説明

形状センサおよび情報入力装置

【課題】外部物体の表面形状を従来と比べて適切に検出することが可能な形状センサおよび情報入力装置を提供する。
【解決手段】検出面10内の少なくとも1つの方向に沿って、複数のポリマーセンサ素子11,12が並んで配置されているようにする。電圧検出部13,14および算出部15は、ポリマーセンサ素子11,12において得られる電圧Vx,Vyに基づいて、外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状を検出する。従来と比べ、形状センサ11において検出可能な変形量の範囲が広がる(検出可能な変形量の上限が大きくなる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーセンサ素子を用いて外部物体の表面形状の検出を行う形状センサ、およびそのような形状センサを用いた情報入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、変形に応じた電圧(起電力)を発生するポリマーセンサ素子を用いて、種々のセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このうち、外部物体の表面形状の検出を行う形状センサでは、一般に、ポリマーセンサ素子からなる1枚のシートによって検出面が構成されており、このシート上に複数の検出電極が配置されている。そして、各検出電極から得られる電圧に基づいて、外部物体の表面形状を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−39995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この形状センサでは、ポリマーセンサ素子からなる単一シートによって検出面が構成されていることに起因して、以下のような問題があった。すなわち、1枚のシートであることから機械的な柔軟性が低く、外部物体の表面形状に応じて検出面(ポリマーセンサ素子)が変形しにくい(表面形状に追従しにくい)というものである。したがって、検出可能な変形量が限定されてしまうため、例えば球面状等の曲面状からなる外部物体による変形に対応することが困難となり、表面形状を適切に検出することができない場合が生じてしまう。
【0005】
そこで、検出面(ポリマーセンサ素子)における変形性を高めるため、例えば、上記した単一のシートを切り抜いて複数の開口を設ける(例えば、網目状に開口を設ける)という手法が考えられる。ただし、この手法を用いた場合でも、検出可能な変形量は、依然として不十分であると考えられる。更に、この手法では開口の存在がネックとなり、検出点の高精細化や微細化が困難である。
【0006】
このようにして従来の手法では、外部物体の表面形状を適切に検出することが困難であったため、改善する手法の提案が望まれていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、外部物体の表面形状を従来と比べて適切に検出することが可能な形状センサおよび情報入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形状センサは、変形に応じた電圧を発生する複数のポリマーセンサ素子が少なくとも1つの方向に沿って並んで配置されてなり、外部物体を検出するための検出面と、この検出面内の各ポリマーセンサ素子において得られる電圧に基づいて、上記外部物体のうちの検出面と接する部分の表面形状を検出する検出部とを備えたものである。
【0009】
本発明の情報入力装置は、上記本発明の形状センサを備えたものである。
【0010】
本発明の形状センサおよび情報入力装置では、検出面内の少なくとも1つの方向に沿って並んで配置された複数のポリマーセンサ素子において得られる電圧(複数の電圧)に基づいて、外部物体のうちの検出面と接する部分の表面形状が検出される。これにより、従来(ポリマーセンサ素子からなる単一シートによって検出面が構成されているもの)と比べて機械的な柔軟性が高くなるため、外部物体の表面形状に応じて検出面(ポリマーセンサ素子)が変形し易くなり(表面形状に追従し易くなり)、検出可能な変形量の範囲が広くなる(検出可能な変形量の上限が大きくなる)。また、例えば複数方向の各々に沿ってポリマーセンサ素子が配列されている場合には、ポリマーセンサ素子同士が交差する箇所(検出点)において、変形の際にポリマーセンサ素子同士が互いに滑ることができるため、変形の際の応力の発生も抑えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の形状センサおよび情報入力装置によれば、検出面内の少なくとも1つの方向に沿って並んで配置された複数のポリマーセンサ素子において得られる電圧に基づいて、外部物体のうちの検出面と接する部分の表面形状を検出するようにしたので、従来と比べて検出可能な変形量の範囲を増加させることができる。よって、外部物体の表面形状を従来と比べて適切に検出することが可能となる。また、例えば各ポリマーセンサ素子の形状(配列方向に沿った幅など)を調整することにより、検出点の高精細化や微細化も容易に図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図2】図1に示した形状センサの一部を拡大して表した断面図である。
【図3】図1および図2に示したポリマーセンサ素子の詳細構成を表す断面図である。
【図4】ポリマーセンサ素子の基本動作について説明するための断面模式図である。
【図5】比較例1に係るポリマーセンサ素子を用いたセンサの概略構成を表す模式図である。
【図6】比較例2に係るポリマーセンサ素子を用いたセンサの概略構成を表す模式図である。
【図7】図1に示した形状センサの動作について説明するための模式図である。
【図8】変形例1,2に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図9】変形例3,4に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図10】第2の実施の形態に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図11】図10に示した形状センサの一部を拡大して表した斜視図である。
【図12】変形例5,6に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図13】変形例7,8に係る形状センサの概略構成を表す模式図である。
【図14】適用例1に係る情報入力装置の概略構成を表す模式図である。
【図15】図14に示した回路図の詳細構成例を表す図である。
【図16】図14に示した情報入力装置の使用態様の一例を表す模式図である。
【図17】図14に示した情報入力装置の動作例等を表す流れ図である。
