形状維持性ヒドロゲル粒子凝集体およびその使用法
本発明は、多種多様の用途(生物活性物質の制御放出、インビボでの医療装置、組織成長の足場、および組織の交換が含まれるが、これらに限定されない)に対して有用となる、形状維持性、弾性、制御可能な細孔サイズ、および制御可能な分解速度を含むが、これらに限定されない特性を有する、ヒドロゲル粒子ならびにそれから形成される凝集体に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機化学、ポリマー化学、薬化学および材料科学の分野に関する。特に、本発明は、形状維持性を有するヒドロゲル粒子凝集体およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
以下の議論は、本発明を理解する際において読者を助ける背景となる情報として提供され、本発明の先行技術であるとすることを意図せず、または解釈されるべきではない。
【0003】
ゲルは、液体を吸収した3次元のポリマーのネットワークであり、安定してして、通常柔らかくしなやかな、ゼロ以外の剛性率を有する組成物を形成する。液体は、その組成物の全体積の相当なパーセントを占めている。液体が水であるとき、ゲルはヒドロゲルと呼ばれる。その独自の組成により、すなわち、主として生物学的に不活性なポリマーマトリックスの中に吸収される水により、ヒドロゲルは多数の生物医学的な応用での使用が見いだされてきた。
【0004】
例えば、ヒドロゲルは、ソフトコンタクトレンズ産業の事実上の根幹をなす。またヒドロゲルは創傷包帯としても用いられ、治療プロセスにおいて補助するためにマトリックスから放出される医薬が組み込まれるものと組み込まれないものの両方がある(U.S.Patent Nos.3,963,685および4,272,518)。ヒドロゲルは、吸水時の膨張に基づいて尿失禁の処置のための人工括約筋として用いられる(Sefc,et al.,Biomaterials,2002,23:3711)。またヒドロゲルは、血液フィルターのような医療装置の湿潤性をよくするためのコーティングとしても使われる(U.S.Pat.5,582,794)。さらにヒドロゲルは、生物活性物質を持続的に放出するための溶剤としての重要な用途が見出されている。
【0005】
このように、European Pat.App.No.0246653には、部分的に水和して生分解性でないヒドロゲルを放出速度制限バリアとして含む薬剤送達装置が記載されている。U.S.Pat.No.5,292,515には、様々なヒドロゲル組成物を使った親水性の貯蔵薬剤送達装置を調製することについての方法が開示されている。Davidsonらは、黄体化ホルモン放出ホルモンを制御して送達するためのヒドロゲル膜の使用について報告している(Proceed.Inter.Symp.Cont.Rel.Bioact.Materials,1988,15)。
【0006】
上記の全ての例では、使われるヒドロゲルは、バルクポリマー形状すなわち識別できる規則的な内部構造を有しない物質の非晶質の塊である。ヒドロゲルの非晶質的性質は、他の物質とのヒドロゲルの組成の均質性に影響を与える。さらに、バルクヒドロゲルは、水が通って吸収される表面領域に比べて大きな内部体積のために、遅い膨張速度を通常有する。その大きさにより、ヒドロゲルは、生物活性物質を制御して放出するためのものとしては比較的劣る溶剤になる。すなわち、吸収される水の中で溶解または懸濁した物質は、それがマトリックス内のどこに存在するかによって著しく異なる速度でヒドロゲルから拡散する。ヒドロゲルの表面またはその近くにある物質は、容易にゲルマトリックスから離れるが、マトリックス内のより深い物質は、ゲルの外面に達して放出される前に、ずっと長い距離を拡散しなければならない。この状態は、粒子ヒドロゲルを使用することにより、ある程度改善することができる。粒子が十分に小さい場合、その中に分散した物質が表面に拡散して、実質的に同じ速度で放出される。
【0007】
粒子ヒドロゲルは、例えば、これらに限定されないが、直接乳化重合または逆の乳化重合によって、最初から形成することができるか(Landfester,et al.Macromolecules,2000,33:2370)、または粒子ヒドロゲルは、ヒドロゲルを乾かし、得られたキセロゲルを粉砕し、所望の大きさの粒子が得られるように粉砕された材料をふるいにかけることにより、バルクのヒドロゲルから作ることができる。次いで、粒子は、粒子ヒドロゲルを形成するために再水和される。これらのアプローチのいずれかを使うことにより、マイクロ単位(10-6メートル(m))からナノ単位(10-9メートル(m))までの直径を有する粒子を作り出すことができる。上記のとおり、それらの粒子の小さい体積により、粒子の中で捕捉された生物活性物質の所定の任意の分子が、粒子の外面に達するために移動するのに、ゼロ次または非常にゼロ次に近い放出速度過程を生じる他の分子とほとんど同じ距離を有する。しかしながら、粒子ヒドロゲルを使っても、問題はある。とりわけ、特定の標的部位に粒子を散布し、および粒子を局在化させることを制御することである。さらに、上述のように、バルクヒドロゲルは、人工括約筋、組織送達溶剤、組織置換材(人工軟骨)などのような応用において、それらを有用にする形状を維持し得るが、現在利用可能な粒子ヒドロゲル凝集体では、そのようなことはできない。
【0008】
必要とされるものは、バルクのヒドロゲルの望ましい特徴(形状維持および特定の応用おいてはゴム状弾性(elastomericity))および微粒子ヒドロゲル凝集体の望ましい特徴(より制御可能な物質送達速度を与える個々の小さい体積)を有する材料である。本発明は、このような材料、つまり形状維持性のあるヒドロゲル粒子の凝集体を提供する。本発明はまた、生物活性物質の制御可能な送達を含むが、それに限定されない凝集体の使用法を提供する。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
したがって、本発明の1つの局面は、多数のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体である。各粒子は、一つまたは複数のモノマーの重合によって得られる多数のポリマー鎖を含み、そのモノマーのうち少なくとも一つは、一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含むポリマー鎖;一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、凝集体のヒドロゲル粒子間の空間を占める液体を含む。
【0010】
本発明の他の1つの局面は、少なくとも50体積%のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体である。各ヒドロゲル粒子は、モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;50体積%までの一つまたは複数の作動物質;一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、凝集体のヒドロゲル粒子間の空間を占める液体を含む。ここで、作動物質は、吸収される液体中に溶解または懸濁されているか、または作動物質が吸収されない液体中に溶解または懸濁されているか、または一つまたは複数の作動物質が吸収される液体中に溶解または懸濁されており、かつ一つまたは複数の作動物質が吸収されない液体中に溶解または懸濁されている。
【0011】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の金属またはその合金を含む。
【0012】
本発明の1つの局面では、作動物質は、個々に一つまたは複数の酸化状態を有する一つまたは複数の金属を含む。
【0013】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の半導体元素または半導体化合物を含む。
【0014】
本発明の1つの局面では、作動物質は一つまたは複数の薬剤を含む。
【0015】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0016】
本発明の1つの局面では、薬剤はペプチドまたはタンパク質である。
【0017】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、癌の治療に有用である。
【0018】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、冠状動脈疾患の治療に有用である。
【0019】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、呼吸器疾患の治療に有用である。
【0020】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、感染症の治療に有用である。
【0021】
本発明のさらなる局面は、作動物質を制御して放出するための組成物の調製法であり、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む一つまたは複数のモノマーを、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含む一つまたは複数の液体に添加する工程;その液体に0.01〜10モルパーセントの界面活性剤を添加する工程;そのモノマーを重合して、多数のポリマー鎖および10%〜90%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子液内に懸濁を形成させる工程;一つまたは複数の作動物質を残りの吸収されていない液体に溶解または懸濁させる工程;および形状維持性凝集体の形状となるまで吸収されていない液体を除去する工程を含む。
【0022】
上記の方法において、本発明の1つの局面では、作動物質は、モノマーの重合後に残りの吸収されない液体に溶解または懸濁される。その結果、作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有しない10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0023】
上記の方法において、本発明の別の局面では、作動物質は、モノマーの重合の前に液体に溶解または懸濁される。その結果、作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0024】
上記の方法において、本発明の1つの局面では、重合後であるが形状維持性凝集体を形成するために吸収されない液体を除去する前に、作動物質が、吸収されない液体から除去される。その結果、作動物質を含有しない10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0025】
本発明の1つの局面では、形状維持性凝集体はゴム状弾性(elastomeric)である。
【0026】
本発明の1つの局面では、モノマーは、2-アルケン酸(alkenoic acid)、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニル(vicinyl)エポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される。
【0027】
本発明の1つの局面では、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される。
【0028】
本発明の1つの局面では、モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである。
【0029】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および吸収されない液は、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される。
【0030】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および非吸収液は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレートおよびソルビトールからなる群より独立して選択される。
【0031】
本発明の1つの局面では、吸収される液体は水である。
【0032】
本発明の1つの局面では、吸収されない液体は水である。
【0033】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および吸収されない液体は水である。
【0034】
本発明の1つの局面では、ヒドロゲル粒子は0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む。
【0035】
本発明の1つの局面では、架橋剤は、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される。
【0036】
本発明の1つの局面では、架橋剤は、α-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される。
【0037】
本発明の1つの局面では、多数のヒドロゲル粒子は、狭い多分散性を有するものである。
【0038】
本発明の1つの局面では、ヒドロゲル粒子は、帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである。
【0039】
本発明の1つの局面では、多数のヒドロゲル粒子は、二つもしくはそれ以上の異なる大きさの粒子および/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を含む。
【0040】
本発明の1つの局面では、架橋されたポリマー鎖が、約25,000〜約2,000,000の平均分子量を有する。
【0041】
本発明の1つの局面では、凝集体は分解性である。
【0042】
本発明の1つの局面では、凝集体のヒドロゲル粒子は分解性である。
【0043】
発明の詳細な説明
表の簡単な説明
表1は、(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)-メタクリル酸(MAA)コポリマーヒドロゲル粒子のサイズの、MAA含量および重合pHの関数としての比較である。
【0044】
表2は、HEMA-(モノマー)コポリマーヒドロゲル粒子のサイズの、種々のモノマーの含量および重合pHとの関数としての比較である。
【0045】
表3は、エチレングリコールジメタクリレート架橋(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子に取り込まれた種々の物質の重量パーセントを示す。
【0046】
表4は、ポリHEMAヒドロゲル粒子から形成された凝集体、ポリ(HEMA-10% MAA)コポリマーから形成された凝集体、およびポリHEMAのバルクヒドロゲルの反発力および弾力性(springiness)の比較を示す。
【0047】
表5は、10分の緩和の後の表4にある物質の回復力および弾力性を示す。
【0048】
表6は、本発明の凝集体の(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子間の空間に捕捉された種々の物質の重量パーセントを示す。
【0049】
定義
本明細書で用いられる用語「ヒドロゲル」は、それ自体は水に溶けないが、多量の水を吸収および保持することができ、安定した、しばしば柔らかくしなやかな構造を形成する三次元ポリマー構造物をいう。
【0050】
本明細書で用いられる「ヒドロゲル粒子」は、個別の形状にある微小量またはほぼ微小量のヒドロゲルをいい、必ずしもそうではないが、通常は球形または実質的な球形である。
【0051】
本明細書で用いられる用語「凝集体」は、限定はしないが水素結合のような粒子間の力または粒子-液体間の力により共に保持された多数のヒドロゲル粒子から構成されるバルク物質をいう。
【0052】
本明細書で用いられる用語「形状維持性のある」は、切断または成形される場合、または他の特定の三次元形状に適合させられる場合、水和した状態と同一の形を維持するヒドロゲル凝集体をいう。
【0053】
本明細書で用いられる用語「ゴム状弾性の(elastomeric)」は、その元の長さの少なくとも200%に引き伸ばすことができ、応力が取り除かれたとき、すぐにそのおよそ元の長さに戻るヒドロゲル凝集体をいう。
【0054】
本明細書で用いられる用語「モノマー」は、それ自体と反応することができ、繰り返し単位の高分子を形成するような小さい化学的構成要素をいう。高分子は、ポリマーと呼ばれる。二つまたはそれ以上のモノマーは、各モノマーが何回も繰り返されるポリマーを形成するような反応をすることができる。後者のポリマーは、それらが1つより多くのモノマーを含むという事実を反映してコポリマーといわれる。
【0055】
本明細書で用いられる用語「多分散性」は、本発明の方法を使用して得られたヒドロゲル粒子の直径の範囲をいう。「狭い多分散性」は、平均直径から10%未満の偏差である直径の範囲を有する多数のヒドロゲル粒子をいう。
【0056】
本明細書で用いられる語句「二つまたはそれ以上の異なるサイズ」は、二つまたはそれ以上の多数のヒドロゲル粒子をいい、それぞれの多数の各粒子は、他の粒子の各々と異なる平均直径を有する。
【0057】
本明細書で用いられる「二つまたはそれ以上の異なる化学組成」は、それぞれの多数の粒子が、異なるモノマー、二つまたはそれ以上のモノマーが使われている場合は異なる比率のモノマー、および/または異なる架橋剤から形成される場合の二つまたはそれ以上の多数のヒドロゲル粒子をいう。
【0058】
本明細書で用いられる用語「分解性の」は、本発明の凝集体およびヒドロゲル粒子のある特徴をいい、その特徴が、選択された化学条件および/または物理条件(例えば、限定されないが、温度、磨耗、pH、イオン強度、電圧および/または電流、酸性度、塩基性度、溶剤効果など)の下で構造的な安定性を失うことをいう。
【0059】
本明細書で用いられる用語「溶解される」は、本発明の液体で溶液を形成する物質をいう。溶液とは、成分が均一および安定して分布する単一の相を形成する混合物をいう。
【0060】
本明細書で用いられる用語「懸濁される」は、本発明の液体には溶けないが、液体中で比較的均一に、しかし不安定に分布する物質の個々の粒子からなる第2の相を形成する物質をいう。「不安定に」とは、静置しておけば時間が経つにつれて、または遠心分離、ろ過などの外力の下で分離される相を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる「作動物質(working substance)」は、その物質に適合した特定の目的、目標、操作またはプロセスを達成するために、本発明のヒドロゲル粒子または凝集体に入れられる任意の物質をいう。作動物質の例としては、薬剤、農薬、放射線不透過性物質、放射性物質、顔料、染料、金属、半導体、ドーパント、化学的中間体、酸、塩基、ならびに遺伝子、タンパク質、抗体、抗原、ポリペプチド、DNA、RNA、およびリボザイムのような生物物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で用いられる「金属」は、その光沢、展性、導電性、および陽イオンを形成する能力によって区別される元素群の周期表に位置する元素をいう。特に、本発明の目的のため金属は、遷移元素すなわち周期表のIB族、IIB族、IIIB族(希土類金属およびアクチニド金属を含む。)、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族およびVIII族をいう。
【0063】
本明細書で用いられる用語「貴金属」は、金、銀、プラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウムおよびイリジウムをいう。
【0064】
本明細書で用いられる「合金」は、金属の特性を有し、二つまたはそれ以上の元素で構成され、その元素のうち少なくとも一つが金属でなければならない物質をいう。合金の例としては、青銅、真鍮およびステンレス鋼を含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で用いられる用語「酸化状態」は、金属イオンにおける帯電であって、元素の原子による電子の損失の結果である帯電をいう。したがって、「ゼロ酸化状態」または「基底状態」は、電子が定足数を満たしている金属それ自体である。「1価の酸化状態」は、陽子の帯電と等しい1価の正電荷であり、1つの電子の損失の結果として生じるものを示す。「2価の酸化状態」は、2つの陽子のそれと等しい正電荷であり、2つの電子の損失の結果として生じるものなどを示す。
【0066】
本明細書で用いられる「半導体元素または半導体化合物」は、絶縁体と金属(導体)との中間の電気抵抗値(すなわち、約10-2〜109Ωcm)を有する結晶性物質をいう。ある条件下では半導体は電気を伝えるが、他の条件下では電気を伝えない。おそらく最もよく知られた半導体要素はシリコンである。半導体元素の他の例としては、アンチモン、ヒ素、ホウ素、炭素、ゲルマニウム、セレン、硫黄およびテルルが含まれるが、これらに限定されない。半導体化合物の例といては、ヒ化ガリウム、アンチモン化インジウムおよびほとんどの金属の酸化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
「ヒドロキシ」基は、OH基をいう。
【0068】
「エーテル」はR-O-R'基をいい、RおよびR'が、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロ脂環式炭素原子であるものをいう。
【0069】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素をいう。好ましくは、アルキル基は、1個から20個の炭素原子からなる。(例えば「1〜8」または「1から8」のように数の範囲が本明細書中で示される場合は常に、その基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子など、8つの炭素原子までを含めてなり得ることを意味する)。より好ましくは、本発明のアルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中サイズのアルキルである。最も好ましくは、それは1から4個の炭素原子を有する低級のアルキルである。アルキルの大きさは、式(aC-bC)アルキルによって示すことができる。ここで、aおよびbは1から20まで整数であり、アルキル鎖の中に何個の炭素原子があるかが示される。例えば、(1C-4C)アルキルは、1つ、2つ、3つ、または4つの炭素原子からなる直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルをいう。アルキル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0070】
