは、CMPによる平坦化処理が一般的に実施しやすい材料とされている。
【0016】
また、前記基台層を形成する工程が、Al層と前記絶縁層とを積層して形成する工程と、少なくとも前記Al層の表面を平坦化処理する工程と、を含むことが望ましい。
【0017】
ここで、基台層を形成するAl層とSiN層は、半導体基板表面上の絶縁層(SiO2)の最上層表面から順に、Al層、SiN層、またはSiN層、Al層の2層構成、あるいはSiN層、Al層さらにSiN層という3層構成とすることができる。Al層は、半導体製造プロセスにおいて平坦化及び平滑化処理をするためのメタルストッパーとして用いられることが多く、平坦化処理によって優れた平坦性及び平滑性を有する。弾性表面波素子形成領域が優れた平坦性、平滑性を得られることにより、より一層、高精度な共振特性を実現することができる。
なお、Al層の他、SiN層も平坦化処理を行うことがより好ましい。
【0018】
また、前記バンクを形成する工程には、前記基台層の表面に前記バンクと同じ高さのバンク層を形成する工程と、前記圧電体を配設する領域において、前記基台層の表面に至るまでエッチングにより前記バンク層を除去して凹部を形成する工程と、を含み、前記凹部の底部に前記圧電体を形成する工程と、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、を含むことが好ましい。
なお、凹部の周縁部がバンクである。
【0019】
このようにすれば、凹部の底部には、平坦化処理された基台層表面が露出しているので、圧電体自体の平坦性を得ることができ、高精度な共振特性を実現することができる。
このバンク形成も、半導体基板がウエハの状態において、半導体製造プロセスによって精度よく容易に形成することが可能である。
【0020】
また、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程の後に、前記バンクを形成する工程を有し、前記バンクを形成する工程が、前記基台層の表面周縁部の前記バンクの形成領域範囲に、SiO2の前駆体化合物を含有する液状体を前記バンクの所定形状に液滴吐出法を用いて形成する工程と、前記液状体を加熱処理により固化する工程とを含むことが好ましい。
【0021】
バンクの形成を液滴吐出法を用いて行うことにより、任意の形状のバンクを形成することが可能となり、詳しくは後述する実施の形態で説明するが、バンクの一部にビアホールを形成するためのスルーホールを同じ工程内で形成することができ、製造工程の短縮化がはかれる。
【0022】
また、平坦化処理された基台層の同一平面上に圧電体及びIDT電極を形成するため、前述したような予め形成された凹部内に形成する方法よりも、周辺に突出部がないので、圧電体及びIDT電極を容易に形成することができる。
【0023】
また、前記バンクを形成する工程が、前記基台層の表面周縁部の前記バンクの形成領域範囲に、SiO2の前駆体化合物を含有する液状体を液滴吐出法を用いて前記バンクの所定の形状に形成する工程と、前記液状体を加熱処理により固化する工程とを含むバンクを形成する工程であって、前記バンクを形成する工程の後に、前記バンクによって形成される凹部内の平坦化処理された前記基台層の表面に圧電体を形成する工程と、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0024】
液滴吐出法を用いてバンクを形成する工程の後工程は、前述したエッチングにより凹部を形成、つまりバンクを形成する方法の後工程と同じ方法を採用できる。
このような方法によれば、バンク形成時に、基台層の表面にエッチング液等が接触することがないので、基台層の表面は平坦化処理をした状態を保持しているため、圧電体との接合の信頼性を高めることができる。
【0025】
さらに、前記バンクがSiO2からなり、SiO2の前駆体化合物が、Siを含んだ有機金属化合物Si(OR)4(R=CH3,C2H5,C3H7,C4H9)を含む液状体であり、前記液状体を加熱処理により固化することにより前記バンクを形成することが好ましい。
【0026】
SiO2の前駆体化合物を上述した構成とすることにより、液滴吐出法により、自在に所望のバンク形状、高さに形成することができ、その後、加熱処理により固化することでSiO2からなる所望形状のバンクを容易に形成することができる。
【0027】
さらに、前記加熱処理の温度が、350℃〜400℃の範囲であることが望ましい。
【0028】
このような温度範囲にすることで、液状体の固化を確実に行うことができる他、半導体基板内の回路素子や配線への熱的影響を排除することができる。
【0029】
また、本発明の弾性表面波素子は、半導体基板の表面に櫛歯形状のIDT電極が形成される弾性表面波素子であって、前記半導体基板の能動面側表面に形成される絶縁層と、前記絶縁層の表面全体に形成され平坦化処理が施された基台層と、平坦化処理が施された前記基台層の表面に形成される圧電体と、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、前記基台層の表面周縁部に、前記基台層の表面から前記IDT電極の表面までの高さよりも高く、前記圧電体を取り囲んで形成されるバンクと、を備えることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、圧電体及びIDT電極がバンクによって取り囲まれた凹部内に形成されているため、IDT電極表面が、バンク表面よりも突出することがなく、その後の回路実装等の工程等において治具等が、またはパッケージングの際に蓋体がIDT電極に接触してIDT電極を損傷する機会を減じ、信頼性の高い弾性表面波素子を提供することができる。
