説明

後部車体構造

【課題】自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる後部車体構造、ひいては、高張力鋼板を用いた薄肉化による車体軽量化を効率的に向上できる後部車体構造を提供すること。
【解決手段】フロアパネルと、前記フロアパネルの左右部分に形成されたリアホイールハウス20と、前記リアホイールハウス20に対応して設けられたリアストラットタワー25と、前記フロアパネルの側部及び前記リアホイールハウス20に接続されたリアピラー50とを備えた後部車体構造10であって、前記フロアパネルと、前記リアピラー50のそれぞれとを相互に連結する補強部材70を備え、前記補強部材70は、車体後方から見たときに、中央部から左側上部、左側下部、右側上部、右側下部に向かって延在する補強凸部を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用車体のねじり剛性を向上するための後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車の燃費や運動性能の向上、安全対策や装備充実にともなう重量増加を吸収するために、自動車の軽量化が求められており、そのために、例えば、高張力鋼板を用いた車体構造の薄肉化による車体の軽量化が進められている。
例えば、590MPa級高張力鋼板を用いて車体を軽量化した場合、車体強度を確保しつつ従来鋼板と比較して約40%程度の軽量化が実現可能とされ、非常に大きな成果を期待することができる。
【0003】
一方、自動車は、走行中に路面の凹凸から受ける力や路肩等に乗り上げた場合の衝撃等、種々の力を受けるため、車体強度に加えてねじり剛性が必要とされるが、高張力鋼板を用いて車体構造を薄肉化すると、車体強度が確保されても、ねじり剛性は、一般的に低下する。
これは、温度履歴や成分等により鋼板の引張強度が向上しても、鉄のヤング率は一定であるため、車体構造が薄肉化されると、断面二次極モーメントが小さくなり、その結果、ねじり剛性が低下するためである。
したがって、車体を薄肉化して軽量化する場合、ねじり剛性を向上することが必要である。
【0004】
車体のねじり剛性の評価は、例えば、図9に示すようなねじり剛性測定方法を用いて、図10に示すようなねじれ角又はねじれ角に対応する荷重を測定して行なう。
図9は、ホワイトボディ(車体)100のねじり剛性測定方法を示す概念図を、図10は、リアアクスルセンタ100Rを基準とするフロントアクスルセンタ100Fのねじれに基づくねじり剛性を説明する図である。
【0005】
ねじり剛性の測定は、例えば、図9(A)に示すように、ホワイトボディ100をリアアクスルセンタ(リアの車軸位置)100RでリアストラットRにより固定し、フロントストラットFを介してフロントアクスルセンタ(フロントの車軸位置)100Fにねじりトルクを負荷して得られる平均的なねじり剛性値GJにより評価される。(G;横弾性係数、J;断面極二次モーメント)
【0006】
フロントアクスルセンタ100Fに対するねじりトルクTは、例えば、図9(B)に、図9(A)におけるY−Y矢視図として示すように、左右のフロントストラットFL、FRにそれぞれダミーバー101の上端を取り付け、ダミーバー101の下端を取付けたシーソ台102を軸芯O周りに回動することにより負荷される。
【0007】
ねじり剛性値GJは、図10に、図9(A)におけるX−X矢視図として示すように、フロントアクスルセンタ100FにねじれトルクTを負荷した際に生じるフロントアクスルセンタ100Fにおける車体の左右の変位δL、δRに基づいて算出される。なお、図10において、二点鎖線及び実線で示した100Dは、それぞれねじりトルクTを負荷する前後のフロントアクスルセンタ100Fにおける車体(外形)を示している。
ここで、ねじりトルクTによるねじれ角θ(rad)は小さいので、
θ≒tanθ=((δL+δR)/B) ;(Bは、フロントアクスルセンタ100FにおけるねじりトルクT負荷に係る車体幅寸法)と近似することができるため、
ねじり剛性値GJ=(T/(θ/ホイールベース長さL))
=(T・B・ホイールベース長さL)/(δL+δR)
となる。(例えば、「自動車の強度」(株式会社 山海堂 1990年10月30日 第2刷発行)参照)
【0008】
上記車体のねじり剛性の向上に関して、後部車体構造に着目した技術として、例えば、特許文献1、2に示すような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−137140号公報
【特許文献2】特開2006−335088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、車体構造の薄肉化により軽量化を推進するためには、上記先行技術等だけでは充分とはいえず、高張力鋼板の将来の強度向上を睨んださらに有効な技術に対する強い要請がある。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる後部車体構造、ひいては、高張力鋼板を用いた薄肉化により、車体軽量化を効率的に向上できる後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、フロアパネルと、前記フロアパネルの左右部分に形成されたリアホイールハウスと、前記リアホイールハウスに対応して設けられたストラットタワーと、前記フロアパネルの側部及び前記リアホイールハウスに接続されたリアピラーとを備えた後部車体構造であって、前記フロアパネルと、前記リアピラーのそれぞれとを相互に連結する補強部材を備え、前記補強部材は、車体後方から見たときに、、中央部から左側上部、左側下部、右側上部、右側下部に向かって延在する主補強形状部を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る後部車体構造によれば、中央部から左側上部、左側下部、右側上部、右側下部に向かって延在する主補強形状部を備えた補強部材が、フロアパネルと左右のリアピラーを相互に連結しているので、後部車体構造の上部をフロアパネルに対して左右方向にずらすモーメントの発生を効率的に抑制して、車体のねじり剛性を向上することができる。