【図18】適用例2に係る情報入力装置の動作例等を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(X,Y軸方向にポリマーセンサ素子を配列:編み込み無し)
2.第1の実施の形態の変形例
変形例1(X軸方向にのみポリマーセンサ素子を配列)
変形例2(Y軸方向にのみポリマーセンサ素子を配列)
変形例3(検出面の端部領域よりも内部領域で疎に配置:編み込み無し)
変形例4(検出面の端部領域よりも内部領域で幅が細い:編み込み無し)
3.第2の実施の形態(X,Y軸方向に配列:編み込み有り(平織り形状の例))
4.第2の実施の形態の変形例
変形例5(検出面の端部領域よりも内部領域で疎に配置:編み込み有り)
変形例6(検出面の端部領域よりも内部領域で幅が細い:編み込み有り)
変形例7(綾織り形状の例)
変形例8(朱子織り形状の例)
5.適用例(情報入力装置への適用例)
【0014】
<第1の実施の形態>
[形状センサ1の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る形状センサ(形状センサ1)の概略構成を模式的に表したものであり、図2は、この形状センサ1の一部を拡大して断面図で表したもの(図1中のII−II線に沿った断面構成)である。形状センサ1は、後述するように、外部物体から加わる力による検出面10(X−Y平面上)の変形(湾曲,撓み)に応じて、その外部物体の表面形状(ここでは、X軸,Y軸,Z軸方向の3次元形状)を検出することが可能なセンサである。具体的には、形状センサ1は、外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状を検出することが可能となっている。
【0015】
この形状センサ1は、複数個(ここでは、m個(m:2以上の整数))のポリマーセンサ素子11と、複数個(ここでは、n個(n:2以上の整数))のポリマーセンサ素子12と、電圧検出部13,14と、算出部16とを備えている。これらのうち、電圧検出部13,14および算出部15が、本発明における「検出部」の一具体例に対応している。
【0016】
ポリマーセンサ素子11,12はそれぞれ、外部物体から加わる力による変形(湾曲,撓み;変形量および変形方向)に応じて電圧(起電力)を発生するものであり、帯状(矩形状)の薄膜構造を有している。具体的には、m個のポリマーセンサ素子11はそれぞれ、検出面10内でX軸方向に沿って並んでほぼ等間隔に配置されており、Z軸方向の変形に応じて電圧Vx1,Vx2,…,Vxmを発生するようになっている。一方、n個のポリマーセンサ素子12はそれぞれ、検出面10内でY軸方向に沿って並んでほぼ等間隔に配置されており、Z軸方向の変形に応じて電圧Vy1,Vy2,…,Vynを発生するようになっている。すなわち、これらのポリマーセンサ素子11,12はそれぞれ、検出面10内の互いに直交する2方向(ここでは、X軸方向およびY軸方向)に沿って、並んで配置されている。また、例えば図2中の符号P0で示したように、ポリマーセンサ素子11,12の表面はそれぞれ、後述する保護層40によって覆われている。これにより、ポリマーセンサ素子11,12同士が交差する箇所(検出点)において、変形の際にポリマーセンサ素子11,12同士の位置が固定されず、互いに滑ることができるようになっている。なお、これらのポリマーセンサ素子11,12の詳細構成については後述する(図3,図4)。
【0017】
電圧検出部13は、複数のポリマーセンサ素子11の各々において発生した電圧Vx(Vx1〜Vxm)、すなわち、X軸方向およびZ軸方向に沿った外部物体の2次元形状(Z−X平面内の2次元形状)を検出するものである。一方、電圧検出部14は、複数のポリマーセンサ素子12の各々において発生した電圧Vy(Vy1〜Vyn)、すなわち、Y軸方向およびZ軸方向に沿った外部物体の2次元形状(Y−Z平面内の2次元形状)を検出するものである。
【0018】
算出部15は、電圧検出部13において検出した電圧Vx(Vx1〜Vxm)と、電圧検出部14において検出した電圧Vy(Vy1〜Vyn)とに基づいて、前述した外部物体の表面形状を求め(算出し)、検出データDoutとして外部に出力するものである。すなわち、算出部15は、検出面10内の各ポリマーセンサ素子11,12において得られる電圧Vx,Vyに基づいて、外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状を検出するようになっている。なお、このような表面形状の検出方法の詳細については後述する(図7)。
【0019】
(ポリマーセンサ素子11,12の詳細構成)
ここで、図2および図3を参照して、上記したポリマーセンサ素子11,12の詳細構成について説明する。図3は、これらのポリマーセンサ素子11,12の断面構成を表したものである。
【0020】
ポリマーセンサ素子11,12はそれぞれ、図3に示したように、イオン導電性高分子化合物膜41(以下、単に高分子化合物膜41という。)の両面に一対の電極膜42A,42Bが接着された積層構造を有している。換言すると、ポリマーセンサ素子11,12はそれぞれ、一対の電極膜42A,42Bと、これらの電極膜42A,42Bの間に挿設された高分子化合物膜41とを有している。また、図2および図3に示したように、これらのポリマーセンサ素子11,12では、その両面が、高弾性を有する材料(例えば、ポリウレタンやパリレンなど)からなる絶縁性の保護膜40によって覆われている。ただし、場合によってはそのような保護膜40が設けられていなくてもよい。また、そのような保護膜40の代わりに、検出面10全体をシリコーンゴム等の柔軟性を有する膜でコーティングするようにしてもよい。
【0021】
高分子化合物膜41には陽イオン物質が含浸されている。ここでの「陽イオン物質」とは、陽イオンと極性溶媒とを含むもの、あるいは液状の陽イオンを含むものを意味する。陽イオンと極性溶媒とを含むものとしては、例えば、陽イオンに極性溶媒が溶媒和したものが挙げられる。また、液状の陽イオンとしては、例えば、イオン液体を構成する陽イオンが挙げられ、液状の陽イオンを含むものとしては、例えばイオン液体が挙げられる。
【0022】
高分子化合物膜41を構成する材料としては、例えばフッ素樹脂あるいは炭化水素系などを骨格としたイオン交換樹脂が挙げられる。このイオン交換樹脂としては、例えば、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂あるいは両イオン交換樹脂が挙げられ、中でも、陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0023】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基あるいはカルボキシル基などの酸性基が導入されたものが挙げられる。具体的には、酸性基を有するポリエチレン、酸性基を有するポリスチレンあるいは酸性基を有するフッ素樹脂などである。中でも、陽イオン交換樹脂としては、スルホン酸基あるいはカルボン酸基を有するフッ素樹脂が好ましく、特にナフィオン(デュポン株式会社製)が好ましい。
