説明

後硬化テープ及び接合部材の接合方法

【課題】比較的低温かつ短時間で硬化し、接着力及び耐水接着力に優れた後硬化テープを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合してなる共重合体からなる後硬化テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温かつ短時間で硬化し、接着力及び耐水接着力に優れた後硬化テープに関する。また、本発明は、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂接着剤は、エポキシ化合物と硬化剤とが加熱により反応して硬化する接着剤であり、例えば、一液型若しくは二液型の液状、又は、フィルム状の形態をとる。エポキシ樹脂接着剤は、その硬化物が優れた接着性、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等を有することから、各分野で広く用いられている。
【0003】
近年、フィルム状のエポキシ樹脂接着剤として、エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤が提案されている。
エポキシ−アクリル系樹脂組成物は、例えば、主成分として、エポキシ化合物、硬化剤、活性エネルギー線照射により重合することのできるアクリレート化合物及び光重合開始剤を含有する組成物であり、基材上に塗工された後、活性エネルギー線照射により、粘着性を有するフィルムに成形される。エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤は、粘着性を有するフィルムに、エポキシ化合物又は硬化剤等の硬化性成分が取り込まれた構造をしており、その粘着性を利用して接合部材表面に仮止めした後、加熱によって硬化性成分を硬化させることにより、強固な接着力を発揮することができる。
【0004】
エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤として、例えば、特許文献1には、a.エポキシ化合物、b.所定の粒子状のエポキシの硬化剤、c.所定のガラス転移点を有し、紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基を分子内に少なくとも1つ有する化合物、d.紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基と、エポキシ化合物又はエポキシの硬化剤と反応可能な官能基とをそれぞれ分子内に少なくとも1つ有する化合物、e.光開始剤を含有するエポキシ−アクリル系樹脂組成物を紫外線重合して得られた、所定の厚みを有するフィルム状接着剤が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のフィルム状接着剤は150℃のオーブンに30分間放置することで加熱硬化しており、硬化に長時間を要することから生産性の観点からは未だ不充分である。また、フィルム状接着剤には、例えば、建築物、車両等の外装部品を接合する場合には、屋外で使用されるため耐水接着力も要求されるが、特許文献1に記載のような従来のフィルム状接着剤では、未だ充分な耐水接着力を有しているとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−165459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、比較的低温かつ短時間で硬化し、接着力及び耐水接着力に優れた後硬化テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合してなる共重合体からなる後硬化テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、(メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープにおいて、(メタ)アクリル系ポリマーとして、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合してなる共重合体を用いることにより、高い接着力と耐水接着力とを発揮することができ、特に高周波誘導加熱により加熱を行ったときの硬化性が著しく上昇することを見出し、本発明を完成させるに至った。
(メタ)アクリル系ポリマーが、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する疎水性の高い成分を配合することにより、耐水接着力が向上する。一方、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する親水性の高い成分を含有することにより、乾燥状態における接着力(以下、これを単に「接着力」又は「常態接着力」ともいう。)が発揮される。更に、上記(メタ)アクリル系ポリマーの親水性と疎水性とのバランスをとることにより、上記エポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の分散性が向上し、その結果として、より低温かつ短時間での硬化性が発揮されるものと考えられる。
【0009】
本発明の後硬化テープは、(メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する。このような粘着剤層は、接合部材へ貼り合わせられた後、加熱することにより硬化させることができる。
なお、本明細書中、粘着性を有し、かつ、エポキシ樹脂等の硬化性成分が取り込まれた構造を有する粘着剤層等が、その粘着性を利用して接合部材へ貼り合わせられた後、加熱によって硬化性成分が硬化して強固な接着力を発現することを「後硬化」という。
【0010】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマー(以下、これを単に「SP値が9.5以上のビニル系モノマー」ともいう。)とを共重合してなる共重合体からなる。このようにSP値の異なる2つの成分を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いることにより、本発明の後硬化テープは、高い常態接着力と耐水接着力とを両立するとともに、特に高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加して加熱したときに、より低温かつ短時間での硬化を実現することができる。
なお、本明細書においてSP値とは、Fedorsの式δ=ΣE/ΣV(δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味する。)により算出される計算値を意味する。なお、SP値の単位は(cal/cm0.5である。Fedorsの方法については、日本接着協会誌、1986年22巻566ページに記載されている。