なお、主補強形状部とは、
(1)中央部から車体幅方向左右の上下の対角部を相互に結ぶ補強形状部
(2)中央部から車体幅方向左右の上下の対角部に向かって途中まで相互に結ぶ補強形状部
(3)(1)、(2)であって、中央部に補強形状が形成されていない補強形状部
(4)(1)から(3)であって、途中に補強形状が形成されていない補強形状部
(5)(1)から(4)に加えて、他の補強形状部が形成された補強形状部
を含む概念である。
また、補強部材を含む面は、
(1)左右のリアストラットタワーにおいて負荷される荷重の中心を含む面と一致
(2)後部車体構造を側面から見たときに、左右のリアストラットタワーにおいて負荷される荷重の中心を含む面と平行
(3)後部車体構造を側面から見たときに、左右のリアストラットタワーにおいて負荷される荷重の中心を含む面とずれる方向
のいずれかに配置されていてもよい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の後部車体構造であって、前記補強部材は、前記主補強形状部が形成される主パネルと、一端部が前記主パネルの車体幅方向外側に連結され、他端部が前記リアピラーの車体幅方向内側に立設して連結される一対の副パネルと、備えることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る後部車体構造によれば、補強部材が、主パネルと、副パネルとを備え、主パネルはリアパネルを介して左右のリアピラーが連結されるので、補助部材をリアピラーに容易に連結することができる。
また、主パネルが、副パネルと連結自在に構成することにより、主パネルを副パネルから容易に分離することが可能となり、補強部材に容易に開口部を形成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の後部車体構造であって、前記リアピラーは、前記補強部材の上方において左右間が連結されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る後部車体構造によれば、例えば、アッパーバック、サイドクロスメンバ等により、補強部材の上方において左右のリアピラーが連結されているので後部車体構造上部にける左右のリアピラー間の間隔の変位(接近、離間)が抑制される。その結果、車体構造のねじりモーメントを効率的に向上することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の後部車体構造であって、前記副パネルが、シートバックサイドパネルであることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る後部車体構造によれば、副パネルが左右のシートバックサイドパネルにより構成されているので、トランクルーム内の空間を占有することなく空間を有効活用しつつねじり剛性を向上することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、前記補強部材は、前記主補強形状部に加えて、車体幅方向に形成された第1補助補強形状部と車体高さ方向に形成された第2補助補強形状部の少なくともいずれかを備えることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る後部車体構造によれば、主補強形状部に加えて、第1補助補強形状部と第2補助補強形状部の少なくともいずれかが形成されているので、ねじり剛性を効率的に向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る後部車体構造によれば、自動車の車体のねじり剛性を効率的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体の全体構造の概略を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る後部車体構造を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る補強部材を車体後方から見た図である。
【図4】第1の実施形態に係る補強部材を側面から見た概略図である。
【図5】第1の実施形態に係る主パネルの概略を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る主パネルの概略を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る主パネルの概略を示す図である。
【図8】本発明の第1から第3の実施形態に係る補強部材の取付位置による変形例を、側面視した概略図である。
