説明

形状推定システム、センタサーバ、形状推定方法、および形状推定プログラム

【課題】精度よく検出対象物に関する情報を推定する形状推定システム、センタサーバ、形状推定方法、及び、形状推定プログラムを提供する。
【解決手段】複数のセンサ端末201−1〜201−mのそれぞれは、センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出する検出部101と、前記検出部による検出結果をセンタサーバ401に送信する通信部102とを有し、前記センタサーバは、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信する通信部301と、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と記憶部303から読み出したセンシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理部302とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークにおける各センサ端末の検出結果により、検出対象の周長や大きさなどの検出対象の形状に関する情報である形状情報を推定する形状推定システム、センタサーバ、形状推定方法、及び、形状推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線通信機能を備えるセンサ端末(以下、センサノードとも称する)をさまざまな場所に数多く分散させ、センサネットワークを構成し、さまざまな場所の状態を計測して、計測結果を色々なアプリケーションに使おうという試みが盛んに行われている(例えば、非特許文献1、2)。
そのような状況下において、検出対象物の大きさや、形状の推定、及び推定した情報に基づき検出対象物の種別を判定することが考えられている。例えば、ある領域に進入する車両の大きさや、形状を推定し、推定した情報に基づき、検出対象物の車両の種別を判定することや、有毒ガスを検出することにより、有毒ガスの広がりを推定することなどがある。
このようなセンサネットワークにおいて、センサの位置を予め定めて配備するか、あるいは、配備後にGPS(Global Positioning System)などを用いてセンサが配置された位置が特定できていれば、分散配置された各センサの検出結果により形状推定を行うことができる。
【0003】
また、分散配置された各センサの位置が特定できなくても、各センサが配置されている密度(以下、センサ密度という)が既知であれば、検出対象物の大きさ等を推定することができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ian. F. Akyildiz他著、”A survey on sensor networks”、IEEE Communication Magazine、第40号第8集、pp.102−114、2002年8月
【0005】
【非特許文献2】Ben. W. Cook他著、”SoC Issues for RF Smart Dust”、Proceedings of the IEEE、第94号第6集、pp.1177−1196、2006年6月
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−60319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようなセンサネットワークにおいて、個々の決められた位置にセンサを配備する場合、センサ設置時に位置を把握しなければならないという手間が生じる。また、個々のセンサを適当に配備後、センサに付随するGPSなどで、自律的にセンサ位置を特定し、登録する場合、個々のセンサにGPSが必要となるなどの付加コストが発生する。
また、個々のセンサ位置が特定できない状況下における検出対象物の形状推定を行う場合、例えば、個々のセンサが配置されている密度(センサ密度)が既知であればその位置が特定できなくても検出対象物の大きさ等を推定できる。しかし、複数のセンサを一様に配備することは困難であるため、検出対象物がセンサ密度の高い領域に存在する場合と、低い領域に存在する場合とでは、その推定精度に偏りが生じる問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、精度よく検出対象物に関する情報を推定する形状推定システム、センタサーバ、形状推定方法、及び、形状推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明に係る形状推定システムは、複数のセンサ端末と1つのセンタサーバを備える形状推定システムであって、前記複数のセンサ端末のそれぞれは、センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出する検出部と、前記検出部による検出結果を前記センタサーバに送信する通信部とを有し、前記センタサーバは、前記複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出部による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶部と、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信する受信部と、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と前記記憶部から読み出したセンシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理部と、を有することをと特徴とする。