また、厚み及び外形形状も半導体基板の範囲内にあり、突出するものがなく小型化も実現できる。
【0031】
さらに、圧電体が形成される基台層を、突出部のない絶縁層の表面全体にわたって形成し、基台層の表面を平坦化処理しているため、弾性表面波素子形成領域が優れた平坦性、平滑性が得られることにより、高精度な共振特性を実現することができる。
【0032】
さらに、前記バンクによって形成される凹部内を密閉封止する封止部材が、前記バンクの上面にさらに備えられ、パッケージングされていることが好ましい。
【0033】
バンクによって形成される凹部を封止部材にて密閉封止することで、IDT電極を外部からの水分や塵埃から保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る弾性表面波素子の構造を示し、図2,3は本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子の製造方法、図4,5は実施形態2とその変形例、図6は、実施形態3、図7は実施形態4に係る弾性表面波素子の製造方法を示している。
(弾性表面波素子の構造)
【0035】
図1は、本発明に係る弾性表面波素子の概略構造を模式的に表し、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A切断面を示す断面図である。図1(a)は、蓋体90を透視した状態を表している。図1(a)、(b)において、本発明の弾性表面波素子10は、シリコン(Si)を基材とする半導体基板20の能動面側表面に形成される酸化シリコン(SiO2)からなる絶縁層21〜23と、最上層の絶縁層23の表面全体にわたって形成される基台層30と、この基台層30の表面に形成される酸化亜鉛(ZnO)に代表される圧電材料からなる圧電体51と、圧電体51の上面に形成される櫛歯形状のAlからなるIDT電極(Interdigital Transducer)60と、から構成されている。
【0036】
半導体基板20には、発振回路等の回路素子(図示せず)を含んでいる。絶縁層21〜23のそれぞれの間には層間電極(図示せず)が形成され、各層間電極にはパッド81〜86が形成されており、上下の層間電極がビアホール(コンタクトホール)にて電気的に接続されている。また、これら層間電極は、半導体基板20内の回路素子等を接続する接続電極でもある。これら絶縁層21〜23の各層の表面はCMP法(Chemical and Mechanical Polishing)等の平坦化処理によって、平坦化及び平滑化されている。
なお、半導体基板20の表面には、パッシベーション膜が形成されていることが好ましい。また、図1(b)では、絶縁層は3層構成を例示しているが、特に限定されず、1層でも、もっと多くてもよい。
【0037】
絶縁層23の表面には、SiNからなる基台層30が形成されている。この基台層30の表面はCMP法により平坦化処理が施されている。また、基台層30の表面には、圧電体51が形成され、さらにその表面には櫛歯状のIDT電極60が形成されている。
【0038】
絶縁層23の表面外周部には、圧電体51、IDT電極60を取り囲むバンク41が形成されている。バンク41は、基台層30の表面からIDT電極60の表面までの高さよりも高く形成されている。
【0039】
バンク41の上面には、封止部材としての蓋体90が固着され、バンク41によって形成されている凹部42内の空間を密閉封止している。蓋体90の材質は、特に限定されないが、金属、ガラス、セラミック等を採用することができ、金属材料の場合にはシールド効果を有する。
【0040】
蓋体90の外側のバンク41の表面にはパッド87が設けられており、図1(a)では、6個のパッド87a〜87fが図示されている。ここで、パッド87a〜87fは、少なくとも発振回路駆動のための電力供給電極パッド、IDT電極60に接続されるGND、入力/出力信号電極パッド等を含む。
なお、以降、パッド87a〜87fは、総称してパッド87と表す。
【0041】
IDT電極60はAlからなり、圧電体51の表面に櫛歯状のGND電極61と入力電極(出力電極共通)62が相互に交錯して形成され、バスバーの一端が、それぞれ圧電体51の端部まで延在される接続電極61a,62aとなり、ビアホール71a,71bまで延在されて、パッド86に接続している。なお、ビアホール71a,71bは、総称してビアホール71と表すことがある。
【0042】
パッド87もそれぞれ絶縁層の層間に設けられているパッド83にビアホール72を介して接続される。なお、パッド83,86は、図1(b)では、1個ずつ図示しているが、パッド83は上述した少なくとも発振回路駆動のための電力供給電極、パッド86はGND、入力/出力信号電極に対応して設けられている。パッド81,82,84,85も同様にパッド83,86に対応して設けられる。
【0043】
