説明

形状測定方法及び形状測定装置

【課題】被検物の表面形状を高精度かつ短時間で測定する。
【解決手段】被検物の表面で反射された物体光と参照光との光路差によって得られる干渉縞を解析する形状測定装置を用いて被検物の表面形状を測定する本発明の形状測定方法は、参照面を第1位置に固定して被検物の複数の位置における第1干渉縞を取得する第1工程と、参照面を参照光の光軸上の第2位置に固定して、複数の位置における第2干渉縞を取得する第2工程と、参照面を参照光の光軸上の第3位置に固定して、複数の位置における第3干渉縞を取得する第3工程と、第1干渉縞と、第2干渉縞と、第3干渉縞とを用いて、被検物の複数の位置における干渉縞の位相解析を行う位相解析工程S20とを備え、第1干渉縞、第2干渉縞、及び第3干渉縞の少なくとも1つは、被検物を形状測定装置に対して相対移動させながら複数の位置の近傍で断続的に取得された複数の干渉縞に基づいて取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定方法、より詳しくは、参照面及び被検物の表面で反射される光によって生じる干渉縞を用いて当該被検物の表面形状を測定する形状測定方法、及び同形状測定方法を実行する形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、干渉計を用いて大面積、高傾斜の被検物の表面形状を測定する場合に、当該被検物の表面を干渉計で測定可能な複数の測定領域に分割し、各領域の測定結果をつなぎ合わせて表面全体の測定を行う方法が提案されている。
この形状測定方法において、分割された各測定領域の形状測定を高精度に行うためには、被検物表面の形状情報を含む干渉縞の縞走査による位相解析が必要となる。そのために、通常は、被検物を測定領域ごとに静止させ、干渉計の参照面をその光軸上の複数の位置に移動させて当該測定領域の縞走査を行ってから次の測定領域の縞走査を行うという手順がとられている。
【0003】
しかしながら、上記のような手順で表面形状の測定を行うと、測定領域ごとに被検物の回転及び停止、縞走査のための参照面の移動(通常4位置以上)が行われるため、測定に長時間が必要となる。これは測定領域の分割数が増加するほど顕著になる。
【0004】
この問題を解決して測定効率を改善するために、本発明の発明者(本発明者)は、特許文献1に記載の形状測定方法を提案している。この形状測定方法では、被検物を静止させる代わりに回転させ、被検物が所定の角度量回転するごとに断続的に被検物の撮像を行い、干渉縞を含む被検物の表面画像を複数取得する。これを参照面の位置を変えて繰り返すことにより、必要な数の干渉縞を取得して位相解析を行う。この形状測定方法では、被検物の回転及び停止を頻繁に繰り返す必要がなく、測定効率を著しく向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者は、以下の課題を解決することにより特許文献1に記載の形状測定方法の更なる向上が期待できることを見出した。
特許文献1に記載の形状測定方法においては、撮像時の外乱その他の様々な原因により、取得された干渉縞がノイズを含むことがある。ノイズの程度が著しい場合は、当該干渉縞は位相解析に使用できなくなり、ある角度量における干渉縞が欠損することになる。その結果、形状測定自体が実行できなくなるという問題がある。
さらに、干渉縞がノイズを含まない場合においても、被検物が動的状態にある条件下では、干渉縞をサンプリングするタイミングにずれが生じる可能性があり、ずれが生じると、測定誤差につながるという問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、干渉縞の欠損を抑制して効率よく表面形状測定を行うことができる形状測定方法及び形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、光源から発する光を被検物に照射される物体光と参照面で反射される参照光とに分離し、前記被検物の表面で反射された前記物体光と前記参照光との光路差によって得られる干渉縞を解析する形状測定装置を用いて前記被検物の表面形状を測定する形状測定方法であって、前記参照面を第1位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記被検物の複数の位置における第1干渉縞を取得する第1工程と、前記参照面を、前記第1位置と異なる前記参照光の光軸上の第2位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記複数の位置における第2干渉縞を取得する第2工程と、前記参照面を、前記第1位置及び前記第2位置と異なる前記参照光の光軸上の第3位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記複数の位置における第3干渉縞を取得する第3工程と、前記第1干渉縞と、前記第2干渉縞と、前記第3干渉縞とを用いて、前記複数の位置における干渉縞の位相解析を行う位相解析工程とを備え、前記第1干渉縞、前記第2干渉縞、及び前記第3干渉縞の少なくとも1つは、前記被検物を前記形状測定装置に対して相対移動させながら前記複数の位置の近傍で断続的に取得された複数の干渉縞に基づいて取得されることを特徴とする。