【0010】
上述の形状推定システムは、前記推定方程式が、前記検出部の存在する密度を示すセンサ密度を未知数として含み、前記データ処理部が、前記連立方程式を解くことにより、前記センサ密度を算出することを特徴とする。
【0011】
上述の形状推定システムは、前記検出対象物情報が、前記検出対象物の大きさを表わす情報と周長を表わす情報とを含むことを特徴とする。
【0012】
上述の形状推定システムは、前記推定方程式が、
【0013】
【数1】

であり、但し、iはクラス、N(i)はクラスiの検出結果を得た前記センサ端末の数、Ls(i)は、クラスiに対応するセンシングエリアSAの周長、Ss(i)は、クラスiに対応するセンシングエリアSAの大きさ、λはセンサ密度、Lは前記検出対象物の周長、Sは前記検出対象物Xの大きさであることを特徴とする。
【0014】
上述の課題を鑑み、本発明に係るセンタサーバは、複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出部による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶部と、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信する受信部と、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と前記記憶部から読み出したセンシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理部と、を有することをと特徴とする。
【0015】
上述の課題を鑑み、本発明に係る形状推定方法は、複数のセンサ端末のそれぞれが、センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出し、前記検出した結果を示す検出結果をセンタサーバに送信し、前記センタサーバが、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信し、前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と、前記複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報とを用いて、前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に、前記検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出することをと特徴とする。
【0016】
上述の課題を鑑み、本発明に係る形状推定プログラムは、コンピュータを、センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出する検出手段、前記検出手段による検出結果を送信する通信手段、前記検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出手段による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶手段、前記検出結果を受信する受信手段、前記検出結果と前記記憶手段から読み出した前記センシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理手段、として機能させるための形状推定プログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、精度よく検出対象物に関する情報を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る形状推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセンサ端末のセンシングエリアの一例を説明するための図である
【図3】本発明の実施形態に係る形状推定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による形状推定システム1について図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態による形状推定システム1の構成を示す概略ブロック図である。形状推定システム1は、センタサーバ401と、検出対象物の有無を検出するセンサ端末としてのm個のセンサ端末201−1〜201−mとを備え、検出対象物の形状情報を推定する。ここで、形状情報(検出対象物情報)とは、例えば、検出対象物の面積(サイズ)や、検出対象物の外周の長さ、検出対象物の凹凸の数など、検出対象物の形状に関する情報である。以下、形状推定システム1における検出対象物の面積を面積S、外周の長さを周長Lと表す。
【0020】