「シクロアルキル」基は、全ての員が炭素の3員から8員までの単一環である。例えば、記号(3C-6C)シクロアルキルは、3員、4員、5員、または6員の全ての員が炭素の環をいう。シクロアルキル基は一つまたは複数の二重結合を含むかもしれないが、完全に共役したπ電子系を含んでおらず、すなわち芳香族ではない。シクロアルキル基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、アダマンタン、シクロヘプタンおよびシクロヘプタトリエンであるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0071】
「アルケニル」基は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素間二重結合を有する、本明細書で定義されるアルキル基をいう。例えば、本明細書で用いられる、(2C-4C)アルケニルは、2つ、3つ、または4つの炭素のアルケニル基をいう。アルケニル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0072】
「アリール」基は、全ての員が炭素の単一環基または縮合した多環基(すなわち、炭素原子の隣接した対を共有する環)をいい、完全に共役したπ電子系を有する。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルであるが、これらに限定されない。アリール基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0073】
「ヘテロアリール」基は、単一環基または縮合環基であり、その中の一つまたは複数の環が、窒素、酸素および硫黄からなる群より選択される一つまたは複数の原子を含み、さらに、完全に共役したπ電子系を確立するのに十分な二重結合を含むものをいう。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールであるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0074】
「ヘテロ脂環」基は、その環の中に窒素、酸素および硫黄からなる群より選択される一つまたは複数の原子を有する単一環基または縮合環基をいう。その環は、一つまたは複数の二重結合を持っていてもよい。しかし、完全に共役したπ電子系を持っていない。ヘテロ脂環式環は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0075】
化学基が「置換されているか、または置換されていない」と記載される場合は、このような置換には、当業者に周知の化学基であって本発明において作成および使用するために必要以上の実験なしで置換される基に共有結合する化学基を含むことが理解される。このような基は、以下に限定されないが、F、Cl、BR、I、-CN、-NO2、-OH、-COOH、-CHO、-NRR'および-ORを含む。ここで、RおよびR'は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロ脂環族である。
【0076】
本明細書で用いられる用語「吸収される」は、本発明のヒドロゲル粒子の内側、すなわち、内部から外表面までの中に取り込まれ、安定して保持される液体をいう。
【0077】
本明細書で用いられる「吸収されない」は、本発明のヒドロゲル粒子の外表面より外部の液体をいう。吸収されない液体が本発明の凝集体に含まれるとき、その液体は凝集体を含むヒドロゲル粒子の間の空間を占める。
【0078】
本明細書で用いられる語句「ヒドロゲル粒子の間の空間」は、図6での領域1をいう。実質的に球形のヒドロゲル粒子は、粒子の周縁が接触し合って、それらが満たすことができないある量の空間を残し、その球形を維持する。粒子が球形であって、密に詰まった場合、空間の体積は球の平均半径の0.414倍であると算出されうる。
【0079】
本明細書で用いられる「架橋剤」は、2官能、3官能または4官能の化学構成成分であり、二つまたはそれ以上の異なるポリマー鎖に取り込まれるモノマー、または分岐した3次元構造をもたらす同じ鎖の中で二つまたはそれ以上の異なる位置にあるモノマーに付く他の官能基と共有結合を形成するものをいう。
【0080】
「水素結合」は、高い電気陰性度を有する原子に共有結合する水素原子と、少なくとも1つの電子孤立対を有する他の電気陰性原子との間の電気的引力をいう。水素結合の強さは約23kJ(キロジュール)mol-1であり、共有結合の強さ(約500kJ mol-1)とファンデルワールス力の強さ(約1.3kJ mol-1)の間にある。水素結合は、化合物自体の分子の間で水素結合を形成できる化合物の物理特性に著しく影響を与える。例えば、エタノールは、酸素原子と共有結合する水素原子を有するが、1対の共有していない電子の対(すなわり、「孤立対」)も持っている。したがって、エタノールは、水素結合が可能である。エタノールは、78℃の沸点を有する。一般に、似た分子量の化合物は、似た沸点を有することを予想される。しかし、正確にエタノールと同じ分子量であるが、それ自体の分子間で水素結合ができないジメチルエーテルは、エタノールより約100℃低い-24℃の沸点を有する。エタノール分子の間の水素結合が、エタノールを分子量が実質的に真の値より高いかのように見せかけている。
【0081】
本明細書で用いられる「帯電している」ヒドロゲル粒子は、粒子のポリマー鎖を作り上げているモノマーのイオン性成分および粒子が置かれている環境により、局在的に正電荷または負電荷を有する粒子をいう。例えば、これに限定されないが、アクリル酸をコモノマーとして含むヒドロゲル粒子は、塩基性条件下では、酸性基の一部または全部がイオン化している、すなわち「-COOH基」が、その中の1つの酸素原子が負電荷を帯びている「-COO-基」になっている。他の例がアミノ(-NH2)基であり、それは、酸性の環境でアンモニウム(-NH3+)イオンを形成する。
【0082】
本明細書で用いられる「生物活性物質」は、生きている生体に薬理学的な効果を与える任意の化学物質をいう。この語には、本明細書で用いられているように、小分子薬に関係する「薬剤」が含まれる。例としては、以下に限定されないが、抗生物質、化学療法剤(特に、プラチナ化合物およびタクソールおよびその誘導体)、鎮痛剤、抗うつ薬、抗アレルギー剤、抗不整脈剤、抗炎症化合物、CNS興奮剤、鎮静剤、抗コリン作用剤、抗動脈硬化剤などが含まれる。薬剤は、局所への使用または全身の使用のために意図することができる。薬剤には、モノクローナル抗体(mab)、fab、タンパク質、ペプチド、細胞、抗原、核酸、酵素、成長因子などの高分子物質が含まれるが、これらに限定されない。他の生物活性物質には、以下に限定されないが、除草剤、殺菌剤および殺虫剤のような害虫等の制御に役立つ化合物が含まれる。さらに本発明の凝集体およびヒドロゲル粒子と一緒に用いることができる生物活性物質は、本明細書中の開示に基づいて当業者には明白である。本明細書で開示されたヒドロゲル粒子、凝集体および方法と共に、このような物質のいずれかまたは全てを使用することは、本発明の範囲内にある。
【0083】
「賦形剤」は、その投与を容易にするために薬剤組成物に加えられた不活性な物質をいう。賦形剤の例としては、以下に限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類および種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。「薬学的に許容される賦形剤」は、生体に重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性および特性を失効させない賦形剤をいう。
【0084】
本明細書で用いられる用語「癌」は、潜在的な分裂細胞からなる事実上任意の組織に生じうる、大きな群の疾患に関連している悪性新生物をいう。癌の基本的な特徴は、成長に関して抑制された制御、浸潤性増殖および転移を通して宿主に対する重大な悪影響をもたらす機能によって明らかにされる、細胞の遺伝性の異常である。
【0085】
本明細書で用いられる「冠状動脈疾患」は、かなり危険な場合、心筋への血液の流れを制限し、最も深刻な場合は、心筋への血液の流れを完全に塞ぐアテローム性動脈硬化症によって起こる冠状動脈の狭窄をいう。
【0086】
本明細書で用いられる「呼吸器疾患」は、肺が適切に作動せず、呼吸が影響を受ける病気をいう。呼吸器疾患の例は、以下に限定されないが、ぜんそく、結核、嚢胞性線維症および肺炎である。
【0087】
本明細書で用いられる「感染症」は、以下に限定されないが、微生物、細菌、ウイルス、ピリオン、菌類、アメーバまたは単細胞動物のような微生物によって伝播される任意の疾患をいう。一般に、感染症は、本来伝染性であって、1人の個人から他者に伝染されることがあり、他者に重大な病気を引き起こすことがあり得る。
【0088】
本明細書で用いられる語句「〜の治療に有用な」は、薬剤が、示された疾患、障害または病状の原因を阻害または好ましくは破壊するか、少なくともその症状を改善することが知られていることを意味する。癌に関しては、薬剤が少なくとも罹患している個人の寿命を延ばすことが知られている。
【0089】
本明細書で用いられる用語「約」は、この語で修飾された数値の±15%を意味する。
【0090】
議論
本発明の形状維持性ヒドロゲル凝集体は、宿主での用途が見出されるべきである。用途としては、農薬、医薬などの化合物のための制御放出溶剤として、例えば医療装置の上のコーティングのような付属物としてとして、それ自体が医療装置として、組織成長マトリックスとして、および組織置換材としての用途が含まれるが、これらに限定されない。生物不活性なポリマーから作ることができ、多量の水を吸収することができる凝集体は、特にインビボでの応用に役立つものである。
【0091】
本発明の凝集体は、ヒドロゲル粒子をそのまま作製することにより、または前もって形成したヒドロゲル粒子を一つまたは複数の液体中で混合することにより形成することができる。どちらの場合も、液体は、個々の粒子によって吸収され、次いで、粒子の周縁が実質的に接触するほど共に近接するまで引き寄せられ、残っている吸収されない液体だけが粒子間の空間にある液体になるまで、過剰の液体は、真空乾燥、空気蒸発、または遠心分離(これらに限定されない)により除去される。凝集体は、水素結合(これに限定されない)のような強い粒子間の引力によって、および粒子と粒子間の空間にある液体との間の水素結合によって、特徴的な形状維持性を実現する。
【0092】
個々のヒドロゲル粒子を作り上げているポリマーの化学組成は操作可能であり、そのため、その粒子の凝集体は非常に安定していて、環境条件または生理条件の下で容易に分解しないようにできる。あるいは、粒子の化学的な組成は、その粒子の凝集体が、予測可能な、制御可能な方法により特定の条件下で分解するようにすることも可能である。例えば、以下に限定されないが、本明細書中の開示から明白であるように、適切なヒドロゲル粒子組成を選択することによって、温度、pH、イオン強度、電流などの種々の状態の下で分解される凝集体を製造することができる。ヒドロゲル粒子それ自体の組成を操作することに加えて、賦形剤を、その形成の間に凝集体マトリックス内に捕捉することができる。賦形剤は選択することができるため、賦形剤が様々な環境条件および/または生理学の条件へさらされることで構造、組成および/または反応性を変えるにつれて、賦形剤を含む凝集体が分解するようにできる。賦形剤は、得られた凝集体に、機械特性、光学特性、導電特性または美容特性(これらに限定されない)のような種々の異なる特性を持たせるためにもまた加えることができる。
【0093】
本発明の1つの態様では、10-9メートル(m、ナノスケール)〜10-6m(マイクロスケール)の範囲の呼び径を有するヒドロゲル粒子が、界面活性剤と水の存在下で、酸化還元重合、フリーラジカル重合または光開始重合により作り出される。この方法で、比較的狭い多分散性(すなわち、直径が狭い範囲にあること)を有する粒子が作り出すことができる。狭い多分散性は、現在、本発明の好ましい態様であるが、いくつかの用途については、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であって本発明の範囲内にあるが、より広い多分散性が望ましいこともあり得る。
【0094】
水和したヒドロゲル粒子の得られた水性懸濁液は処理されて、粒子に吸収される水から未反応のモノマーおよび界面活性剤を取り除くことができる。処理の例としては、以下に限定されないが、透析、抽出、または平行流濾過を含むことができる。同時に、未反応のモノマーおよび界面活性剤を、粒子が懸濁している吸収されない水から取り除くことができる。次いで、精製された粒子の懸濁液を遠心分離機にかけ、過剰の水を除去して、本発明の形状維持性凝集体の中に粒子を圧縮する。ナノ単位またはミクロ単位のサイズの粒子を使うことの利点は、それらが体積に対して高い表面積比を有し、比較的容易に精製できることである。
【0095】
本発明のヒドロゲル粒子およびそれから生じる凝集体の調製に有用なモノマーの好ましい種類としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ヒドロキシ(2C-4C)アルキルメタクリレートおよびヒドロキシ(2C-4C)アルキルアクリレートのようなヒドロキシアルキル2-アルケノエート;2-ヒドロキシエトキシエチルアクリレートおよびメタクリレートのようなヒドロキシ((2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル)アルケノエート;エトキシエチルメタクリレートのような(1C-4C)アルコキシ(1C-4C)アルキルメタクリレート;アクリル酸およびメタクリル酸のような2-アルケン酸(alkenoic acid);エトキシエトキシエチルアクリレートおよびメタクリレートのような(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル)アルケノエート;N-モノ-(1C-4C)アルキルビニルピロリドンおよびN-ジ-(1C-4C)アルキルビニルピロリドンのようなN-ビニルピロリドン;N-(1C-4C)アルキル-2-アルケンアミドおよびN,N-ジ(1C-4C)アルキル-2-アルケンアミド(例えば、N-(1C-4C)アルキルアクリルアミド、N-(1C-4C)アルキルメタクリルアミド、N,N-ジ(1C-4C)アルキルアクリルアミドおよびN,N-ジ(1C-4C)アルキルメタクリルアミド)のような2-アルケンアミド;ジエチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレートのようなジアルキルアミノアルキル2-アルケノエート;ビニルピリジン;ビシナルエポキシ(1C-4C)アルキルメタクリレートおよびビシナルエポキシ(1C-4C)アルキルアクリレートのようなビシナル-エポキシアルキル2-アルケノエート、ならびにそれらの組み合わせ。水素結合することができる他のモノマーは、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0096】
以下に限定されないが、アルキルアルカノエート(例えば、メチルブチレート、酢酸ブチルなど)のような非重合賦形剤を重合反応に加え、得られるヒドロゲル粒子の物理特性および化学特性を改良することができる。
【0097】
現在のところ、好ましいモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどが含まれる。現在のところ、最も好ましいモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)である。
【0098】
上記の好ましいモノマーと併せて使われる現在好ましいコモノマーの例としては、アクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメタクリルアミド、メチルビニルピロリドン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0099】
所望であれば、得られたヒドロゲル粒子の3次元の構造を強くするために、架橋剤を重合反応に加えることができる。以下の架橋剤は非分解性でありうる。非分解性の架橋剤としては、以下のものあるが、これらに限定されない:エチレングリコールジアクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリブチレンメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、ジアリルモノエチレングリコールシトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ジアリルベンゼンホスホネート、トリエチレングリコールとのマレイン酸無水物のポリエステル、ジアリルアコニトレート、ジビニルシトラコネート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびフマル酸ジアリル。他の非分解性の架橋剤は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。本発明のヒドロゲル粒子および凝集体を調製する際に、当技術分野において周知の3次元のポリマーのネットワークを達成するための他の方法が使うことができ、すべてのそのような方法が本発明の範囲内にある。
【0100】
意図される使用のために所望される場合、選択された条件下で分解性であるように、架橋剤を選択することができる。分解性の架橋剤の例としては、以下に限定されないが、酒石酸ジアリル、ピルビン酸アリル、マレイン酸アリル、酒石酸ジビニル、イタコン酸ジアリル、およびイタコン酸のエチレングリコールジエステルが含まれる。
【0101】
現在好ましい種類の分解性の架橋剤は、US Pat.App.Serial No.09/338,404の中で提供されている。この文献は、いずれの図も含めて、本明細書で十分に説明されたかのように参照として本明細書に組み入れられる。これらの架橋剤は、少なくとも2つのカルボキシル基および少なくとも2つの架橋官能基を有する分子で構成されたモノマーまたはオリゴマーである。架橋官能基の少なくとも1つとカルボキル基の1つとの間に、1〜6個の繰り返しを有する分解性のポリ(ヒドロキシアルキル酸エステル)の配列がある。
【0102】
他の態様では、本発明の凝集体は、バルクのヒドロゲルポリマーから調製される。バルクポリマーは、従来の重合技術、例えば、溶液重合、懸濁重合および水性バルク重合(これらに限定されない)によって調製される。そして、得られたポリマーは単離され、残余のモノマーおよび他の任意の望ましくない材料を除去するために処理され、乾燥される。乾燥した、砕けやすいバルクポリマーは、粉砕または微小粉砕などをすることにより細分化する。その破片は産業上公知である技術を用いて、ふるいにかけられる。それらが望ましい量の液体を吸収するまで、望ましいサイズ範囲の粒子は、選択された一つの液体または二つもしくはそれ以上の液体中で攪拌される。
【0103】
本発明での使用のための好ましい液体は、化学的に、特に生物学的に不活性で無毒であり、極性を有し、水混和性のある有機液体である。好ましい液体の例は、以下に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、さらに高級のポリエチレングリコール、および他の水溶性のオキシアルキレンホモポリマー、並びに2000まで、2000以上、好ましくは1600までの分子量を有するコポリマーである。例えば、200〜1000の平均分子量を有するエチレンオキシドのヒドロキシ末端ポリマー、約1500まで(好ましくは約1000まで)の分子量を有する水溶性のオキシエチレンオキシプロピレンポリオール(特にグリコール)ポリマー、プロピレングリコールモノエチルエーテル、モノアセチン、グリセリン、トリ(ヒドロキシエチル)シトレート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、シュウ酸ジ(ヒドロキシプロピル)、酢酸ヒドロキシプロピル、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチレート、液体ソルビトールエチレンオキシド付加体、液体グリセリンエチレンオキシド付加体、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールジアセテートを用いることができる。ヒドロゲル粒子と水素結合が可能な他のヒドロキシ液体およびヒドロキシ/エーテル液体は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0104】
本発明の現在の好ましい態様では、有機液体が約60℃を越える沸点、好ましくは約200℃を越える沸点を有する。これらの液体を使用することにより、複雑で固い凝集体の形成をもたらす。したがって、本発明の凝集体を形成するのに特に有用な有機液体は、水混和性オキシアルキレンポリマーであり、例えば、ポリアルキレングリコール、特にそれらが多数のオキシエチレン(-OCH2CH2-)ユニットおよび約200℃を越える沸点により特徴づけられたポリアルキレングリコールである。
【0105】
本発明の凝集体の化学特性および物理特性に影響を与える基準には、個々のヒドロゲル粒子を形成しているポリマーの分子量、粒子のサイズ、もしあれば架橋剤および架橋密度、用いられる液体の分子量および化学組成が含まれる。例えば、低分子量ポリマーからなるヒドロゲル粒子は、一般に安定して強い凝集体を形成しない。より小さいヒドロゲル粒子は、一般に、徹底的および効果的に溶媒和される凝集体を提供し、より弾力性があるマトリックスを生じさせる。ヒドロゲルポリマーが多量の架橋剤を含む場合、および/または架橋剤が非常に疎水性である場合、得られた分岐ポリマーのネットワークは、液体の吸収を最適にはできない。その結果、劣った凝集体をもたらし、ある場合には、凝集体は結果として生じない。
【0106】
本発明の1つの態様では、ナノサイズまたはミクロサイズのヒドロゲル粒子は、界面活性剤を含む水中で非イオン性モノマーを重合することによって生産される。ヒドロゲル粒子の懸濁液は未反応のモノマーと他の不純物を取り除くために処理される。次いで、凝集体は、粒子が小さな弾性マトリックスの中に自己集合するまで水を除去することによって形成される。その後、凝集体は以下に限定されないが、加圧成形、押出成形、または鋳型成形され得る。凝集体は、水和状態で維持される限り、いつまでもその形を持続する。
【0107】
本発明の他の態様では、種々の程度のイオン性を有するモノマーを、非イオン性モノマーと共に重合して、引き続き凝集体へと合体するヒドロゲル粒子を形成する。これらの凝集体は、適切な環境条件の下で分解する可能性がある。すなわち、個々のヒドロゲル粒子のイオン性が、その周辺の環境のpH、温度、イオン強度、電流などによってこれらの粒子の分解を生じるという結果になり得る。ヒドロゲル粒子の分解が、凝集体の分解を導く。このような本発明の凝集体の制御された分解は、特定の使用のためには望ましい特徴である。
【0108】
個々のヒドロゲル粒子の分解およびそれによる凝集体の分解は、ヒドロゲル粒子の形成において分解性の架橋剤を使うことによっても達成され得る。結果として得られた凝集体は、架橋剤の分解を引き起こす環境条件の下では、本来の性質を示さない。pH、温度、イオン強度および電流(これらに限定されない)の内の選択された条件下で分解する架橋剤を、調製することができる。
【0109】