【0011】
上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、エチルアクリレート(SP値8.89)、エチルメタクリレート(SP値8.88)、n−ブチルアクリレート(SP値8.82)、n−ブチルメタクリレート(SP値8.82)、シクロヘキシルアクリレート(SP値9.26)、シクロヘキシルメタクリレート(SP値9.22)、2−エチルヘキシルアクリレート(SP値8.62)、2−エチルヘキシルメタクリレート(SP値8.63)、イソボルニルアクリレート(SP値8.70)等が挙げられる。これらのSP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シクロヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好適である。
【0012】
上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーは、より強い耐水接着力が得られることから、SP値が9.35以下の(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましく、SP値が9.3以下の(メタ)アクリル系モノマーであることがより好ましい。上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーのSP値の下限は特に限定されないが、SP値が低すぎるとエポキシ樹脂との相溶性が低下して常態接着力が低下することがあることから、8.7以上が好ましい。
【0013】
上記共重合体において、上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する成分の構成比の好ましい下限は65重量%、好ましい上限は95重量%である。上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する成分の構成比が65重量%未満であると、耐水接着力が低下することがあり、95重量%を超えると、常態接着力が不充分となることがある。また、この範囲外であると、加熱したときの硬化に要する時間が長くなることがある。上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する成分の構成比のより好ましい下限は70重量%、より好ましい上限は90重量%である。
【0014】
上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーは、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート(SP値9.62)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(SP値9.54)、ベンジルアクリレート(SP値10.14)、グリシジルアクリレート(SP値9.91)、グリシジルメタクリレート(SP値9.79)、ベンジルメタクリレート(SP値10.03)、フェノキシエチルアクリレート(SP値10.12)、フェノキシエチルメタクリレート(SP値10.02)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(SP値11.64)、4−ヒドロキシブチルメタクリレート(SP値11.39)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(SP値12.45)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(SP値12.06)等の(メタ)アクリル系モノマーや、N,N−ジメチルアクリルアミド(SP値10.6)、N,N−ジエチルアクリルアミド(SP値10.2)、N−イソプロピルアクリルアミド(SP値10.6)、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値14.4)、アクリルアミド(SP値14.2)等の(メタ)アクリルアミド系モノマーや、N−ビニルピロリドン(SP値11.4)、N−ビニルカプロラクタム(SP値10.8)、N−ビニルアセトアミド(SP値10.9)、N−アクリロイルモルフォリン(SP値11.2)、アクリロニトリル(SP値11.1)等が挙げられる。これらのSP値が9.5以上のビニル系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミドが好適である。
【0015】
上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーは、より強い常態接着力が得られることから、SP値が9.55以上のビニル系モノマーが好ましく、SP値が9.6以上のビニル系モノマーであることがより好ましい。上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーのSP値の上限は特に限定されないが、SP値が高すぎると粘着剤の内部凝集力が高くなりすぎて、常態接着力が低下することがあることから、11以下が好ましい。
【0016】
上記共重合体において、上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する成分の構成比の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は35重量%である。上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する成分の構成比が5重量%未満であると、常態接着力が不充分となることがあり、35重量%を超えると、耐水接着力が低下することがある。また、この範囲外であると、加熱したときの硬化に要する時間が長くなることがある。上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する成分の構成比のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0017】
上記共重合体は、上記SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、上記SP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合することにより得ることができる。
上記共重合させる方法は特に限定されず、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等が挙げられる。