m個のセンサ端末201−1〜201−mは、それぞれ、センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、自端末と検出対象物との距離に応じた強度を検出するセンサである検出部101と、検出部101による検出結果を示す情報(以下、検出結果情報)をセンタサーバ401に送信する通信部102と、電源供給を行う電源部103とを備える。なお、各センサ端末201−1〜201−mには、固有の識別番号(以下、端末IDという)が割り当てられており、自端末の記憶部(図示せず)に記憶されている。通信部102は、検出結果情報を送信する際、当該端末IDを対応付けてセンタサーバ401に送信する。
【0021】
検出部101は、所定の面積のセンシングエリアSAを検出可能範囲として、このセンシングエリアSA内に検出対象物Xの一部でも含まれている場合、センシングエリアSAに検出対象物Xがあることを検出する。この検出部101は、センシングエリアSA内にある検出対象物Xを検出すると、検出対象物Xとの距離に応じた強度Mをセンシング結果として得る。本実施形態では、距離が0になると強度Mは1、遠ざかるにつれ(検出対象物Xと検出部101とが離れるに従って)、強度Mは0に近づくという特性をもつとする。
本実施形態において、センサ端末201−1〜201−mにそれぞれ搭載される全ての検出部101は同じ特性をもつとし、この特性は既知とし、この特性に基づき距離に応じた強度が予め決めておく。
【0022】
例えば、検出部101の一例として、図2に示すような特性を有するセンサを利用することができる。図2は、本実施形態に係る検出部101の特性の一例を説明するための図である。
図2に示す通り、検出部101は、自装置から半径r1のセンシングエリアSs1の範囲内に検出対象物Xがある場合、強度M1の検出結果を得る。つまり、検出部101は、検出対象物Xとの距離がr1未満の場合、強度M1の検出結果を得る。
また、検出部101は、自装置から半径r2のセンシングエリアSs2の範囲(センシングエリアSs1の範囲を除く)内に検出対象物Xがある場合、強度M2の検出結果を得る。つまり、検出部101は、検出対象物Xとの距離がr1以上かつr2未満の場合、強度M2の検出結果を得る。
さらに、検出部101は、自装置から半径r3のセンシングエリアSs3の範囲(センシングエリアSs1、Ss2の範囲を除く)内に検出対象物Xがある場合、強度M3の検出結果を得る。つまり、検出部101は、検出対象物Xとの距離がr2以上かつr3未満の場合、強度M3の検出結果を得る。
なお、検出部101は、自装置から半径r3以上はなれたところに検出対象物Xがある場合、センシングエリアSA内に当該検出対象物Xがないため、当該検出対象物Xを検出することはできない。この自装置から半径r3の範囲が、本実施形態におけるセンシングエリアSAである。
【0023】
また、本実施形態において、強度M(i)は、ある範囲内の数値を検出部101が検出結果として得た場合のレベルを示すものであって、この強度に応じて区分される複数のクラスC(i)に等しい。しかし、本発明はこれに限られず、図1に示すセンシングエリアAs(i)がこのクラスC(i)毎にそれぞれ定義されており、このクラスC(i)として予め決められている範囲内の強度Mを検出部101が検出するものであってよい。
【0024】
仮に検出部101に指向性がある場合、その強度が方向によって異なる特性(性質)に基づき、方向に応じた距離毎の強度を予め決めておく。
以下、m個のセンサ端末201−1〜201−mの総称として、センサ端末201とも記載する。
【0025】
センタサーバ401は、通信部301と、データ処理部302と、記憶部303と、入出力部304と、電源部305とを備えるコンピュータ端末である。
通信部301は、センサ端末201−1〜201−mから送信される検出結果情報を受信する通信処理を行う。この通信部301は、受信した検出結果情報を端末ID毎に記憶部303に記憶させる。
データ処理部302は、通信部301が受信した検出結果情報に基づき、検出対象物Xの形状情報の推定値を算出する検出対象物の形状情報の推定値の算出処理部である。
このデータ処理部302は、以下の式(1)に示す推定方程式を強度毎{i=1、2、3・・・}に求め、これら推定方程式に基づき線形連立方程式を解くことにより、検出対象物Xの形状情報の推定値として、検出対象物Xの大きさ(面積)Sと、周長Lと、センサ密度λを算出する。
【0026】
【数2】

なお、N(i)は、強度(クラス)iの検出結果を得たセンサ端末の数である。Ls(i)は、強度(クラス)iに対応するセンシングエリアSAの周長であり、Ss(i)は、強度(クラス)iに対応するセンシングエリアSAの大きさ(面積)である。λは、センサ密度である。Lは、検出対象物Xの周長であり、Sは、検出対象物Xの大きさ(面積)である。
また、センシングエリアSAの周長Ls(i)と大きさSs(i)は、検出部101が指向性を有する場合、保持している「距離r(i)に対応する検出部101からの範囲の大きさと周長」である。無指向性の場合は、保持している「距離r(i)に対応する強度M(i)」データを用いて、2πr(i)、π{r(i)}により与えておくこともできる。
【0027】