本発明の凝集体は、多くの用途を有する。とりわけ、選択された標的への生物活性物質の送達は、特に注目すべきである。標的は、商業的作物(例えば、トウモロコシ、綿、大豆、小麦など)への殺菌剤、殺虫剤または除草剤の送達のような(これに限定されない。)農業的なものであってもよい。あるいは標的は、作物が育つ土壌のような成長培地であってもよいし、栄養などの送達を伴ってもよい。標的は、土壌中の環境汚染物質であってもよい。その汚染物質は、本発明の凝集体を使って制御可能に分解することができる。標的は、爬虫類、哺乳動物および鳥のような動物に医薬を送達することを含む獣医的なものでもよい。特に、標的はヒトであってもよく、患者への薬剤の制御および管理された送達を伴う。
【0110】
本発明の凝集体を用いる生物活性物質の送達は、主に2つの方法で、およびそれらの組み合わせで達成することができる。最初のアプロ-チは、過剰の液体が除去されて凝集体が作られる前に、水和したヒドロゲル粒子の懸濁液の中に生物活性材料を溶解または懸濁させることを伴う。水溶性の物質は、凝縮前の大量の液体の均質性を確保するために好ましい。しかしながら、界面活性剤のようなアジュバントが混合物に添加されれば、溶解性に限りのある生物活性物質の懸濁液を比較的均質なものとする。懸濁液が凝縮させられるにつれて、生物活性物質は、凝集体が形成される地点において凝集体の粒子の間の空間を満たす液体で捕捉されるようになる。弾性および形状維持性のある得られた凝集体は、洗浄されて、その表面に付着するいずれの生物活性物質でも除去することができる。所望であれば、次いで凝集体は、意図される用途のために成形され得る。例えば、以下に限定されないが、意図された用途が感染症の治療である場合、凝集体は、直接創傷部に適合させて、その中に抗生物質を放出するように成形することができるであろう。同様に、用途が、癌患者の標的器官へのパクリタキセルまたはシスプラチン(これらに限定されない)ような化学療剤の送達である場合、凝集体は、患部における移植を容易にするように成形することができるであろう。
【0111】
第2のアプロ-チは、ヒドロゲル粒子が形成する前に、生物活性物質を重合媒体に溶解または懸濁させることを伴う。重合が開始されて粒子が形成するとき、生物活性物質を含む液体は、個々の粒子の中に捕捉される。過剰のモノマーおよび界面活性剤を除去するために、上記のように粒子が処理されれば、粒子の中に捕捉されない過剰の生物活性物質もまた除去される。次いで、生物活性物質を含む粒子の懸濁液は、粒子が凝集体へと合体するまで凝縮される。
【0112】
上述したように、2つのアプロ-チを結合することは可能である。すなわち、ヒドロゲル粒子懸濁液の凝縮の前に、過剰のモノマーおよび界面活性剤と共に生物活性物質が除去されるよりむしろ、活性物質が懸濁液に残ることがあり得る。この方法では、得られた凝集体は、個々のヒドロゲル粒子の内部および粒子間に空間の両方で捕捉された生物活性物質を有する。他方、ヒドロゲル粒子の懸濁液は、上記のように精製することができ、次いで、その生物活性物質、所望であれば全く別種の生物活性を、凝縮の前に混合物に再度導入することができる。凝集体の空間内の物質は、通常、粒子内の物質とは非常に異なる速度で放出される。この方法では、広い範囲の送達形状および送達速度を得ることができる。凝集体の個々のヒドロゲル粒子の化学組成を変えることによって、多様性もまた得ることができる。
【0113】
イオン性または分解性の架橋剤の使用(これらに限定されない)のような化学的な改良が、個々のヒドロゲル粒子に組み入れられない場合、凝集体は、本質的に通常の環境条件に影響されない。このタイプの凝集体は、一般に、モノシリックのマトリックスデバイスと同様の放出速度(すなわち、物質の最初の爆発的な放出に続いて、時間経過につれて指数関数的に減少する)を提供する。しかしながら、ヒドロゲル粒子が送達部位で遭遇する環境条件下で分解するように設計された場合、および生物活性物質が粒子の分解の際にのみ凝集体から放出される場合、非常に優れた送達速度の制御が可能となる。非常に小さい細孔なので、凝集体が原型のままであれば、捕捉された活性物質が通り抜けられないような細孔を有する凝集体を生じさせるサイズの粒子を使うことによって、活性物質放出がヒドロゲル粒子の分解の際にのみ起こることは確実である。同様に、粒子の中で捕捉された活性物質が、欠損している粒子分解から逃れることができないように、個々の粒子を形成することができる。
【0114】
上記のことに加えて、水溶性の添加物を凝集体に加え、分解速度、つまり捕捉された活性物質の放出速度を変えることができる。さらに、陽イオン性電荷および/または陰イオン性電荷を含む粒子を非イオン性のヒドロゲル粒子と混ぜて、周辺のイオン性または外部の電荷の存在を含む種々の条件下での、凝集体の制御された分解を提供することができる。電荷を有する化学種を含むことにより、静電気電荷の相互作用による凝集の効率もまた増進することができる。
【0115】
上記の手順の一つまたは複数の手順を使えば、ゼロ次、または少なくとも擬似ゼロ次の放出速度が達成可能となるはずである。
【0116】
本発明のヒドロゲル粒子または凝集体で捕捉され得る物質のタイプおよび量は様々な要因に依存する。物質は、その大きさ、表面電荷、極性、立体相互作用などのために、凝集体となるヒドロゲル粒子の融合を妨げることができない。ヒドロゲル粒子のサイズは、取り込むことのできる物質の量に影響を与える。すなわち、粒子の大きさを適切に選択することによって、得られる凝集体の細孔の大きさを、個別の抗生物質分子のような小さい物質またはモノクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、または他の高分子のような非常に大きい物質を保持するように操作することができる。
【0117】
本明細書の方法を用いることで、物質送達、特に送達速度の精巧な制御が達成可能となるはずである。すなわち、様々なサイズおよび化学組成のヒドロゲル粒子が、特定の物質を充填することができ、様々な粒子の分解特性によって、物質は、事実上任意の所望の期間にわたって放出することができる。さらに、いくつかの物質はヒドロゲル粒子で包まれることができ、また、いくつかの物質は、凝集体の粒子間の空間に捕捉されて、さらに大きな送達の柔軟性を提供することができる。様々な物質が、通常それらが適合性がなくとも、様々なタイプの粒子に充填されて、順次にまたは同時に放出することができる。順次に放出することで適合性のない物質が互いに遭遇するのを防ぎ、一方、同時に放出することで物質が放出部位において相互作用すること可能とする。後者のシナリオは、二つまたはそれ以上の、結合時に非常に効力がある薬物を形成する生物活性を持たない物質または最小限の生物活性のある物質の場合に特に有用である。前駆体を含む凝集体が、薬物の効果が副作用を最小にすることを要求される部位に送達されるまで、活性のある薬物の形成は延期される。
【0118】
したがって、本発明は、非常に用途が広い薬物送達の基盤を提供する。薬物または薬物の組み合わせは、延長された期間にわたって送達されうる。次のものが放出される前に、1つのものがその効果を持って分散することができるように、薬物の組み合わせが順次に送達される。薬物の組み合わせは、相乗的に相互作用するために同時に放出することもできる。他の用途は、本開示に基づいて当業者に明白であり、このような用途は、本発明の範囲内にある。
【0119】
本発明の凝集体について可能性がある用途のもう1つの領域は、組織の足場(tissue scaffolding)である。凝集体の多孔質構造は、実質的な成長を可能にする組成物、一般的な微小孔のあるバルクヒドロゲルには見いだせない特性を提供する。加えて、本明細書における凝集体は、従来のバルクヒドロゲルの値より著しく大きく、ある場合には人工軟骨の特性に匹敵する弾性、せん断、および体積弾性率のような物理特性を示す。さらに、本発明の凝集体を成形および積層する能力は、組織の足場内の特定の場所における成長因子の放出を最適化するために使うことができる。可能な整形外科の応用としては、軟骨修復および骨修復、メニスカス修復/交換、人工背骨椎間板、人工腱、人工靭帯および骨欠陥充填材が含まれる。
【0120】
本明細書における凝集体の形状維持特性は、多数の他のインビボでの用途を示唆する。例えば、薬剤の入ったまたは入っていない凝集体は、柔らかいコンタクトレンズに成形することができる。創傷包帯または皮膚ドナー部位包帯は、それに含まれている抗生物質または他の薬の有無にかかわらず、本凝集体から製造することができる。凝集体は、内在する薬の入っている、または薬の入ってないカテーテルまたはステントの中に形成することができた。多数の他のこのような用途は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0121】
本発明の凝集体についての他の用途には、所定の時間の間隔にわたって時間経過による物質形態の変更を必要とする応用において、いくつかの粒子が分解するような粒子の混合物を使うことが含まれる。また、凝集体は、ヒドロゲル粒子の混合物および他のタイプの粒子、例えば、金属、放射性粒子、半導体、非ヒドロゲル形成ポリマー、セラミックス、着色剤、UVフィルターおよびIRフィルター、放射線不透過性金属などの粒子で構成される。
【0122】
例えば、以下に限定されないが、金属は、ヒドロゲル粒子の中、凝集体内の空間の中またはその両方に捕捉することができる。金属は、凝集体に様々な程度の導電性を与える。金属は、イオン、すなわち、ゼロ以外の酸化状態にある金属として取り込むこともまたできる。同様に、これらのイオンもまた、凝集体に様々な程度の導電性を与える。逆に、ヒドロゲル粒子または凝集体には、半導体金属または半導体化合物を注入することができる。いくつかのヒドロゲル粒子は金属を取り込むことで導電体となるが、半導体材料を取り込むことで半導体となるいくつかのヒドロゲル粒子でできた形状維持性半導体凝集体または同等の凝集体は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)装置およびNEMS(Nano Electro Mechanical System)装置での用途を見いだすべきである。磁性ポリマーまたは磁性金属粒子のような磁性物質を捕捉することで、3次元コンピュータメモリ装置を提供することができる。凝集体の粒子内にポリヌクレオチドセグメントを取り込むことで、生物工学の産業で使用するための3次元配列分析ツールを導くことができる。本発明の形状維持性のある凝集体についてのこれらの使用および他の使用は、本明細書中の開示に基づいて当業者には明白である。このような使用は、本発明の範囲内にある。
【実施例1】
【0123】
架橋されたHEMAナノ粒子の調製
攪拌棒を装着した500mLのメディアボトルに、4.52g(34.8mmol)のHEMAモノマー、77.74mg(0.428mmol)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、0.2123g(0.634mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および240mLのmilli-Q水を充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.166gのK2S2O8を21mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。得られたヒドロゲル粒子の懸濁液は、乳白がかった青色を呈していた。粒子は動的光散乱によって分析し、図1に示されるように、36.5nmの平均半径を有することが判明したた。粒子は、平行流濾過によって精製し、水性懸濁液で保存される。綿状沈殿は、数カ月にわたって観察されなかった。
【実施例2】
【0124】
HEMAナノ粒子の大きさ変化
実施例1の手順に続いて、界面活性剤に対するモノマーの比率を変化させた。界面活性剤に対するモノマーの比率を増加させることで、レーザー光散乱によって証明されるように、より大きい粒子が重合の間に形成する結果となった。SDS界面活性剤のモルパーセントの変更によるHEMA粒子のサイズの変化は、図2に示される。
【実施例3】
【0125】
HEMAナノ粒子の中へのコモノマーの取り込み
攪拌棒を装着した250mlのメディアボトルに、2.22g(16.53mmol)のHEMAモノマー、74.9mg(0.87mmol)のMAA、38.87mg(0.214mmol)のエチレングリコールジメタクリエート(EGDM)、0.107g(0.317mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および120mLのmilli-Q水を充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.083gのK2S2O8を10.5mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。粒子は、平行流濾過によって精製した。メタクリル酸を、全体のモノマーの5モル%、10モル%、20モル%、および30モル%で、ドデシル硫酸ナトリウムの様々な濃度において取り込ませた。表1は、メタクリル酸の濃度および緩衝液のpHを変えることによる、粒子のサイズの変化を示す。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例1の合成法を使って、他のコモノマーをHEMAと共に重合し、2-アミノエチルメタクリレート・HCl、トリメチルアミノエチル-メタクリレート・HClおよびメタクロイルローダミン-B蛍光性モノマーを含むヒドロゲル粒子が形成される。表2は、異なるpHにおいて合成されたHEMA-コモノマー粒子について、光散乱により決定された比較サイズを示す。
【0128】
【表2】
【0129】
図2は、1mol%のコモノマーメタクロイルローダミンb(Polyfluor 540(登録商標))を含むHEMAナノ粒子の紫外-可視スペクトルを示す。340nmにおける広い吸収バンドは、ローダミン-Bの励起に特有である。ナノ粒子はまた、紫外線励起の下でオレンジ色の蛍光を示す。
【実施例4】
【0130】
分解性のHEMAナノ粒子の形成および特徴づけ
攪拌棒を装着した250mLのメディアボトルに、2.22g(16.53mmol)のHEMAモノマー、74.9mg(0.87mmol)のメタクリル酸、167mg(0.214mmol)の(MA-pEG3-4Gly)2Suc、0.107g(0.317mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および120mLのmilli-Qを充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.083gのK2S2O8を10.5mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。得られた溶液は、乳白がかった青色を呈した。ヒドロゲル粒子を光散乱によって確認した。ヒドロゲル粒子は、68.4nmの平均半径を有した。
【0131】
所与のpHと温度において長い時間にわたる大きさの変化を観察することによって、粒子分解を検討した。一般的な分解の研究は、37℃でインキュベートされたpH7.4のリン酸緩衝食塩水(120mmol塩化物)中での0.1mg/mLの濃度のヒドロゲル粒子溶液を伴う。アリコートを周期的に取り出し、粒子の平均半径を動的光散乱によって決定した。分解性の架橋剤の様々な濃度におけるHEMA-co-MAAの粒子半径の変化を示すプロットが、図5に示される。
【実施例5】
【0132】
重合中のヒドロゲルナノ粒子の中への分子の取り込み
ブロモクレゾールグリーン、2-エチルヘキシルトランス-4-メトキシシンナメート、ピロカルピン、フルオレセイン標識化ウシ血清アルブミン(FITC-BSA)および西洋ワサビペロキシターゼ(HRP)をポリHEMAヒドロゲル粒子で捕捉した。表3は、相対的な上記の化合物の充填率を、EGDMで架橋された(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子に含まれる質量パーセントとして示す。
【0133】
【表3】
【0134】
重合前に溶液中の各化合物の最初の濃度を計算して、重合後に上清中の各濃度を分析することによって、充填量を決定した。
【実施例6】
【0135】
遠心分離によるナノ粒子凝集体の形成
ポリHEMAヒドロゲル粒子(20mL)の0.4%(w/w)懸濁液を、ポリカーボネート遠心分離チューブにいれ、100,000×Gにおいて30分間回転させた。ヒドロゲル粒子は、チューブの一番下に頑丈なプラグを形成した。プラグは青みのある乳白色を示し、弾性を示した。このような凝集体の形成を示す略図が図6で示される。狭い多分散性のナノ粒子から形成される場合、凝集体は多結晶回折を示す。図7は、光散乱によって、52nmの半径および11nmの半値全幅を有するHEMAヒドロゲル粒子凝集体の薄いシートのUV-可視吸収スペクトルを示す。スペクトルは、光結晶固体のブラッグ回折特性を示す鋭い吸収バンド特性を示す。
【0136】
凝集体を種々のコモノマーを含むヒドロゲル粒子から形成した。それぞれの場合で、得られた凝集体は、架橋されたバルクポリHEMAヒドロゲルに似た弾性特性および強度を示した。図8はバルクポリHEMA、ポリHEMAナノ粒子凝集体およびコポリマー(HEMA:MAA)(90:10モル比)で構成された凝集体についての1組の歪み/緩和カーブを示す。プロットは、バルクポリHEMAが最初の圧入(indentation)研究の凝集体より高い復元力および弾力性(springiness)を有することを示している。しかし、10分の緩和の後に同じ場所での2番目の圧入研究においては、凝集体は優れた特徴を見せる。表4は、最初の凹み(denting)研究での圧力/歪みカーブを示す。
【0137】
【表4】
【0138】
上のデータは、凝集体がバルクポリHEMAで見いだされる回復力の約50%を有することを示す。バルクポリHEMAフィルムと比較された場合、弾力性率によって決定される長い時間にわたって返されたエネルギーは、凝集体に対してより低かった。10分の緩和の後の第二の凹み研究について、表5に圧力/歪みカーブを示す。
【0139】
【表5】
【0140】
表5のデータは、バルクHEMA膜の特性が維持されている間に、回復力と返されたエネルギーが、最初の圧縮の後に凝集体膜に対して増加することを示す。
【実施例7】
【0141】
遠心分離によって積層されたナノ粒子凝集体の形成
ポリHEMAナノ粒子を超遠心分離することで、体積約3cm3、質量約3.2gの凝集体が形成した。2番目の部分であるコポリマー(HEMA:MAA:メタクロイルローダミン-B)(モル比89:5:1)からなるナノ粒子を、第1の凝集体の上で遠心分離した。得られた複合凝集体は、均一のバルク物質として表れ、はっきりとした線が下層にある青色の凝集体とピンクの染料を含む粒子とを分離した。機械的刺激では、2つの層の分離を誘発できなかった。
【実施例8】
【0142】
蒸発による凝集体薄膜の形成
0.1mg/mLのヒドロゲルナノ粒子水溶液30mLを10cmの直径の浅いペトリ皿の中に分けて、薄膜を形成させた。水を空気中またはデシケーター内の真空の下で蒸発させた。厚さ約2.5μmの透明な薄膜が皿の上に形成された。膜を光学的に透明な板として1枚取り上げた。膜を再水和して、弾力特性のある青い乳白色の膜を形成させた。
【実施例9】
【0143】
非分解性ナノ粒子凝集体の侵食
質量1.5gのEGDMで架橋されたコポリマー(HEMA-MA)ナノ粒子からなる凝集体を、37℃において15mLのリン酸緩衝食塩水(120mmol 塩化物、pH7.4)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。バルク凝集体を周期的に計量し、その質量をその最初の質量の百分率としてプロットした。図9は、ポリHEMAナノ粒子凝集体およびEGDMで架橋されたコポリマー(HEMA:MAA)ナノ粒子凝集体についての侵食速度を示す。
【実施例10】
【0144】
分解性のナノ粒子凝集体の侵食
質量1.5gの(MA-PEG3-4Gly)2Sucで架橋されたコポリマー(HEMA:MAA)(90:10モル比)ナノ粒子からなる凝集体を、37℃において15mLのリン酸緩衝食塩水(120mmol 塩化物、pH7.4)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。凝集体を周期的に計量した。さまざまな量の分解性の架橋剤を含む凝集体に対する、時間による質量の変化をプロットしたものを図10に示す。
【実施例11】
【0145】
凝集体のナノ粒子間の空間への高分子の取り込み
種々の分子量を有する高分子を、凝集体を構成しているナノ粒子の間の空間で捕捉した。その高分子の溶液を約1mg/mLの濃度で形成し、約60mg/mLの濃度に水和したナノ粒子と混ぜた。その溶液を遠心分離機に入れ、30分間100,000×Gにおいて回転させた。得られた凝集体を取り出して、高分子の制御放出を調べた。充填率を、元の溶液濃度から凝集体形成の後の上清溶液由来の高分子濃度を引くことによって、決定した。表6は、いくつかの高分子についての充填率を示す。
【0146】
【表6】
【実施例12】
【0147】
侵食速度の変化による高分子放出の制御
粒子のイオン特性を変更することによって、凝集体内のヒドロゲル粒子の間の空間に捕捉された高分子の放出速度を制御することができる。よって、HEMA:MAAの比が90:10であるコポリマーを使って、約40nmの粒子を作った。20mLのmilli-Q水中の60mg/mLの水和コポリマーナノ粒子懸濁液の中に1mg/mLのFITC-BSA溶液を調製した。溶液/懸濁液は室温において1時間50,000×Gにおいて遠心分離機で回された。得られた凝集体は、黄色であり、これを取り出した。元の溶液濃度から溶液中に残留したFITC-BSAを引くことによって、充填率を決定した。この凝集体の充填率は、約7重量%であることを計算した。UV-可視分光法で決定してFITC-BSAを全く含まないようになるまで、その凝集体を5つの10mLアリコートで洗浄した。凝集体を、37℃において21mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4、NaCl濃度=120mmol/L)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。周期的にアリコートを取り出し、UV-可視分光法により分析した。図11は、長い時間にわたる凝集体からのFITC-BSAの放出を示す。凝集体のヒドロゲル粒子内のメタクリル酸モルパーセントを変えることで、FITC-BSA放出に明確な速度の変化をもたらす。
【実施例13】
【0148】
サイズを変えた高分子の凝集体からの放出速度変化
凝集体内のナノ粒子間の隙間の最小サイズは、密に詰めた配置にある粒子の半径の0.414倍である。このことは、凝集体からの物質のサイズおよび拡散速度を制限する。そこで、実施例10および11で記載された充填技術を使って、12kD、19.5kD、38kDおよび456kDの平均分子量のFITC標識化デキストラン分子を、40nmの直径のポリHEMAナノ粒子で構成された凝集体に充填した。デキストランの放出をUV-可視分光法で追跡した。様々な分子量デキストランマーカーに対する、長い時間にわたる凝集体からのデキストラン放出率のプロットを図12に示した。
【実施例14】
【0149】
線形ポリHEMAマイクロ粒子の形成
