説明

後輪駆動四輪自転車

【課題】旋回時の操縦安定性を向上させ、しかも小回りの利く後輪駆動四輪自転車を提供する。
【解決手段】前後方向の中間部に配した操舵部3、この操舵部3の前方に設けられかつ両側に配した前輪12、12を有して被載置体をのせうる積載用部4、前記操舵部3の後方に設けられ操作者が載るサドル部5、該サドル部5の後方に設けられ1対の後輪20、20を継ぐ後輪軸21を枢支する軸受部22から上方にのび該軸受部22を操舵旋回させる後輪操舵軸部23を有する後輪受け枠24を含む後輪装置6、ペダル43の回転により前記後輪受け枠24に設けた歯車手段44を介して後輪20、20を回転する駆動手段7、及び前記操舵部3に設けたハンドル31に連係し前記後輪操舵軸部23を旋回させることにより後輪20、20を操舵する操舵連係手段8をメインフレーム2に形成した後輪駆動四輪自転車1である。前記操舵連係手段8は、後輪20、20を、前記駆動手段7により回転しつつ360度を越えて操舵旋回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪を駆動輪かつ操舵輪とした後輪駆動四輪自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車体の前輪側に重量物又は乗員等を乗せる荷台を設け、かつ前輪をペダルによって駆動させる駆動輪とするとともに、後輪をハンドル操作される操舵輪とした四輪自転車が提案されている。
【0003】
【特許文献1】実登3007093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような四輪自転車は、後輪が操舵輪であるため、操舵の際、前輪側が右又は左に急激に振られることがなく、従って前輪側の荷台に載せた荷物や人を安定して運ぶことができる。しかしながら、前輪が駆動輪となって直進方向に引っ張られるため、後輪操舵によるコース取りが不安定となり、旋回性や操縦安定性に劣るという問題がある。特に、前輪側の荷台に人や重量物を載せた場合、荷重が前輪側に偏るため、後輪による操舵が利きにくくなり、旋回性や操縦安定性の低下はより顕著なものとなる。
【0005】
又前記四輪自転車では、後輪の操舵角に限界があるため、旋回時の回転半径が大きい。そのため小回りが利くとはいえ不充分であり、例えば、狭い場所での旋回や、駐輪時の幅寄せなどをスムーズかつ容易に行なうことが難しい。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、後輪駆動かつ後輪操舵とするとともに、後輪を駆動させつつ360度を越えて操舵旋回可能とすることを基本として、旋回性や操縦安定性を高めるとともに、より小さい小回り旋回を可能とした後輪駆動四輪自転車を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、前後方向の中間部に配した操舵部、この操舵部の前方に設けられかつ両側に配した前輪を有して被載置体をのせうる積載用部、前記操舵部の後方に設けられ操作者が載るサドル部、該サドル部の後方に設けられかつ1対の後輪を継ぐ後輪軸を枢支する軸受部から上方にのび該軸受部を操舵旋回させる後輪操舵軸部と、この後輪操舵軸部を保持する後輪受け枠とを含む後輪装置、ペダルの回転により前記後輪受け枠に設けた歯車手段を介して後輪を回転する駆動手段、及び前記操舵部に設けたハンドルに連係し前記後輪操舵軸部を旋回させることにより後輪を操舵する操舵連係手段をメインフレームに形成した後輪駆動四輪自転車であって、