記憶部303は、データ処理部302による形状情報の推定値の算出処理に用いられる情報(パラメータ)を記憶する。この記憶部303が記憶するパラメータとして、各センサ端末201−1〜201−mに搭載される検出部101のセンシングエリアSAの周長Ls(i)、面積Ss(i)、強度M(i)などがあり、推定対象の形状情報に応じて入出力部304を介して入力される。例えば、センシングエリアSAのパラメータは、図2を用いて説明した例によると、強度M(i)毎に、それぞれ予め決められている。
入出力部304は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンやキーなどによりユーザからの情報の入力を受け付ける入力部と、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイへの表示を行う出力部とを備える入出力装置である。
電源部305は、センタサーバ装置401の各部を駆動させるための電力を供給する。
【0028】
本実施形態において、センササーバ401は、検出対象物Xの面積Sと周長L、および、センサ端末201−1〜201−mの設置位置(すなわちセンサ端末201−1〜201−mのセンサ密度λ)の推定値を算出するものである。
なお、既知な情報としては、センサ端末201の検出部101のセンサ特性(例えば、検出対象物Xとの距離に応じたセンシングエリアSAの面積Ss(1)、Ss(2)、Ss(3)毎の強度M(1)、M(2)、M(3))である。なお、センシングエリアSAの周長Ls(i){i=1、2、3}も既知である。また、無指向性の場合、センシングエリアSAの面積Ss(i)、周長Ls(i)の変わりに、半径r(i)を既知として、センシングエリアSAの面積Ss(i)、周長Ls(i)を計算することもできる。
【0029】
以下、図3を参照して、これら検出対象物Xの面積Sと周長L、および、センサ端末201−1〜201−mの設置位置(すなわちセンサ端末201−1〜201−mのセンサ密度λ)がいずれも未知である場合に、センササーバ401による検出対象物Xについての形状情報を推定する推定方法の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る形状推定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0030】
図3に示す通り、センタサーバ装置401の入出力部304が、オペレータの操作に応じて、既知の情報であるセンシングエリアSAの半径r(1)、r(2)r(3)(無指向性の場合)、またはセンサ特性{例えば、強度M(1)、M(2)、M(3)に対応するセンシングエリアの面積Ss(1)、Ss(2)、Ss(3)と周長Ls(1)、Ls(2)、Ls(3)}を、推定値パラメータとして入力を受け付け(ステップST101)、記憶部303に書き込む(ステップST102)。
なお、検出部101に指向性がある場合、方向と距離に応じた強度をセンサ特性として入力される。
【0031】
そして、入出力部304は、オペレータからの操作による検出処理の実行指示の入力を受け付けると、センシング処理の実行要求を通信部301を介してセンサ端末201に送信する(ステップST103)。センサ端末201−k(ただし、kは、1からmの整数)において検出部101は、検出対象物Xの検出処理(センシング)を実行し(ステップST104)、検出結果をセンシング結果J(k)としてセンタサーバ装置401に送信する(ステップS105)。センシング結果J(k)>0であれば、「検出対象物を検出した」ことを示し、センシング結果J(k)=0は、「検出対象物を検出しなかった」ことを示す。なお、センシング結果J(k)=1であれば、強度Mが最大であって、例えば、1>強度M1>M2>M3>0という関係が成立つ。
【0032】
センタサーバ装置401において、通信部301がセンサノード装置201からセンシング結果J(k)を受信し(ステップS106)、データ処理部302は、検出対象物Xを検出した検出センサ数N(i)を、強度M(1)、M(2)、・・・毎に算出する(ステップS107)。つまり、データ処理部302は、各強度毎に検出されたセンサの数の和を算出し、各強度に応じたクラスC(i)毎の推定方程式を生成する。
【0033】
具体的に説明すると、データ処理部302は、センシング結果J(k)の値が強度M(1)よりも大きいか否かを判断する(ステップST108)。ここで、センシング結果J(k)>強度M(1)の場合(ステップST108−YES)、データ処理部302は、クラス1のセンサ数N(1)に1を加算する(ステップST109)。
一方、センシング結果J(k)≦強度M(1)の場合(ステップST108−NO)、データ処理部302は、センシング結果J(k)の値が強度M(2)よりも大きいか否かを判断する(ステップST110)。ここで、センシング結果J(k)>強度M(2)の場合(ステップST110−YES)、データ処理部302は、クラス2のセンサ数N(2)に1を加算する(ステップST111)。
【0034】
一方、センシング結果J(k)≦強度M(2)の場合(ステップST110−NO)、データ処理部302は、センシング結果J(k)の値が強度M(3)よりも大きいか否かを判断する(ステップST112)。ここで、センシング結果J(k)>強度M(3)の場合(ステップST112−YES)、データ処理部302は、クラス3のセンサ数N(3)に1を加算する(ステップST113)。