70gの抽出および蒸留されたHEMAを、0.175gの過硫酸アンモニウムを含む65gの水および0.175gのメタ重亜硫酸ナトリウムを含む65gの水と混合した。混合物を完全に混ぜて、ポリエチレン熱シールバッグに移し、溶液中に20分間N2を泡立てて入れた。バッグを密封した後に、溶液を24時間室温において静置の状態で重合した。柔軟な、水和したかたまりを小さい小片に切断し、24時間の連続攪拌の下で水中で濾過して、未反応のモノマーを取り除いた。物質をペトリ皿に移し、フード内で風乾した。乾燥して砕けやすい得られた物質をブレンダーで小さい小片に砕き、次に、ラブグラインダー(lab grinder)でさらに粉砕して、粒子のサイズをさらに小さくした。粉砕された物質をふるいにかけ、狭い範囲の様々な粒子サイズとした。サイズ分布を光学顕微鏡で分析すると、50μm未満、50〜150μm、150〜250μm、および250μmより大きいの4つのグループがあることが判明した。水に入れると、粒子は膨張し、体積で平均14〜18%増加した。
【実施例15】
【0150】
架橋されたポリHEMAマイクロ粒子の形成
70gの抽出および蒸留されたHEMAおよび0.7gのジメタクリル酸エチレングリコールを、0.175gの過硫酸アンモニウムを含む65gの水および0.175gのメタ重亜硫酸ナトリウムを含む65gの水と一緒にした。混合物を完全に混ぜて、ポリエチレン熱シールバッグに移し、溶液中に20分間N2を泡立てて入れた。バッグを密封した後に、溶液を24時間室温において静置の状態で重合した。柔軟な、水和したかたまりを小さい小片に切断し、24時間の連続攪拌の下で水中で濾過して、未反応のモノマーを取り除いた。物質をペトリ皿に移し、フード内で風乾した。乾燥して砕けやすい得られた物質をブレンダーで小さい小片に砕き、次に、ラブグラインダー(lab grinder)でさらに粉砕して、粒子のサイズをさらに小さくした。粉砕された物質をふるいにかけ、狭い範囲の様々な粒子サイズとした。サイズ分布を光学顕微鏡で分析すると、50μm未満、50〜150μm、150〜250μm、および250μmより大きいの4つのグループがあることが判明した。水に入れると、粒子は膨張し、体積で平均5〜11%増加した。
【実施例16】
【0151】
ナノ粒子およびマイクロ粒子の凝集体の成形
バルクの架橋ポリHEMAヒドロゲルとは異なり、ポリHEMAのマイクロ粒子およびナノ粒子の凝集体を種々の形に成形することは可能である。これは、実施例1および2で記述された水性重合から作られたナノ粒子、並びに実施例14および15で作られたマイクロ粒子について実証されている。したがって、水和したナノ粒子の懸濁液を100,000×Gにおいて遠心分離機チューブ中で回転させた。形成した凝集体を取り出し、2つのポリカーボネートブロックの間に入れた。500kg/cm2を越える静圧を加えた。凝集体をこの圧力の下で30分間そのままにしておいた。凝集体は圧縮されて薄膜になった。バルクの架橋ポリHEMAに対しての同様の実験では、不可逆な分裂をもたらした。0%〜30%のコモノマーを含み、20〜1000nmの直径を有するポリHEMAのヒドロゲル粒子を調製し、その粒子が同様に加圧下で成形可能であることを見出した。実施例14のタイプである線形マイクロ粒子は、150μm〜250μm(乾燥粒子平均サイズ分布)までのサイズについては成形変形可能であることが判明した。250μmを超える粒子は分解した。平均サイズが150μmを超えない場合、実施例15でのタイプである架橋マイクロ粒子は成形可能であることが判明した。
【0152】
結論
本発明のヒドロゲル粒子凝集体は、以下に限定されないが、形状維持性、弾性、所望であれば広い範囲での用途(生物活性物質の制御放出、インビボでの医療装置、組織成長の足場および組織交換材が含まれるが、これらに限定されない)に対して非常に有用となる制御可能な細孔サイズおよび制御可能な分解速度を含む特有の特性を示すことは理解される。特定の態様と実施例が記述されているが、当業者は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、種々の修正と変更が可能であることを認識する。
【0153】
他の態様は、特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の重合方法によって形成されるポリHEMAヒドロゲル粒子のサイズ分布グラフである。
【図2】反応で使用された界面活性剤のモル%の関数としての、本発明の重合方法によって形成されるポリHEMAヒドロゲル粒子の半径のグラフである。
【図3】(HEMA-1%メタクロイルローダミン-B)コポリマーヒドロゲル粒子から得られる紫外-可視吸収スペクトルを示す。
【図4】分解性の架橋剤である(メタクロイル(ポリエチレングリコール)3-4グリコリル)2スクシネート(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucの化学構造を示す。
【図5】37℃およびpH7.4における、(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucで架橋された(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子の経時的な分解を示す。
【図6】狭い多分散性のヒドロゲル粒子懸濁液の遠心分離による、本発明の凝集体の形成の略図である。
【図7】狭い多分散性ポリHEMAヒドロゲル粒子から形成される薄いシートの凝集体が、多結晶様構造を有することを指示するブラッグ回折を示す。
【図8A−B】ポリHEMAヒドロゲル粒子からなる本発明の凝集体および(HEMA-10%MAA)コポリマーヒドロゲル粒子からなる本発明の凝集体である、バルクポリHEMAの歪み曲線(8A)および緩和曲線(8B)の図による比較である。
【図9】37℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)の中で毎秒60サイクル(cps)の攪拌下における、エチレングリコールジメタクリレートで架橋されたMAAの含有量の変化についてのHEMA-MAAコポリマーヒドロゲル粒子の表面侵食速度と、ポリHEMA凝集体の表面侵食速度とを図により比較したものである。
【図10】37℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)の中で毎秒60サイクル(cps)の攪拌下の、ポリHEMA凝集体、および(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucで架橋されたHEMA-10%MAAコポリマーヒドロゲル粒子の表面侵食速度を図により比較したものである。
【図11】37℃におけるpH7.4のPBSで60cpsの攪拌からなる条件下で、HEMA-MAAコポリマーヒドロゲル粒子の凝集体に捕捉されたFITC-BSAの経時的な放出をプロットしたものである。
【図12】37℃におけるpH7.4のPBSの中で、60ナノメートル(nm)の呼び径を有するポリHEMAヒドロゲル粒子の凝集体からの、種々の分子量のFITC標識デキストランの経時的な放出をプロットしたものである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機化学、ポリマー化学、薬化学および材料科学の分野に関する。特に、本発明は、形状維持性を有するヒドロゲル粒子凝集体およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
以下の議論は、本発明を理解する際において読者を助ける背景となる情報として提供され、本発明の先行技術であるとすることを意図せず、または解釈されるべきではない。
【0003】
ゲルは、液体を吸収した3次元のポリマーのネットワークであり、安定してして、通常柔らかくしなやかな、ゼロ以外の剛性率を有する組成物を形成する。液体は、その組成物の全体積の相当なパーセントを占めている。液体が水であるとき、ゲルはヒドロゲルと呼ばれる。その独自の組成により、すなわち、主として生物学的に不活性なポリマーマトリックスの中に吸収される水により、ヒドロゲルは多数の生物医学的な応用での使用が見いだされてきた。
【0004】
例えば、ヒドロゲルは、ソフトコンタクトレンズ産業の事実上の根幹をなす。またヒドロゲルは創傷包帯としても用いられ、治療プロセスにおいて補助するためにマトリックスから放出される医薬が組み込まれるものと組み込まれないものの両方がある(U.S.Patent Nos.3,963,685および4,272,518)。ヒドロゲルは、吸水時の膨張に基づいて尿失禁の処置のための人工括約筋として用いられる(Sefc,et al.,Biomaterials,2002,23:3711)。またヒドロゲルは、血液フィルターのような医療装置の湿潤性をよくするためのコーティングとしても使われる(U.S.Pat.5,582,794)。さらにヒドロゲルは、生物活性物質を持続的に放出するための溶剤としての重要な用途が見出されている。
【0005】
このように、European Pat.App.No.0246653には、部分的に水和して生分解性でないヒドロゲルを放出速度制限バリアとして含む薬剤送達装置が記載されている。U.S.Pat.No.5,292,515には、様々なヒドロゲル組成物を使った親水性の貯蔵薬剤送達装置を調製することについての方法が開示されている。Davidsonらは、黄体化ホルモン放出ホルモンを制御して送達するためのヒドロゲル膜の使用について報告している(Proceed.Inter.Symp.Cont.Rel.Bioact.Materials,1988,15)。
【0006】
上記の全ての例では、使われるヒドロゲルは、バルクポリマー形状すなわち識別できる規則的な内部構造を有しない物質の非晶質の塊である。ヒドロゲルの非晶質的性質は、他の物質とのヒドロゲルの組成の均質性に影響を与える。さらに、バルクヒドロゲルは、水が通って吸収される表面領域に比べて大きな内部体積のために、遅い膨張速度を通常有する。その大きさにより、ヒドロゲルは、生物活性物質を制御して放出するためのものとしては比較的劣る溶剤になる。すなわち、吸収される水の中で溶解または懸濁した物質は、それがマトリックス内のどこに存在するかによって著しく異なる速度でヒドロゲルから拡散する。ヒドロゲルの表面またはその近くにある物質は、容易にゲルマトリックスから離れるが、マトリックス内のより深い物質は、ゲルの外面に達して放出される前に、ずっと長い距離を拡散しなければならない。この状態は、粒子ヒドロゲルを使用することにより、ある程度改善することができる。粒子が十分に小さい場合、その中に分散した物質が表面に拡散して、実質的に同じ速度で放出される。
【0007】
粒子ヒドロゲルは、例えば、これらに限定されないが、直接乳化重合または逆の乳化重合によって、最初から形成することができるか(Landfester,et al.Macromolecules,2000,33:2370)、または粒子ヒドロゲルは、ヒドロゲルを乾かし、得られたキセロゲルを粉砕し、所望の大きさの粒子が得られるように粉砕された材料をふるいにかけることにより、バルクのヒドロゲルから作ることができる。次いで、粒子は、粒子ヒドロゲルを形成するために再水和される。これらのアプローチのいずれかを使うことにより、マイクロ単位(10-6メートル(m))からナノ単位(10-9メートル(m))までの直径を有する粒子を作り出すことができる。上記のとおり、それらの粒子の小さい体積により、粒子の中で捕捉された生物活性物質の所定の任意の分子が、粒子の外面に達するために移動するのに、ゼロ次または非常にゼロ次に近い放出速度過程を生じる他の分子とほとんど同じ距離を有する。しかしながら、粒子ヒドロゲルを使っても、問題はある。とりわけ、特定の標的部位に粒子を散布し、および粒子を局在化させることを制御することである。さらに、上述のように、バルクヒドロゲルは、人工括約筋、組織送達溶剤、組織置換材(人工軟骨)などのような応用において、それらを有用にする形状を維持し得るが、現在利用可能な粒子ヒドロゲル凝集体では、そのようなことはできない。
【0008】
必要とされるものは、バルクのヒドロゲルの望ましい特徴(形状維持および特定の応用おいてはゴム状弾性(elastomericity))および微粒子ヒドロゲル凝集体の望ましい特徴(より制御可能な物質送達速度を与える個々の小さい体積)を有する材料である。本発明は、このような材料、つまり形状維持性のあるヒドロゲル粒子の凝集体を提供する。本発明はまた、生物活性物質の制御可能な送達を含むが、それに限定されない凝集体の使用法を提供する。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
したがって、本発明の1つの局面は、多数のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体である。各粒子は、一つまたは複数のモノマーの重合によって得られる多数のポリマー鎖を含み、そのモノマーのうち少なくとも一つは、一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含むポリマー鎖;一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、凝集体のヒドロゲル粒子間の空間を占める液体を含む。
【0010】
本発明の他の1つの局面は、少なくとも50体積%のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体である。各ヒドロゲル粒子は、モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;50体積%までの一つまたは複数の作動物質;一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、凝集体のヒドロゲル粒子間の空間を占める液体を含む。ここで、作動物質は、吸収される液体中に溶解または懸濁されているか、または作動物質が吸収されない液体中に溶解または懸濁されているか、または一つまたは複数の作動物質が吸収される液体中に溶解または懸濁されており、かつ一つまたは複数の作動物質が吸収されない液体中に溶解または懸濁されている。
【0011】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の金属またはその合金を含む。
【0012】
本発明の1つの局面では、作動物質は、個々に一つまたは複数の酸化状態を有する一つまたは複数の金属を含む。
【0013】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の半導体元素または半導体化合物を含む。
【0014】
本発明の1つの局面では、作動物質は一つまたは複数の薬剤を含む。
【0015】
本発明の1つの局面では、作動物質は、一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0016】
本発明の1つの局面では、薬剤はペプチドまたはタンパク質である。
【0017】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、癌の治療に有用である。
【0018】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、冠状動脈疾患の治療に有用である。
【0019】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、呼吸器疾患の治療に有用である。
【0020】
本発明の1つの局面では、一つまたは複数の薬剤が、感染症の治療に有用である。
【0021】
本発明のさらなる局面は、作動物質を制御して放出するための組成物の調製法であり、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む一つまたは複数のモノマーを、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含む一つまたは複数の液体に添加する工程;その液体に0.01〜10モルパーセントの界面活性剤を添加する工程;そのモノマーを重合して、多数のポリマー鎖および10%〜90%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子液内に懸濁を形成させる工程;一つまたは複数の作動物質を残りの吸収されていない液体に溶解または懸濁させる工程;および形状維持性凝集体の形状となるまで吸収されていない液体を除去する工程を含む。
【0022】
上記の方法において、本発明の1つの局面では、作動物質は、モノマーの重合後に残りの吸収されない液体に溶解または懸濁される。その結果、作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有しない10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0023】
上記の方法において、本発明の別の局面では、作動物質は、モノマーの重合の前に液体に溶解または懸濁される。その結果、作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0024】
上記の方法において、本発明の1つの局面では、重合後であるが形状維持性凝集体を形成するために吸収されない液体を除去する前に、作動物質が、吸収されない液体から除去される。その結果、作動物質を含有しない10〜90重量パーセントの吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含有する10〜90重量パーセントの吸収される液体を含むヒドロゲル粒子が得られる。
【0025】
本発明の1つの局面では、形状維持性凝集体はゴム状弾性(elastomeric)である。
【0026】
本発明の1つの局面では、モノマーは、2-アルケン酸(alkenoic acid)、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニル(vicinyl)エポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される。
【0027】
本発明の1つの局面では、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される。
【0028】
本発明の1つの局面では、モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである。
【0029】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および吸収されない液は、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される。
【0030】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および非吸収液は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレートおよびソルビトールからなる群より独立して選択される。
【0031】
本発明の1つの局面では、吸収される液体は水である。
【0032】
本発明の1つの局面では、吸収されない液体は水である。
【0033】
本発明の1つの局面では、吸収される液体および吸収されない液体は水である。
【0034】
本発明の1つの局面では、ヒドロゲル粒子は0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む。
【0035】
本発明の1つの局面では、架橋剤は、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される。
【0036】
本発明の1つの局面では、架橋剤は、α-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される。
【0037】
本発明の1つの局面では、多数のヒドロゲル粒子は、狭い多分散性を有するものである。
【0038】
本発明の1つの局面では、ヒドロゲル粒子は、帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである。
【0039】
本発明の1つの局面では、多数のヒドロゲル粒子は、二つもしくはそれ以上の異なる大きさの粒子および/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を含む。
【0040】
本発明の1つの局面では、架橋されたポリマー鎖が、約25,000〜約2,000,000の平均分子量を有する。
【0041】
本発明の1つの局面では、凝集体は分解性である。
【0042】
本発明の1つの局面では、凝集体のヒドロゲル粒子は分解性である。
【0043】
発明の詳細な説明
表の簡単な説明
表1は、(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)-メタクリル酸(MAA)コポリマーヒドロゲル粒子のサイズの、MAA含量および重合pHの関数としての比較である。
【0044】
表2は、HEMA-(モノマー)コポリマーヒドロゲル粒子のサイズの、種々のモノマーの含量および重合pHとの関数としての比較である。
【0045】
表3は、エチレングリコールジメタクリレート架橋(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子に取り込まれた種々の物質の重量パーセントを示す。
【0046】
表4は、ポリHEMAヒドロゲル粒子から形成された凝集体、ポリ(HEMA-10% MAA)コポリマーから形成された凝集体、およびポリHEMAのバルクヒドロゲルの反発力および弾力性(springiness)の比較を示す。
【0047】
表5は、10分の緩和の後の表4にある物質の回復力および弾力性を示す。
【0048】
表6は、本発明の凝集体の(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子間の空間に捕捉された種々の物質の重量パーセントを示す。
【0049】
定義
本明細書で用いられる用語「ヒドロゲル」は、それ自体は水に溶けないが、多量の水を吸収および保持することができ、安定した、しばしば柔らかくしなやかな構造を形成する三次元ポリマー構造物をいう。
【0050】
本明細書で用いられる「ヒドロゲル粒子」は、個別の形状にある微小量またはほぼ微小量のヒドロゲルをいい、必ずしもそうではないが、通常は球形または実質的な球形である。
【0051】
本明細書で用いられる用語「凝集体」は、限定はしないが水素結合のような粒子間の力または粒子-液体間の力により共に保持された多数のヒドロゲル粒子から構成されるバルク物質をいう。
【0052】
本明細書で用いられる用語「形状維持性のある」は、切断または成形される場合、または他の特定の三次元形状に適合させられる場合、水和した状態と同一の形を維持するヒドロゲル凝集体をいう。
【0053】
本明細書で用いられる用語「ゴム状弾性の(elastomeric)」は、その元の長さの少なくとも200%に引き伸ばすことができ、応力が取り除かれたとき、すぐにそのおよそ元の長さに戻るヒドロゲル凝集体をいう。
【0054】
本明細書で用いられる用語「モノマー」は、それ自体と反応することができ、繰り返し単位の高分子を形成するような小さい化学的構成要素をいう。高分子は、ポリマーと呼ばれる。二つまたはそれ以上のモノマーは、各モノマーが何回も繰り返されるポリマーを形成するような反応をすることができる。後者のポリマーは、それらが1つより多くのモノマーを含むという事実を反映してコポリマーといわれる。