前記操舵連係手段は、後輪を、前記駆動手段により回転しつつ360度を越えて操舵旋回することを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記操舵連係手段は、前記ハンドルからのびるハンドル軸と、前記後輪受け枠に側設した操舵中間軸とを回転可能に継ぐ無端連紐手段を有し、かつ前記操舵中間軸は逆向きに回転させる逆伝達手段を介在させて、前記後輪操舵軸部を旋回させ操舵することを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記駆動手段は、前記ペダルを設けたクランク軸と、前記後輪受け枠に設けた水平な駆動軸とを連係する無端連紐を具えるとともに、前記歯車手段は、前記駆動軸に設けた第1の傘歯車と、該第1の傘歯車に噛合し前記後輪操舵軸部に回転可能に外挿される駆動筒の上端部に設けた第2の傘歯車と、前記駆動筒の下端部に設けた第3の傘歯車と、この第3の傘歯車に噛合し前記後輪軸に設けた第4の傘歯車とからなることを特徴としている。
【0010】
又請求項4の発明では、前記駆動手段は、ペダルの逆回転を許容する1方向クラッチを具えることを特徴としている。
【0011】
又請求項5の発明では、前記後輪操舵軸部は、垂直線に対して3〜20度のキャスタ角度を有して下端が前方側へ傾斜することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の後輪駆動四輪自転車は、叙上の如く、後輪が、駆動輪及び操舵輪を兼ねている。従って、操舵の際に前輪側が左右に急激に振られることがなく、前輪側の荷台に載せた荷物や人を安定して運びうるという後輪操舵の利点を発揮しながら、操舵方向に直接駆動されながら進むため、旋回性や操縦安定性を向上させることができる。
【0013】
しかも後輪は、360度を越えて操舵旋回しうる。従って、後輪駆動四輪自転車は、その前輪を旋回中心とした、即ち最小の回転半径を有した小回り旋回を可能とするなど、方向転換が容易となる。そのため、例えば、狭い場所での旋回や、駐輪時の幅寄せなどをスムーズかつ容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本実施形態の後輪駆動四輪自転車(以下、単に「四輪自転車」ということがある。)の側面図、図2は、その正面図、図3は、その平面図を示す。
【0015】
図1〜3に示すように、前記後輪駆動四輪自転車1は、その前後方向の中間部に配した操舵部3と、この操舵部3の前方に設けられる積載用部4と、前記操舵部3の後方に設けられるサドル部5と、該サドル部5の後方に設けられる後輪装置6と、後輪20を回転する駆動手段7と、後輪20を操舵する操舵連係手段8とをメインフレーム2に形成している。
【0016】
前記メインフレーム2は、前記積載用部4の巾中心線に沿って緩やかな上り勾配で後方へ延びる棒状に形成される。又前記積載用部4は、前記メインフレーム2の前端に固定される例えば幅広矩形枠組み状の下地フレーム4Aを有し、この下地フレーム4Aの前端側かつ両側に、前輪12、12が取り付けられる。この前輪12、12は、本例では、それぞれ独立して回転可能に枢着され、従って、前記四輪自転車1が旋回する際、旋回外側の前輪12と旋回内側の前輪12との転動距離の差を吸収することができ、滑りのない円滑な旋回走行を行いうる。なお前記前輪12、12は、それぞれ前記下地フレーム4Aに、路面からの衝撃を吸収緩和するダンバー13を介して取り付けられる。
【0017】
また、前記積載用部4は、本例では、前記下地フレーム4A上に配される下地板4B、及び該下地板4Bのさらに上方に配されかつ乗員が腰掛けしうる肘掛付きの座席部4Cを含む場合が例示されている。この座席部14は、前記下地フレーム4Aが幅広の矩形枠組み体からなるため、比較的大きな巾を確保でき、乗員を安定して載せることができる。また前記下地板4Bは、乗員が乗り降りするためにステップ台、或いは足置きとして使用できる。しかし前記積載用部4は、このような態様に限られるわけではなく、前記座席部14に代え、例えば、病人などを搬送するベッド(図示省略)、荷物を載せる荷台(図示省略)などとして形成することもできる。さらには下地フレーム4A上に前記下地板4Bを設けることのみで、前記積載用部4を構成することもできる
【0018】