ここで、半導体基板20、絶縁層21〜23までの形成範囲は、従来の半導体製造プロセス領域であり、基台層30から圧電体51、IDT電極60、バンク41の範囲が、本発明による弾性表面波素子の製造プロセス領域として説明する。
【0044】
従って、上述した本発明による弾性表面波素子10は、圧電体51及びIDT電極60がバンク41によって取り囲まれた凹部42内に形成されているため、IDT電極60の表面が、バンク41の表面よりも突出することがなく、その後のパッケージング等の工程において、治具等または蓋体90の裏面がIDT電極に接触してIDT電極を損傷する機会を減じ、パッケージングが容易となり、また、信頼性の高い弾性表面波素子を提供することができる。
また、外形形状が半導体基板20の範囲内にあり、突出するものがなく小型化が実現できる。
【0045】
さらに、圧電体51が形成される基台層30を、突出部のない絶縁層23の表面全体にわたって形成し、基台層30の表面を平坦化処理しているため、弾性表面波素子の形成領域が優れた平坦性及び平滑性が得られることにより、安定した共振特性を実現することができる。
【0046】
さらに、バンク41によって形成される凹部42を蓋体90にて密閉封止することで、IDT電極60を外部の水分や塵埃から保護することができ、信頼性が高い弾性表面波素子10を提供することができる。
(実施形態1)
【0047】
続いて、本発明の弾性表面波素子の製造方法について図面を参照して説明する。
図2、図3は、本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子10の製造工程を模式的に表した部分断面図であり、上述した従来の半導体製造プロセス領域の工程の説明及び図示を省略し、本発明による弾性表面波素子10の製造プロセス領域の主な工程を図示し説明する。
まず、半導体基板20の上面に絶縁層21〜23及びパッド81〜86を従来の半導体製造プロセス領域における製造工程を用いて形成し、図2(a)に示すように、絶縁層23の表面をCMP法により平坦化処理した後、絶縁層23の表面全体にわたって基台層30を形成する。
【0048】
基台層30の表面をCMP法により平坦化処理を施した後、基台層30の表面の全体にわたってSiO2からなるバンク層40を形成する(図2(b))。バンク層40の高さ(厚さ)は、IDT電極60(図1(b)、参照)の表面より高く、本実施形態では、4μm程度である。
次に、エッチングによりバンク41を形成する。
【0049】
図2(c)は、バンク形成工程を示す。まず、バンク層40の表面にレジスト層101を形成する。そしてレジスト層101を露光、現像工程によりバンク41を形成するための凹部42に対応する開口部101aとパッド87と接続するビアホール72(図1(b)、参照)に対応する開口部101bとを有するレジストパターンを形成し、ウエットエッチングまたはドライエッチングにより凹部42及び、ビアホール72形成のためのスルーホール43とを形成する。凹部42の周縁部がバンク41である。
その後、レジスト層101を剥離、洗浄し、再度レジスト層102を形成する。
【0050】
図2(d)に、レジスト層102形成工程を示す。レジスト層102は、バンク41の表面及び凹部42、スルーホール43の内部にまで形成する。続いて基台層30にスルーホール44,45を開設する。
【0051】
図2(e)に、スルーホール44,45を開設する工程を示す。まず、レジスト層102を露光、現像工程によりスルーホール44,45それぞれに対応する開口部102a,102bが開口されたレジストパターンを形成した後、エッチングにより、基台層30にスルーホール44,45を開設する。そして、絶縁層23にスルーホール46,47を開設する工程に移行する。
【0052】
図2(f)に示すようにレジスト層(ここでは、レジストパターンを示す)102の上面に、さらにレジスト層103を形成する。レジスト層103は、レジスト層102の上面、スルーホール44,45の内部にまで侵入する。そして、図3(g)に示すように、露光、現像工程により開口部103a,103bを有するレジストパターンを形成し、エッチングにより絶縁層23にパッド83,86の表面に連通するスルーホール46,47を開設、洗浄する。
【0053】
なお、上述した各スルーホール43、スルーホール44,45、スルーホール46,47とは、それぞれSiO2、SiN、SiO2というように異なる材料が交互に積層されており、それぞれの材質に対応するエッチャントが異なるため、別々の工程を要する。
次に、圧電体層50を形成する。
【0054】
図3(h)は、圧電体層50の形成工程を示す。圧電体層50は、バンク41の表面及び凹部42の底部42aの表面全体にわたって形成する。先の工程で開設された各スルーホール43〜47内にも圧電材料が浸入する。
続いて、圧電体51を形成する。
【0055】
図3(i)、(j)に圧電体形成工程を示す。まず、圧電体層50の表面にレジスト層104を形成し、露光、現像工程により、圧電体51の形状に合わせて周囲のレジスト層を除去したレジストパターンを形成する(図3(i)、参照)。
【0056】
図3(j)に示すように、圧電体51をエッチングにより所望の形状に形成する。この際、上述した各スルーホールの内部に侵入していた圧電材料も除去される。このように形成された圧電体51の表面にIDT電極60と各ビアホール(ビアホール71,72を例示)を形成する。