上記共重合させる方法における重合反応は特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合反応、リビングラジカル重合反応、リビングアニオン重合反応等が挙げられる。上記重合反応は、例えば、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを与えることにより開始させることができる。また、上記重合反応においては、重合させる際に反応開始剤を用いてもよい。
【0018】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、一般的にエポキシ樹脂接着剤に用いられる従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキシド型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、接着強度、耐久性、耐衝撃性、耐熱性等の性能とコストとのバランスに優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
上記エポキシ樹脂の市販品として、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシオリゴマー等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂(以上、いずれも東都化成社製)、エピコート基本固形タイプ、エピコートビスF固形タイプ(以上、いずれも三菱化学社製)、EHPE脂環式固形エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートのコポリマー(以上、いずれもダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0020】
また、上記エポキシ樹脂の市販品として、例えば、jER828、jER834、jER806、jER807、(以上、いずれも三菱化学社製)、EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−721、EX−221、EM−150、EM−101、EM−103(以上、いずれもナガセケムテックス社製、デナコールシリーズ)、YD−115、YD−115G、YD−115CA、YD−118T、YD−127(以上、いずれも東都化成社製)、40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002、1500(以上、いずれも共栄社化学社製、エポライトシリーズ)等の液状エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0021】
更に、上記エポキシ樹脂の市販品として、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、エポリードGT400、エポリードD−100ET、エポリードD−100OT、エポリードD−100DT、エポリードD−100ST、エポリードD−200HD、エポリードD−200E、エポリードD−204P、エポリードD−210P、エポリードPB3600、エポリードPB4700(以上、いずれもダイセル化学工業社製、脂環式エポキシ化合物)等の液状エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0022】
上記粘着剤層における上記エポキシ樹脂の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が100重量部である。上記エポキシ樹脂の配合量が5重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化物の接着力又は耐水接着力が低下することがある。上記エポキシ樹脂の配合量が100重量部を超えると、得られる後硬化テープの硬化物が硬くなりすぎて応力分散性が低下し、例えば、ガラス等の接合部材を接合した場合、接合部に応力が加わるとヒビ又は割れが発生することがある。上記粘着剤層における上記エポキシ樹脂の配合量は、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が80重量部である。
【0023】
本明細書中、アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とは、エポキシ樹脂の熱潜在性硬化剤であって、アミンのアダクト体、アミンの変性物等のアミン系化合物を主成分とする熱潜在性硬化剤をいう。また、本明細書中、アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤には、イミダゾール系化合物は含まれない。
【0024】
上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤を含有することで、本発明の後硬化テープは、加熱により比較的低温かつ短時間で硬化して、優れた接着力を発現することができ、水中に浸漬されても優れた接着力を維持することができる。上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の代わりにイミダゾール系化合物を含有する場合には、得られる後硬化テープの接着力又は耐水接着力が低下する。この理由は、以下のように推測される。
上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の代わりにイミダゾール系化合物を含有する場合、イミダゾール系化合物は触媒的に働くため、後硬化テープの硬化物に窒素原子は取り込まれないと思われる。これに対し、上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤を含有することで、本発明の後硬化テープの硬化物には窒素原子が取り込まれると思われる。このため、窒素原子と被着体との間の強固な相互作用により、水分子の存在によっても上記粘着剤層の硬化物と被着体とが強固に接合されたままであると思われる。
【0025】
上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の市販品として、例えば、アミキュアPN−23、PN−31、PN−H、PN−40、PN−50、MY−24、VDH、UDH、AH−123、AH−203(以上、いずれも味の素ファインテクノ社製)、フジキュアーFXR−1020、FXR−1030、FXR−1081、FXR−1121(以上、いずれも富士化成工業社製)等が挙げられる。
【0026】