一方、センシング結果J(k)≦強度M(3)の場合(ステップST112−NO)、データ処理部302は、クラス4のセンサ数N(4)に1を加算する(ステップST114)。
【0035】
データ処理部302は、全てのセンサ端末201−1〜201−mからのセンシング結果J(k)に対してクラス分けを行う。全てのセンサ端末201−1〜201−mに対してクラス分けを行った後(ステップST115−YES)、データ処理部302は、パラメータや推定方程式を示す情報を記憶部303から読み出し、各クラス毎に生成されたセンサ数N(i)を示す推定方程式を生成する(ステップST116)。
具体的には、データ処理部302が、記憶部303の記憶するパラメータとして、センシングエリアSAの周長Ls(i)、面積Ss(i)と、上述の式(1)に示す推定方程式を記憶部303から読み出す。そして、データ処理部302は、読み出したパラメータLs(i)とSs(i)と、クラス毎に算出した検出対象物Xの検出センサ数N(i)とに基づき式(1)に示す推定方程式をクラス毎{i=1、2、3・・・}に求め、これら推定方程式に基づき線形連立方程式を解くことにより、検出対象物Xの形状情報の推定値として、検出対象物Xの大きさ(面積)Sと、周長Lと、センサ密度λを算出する(ステップST117)。
【0036】
具体的には、データ処理部302は、合計を算出したクラスC(i)毎のセンサ数N(i)を、式(1)に基づく次式の連立方程式により、形状情報の推定値を算出する。
センサ数N(1)=λ{1/2π・L・Ls(1)+S+Ss(1)}・・・式(2)
センサ数N(2)=λ{1/2π・L・Ls(2)+S+Ss(2)}・・・式(3)
センサ数N(3)=λ{1/2π・L・Ls(3)+S+Ss(3)}・・・式(4)
【0037】
次いで、データ処理部302は、算出した検出対象物Xの大きさ(面積)S、周長L、センサ密度λを形状情報として入出力部304に出力し、入出力部304の出力部が形状情報を出力する(ステップS118)。
【0038】
上述の通り、データ処理部302は、検出部101による検出結果として、強度Mに応じて区分けされるクラス毎に、複数の推定方程式を生成することができる。これにより、この推定方程式を少なくとも未知数の数以上用意することにより、連立方程式を用いて、未知数を算出することができる。
よって、上述のように、検出対象物Xの周長Lや大きさSの未知数を算出する推定方程式にセンサ密度λが含まれている場合であっても、クラスを3以上用意して、推定方程式をクラス毎に複数生成することで、未知数のセンサ密度λを算出することができる。従って、センサ端末の位置が特定されていなくても、また、センサ密度λが未知であっても、検出対象物Xの形状情報を算出することができる。
【0039】
よって、センサ設置時に位置を把握していない場合であっても、個々のセンサを適当に配備後、センサに付随するGPSなどで、自律的にセンサ位置を特定し、登録する必要がなく、個々のセンサにGPSが必要となるなどの付加コストを削減することができる。
また、個々のセンサ位置が特定できない状況下における検出対象物の形状推定を行う場合、例えば、個々のセンサが配置されているセンサ密度が未知であって、複数のセンサが一様に配備されていない場合であっても、センサ密度λを推定することができるため、検出対象物がセンサ密度の高い領域に存在する場合と低い領域に存在する場合により生じる偏りを軽減することができる。
【0040】
以上、上述したように、データ処理部302は、センサノード装置201−1〜201−mのセンシングエリアの周長Ls、面積Ss、検出対象物Xを検出したセンサ数N(i)の情報に基づき、上述の方程式により、推定対象の検出対象物Xに関する形状情報の推定値を算出することができる。形状推定システム1は、検出対象物の検出部分の面積Sを測定する機能を備えるセンサではなく、検出対象物Xの有無と距離に応じた強度M(i)を検出するセンサをセンサノード装置201−1〜201−mに適用して検出対象物の形状情報の推定値を算出することができるため、センサ密度が未知であったとしても連立方程式を解くことにより、検出対象物Xの大きさと周長を算出することができる。また、検出対象物の形状情報を推定する場合の判定関数を用いずに直接検出対象物の周長や面積の推定値を算出することができるため、検出対象物の形状を予め絞り込める場合や、推定値の算出の処理時間が短いような単純な判定関数である場合に限られず、広く応用、適用が可能になる。
【0041】
なお、上述のセンタサーバ401、センサ端末201−1〜201−mは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、センタサーバ401の通信部301、データ処理部302、センサ端末201−1〜201−mの検出部101、通信部102の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0042】
また、図3に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、図1に示すセンタサーバ装置401の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、検出対象物の形状情報の推定値を算出する処理を行ってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0043】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