【0009】
前記第1干渉縞、前記第2干渉縞、及び前記第3干渉縞の少なくとも1つは、前記被検物を前記干渉計に対して相対移動させながら前記複数の位置の近傍で断続的に取得された複数の干渉縞を用いた補間処理によって取得されてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様は、光源から発する光を被検物に照射される物体光と参照面で反射される参照光とに分離し、前記被検物の表面で反射された前記物体光と前記参照光との光路差によって得られる干渉縞を解析して前記被検物の表面形状を測定する形状測定装置であって、前記干渉縞を含む前記被検物の表面画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段が前記表面画像を取得するタイミングを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記形状測定装置に対して相対移動する前記被検物に対して前記被検物と前記形状測定装置とが所定の位置関係となるタイミングの近傍で、前記撮像手段に断続的に複数回前記表面画像を取得させることを特徴とする。
【0011】
本発明の形状測定装置は、前記被検物と前記形状測定装置とが所定の位置関係となるタイミングの近傍で取得された複数の前記表面画像を用いた補間処理により補間表面画像を生成する演算部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の形状測定方法及び形状測定装置によれば、干渉縞の欠損を抑制して効率よく表面形状測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の形状測定方法に用いられる形状測定装置を示す図である。
【図2】同形状測定装置の機能ブロック図である。
【図3】同形状測定方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】光学素子の回転角と干渉縞取得のタイミングとの関係の一例を示す図である。
【図5】取得された干渉縞と選択された第1干渉縞の例を示す図である。
【図6】(a)および(b)は、いずれも取得された干渉縞と選択された第1干渉縞の例を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態の形状測定方法における干渉縞取得工程の流れを示すフローチャートである。
【図8】同干渉縞取得工程における第1選択工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態について、図1から図6を参照して説明する。図1は、本実施形態の形状測定方法に用いられる形状測定装置1を示す図である。形状測定装置1は公知のトワイマングリーンタイプの干渉計を含んだ構成となっている。当該干渉計の原理を簡潔に説明すると以下の通りである。
光源2から発せられた光Lは、被検物Sの表面に照射される物体光L1と、参照平面(参照面)3によって反射され、基準となる参照光L2とに分離される。本実施形態における被検物である光学素子Sの表面で反射された物体光L1は、参照光L2と干渉し、干渉光L3となる。干渉光L3は結像レンズ5によってCCD素子(撮像手段)6上に結像し、物体光L1と参照光L2との光路差によって生じる干渉縞が得られる。参照平面3には、参照平面3を参照光L2の光軸に沿って移動させるための移動機構3Aが取り付けられている。移動機構3Aとしては、ピエゾ素子等を採用することができる。
【0015】
光学素子Sは、スピンドル12の軸線方向の一方の端部に取付けられている。スピンドル12の軸線を通る回転軸14は、モータ等の回転機構15に接続されており、スピンドル12及びスピンドルに取付けられた光学素子Sをスピンドル12の軸線回り(図1に矢印θで示す方向)に回転させることができる。回転軸14には、ロータリーエンコーダ16が設置されており、回転軸14の回転角度(光学素子Sの形状測定装置1に対する相対移動量)を検知することができる。
形状測定装置1は、物体光L1および参照光L2の光軸X1がスピンドル12の軸線に対して所定の角度をなして光学素子Sに対向するように配置されている。
【0016】