次に、前記サドル部5は、操作者(運転者)が載るサドル15と、該サドル15から下方へとのびる棒状のサドルポスト16と、前記メインフレーム2に固定された縦筒状のサドルポスト取付部17とを具える。前記サドルポスト16は、その下端を前記サドルポスト取付部17に挿入し、その挿入の深さによって、前記サドル15の高さ位置を調節し得る。なお前記サドルポスト取付部17は、その上端に設けられた螺子式の締め具18によって、前記サドルポスト16の高さ位置を固定し得る。
【0019】
次に、前記後輪装置6は、図6に示すように、一対の後輪20、20と、この一対の後輪20、20を継ぐ後輪軸21と、前記後輪軸21を枢支する軸受部22と、該軸受部22から上方にのび該軸受部22を操舵旋回させる後輪操舵軸部23と、前記メインフレーム2に固定されかつ前記後輪操舵軸部23を操舵回転可能に保持する後輪受け枠24(図4、5に示す)とを具える。
【0020】
一対の前記後輪20、20は、それぞれタイヤホイール20a(図5に示す)を介して前記後輪軸21に一体回転可能に固定される。即ち、各後輪20が互いに独立して回転することなく、前記後輪軸21と各後輪20、20とが一体となって回転する。又前記後輪軸21は、前記軸受部22に内蔵されたベアリング軸受26(図5に示す)によって、回転可能に枢支される。
【0021】
又一対の前記後輪20、20では、そのタイヤ赤道間の車輪間隔L(図2に示す)が、狭すぎると左右の安定性が悪くなり、逆に広すぎるとコーナリング走行時、旋回外側の後輪20と内側の後輪20との回転速度の差が大きくなるため操舵性が不安定となり、しかも小回り旋回に不利となる。以上の観点より、前記車輪間隔Lは、その下限値が50mm以上、さらには70mm以上が好ましく、また上限値が200mm以下、さらには150mm以下が好ましい。
【0022】
又前記後輪操舵軸部23は、前記軸受部22から上方にのび、かつ前記後輪受け枠24に設けられるベアリング軸受29(図5に示す)によって、回転自在に枢支される。これにより後輪操舵軸部23は、前記軸受部22と一体となって該軸受部22を、360度(一回転)を越えて水平方向に操舵回転(操舵旋回)させうる。本例では、後輪操舵軸部23は、多数回に亘って正逆方向に自在に回転可能に保持されている。又前記後輪操舵軸部23の上端には、平歯車状の後輪操舵軸歯車30が設けられる。
【0023】
本例では、前記後輪操舵軸部23は、垂直線に対して3〜20度のキャスタ角度θ(図4に示す)を有してその下端23dが前方側へ傾斜している。これにより、前記後輪軸21の両端で支持される一対の後輪20、20において、旋回時、前記後輪操舵軸部23の操舵回転によって、旋回外側の前記後輪20を路面から浮き上がらせることができる。即ち、旋回内側の後輪20のみが接地することとなる。その結果、旋回外側の前記後輪20が、旋回時に接地面とスリップを発生させることがなくなり、スムーズかつ安定したコーナリングを行いうる。なお、前記キャスタ角度θが3度未満の場合、前記効果が充分期待できず、逆に20度を越えると、旋回外側の前記後輪20の浮き上がり量が過大となって、自転車のバランスを損ねる恐れが生じる。以上の観点より、前記キャスタ角度θは、下限値として、5度以上、さらには7度以上がより好ましく、又上限値として12度以下、さらには10度以下がより好ましい。
【0024】
次に、前記操舵部3は、図1に示すように、操作者が握るハンドル31と、該ハンドル31から下方にのびるハンドル軸32と、該ハンドル軸32をその下方で回転可能に枢支するハンドル軸取付部33とを具える。
【0025】
前記ハンドル31は、本実施形態では、操作者が手で握って操作する握り部31aが上を向く略U字型に形成されている。このような形状により、例えば、操作者は、360°を越えて前記ハンドル31を回転操作させても、前記握り部31aが常に一定半径の円弧上を通るため、操作者は姿勢を変える必要がなく、ハンドル操作を容易に行いうる。
【0026】