【0024】
高分子化合物膜41に含浸されている陽イオン物質は、金属イオンと水とを含むもの、有機陽イオンと水とを含むもの、あるいはイオン液体であることが好ましい。金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、リチウムイオン(Li+)あるいはマグネシウムイオン(Mg2+)などの軽金属イオンが挙げられる。また、有機陽イオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの陽イオンは、高分子化合物膜41中において水和物として存在している。よって、陽イオンと水とを含む陽イオン物質が高分子化合物膜41中に含浸されている場合には、水の揮発を抑制するためにポリマーセンサ素子11,12全体が封止されていることが好ましい。
【0025】
イオン液体とは、常温溶融塩とも言われるものであり、燃性および揮発性が低い陽イオンと陰イオンとを含んでいる。イオン液体では、それを構成する陽イオンにおいて、陰イオンよりもイオン半径が大きくなっている。イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム環系化合物、ピリジニウム環系化合物あるいは脂肪族系化合物などが挙げられる。
【0026】
中でも、陽イオン物質は、イオン液体であることが好ましい。揮発性が低いため、高温雰囲気中あるいは真空中においても、ポリマーセンサ素子11,12が良好に動作するからである。
【0027】
電極膜42A,42Bは、それぞれ1種あるいは2種以上の導電性材料を含んでいる。電極膜42A,42Bは、導電性材料粉末同士が導電性高分子により結着されたものが好ましい。電極膜42A,42Bの柔軟性が高まるからである。導電性材料粉末としてはカーボン粉末が好ましい。導電性が高く、比表面積が大きいため、より大きい変形量が得られるからである。カーボン粉末としては、ケッチェンブラックが好ましい。導電性高分子としては、上記した高分子化合物膜41の構成材料と同様のものが好ましい。
【0028】
電極膜42A,42Bは、例えば、以下のようにして形成される。分散媒に導電性材料粉末と導電性高分子とを分散させた塗料を高分子化合物膜41の両面に塗布したのち乾燥させる。また、導電性材料粉末と導電性高分子とを含むフィルム状のものを高分子化合物膜41の両面に圧着するようにしてもよい。
【0029】
電極膜42A,42Bは、多層構造になっていてもよく、その場合、高分子化合物膜41の側から順に、導電性材料粉末同士が導電性高分子により結着された層と金属層とが積層された構造を有していることが好ましい。これにより、電極膜42A,42Bの面内方向において電位がより均一な値に近づき、より優れた変形性能を得られるからである。金属層を構成する材料としては、金あるいは白金などの貴金属が挙げられる。金属層の厚さは任意であるが、電極膜42A,42Bに電位が均一になるように連続膜となっていることが好ましい。金属層を形成する方法としては、めっき法、蒸着法あるいはスパッタ法などが挙げられる。
【0030】
なお、ポリマーセンサ素子11,12では、陽イオン物質として陽イオンと極性溶媒を含むものを用いる場合には、高分子化合物膜41中に陰イオンがほとんど含まれないようになっている。
【0031】
このような構成により、ポリマーセンサ素子11,12では、高分子化合物膜41が膜面と直交する方向(ここではZ軸方向)へ変形(湾曲,撓み)すると、以下詳述するように、電極膜42Aと電極膜42Bとの間に電圧(起電力)が生じるようになっている。なお、高分子化合物膜41の大きさ(幅および長さ)は、想定される高分子化合物膜41の変形量(変位量)に応じて任意に設定可能である。
【0032】
(ポリマーセンサ素子11,12の基本動作)
次に、図4を参照して、このようなポリマーセンサ素子11,12の基本動作について説明する。図4は、ポリマーセンサ素子11,12の基本動作を、断面図を用いて模式的に表したものである。
【0033】
最初に、陽イオン物質として、陽イオンと極性溶媒とを含むものを用いた場合について説明する。
【0034】
この場合、まず、ポリマーセンサ素子11,12に対して外部物体による力が加わっていないときには、ポリマーセンサ素子11,12は、変形(湾曲,撓み)することなく平面状となっている(図4(A))。そのため、陽イオン物質が高分子化合物膜41中にほぼ均一に分散することから、電極膜42A,42B間には電位差(電圧Vx,Vy)が発生せず、電圧検出部13,14において検出される電圧が0Vとなる。
【0035】
ここで、ポリマーセンサ素子11,12に対して外部物体による力が加わったときには、ポリマーセンサ素子11,12が変形(湾曲,撓み)する(図4(B),(C))。
【0036】
例えば、図4(B)に示したように、ポリマーセンサ素子11,12がZ軸上の負方向(電極膜42A側)に変形した場合には、高分子化合物膜41では、電極膜42A側が収縮し、電極膜42B側が膨潤することになる。すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で電極膜42B側に移動するため、陽イオンは、電極膜42B側で密の状態となる一方、電極膜42A側で疎の状態となる。したがって、この場合、ポリマーセンサ素子11,12には、電極膜42A側よりも電極膜42B側において電位が高い電圧Vx,Vy(正極性の電圧:+Vx,+Vy)が発生する。
【0037】
一方、図4(C)に示したように、ポリマーセンサ素子11,12がZ軸上の正方向(電極膜42B側)に変形した場合には、高分子化合物膜41では、逆に電極膜42B側が収縮し、電極膜42A側が膨潤することになる。すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で電極膜42A側に移動するため、陽イオンは、電極膜42A側で密の状態となる一方、電極膜42B側で疎の状態となる。したがって、この場合、ポリマーセンサ素子11,12には、電極膜42B側よりも電極膜42A側において電位が高い電圧Vx,Vy(負極性の電圧:−Vx,−Vy)が発生する。
【0038】
次に、陽イオン物質として、液状の陽イオンを含むものであるイオン液体を用いた場合について説明する。
【0039】
この場合においても、まず、ポリマーセンサ素子11,12に対して外部物体による力が加わっていないときには、ポリマーセンサ素子11,12は、変形することなく平面状となっている(図4(A))。そのため、イオン液体が高分子化合物膜41中にほぼ均一に分散することから、電極膜42A,42B間には電位差(電圧Vx,Vy)が発生せず、電圧検出部13,14において検出される電圧が0Vとなる。
【0040】
ここで、ポリマーセンサ素子11,12に対して外部物体による力が加わったときには、上記と同様にポリマーセンサ素子11,12が変形する(図4(B),(C))。