図2は、形状測定装置1の機能ブロック図である。図2に示すように、CCD素子6は、後述する干渉縞の選択及び選択した干渉縞に基づく位相解析を行う演算部8に接続されている。CCD素子6、移動機構3A、及び演算部8は、形状測定装置1全体の制御を行う制御部9に接続されている。さらに、スピンドル12に取り付けられたロータリーエンコーダ16も制御部9に接続されており、回転軸14の回転角度を制御部9が検知できるようになっている。
演算部8及び制御部9は、形状測定装置1の内部に設けられてもよいし、CCD素子6及び移動機構3Aと接続されたパソコン等の外部機器に設けられてもよい。
【0017】
上記のように構成された形状測定装置1を用いて、本実施形態の形状測定方法により光学素子Sの表面形状測定を行う手順について、図3から図6を参照して以下に説明する。
【0018】
図3は、本実施形態の形状測定方法の流れを示すフローチャートである。本実施形態の形状測定方法は、位相解析に用いる干渉縞を取得する干渉縞取得工程S10と、取得した干渉縞を用いて位相解析を行い、光学素子Sの部分形状を取得する位相解析工程S20と、取得された部分形状をつなぎ合わせて光学素子Sの光学面全体の表面形状を取得する統合工程S30とを備える。
まず形状測定の準備として、使用者は、光学素子Sを、その光軸が回転軸14の軸線と一致するようにスピンドル12に固定する。
【0019】
次に、ステップS10の干渉縞取得工程において、位相解析工程S20で使用する光学素子S表面の干渉縞が取得される。
使用者は、移動機構3Aにより、参照平面3を、干渉縞を取得する参照平面3の位置(参照位置)の1つである第1位置P1に固定した状態で、形状測定装置1を、光軸X1がスピンドル12の軸線(回転軸14の軸線に一致)に対して所定の角度をなすように移動させる。そして、光学素子Sと形状測定装置1との距離が既定の位置になるように、形状測定装置1を固定する。ここで、既定の位置としては、物体光L1が照射される領域内における光学素子Sの近似曲率半径に、物体光L1の波面の曲率半径が一致する位置、とすることが望ましい。
【0020】
使用者は、光学素子Sの外周上の任意の位置を基準位置PSと設定し、基準位置PSが光学素子Sの光軸の直上に位置する状態を、光学素子Sの回転角0度と定義する。
なお、以降の説明において、回転角は、時計回りに増加するものとし、光学素子Sがある回転角となったときに物体光L1が照射される光学素子Sの表面上の領域を、当該回転角の「回転位置」と称する。
【0021】
次に、使用者は、回転機構15を駆動し、スピンドル12を一定の速度、例えば毎分20回転で回転させる。スピンドル12の回転量はロータリーエンコーダ16によって制御部9に伝達される。制御部9は、ロータリーエンコーダ16からの信号に基づいて、光学素子Sの回転角が0度になった状態から干渉縞の取得を開始する。
【0022】
図4は、光学素子Sの回転角と干渉縞取得のタイミング(サンプルタイミング)との関係の一例を示す図である。制御部9は、ロータリーエンコーダ16の信号を検知しながら、予め設定した複数の回転角に対応する複数の回転位置で、干渉縞を含む光学素子Sの一部の表面画像(以下、単に「干渉縞」と称する。)をCCD素子6に断続的に取得させる。このとき、CCD素子6の全画素において、同期読み出しを行うように設定すると、高速で干渉縞を取得することができる。
【0023】
本実施形態においては、光学素子Sが形状測定装置1に対して相対回転し、回転角が0度、90度、180度、及び270度となったときの各回転位置において干渉縞が取得されるが、制御部9は、各回転位置近傍において複数の干渉縞が断続的に取得されるようにCCD素子6のサンプルタイミングを制御する。
【0024】
具体的には、制御部9は、ロータリーエンコーダ16の信号を検知しながら、光学素子Sの回転角が上述の位置よりも0.1度少ない値となったところで干渉縞を取得するようCCD素子6を動作させ、その後回転角が0.1度増加するごとにさらに2回干渉縞の取得を行う。すなわち、制御部9は、例えば回転角90度の回転位置およびその近傍においては、回転角89.9度、90.0度、及び90.1度の3ポイントにおける回転位置の干渉縞を取得するようCCD素子6を動作させる。取得した干渉縞は、CCD素子6から制御部9に送られる。
【0025】
制御部9とロータリーエンコーダ16との間における情報のやり取りや、制御部9とCCD素子6とのやり取りにおいてタイムラグが生じなければ、図5に示すように、回転角90.0度の回転位置における干渉縞が取得されるため、制御部9は、当該干渉縞を位相解析工程S20に使用する干渉縞として選択する。
【0026】
一方、制御部9とロータリーエンコーダ16との間における情報のやり取りや、制御部9とCCD素子6とのやり取りにおいてタイムラグが生じると、制御部9がCCD素子6に指示したタイミングと実際に干渉縞が取得されたタイミングとの間にずれが生じる。図4に示す例では、回転角270度の回転位置においては制御部9が指示したタイミングと実際に干渉縞が取得されたタイミングとが概ね一致しているが、他の回転位置においてはずれが生じている。このとき、干渉縞が取得される3ポイント間の間隔にもずれが生じ、3つのポイントが等間隔とならない場合もありうる。