【0055】
本明細書で用いられる用語「多分散性」は、本発明の方法を使用して得られたヒドロゲル粒子の直径の範囲をいう。「狭い多分散性」は、平均直径から10%未満の偏差である直径の範囲を有する多数のヒドロゲル粒子をいう。
【0056】
本明細書で用いられる語句「二つまたはそれ以上の異なるサイズ」は、二つまたはそれ以上の多数のヒドロゲル粒子をいい、それぞれの多数の各粒子は、他の粒子の各々と異なる平均直径を有する。
【0057】
本明細書で用いられる「二つまたはそれ以上の異なる化学組成」は、それぞれの多数の粒子が、異なるモノマー、二つまたはそれ以上のモノマーが使われている場合は異なる比率のモノマー、および/または異なる架橋剤から形成される場合の二つまたはそれ以上の多数のヒドロゲル粒子をいう。
【0058】
本明細書で用いられる用語「分解性の」は、本発明の凝集体およびヒドロゲル粒子のある特徴をいい、その特徴が、選択された化学条件および/または物理条件(例えば、限定されないが、温度、磨耗、pH、イオン強度、電圧および/または電流、酸性度、塩基性度、溶剤効果など)の下で構造的な安定性を失うことをいう。
【0059】
本明細書で用いられる用語「溶解される」は、本発明の液体で溶液を形成する物質をいう。溶液とは、成分が均一および安定して分布する単一の相を形成する混合物をいう。
【0060】
本明細書で用いられる用語「懸濁される」は、本発明の液体には溶けないが、液体中で比較的均一に、しかし不安定に分布する物質の個々の粒子からなる第2の相を形成する物質をいう。「不安定に」とは、静置しておけば時間が経つにつれて、または遠心分離、ろ過などの外力の下で分離される相を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる「作動物質(working substance)」は、その物質に適合した特定の目的、目標、操作またはプロセスを達成するために、本発明のヒドロゲル粒子または凝集体に入れられる任意の物質をいう。作動物質の例としては、薬剤、農薬、放射線不透過性物質、放射性物質、顔料、染料、金属、半導体、ドーパント、化学的中間体、酸、塩基、ならびに遺伝子、タンパク質、抗体、抗原、ポリペプチド、DNA、RNA、およびリボザイムのような生物物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で用いられる「金属」は、その光沢、展性、導電性、および陽イオンを形成する能力によって区別される元素群の周期表に位置する元素をいう。特に、本発明の目的のため金属は、遷移元素すなわち周期表のIB族、IIB族、IIIB族(希土類金属およびアクチニド金属を含む。)、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族およびVIII族をいう。
【0063】
本明細書で用いられる用語「貴金属」は、金、銀、プラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウムおよびイリジウムをいう。
【0064】
本明細書で用いられる「合金」は、金属の特性を有し、二つまたはそれ以上の元素で構成され、その元素のうち少なくとも一つが金属でなければならない物質をいう。合金の例としては、青銅、真鍮およびステンレス鋼を含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で用いられる用語「酸化状態」は、金属イオンにおける帯電であって、元素の原子による電子の損失の結果である帯電をいう。したがって、「ゼロ酸化状態」または「基底状態」は、電子が定足数を満たしている金属それ自体である。「1価の酸化状態」は、陽子の帯電と等しい1価の正電荷であり、1つの電子の損失の結果として生じるものを示す。「2価の酸化状態」は、2つの陽子のそれと等しい正電荷であり、2つの電子の損失の結果として生じるものなどを示す。
【0066】
本明細書で用いられる「半導体元素または半導体化合物」は、絶縁体と金属(導体)との中間の電気抵抗値(すなわち、約10-2〜109Ωcm)を有する結晶性物質をいう。ある条件下では半導体は電気を伝えるが、他の条件下では電気を伝えない。おそらく最もよく知られた半導体要素はシリコンである。半導体元素の他の例としては、アンチモン、ヒ素、ホウ素、炭素、ゲルマニウム、セレン、硫黄およびテルルが含まれるが、これらに限定されない。半導体化合物の例といては、ヒ化ガリウム、アンチモン化インジウムおよびほとんどの金属の酸化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
「ヒドロキシ」基は、OH基をいう。
【0068】
「エーテル」はR-O-R'基をいい、RおよびR'が、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロ脂環式炭素原子であるものをいう。
【0069】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素をいう。好ましくは、アルキル基は、1個から20個の炭素原子からなる。(例えば「1〜8」または「1から8」のように数の範囲が本明細書中で示される場合は常に、その基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子など、8つの炭素原子までを含めてなり得ることを意味する)。より好ましくは、本発明のアルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中サイズのアルキルである。最も好ましくは、それは1から4個の炭素原子を有する低級のアルキルである。アルキルの大きさは、式(aC-bC)アルキルによって示すことができる。ここで、aおよびbは1から20まで整数であり、アルキル鎖の中に何個の炭素原子があるかが示される。例えば、(1C-4C)アルキルは、1つ、2つ、3つ、または4つの炭素原子からなる直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルをいう。アルキル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0070】
「シクロアルキル」基は、全ての員が炭素の3員から8員までの単一環である。例えば、記号(3C-6C)シクロアルキルは、3員、4員、5員、または6員の全ての員が炭素の環をいう。シクロアルキル基は一つまたは複数の二重結合を含むかもしれないが、完全に共役したπ電子系を含んでおらず、すなわち芳香族ではない。シクロアルキル基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、アダマンタン、シクロヘプタンおよびシクロヘプタトリエンであるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0071】
「アルケニル」基は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素間二重結合を有する、本明細書で定義されるアルキル基をいう。例えば、本明細書で用いられる、(2C-4C)アルケニルは、2つ、3つ、または4つの炭素のアルケニル基をいう。アルケニル基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0072】
「アリール」基は、全ての員が炭素の単一環基または縮合した多環基(すなわち、炭素原子の隣接した対を共有する環)をいい、完全に共役したπ電子系を有する。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルであるが、これらに限定されない。アリール基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0073】
「ヘテロアリール」基は、単一環基または縮合環基であり、その中の一つまたは複数の環が、窒素、酸素および硫黄からなる群より選択される一つまたは複数の原子を含み、さらに、完全に共役したπ電子系を確立するのに十分な二重結合を含むものをいう。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールであるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0074】
「ヘテロ脂環」基は、その環の中に窒素、酸素および硫黄からなる群より選択される一つまたは複数の原子を有する単一環基または縮合環基をいう。その環は、一つまたは複数の二重結合を持っていてもよい。しかし、完全に共役したπ電子系を持っていない。ヘテロ脂環式環は、置換されてもよく、または置換されなくてもよい。
【0075】
化学基が「置換されているか、または置換されていない」と記載される場合は、このような置換には、当業者に周知の化学基であって本発明において作成および使用するために必要以上の実験なしで置換される基に共有結合する化学基を含むことが理解される。このような基は、以下に限定されないが、F、Cl、BR、I、-CN、-NO2、-OH、-COOH、-CHO、-NRR'および-ORを含む。ここで、RおよびR'は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロ脂環族である。
【0076】
本明細書で用いられる用語「吸収される」は、本発明のヒドロゲル粒子の内側、すなわち、内部から外表面までの中に取り込まれ、安定して保持される液体をいう。
【0077】
本明細書で用いられる「吸収されない」は、本発明のヒドロゲル粒子の外表面より外部の液体をいう。吸収されない液体が本発明の凝集体に含まれるとき、その液体は凝集体を含むヒドロゲル粒子の間の空間を占める。
【0078】
本明細書で用いられる語句「ヒドロゲル粒子の間の空間」は、図6での領域1をいう。実質的に球形のヒドロゲル粒子は、粒子の周縁が接触し合って、それらが満たすことができないある量の空間を残し、その球形を維持する。粒子が球形であって、密に詰まった場合、空間の体積は球の平均半径の0.414倍であると算出されうる。
【0079】
本明細書で用いられる「架橋剤」は、2官能、3官能または4官能の化学構成成分であり、二つまたはそれ以上の異なるポリマー鎖に取り込まれるモノマー、または分岐した3次元構造をもたらす同じ鎖の中で二つまたはそれ以上の異なる位置にあるモノマーに付く他の官能基と共有結合を形成するものをいう。
【0080】
「水素結合」は、高い電気陰性度を有する原子に共有結合する水素原子と、少なくとも1つの電子孤立対を有する他の電気陰性原子との間の電気的引力をいう。水素結合の強さは約23kJ(キロジュール)mol-1であり、共有結合の強さ(約500kJ mol-1)とファンデルワールス力の強さ(約1.3kJ mol-1)の間にある。水素結合は、化合物自体の分子の間で水素結合を形成できる化合物の物理特性に著しく影響を与える。例えば、エタノールは、酸素原子と共有結合する水素原子を有するが、1対の共有していない電子の対(すなわり、「孤立対」)も持っている。したがって、エタノールは、水素結合が可能である。エタノールは、78℃の沸点を有する。一般に、似た分子量の化合物は、似た沸点を有することを予想される。しかし、正確にエタノールと同じ分子量であるが、それ自体の分子間で水素結合ができないジメチルエーテルは、エタノールより約100℃低い-24℃の沸点を有する。エタノール分子の間の水素結合が、エタノールを分子量が実質的に真の値より高いかのように見せかけている。
【0081】
本明細書で用いられる「帯電している」ヒドロゲル粒子は、粒子のポリマー鎖を作り上げているモノマーのイオン性成分および粒子が置かれている環境により、局在的に正電荷または負電荷を有する粒子をいう。例えば、これに限定されないが、アクリル酸をコモノマーとして含むヒドロゲル粒子は、塩基性条件下では、酸性基の一部または全部がイオン化している、すなわち「-COOH基」が、その中の1つの酸素原子が負電荷を帯びている「-COO-基」になっている。他の例がアミノ(-NH2)基であり、それは、酸性の環境でアンモニウム(-NH3+)イオンを形成する。
【0082】
本明細書で用いられる「生物活性物質」は、生きている生体に薬理学的な効果を与える任意の化学物質をいう。この語には、本明細書で用いられているように、小分子薬に関係する「薬剤」が含まれる。例としては、以下に限定されないが、抗生物質、化学療法剤(特に、プラチナ化合物およびタクソールおよびその誘導体)、鎮痛剤、抗うつ薬、抗アレルギー剤、抗不整脈剤、抗炎症化合物、CNS興奮剤、鎮静剤、抗コリン作用剤、抗動脈硬化剤などが含まれる。薬剤は、局所への使用または全身の使用のために意図することができる。薬剤には、モノクローナル抗体(mab)、fab、タンパク質、ペプチド、細胞、抗原、核酸、酵素、成長因子などの高分子物質が含まれるが、これらに限定されない。他の生物活性物質には、以下に限定されないが、除草剤、殺菌剤および殺虫剤のような害虫等の制御に役立つ化合物が含まれる。さらに本発明の凝集体およびヒドロゲル粒子と一緒に用いることができる生物活性物質は、本明細書中の開示に基づいて当業者には明白である。本明細書で開示されたヒドロゲル粒子、凝集体および方法と共に、このような物質のいずれかまたは全てを使用することは、本発明の範囲内にある。
【0083】
「賦形剤」は、その投与を容易にするために薬剤組成物に加えられた不活性な物質をいう。賦形剤の例としては、以下に限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類および種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。「薬学的に許容される賦形剤」は、生体に重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性および特性を失効させない賦形剤をいう。
【0084】
本明細書で用いられる用語「癌」は、潜在的な分裂細胞からなる事実上任意の組織に生じうる、大きな群の疾患に関連している悪性新生物をいう。癌の基本的な特徴は、成長に関して抑制された制御、浸潤性増殖および転移を通して宿主に対する重大な悪影響をもたらす機能によって明らかにされる、細胞の遺伝性の異常である。
【0085】
本明細書で用いられる「冠状動脈疾患」は、かなり危険な場合、心筋への血液の流れを制限し、最も深刻な場合は、心筋への血液の流れを完全に塞ぐアテローム性動脈硬化症によって起こる冠状動脈の狭窄をいう。
【0086】
本明細書で用いられる「呼吸器疾患」は、肺が適切に作動せず、呼吸が影響を受ける病気をいう。呼吸器疾患の例は、以下に限定されないが、ぜんそく、結核、嚢胞性線維症および肺炎である。
【0087】
本明細書で用いられる「感染症」は、以下に限定されないが、微生物、細菌、ウイルス、ピリオン、菌類、アメーバまたは単細胞動物のような微生物によって伝播される任意の疾患をいう。一般に、感染症は、本来伝染性であって、1人の個人から他者に伝染されることがあり、他者に重大な病気を引き起こすことがあり得る。
【0088】
本明細書で用いられる語句「〜の治療に有用な」は、薬剤が、示された疾患、障害または病状の原因を阻害または好ましくは破壊するか、少なくともその症状を改善することが知られていることを意味する。癌に関しては、薬剤が少なくとも罹患している個人の寿命を延ばすことが知られている。
【0089】
本明細書で用いられる用語「約」は、この語で修飾された数値の±15%を意味する。
【0090】
議論
本発明の形状維持性ヒドロゲル凝集体は、宿主での用途が見出されるべきである。用途としては、農薬、医薬などの化合物のための制御放出溶剤として、例えば医療装置の上のコーティングのような付属物としてとして、それ自体が医療装置として、組織成長マトリックスとして、および組織置換材としての用途が含まれるが、これらに限定されない。生物不活性なポリマーから作ることができ、多量の水を吸収することができる凝集体は、特にインビボでの応用に役立つものである。
【0091】
本発明の凝集体は、ヒドロゲル粒子をそのまま作製することにより、または前もって形成したヒドロゲル粒子を一つまたは複数の液体中で混合することにより形成することができる。どちらの場合も、液体は、個々の粒子によって吸収され、次いで、粒子の周縁が実質的に接触するほど共に近接するまで引き寄せられ、残っている吸収されない液体だけが粒子間の空間にある液体になるまで、過剰の液体は、真空乾燥、空気蒸発、または遠心分離(これらに限定されない)により除去される。凝集体は、水素結合(これに限定されない)のような強い粒子間の引力によって、および粒子と粒子間の空間にある液体との間の水素結合によって、特徴的な形状維持性を実現する。
【0092】
個々のヒドロゲル粒子を作り上げているポリマーの化学組成は操作可能であり、そのため、その粒子の凝集体は非常に安定していて、環境条件または生理条件の下で容易に分解しないようにできる。あるいは、粒子の化学的な組成は、その粒子の凝集体が、予測可能な、制御可能な方法により特定の条件下で分解するようにすることも可能である。例えば、以下に限定されないが、本明細書中の開示から明白であるように、適切なヒドロゲル粒子組成を選択することによって、温度、pH、イオン強度、電流などの種々の状態の下で分解される凝集体を製造することができる。ヒドロゲル粒子それ自体の組成を操作することに加えて、賦形剤を、その形成の間に凝集体マトリックス内に捕捉することができる。賦形剤は選択することができるため、賦形剤が様々な環境条件および/または生理学の条件へさらされることで構造、組成および/または反応性を変えるにつれて、賦形剤を含む凝集体が分解するようにできる。賦形剤は、得られた凝集体に、機械特性、光学特性、導電特性または美容特性(これらに限定されない)のような種々の異なる特性を持たせるためにもまた加えることができる。
【0093】
本発明の1つの態様では、10-9メートル(m、ナノスケール)〜10-6m(マイクロスケール)の範囲の呼び径を有するヒドロゲル粒子が、界面活性剤と水の存在下で、酸化還元重合、フリーラジカル重合または光開始重合により作り出される。この方法で、比較的狭い多分散性(すなわち、直径が狭い範囲にあること)を有する粒子が作り出すことができる。狭い多分散性は、現在、本発明の好ましい態様であるが、いくつかの用途については、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であって本発明の範囲内にあるが、より広い多分散性が望ましいこともあり得る。
【0094】
水和したヒドロゲル粒子の得られた水性懸濁液は処理されて、粒子に吸収される水から未反応のモノマーおよび界面活性剤を取り除くことができる。処理の例としては、以下に限定されないが、透析、抽出、または平行流濾過を含むことができる。同時に、未反応のモノマーおよび界面活性剤を、粒子が懸濁している吸収されない水から取り除くことができる。次いで、精製された粒子の懸濁液を遠心分離機にかけ、過剰の水を除去して、本発明の形状維持性凝集体の中に粒子を圧縮する。ナノ単位またはミクロ単位のサイズの粒子を使うことの利点は、それらが体積に対して高い表面積比を有し、比較的容易に精製できることである。
【0095】
本発明のヒドロゲル粒子およびそれから生じる凝集体の調製に有用なモノマーの好ましい種類としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ヒドロキシ(2C-4C)アルキルメタクリレートおよびヒドロキシ(2C-4C)アルキルアクリレートのようなヒドロキシアルキル2-アルケノエート;2-ヒドロキシエトキシエチルアクリレートおよびメタクリレートのようなヒドロキシ((2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル)アルケノエート;エトキシエチルメタクリレートのような(1C-4C)アルコキシ(1C-4C)アルキルメタクリレート;アクリル酸およびメタクリル酸のような2-アルケン酸(alkenoic acid);エトキシエトキシエチルアクリレートおよびメタクリレートのような(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル)アルケノエート;N-モノ-(1C-4C)アルキルビニルピロリドンおよびN-ジ-(1C-4C)アルキルビニルピロリドンのようなN-ビニルピロリドン;N-(1C-4C)アルキル-2-アルケンアミドおよびN,N-ジ(1C-4C)アルキル-2-アルケンアミド(例えば、N-(1C-4C)アルキルアクリルアミド、N-(1C-4C)アルキルメタクリルアミド、N,N-ジ(1C-4C)アルキルアクリルアミドおよびN,N-ジ(1C-4C)アルキルメタクリルアミド)のような2-アルケンアミド;ジエチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレートのようなジアルキルアミノアルキル2-アルケノエート;ビニルピリジン;ビシナルエポキシ(1C-4C)アルキルメタクリレートおよびビシナルエポキシ(1C-4C)アルキルアクリレートのようなビシナル-エポキシアルキル2-アルケノエート、ならびにそれらの組み合わせ。水素結合することができる他のモノマーは、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0096】
以下に限定されないが、アルキルアルカノエート(例えば、メチルブチレート、酢酸ブチルなど)のような非重合賦形剤を重合反応に加え、得られるヒドロゲル粒子の物理特性および化学特性を改良することができる。
【0097】
現在のところ、好ましいモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどが含まれる。現在のところ、最も好ましいモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)である。
【0098】
上記の好ましいモノマーと併せて使われる現在好ましいコモノマーの例としては、アクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメタクリルアミド、メチルビニルピロリドン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0099】
所望であれば、得られたヒドロゲル粒子の3次元の構造を強くするために、架橋剤を重合反応に加えることができる。以下の架橋剤は非分解性でありうる。非分解性の架橋剤としては、以下のものあるが、これらに限定されない:エチレングリコールジアクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリブチレンメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、ジアリルモノエチレングリコールシトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ジアリルベンゼンホスホネート、トリエチレングリコールとのマレイン酸無水物のポリエステル、ジアリルアコニトレート、ジビニルシトラコネート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびフマル酸ジアリル。他の非分解性の架橋剤は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。本発明のヒドロゲル粒子および凝集体を調製する際に、当技術分野において周知の3次元のポリマーのネットワークを達成するための他の方法が使うことができ、すべてのそのような方法が本発明の範囲内にある。