【0041】
例えば、図4(B)に示したように、ポリマーセンサ素子11,12がZ軸上の負方向(電極膜42A側)に変形した場合には、高分子化合物膜41では、電極膜42A側が収縮し、電極膜42B側が膨潤することになる。すると、イオン液体を構成する陽イオンは、陰イオンよりもそのイオン半径が大きいことから、イオン液体のうちの陽イオンが電極膜42B側に移動する一方、陰イオンが電極膜42A側に移動する。したがって、この場合、ポリマーセンサ素子11,12には、電極膜42A側よりも電極膜42B側において電位が高い電圧Vx,Vy(正極性の電圧:+Vx,+Vy)が発生する。
【0042】
一方、図4(C)に示したように、ポリマーセンサ素子11,12がZ軸上の正方向(電極膜42B側)に変形した場合には、高分子化合物膜41では、逆に電極膜42B側が収縮し、電極膜42A側が膨潤することになる。すると、上記と同様の理由により、イオン液体のうちの陽イオンが電極膜42A側に移動する一方、陰イオンが電極膜42B側に移動する。したがって、この場合、ポリマーセンサ素子11,12には、電極膜42B側よりも電極膜42A側において電位が高い電圧Vx,Vy(負極性の電圧:−Vx,−Vy)が発生する。
【0043】
[形状センサ1の作用・効果]
続いて、本実施の形態の形状センサ1全体の作用および効果について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ説明する。
【0044】
(1.基本動作)
この形状センサ1では、ポリマーセンサ素子11,12から構成される検出面10において外部物体からの力が加わると、ポリマーセンサ素子11,12が変形する(図1,図4)。
【0045】
すると、上記したように、ポリマーセンサ素子11,12ではそれぞれ、電極膜42A,42B間に電位差(電圧Vx,Vy)が発生する。電圧Vxは電圧検出部13により検出され、電圧Vyは電圧検出部14により検出される。そして、算出部15は、これらの電圧Vx,Vyに基づいて、その外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状(3次元形状)を検出する。
【0046】
(比較例1)
ここで、図5に示した比較例1に係る従来の形状センサ100では、ポリマーセンサ素子101からなる1枚のシートによって検出面が構成されており、このシート上に、一対の電極膜からなる複数の検出電極104A,104Bが配置されている。そして、各検出電極104A,104Bから得られる電圧が電圧検出部102により検出され、この各検出電極104,104Bでの電圧に基づいて、算出部103において外部物体の表面形状を検出する(検出データDout101を出力する)ようになっている。
【0047】
ところが、この変形例1の形状センサ101では、ポリマーセンサ素子101からなる単一シートによって検出面が構成されていることに起因して、以下のような問題が生じる。すなわち、1枚のシートであることから機械的な柔軟性が低く、外部物体の表面形状に応じて検出面(ポリマーセンサ素子101)が変形しにくい(表面形状に追従しにくい)というものである。したがって、検出可能な変形量が限定されてしまうため、例えば球面状等の曲面状からなる外部物体による変形に対応することが困難となり、表面形状を適切に検出することができない場合が生じてしまう。
【0048】
(比較例2)
一方、図6に示した比較例2に係る形状センサ200では、検出面(ポリマーセンサ素子201)における変形性を高めるため、上記比較例1と同様の単一シートを切り抜くことにより、複数の開口201Aが網目状に設けられている。これにより、ポリマーセンサ素子201からなる単一シート上には、複数の検出電極104A,104Bに加え、これら複数の開口201Aが設けられていることになる。なお、この比較例2の形状センサ200においても、上記比較例1と同様に、各検出電極204A,204Bから得られる電圧が電圧検出部202により検出され、これらの電圧に基づいて、算出部203において外部物体の表面形状を検出(検出データDout201を出力)している。
【0049】
しかしながら、このような比較例2においても、以下説明する本実施の形態とは異なり、単一シートによって検出面を構成していることから、複数の開口201Aを設けることで幾分かは検出可能な変形量が増加するものの、依然として不十分な量である。加えて、この手法では開口201Aの存在がネックとなり、図中に示したように、検出点(この場合、各検出電極201A,201Bの位置に対応)の高精細化や微細化が困難である。
【0050】
(2.本実施の形態の検出動作)
これに対して、本実施の形態の形状センサ1では、上記比較例1,2とは異なり、外部物体の表面形状を、検出面10内に並んで配置されたそれぞれ複数個のポリマーセンサ素子11,12を用いて検出している。以下、本実施の形態における外部物体の表面形状の検出動作について、詳細に説明する。
【0051】
まず、例えば図7(A),(B)に模式的に示したように、検出面10内のある位置P1(x0,y0)における、外部物体5による変形量がf(x0,y0)であるものとして考える。
【0052】
このとき、例えば図7(B)に示したように、この位置P1(x0,y0)の近傍において検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)が変形するため、この近傍領域内に位置するポリマーセンサ素子11,12において、選択的に電圧Vx,Vyが発生する。ここで、上記した検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)における変形量f(x,y)と、ポリマーセンサ素子11,12から得られる電圧Vx,Vyとの関係を、関数u(f(x,y))とすると、以下の(1)式および(2)式が得られる。なお、ここでは便宜上、位置P1(x0,y0)における電圧Vx,Vyをそれぞれ、Vx(x0),Vy(x0)としている。
Vx(x0)=u(f(x0,y)) ……(1)
Vy(y0)=u(f(x,y0)) ……(2)
【0053】
したがって、このような関数u(x,y)の特性を、事前のデバイス評価(ポリマーセンサ素子11,12の特性評価)によって予め把握しておくようにすれば、算出部15において上記(1)式および(2)式を用いることにより、変形量f(x0,y0)を求めることができる。具体的には、関数u(x,y)の特性と、電圧Vx(x0),Vy(y0)の組とにより、検出面10上の任意の位置P1(x0,y0)での変形量f(x0,y0)を算出することができる。なお、検出面10上の全ての位置(検出点)における変形量f(x0,y0)の集まり(変形量の位置分布)が、図1に示した検出データDoutに相当する。
【0054】