101・・・検出部、102・・・通信部、103・・・電源部、201_1〜202_m・・・センサ端末、301・・・通信部、302・・・データ処理部、303・・・記憶部、304・・・入出力部、305・・・電源部、402・・・センタサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ端末と1つのセンタサーバを備える形状推定システムであって、
前記複数のセンサ端末のそれぞれは、
センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果を前記センタサーバに送信する通信部とを有し、
前記センタサーバは、
前記複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出部による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶部と、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信する受信部と、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と前記記憶部から読み出したセンシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理部と、
を有することをと特徴とする形状推定システム。
【請求項2】
前記推定方程式は、
前記検出部の存在する密度を示すセンシング密度を未知数として含み、
前記データ処理部は、
前記連立方程式を解くことにより、前記センシング密度を算出することを特徴とする請求項1に記載の形状推定システム。
【請求項3】
前記検出対象物情報は、
前記検出対象物の大きさを表わす情報と周長を表わす情報とを含むことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の形状推定システム。
【請求項4】
前記推定方程式は、
【数1】

であり、
但し、iはクラス、N(i)はクラスiの検出結果を得た前記センサ端末の数、Ls(i)は、クラスiに対応するセンシングエリアSAの周長、Ss(i)は、クラスiに対応するセンシングエリアSAの大きさ、λはセンサ密度、Lは前記検出対象物の周長、Sは前記検出対象物Xの大きさであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の形状推定システム。
【請求項5】
複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出部による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶部と、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信する受信部と、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と前記記憶部から読み出したセンシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理部と、
を有することをと特徴とするセンタサーバ。
【請求項6】
複数のセンサ端末のそれぞれが、
センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出し、
前記検出した結果を示す検出結果をセンタサーバに送信し、
前記センタサーバが、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果を受信し、
前記複数のセンサ端末から送信される前記検出結果と、前記複数のセンサ端末による検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報とを用いて、前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に、前記検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出することをと特徴とする形状推定方法。
【請求項7】
コンピュータを、
センシングエリア内にある検出対象物を検出するとともに、当該検出対象物との距離に応じた強度を検出する検出手段、
前記検出手段による検出結果を送信する通信手段、
前記検出結果の強度に応じて予め決められているセンシングエリアに関するセンシングエリア情報と、前記検出手段による検出結果と前記センシングエリア情報と前記検出対象物との関係を表わした推定方程式とを記憶する記憶手段、
前記検出結果を受信する受信手段、
前記検出結果と前記記憶手段から読み出した前記センシングエリア情報を用いて前記強度に応じて区分される複数のクラス毎に前記推定方程式を求め、当該複数の推定方程式に基づき連立方程式を解くことにより、前記検出対象物を表わす検出対象物情報を算出するデータ処理手段、
として機能させるための形状推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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