説明

後硬化テープ及び接合部材の接合方法

【課題】誘導加熱により短時間で硬化し、高い接着力を得ることのできる後硬化テープを提供する。
【解決手段】高周波誘導加熱により発熱する発熱シートの少なくとも一方の面に、粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する後硬化テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱により短時間で硬化し、高い接着力を得ることのできる後硬化テープに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂接着剤は、エポキシ化合物と硬化剤とが加熱により反応して硬化する接着剤であり、例えば、一液型又は二液型の液状や、フィルム状の形態をとる。エポキシ樹脂接着剤は、その硬化物が優れた接着性、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等を有することから、各分野で広く用いられている。
【0003】
近年、フィルム状のエポキシ樹脂接着剤として、エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤が提案されている。
エポキシ−アクリル系樹脂組成物は、例えば、主成分として、エポキシ化合物、硬化剤、活性エネルギー線照射により重合することのできるアクリレート化合物及び光重合開始剤を含有する組成物であり、基材上に塗工された後、活性エネルギー線照射により、粘着性を有するフィルムに成形される。エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤は、粘着性を有するフィルムに、エポキシ化合物や硬化剤等の硬化性成分が取り込まれた構造をしており、その粘着性を利用して接合部材表面に仮止めした後、加熱によって硬化性成分を硬化させることにより、強固な接着力を発揮することができる。
【0004】
エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤として、例えば、特許文献1には、a.エポキシ化合物、b.所定の粒子状のエポキシの硬化剤、c.所定のガラス転移点を有し、紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基を分子内に少なくとも1つ有する化合物、d.紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基と、エポキシ化合物又はエポキシの硬化剤と反応可能な官能基とをそれぞれ分子内に少なくとも1つ有する化合物、e.光開始剤を含有するエポキシ−アクリル系樹脂組成物を紫外線重合して得られた、所定の厚みを有するフィルム状接着剤が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のフィルム状接着剤は150℃のオーブンに30分間放置することで加熱硬化しており、硬化に長時間を要することから生産性の観点からは未だ不充分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−165459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、誘導加熱により短時間で硬化し、高い接着力を得ることのできる後硬化テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高周波誘導加熱により発熱する発熱シートの少なくとも一方の面に、粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する後硬化テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープは、該粘着剤層を高周波誘導加熱により発熱する発熱シートの少なくとも一方の面に形成することにより、短時間で硬化し、高い接着力が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の後硬化テープは、高周波誘導加熱により発熱する発熱シート(以下、単に、発熱シートともいう)を有する。上記発熱シートを有することで、得られる後硬化テープは、高周波誘導加熱装置によって誘導加熱されることにより、例えば3〜60秒間程度の短時間で硬化して、高い接着力を発現することができる。
なお、本明細書中、誘導加熱とは、磁界によって発生する渦電流に基づく加熱をいう。更に、本明細書中、「高周波誘導加熱により発熱する」とは、コイルに高周波数の交流を流すことにより交流磁界を発生させ、交流磁界中に置いた導電性物質中を通る磁束線により導電性物質中に渦電流を発生させて、発生した渦電流に基づくジュール熱により、導電性物質が発熱することをいう。
【0010】
上記発熱シートは、高周波誘導加熱によって発熱するシート、即ち、交流磁界中に置かれた場合、発生する渦電流に基づくジュール熱によって発熱するシートであれば特に限定されず、例えば、導電性を有する金属シート等が挙げられる。
上記導電性を有する金属シートは特に限定されず、例えば、アルミ、鉄、ステンレス鋼、銅、真鍮等からなるシート等が挙げられる。なかでも、取り扱いやすいことから、アルミ、ステンレス鋼からなるシートが好ましい。
【0011】
上記発熱シートは、後述する粘着剤層を発熱シートの両面に有する場合には、発熱シート全体の面積の30〜70%を占める複数の細孔を有することが好ましい。このような複数の細孔を有することで、得られる後硬化テープは、細孔にて両面の粘着剤が一体化し、接着凝集力が向上して、上記発熱シートと粘着剤層との間の剥離が抑制されて接着力が向上する。
上記複数の細孔の占める面積が発熱シート全体の面積の30%未満であると、得られる後硬化テープにおいては、細孔にて両面の粘着剤が一体化して接着凝集力が向上する効果が低下し、後硬化テープの接着力が低下することがある。上記複数の細孔の占める面積が発熱シート全体の面積の70%を超えると、上記発熱シートの発熱量が低下することがあり、得られる後硬化テープは硬化不足となって強度が低下することがある。
上記発熱シートは、発熱シート全体の面積の40〜60%を占める複数の細孔を有することがより好ましい。
【0012】