このように本実施の形態の形状センサ1では、検出面10内の直交する2方向(X軸方向およびY軸方向)に沿ってそれぞれ並んで配置された複数(m個)のポリマーセンサ素子11および複数(n個)のポリマーセンサ素子12において得られる電圧Vx,Vyに基づいて、外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状が検出される。これにより、上記比較例1,2のように、ポリマーセンサ素子からなる単一シートによって検出面が構成されている形状センサと比べ、検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)における機械的な柔軟性が高くなる。その結果、外部物体の表面形状に応じて検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)が変形し易くなり(表面形状に追従し易くなり)、形状センサ11において検出可能な変形量f(x,y)の範囲が、上記比較例1,2と比べて広くなる(検出可能な変形量f(x,y)の上限が大きくなる)。
【0055】
また、ポリマーセンサ素子11,12同士が交差する箇所(検出点)において、変形の際にポリマーセンサ素子11,12同士が互いに滑ることができるため、変形の際の応力の発生が抑えられる。
【0056】
以上のように本実施の形態では、検出面10内の直交する2方向(X軸方向およびY軸方向)に沿ってそれぞれ並んで配置された複数(m個)のポリマーセンサ素子11および複数(n個)のポリマーセンサ素子12において得られる電圧Vx,Vyに基づいて、外部物体のうちの検出面10と接する部分の表面形状を検出するようにしたので、従来と比べ、形状センサ11において検出可能な変形量f(x,y)の範囲を広げる(検出可能な変形量f(x,y)の上限を大きくする)ことができる。よって、外部物体の表面形状を従来と比べて適切に(精度良く,感度良く)検出することが可能となる。
【0057】
また、例えば、各ポリマーセンサ素子11,12の形状(配列方向に沿った幅など)を調整することにより、上記比較例2とは異なり、検出面10内における検出点の高精細化や微細化を容易に図ることが可能となる。なお、各ポリマーセンサ素子11,12における配列方向に沿った幅を細くした場合には、検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)における機械的な柔軟性(変形のし易さ)をより高めることも可能となる。
【0058】
更に、上記したように、変形の際の応力の発生を抑えることができるため、形状センサ1の信頼性を向上させる(耐久性を向上させる,経時劣化を抑える)ことも可能となる。
【0059】
<第1の実施の形態の変形例>
続いて、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1〜4)について説明する。なお、上記第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
(変形例1,2)
図8(A)は、変形例1に係る形状センサ(形状センサ1A)の概略構成を表したものであり、図8(B)は、変形例2に係る形状センサ(形状センサ1B)の概略構成を表したものである。これらの変形例1,2では、上記第1の実施の形態とは異なり、検出面10内において、複数のポリマーセンサ素子が、1方向のみに沿って並んで配置されている。
【0061】
具体的には、変形例1の形状センサ1Aでは、検出面10内において、複数のポリマーセンサ素子11がX軸方向に沿って並んで配置されている一方、Y軸方向にはポリマーセンサ素子が並んで配置されていない。したがって、図8(A)に示したように、この変形例1では、算出部15は、電圧検出部13において検出された電圧Vxのみを用いて、検出データDoutを生成・出力している。すなわち、この形状センサ1Aでは、X軸,Z軸方向の2次元形状に対応する外部物体の表面形状を検出することが可能となっている。
【0062】
また、変形例2の形状センサ1Bでは、検出面10内において、複数のポリマーセンサ素子12がY軸方向に沿って並んで配置されている一方、X軸方向にはポリマーセンサ素子が並んで配置されていない。したがって、図8(B)に示したように、この変形例2では、算出部15は、電圧検出部14において検出された電圧Vyのみを用いて、検出データDoutを生成・出力している。すなわち、この形状センサ1Bでは、Y軸,Z軸方向の2次元形状に対応する外部物体の表面形状を検出することが可能となっている。
【0063】
このような構成の形状センサ1A,1Bにおいても、上記第1の実施の形態と同様に、外部物体の表面形状を従来と比べて適切に(精度良く,感度良く)検出することが可能である。すなわち、複数のポリマーセンサ素子は、検出面10内において少なくとも1つの方向に沿って並んで配置されているようにすればよい。
【0064】
(変形例3,4)
図9(A)は、変形例3に係る形状センサ(形状センサ1C)の概略構成を表したものであり、図9(B)は、変形例4に係る形状センサ(形状センサ1D)の概略構成を表したものである。なお、これらの図においては、電圧検出部13,14および算出部15の図示は省略している。
【0065】
変形例3の形状センサ1Cでは、上記第1の実施の形態とは異なり、ポリマーセンサ素子11,12が、検出面10内の端部領域よりも内部領域において疎に配置されている。言い換えると、ポリマーセンサ素子11,12は、検出面10内の内部領域よりも端部領域において密に配置されている。具体的には、ここでは、ポリマーセンサ素子11,12は、検出面10内において、その端部領域から内部(中央部,中心部)領域に向かって徐々に疎となるように配置されている。
【0066】
一方、変形例4の形状センサ1Dでは、上記第1の実施の形態とは異なり、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向(それぞれ、X軸方向,Y軸方向)の幅が、検出面10内の端部領域よりも内部領域において細くなっている。言い換えると、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向の幅は、検出面10内の内部領域よりも端部領域において太くなっている。具体的には、ここでは、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向の幅は、検出面10内において、その端部領域から内部(中央部,中心部)領域に向かって徐々に細くなっている。
【0067】
このような構成により、これらの形状センサ1C,1Dでは、検出面10内において、特に内部(中央部,中心部)領域における機械的な柔軟性(変形のし易さ)を高めることができる。したがって、外部物体は、一般に検出面10内の端部領域よりも内部領域において検出されると想定されることから、外部物体の表面形状を更に適切に(精度良く,感度良く)検出することが可能となる。
【0068】