【0100】
意図される使用のために所望される場合、選択された条件下で分解性であるように、架橋剤を選択することができる。分解性の架橋剤の例としては、以下に限定されないが、酒石酸ジアリル、ピルビン酸アリル、マレイン酸アリル、酒石酸ジビニル、イタコン酸ジアリル、およびイタコン酸のエチレングリコールジエステルが含まれる。
【0101】
現在好ましい種類の分解性の架橋剤は、US Pat.App.Serial No.09/338,404の中で提供されている。この文献は、いずれの図も含めて、本明細書で十分に説明されたかのように参照として本明細書に組み入れられる。これらの架橋剤は、少なくとも2つのカルボキシル基および少なくとも2つの架橋官能基を有する分子で構成されたモノマーまたはオリゴマーである。架橋官能基の少なくとも1つとカルボキル基の1つとの間に、1〜6個の繰り返しを有する分解性のポリ(ヒドロキシアルキル酸エステル)の配列がある。
【0102】
他の態様では、本発明の凝集体は、バルクのヒドロゲルポリマーから調製される。バルクポリマーは、従来の重合技術、例えば、溶液重合、懸濁重合および水性バルク重合(これらに限定されない)によって調製される。そして、得られたポリマーは単離され、残余のモノマーおよび他の任意の望ましくない材料を除去するために処理され、乾燥される。乾燥した、砕けやすいバルクポリマーは、粉砕または微小粉砕などをすることにより細分化する。その破片は産業上公知である技術を用いて、ふるいにかけられる。それらが望ましい量の液体を吸収するまで、望ましいサイズ範囲の粒子は、選択された一つの液体または二つもしくはそれ以上の液体中で攪拌される。
【0103】
本発明での使用のための好ましい液体は、化学的に、特に生物学的に不活性で無毒であり、極性を有し、水混和性のある有機液体である。好ましい液体の例は、以下に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、さらに高級のポリエチレングリコール、および他の水溶性のオキシアルキレンホモポリマー、並びに2000まで、2000以上、好ましくは1600までの分子量を有するコポリマーである。例えば、200〜1000の平均分子量を有するエチレンオキシドのヒドロキシ末端ポリマー、約1500まで(好ましくは約1000まで)の分子量を有する水溶性のオキシエチレンオキシプロピレンポリオール(特にグリコール)ポリマー、プロピレングリコールモノエチルエーテル、モノアセチン、グリセリン、トリ(ヒドロキシエチル)シトレート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、シュウ酸ジ(ヒドロキシプロピル)、酢酸ヒドロキシプロピル、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチレート、液体ソルビトールエチレンオキシド付加体、液体グリセリンエチレンオキシド付加体、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールジアセテートを用いることができる。ヒドロゲル粒子と水素結合が可能な他のヒドロキシ液体およびヒドロキシ/エーテル液体は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0104】
本発明の現在の好ましい態様では、有機液体が約60℃を越える沸点、好ましくは約200℃を越える沸点を有する。これらの液体を使用することにより、複雑で固い凝集体の形成をもたらす。したがって、本発明の凝集体を形成するのに特に有用な有機液体は、水混和性オキシアルキレンポリマーであり、例えば、ポリアルキレングリコール、特にそれらが多数のオキシエチレン(-OCH2CH2-)ユニットおよび約200℃を越える沸点により特徴づけられたポリアルキレングリコールである。
【0105】
本発明の凝集体の化学特性および物理特性に影響を与える基準には、個々のヒドロゲル粒子を形成しているポリマーの分子量、粒子のサイズ、もしあれば架橋剤および架橋密度、用いられる液体の分子量および化学組成が含まれる。例えば、低分子量ポリマーからなるヒドロゲル粒子は、一般に安定して強い凝集体を形成しない。より小さいヒドロゲル粒子は、一般に、徹底的および効果的に溶媒和される凝集体を提供し、より弾力性があるマトリックスを生じさせる。ヒドロゲルポリマーが多量の架橋剤を含む場合、および/または架橋剤が非常に疎水性である場合、得られた分岐ポリマーのネットワークは、液体の吸収を最適にはできない。その結果、劣った凝集体をもたらし、ある場合には、凝集体は結果として生じない。
【0106】
本発明の1つの態様では、ナノサイズまたはミクロサイズのヒドロゲル粒子は、界面活性剤を含む水中で非イオン性モノマーを重合することによって生産される。ヒドロゲル粒子の懸濁液は未反応のモノマーと他の不純物を取り除くために処理される。次いで、凝集体は、粒子が小さな弾性マトリックスの中に自己集合するまで水を除去することによって形成される。その後、凝集体は以下に限定されないが、加圧成形、押出成形、または鋳型成形され得る。凝集体は、水和状態で維持される限り、いつまでもその形を持続する。
【0107】
本発明の他の態様では、種々の程度のイオン性を有するモノマーを、非イオン性モノマーと共に重合して、引き続き凝集体へと合体するヒドロゲル粒子を形成する。これらの凝集体は、適切な環境条件の下で分解する可能性がある。すなわち、個々のヒドロゲル粒子のイオン性が、その周辺の環境のpH、温度、イオン強度、電流などによってこれらの粒子の分解を生じるという結果になり得る。ヒドロゲル粒子の分解が、凝集体の分解を導く。このような本発明の凝集体の制御された分解は、特定の使用のためには望ましい特徴である。
【0108】
個々のヒドロゲル粒子の分解およびそれによる凝集体の分解は、ヒドロゲル粒子の形成において分解性の架橋剤を使うことによっても達成され得る。結果として得られた凝集体は、架橋剤の分解を引き起こす環境条件の下では、本来の性質を示さない。pH、温度、イオン強度および電流(これらに限定されない)の内の選択された条件下で分解する架橋剤を、調製することができる。
【0109】
本発明の凝集体は、多くの用途を有する。とりわけ、選択された標的への生物活性物質の送達は、特に注目すべきである。標的は、商業的作物(例えば、トウモロコシ、綿、大豆、小麦など)への殺菌剤、殺虫剤または除草剤の送達のような(これに限定されない。)農業的なものであってもよい。あるいは標的は、作物が育つ土壌のような成長培地であってもよいし、栄養などの送達を伴ってもよい。標的は、土壌中の環境汚染物質であってもよい。その汚染物質は、本発明の凝集体を使って制御可能に分解することができる。標的は、爬虫類、哺乳動物および鳥のような動物に医薬を送達することを含む獣医的なものでもよい。特に、標的はヒトであってもよく、患者への薬剤の制御および管理された送達を伴う。
【0110】
本発明の凝集体を用いる生物活性物質の送達は、主に2つの方法で、およびそれらの組み合わせで達成することができる。最初のアプロ-チは、過剰の液体が除去されて凝集体が作られる前に、水和したヒドロゲル粒子の懸濁液の中に生物活性材料を溶解または懸濁させることを伴う。水溶性の物質は、凝縮前の大量の液体の均質性を確保するために好ましい。しかしながら、界面活性剤のようなアジュバントが混合物に添加されれば、溶解性に限りのある生物活性物質の懸濁液を比較的均質なものとする。懸濁液が凝縮させられるにつれて、生物活性物質は、凝集体が形成される地点において凝集体の粒子の間の空間を満たす液体で捕捉されるようになる。弾性および形状維持性のある得られた凝集体は、洗浄されて、その表面に付着するいずれの生物活性物質でも除去することができる。所望であれば、次いで凝集体は、意図される用途のために成形され得る。例えば、以下に限定されないが、意図された用途が感染症の治療である場合、凝集体は、直接創傷部に適合させて、その中に抗生物質を放出するように成形することができるであろう。同様に、用途が、癌患者の標的器官へのパクリタキセルまたはシスプラチン(これらに限定されない)ような化学療剤の送達である場合、凝集体は、患部における移植を容易にするように成形することができるであろう。
【0111】
第2のアプロ-チは、ヒドロゲル粒子が形成する前に、生物活性物質を重合媒体に溶解または懸濁させることを伴う。重合が開始されて粒子が形成するとき、生物活性物質を含む液体は、個々の粒子の中に捕捉される。過剰のモノマーおよび界面活性剤を除去するために、上記のように粒子が処理されれば、粒子の中に捕捉されない過剰の生物活性物質もまた除去される。次いで、生物活性物質を含む粒子の懸濁液は、粒子が凝集体へと合体するまで凝縮される。
【0112】
上述したように、2つのアプロ-チを結合することは可能である。すなわち、ヒドロゲル粒子懸濁液の凝縮の前に、過剰のモノマーおよび界面活性剤と共に生物活性物質が除去されるよりむしろ、活性物質が懸濁液に残ることがあり得る。この方法では、得られた凝集体は、個々のヒドロゲル粒子の内部および粒子間に空間の両方で捕捉された生物活性物質を有する。他方、ヒドロゲル粒子の懸濁液は、上記のように精製することができ、次いで、その生物活性物質、所望であれば全く別種の生物活性を、凝縮の前に混合物に再度導入することができる。凝集体の空間内の物質は、通常、粒子内の物質とは非常に異なる速度で放出される。この方法では、広い範囲の送達形状および送達速度を得ることができる。凝集体の個々のヒドロゲル粒子の化学組成を変えることによって、多様性もまた得ることができる。
【0113】
イオン性または分解性の架橋剤の使用(これらに限定されない)のような化学的な改良が、個々のヒドロゲル粒子に組み入れられない場合、凝集体は、本質的に通常の環境条件に影響されない。このタイプの凝集体は、一般に、モノシリックのマトリックスデバイスと同様の放出速度(すなわち、物質の最初の爆発的な放出に続いて、時間経過につれて指数関数的に減少する)を提供する。しかしながら、ヒドロゲル粒子が送達部位で遭遇する環境条件下で分解するように設計された場合、および生物活性物質が粒子の分解の際にのみ凝集体から放出される場合、非常に優れた送達速度の制御が可能となる。非常に小さい細孔なので、凝集体が原型のままであれば、捕捉された活性物質が通り抜けられないような細孔を有する凝集体を生じさせるサイズの粒子を使うことによって、活性物質放出がヒドロゲル粒子の分解の際にのみ起こることは確実である。同様に、粒子の中で捕捉された活性物質が、欠損している粒子分解から逃れることができないように、個々の粒子を形成することができる。
【0114】
上記のことに加えて、水溶性の添加物を凝集体に加え、分解速度、つまり捕捉された活性物質の放出速度を変えることができる。さらに、陽イオン性電荷および/または陰イオン性電荷を含む粒子を非イオン性のヒドロゲル粒子と混ぜて、周辺のイオン性または外部の電荷の存在を含む種々の条件下での、凝集体の制御された分解を提供することができる。電荷を有する化学種を含むことにより、静電気電荷の相互作用による凝集の効率もまた増進することができる。
【0115】
上記の手順の一つまたは複数の手順を使えば、ゼロ次、または少なくとも擬似ゼロ次の放出速度が達成可能となるはずである。
【0116】
本発明のヒドロゲル粒子または凝集体で捕捉され得る物質のタイプおよび量は様々な要因に依存する。物質は、その大きさ、表面電荷、極性、立体相互作用などのために、凝集体となるヒドロゲル粒子の融合を妨げることができない。ヒドロゲル粒子のサイズは、取り込むことのできる物質の量に影響を与える。すなわち、粒子の大きさを適切に選択することによって、得られる凝集体の細孔の大きさを、個別の抗生物質分子のような小さい物質またはモノクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、または他の高分子のような非常に大きい物質を保持するように操作することができる。
【0117】
本明細書の方法を用いることで、物質送達、特に送達速度の精巧な制御が達成可能となるはずである。すなわち、様々なサイズおよび化学組成のヒドロゲル粒子が、特定の物質を充填することができ、様々な粒子の分解特性によって、物質は、事実上任意の所望の期間にわたって放出することができる。さらに、いくつかの物質はヒドロゲル粒子で包まれることができ、また、いくつかの物質は、凝集体の粒子間の空間に捕捉されて、さらに大きな送達の柔軟性を提供することができる。様々な物質が、通常それらが適合性がなくとも、様々なタイプの粒子に充填されて、順次にまたは同時に放出することができる。順次に放出することで適合性のない物質が互いに遭遇するのを防ぎ、一方、同時に放出することで物質が放出部位において相互作用すること可能とする。後者のシナリオは、二つまたはそれ以上の、結合時に非常に効力がある薬物を形成する生物活性を持たない物質または最小限の生物活性のある物質の場合に特に有用である。前駆体を含む凝集体が、薬物の効果が副作用を最小にすることを要求される部位に送達されるまで、活性のある薬物の形成は延期される。
【0118】
したがって、本発明は、非常に用途が広い薬物送達の基盤を提供する。薬物または薬物の組み合わせは、延長された期間にわたって送達されうる。次のものが放出される前に、1つのものがその効果を持って分散することができるように、薬物の組み合わせが順次に送達される。薬物の組み合わせは、相乗的に相互作用するために同時に放出することもできる。他の用途は、本開示に基づいて当業者に明白であり、このような用途は、本発明の範囲内にある。
【0119】
本発明の凝集体について可能性がある用途のもう1つの領域は、組織の足場(tissue scaffolding)である。凝集体の多孔質構造は、実質的な成長を可能にする組成物、一般的な微小孔のあるバルクヒドロゲルには見いだせない特性を提供する。加えて、本明細書における凝集体は、従来のバルクヒドロゲルの値より著しく大きく、ある場合には人工軟骨の特性に匹敵する弾性、せん断、および体積弾性率のような物理特性を示す。さらに、本発明の凝集体を成形および積層する能力は、組織の足場内の特定の場所における成長因子の放出を最適化するために使うことができる。可能な整形外科の応用としては、軟骨修復および骨修復、メニスカス修復/交換、人工背骨椎間板、人工腱、人工靭帯および骨欠陥充填材が含まれる。
【0120】
本明細書における凝集体の形状維持特性は、多数の他のインビボでの用途を示唆する。例えば、薬剤の入ったまたは入っていない凝集体は、柔らかいコンタクトレンズに成形することができる。創傷包帯または皮膚ドナー部位包帯は、それに含まれている抗生物質または他の薬の有無にかかわらず、本凝集体から製造することができる。凝集体は、内在する薬の入っている、または薬の入ってないカテーテルまたはステントの中に形成することができた。多数の他のこのような用途は、本明細書中の開示に基づいて当業者に明白であり、本発明の範囲内にある。
【0121】
本発明の凝集体についての他の用途には、所定の時間の間隔にわたって時間経過による物質形態の変更を必要とする応用において、いくつかの粒子が分解するような粒子の混合物を使うことが含まれる。また、凝集体は、ヒドロゲル粒子の混合物および他のタイプの粒子、例えば、金属、放射性粒子、半導体、非ヒドロゲル形成ポリマー、セラミックス、着色剤、UVフィルターおよびIRフィルター、放射線不透過性金属などの粒子で構成される。
【0122】
例えば、以下に限定されないが、金属は、ヒドロゲル粒子の中、凝集体内の空間の中またはその両方に捕捉することができる。金属は、凝集体に様々な程度の導電性を与える。金属は、イオン、すなわち、ゼロ以外の酸化状態にある金属として取り込むこともまたできる。同様に、これらのイオンもまた、凝集体に様々な程度の導電性を与える。逆に、ヒドロゲル粒子または凝集体には、半導体金属または半導体化合物を注入することができる。いくつかのヒドロゲル粒子は金属を取り込むことで導電体となるが、半導体材料を取り込むことで半導体となるいくつかのヒドロゲル粒子でできた形状維持性半導体凝集体または同等の凝集体は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)装置およびNEMS(Nano Electro Mechanical System)装置での用途を見いだすべきである。磁性ポリマーまたは磁性金属粒子のような磁性物質を捕捉することで、3次元コンピュータメモリ装置を提供することができる。凝集体の粒子内にポリヌクレオチドセグメントを取り込むことで、生物工学の産業で使用するための3次元配列分析ツールを導くことができる。本発明の形状維持性のある凝集体についてのこれらの使用および他の使用は、本明細書中の開示に基づいて当業者には明白である。このような使用は、本発明の範囲内にある。
【実施例1】
【0123】
架橋されたHEMAナノ粒子の調製
攪拌棒を装着した500mLのメディアボトルに、4.52g(34.8mmol)のHEMAモノマー、77.74mg(0.428mmol)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、0.2123g(0.634mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および240mLのmilli-Q水を充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.166gのK2S2O8を21mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。得られたヒドロゲル粒子の懸濁液は、乳白がかった青色を呈していた。粒子は動的光散乱によって分析し、図1に示されるように、36.5nmの平均半径を有することが判明したた。粒子は、平行流濾過によって精製し、水性懸濁液で保存される。綿状沈殿は、数カ月にわたって観察されなかった。
【実施例2】
【0124】
HEMAナノ粒子の大きさ変化
実施例1の手順に続いて、界面活性剤に対するモノマーの比率を変化させた。界面活性剤に対するモノマーの比率を増加させることで、レーザー光散乱によって証明されるように、より大きい粒子が重合の間に形成する結果となった。SDS界面活性剤のモルパーセントの変更によるHEMA粒子のサイズの変化は、図2に示される。
【実施例3】
【0125】
HEMAナノ粒子の中へのコモノマーの取り込み
攪拌棒を装着した250mlのメディアボトルに、2.22g(16.53mmol)のHEMAモノマー、74.9mg(0.87mmol)のMAA、38.87mg(0.214mmol)のエチレングリコールジメタクリエート(EGDM)、0.107g(0.317mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および120mLのmilli-Q水を充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.083gのK2S2O8を10.5mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。粒子は、平行流濾過によって精製した。メタクリル酸を、全体のモノマーの5モル%、10モル%、20モル%、および30モル%で、ドデシル硫酸ナトリウムの様々な濃度において取り込ませた。表1は、メタクリル酸の濃度および緩衝液のpHを変えることによる、粒子のサイズの変化を示す。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例1の合成法を使って、他のコモノマーをHEMAと共に重合し、2-アミノエチルメタクリレート・HCl、トリメチルアミノエチル-メタクリレート・HClおよびメタクロイルローダミン-B蛍光性モノマーを含むヒドロゲル粒子が形成される。表2は、異なるpHにおいて合成されたHEMA-コモノマー粒子について、光散乱により決定された比較サイズを示す。
【0128】
【表2】
【0129】
図2は、1mol%のコモノマーメタクロイルローダミンb(Polyfluor 540(登録商標))を含むHEMAナノ粒子の紫外-可視スペクトルを示す。340nmにおける広い吸収バンドは、ローダミン-Bの励起に特有である。ナノ粒子はまた、紫外線励起の下でオレンジ色の蛍光を示す。
【実施例4】
【0130】
分解性のHEMAナノ粒子の形成および特徴づけ
攪拌棒を装着した250mLのメディアボトルに、2.22g(16.53mmol)のHEMAモノマー、74.9mg(0.87mmol)のメタクリル酸、167mg(0.214mmol)の(MA-pEG3-4Gly)2Suc、0.107g(0.317mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および120mLのmilli-Qを充填した。ボトルをスパージングキャップで閉じ、攪拌しながら室温において1時間N2でパージした。その後、0.083gのK2S2O8を10.5mLのmilli-Q水の中に溶かし、攪拌しながらメディアボトルに加えた。ボトルを40℃の水浴に移し、12時間そこに静置した。得られた溶液は、乳白がかった青色を呈した。ヒドロゲル粒子を光散乱によって確認した。ヒドロゲル粒子は、68.4nmの平均半径を有した。
【0131】
所与のpHと温度において長い時間にわたる大きさの変化を観察することによって、粒子分解を検討した。一般的な分解の研究は、37℃でインキュベートされたpH7.4のリン酸緩衝食塩水(120mmol塩化物)中での0.1mg/mLの濃度のヒドロゲル粒子溶液を伴う。アリコートを周期的に取り出し、粒子の平均半径を動的光散乱によって決定した。分解性の架橋剤の様々な濃度におけるHEMA-co-MAAの粒子半径の変化を示すプロットが、図5に示される。
【実施例5】
【0132】
重合中のヒドロゲルナノ粒子の中への分子の取り込み
ブロモクレゾールグリーン、2-エチルヘキシルトランス-4-メトキシシンナメート、ピロカルピン、フルオレセイン標識化ウシ血清アルブミン(FITC-BSA)および西洋ワサビペロキシターゼ(HRP)をポリHEMAヒドロゲル粒子で捕捉した。表3は、相対的な上記の化合物の充填率を、EGDMで架橋された(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子に含まれる質量パーセントとして示す。
【0133】
【表3】
【0134】
重合前に溶液中の各化合物の最初の濃度を計算して、重合後に上清中の各濃度を分析することによって、充填量を決定した。
【実施例6】
【0135】
遠心分離によるナノ粒子凝集体の形成
ポリHEMAヒドロゲル粒子(20mL)の0.4%(w/w)懸濁液を、ポリカーボネート遠心分離チューブにいれ、100,000×Gにおいて30分間回転させた。ヒドロゲル粒子は、チューブの一番下に頑丈なプラグを形成した。プラグは青みのある乳白色を示し、弾性を示した。このような凝集体の形成を示す略図が図6で示される。狭い多分散性のナノ粒子から形成される場合、凝集体は多結晶回折を示す。図7は、光散乱によって、52nmの半径および11nmの半値全幅を有するHEMAヒドロゲル粒子凝集体の薄いシートのUV-可視吸収スペクトルを示す。スペクトルは、光結晶固体のブラッグ回折特性を示す鋭い吸収バンド特性を示す。
【0136】