上記複数の細孔は、平均細孔径の好ましい下限が0.1mm、好ましい上限が3mmである。上記平均細孔径が0.1mm未満であると、得られる後硬化テープにおいては、細孔にて両面の粘着剤が一体化して接着凝集力が向上する効果が低下し、後硬化テープの接着力が低下することがある。上記平均細孔径が3mmを超えると、細孔の粘着剤に上記発熱シートから発生する熱が伝わりにくくなることがあり、得られる後硬化テープは硬化不足となって強度が低下することがある。上記複数の細孔は、平均細孔径のより好ましい下限が0.3mm、より好ましい上限が2mmである。
【0013】
上記発熱シートの厚みは特に限定されないが、好ましい下限が10μm、好ましい上限が200μmである。上記厚みが10μm未満であると、発熱シートのシート腰が弱く、取り扱いにくくなることがある。また、上記厚みが10μm未満であると、発熱量が低下することがあり、得られる後硬化テープは硬化不足となって強度が低下することがある。上記厚みが200μmを超えると、発熱シートのシート腰が強すぎて、得られる後硬化テープの追従性が低下することがある。上記発熱シートの厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は100μmである。
【0014】
上記発熱シートは、粘着剤層との密着性を向上させるために、予めプライマー処理されていることが好ましい。上記プライマーは特に限定されず、例えば、ポリメントNK−350、ポリメントNK−380(いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明の後硬化テープは、上記発熱シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。本発明の後硬化テープは、上記発熱シートの片面に粘着剤層を有していてもよく、上記発熱シートの両面に粘着剤層を有していてもよい。
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する。このような粘着剤層は、接合部材へ貼り合わせられた後、誘導加熱によって硬化することができる。なお、本明細書中、粘着性を有し、かつ、エポキシ樹脂等の硬化性成分が取り込まれた構造を有する粘着剤層等が、その粘着性を利用して接合部材へ貼り合わせられた後、加熱によって硬化性成分が硬化して強固な接着力を発現することを「後硬化」という。
【0016】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、得られる後硬化テープに粘着性を付与できれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより得られるポリマー等が挙げられる。
上記重合させる方法は特に限定されず、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等が挙げられる。上記重合させる方法における重合反応は特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合反応、リビングラジカル重合反応、リビングアニオン重合反応等が挙げられる。上記重合反応は、例えば、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを与えることにより開始させることができる。また、上記重合反応においては、重合させる際に反応開始剤を用いてもよい。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、得られる後硬化テープの硬化物の接着力が向上することから、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、市販品として、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシオリゴマー等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂(以上、いずれも東都化成社製)、エピコート基本固形タイプ、エピコートビスF固形タイプ(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EHPE脂環式固形エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートのコポリマー(以上、いずれもダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0019】
また、上記エポキシ樹脂の市販品として、例えば、jER828、jER834、jER806、jER807、(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−721、EX−221、EM−150、EM−101、EM−103(以上、いずれもナガセケムテックス社製、デナコールシリーズ)、YD−115、YD−115G、YD−115CA、YD−118T、YD−127(以上、いずれも東都化成社製)、40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002、1500(以上、いずれも共栄社化学社製、エポライトシリーズ)等の液状エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0020】
更に、上記エポキシ樹脂の市販品として、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、エポリードGT400、エポリードD−100ET、エポリードD−100OT、エポリードD−100DT、エポリードD−100ST、エポリードD−200HD、エポリードD−200E、エポリードD−204P、エポリードD−210P、エポリードPB3600、エポリードPB4700(以上、いずれもダイセル化学工業社製、脂環式エポキシ化合物)等の液状エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0021】