上記粘着剤層における上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が80重量部である。上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量が5重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化時間が長くなり、短時間の加熱では硬化物の充分な接着力及び耐水接着力が得られないことがある。上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量が80重量部を超えると、得られる後硬化テープの硬化不良が生じたり、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下したりすることがある。上記粘着剤層における上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の配合量は、上記エポキシ樹脂100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、更に好ましい下限が20重量部であり、より好ましい上限が60重量部、更に好ましい上限が50重量部である。
【0027】
上記粘着剤層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、フィラーを含有してもよい。
上記フィラーは特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機物、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機物等が挙げられる。
【0028】
上記フィラーは、5μm以上の平均粒子径を有し、かつ、上記エポキシ樹脂と反応する部分を有しないことが好ましい。
このようなフィラーを含有することにより、得られる後硬化テープの接合部に応力が加わった場合に、フィラーの周りにボイドが発生して応力を分散吸収し、接合界面への応力集中を低減させて、硬化物の接着力及び耐水接着力を向上させることができる。上記フィラーの平均粒子径が5μm未満であると、後硬化テープの硬化物の接着力又は耐水接着力を向上させる効果が得られないことがある。上記フィラーの平均粒子径の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の厚みより平均粒子径が大きい場合には上記フィラーが上記粘着剤層から露出して密着性が低下することから、上記粘着剤層の厚みより小さいことが好ましい。
【0029】
上記粘着剤層が上記フィラーを含有する場合、上記粘着剤層における上記フィラーの配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂及び上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の合計100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記フィラーの配合量が1重量部未満であると、得られる後硬化テープの硬化物における応力分散が不足し、硬化物の接着力又は耐水接着力が充分に向上しないことがある。上記フィラーの配合量が30重量部を超えると、得られる後硬化テープは、接合界面での有効接着成分が不足して、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下することがある。上記粘着剤層における上記フィラーの配合量は、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂及び上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の合計100重量部に対するより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0030】
上記粘着剤層は、更に、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、C5系又はC9系の石油系樹脂、クマロン樹脂等を含有してもよい。
特に、得られる後硬化テープを貼り合わせる接合部材がポリオレフィンからなる場合には、硬化物の接着力及び耐水接着力を高められることから、上記粘着剤層がロジン系樹脂又は石油系樹脂を含有することが好ましい。
【0031】
上記粘着剤層は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、得られる後硬化テープの硬化物の界面接着力を向上させることができる。
【0032】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は25μm、好ましい上限は1000μmである。上記厚みが25μm未満であると、得られる後硬化テープの接合部材への密着性が低下することがある。上記厚みが1000μmを超えると、得られる後硬化テープの熱伝導が遅くなり硬化が遅くなることがある。上記厚みのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は800μmである。
【0033】
本発明の後硬化テープは、基材を有さない上記粘着剤層のみからなるノンサポートテープであってもよく、基材の片面又は両面に上記粘着剤層を形成したサポートテープであってもよい。
本発明の後硬化テープが基材を有するサポートテープである場合、該基材は特に限定されず従来公知の基材を用いることができるが、高周波誘導加熱により発熱する発熱シート(以下、単に「発熱シート」ともいう。)であることが好ましい。上記基材として発熱シートを用いることにより、本発明の後硬化テープは、高周波誘導加熱装置によって容易に誘導加熱されることにより、比較的低温、かつ、短時間で硬化して、優れた接着力及び耐水接着力を発現することができる。
なお、本明細書中、誘導加熱とは、磁界によって発生する渦電流に基づく加熱をいう。更に、本明細書中、「高周波誘導加熱により発熱する」とは、コイルに高周波数の交流を流すことにより交流磁界を発生させ、交流磁界中に置いた導電性物質中を通る磁束線により導電性物質中に渦電流を発生させて、発生した渦電流に基づくジュール熱により、導電性物質が発熱することをいう。
【0034】
上記発熱シートは、高周波誘導加熱によって発熱するシート、即ち、交流磁界中に置かれた場合、発生する渦電流に基づくジュール熱によって発熱するシートであれば特に限定されず、例えば、導電性を有する金属シート等が挙げられる。
上記導電性を有する金属シートは特に限定されず、例えば、アルミ、鉄、ステンレス鋼、銅、真鍮等からなるシート等が挙げられる。なかでも、比較的柔軟で取り扱いやすく、高価でないことから、アルミからなるシートが好ましい。
【0035】
上記発熱シートの厚みは特に限定されないが、好ましい下限が30μm、好ましい上限が300μmである。上記厚みが30μm未満であると、発熱シートの発熱が不充分となり、得られる後硬化テープは、硬化に時間がかかったり、硬化不足のために硬化物の接着力又は耐水接着力が低下したりすることがある。上記厚みが300μmを超えると、発熱シートのシート腰が強すぎて、得られる後硬化テープの追従性が低下することがある。また、上記厚みが300μmを超えると、発熱シートの断面で手を切りやすく、安全面からも好ましくない。上記発熱シートの厚みのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は200μmである。