【0027】
図6(a)に示す例のように、取得した干渉縞の中に、設定した回転位置(例えば90.0度)で取得された干渉縞が存在しない場合、制御部9は、当該回転位置に最も近いポイント(この場合は90.004度)で取得された干渉縞を位相解析工程S20に使用する干渉縞として選択する。
また、図6(b)に示すように、取得した干渉縞の中に設定した回転位置で取得された干渉縞が存在するが、ノイズNを含んでおり位相解析に好適に使用できない等の場合、制御部9は、ノイズNを含む干渉縞以外で当該回転位置に最も近いポイント(この場合は89.992度)で取得された干渉縞を位相解析工程S20に使用する干渉縞として選択する。
このようにして、参照平面3が第1位置P1に存在するときの、上述の各回転位置における干渉縞(第1干渉縞)が1枚ずつ取得される(第1工程)。
【0028】
第1工程終了後、干渉縞の取得は一旦休止され、スピンドル12が空回りを行い、それにともなって、光学素子Sも空回りする。その間に制御部9は、移動機構3Aを動作させて、参照平面3を参照光L2の光軸に沿って所定の距離だけ後退させ、第1位置P1と異なりかつ参照光L2の光軸上の第2位置P2(図1参照)に移動させて固定する。スピンドル12の空回りは、移動機構3Aによる移動に必要な時間及び移動後の微調整に必要な時間を考慮して、複数回転行われてもよい。
【0029】
参照平面3が第2位置P2に固定された後、光学素子Sの回転角が0度となる位置から、第2位置P2における干渉縞の取得が開始される。そして、上述の第1工程と同じ要領で、参照平面3が第2位置P2に位置するときの各回転位置近傍における干渉縞が断続的に複数取得され、各回転位置における干渉縞(第2干渉縞)が1枚ずつ選択されて取得される(第2工程)。
【0030】
その後、同様の手順で、参照平面3は第2位置P2より後方かつ参照光L2の光軸上の第3位置P3及び第4位置P4に移動され、第3干渉縞及び第4干渉縞が取得される(第3工程、第4工程)。すなわち、光学素子S表面の干渉縞は、回転角にして90度ずつ間隔をおいた各回転位置において、それぞれ第1ないし第4干渉縞の4種類取得される。取得されたすべての第1ないし第4干渉縞のデータは、制御部9から演算部8に送られて干渉縞取得工程S10は終了する。
【0031】
続くステップS20の位相解析工程において、演算部8は、制御部9から送られた干渉縞の中から、ある回転位置における第1ないし第4干渉縞を抽出し、これらの位相変化を解析して、当該回転位置の表面形状データを得る。演算部8は同様の動作を、干渉縞が取得されたすべての回転位置において行って、すべての回転位置における表面形状データを得る。すなわち、本実施形態の場合には4つの表面形状データが得られることになる。
【0032】
ステップS30の統合工程において、演算部8は、各回転位置における表面形状データどうしの重複部分を利用して、各表面形状データを1つのデータに統合し、光学素子Sの表面の一部である輪帯状領域の表面形状データを取得する。統合の方法としては公知の各種方法を適宜選択して使用することができる。以上で光学素子Sの表面形状測定が終了する。
【0033】
なお、物体光L1が照射される領域が光学素子Sの表面に占める割合が十分広い場合には、統合工程S30において光学素子Sの表面全体の形状データが取得されるが、物体光L1の照射される光学素子Sの領域は、一般的に光学素子Sの表面全体に比べて狭いので、一度の形状測定で取得される形状データは、光学素子S表面の一部の輪帯状領域のものとなる。したがって、一度の形状測定で光学素子S全体の形状データを取得することは通常困難である。
このような場合、形状測定終了後に形状測定装置1を移動させ、光学素子Sにおいて物体光L1が照射される領域を変化させる。そして再度本実施形態の形状測定方法を実行し、光学素子Sにおける異なる輪帯状領域の表面形状データを取得する。これを必要な回数繰り返して、光学素子S全体をカバーするだけの表面形状データを得る。その後、統合工程S30と同様の手順により各輪帯状領域の表面形状データを統合することによって、光学素子S全体の表面形状データを取得すればよい。
【0034】
本実施形態の形状測定方法および同形状測定方法を実行する形状測定装置1によれば、干渉縞取得工程S10において、光学素子Sの形状測定装置1に対する所定の相対移動量に対応する複数の回転位置近傍で、制御部9がCCD素子6を動作させることにより複数の干渉縞が断続的に取得され、その中から位相解析工程S20で使用される第1干渉縞ないし第4干渉縞が選択されて取得される。