前記ハンドル軸32は、前記ハンドル31から下方にのびるとともに、その下端部は、前記メインフレーム2に固定された縦筒状の前記ハンドル軸取付部33に挿入されて回転可能に枢支される。又前記ハンドル軸32には、前記ハンドル軸取付部33よりも上方位置に、ハンドル軸スプロケット35が、該ハンドル軸32とは同心かつ一体回転可能に固定される。従って図6に示すように、前記ハンドル31が例えば矢印R1の方向へ操舵旋回したとき、前記ハンドル軸スプロケット35は、ハンドル31と同方向に一体回転しうる。
【0027】
次に、前記操舵連係手段8は、図6の如く、前記ハンドル31に連係し前記後輪操舵軸部23を旋回させることにより、後輪20を操舵する。具体的には、前記操舵連係手段8は、前記後輪受け枠24に取り付く操舵中間軸36、及び前記ハンドル軸32と該操舵中間軸36とを回転可能に継ぐ無端連紐手段37を有し、又後輪20を、駆動手段7により回転しつつ360度を越えて操舵旋回させうる。
【0028】
前記操舵中間軸36は、前記後輪操舵軸部23よりも前方側に位置して、かつ該後輪操舵軸部23と平行に、前記後輪受け枠24に保持される。又前記操舵中間軸36は、前記後輪受け枠24にベアリング軸受(図示省略)を介して回転可能に枢支されるとともに、その一端部(本例では下端部)には、操舵中間軸スプロケット42が同心かつ一体回転可能に固定される。
【0029】
前記無端連紐手段37は、前記ハンドル軸スプロケット35と、操舵中間軸スプロケット42と、このスプロケット35、42間に周回可能に巻装されるチェーン等の操舵用無端連紐37aとを具える。本例では、前記ハンドル軸スプロケット35と、前記操舵中間軸スプロケット42とはその歯数が同数であり、従って、無端連紐手段37は、ハンドル31と同角度分だけ、操舵中間軸36を同方向に回転させうる。なお当然ではあるが、前記操舵用無端連紐37aとして、歯付ベルトを用いることもでき、係る場合には、前記ハンドル軸スプロケット35及び前記操舵中間軸スプロケット42に代えて、前記歯付きベルトに噛合するベルトプーリーが使用される。
【0030】
前記操舵中間軸36には、その上端部に、前記後輪操舵軸歯車30と噛合する平歯車状の操舵中間軸歯車40が、該操舵中間軸36と同心かつ一体回転可能に固定される。即ち、前記操舵中間軸36は、互いに噛合する前記歯車30、40により、前記後輪操舵軸部23とは逆向きに回転可能に連結される。即ち、前記歯車30、40により逆伝達手段38が構成されるとともに、操舵中間軸36は、逆向きに回転させる前記逆伝達手段38を介在させて、前記後輪操舵軸部23を旋回させて操舵しうる。本例では、前記操舵中間軸歯車40と後輪操舵軸歯車30とはその歯数が同数であり、従って、前記操舵連係手段8は、前記ハンドル31と同角度分だけ後輪操舵軸部23を逆向きR2に操舵回転させうる。
【0031】
次に、前記駆動手段7は、図7に示すように、操作者によるペダル43の回転により、前記後輪受け枠24に設けた歯車手段44を介して前記後輪20、20を回転駆動する。具体的には、前記駆動手段7は、前記ペダル43を設けたクランク軸45と、前記後輪受け枠24に設けた水平な駆動軸46とを連係する無端連紐47を具える。
【0032】
前記クランク軸45は、前記メインフレーム2に回転自在に枢支されるとともに、このクランク軸45には、チェーンリング49が同心かつ一体回転可能に取り付けられる。
【0033】
前記駆動軸46は、前記後輪受け枠24(図4に示す)から水平に突出するとともに、この駆動軸46には、駆動軸スプロケット51が同心にかつ回転自在に枢着される。又前記駆動軸スプロケット51と前記チェーンリング49との間には、チェーンである無端連紐47が周回可能に巻装される。従って、駆動軸スプロケット51は、操作者によるペダル操作により、クランク軸45と同方向に回転駆動される。なお図中の符号52は、無端連紐47を張設するテンションスプロケットである。