なお、これらの変形例3,4では、ポリマーセンサ素子11,12の双方について、配置密度または配列方向の幅を変化させるようにしているが、例えば、ポリマーセンサ素子11,12の一方のみについて、配置密度または配列方向の幅を変化させるようにしてもよい。また、上記変形例1,2のように、検出面10内において複数のポリマーセンサ素子が1方向のみに沿って並んで配置されている場合において、それらのポリマーセンサ素子における配置密度または配列方向の幅を変化させるようにしてもよい。
【0069】
<第2の実施の形態>
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
図10は、第2の実施の形態に係る形状センサ(形状センサ2)の概略構成を表したものであり、図11は、この形状センサ2の一部を拡大して斜視図で表したものである。なお、これらの図においても、電圧検出部13,14および算出部15の図示は省略している。
【0071】
本実施の形態の形状センサ2では、検出面10内において、X軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子11と、Y軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子12とが、全体として互いに編み込まれてなる編み込み形状となっている。具体的には、本実施の形態では、この編み込み形状が、種々の編み込み形状のうちの基本形状である平織り形状となっている。すなわち、X軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子11と、Y軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子12とがそれぞれ、互いに1本ずつ交互に編み込まれた形状となっている。
【0072】
このように、本実施の形態では、ポリマーセンサ素子11,12同士が互いに編み込み形状となっていることにより、上記第1の実施の形態と比べ、検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)における機械的な柔軟性が更に高くなる。これは、編み込み形状としたほうが、外部物体における自由曲面の形状に対する親和性がより高くなるためである。その結果、この形状センサ2では、外部物体の表面形状に応じて検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)が更に変形し易くなり(表面形状に更に追従し易くなり)、検出可能な変形量f(x,y)の範囲が更に広くなる(検出可能な変形量f(x,y)の上限が更に大きくなる)。よって、本実施の形態では、上記第1の実施の形態と比べ、外部物体の表面形状を更に適切に(精度良く,感度良く)検出することが可能となる。
【0073】
また、ポリマーセンサ素子11,12同士が互いに編み込み形状となっていることにより、変形の際にポリマーセンサ素子11,12同士がより滑り易くなるため、上記第1の実施の形態と比べ、変形の際の応力の発生を更に抑えることも可能となる。
【0074】
更に、このような編み込み形状からなるポリマーセンサ素子11,12を作製する際には、一般的な織物技術を利用することができるため、大面積からなる検出面10の作製にも適合していると言える。
【0075】
加えて、本実施の形態は、編み込み形状として平織り形状を採用しているため、丈夫で摩擦に強くすることができると共に、特に容易に作製することが可能となる。
【0076】
<第2の実施の形態の変形例>
続いて、上記第2の実施の形態の変形例(変形例5〜8)について説明する。なお、上記第1,第2の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0077】
(変形例5,6)
図12(A)は、変形例5に係る形状センサ(形状センサ2A)の概略構成を表したものであり、図12(B)は、変形例6に係る形状センサ(形状センサ2B)の概略構成を表したものである。なお、これらの図においても、電圧検出部13,14および算出部15の図示は省略している。
【0078】
変形例5の形状センサ2Aでは、上記第2の実施の形態で説明した編み込み形状を前提として、前述した変形例3と同様に、ポリマーセンサ素子11,12が、検出面10内の端部領域よりも内部領域において疎に配置されている。言い換えると、ポリマーセンサ素子11,12は、検出面10内の内部領域よりも端部領域において密に配置されている。具体的には、ここでは、ポリマーセンサ素子11,12は、検出面10内において、その端部領域から内部(中央部,中心部)領域に向かって徐々に疎となるように配置されている。
【0079】
一方、変形例6の形状センサ2Bでは、上記第2の実施の形態で説明した編み込み形状を前提として、前述した変形例4と同様の構成となっている。すなわち、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向(それぞれ、X軸方向,Y軸方向)の幅が、検出面10内の端部領域よりも内部領域において細くなっている。言い換えると、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向の幅は、検出面10内の内部領域よりも端部領域において太くなっている。具体的には、ここでは、ポリマーセンサ素子11,12における配列方向の幅は、検出面10内において、その端部領域から内部(中央部,中心部)領域に向かって徐々に細くなっている。
【0080】
このような構成により、これらの形状センサ2A,2Bでは、上記変形例3,4と同様に、外部物体の表面形状を更に適切に(精度良く,感度良く)検出することが可能となる。なお、これらの変形例5,6においても、例えば、ポリマーセンサ素子11,12の一方のみについて、配置密度または配列方向の幅を変化させるようにしてもよい。また、上記変形例1,2のように、検出面10内において複数のポリマーセンサ素子が1方向のみに沿って並んで配置されている場合において、それらのポリマーセンサ素子における配置密度または配列方向の幅を変化させるようにしてもよい。
【0081】
(変形例7,8)
図13(A)は、変形例7に係る形状センサ(形状センサ2C)の概略構成を表したものであり、図13(B)は、変形例8に係る形状センサ(形状センサ2D)の概略構成を表したものである。なお、これらの図においても、電圧検出部13,14および算出部15の図示は省略している。
【0082】
変形例7の形状センサ2Cでは、上記第2の実施の形態とは異なり、検出面10内において、ポリマーセンサ素子11,12における編み込み形状が、綾織り形状となっている。すなわち、X軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子11がそれぞれ、Y軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子12に対し、上側に2本および下側に1本の割合で交互に編み込まれた形状となっている。これにより、本変形例では、検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)が特に伸縮性に優れたものとなっている。