したがって、各回転位置で取得された干渉縞の中に位相解析に耐えないものが含まれていた場合でも、他の干渉縞が第1ないし第4干渉縞として選択されて位相解析工程S20が行われるため、干渉縞データの欠損により形状測定が不能となる事態の発生を好適に防止することができる。
【0035】
また、本実施形態の形状測定装置1においては、制御部9が、位相解析工程S20において使用される干渉縞を選択する際に、設定した回転位置に最も近い回転位置で取得された干渉縞を選択するため、位相解析工程における誤差を最小限に抑えることができる。
【0036】
本発明の形状測定方法においては、被検物の各回転位置近傍で断続的に取得される干渉縞の数および取得間隔は、要求される形状測定の精度等にもとづいて適宜設定されてよい。一般に、干渉縞の取得間隔を狭くするほど、より設定された回転位置に近い回転位置で取得された干渉縞を用いて位相解析工程が行えるため、形状測定の精度は向上する。CCD素子6等の撮像手段の性能が干渉縞の取得間隔を短縮するためのネックとなる場合は、スピンドル12の回転速度を落とすことによってさらに取得間隔を短縮することが可能である。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について、図7および図8を参照して説明する。本実施形態の形状測定方法と上述した第1実施形態との異なるところは、第1ないし第4干渉縞が取得される過程において、必要に応じて取得された干渉縞にもとづく補間処理が行われる点である。なお、以降の説明において、既に説明した構成と同様の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本実施形態の形状測定方法は、干渉縞取得工程S10に代えて干渉縞取得工程S40を備えている点のみ第1実施形態と異なっており、制御部9および演算部8の動作態様を変更するだけで上述の形状測定装置1により実行可能である。
【0038】
図7及び図8は、本実施形態の形状測定方法における干渉縞取得工程S40の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、干渉縞取得工程S40は、第1の回転位置における第1ないし第4干渉縞を選択する第1選択工程S42と、第2の回転位置における第1ないし第4干渉縞を選択する第2選択工程S43と、第3の回転位置における第1ないし第4干渉縞を選択する第3選択工程S44と、第4の回転位置における第1ないし第4干渉縞を選択する第4選択工程S45とを備えている。なお、本実施形態においては、第1ないし第4の回転位置の回転角は、第1実施形態の如く、0度、90度、180度、および270度にそれぞれ設定されている。
【0039】
まず、ステップS41において、第1実施形態と同様の手順で、各参照位置において、各回転位置の近傍でそれぞれ3つの干渉縞が断続的に取得される。すなわち、本実施形態ではステップS41において4参照位置、4回転位置、3干渉縞で、これらの積である計48の干渉縞がCCD素子6により取得され、制御部9に送られる。ステップS41では、まだ第1ないし第4干渉縞の選択は行わない。
ステップS41の終了後、処理はステップS42の第1選択工程に進む。
【0040】
図8は、図7に示す第1選択工程S42の詳細な流れを示すフローチャートである。なお、第2選択工程S42ないし第4選択工程S45も、同様の流れで進められるため、ここでは、第1選択工程S42を例として第1ないし第4選択工程の詳細な流れについて説明する。
【0041】
まず、ステップS51において、制御部9は、第1の回転位置近傍で取得された干渉縞をすべて読み出し、すべての参照位置で干渉縞が取得された回転位置が存在するかどうかを判定する。当該判定がyesの場合、処理はステップS52に進む。ステップS52において、制御部9は、当該回転位置における干渉縞を採用して第1の回転位置における第1ないし第4干渉縞として選択するとともに、統合工程S30における第1の回転位置の回転角を干渉縞が取得された回転位置の回転角に修正して第1選択工程S42が終了する。
ステップS51における判定がnoの場合、処理はステップS53に進む。
【0042】
ステップS53では、制御部9が、第1の回転位置近傍で取得された干渉縞を比較し、2つ又は3つの参照位置において干渉縞が取得された回転位置が存在するかどうかを判定する。当該判定がyesの場合、処理はステップS54に進む。ステップS54において、制御部9は、当該回転位置における干渉縞を採用して、第1の回転位置における第1ないし第4干渉縞のうち、対応する参照位置における干渉縞として選択する。そして、当該回転位置における干渉縞が取得されていない参照位置においては、実際に取得された干渉縞を2以上用いて、補間処理により当該回転位置における干渉縞(補間表面画像)を生成し、第1ないし第4干渉縞のうち不足している干渉縞として選択する。