【0036】
上記発熱シートは、粘着剤層との密着性を向上させるために、予めプライマー処理されていることが好ましい。
上記プライマー処理に用いられるプライマーは特に限定されず、例えば、ポリメントNK−350、ポリメントNK−380(いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
【0037】
本発明の後硬化テープを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマー、上記エポキシ樹脂、上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤、及び、必要に応じて他の成分を、溶剤を用いて溶解混合し、塗工して乾燥させた後で上記基材上に積層する方法や、上記基材上に直接塗工して乾燥する方法が挙げられる。
また、本発明の後硬化テープを製造する方法として、例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー、上記エポキシ樹脂、上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤、及び、必要に応じて光ラジカル重合開始剤等の他の成分を、溶剤を用いることなく混合した後、シート状にキャストし、紫外線を照射することにより上記モノマーを重合させて、上記基材に積層する方法も挙げられる。この方法によれば、溶剤を用いる必要がないため乾燥等の加熱を伴う工程において硬化反応が進行してしまう可能性が低く、また、厚膜の後硬化テープを製造することができる。
【0038】
本発明の後硬化テープの用途は特に限定されず、例えば、本発明の後硬化テープを用いて接合部材同士を接合することができる。
本発明の後硬化テープを硬化させる方法は特に限定されないが、高周波誘導加熱が好ましい。高周波誘導加熱によれば、本発明の後硬化テープをより低温かつ短時間で硬化させることができ、生産性が向上する。
従って、本発明の後硬化テープを用いて接合部材を接合する場合には、本発明の後硬化テープと接合部材とを貼り合わせて集成体を得た後、高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加することにより、得られた集成体を加熱する方法が好ましい。
【0039】
本発明の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、本発明の後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程と、高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加することにより、前記集成体を加熱する工程とを有する接合部材の接合方法もまた、本発明の1つである。
なお、高周波誘導加熱装置としては、例えば、EASY WELDER SEW−2110(SMART CORPORATION社製)、MU−1700(SKメディカル電子社製)等が用いられる。
【0040】
本発明の接合部材の接合方法において、高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加する時間の好ましい下限は2秒、好ましい上限は120秒である。上記高周波印加する時間が2秒未満であると、後硬化テープの硬化が不充分となり、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下する。上記高周波印加する時間が120秒を超えると、上記集成体が加熱されすぎて、上記接合部材又は本発明の後硬化テープの粘着剤層の劣化により、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下する。上記高周波印加する時間のより好ましい下限は8秒、より好ましい上限は100秒である。
【0041】
本発明の接合部材の接合方法において、高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加する温度は特に限定されないが、好ましい下限が120℃、好ましい上限が200℃である。上記高周波印加する温度が120℃未満であると、後硬化テープの硬化が不充分となり、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下することがある。上記高周波印加する温度が200℃を超えると、上記集成体が加熱されすぎて、上記接合部材又は本発明の後硬化テープの粘着剤層の劣化により、硬化物の接着力又は耐水接着力が低下することがある。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、比較的低温かつ短時間で硬化し、接着力及び耐水接着力に優れた後硬化テープを提供することができる。また、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0044】
(実施例1〜38、比較例1〜15)
表1〜6の配合に従って、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなるモノマー、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製「jER828」)、エポキシ熱潜在性硬化剤、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア651」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。得られた塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚さ38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚を用いて、各々の離型処理面が塗液に接し、かつ、塗液の厚みが0.2mmとなるように2枚のシリコン離型処理PETフィルムの間に塗液を挟み、主波長365nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を5分間照射してモノマーを重合し、厚さ0.25mmの粘着剤テープを得た。
【0045】
2枚の粘着剤テープを用意し、それぞれの粘着剤テープの一方の面のシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、粘着剤層面同士を貼り合わせて、基材を有しないノンサポートタイプの後硬化テープを得た。
【0046】
