説明

後施工耐震スリット材

【課題】 地震時の垂れ壁や腰壁や袖壁などの非構造壁による柱や梁などの構造骨組みの剪断破壊や脆性破壊を防止し、耐火性、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)、層間変形・水密性を確保し、取り付けに際する補強材や固定金物を必要としなく、施工性と品質の良い耐震スリット材を提供する。<BR>
【解決手段】目地型枠でスリット部を設け、このスリット部にスリット材を挿入して耐震スリットとすることで、コンクリートに打ち込む際に必要な補強材や固定金物を必要としなく、スリット材の要求性能を耐火性、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)、層間変形・水密性に絞り込み、この要求性能を耐火性と圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)を確保する弾性耐火材と層間変形・水密性を確保する弾性シーリング材との組合せとすることで、施工性と品質の良い後施工耐震スリット材を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋コンクリート造の建築物の垂れ壁や腰壁や袖壁などの非構造壁と柱や梁などの構造骨組みとの間に設けられ、地震時の非構造壁による構造骨組の剪断破壊や脆性破壊を防止するために設けられる耐震スリット材に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震スリットは、鉄筋コンクリート造の建築物の腰壁や袖壁や垂壁などの非構造壁と柱や梁などの構造骨組みとの接合部に設けられ、地震時の非構造壁による構造骨組みの剪断破壊や脆性破壊を防止するために、設けられるもので巾は1/100の層間変形角に追従可能な寸法を確保するため、通常25mm〜50mmで、コンクリートの壁に、この巾の狭いスリット部を設けることが難しく、そのため従来の耐震スリット材は型枠組み立て時にスリット材を型枠に取り付けてコンクリートに打ち込んで取り付けている。そのため、耐震スリット材に求められる要求性能である耐火性、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)、層間変形・水密性に加えて、コンクリートの打設時の側圧に耐える強度が必要となり、この強度と相反する圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)の性能とを同時に確保し、さらに固定するための金物や真直ぐ取り付けるための補強材が必要となり、高価なものになり、その上取り付けに手間が掛かり、スリット材が曲がって取り付くなど施工管理が難しい物で、この耐震スリットの材料や構造などが多数提案されている。
【0003】
壁の全断面を縁切りする場合の耐震スリットの提案の1例として、実願昭56−138169号開示の構造物の耐震構造は、長尺状の弾性スリット本体の長片側両端縁に沿って係合する凹溝を有する支持片と、前記弾性スリット本体の短片方向に向って両側面近傍に配置する数本の支持ボルトで固定することを特徴とする構造用スリット材である。
【0004】
実願平1−67728号開示のコンクリート壁体のスリット目地材はポリエチレン独立発泡体あるいはグラスウールなどの目地材の1側面にその側面の長手方向に沿って少なくとも一本の鉤形の係合溝部を一体的に形成した基板を添設し、一端に係合片を設けると共に腕部の所要間隔位置にセパレータ取り付け孔を形成した支持体を、前記基板の鉤形の係合溝部に沿って着脱可能に係合してなるものである。
【0005】
特願平9−213016号開示の貫通スリット形成部材はスリット材を第1スリットと第2スリットとし、夫々がさらに接近し得る動作範囲を残した状態で、セパレータを挿通させ、貫通スリットの厚み方向に移動不可能な状態としつつ型枠に仮固定し、コンクリート硬化後セパレータを除去した後には、地震等の外力が加わった際には相対移動可能である貫通スリット形成部材である。
【特許文献1】実願昭56−138169号
【特許文献2】実願平1−67728号
【特許文献3】特願平9−213016号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐震スリット材には、耐火性と圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)と層間変形・水密性が求められ、しかもコンクリートの打設時の側圧に耐える強度がなければならない。ポリエチレン独立発泡体あるいはグラスウールなどを目地材として使用されているものにあっては、コンクリートの打設時の側圧に耐える強度を得るためスリット本体に係合する支持片と両側面近傍に配置した支持ボルトで支持固定しなければならず、また支持片とコンクリートの間からの漏水の恐れがある。
【0007】
スリット目地材をポリエチレン独立発泡体あるいはグラスウールなどの目地材とし、1側面にその側面の長手方向に沿って少なくとも一本の鉤形の係合溝部を一体的に形成した基板を添設したものにあっては、基板に係合した支持体をセパレータに取り付けて固定するが、型枠の内側に取り付ける目地棒と目地材の位置合わせが難しく、取り付けに手間が掛かり、また目地材の強度を確保するための基板を添接し、固定のための支持体を設ける構成なので、スリット材が高価なものになり、取り付けに手間がかかるものとなった。