上記粘着剤層における上記エポキシ樹脂の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が100重量部である。上記エポキシ樹脂の配合量が5重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化後の接着力が低下することがある。上記エポキシ樹脂の配合量が100重量部を超えると、得られる後硬化テープの硬化物が硬くなりすぎて応力分散性が低下し、例えば、ガラス等の接合部材を接合した場合、接合部に応力が加わるとヒビ又は割れが発生することがある。上記粘着剤層における上記エポキシ樹脂の配合量は、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が80重量部である。
【0022】
上記エポキシ熱潜在性硬化剤は特に限定されず、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、三フッ化ホウ素−アミン錯体、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド類等が挙げられる。
上記エポキシ熱潜在性硬化剤の市販品として、例えば、アミキュアPN−23、PN−31、PN−H、PN−40、PN−50、MY−24、VDH、UDH、AH−123、AH−203(以上、いずれも味の素ファインテクノ社製)、フジキュアーFXR−1020、FXR−103、FXR−1081、FXR−1121、7000(以上、いずれも富士化成工業社製)、キュアゾール2E4MZ−CN、2PZ−CN、2MZ−A、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2PZ−OK、2PHZ−PW(以上、いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0023】
また、上記エポキシ熱潜在性硬化剤として、貯蔵安定性に優れることから、上述の硬化剤又はアミン類を内部に含有するマイクロカプセル化潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
上記マイクロカプセル化潜在性硬化剤の市販品として、例えば、ノバキュアHX−3721、HX−3722、HX−3748、HX−3741、HX−3742、HX−3088、HX−3613(以上、いずれも旭化成イーマテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0024】
更に、上記エポキシ熱潜在性硬化剤として、硬化速度が増すことから、ケトプロフェン系塩基発生剤を用いることも好ましい。
本明細書中、ケトプロフェン系塩基発生剤とは、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と下記式(1)で表されるアミンとの塩をいう。
N−[(CH−N−]−(CH−NH (1)
式(1)中、mは0又は1を表し、nは4〜8の整数を表す。
【0025】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と上記式(1)で表されるアミンとの塩であることから、誘導加熱により分解して、上記式(1)で表されるアミンを発生する。
発生した上記式(1)で表されるアミンは、上記エポキシ樹脂に対して硬化剤として働く。そのため、後硬化テープを接合部材に貼り合わせた後、誘導加熱により上記式(1)で表されるアミンを発生させることにより、発生した上記式(1)で表されるアミンと上記エポキシ樹脂とが反応して硬化し、強固な接着を行うことができる。
【0026】
また、上記ケトプロフェン系塩基発生剤は粒子状ではなく粘ちょうな液体であることから、粒子状等の形状を有する従来公知の硬化剤に比べて、上記粘着剤層において、より均一に細かく分散することができる、即ち、上記エポキシ樹脂中により均一に細かく分散することができる。そのため、誘導加熱により上記ケトプロフェン系塩基発生剤から上記式(1)で表されるアミンを発生させると、発生した上記式(1)で表されるアミンと上記エポキシ樹脂との硬化反応が容易かつ全体として均一に進行することから、得られる後硬化テープは、誘導加熱によって短時間で硬化することができる。
【0027】
上記式(1)中、mが1を超えると、得られる後硬化テープの貯蔵安定性が低下することがある。
また、上記式(1)中、nが4未満であると、ケトプロフェン系塩基発生剤の上記粘着剤層における分散性が低下し、得られる硬化テープの硬化性が低下することがある。上記式(1)中、nが8を超えると、得られる後硬化テープは、硬化が遅くなったり、ブリードしたりすることがある。
【0028】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤として、具体例には、例えば、1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩、1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩、ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩等が挙げられる。
【0029】
上記粘着剤層における上記エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が80重量部である。上記エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量が1重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化時間が長くなり、短時間の誘導加熱では充分な接着力が得られないことがある。上記エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量が80重量部を超えると、得られる後硬化テープの硬化不良が生じたり、接着力が低下したりすることがある。上記粘着剤層における上記エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量は、上記エポキシ樹脂100重量部に対するより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が50重量部である。
【0030】