【0057】
図3(k)にIDT電極60の形成工程を示す。圧電体51の表面に図1(a)に示すGND電極61と入力電極(出力電極共通)62が相互に交錯して構成されるIDT電極60を形成する。IDT電極60は、蒸着またはCVD法等の手段で形成する。バスバーの一端は、それぞれ圧電体51の端部まで延在される接続電極61a,62aとなり、ビアホール71(71a,71b)まで延在されてパッド86に接続する。また、もう一方のビアホール72とパッド87及びパッド83とも接続する。
【0058】
そして、図1(b)に示すように、封止部材としての蓋体90をバンク41の上面に固着しパッケージングする。バンク41の表面はIDT電極60の表面よりも高い位置にあるため、蓋体90の下面がIDT電極60と接触することはない。
上述したような工程を経て、弾性表面波素子10が形成される。
【0059】
従って、前述した実施形態1によれば、圧電体51及びIDT電極60をバンク41によって取り囲まれた凹部42内に形成しているため、IDT電極60の表面が、バンク41の表面よりも突出することがなく、その後の回路実装等の工程において、治具等がIDT電極60に接触して損傷する機会を減じ、信頼性の高い弾性表面波素子10を提供することができる。
また、外形形状も半導体基板20の範囲内にあり、突出するものがなく小型化も実現できる。
【0060】
また、このような製造方法では、ウエハの状態にて、半導体製造プロセスで一貫して製造することができ、また、前述した特許文献2のように、チップ化された弾性表面波素子、サブ基板、モジュール基板を実装する工程が不要で、製造工程の短縮化と製造コストの低減を可能にする。
【0061】
さらに、基台層30を、突出部のない絶縁層23の表面全体にわたって形成した後、基台層30の表面を平坦化処理しているため、弾性表面波素子の形成領域が優れた平坦性、平滑性が得られることにより、高精度な共振特性を実現することができる。
【0062】
さらに、基台層30は、半導体基板20の能動面側表面に設けられる絶縁層23の表面に形成される。この絶縁層23は酸化シリコン(SiO2)であるため、SiNは、通常の半導体製造プロセスによって容易に形成することができるという効果もある。また、SiNは、CMPによる平坦化処理が一般的に実施しやすい材料とされている。
(実施形態2)
【0063】
続いて、本発明の実施形態2に係る弾性表面波素子の製造方法について図面を参照して説明する。実施形態2は、前述した実施形態1による製造方法を基本としながら、基台層30の構成を変えたところに特徴を有し、相違部分のみ図示し説明する。
図4は、実施形態2に係る製造方法の一部を模式的に示す部分断面図である。実施形態2では、基台層30がAl層35とSiN層36とから構成されている。
【0064】
絶縁層23の表面にまずAl層35を形成し、CMP法により平坦化処理をした後、SiN層36を形成する。このSiN層36表面に平坦化処理をすればなおよい。基台層30の形成工程以降の工程は、前述した実施形態1(図2(b)〜図3(k)、参照)と同じ工程を経て、弾性表面波素子10を形成する。
【0065】
なお、基台層としてAl層35を採用する際には、Al層35が導電体であるので、ビアホール71,72とは、GND以外は接続させないため、単にスルーホール構成とする。
【0066】
また、図5に実施形態2の変形例を示す。この変形例は、基台層30の構成を、絶縁層23側からSiN層36、Al層35としている。Al層35の表面にはさらにSiN層37を形成した3層構造としているところに特徴を有している。ここで、Al層35の表面は平坦化処理を行う。SiN層37は、必ずしもなくてもよいが、圧電体51を形成する際の保護層として形成する。
【0067】
従って、上述した実施形態2、及びその変形例によれば、Al層は、半導体製造プロセスにおいて平坦化及び平滑化処理をするためのメタルストッパーとして用いられることが多く、平坦化処理によって優れた平坦性及び平滑性を有し、弾性表面波素子の形成領域が優れた平坦性、平滑性が得られることにより、より一層、高精度な共振特性を実現することができる。
(実施形態3)
【0068】
続いて、本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子10の製造方法について図面を参照して説明する。実施形態3は、前述した実施形態1による製造方法(図2,3、参照)が、バンク層40を形成した後、エッチングにより凹部42を穿設しバンク41を形成していることに対し、液滴吐出法にてバンク41を積み上げて形成するところに特徴を有している。なお、弾性表面波素子10の完成した形態は、実施形態1(図1、参照)と大略同じとなるため説明を省略し、同じ機能要素には同じ符号を付して説明する。
【0069】
図6は、実施形態3に係る弾性表面波素子10の製造方法の主な製造工程を模式的に示す部分断面図である。半導体基板20の上面に絶縁層21〜23及びパッド81〜86を従来の半導体製造プロセス領域の工程を用いて形成し、図2(a)に示すように、絶縁層23の表面をCMP法により平坦化処理した後、絶縁層23の表面全体にわたってSiNからなる基台層30を形成する。
そして、基台層30の表面をCMP法により平坦化処理した後、パッド83,86の表面に連通するスルーホール44〜47を開設する。