【0083】
一方、変形例8の形状センサ2Dでは、上記第2の実施の形態とは異なり、検出面10内において、ポリマーセンサ素子11,12における編み込み形状が、朱子織り形状となっている。すなわち、X軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子11がそれぞれ、Y軸方向に沿って配列された複数のポリマーセンサ素子12に対し、上側に4本および下側に1本の割合で交互に編み込まれた形状となっている。これにより、本変形例では、検出面10(ポリマーセンサ素子11,12)が特に柔軟性に優れたものとなっている。
【0084】
このように、検出面10内におけるポリマーセンサ素子11,12の織り込み形状としては、基本的には、繊維における種々の織り込み手法(織り込み形状)を用いることができ、ポリマーセンサ素子11,12同士の交差のさせ方により、検出面10の特性を適宜調整することが可能である。
【0085】
<適用例>
続いて、これまで説明した各形状センサの情報入力装置への適用例(適用例1,2)について説明する。なお、上記した各実施の形態および各変形例における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0086】
(適用例1)
図14は、本発明の形状センサの適用例1に係る情報入力装置(情報入力装置6)の概略構成を斜視図で模式的に表したものである。この適用例1の情報入力装置6は、上記実施の形態等で説明した形状センサ1(または形状センサ1C,1D,2,2A〜2D)と、前述した電圧検出部13,14および算出部15等を有する回路部60とを備えている。
【0087】
この情報入力装置6では、経度配置されたポリマーセンサ素子11と、緯度配置されたポリマーセンサ素子12とにより、曲面状(ここでは球面状)の検出面が形成されている。すなわち、情報入力装置6における形状センサ1(1C,1D,2,2A〜2D)の検出面が、ここでは球状面となっている。なお、これらのポリマーセンサ素子11,12がそれぞれ、図示しない柔軟性を有する物体上に形成されているようにしてもよい。そして、このような球面状の検出面の内部に、回路部60を構成するIC(Integrated Circuit)チップ等が配置されている。
【0088】
図15は、回路部60の詳細なブロック構成の一例を表したものである。この回路部60は、上記した電圧検出部13,14および算出部15に加え、情報処理部61、加速度センサ62および角度・角速度センサ(ジャイロセンサ)63を有している。このように、情報入力装置6は、加速度センサ、角度センサおよび角速度センサのうちの少なくとも1つを更に備えるようにするのが望ましい。ただし、これらのセンサがいずれも設けられていないようにしてもよい。
【0089】
情報処理部61は、形状センサ1等における形状の検出結果(算出部15から出力される検出データDout)と、加速度センサ62および角度・角速度センサ63における検出結果とに基づいて、以下詳述する所定の情報処理を行うものである。
【0090】
図16は、情報入力装置6の使用態様の一例を模式的に表したものである。このように、ユーザ(使用者)の指8等によって情報入力装置6の表面(検出面)を押す(握る)と、この情報入力装置6からは以下の情報が得られる(入力される)。すなわち、まず、形状センサ1等によって、押された位置(変形位置)およびその変形量が検出される。また、上記したように、ここでは情報入力装置6内に加速度センサ62および角度・角速度センサ63がそれぞれ設けられているため、情報入力装置6自身の移動方向や移動速度、姿勢等も検出される。
【0091】
このように、本適用例の情報入力装置6では、これらの各種情報を入力することができる。また、この情報入力装置6は形状センサ1等(具体的には、ポリマーセンサ素子11,12)が柔軟性を有するものであるため、柔らかなインターフェイスを構築することができる。更に、上記実施の形態等で説明した形状センサ1等を用いているため、外部物体の表面形状を従来と比べて適切に(精度良く,感度良く)検出することができると共に、センサアレイを曲面状(ここでは球面状)に簡易に配置することが可能となる。
【0092】
なお、図16中に示したように、この情報入力装置6により得られた(入力された)各種情報を、外部のモニターである表示装置(表示装置7)へ出力して表示させるようにしてもよい。すなわち、情報入力装置6とこの表示装置7とを用いて、情報入力システムを構築するようにしてもよい。
【0093】
ここで、図17は、情報入力装置6の動作例等を流れ図で表わしたものである。なお、この図17において、各種センサ(形状センサ1等、加速度センサ62および角度・角速度センサ63)、回路部60ならびに表示装置7における動作内容は、それぞれの破線内に示している。
【0094】
まず、形状センサ1等におけるポリマーセンサ素子11,12が変形すると(ステップS101)、上記実施の形態等で説明したように、各ポリマーセンサ素子11,12に起電力が発生する(ステップS102)。次いで、上記実施の形態等で説明したようにして、検出部13,14および算出部15は、各ポリマーセンサ素子11,12からの起電力に基づいて、対応する変形量および変形位置をそれぞれ判定(算出)する(ステップS103)。そして、情報処理部61は、このようにして入力(検出)された変形量および変形位置の情報を用いて、検出された形状に応じた機能を選択する(ステップS104)。また、情報処理部61がこれらの情報を表示装置7へ出力させることにより、表示装置7では、それに応じて表示されている内容(グラフィック)の形状も変化させることができる(ステップS105)。
【0095】
一方、ユーザの動作によって、情報入力装置6自体が移動すると(ステップS106)、その移動内容に応じて、加速度センサ62による加速度の検出結果や、角度・角速度センサ63による角度・角速度の検出結果がそれぞれ出力される(ステップS107,S108)。次いで、情報処理部61は、加速度の検出結果に基づいて、情報入力装置6の移動方向や移動速度を判定(算出)する(ステップS109)と共に、情報入力装置6の姿勢を判定(算出)する(ステップS110)。そして、情報処理部61は、このようにして各種のセンサから入力(検出)された各種の情報を用いて、各機能および動作に応じた操作を行うように制御する(ステップS111)。また、情報処理部61がこれらの情報を表示装置7へ出力させることにより、表示装置7では、それに応じて表示されている内容(グラフィック)を動作させることもできる(ステップS112)。
【0096】
(適用例2)
また、上記適用例1で説明した情報入力装置6の他にも、例えば、上記実施の形態等で説明した形状センサ1と前述した回路部60とを備えた情報入力装置が、ウェアラブルである(ユーザが身につけたり、着用(装着)することが可能な)ように構成してもよい。具体的には、例えば、形状センサ1等におけるポリマーセンサ11,12を用いて生地を作製し、形状センサ1等を用いた衣服やグローブ、絆創膏状等のシートなどを作製するようにしてもよい。