凝集体を種々のコモノマーを含むヒドロゲル粒子から形成した。それぞれの場合で、得られた凝集体は、架橋されたバルクポリHEMAヒドロゲルに似た弾性特性および強度を示した。図8はバルクポリHEMA、ポリHEMAナノ粒子凝集体およびコポリマー(HEMA:MAA)(90:10モル比)で構成された凝集体についての1組の歪み/緩和カーブを示す。プロットは、バルクポリHEMAが最初の圧入(indentation)研究の凝集体より高い復元力および弾力性(springiness)を有することを示している。しかし、10分の緩和の後に同じ場所での2番目の圧入研究においては、凝集体は優れた特徴を見せる。表4は、最初の凹み(denting)研究での圧力/歪みカーブを示す。
【0137】
【表4】
【0138】
上のデータは、凝集体がバルクポリHEMAで見いだされる回復力の約50%を有することを示す。バルクポリHEMAフィルムと比較された場合、弾力性率によって決定される長い時間にわたって返されたエネルギーは、凝集体に対してより低かった。10分の緩和の後の第二の凹み研究について、表5に圧力/歪みカーブを示す。
【0139】
【表5】
【0140】
表5のデータは、バルクHEMA膜の特性が維持されている間に、回復力と返されたエネルギーが、最初の圧縮の後に凝集体膜に対して増加することを示す。
【実施例7】
【0141】
遠心分離によって積層されたナノ粒子凝集体の形成
ポリHEMAナノ粒子を超遠心分離することで、体積約3cm3、質量約3.2gの凝集体が形成した。2番目の部分であるコポリマー(HEMA:MAA:メタクロイルローダミン-B)(モル比89:5:1)からなるナノ粒子を、第1の凝集体の上で遠心分離した。得られた複合凝集体は、均一のバルク物質として表れ、はっきりとした線が下層にある青色の凝集体とピンクの染料を含む粒子とを分離した。機械的刺激では、2つの層の分離を誘発できなかった。
【実施例8】
【0142】
蒸発による凝集体薄膜の形成
0.1mg/mLのヒドロゲルナノ粒子水溶液30mLを10cmの直径の浅いペトリ皿の中に分けて、薄膜を形成させた。水を空気中またはデシケーター内の真空の下で蒸発させた。厚さ約2.5μmの透明な薄膜が皿の上に形成された。膜を光学的に透明な板として1枚取り上げた。膜を再水和して、弾力特性のある青い乳白色の膜を形成させた。
【実施例9】
【0143】
非分解性ナノ粒子凝集体の侵食
質量1.5gのEGDMで架橋されたコポリマー(HEMA-MA)ナノ粒子からなる凝集体を、37℃において15mLのリン酸緩衝食塩水(120mmol 塩化物、pH7.4)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。バルク凝集体を周期的に計量し、その質量をその最初の質量の百分率としてプロットした。図9は、ポリHEMAナノ粒子凝集体およびEGDMで架橋されたコポリマー(HEMA:MAA)ナノ粒子凝集体についての侵食速度を示す。
【実施例10】
【0144】
分解性のナノ粒子凝集体の侵食
質量1.5gの(MA-PEG3-4Gly)2Sucで架橋されたコポリマー(HEMA:MAA)(90:10モル比)ナノ粒子からなる凝集体を、37℃において15mLのリン酸緩衝食塩水(120mmol 塩化物、pH7.4)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。凝集体を周期的に計量した。さまざまな量の分解性の架橋剤を含む凝集体に対する、時間による質量の変化をプロットしたものを図10に示す。
【実施例11】
【0145】
凝集体のナノ粒子間の空間への高分子の取り込み
種々の分子量を有する高分子を、凝集体を構成しているナノ粒子の間の空間で捕捉した。その高分子の溶液を約1mg/mLの濃度で形成し、約60mg/mLの濃度に水和したナノ粒子と混ぜた。その溶液を遠心分離機に入れ、30分間100,000×Gにおいて回転させた。得られた凝集体を取り出して、高分子の制御放出を調べた。充填率を、元の溶液濃度から凝集体形成の後の上清溶液由来の高分子濃度を引くことによって、決定した。表6は、いくつかの高分子についての充填率を示す。
【0146】
【表6】
【実施例12】
【0147】
侵食速度の変化による高分子放出の制御
粒子のイオン特性を変更することによって、凝集体内のヒドロゲル粒子の間の空間に捕捉された高分子の放出速度を制御することができる。よって、HEMA:MAAの比が90:10であるコポリマーを使って、約40nmの粒子を作った。20mLのmilli-Q水中の60mg/mLの水和コポリマーナノ粒子懸濁液の中に1mg/mLのFITC-BSA溶液を調製した。溶液/懸濁液は室温において1時間50,000×Gにおいて遠心分離機で回された。得られた凝集体は、黄色であり、これを取り出した。元の溶液濃度から溶液中に残留したFITC-BSAを引くことによって、充填率を決定した。この凝集体の充填率は、約7重量%であることを計算した。UV-可視分光法で決定してFITC-BSAを全く含まないようになるまで、その凝集体を5つの10mLアリコートで洗浄した。凝集体を、37℃において21mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4、NaCl濃度=120mmol/L)に入れ、毎秒60サイクルでオービタルシェーカーを使って攪拌した。周期的にアリコートを取り出し、UV-可視分光法により分析した。図11は、長い時間にわたる凝集体からのFITC-BSAの放出を示す。凝集体のヒドロゲル粒子内のメタクリル酸モルパーセントを変えることで、FITC-BSA放出に明確な速度の変化をもたらす。
【実施例13】
【0148】
サイズを変えた高分子の凝集体からの放出速度変化
凝集体内のナノ粒子間の隙間の最小サイズは、密に詰めた配置にある粒子の半径の0.414倍である。このことは、凝集体からの物質のサイズおよび拡散速度を制限する。そこで、実施例10および11で記載された充填技術を使って、12kD、19.5kD、38kDおよび456kDの平均分子量のFITC標識化デキストラン分子を、40nmの直径のポリHEMAナノ粒子で構成された凝集体に充填した。デキストランの放出をUV-可視分光法で追跡した。様々な分子量デキストランマーカーに対する、長い時間にわたる凝集体からのデキストラン放出率のプロットを図12に示した。
【実施例14】
【0149】
線形ポリHEMAマイクロ粒子の形成
70gの抽出および蒸留されたHEMAを、0.175gの過硫酸アンモニウムを含む65gの水および0.175gのメタ重亜硫酸ナトリウムを含む65gの水と混合した。混合物を完全に混ぜて、ポリエチレン熱シールバッグに移し、溶液中に20分間N2を泡立てて入れた。バッグを密封した後に、溶液を24時間室温において静置の状態で重合した。柔軟な、水和したかたまりを小さい小片に切断し、24時間の連続攪拌の下で水中で濾過して、未反応のモノマーを取り除いた。物質をペトリ皿に移し、フード内で風乾した。乾燥して砕けやすい得られた物質をブレンダーで小さい小片に砕き、次に、ラブグラインダー(lab grinder)でさらに粉砕して、粒子のサイズをさらに小さくした。粉砕された物質をふるいにかけ、狭い範囲の様々な粒子サイズとした。サイズ分布を光学顕微鏡で分析すると、50μm未満、50〜150μm、150〜250μm、および250μmより大きいの4つのグループがあることが判明した。水に入れると、粒子は膨張し、体積で平均14〜18%増加した。
【実施例15】
【0150】
架橋されたポリHEMAマイクロ粒子の形成
70gの抽出および蒸留されたHEMAおよび0.7gのジメタクリル酸エチレングリコールを、0.175gの過硫酸アンモニウムを含む65gの水および0.175gのメタ重亜硫酸ナトリウムを含む65gの水と一緒にした。混合物を完全に混ぜて、ポリエチレン熱シールバッグに移し、溶液中に20分間N2を泡立てて入れた。バッグを密封した後に、溶液を24時間室温において静置の状態で重合した。柔軟な、水和したかたまりを小さい小片に切断し、24時間の連続攪拌の下で水中で濾過して、未反応のモノマーを取り除いた。物質をペトリ皿に移し、フード内で風乾した。乾燥して砕けやすい得られた物質をブレンダーで小さい小片に砕き、次に、ラブグラインダー(lab grinder)でさらに粉砕して、粒子のサイズをさらに小さくした。粉砕された物質をふるいにかけ、狭い範囲の様々な粒子サイズとした。サイズ分布を光学顕微鏡で分析すると、50μm未満、50〜150μm、150〜250μm、および250μmより大きいの4つのグループがあることが判明した。水に入れると、粒子は膨張し、体積で平均5〜11%増加した。
【実施例16】
【0151】
ナノ粒子およびマイクロ粒子の凝集体の成形
バルクの架橋ポリHEMAヒドロゲルとは異なり、ポリHEMAのマイクロ粒子およびナノ粒子の凝集体を種々の形に成形することは可能である。これは、実施例1および2で記述された水性重合から作られたナノ粒子、並びに実施例14および15で作られたマイクロ粒子について実証されている。したがって、水和したナノ粒子の懸濁液を100,000×Gにおいて遠心分離機チューブ中で回転させた。形成した凝集体を取り出し、2つのポリカーボネートブロックの間に入れた。500kg/cm2を越える静圧を加えた。凝集体をこの圧力の下で30分間そのままにしておいた。凝集体は圧縮されて薄膜になった。バルクの架橋ポリHEMAに対しての同様の実験では、不可逆な分裂をもたらした。0%〜30%のコモノマーを含み、20〜1000nmの直径を有するポリHEMAのヒドロゲル粒子を調製し、その粒子が同様に加圧下で成形可能であることを見出した。実施例14のタイプである線形マイクロ粒子は、150μm〜250μm(乾燥粒子平均サイズ分布)までのサイズについては成形変形可能であることが判明した。250μmを超える粒子は分解した。平均サイズが150μmを超えない場合、実施例15でのタイプである架橋マイクロ粒子は成形可能であることが判明した。
【0152】
結論
本発明のヒドロゲル粒子凝集体は、以下に限定されないが、形状維持性、弾性、所望であれば広い範囲での用途(生物活性物質の制御放出、インビボでの医療装置、組織成長の足場および組織交換材が含まれるが、これらに限定されない)に対して非常に有用となる制御可能な細孔サイズおよび制御可能な分解速度を含む特有の特性を示すことは理解される。特定の態様と実施例が記述されているが、当業者は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、種々の修正と変更が可能であることを認識する。
【0153】
他の態様は、特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の重合方法によって形成されるポリHEMAヒドロゲル粒子のサイズ分布グラフである。
【図2】反応で使用された界面活性剤のモル%の関数としての、本発明の重合方法によって形成されるポリHEMAヒドロゲル粒子の半径のグラフである。
【図3】(HEMA-1%メタクロイルローダミン-B)コポリマーヒドロゲル粒子から得られる紫外-可視吸収スペクトルを示す。
【図4】分解性の架橋剤である(メタクロイル(ポリエチレングリコール)3-4グリコリル)2スクシネート(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucの化学構造を示す。
【図5】37℃およびpH7.4における、(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucで架橋された(HEMA-MAA)コポリマーヒドロゲル粒子の経時的な分解を示す。
【図6】狭い多分散性のヒドロゲル粒子懸濁液の遠心分離による、本発明の凝集体の形成の略図である。
【図7】狭い多分散性ポリHEMAヒドロゲル粒子から形成される薄いシートの凝集体が、多結晶様構造を有することを指示するブラッグ回折を示す。
【図8A−B】ポリHEMAヒドロゲル粒子からなる本発明の凝集体および(HEMA-10%MAA)コポリマーヒドロゲル粒子からなる本発明の凝集体である、バルクポリHEMAの歪み曲線(8A)および緩和曲線(8B)の図による比較である。
【図9】37℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)の中で毎秒60サイクル(cps)の攪拌下における、エチレングリコールジメタクリレートで架橋されたMAAの含有量の変化についてのHEMA-MAAコポリマーヒドロゲル粒子の表面侵食速度と、ポリHEMA凝集体の表面侵食速度とを図により比較したものである。
【図10】37℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)の中で毎秒60サイクル(cps)の攪拌下の、ポリHEMA凝集体、および(MA-pEG3-4-Gyl)2Sucで架橋されたHEMA-10%MAAコポリマーヒドロゲル粒子の表面侵食速度を図により比較したものである。
【図11】37℃におけるpH7.4のPBSで60cpsの攪拌からなる条件下で、HEMA-MAAコポリマーヒドロゲル粒子の凝集体に捕捉されたFITC-BSAの経時的な放出をプロットしたものである。
【図12】37℃におけるpH7.4のPBSの中で、60ナノメートル(nm)の呼び径を有するポリHEMAヒドロゲル粒子の凝集体からの、種々の分子量のFITC標識デキストランの経時的な放出をプロットしたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体であって、各粒子が、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;
液体の少なくとも一つは一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10重量パーセントから90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、該ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および
10重量パーセントから90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、該吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、該凝集体の該ヒドロゲル粒子間の空間を占める、吸収されない液体
を含む、形状維持性凝集体。
【請求項2】
凝集体がゴム状弾性(elastomeric)である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項3】
モノマーが、2-アルケン酸(alkenoic acid)、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニル(vicinyl)エポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項4】
モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される、請求項3記載の形状維持性凝集体。
【請求項5】
モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項6】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項7】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項6記載の形状維持性凝集体。
【請求項8】
吸収される液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項9】
吸収されない液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項10】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項11】
ヒドロゲル粒子が0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項12】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸(citraconate)ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項11記載の形状維持性凝集体。
【請求項13】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項11記載の形状維持性凝集体。
【請求項14】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項15】
ヒドロゲル粒子が帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項16】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項17】
架橋されたポリマー鎖が約25,000から約2,000,000の平均分子量を有する、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項18】
凝集体が分解性である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項19】
凝集体の該ヒドロゲル粒子が分解性である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項20】
少なくとも50体積%のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体であって、各ヒドロゲル粒子が、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;
50体積%までの一つまたは複数の作動物質(working subsstance);
少なくとも一つの液体が一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、該ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;ならびに
10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、該吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、該凝集体の該ヒドロゲル粒子間の空間を占める、吸収されない液体
を含み、ここで
該作動物質が該吸収される液体中に溶解または懸濁されているか、
または
該作動物質が該吸収されない液体中に溶解または懸濁されているか、
または
一つまたは複数の該作動物質が、該吸収される液体中で溶解または懸濁しており、かつ一つまたは複数の該作動物質が該吸収されない液体中に溶解または懸濁されている、
形状維持性凝集体。
【請求項21】
凝集体がゴム状弾性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項22】
モノマーが、2-アルケン酸、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニルエポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項23】
モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される、請求項22記載の形状維持性凝集体。
【請求項24】
モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項25】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項26】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項25記載の形状維持性凝集体。
【請求項27】
吸収される液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項28】
吸収されない液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項29】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項30】
ヒドロゲル粒子が0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項31】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項30記載の形状維持性凝集体。
【請求項32】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項30記載の形状維持性凝集体。
【請求項33】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項34】
ヒドロゲル粒子が帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項35】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項36】
架橋されたポリマー鎖が約25,000から約2,000,000の平均分子量を有する、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項37】
凝集体が分解性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項38】
凝集体のヒドロゲル粒子が分解性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項39】
作動物質が一つまたは複数の金属またはその合金を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項40】
作動物質が一つまたは複数の酸化状態を個々に有する一つまたは複数の金属を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項41】
作動物質が一つまたは複数の半導体元素または半導体化合物を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項42】
作動物質が一つまたは複数の薬剤を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項43】
作動物質が一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項44】
薬剤がペプチドまたはタンパク質である、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項45】
一つまたは複数の薬剤が癌の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項46】
一つまたは複数の薬剤が冠状動脈疾患の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項47】
一つまたは複数の薬剤が呼吸器疾患の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項48】
一つまたは複数の薬剤が感染症の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項49】