【図9】車体のねじり剛性測定方法の一例を示す概略図であり、(A)は車体構造の長手方向における荷重を負荷する位置を、(B)は、(A)におけるY−Y矢視図であり、車体の幅方向におけるトルク発生の概略を説明する図である。
【図10】車体のねじり剛性を説明する図であり、図9(A)におけるX−X矢視図であり、ねじりトルクを負荷する前後の車体の変位及びねじれ角を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1から図4を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車体構造の概略を示す図であり、符号1は、例えば、モノコックボディに係る車体構造を、符号10は後部車体構造を示している。
車体構造1は、構成する部材が、例えば、590MPa級高張力鋼により形成され、特に記載をしない場合、各部材は、スポット溶接により接続されている(なお、スポット溶接に関しては、適宜記載する。)。
【0025】
後部車体構造10は、図2、図3に示すように、例えば、フロアパネル15と、リアホイールハウス20と、リアストラットタワー25と、シートバックパネル40と、リアピラー50と、アッパーバック60と、補強部材70とを備え、トランクスルー用の開口部41を有した構成とされている。
【0026】
リアホイールハウス20は、左右のリアホイールハウス20L、20Rを備え、後部車体構造10の幅方向内方に膨出するとともに幅方向外方及び下方に開口して形成されている。
また、リアホイールハウス20L、20Rは、フロアパネル15の左右部分に形成されたリアホイールハウス20L、20Rと対応する凹周縁部に、例えば、スポット溶接により接続されている。
【0027】
リアストラットタワー25は、左右のリアホイールハウス20と対応して設けられており、この実施形態では、例えば、後部車体構造10の前後方向におけるリアホイールハウス20の中央位置(リアアクスルセンタ10R)に、幅方向におけるリアホイールハウス20L、20R内側位置に隣接して形成されている。
【0028】
シートバックパネル40は、この実施形態において、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rと、上部壁部40Aとを備え、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rの上縁部が上部壁部40Aに接続され、略門形状に形成されている。
【0029】
左右のシートバックサイドパネル40L、40Rは、例えば、スポット溶接により、下側縁部がフロアパネル15に連結され、外側縁部が左右のリアピラー50及びリアホイールハウス20の前部上側(側部も含む)に、それぞれ立設されており、シートの後側を支持するようになっている。
なお、シートバックパネル40は、補強部材70の副パネルを構成している。
【0030】
また、シートバックパネル40は、組立てられて車両を構成した際に、トランクルーム30の前側に位置して、居室とトランクルーム30とを区分する隔壁として機能するとともに、左右のシートバックサイドパネル40L、40R、上部壁部40A、及びフロアパネル15で囲まれた開口部41がトランクスルーを構成するようになっている。
【0031】
リアピラー50は、例えば、スポット溶接により、フロアパネル15の側部及びリアホイールハウス20の周縁部、補強部材70を構成するシートバックパネル40に連結されている。
【0032】
アッパーバック60は、前縁部がシートバックパネル40の上部壁部40Aの上縁部に、例えば、スポット溶接により連結されるとともに、左右のリアピラー50を連結され、シートバックパネル40の上部壁部40Aとともにリアピラー50の左右間を架け渡す構成とされている。
【0033】
補強部材70は、主パネル71と、シートバックパネル(副パネル)40とを備え、主パネル71は、門形状に形成されたシートバックパネル40の凹部、すなわち、フロアパネル15にシートバックパネル40を連結したときの、開口部41に配置され、例えば、ボルト等の締結手段(不図示)を用いて、シートバックパネル40、フロアパネル15に連結されている。
【0034】
また、補強部材70は、図4に示すように、後部車体構造10を側面視したときに、補強部材70及びシートバックパネル40を含む面が、左右のリアアクスルセンタ10Rを含む面とずれた方向に位置し、かつリアアクスルセンタ10Rを含む面と間隔をあけて配置されている。
【0035】
また、主パネル71は、図5に示すように、例えば、外形が略矩形に形成された鋼板をプレス成形することにより形成され、プレス成形時に、主パネル本体72に、補強凸部(主補強形状部)73が形成されている。
【0036】
第1の実施形態において、補強凸部73は、中央部から左側上部に向かって伸びる第1補強凸部73Aと、左側下部に向かって伸びる第2補強凸部73Bと、右側上部に向かって伸びる第3補強凸部73Cと、右側下部の角部に向かって伸びる第4補強凸部73Dと、中央部の接続補強凸部73Eとを有している。
【0037】
第1補強凸部73A、第2補強凸部73B、第3補強凸部73C、第4補強凸部73Dは、それぞれ所定の一定幅に成形されていて、第1補強凸部73A〜第4補強凸部73Dが接続補強凸部73Eで接続されて、いわゆるタスキ掛けに形成されている。
なお、第1補強凸部73A〜第4補強凸部73Dは、例えば、主パネル本体72をプレス成形する際に、成形可能な範囲で、主パネル71の角部近傍まで延在させることが好適である。
【0038】