後硬化テープを20mm×20mmの平面形状を有するようにカットした。カットした後硬化テープのシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層面がアルミ板に対向するようにして、表面の埃及び油脂をアルコール洗浄により除去したアルミ板(20mm×50mm×2mm)に後硬化テープを貼り合わせた。次いで、後硬化テープの反対面も同様にしてガラス板(20mm×50mm×7mm)に貼り合わせ、試験片を得た。
【0047】
(評価1)
実施例1〜38、比較例1〜15で得られた試験片について、下記のように評価した。結果を表1〜6に示した。
【0048】
(1)初期せん断接着力の評価
得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
【0049】
(2)硬化後せん断接着力の評価
MU−1700(SKメディカル電子社製)を用いて高周波印加することにより、試験片を加熱して粘着剤層を硬化させた。硬化に際しては、アルミ板に熱電対を貼り付け、温度を測定しながらフィードバック制御を行い、所定の温度になるように制御した。加熱温度と加熱時間とを表1〜6に示した。なお、実施例13、14、比較例11、12、14、15では、誘導加熱の代わりに、オーブン中にて表2、6に示した温度及び時間で加熱した。
得られた試験片を、更に、23℃にて3日養生してから、上記(1)と同様にしてせん断接着力を評価した。
【0050】
(3)耐水せん断接着力の評価
上記(2)と同様にして試験片を加熱して粘着剤層を硬化させ、90℃の水中に2日間浸漬した後、上記(2)と同様にしてせん断接着力を評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
(実施例39〜43)
表7の配合に従って、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなるモノマー、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製「jER828」)、エポキシ熱潜在性硬化剤、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア651」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。得られた塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚さ38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚を用意して、各々の離型処理面が塗液に接し、かつ、塗液の厚みが0.2mmとなるように2枚のシリコン離型処理PETフィルムの間に塗液を挟み、主波長365nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を5分間照射してモノマーを重合し、厚さ0.2mmの粘着剤テープを得た。
【0058】
2枚の粘着剤テープを用意し、それぞれの粘着剤テープの一方の面のシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、表7に示す材質及び厚みを有する発熱シートの両面に、露出した粘着剤層面が発熱シートに対向するように貼り合わせて、基材として発熱シートを有するサポートタイプの後硬化テープを得た。なお、発熱シートの両面には予めプライマー(日本触媒社製、ポリメントNK−380)を塗布しておいた。
【0059】
後硬化テープを15mm×15mmの平面形状を有するようにカットした。カットした後硬化テープのシリコン離型処理PETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層面がガラス板に対向するようにして、表面の埃及び油脂をアルコール洗浄により除去したガラス板(15mm×50mm×7mm)に後硬化テープを貼り合わせた。次いで、後硬化テープの反対面も同様にしてガラス板に貼り合わせ、試験片を得た。
【0060】
(評価2)
実施例39〜43で得られた試験片について、下記のように評価した。結果を表7に示した。
【0061】
(1)初期せん断接着力の評価
得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
【0062】
(2)硬化後せん断接着力の評価
EASY WELDER SEW−2110(SMART CORPORATIO社製)を用いて高周波印加することにより、試験片を加熱して粘着剤層を硬化させた。硬化に際しては、後硬化テープとガラス板の間に熱伝対を挟み、加熱温度を測定しながら行った。また、EASY WELDER SEW−2110の高周波印加スイッチをON−OFFすることで、所定の温度になるように制御した。高周波加熱温度及び高周波印加時間(累計時間)を表7に示した。
得られた試験片を、更に、23℃にて3日養生してから、上記(1)と同様にしてせん断接着力を評価した。
【0063】
(3)耐水せん断接着力の評価
上記(2)と同様にして試験片を加熱して粘着剤層を硬化させ、90℃の水中に2日間浸漬した後、上記(2)と同様にしてせん断接着力を評価した。
【0064】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、比較的低温かつ短時間で硬化し、接着力及び耐水接着力に優れた後硬化テープを提供することができる。また、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合してなる共重合体からなることを特徴とする後硬化テープ。
【請求項2】
前記共重合体における、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する成分の構成比が65〜95重量%であり、かつ、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する成分の構成比が5〜35重量%であることを特徴とする請求項1記載の後硬化テープ。
【請求項3】
更に、基材を有し、前記基材は、高周波誘導加熱により発熱する発熱シートであることを特徴とする請求項1又は2記載の後硬化テープ。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、
前記後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程と、
高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加することにより、前記集成体を加熱する工程とを有する
ことを特徴とする接合部材の接合方法。

【公開番号】特開2012−236992(P2012−236992A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101712(P2012−101712)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】