【0008】
スリット材を第1スリットと第2スリットとし、夫々がさらに接近し得る動作範囲を残した状態で、セパレータを挿通させるものにあっては、スリット材をセパレータに固定するため、第1スリットと第2スリットに設けた夫々の挿通孔と型枠に取り付けたセパレータの位置合をわせをしなければならず、また返しの型枠を組み立てる際には、見えない状態での位置合わせとなり、取り付けに手間の掛かり、またスリット材が二つの部材の組合せなので高価なものになる。
【0009】
以上、鑑みて本発明は、上記目的を達成するため、本願出願人の発明にかかる特許第3252571号のペーパコアパネル製の目地型枠でスリット部を設け、このスリット部にスリット材を挿入して耐震スリットとすることで、スリット材の要求性能を耐火性、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)、層間変形・水密性に絞り込み、しかもコンクリートに打ち込む際に必要な補強材や固定金物を必要としなく、施工性と品質の良い耐震スリット材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鉄筋コンクリート造の建築物の非構造壁と構造骨組みとの間に設けたスリット部1に、弾性耐火材2を挿入して取り付け、該弾性耐火材2をバックアップ材として弾性シーリング材3を充填することを特徴とする後施工耐震スリット材4である。
【発明の効果】
【0011】
目地型枠でスリット部1を設け、このスリット部1にスリット材を挿入して耐震スリットとすることで、所謂後施工耐震スリット材4とすることで、スリット材の要求性能を耐火性、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)、層間変形・水密性に絞り込み、しかもコンクリートに打ち込む際に必要な補強材や固定金物を必要としない耐震スリット材とすることができる効果がある。
【0012】
耐震スリット材を耐火性と圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)を確保する弾性耐火材2と層間変形・水密性を確保する弾性シーリング材3との組合せとすることで、構成する材料の特性を生かした耐震スリット材とすることができる効果がある。
【0013】
弾性耐火材2の側面に設けられた突条6若しくは条溝7によるリブはスリット部1に良く密着し、圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)の性能を向上する効果があり、又弾性耐火材2がスリット部1に常時付勢しているので、二次シールの役割を果たして、リブが水密性能を向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
目地型枠でスリット部1を設け、このスリット部1にスリット材を挿入して耐震スリットとすることで、コンクリートに打ち込む際に必要な補強材や固定金物を必要としなく、後施工耐震スリット材4を耐火性と圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)を確保する弾性耐火材2と層間変形・水密性を確保する弾性シーリング材3との組合せた構成とする。
【0015】
目地型枠は、ペーパコアの両面に板紙などの表面板が接着されており、ペーパコア及び表面板には所定時間中防水性を持続する防水剤が塗布されており、周側面には粘着ビニールテープ等の取り外し部材が貼着されたものである。この目地型枠を所定のスリット部に取り付けて型枠を組み立て、コンクリート打設後、コンクリートの養生期間をおいて目地型枠を取り外す。目地型枠の取り外しに際しては、ペーパコア及び表面板はコンクリートの余剰水を吸水して、ある程度軟弱になっており、容易に取り外しが出来る。
【0016】
後施工耐震スリット材4は幅が施工部位の壁の長さで決まり、耐震スリットの幅は1/100の層間変形角に追従可能な寸法を確保するので、通常25mm〜50mmで、この幅が後施工耐震スリット材4の幅となる。この幅を一辺の長さとし、壁の中心に配設されるアンカー筋に後施工耐震スリット材4が当たらないように、壁の厚さの半分より小さい大きさの断面矩形の壁の長さの長尺物である。
【0017】
弾性耐火材2としては、シリコンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の耐火性を有する発泡体が適している。
【0018】
弾性耐火材2の断面の形状は略楕円形、楔形、矩形などいずれでもよく、また両側面がスリット部1に常時付勢するように圧縮変形した状態でスリット部1に押し込んで取り付けるので、幅が所定のスリット部の幅に変形幅を加えた幅とする。
【0019】
弾性耐火材2は当然圧縮性(変形可能巾、変形復帰性)を有するが、圧縮性の性能を確保するため、スリット材の両側面に突条6若しくは条溝7を設けてリブを形成してもよく、また断面が中空、中実形状及びそれらの組合せのいずれかに限定されるものでない。
【0020】