【0043】
補間処理の方法としては、公知の各種方法を適宜選択して用いることができ、使用する干渉縞の回転角も、当該回転位置の回転角を挟んでいてもいなくても構わない。また、使用する干渉縞が多いほど、補間処理により生成される干渉縞の精度が高まるため、本実施形態においては、ノイズ等により使用できない干渉縞が存在しない限り、3つの干渉縞すべてが補間処理に使用されるのが好ましい。
第1ないし第4干渉縞がすべて取得された後、制御部9は統合工程S30における第1の回転位置の回転角を当該回転位置の回転角に修正して第1選択工程S42が終了する。
ステップS51における判定がnoの場合、処理はステップS55に進む。
【0044】
ステップS55では、制御部9は、各参照位置において、取得された干渉縞に基づき、第1の回転位置における干渉縞(補間表面画像)を補間処理により生成する。補間処理の流れはステップS54におけるものと同様である。そして、補間処理により生成された各参照位置における干渉縞が第1ないし第4干渉縞として選択され、第1選択工程S42が終了する。ステップS55では第1の回転位置に対応した干渉縞が生成されるので、ステップS52およびS54のように、統合工程S30における第1の回転位置の回転角の修正は行われない。
【0045】
以上説明した第1選択工程S42により、第1の回転位置における第1ないし第4干渉縞が取得され、制御部9から演算部8に送られる。
その後、同様の流れで第2選択工程S43ないし第4選択工程S45が制御部9により実行され、第2ないし第4の回転位置における第1ないし第4干渉縞が取得されて演算部9に送られ、本実施形態の干渉縞取得工程S40が終了する。すなわち、本実施形態においては、第1工程ないし第4工程は順番に行われるのではなく並行して行なわれ、第4選択工程S45が終了したときに、すべて同時に終了する。
その後は、第1実施形態と同様に位相解析工程S20および統合工程S30が行われ、形状測定が終了する。
【0046】
本実施形態の形状測定方法においては、干渉縞取得工程S40内の各選択工程S42ないしS45におけるステップS55において、各回転位置に対応した干渉縞が補間処理により生成されて第1ないし第4干渉縞として取得されるので、第1実施形態同様、干渉縞データの欠損により形状測定が不能となる事態の発生を好適に防止することができる。さらに、生成された干渉縞の回転位置は、対応する第1ないし第4の回転位置と完全に一致しているため、誤差が少なくなりより精度の高い表面形状測定を行うことができる。
【0047】
また、各選択工程S42ないしS45がステップS51ないしS54を備えているため、共通するタイミングで取得された干渉縞が存在する場合は、当該干渉縞を第1ないし第4干渉縞の一部として利用しつつ、不足する干渉縞を補間処理により生成する。補間処理により生成された干渉縞には、ごくわずかではあるが誤差も含まれるため、補間処理で生成した干渉縞の利用を最小限にすることで、表面形状測定の精度をさらに向上させることができる。
本実施形態では、干渉縞取得工程S40が補間処理を最小限に抑えるためのステップS51ないしステップS54を含む例を説明したが、ステップS51ないしステップS54を備えずに、常に第1ないし第4の回転位置の干渉縞を補間処理により生成するようにしてもよい。この場合、第1ないし第4の回転位置における干渉縞が既に取得されている場合は、補間処理をキャンセルさせてもよい。
【0048】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各実施形態の構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
例えば、上述の各実施形態においては、第1位置P1における干渉縞の取得が終了した後、参照平面3が第2位置P2に移動した後も、光学素子Sが回転角0度の状態になるまで光学素子Sが空回りを行う例を説明したが、本発明はこれには限定されない。例えば、光学素子Sを空回りさせずに、参照平面3が第2位置P2に移動完了した時点における光学素子Sの回転角を0度として、当該回転角の位置から第2位置P2における干渉縞の取得が開始されてもよい。この場合、位相解析工程において、第1干渉縞取得時と第2干渉縞取得時の回転角のずれに基づいて処理を行うように演算部8の設定を行えばよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、すべての参照位置P1ないしP4において、光学素子Sを回転させながら干渉縞が取得される例を説明したが、本発明はこれには限定されず、一部の参照位置(例えばP1)においてのみ、光学素子Sを回転させながら干渉縞が取得され、残りの参照位置においては、従来と同様に、光学素子Sを所定の回転角だけ回転させて静止させた状態で干渉縞が取得されてもよい。このようにしても、干渉縞取得に要する時間を相当程度短縮することができる。