【0097】
このような本適用例に係る情報入力装置においても、上記適用例1と同様の各種情報を入力することができ、これにより装着しているユーザの動作を検出することができる。また、この情報入力装置においても形状センサ1等(具体的には、ポリマーセンサ素子11,12)が柔軟性を有するものであるため、ユーザの動作を妨げることなく(ユーザに違和感を生じさせることなく)、そのような情報の入力および動作検出を行うことができる。
【0098】
ここで、図18は、上記した本適用例に係る情報入力装置の動作例等を流れ図で表わしたものである。なお、この図18においても図17と同様に、各種センサ(形状センサ1等、加速度センサ62および角度・角速度センサ63)、回路部60ならびに表示装置7における動作内容は、それぞれの破線内に示している。ただし、ここでは一例として、この情報入力装置内に加速度センサ62および角度・角速度センサ63が設けられていない(形状センサ1等のみが設けられている)場合について説明する。
【0099】
まず、ユーザが情報入力装置を装着して動作すると(ステップS201)、形状センサ1等におけるポリマーセンサ素子11,12が変形し、動作した領域(部位)に位置するポリマーセンサ素子11,12に起電力が発生する(ステップS202)。次いで、検出部13,14および算出部15が、各ポリマーセンサ素子11,12からの起電力に基づいて、対応する変形量および変形位置をそれぞれ判定(算出)する。
【0100】
続いて、情報処理部61は、このようにして入力(検出)された変形量および変形位置の情報を用いて、ユーザの動作を検出する。具体的には、起電力の有無によって(変形位置の情報を用いて)、動作した領域(部位)を特定する(ステップS203)。また、起電力の大きさ(変形量の情報を用いて)、動作量を特定する(ステップS204)。そして、情報処理部61は、このようにして特定された動作領域および動作量の情報を用いて、例えば、それらに応じた機能を選択する。また、情報処理部61がこれらの情報を表示装置7へ出力させることにより、表示装置7では、それに応じて表示されている内容(グラフィック)の形状を変化させたり動作させたりすることもできる(ステップS205)。
【0101】
<その他の変形例>
以上、いくつかの実施の形態、変形例および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0102】
例えば、検出面内におけるポリマーセンサ素子の配置構造については、上記実施の形態等に示したものには限られず、検出面内において複数のポリマーセンサ素子が少なくとも1つの方向に沿って並んで配置されているようにすればよい。
【0103】
また、ポリマーセンサ素子の形状についても、上記実施の形態等に示したものに限られず、更に、その積層構造についても、上記実施の形態で説明したものには限られず、適宜変更可能である。
【0104】
本発明の形状センサは、前述した情報入力装置の他にも、例えば携帯電話やゲーム機器などの様々な電子機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1,1A〜1D,2,2A〜2D…形状センサ、11,12…ポリマーセンサ素子、13,14…電圧検出部、15…算出部、40…保護膜、41…高分子化合物膜(イオン導電性高分子化合物膜)、42A,42B…電極膜、5…外部物体、6…情報入力装置、60…回路部、61…情報処理部、62…加速度センサ、63…角度・角速度センサ、7…表示装置、8…指、Vx,Vx1〜Vxm,Vy,Vy1〜Vyn…電圧(起電力)、P1(x0,y0)…位置、f(x0,y0)…変形量、Dout…検出データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形に応じた電圧を発生する複数のポリマーセンサ素子が少なくとも1つの方向に沿って並んで配置されてなり、外部物体を検出するための検出面と、
前記検出面内の各ポリマーセンサ素子において得られる電圧に基づいて、前記外部物体のうちの前記検出面と接する部分の表面形状を検出する検出部と
を備えた形状センサ。
【請求項2】
前記検出面内の互いに直交する2方向に沿ってそれぞれ、複数のポリマーセンサ素子が並んで配置されている
請求項1に記載の形状センサ。
【請求項3】
前記直交する2方向のうちの一の方向に沿って配列されたポリマーセンサ素子と、他の方向に沿って配列されたポリマーセンサ素子とが、全体として互いに編み込まれてなる編み込み形状となっている
請求項2に記載の形状センサ。
【請求項4】
前記編み込み形状が、平織り形状、綾織り形状または朱子織形状である
請求項3に記載の形状センサ。
【請求項5】
前記ポリマーセンサ素子が、前記検出面内の端部領域よりも内部領域において疎に配置されている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の形状センサ。
【請求項6】
前記ポリマーセンサ素子における配列方向の幅が、前記検出面内の端部領域よりも内部領域において細くなっている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の形状センサ。
【請求項7】
前記複数のポリマーセンサ素子はそれぞれ、
一対の電極膜と、
前記一対の電極膜の間に挿設された高分子膜とを有する
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の形状センサ。
【請求項8】
前記高分子膜は、陽イオン物質が含浸されたイオン導電性高分子化合物膜である
請求項7に記載の形状センサ。
【請求項9】
形状センサを備え、
前記形状センサは、
変形に応じた電圧を発生する複数のポリマーセンサ素子が少なくとも1つの方向に沿って並んで配置されてなり、外部物体を検出するための検出面と、
前記検出面内の各ポリマーセンサ素子において得られる電圧に基づいて、前記外部物体のうちの前記検出面と接する部分の表面形状を検出する検出部と
を有する情報入力装置。
【請求項10】
加速度センサ、角度センサおよび角速度センサのうちの少なくとも1つを更に備えた
請求項9に記載の情報入力装置。
【請求項11】
前記検出面が球状面である
請求項9または請求項10に記載の情報入力装置。
【請求項12】
ウェアラブルであるように構成されている
請求項9または請求項10に記載の情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−32325(P2012−32325A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173500(P2010−173500)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】