作動物質の制御放出のための組成物を調製する方法であって、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む一つまたは複数のモノマーを、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含む一つまたは複数の液体に添加する工程;
0.01モル%〜10モル%の界面活性剤を該液体に添加する工程;
該モノマーを重合し、該液体中に、多数のポリマー鎖および10%から90%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子の懸濁液を形成する工程;
該溶液中に一つまたは複数の作動物質を溶解または懸濁させる工程;
形状維持性凝集体が形成されるまで、吸収されない液体を除去する工程;
を含む方法。
【請求項50】
モノマーの重合の後に、作動物質を残存している吸収されない液体に溶解または懸濁させて、作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含まない10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項49記載の方法。
【請求項51】
モノマーの重合の前に、作動物質を液体に溶解または懸濁させて、作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項49記載の方法。
【請求項52】
重合後および吸収されない液体を除去して形状維持性凝集体を形成させる前に、作動物質を該吸収されない液体から除去して、作動物質を含まない10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
形状維持性凝集体をゴム状弾性にするモノマーを用いる、請求項49記載の方法。
【請求項54】
2-アルケン酸、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニルエポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択されるモノマーを用いる工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項55】
アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択されるモノマーを用いることを含む、請求項49記載の方法。
【請求項56】
モノマーとして、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはその組み合わせを用いる工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項57】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項49記載の方法。
【請求項58】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
吸収される液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項60】
吸収されない液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項61】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項62】
重合前に0.1モル%から15モル%の架橋剤を液体に添加する工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項63】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項49記載の方法。
【請求項66】
ヒドロゲル粒子が帯電してないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項49記載の方法。
【請求項67】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項49記載の方法。
【請求項68】
架橋されたポリマー鎖が約25,000〜約2,000,000の平均分子量を有する、請求項49記載の方法。
【請求項69】
凝集体が分解性である、請求項49記載の方法。
【請求項70】
凝集体のヒドロゲル粒子が分解性である、請求項49記載の方法。
【請求項1】
多数のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体であって、各粒子が、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;
液体の少なくとも一つは一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10重量パーセントから90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、該ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;および
10重量パーセントから90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、該吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、該凝集体の該ヒドロゲル粒子間の空間を占める、吸収されない液体
を含む、形状維持性凝集体。
【請求項2】
凝集体がゴム状弾性(elastomeric)である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項3】
モノマーが、2-アルケン酸(alkenoic acid)、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニル(vicinyl)エポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項4】
モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される、請求項3記載の形状維持性凝集体。
【請求項5】
モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項6】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項7】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項6記載の形状維持性凝集体。
【請求項8】
吸収される液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項9】
吸収されない液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項10】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項11】
ヒドロゲル粒子が0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項12】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸(citraconate)ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項11記載の形状維持性凝集体。
【請求項13】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項11記載の形状維持性凝集体。
【請求項14】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項15】
ヒドロゲル粒子が帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項16】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項17】
架橋されたポリマー鎖が約25,000から約2,000,000の平均分子量を有する、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項18】
凝集体が分解性である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項19】
凝集体の該ヒドロゲル粒子が分解性である、請求項1記載の形状維持性凝集体。
【請求項20】
少なくとも50体積%のヒドロゲル粒子を含む形状維持性凝集体であって、各ヒドロゲル粒子が、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む、一つまたは複数のモノマーを重合することにより得られる多数のポリマー鎖;
50体積%までの一つまたは複数の作動物質(working subsstance);
少なくとも一つの液体が一つまたは複数のヒドロキシ基を含む、10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収される液体であって、該ヒドロゲル粒子の中に吸収される液体;ならびに
10〜90重量パーセントの一つまたは複数の吸収されない液体であって、該吸収される液体と同じまたは異なってもよく、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含み、該凝集体の該ヒドロゲル粒子間の空間を占める、吸収されない液体
を含み、ここで
該作動物質が該吸収される液体中に溶解または懸濁されているか、
または
該作動物質が該吸収されない液体中に溶解または懸濁されているか、
または
一つまたは複数の該作動物質が、該吸収される液体中で溶解または懸濁しており、かつ一つまたは複数の該作動物質が該吸収されない液体中に溶解または懸濁されている、
形状維持性凝集体。
【請求項21】
凝集体がゴム状弾性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項22】
モノマーが、2-アルケン酸、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニルエポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択される、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項23】
モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択される、請求項22記載の形状維持性凝集体。
【請求項24】
モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはそれらの組み合わせである、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項25】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項26】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項25記載の形状維持性凝集体。
【請求項27】
吸収される液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項28】
吸収されない液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項29】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項30】
ヒドロゲル粒子が0.1モル%〜15モル%の架橋剤を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項31】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項30記載の形状維持性凝集体。
【請求項32】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項30記載の形状維持性凝集体。
【請求項33】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項34】
ヒドロゲル粒子が帯電していないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項35】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項36】
架橋されたポリマー鎖が約25,000から約2,000,000の平均分子量を有する、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項37】
凝集体が分解性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項38】
凝集体のヒドロゲル粒子が分解性である、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項39】
作動物質が一つまたは複数の金属またはその合金を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項40】
作動物質が一つまたは複数の酸化状態を個々に有する一つまたは複数の金属を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項41】
作動物質が一つまたは複数の半導体元素または半導体化合物を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項42】
作動物質が一つまたは複数の薬剤を含む、請求項20記載の形状維持性凝集体。
【請求項43】
作動物質が一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項44】
薬剤がペプチドまたはタンパク質である、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項45】
一つまたは複数の薬剤が癌の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項46】
一つまたは複数の薬剤が冠状動脈疾患の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項47】
一つまたは複数の薬剤が呼吸器疾患の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項48】
一つまたは複数の薬剤が感染症の治療に役立つ、請求項42記載の形状維持性凝集体。
【請求項49】
作動物質の制御放出のための組成物を調製する方法であって、
モノマーの少なくとも1つが一つまたは複数のヒドロキシ基および/または一つまたは複数のエーテル基を含む一つまたは複数のモノマーを、そのうちの少なくとも一つが一つまたは複数のヒドロキシ基を含む一つまたは複数の液体に添加する工程;
0.01モル%〜10モル%の界面活性剤を該液体に添加する工程;
該モノマーを重合し、該液体中に、多数のポリマー鎖および10%から90%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子の懸濁液を形成する工程;
該溶液中に一つまたは複数の作動物質を溶解または懸濁させる工程;
形状維持性凝集体が形成されるまで、吸収されない液体を除去する工程;
を含む方法。
【請求項50】
モノマーの重合の後に、作動物質を残存している吸収されない液体に溶解または懸濁させて、作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含まない10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項49記載の方法。
【請求項51】
モノマーの重合の前に、作動物質を液体に溶解または懸濁させて、作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項49記載の方法。
【請求項52】
重合後および吸収されない液体を除去して形状維持性凝集体を形成させる前に、作動物質を該吸収されない液体から除去して、作動物質を含まない10重量%から90重量%の吸収されない液体を含む形状維持性凝集体、および作動物質を含む10重量%から90重量%の吸収される液体を含むヒドロゲル粒子を生じる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
形状維持性凝集体をゴム状弾性にするモノマーを用いる、請求項49記載の方法。
【請求項54】
2-アルケン酸、ヒドロキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、ヒドロキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、(1C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルコキシ(2C-4C)アルキル2-アルケノエート、およびビシニルエポキシ(1C-4C)アルキル2-アルケノエートからなる群より選択されるモノマーを用いる工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項55】
アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートからなる群より選択されるモノマーを用いることを含む、請求項49記載の方法。
【請求項56】
モノマーとして、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはその組み合わせを用いる工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項57】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、(1C-10C)アルコール、(2C-8C)ポリオール、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)アルキルエーテル、(2C-8C)ポリオールの(1C-4C)酸エステル、ヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド、ポリアルキレングリコール、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはトリカルボン酸のヒドロキシ(2C-4C)アルキルエステルからなる群より独立して選択される、請求項49記載の方法。
【請求項58】
吸収される液体および吸収されない液体が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、グリセロールモノアセテート、トリ(2-ヒドロキシエチル)シトレート、ジ(ヒドロキシプロピル)オキサレート、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノブチレート、およびソルビトールからなる群より独立して選択される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
吸収される液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項60】
吸収されない液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項61】
吸収される液体および吸収されない液体が水である、請求項49記載の方法。
【請求項62】
重合前に0.1モル%から15モル%の架橋剤を液体に添加する工程を含む、請求項49記載の方法。
【請求項63】
架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシブタンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、酒石酸ジアリル、リンゴ酸ジアリル、酒石酸ジビニル、トリアリルメラミン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ジアリル、ジビニルエーテル、1,3-ジアリル2-(2-ヒドロキシエチル)シトレート、クエン酸ビニルアリル、マレイン酸アリルビニル、イタコン酸ジアリル、イタコン酸ジ(2-ヒドロキシエチル)、ジビニルスルホン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアリルトリアジン、亜リン酸トリアリル、ベンゼンホスホン酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、シトラコン酸ジビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびフマル酸ジアリルからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
架橋剤がα-ヒドロキシ酸エステルからなる群より選択される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
多数のヒドロゲル粒子が狭い多分散性を有する、請求項49記載の方法。
【請求項66】
ヒドロゲル粒子が帯電してないか、帯電しているか、またはその組み合わせである、請求項49記載の方法。
【請求項67】
多数のヒドロゲル粒子が、二つもしくはそれ以上の異なるサイズおよび/または二つもしくはそれ以上の異なる化学組成を有する粒子を含む、請求項49記載の方法。
【請求項68】
架橋されたポリマー鎖が約25,000〜約2,000,000の平均分子量を有する、請求項49記載の方法。
【請求項69】
凝集体が分解性である、請求項49記載の方法。
【請求項70】
凝集体のヒドロゲル粒子が分解性である、請求項49記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−514705(P2006−514705A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551944(P2004−551944)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/035671
【国際公開番号】WO2004/043438
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501491044)アクセス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/035671
【国際公開番号】WO2004/043438
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501491044)アクセス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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