【0070】
図6(a)は、基台層30及び絶縁層23のそれぞれにスルーホール44,45とスルーホール46,47を開設した状態を示している。まず、基台層30の表面にレジスト層101を形成し、露光、現像工程によりスルーホール44,45に対応する開口部101a,101bを有するレジストパターンを形成した後、エッチングによりスルーホール44,45を開設する。続いて、図示しないが、レジスト層101(レジストパターンを示す)の表面に、もう一層のレジスト層を形成し、スルーホール46,47に対応する開口部を有するレジストパターンを形成し、エッチングによりスルーホール46,47を開設する。
スルーホール44〜47が開設された状態を図6(b)に示す。なお、スルーホール44〜47の開設方法は、前述した実施形態1において図2(e)〜図3(g)に示す工程に準じている。
【0071】
スルーホール44〜46を開設した後、圧電体層50を形成する。
図6(c)に、圧電体層50の形成工程を示す。圧電体層50は、基台層30の表面全体に所定の厚さで形成される。この際、圧電体層50の一部が、スルーホール44〜47の内部にまで侵入している。
次に圧電体51を所定の形状に形成する。
【0072】
図6(d)、図6(e)は、圧電体51の形成工程を示している。まず、図6(d)に示すように、圧電体層50の表面全体にレジスト層104を形成し、露光、現像工程により、圧電体51に対応するレジストパターンを形成し、エッチングによりレジストパターン外のレジストを除去する。続いて、エッチングにより圧電体51の所定形状を形成する。
【0073】
図6(e)は、圧電体51が形成された状態を示している。図6(e)に示すように、基台層30の表面には圧電体51が形成され、スルーホール44〜47が開設されている。
続いて、IDT電極60を形成する。
【0074】
図6(f)にIDT電極60の形成工程を示す。圧電体51の表面に図1(a)に示すGND電極61と入力電極(出力電極共通)62が相互に交錯して構成されるIDT電極60を形成する。IDT電極60は、蒸着またはCVD法等の手段で形成する。バスバーの一端は、それぞれ圧電体51の端部まで延在される接続電極61a,62aとなり、ビアホール71(71a,71b)まで延在されてパッド86に接続する。
続いて、バンク41を形成する。
【0075】
図6(g)にバンク41の形成工程を示す。バンク41は、圧電体51とIDT電極60を含む領域の外側を取り囲むように、液体吐出法にてSiO2を積み上げて所定の形状に形成し、加熱処理により固化して形成する。この際、バンク41には、パッド83に連通するスルーホール43も形成される。
【0076】
バンク41の形成方法について、さらに詳しく説明する。本実施形態におけるバンク41の形成は、液体吐出法を用いて行われる。液滴吐出法とは、液状体からなる液滴を所望のパターンに吐出することにより、基体上に所望のパターンを形成する方法であり、インクジェット法などの総称であり、液滴吐出装置を用いて行われる。
【0077】
なお、液滴吐出装置としては、液滴吐出ヘッドに圧電素子(ピエゾ素子)を用いた電気機械変換体や、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザーなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
(バンク41の形成方法)
【0078】
まず、上述した液滴吐出法(インクジェット法)により、SiO2の前駆体材料を含む液状体をバンク形成箇所に配設する。液状体中に含有されるSiO2前駆体材料としては、SiのアルコキシドSi(OR)4(R=CH3,C2H5,C3H7,C4H9)が挙げられるが、その他類似のものでもよい。
【0079】
SiO2前駆体材料を含む液状体を分散させるための溶媒または分散媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgを越えると、吐出により塗布膜を形成した際に分散媒が先に蒸発してしまい、良好な塗布膜が形成し難くなるからである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHg未満であると、乾燥速度が遅くなって塗布膜中に分散媒が残留しやすくなり、後工程の熱光処理後に良質の塗布膜が得られ難くなるからである。また、特に前記分散媒の蒸気圧が、50mmHg以下であれば、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり難くなり、安定な吐出が可能となるためより好ましい。
【0080】
使用する溶媒としては、前記の液状体の凝集を生じさせることなく良好に分散させることができるものであれば、特に限定されることはない。具体的には、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系溶媒、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性溶媒を挙げることができる。これらのうち、金属微粒子の分散性と分散液の安定性、またインクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、更に好ましい溶媒としては水、炭化水素系分散媒を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用可能である。