【0050】
さらに、干渉縞が取得される参照位置は、最低3箇所あればよく、5箇所以上あってもよい。この場合、ステップ数に応じて異なる公知の位相解析方法を用いて位相解析工程を進めればよい。
また、干渉縞が取得される回転位置の数も、上述した4箇所に限られず、適宜設定されてよいし、各回転位置の間隔も、取得される干渉縞が他の少なくとも一つの干渉縞と重複領域を有し、統合工程による統合が可能となっていれば、必ずしも等間隔(角度量)でなくても構わない。
【0051】
さらに、本発明の表面形状測定方法は、上述の光学素子Sのような軸対称の形状を有する被検物に限定されず、自由曲面を有するような軸対称でない被検物にも適用することができる。この場合は、当該被検物に対する形状測定装置の走査軌跡上に、被検物と形状測定装置との相対移動量を示す干渉縞取得位置を複数設定し、当該干渉縞取得位置のそれぞれの近傍で、複数の干渉縞を断続的に取得すればよい。干渉縞取得後の流れは、上述した各実施形態と概ね同様である。
【0052】
加えて、上述の実施形態においては、形状測定装置にトワイマングリーン型の干渉計が用いられる例を説明したが、本発明は、参照面および被検物のいずれかを進退させてフリンジスキャンを行うものであれば、フィゾー型等の他の方式の干渉計を用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 形状測定装置
2 光源
3 参照平面(参照面)
6 CCD素子(撮像手段)
8 演算部
9 制御部
L1 物体光
L2 参照光
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
S 光学素子(被検物)
S20 位相解析工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発する光を被検物に照射される物体光と参照面で反射される参照光とに分離し、前記被検物の表面で反射された前記物体光と前記参照光との光路差によって得られる干渉縞を解析する形状測定装置を用いて前記被検物の表面形状を測定する形状測定方法であって、
前記参照面を第1位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記被検物の複数の位置における第1干渉縞を取得する第1工程と、
前記参照面を、前記第1位置と異なる前記参照光の光軸上の第2位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記複数の位置における第2干渉縞を取得する第2工程と、
前記参照面を、前記第1位置及び前記第2位置と異なる前記参照光の光軸上の第3位置に固定して、前記物体光を前記被検物に照射し、前記複数の位置における第3干渉縞を取得する第3工程と、
前記第1干渉縞と、前記第2干渉縞と、前記第3干渉縞とを用いて、前記複数の位置における干渉縞の位相解析を行う位相解析工程と、
を備え、
前記第1干渉縞、前記第2干渉縞、及び前記第3干渉縞の少なくとも1つは、前記被検物を前記形状測定装置に対して相対移動させながら前記複数の位置の近傍で断続的に取得された複数の干渉縞に基づいて取得されることを特徴とする形状測定方法。
【請求項2】
前記第1干渉縞、前記第2干渉縞、及び前記第3干渉縞の少なくとも1つは、前記被検物を前記干渉計に対して相対移動させながら前記複数の位置の近傍で断続的に取得された複数の干渉縞を用いた補間処理によって取得されることを特徴とする請求項1に記載の形状測定方法。
【請求項3】
光源から発する光を被検物に照射される物体光と参照面で反射される参照光とに分離し、前記被検物の表面で反射された前記物体光と前記参照光との光路差によって得られる干渉縞を解析して前記被検物の表面形状を測定する形状測定装置であって、
前記干渉縞を含む前記被検物の表面画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段が前記表面画像を取得するタイミングを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記形状測定装置に対して相対移動する前記被検物に対して前記被検物と前記形状測定装置とが所定の位置関係となるタイミングの近傍で、前記撮像手段に断続的に複数回前記表面画像を取得させることを特徴とする形状測定装置。
【請求項4】
前記被検物と前記形状測定装置とが所定の位置関係となるタイミングの近傍で取得された複数の前記表面画像を用いた補間処理により、補間表面画像を生成する演算部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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