弾性シーリング材3は耐震スリット材に求められる要求性能の層間変形・水密性を確保するためのもので、材料の具体例として、JISA5758に規定規定される主成分に規定されるシリコン系、変性シリコン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド、アクリルウレタン系などが使用可能で、弾性耐火材2の接合面での化学的に安定するものが好ましい。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例を図1、図2、図3、図4の図面で説明する。図1は実施例1の後施工耐震スリット材4の実施方法を示した一部切欠き斜視図で、図2は同上後施工耐震スリット材4の分解断面図で、図3は同上後施工耐震スリット材4の一部取り付け状態を示す断面図で、図4は同上後施工耐震スリット材4の取り付け状態を示す断面図ある。壁の厚さが170mmでアンカー筋がD10の間隔が400mmでスリット部1の幅が25mmである。目地型枠の取り付けは、柱の型枠が組み立てられた後、厚さ25mmの目地型枠を柱の型枠に添えて取り付け、該目地型枠にD10のアンカー筋を400mm間隔で壁厚の中央の位置に差し込んで取り付ける。次いで目地型枠を挟んで壁型枠を組み立て、壁鉄筋を組み立て、定法に従ってコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間をおいて、型枠を撤去し、目地型枠を取り外す。目地型枠の取り外した後に幅25mmのスリット部1が設けられる。
【0022】
目地型枠の取り外した後のスリット部1に弾性耐火材2を挿入する。この場合の弾性耐火材2は、断面楕円形の中空で、後端部の両側面に突条6を設けた長尺物で、スリット部1に挿入する前の弾性耐火材2の幅は35mmで、これを幅が25mmにまで圧縮変形し、先端部から挿入し、両側面に設けた突条6の後端部の面を壁面8から弾性シーリング材3の充填分の寸法15mm確保して取り付ける。次いでスリット部1に弾性シーリング材3を充填して施工が完了する。弾性シーリング材3と弾性耐火材2の寸法を合わせた後施工耐震スリット材4の取り付け寸法は壁面8から70mmで、弾性シーリング材3の幅が25mmで深さが15mmとなる。この場合の耐火材2はシリコンゴムで、弾性シーリング材3は変性シリコンである。
【実施例2】
【0023】
実施例2を図5、図6、図7の図面で説明する。図5は実施例2の後施工耐震スリット材4を示した分解断面図で、図6は同上後施工耐震スリット材4の一部取り付け状態を示す断面図で、図7は同上後施工耐震スリット材4の取り付け状態を示す断面図である。壁の仕様とスリット部1の幅は前記と同様で、壁の厚さが170mmでアンカー筋がD10の間隔が400mmでスリット部6の幅が25mmであり、目地型枠の取り付け、取り外しも前記同様である。
【0024】
目地型枠の取り外した後のスリット部1に、弾性耐火材2を挿入して取り付ける。この場合の弾性耐火材2は、断面楔型の中実で、後端部の両側面に条溝7を設けた長尺物で、幅35mmを25mmにまで圧縮変形してスリット部1に挿入し、後端部の面を壁面8から弾性シーリング材3の充填分の寸法15mmを確保して取り付け、次いでスリット部1に弾性シーリング3を充填して施工が完了する。弾性シーリング材3と弾性耐火材2の寸法を合わせた後施工耐震スリット材4の取り付け寸法は壁面8から70mmで、弾性シーリング材3の幅が25mmで深さが15mmとなる。この場合の弾性耐火材2はクロロプレンゴムで、弾性シーリング材3は変性シリコンである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の後施工耐震スリット材の実施方法を示した一部切欠き斜視図である。
【図2】同上後施工耐震スリット材の分解断面図である。
【図3】同上後施工耐震スリット材の一部取り付け状態を示す断面図である。
【図4】同上後施工耐震スリット材の取り付け状態を示した断面図である。
【図5】実施例2の後施工耐震スリット材の分解断面図である。
【図6】同上後施工耐震スリット材の一部取り付け状態を示す断面図である。
【図7】同上後施工耐震スリット材の取り付け状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 スリット部
2 弾性耐火材
3 弾性シーリング材
4 後施工耐震スリット材
5 中空部
6 突条
7 条溝
8 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の建築物の非構造壁と構造骨組みとの間に設けたスリット部(1)に、弾性耐火材(2)を挿入して取り付け、該弾性耐火材(2)をバックアップ材として弾性シーリング材(3)を充填することを特徴とする後施工耐震スリット材(4)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−28980(P2006−28980A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212490(P2004−212490)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(391041040)
【出願人】(595140284)北星ゴム工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】