【0081】
前述したSiO2前駆体材料を分散媒に分散させて液状体を形成する際の、液状体中の前駆体化合物の濃度としては、1重量%以上80重量%以下とするのが好ましく、特に、この範囲において、形成するSiO2バンクの膜厚に応じて調整するのが望ましい。80重量%を越えると、塗布膜のひび割れが起こりやすくなるからであり、また、1重量%未満では分散媒を蒸発させるための乾燥に長時間を要することとなり、生産性が低下するからである。
【0082】
尚、このSiO2前駆体材料を含んだ液状体にあっては、目的の機能を損なわない範囲で、必要に応じてフッ素系、シリコン系、ノニオン系などの表面張力調節材を微量添加してもよい。
ノニオン系表面張力調節材は、分散液の塗布対象物への濡れ性を良好にし、塗布した膜のレベリング性を改良し、塗膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つものとなる。このノニオン系表面張力調節材を添加して調製した金属微粒子分散液については、その粘度を1mPa・s以上50mPa・s以下にするのが好ましい。粘度が1mPa・s未満であると、液滴吐出ヘッドのノズル周辺部が液状体の流出により汚れ易くなってしまい、また、粘度が50mPa・sを越えると、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなってしまうからである。
【0083】
さらに、このようにして調製したSiO2バンク前駆体化合物を含有する液状体としては、その表面張力が20dyn/cm以上70dyn/cm以下の範囲に入ることが望ましい。表面張力が20dyn/cm未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70dyn/cmを越えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため、インク組成物の吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるからである。
【0084】
このような液状体を液滴吐出ヘッドによって所望位置に均一な厚さとなるように配設する。この配設された液状体に加熱処理を施す。次いで、所定温度で所定時間乾燥し、液状体中の液分を除去する。さらに、この乾燥後、大気雰囲気下において所定の高温(例えば300℃)で所定時間(例えば30分間)脱脂し、これによってSiに配位している有機成分を熱分解し、(−O−Si−O)n重合体にする。そして、このような塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数繰り返し、重合体を所望の厚さにする。
その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)炉で酸素フローしながら所定温度、好ましくは350℃〜400℃、さらに好ましくは400℃で熱処理を行い、前記重合体を焼成して図6(g)に示すようにSiO2バンクを厚さ4μm程度に形成する。
【0085】
加熱処理の条件は、特に限定されることなく一般的な条件が採用可能である。例えば、熱処理雰囲気としては、大気中で行なってもよく、また、必要に応じて窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理温度としては、分散媒の沸点(蒸気圧)、圧力および金属微粒子の熱的挙動を考慮して適宜に決定されるが、特に400℃以下とするのが好ましい。400℃以下とすることにより、半導体基板20内の回路素子やAl配線への熱的影響を減ずることができる。
【0086】
熱処理における加熱方法としては、通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他に、ランプアニールによっても行うこともできる。
また、ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないものの、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0087】
このようにしてバンク41を形成した後、図6(h)に示すように、バンク41の表面からパッド87に接続するビアホール72、及びパッド87を形成し、図1(b)に示すように蓋体90を固着し、パッケージングして弾性表面波素子10が形成される。
【0088】
従って、前述した実施形態3によれば、バンク41の形成を液滴吐出法を用いて行うことにより、任意の形状のバンク41を形成することが可能となり、バンク41の一部にビアホール72を形成するためのスルーホール43を同じ工程内で形成することができ、製造工程の短縮化がはかれる。
【0089】
また、圧電体51及びIDT電極60は、平坦化処理された基台層30の突出部がない同一平面上に形成するため、前述した実施形態1のように予め形成された凹部内に形成する方法よりも、圧電体51及びIDT電極60を容易に形成することができる。
【0090】