なお当然ではあるが、前記無端連紐47として、歯付ベルトを用いることもでき、係る場合には、前記チェーンリング49及び駆動軸スプロケット51に代えて、前記歯付きベルトに噛合するベルトプーリーが使用される。又本例では、前記駆動軸スプロケット51内には、ペダル43の逆回転を許容する1方向クラッチ(図示省略)が内蔵されている。従って、従来的な二輪自転車と同様、クランク軸45からの前進方向の駆動回転のみが後輪20に伝達されるなど、後退方向の駆動回転に対しては空転できる。即ち、タイヤ側からのクランク軸側への入力が断たれるため、惰性走行を可能とする他、例えば下り坂での走行の安全性を高めうる。なお前記1方向クラッチは、チェーンリング49に内蔵させても良い。
【0034】
前記歯車手段44は、図5、7の如く、前記駆動軸46に設けた第1の傘歯車44aと、該第1の傘歯車44aに噛合しかつ前記後輪操舵軸部23に回転可能に外挿される駆動筒53の上端部に設けた第2の傘歯車44bと、前記駆動筒53の下端部に設けた第3の傘歯車44cと、この第3の傘歯車44cに噛合しかつ前記後輪軸21に設けた第4の傘歯車44dとから構成される。前記第1の傘歯車44aは、前記駆動軸スプロケット51とは互いに同心かつ一体回転可能に一体連結されている。
【0035】
又前記駆動筒53は、前記後輪受け枠24の下方側に位置して、前記後輪操舵軸部23に回転可能に外挿保持される。そしてこの駆動筒53の上端部、及び下端部には、それぞれ前記第2の傘歯車44b、及び第3の傘歯車44cが該駆動筒53とは同心かつ一体回転可能に取付けられる。又前記第4の傘歯車44dは、前記後輪軸21に、この後輪軸21とは同心かつ一体回転可能に取り付けられる。本例では、第4の傘歯車44dが、前記タイヤホイール20aを介して後輪軸21に一体回転可能に固定される場合が例示されている。
【0036】
このように歯車手段44が構成されるため、図7の如く、操作者のペダル操作による駆動力Dは、クランク軸45→チェーンリング49→無端連紐47→駆動軸スプロケット51→第1の傘歯車44a→第2の傘歯車44b→駆動筒53→第3の傘歯車44c→第4の傘歯車44d→後輪軸21に順次伝達される。このとき、前記駆動筒53が、前記後輪操舵軸部23に回転可能に外挿保持されているため、前記ハンドル操作による前記後輪操舵軸部23の操舵回転に影響されることなく、駆動筒53は自在に回転しうる。即ち、前記ペダル操作による駆動力Dは、ハンドル操作による操舵回転に影響されることなく、独立して後輪軸21まで伝達されるため、後輪20を回転駆動しつつ360度を超えた操舵旋回を行うことが可能となる。
【0037】
なお前記駆動手段7には、制動手段として、図4の如く、円盤状のディスクロータ62aと、ブレーキパッドを有するブレーキキャリパー62bとからなるディスクブレーキ62が付設される。
【0038】
前記ディスクロータ62aは、本例では、図5の如く、前記第2の傘歯車44bに、同心かつ一体回転可能に固定される。又前記ブレーキキャリパー62bは、前記後輪受け枠24或いはメインフレーム2に取り付き、そのブレーキパッドがディスクロータ62aを両面側から挟み込むことで、制動力を付与しうる。なおディスクブレーキ62は、前記ハンドル31に配されるブレーキレバー31bへのレバー操作によって作動することができる。なお制動手段として前記ディスクブレーキ62に限定されることなく、公知の種々の構造のものを採用することができる。
【0039】
このように前記後輪駆動四輪自転車1は、後輪20を操舵輪としているため、操舵の際に前輪側が左右に急激に振られることがなく、従って積載用部4に載せた荷物や人を安定して運びうる。しかも、この操舵輪である後輪20が駆動され、操舵方向に直接駆動しながら進むことができるため操舵性能に優れ、旋回性や操縦安定性を向上させるとともに、僅かな幅寄せなど、精度の高い運転操作が簡単に行なえる。又並列した一対の後輪20、20が同じ回転力で駆動されて路面を走行するため、例えば前記積載用部4に重量物を載せた場合でも、後輪20のグリップ力を充分に確保でき、直進時の駆動性に加え、優れた旋回性や操縦安定性を発揮しうる。そのため、特に、高齢者、障害者などを載せて移動する介護用の低速用自転車として好適に採用することができる。