上記粘着剤層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、フィラーを含有してもよい。
上記フィラーは特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機物、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機物等が挙げられる。
【0031】
上記フィラーは、5μm以上の平均粒子径を有し、かつ、上記エポキシ樹脂と反応する部分を有しないことが好ましい。
このようなフィラーを含有することにより、得られる後硬化テープの接合部に応力が加わった場合に、フィラーの周りにボイドが発生して応力を分散吸収し、接合界面への応力集中を低減させて、接着力を向上させることができる。上記フィラーの平均粒子径が5μm未満であると、後硬化テープの接着力を向上させる効果が得られないことがある。上記フィラーの平均粒子径の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の厚みより平均粒子径が大きい場合には上記フィラーが上記粘着剤層から露出して密着性が低下することから、上記粘着剤層の厚みより小さいことが好ましい。
【0032】
上記粘着剤層が上記フィラーを含有する場合、上記粘着剤層における上記フィラーの配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂、上記エポキシ熱潜在性硬化剤の合計100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記フィラーの配合量が1重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化物における応力分散が不足し、接着力が充分に向上しないことがある。上記フィラーの配合量が30重量部を超えると、得られる後硬化テープは、接合界面での有効接着成分が不足して、接着力が低下することがある。上記粘着剤層における上記フィラーの配合量は、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂、上記エポキシ熱潜在性硬化剤の合計100重量部に対するより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0033】
上記粘着剤層は、更に、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、C5系又はC9系の石油系樹脂、クマロン樹脂等を含有してもよい。
特に、得られる後硬化テープを貼り合わせる接合部材がポリオレフィンからなる場合には、硬化物の接着力を高められることから、上記粘着剤層がロジン系樹脂又は石油系樹脂を含有することが好ましい。
【0034】
上記粘着剤層は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、得られる後硬化テープの硬化物の界面接着力を向上させることができる。
【0035】
本発明の後硬化テープを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂、上記エポキシ熱潜在性硬化剤、及び、必要に応じて他の成分を、溶剤を用いて溶解混合し、塗工して乾燥させた後で上記発熱シートに積層する方法又は上記発熱シートに直接塗工して乾燥する方法、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー、上記エポキシ樹脂、上記エポキシ熱潜在性硬化剤、及び、必要に応じて光ラジカル重合開始剤等の他の成分を、溶剤を用いることなく混合した後、シート状にキャストし、紫外線を照射することにより上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーを重合させて、上記発熱シートに積層する方法等が挙げられる。なかでも、溶剤を用いる必要がないため乾燥等の加熱を伴う工程において硬化反応が進行してしまう可能性が低く、また、厚膜の後硬化テープを製造できることから、後者の方法が好ましい。
【0036】
本発明の後硬化テープの用途は特に限定されず、例えば、本発明の後硬化テープを用いて接合部材同士を接合することができる。
上記接合部材を接合する方法は特に限定されないが、本発明の後硬化テープと接合部材とを貼り合わせて集成体を得た後、得られた集成体を、3〜60秒間、高周波誘導加熱装置により誘導加熱する方法が好ましい。上記誘導加熱する時間が3秒未満であると、後硬化テープの硬化が不充分となり、接着力が不充分となることがある。上記誘導加熱する時間が60秒を超えると、上記集成体が加熱されすぎて、上記接合部材及び/又は粘着剤の劣化により接着力が低下することがある。なお、高周波誘導加熱装置として、例えば、EASY WELDER KIT1000、EASY WELDER KIT2000(いずれもサイヒット社製)等が用いられる。
本発明の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、本発明の後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程と、前記集成体を、高周波誘導加熱により3〜60秒間加熱する工程とを有する接合部材の接合方法もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、誘導加熱により短時間で硬化し、高い接着力を得ることのできる後硬化テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0039】
(ケトプロフェン系塩基発生剤の合成例1)
(1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,4−ジアミノブタン12.6gとを、エタノール中で混合し、室温で24時間攪拌して反応させた。その後、エバポレータを用いてエタノールを除去した後、得られた粗生成物をエタノール/ヘキサンを用いて再沈殿させ、1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0040】
(ケトプロフェン系塩基発生剤の合成例2)