さらに、SiO2の前駆体化合物が、Siを含んだ有機金属化合物Si(OR)4(R=CH3,C2H5,C3H7,C4H9)を含む液状体であり、前述した液滴吐出法により、所望のバンク形状、高さに容易に形成することができ、その後、加熱処理により固化するでSiO2からなる所望形状のバンクを容易に形成することができる。
【0091】
さらに、加熱処理の温度が、350℃〜400℃の範囲にしているので、液状体の固化を確実に行うことができる他、半導体基板20内の回路素子やAl配線への熱的影響を排除することができる。
(実施形態4)
【0092】
続いて、本発明の実施形態4に係る弾性表面波素子10の製造方法について図面を参照して説明する。実施形態4では、バンク41の形成方法は前述した実施形態3による製造方法に準じているが、バンク41を形成した後に、圧電体51及びIDT電極60を形成するところに特徴を有している。相違工程を中心に説明し、同じ機能要素については同じ符号を付して説明する。
図7は、本実施形態に係る弾性表面波素子10の製造方法を模式的に示す部分断面図である。
【0093】
図7(a)に、バンク41の形成工程を示す。バンク41は、基台層30の表面周縁に所定の形状及び高さで液滴吐出法を用いて形成する。液滴吐出法は、前述した実施形態3と同様な方法、条件が用いられる。バンク41によって凹部42が形成され、凹部42の底面には、平坦化処理が施された基台層30の表面の一部が露出されている。また、パッド83に連通するスルーホール43も同じ工程により形成されている。
次に、基台層30にパッド83,86に連通するスルーホールを形成する。
【0094】
図7(b)〜図7(e)に、スルーホール44〜47を形成する工程を示す。まず、図7(b)に示すように、凹部42の底面(つまり、基台層30の表面)とバンク41の表面にわたってレジスト層102を形成し、露光、現像工程によりスルーホール44,45に対応する開口部102a,102bを有するレジストパターンを形成する。
【0095】
そして、図7(c)に示すように、スルーホール44,45を開設する工程を示す。エッチングによりスルーホール44,45を開設し、レジスト層102を除去し、洗浄する。
次に、絶縁層23にスルーホール46,47を開設する。
【0096】
まず、図7(d)に示すように、凹部42の底面(つまり、基台層30の表面)とバンク41の表面にわたってレジスト層103を形成し、露光、現像工程によりスルーホールに対応する開口部103a,103bを有するレジストパターンを形成する。
そして、エッチングにより、絶縁層23にスルーホール46,47を開設する(図7(e)。
【0097】
続いて、凹部42内の基台層30の表面に圧電体層50を形成する。図7(f)にその状態を示す。
次いで、圧電体層50の表面にレジスト層(図示せず)を形成した後、露光、現像工程により、圧電体51の形状に対応したレジストパターンを形成し、エッチングにより圧電体51を形成する(図7(g)、参照)。そして、レジスト層を除去してIDT電極60を形成する。
【0098】
IDT電極の形成工程を図7(h)に示す。IDT電極形成工程は、前述した実施形態1(図3(k)、参照)と同様な方法、工程により形成される。つまり、ここでは、IDT電極60、接続電極61a,62a、ビアホール71,72、パッド87を形成する。そして、蓋体90を固着し、パッケージングして(図1(b)、参照)、弾性表面波素子10が完成する。
【0099】
従って、このような実施形態4による製造方法によれば、完成品としては実施形態1(図1(a)、(b)参照)と同じ構成の弾性表面波素子10を形成することができ、同様な効果が得られる。
また、バンク41を形成した後に、圧電体51及びIDT電極60を形成する工程順としているので、バンク41の形成時に、基台層30の表面にエッチング液等が接触することがないので、基台層30の表面は平坦化処理をした状態のままのため、圧電体51との接合の信頼性を高めることができる。
【0100】
さらに、バンク41の形成時には、基台層30の表面には、IDT電極60等の突出部がなく同一平面状態であり、バンク形成時に、例えば、IDT電極にヘッドノズルがIDT電極60に接触して表面を損傷することがないというような効果がある。
【0101】
なお、前述した実施形態3,4においても、実施形態2及び変形例(図4,5、参照)のように、基台層30の構成を、SiNとAlの積層構造とすることができる。
【0102】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0103】
以上述べたように、上述した実施形態1〜実施形態4によれば、小型、薄型の実現と、パッケージングが容易で、しかも、高信頼性を有する弾性表面波素子の製造方法と、その製造方法により製造される弾性表面波素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る弾性表面波素子の概略構造を模式的に表し、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A切断面を示す断面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子の製造工程を模式的に表した部分断面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子の製造工程を模式的に表した部分断面図。
【図4】本発明の実施形態2に係る製造方法の一部を模式的に示す部分断面図。