【0040】
前記後輪駆動四輪自転車1は、図8(A)に示すように、例えば、直進状態で始動する場合、一対の前記後輪20が路面に接地してグリップ力が確保されるため、スリップすることなく直進(矢印E1)でき、その後の走行中を通じて安定した操舵性能を維持できる。また前記後輪20の一方がパンクした場合などにおいても、他方の後輪20が駆動操舵輪として機能しうるため、転倒を防止しつつ走行を続行できるなど走行の安全性を高めうる。
【0041】
また、図8(B)に示すように、例えば、前記ハンドル31を右回転させる(矢印H2)ことにより、前記後輪20、20が左回転する(矢印T2)。これにより、前記後輪駆動四輪自転車1は、右に旋回することができる(矢印E2)。このように、従来的な自転車と同様のハンドル操作によって旋回しうるため、操縦感覚に違和感を持つことがなく、容易に運転し得る。
【0042】
また図8(C)に示すように、例えば、前記ハンドル31を右に90度操舵回転させる(矢印H3)と、前記後輪20、20は、左に90度操舵回転する(矢印T3)。前記後輪駆動四輪自転車1は、この状態で前記ペダル43を漕ぐことにより、旋回内側の前記前輪12を略旋回中心として回転し得る(矢印E3)。即ち後輪駆動四輪自転車1は、最小の回転半径を有した小回り旋回を可能とする。
【0043】
又図8(D)に示すように、前記ハンドル31を180度操舵回転させる(矢印H4)と、前記後輪20、20も180度操舵回転する(矢印T4)。このとき後輪20、20は、前記ペダル43による回転駆動によって後方側に回転するため、後輪駆動四輪自転車1を後退移動させることができる(矢印E4)。従って、例えばエレベータなどの狭いスペースに前方から進入した場合でも、前記ハンドル31を180度操舵回転させることによって、後輪駆動四輪自転車1から降りることなく、そのままの姿勢で容易に後退移動することができる。
【0044】
図9に他の実施例を例示している。本例では、前記ハンドル軸32は、前記ハンドル軸取付部33に挿入されて回転可能に枢支される下のハンドル軸部32aと、この下のハンドル軸部32aにユニバーサルジョイント60を介して前後に屈曲可能に連結される上のハンドル軸部32uとからり、かつ前記上のハンドル軸部32uは、屈曲姿勢調整具61によって、所望の屈曲姿勢で支持される。なお前記屈曲姿勢調整具61は、前記ハンドル軸32の屈曲点を中心とする円弧の案内孔61cを有しかつ前記ハンドル軸取付部33又は前記メインフレーム2等に固定される扇状支持板61dを具える。そして、前記案内孔61cを通る螺子式の止め具61bが、前記上のハンドル軸部32uに螺着されることにより、前記上のハンドル軸部32uは、所望の屈曲姿勢で固定される。このように、本例では前記上のハンドル軸部32uを、操作者の体格、性別などの応じた最適な屈曲姿勢に調整しうるため、長時間使用しても疲れることなく安全に走行できる点で好ましい。
【0045】
また、本例では、前記ハンドル31としてリング状のものを例示している。このようなリング状のハンドル31は、360度以上操舵回転させる場合、略U字型のものに比して操作性に優れるという利点がある。特にユニバーサルジョイント60と併用する時、操作者からの距離が一定となるため、操作性をより高めうる。
【0046】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明の後輪駆動四輪自転車1は、前記駆動手段7に、前記ペダル43の回転を補助する電動機等を取り付けることもできるなど、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の後輪駆動四輪自転車の側面図である。