(1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,6−ジアミノヘキサン16.6gとを用いた以外は合成例1と同様にして、1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0041】
(ケトプロフェン系塩基発生剤の合成例3)
(ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、ビス(6−アミノヘキシル)アミン20.5gとを用いた以外は合成例1と同様にして、ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0042】
(ケトプロフェン系塩基発生剤の合成例4)
(エチレンジアミン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、エチレンジアミン8.6gとを用いた以外は合成例1と同様にして、エチレンジアミン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0043】
(実施例1〜28、比較例1〜6)
(後硬化テープの作製)
表1、2、3の配合に従って、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなるアクリルモノマー、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「JER828」)、エポキシ熱潜在性硬化剤、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア819」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。得られた塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚みが0.2mmとなるように、38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚に各々の離型処理面が塗液に接するように塗液を挟んで、主波長420nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を3分間照射してアクリルモノマーを重合し、厚さ0.2mmの基材を有さない粘着剤テープを得た。
【0044】
得られた粘着剤テープの一方の面のシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、これを表1、2、3に示す材質及び厚みを有する発熱シートの両面に、露出した粘着剤層面が発熱シートに対向するように貼り合わせて、後硬化テープを得た。比較例1、4、5、6では発熱シートを使用せず、粘着剤テープ同士をラミネートした。
なお、発熱シートの両面には予めプライマー(日本触媒社製、ポリメントNK−380)を塗布しておいた。
【0045】
(実施例29〜41)
表4に従って配合を変更し、また、表4に示す平均細孔径(mm)を有する円形状の細孔をほぼ均一に分布し、かつ、表4に示す細孔数(個/cm)及び発熱シート全体に占める細孔面積率(%)を有する発熱シートを用いたこと以外は実施例1〜28及び比較例1〜6と同様にして、後硬化テープを得た。
【0046】
(評価)
実施例、比較例で得られた後硬化テープについて、下記のように評価した。結果を表1、2、3、4に示す。
【0047】
(1)初期せん断接着力の評価
後硬化テープを20mm×20mmの平面形状を有するようにカットした。表面の埃や油脂をアルコール洗浄により除去したガラス板(20mm×50mm×7mm)上に、カットした後硬化テープのシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層面がガラス板に対向するようにして後硬化テープを貼り合わせ、更に反対面にも同様にしてガラス板を貼り合わせ、試験片を得た。得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
【0048】
(2)硬化後せん断接着力の評価
上記(1)と同様にして試験片を作製し、EASY WELDER KIT2000(サイヒット社製)により表1、2、3、4に示す時間誘導加熱した後、更に、23℃にて1日養生してから、上記(1)と同様にしてせん断接着力を評価した。なお、比較例4〜6では、誘導加熱の代わりに、表3に示す時間150℃オーブン中で加熱した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、誘導加熱により短時間で硬化し、高い接着力を得ることのできる後硬化テープを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘導加熱により発熱する発熱シートの少なくとも一方の面に、粘着剤層を有する後硬化テープであって、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する
ことを特徴とする後硬化テープ。
【請求項2】
高周波誘導加熱により発熱する発熱シートの両面に粘着剤層を有し、
前記高周波誘導加熱により発熱する発熱シートは、発熱シート全体の面積の30〜70%を占める複数の細孔を有し、
前記細孔は、平均細孔径が0.1〜3mmである
ことを特徴とする請求項1記載の後硬化テープ。
【請求項3】
エポキシ熱潜在性硬化剤は、ケトプロフェン系塩基発生剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の後硬化テープ。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、
前記後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程と、
前記集成体を、高周波誘導加熱により3〜60秒間加熱する工程とを有する
ことを特徴とする接合部材の接合方法。

【公開番号】特開2011−57939(P2011−57939A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212037(P2009−212037)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】