【図5】本発明の実施形態2の変形例の一部を模式的に示す部分断面図。
【図6】本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子の製造方法の主な製造工程を模式的に示す部分断面図。
【図7】本発明の実施形態4に係る弾性表面波素子の製造方法の主な製造工程を模式的に示す部分断面図。
【符号の説明】
【0105】
10…弾性表面波素子、20…半導体基板、21〜23…絶縁層、30…基台層、41…バンク、51…圧電体、60…IDT電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に櫛歯形状のIDT電極が形成される弾性表面波素子の製造方法であって、
前記半導体基板の能動面側表面に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面全体に基台層を形成する工程と、
前記基台層の表面を平坦化処理する工程と、
平坦化処理された前記基台層の表面に圧電体を形成する工程と、
前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、
前記基台層の表面周縁部に、前記基台層の表面から前記IDT電極の表面までの高さよりも高く、且つ、前記圧電体を取り囲むバンクを形成する工程と、
を含むことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記基台層を形成する工程が、一層の絶縁層を形成する工程であることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記基台層を形成する工程が、Al層と前記絶縁層とを積層して形成する工程と、少なくとも前記Al層の表面を平坦化処理する工程と、を含むことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記バンクを形成する工程には、前記基台層の表面に前記バンクと同じ高さのバンク層を形成する工程と、前記圧電体を配設する領域において、前記基台層の表面に至るまでエッチングにより前記バンク層を除去して凹部を形成する工程と、を含み、
前記凹部の底部に前記圧電体を形成する工程と、
を含むことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程の後に、前記バンクを形成する工程を有し、
前記バンクを形成する工程が、前記基台層の表面周縁部の前記バンクの形成領域範囲に、SiO2の前駆体化合物を含有する液状体を前記バンクの所定形状に液滴吐出法を用いて形成する工程と、前記液状体を加熱処理により固化する工程とを含むことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記バンクを形成する工程が、前記基台層の表面周縁部の前記バンクの形成領域範囲に、SiO2の前駆体化合物を含有する液状体を液滴吐出法を用いて前記バンクの所定の形状に形成する工程と、前記液状体を加熱処理により固化する工程とを含むバンクを形成する工程であって、
前記バンクを形成する工程の後に、前記バンクによって形成される凹部内部の平坦化処理された前記基台層の表面に圧電体を形成する工程と、前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記バンクがSiO2からなり、SiO2の前駆体化合物が、Siを含んだ有機金属化合物Si(OR)4(R=CH3,C2H5,C3H7,C4H9)を含む液状体であり、前記液状体を加熱処理により固化することにより、前記バンクを形成することを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の弾性表面波素子の製造方法において、
前記加熱処理の温度が、350℃〜400℃の範囲であることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項9】
半導体基板の表面に櫛歯形状のIDT電極が形成される弾性表面波素子であって、
前記半導体基板の能動面側表面に形成される絶縁層と、
前記絶縁層の表面全体に形成され平坦化処理が施された基台層と、
平坦化処理が施された前記基台層の表面に形成される圧電体と、
前記圧電体の表面に前記IDT電極を形成する工程と、
前記基台層の表面周縁部に、前記基台層の表面から前記IDT電極の表面までの高さよりも高く、前記圧電体を取り囲んで形成されるバンクと、
を備えることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項10】
請求項9に記載の弾性表面波素子において、
前記バンクによって形成される凹部内を密閉封止する封止部材が、前記バンクの上面にさらに備えられ、パッケージングされていることを特徴とする弾性表面波素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−194999(P2007−194999A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12058(P2006−12058)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】