【図2】その正面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その要部拡大図である。
【図5】そのA−A断面矢視図である。
【図6】操舵手段及び操舵連係手段を説明する部分斜視図である。
【図7】駆動手段及び歯車手段を説明する部分斜視図である。
【図8】(A)は直進状態を説明する略平面図、(B)は45°近くの角度で旋回走行する状態を説明する略平面図、(C)は、前輪を略中心として旋回する状態を説明する略平面図、(D)は後退状態を説明する略平面図である。
【図9】他の実施例を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 後輪駆動四輪自転車
2 メインフレーム
3 操舵部
4 積載用部
5 サドル部
6 後輪装置
7 駆動手段
8 操舵連係手段
12 前輪
20 後輪
21 後輪軸
22 軸受部
23 後輪操舵軸部
24 後輪受け枠
43 ペダル
44 歯車手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の中間部に配した操舵部、この操舵部の前方に設けられかつ両側に配した前輪を有して被載置体をのせうる積載用部、前記操舵部の後方に設けられ操作者が載るサドル部、該サドル部の後方に設けられかつ1対の後輪を継ぐ後輪軸を枢支する軸受部から上方にのび該軸受部を操舵旋回させる後輪操舵軸部と、この後輪操舵軸部を保持する後輪受け枠とを含む後輪装置、ペダルの回転により前記後輪受け枠に設けた歯車手段を介して後輪を回転する駆動手段、及び前記操舵部に設けたハンドルに連係し前記後輪操舵軸部を旋回させることにより後輪を操舵する操舵連係手段をメインフレームに形成した後輪駆動四輪自転車であって、
前記操舵連係手段は、後輪を、前記駆動手段により回転しつつ360度を越えて操舵旋回することを特徴とする後輪駆動四輪自転車。
【請求項2】
前記操舵連係手段は、前記ハンドルからのびるハンドル軸と、前記後輪受け枠に側設した操舵中間軸とを回転可能に継ぐ無端連紐手段を有し、かつ前記操舵中間軸は逆向きに回転させる逆伝達手段を介在させて、前記後輪操舵軸部を旋回させ操舵することを特徴とする請求項1記載の後輪駆動四輪自転車。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記ペダルを設けたクランク軸と、前記後輪受け枠に設けた水平な駆動軸とを連係する無端連紐を具えるとともに、前記歯車手段は、前記駆動軸に設けた第1の傘歯車と、該第1の傘歯車に噛合し前記後輪操舵軸部に回転可能に外挿される駆動筒の上端部に設けた第2の傘歯車と、前記駆動筒の下端部に設けた第3の傘歯車と、この第3の傘歯車に噛合し前記後輪軸に設けた第4の傘歯車とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の後輪駆動四輪自転車。
【請求項4】
前記駆動手段は、ペダルの逆回転を許容する1方向クラッチを具えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の後輪駆動四輪自転車。
【請求項5】
前記後輪操舵軸部は、垂直線に対して3〜20度のキャスタ角度を有して下端が前方側へ傾斜することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の後輪駆動四輪自転車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−83539(P2009−83539A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252199(P2007−252199)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(504008760)ランドウォーカー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】