第1の実施形態に係る後部車体構造10によれば、補強部材70が、左右のリアピラー50、フロアパネル15に連結されているので、車体構造1のねじり剛性を向上することができる。
【0039】
また、後部車体構造10によれば、補強部材70が、シートバックパネル40の開口部41に配置されているので、トランクルーム30の空間を占有することなく空間を有効活用しつつねじり剛性を向上することができる。
【0040】
また、主パネル71をシートバックサイドパネル40に取付けて補強部材70を構成するので、例えば、後部車体構造10と一体に構成される部分が小さく、車体構造1の製造が容易であり、また、主パネル71を後部車体構造10から容易に取り外すことができる。その結果、車両を効率的に組立てることができる。
【0041】
また、後部車体構造10によれば、補強部材のない車体に、補強部材70を設けた場合に、ねじり剛性を30%向上できることを確認した。
【0042】
なお、主パネル71とシートバックパネル40をボルト等により連結するのに代えて、例えば、アーク溶接等、他の溶接手段により固定してもよいし、又リベットやボルト等、他の締結部材を用いて機械的に固定してもよい。
【0043】
また、例えば、補強凸部73が主パネル本体72にプレス成形するのに代えて、主パネル本体72を構成する鋼板に、例えば、別途成形した補強リブ用部材等をスポット溶接やアーク溶接により連結し、又ボルトやリベット等を用いて取付けてもよい。
また、肉盛溶接により主補強形状部を形成して、主パネル71を構成してもよい。
また、補強凸部73の一部に、主パネル本体72からの高さが異なる部分を設けてもよい。
【0044】
また、第1補強凸部73A、第2補強凸部73B、第3補強凸部73C、第4補強凸部73Dを一定幅に成形するのに代えて、例えば、これら補強凸部73の長手方向中央側を幅広く成形してもよいし、第1補強凸部73A、第2補強凸部73B、第3補強凸部73C、第4補強凸部73Dの形状を適宜設定することができる。
【0045】
また、左右のリアピラー50をアッパーバック60により連結するのに代えて、例えば、他のリアクロスメンバにより左右のリアピラー50を連結してもよいし、左右のリアピラー50を連結しない構成としてもよい。
また、左右のシートバックサイドパネル40L、40Rが上部壁部40Aにより連結されていないシートバックパネルを用いてもよい。
【0046】
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態が、第1の実施形態と異なるのは、主パネル75が、補強凸部73に加えて、第1補助補強形状部76Aと、第2補助補強形状部76Bを備えている点である。
第1補助補強形状部76Aは、車体幅方向に沿って略長円形状に形成されるとともに補強凸部73の上側及び下側に配置され、第2補助補強形状部76Bは、車体高さ方向に沿って略長円形状に形成されるとともに補強凸部73の左側及び右側に配置されている。
その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
なお、第1補助補強形状部76Aと第2補助補強形状部76Bのいずれか一方のみを備えた構成としてもよいし、例えば、第1補助補強形状部76Aを補強凸部73の上下のいずれか一方のみに設けてもよい。
また、第1補助補強形状部76A、第2補助補強形状部76Bのいずれか又は双方に長円形状以外の形状、例えば、主パネル本体72の補強凸部73を除く部分の形状と相似な形状や、台形等としてもよい。
後部車体構造11によれば、ねじり剛性の点で優れている。
【0048】
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態が、第1の実施形態と異なるのは、主パネル77が、第1補強凸部73A、第2補強凸部73B、第3補強凸部73C、第4補強凸部73Dから構成された主補強形状部78を備え、接続補強凸部73Eを有しない点である。
その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
なお、主パネル77に、第2の実施形態に係る第1補助補強形状部76A、第2補助補強形状部76Bのいずれか一方又は双方を備えた構成としてもよい。
後部車体構造11によれば、固有振動数の調整が可能になる点で優れている。
【0049】
次に、図8を参照して、本発明の第1から第3の実施形態に関する補強部材の取付位置の変形例について説明する。
【0050】
まず、図8(A)を参照して、第1の変形例について説明する。
第1の変形例に係る後部車体構造11は、補強部材80を備えている。
補強部材80は、主パネル(不図示)と、例えば略中央部に主パネルが取付け可能な開口部が形成され枠形状に形成された副パネル(不図示)とを備え、主パネルが副パネルの開口部にボルト等により取付けられている。(以下、第2から第3の変形例も同様である。)
【0051】
第1の変形例が、第1の実施形態と異なるのは、補強部材80の下部が、シートバックパネル40とリアストラットタワー25の間で、フロアパネル15に連結され、上部がシートバックパネル40とリアストラットタワー25の間で、アッパーバック60と連結され、上方を後方に向けて設けられている点である。
その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造11によれば、補強部材の面外変形を防ぎ,ねじり剛性をより高める点で優れている。
【0052】
次に、図8(C)を参照して、第3の変形例について説明する。
第3の変形例に係る後部車体構造13は、補強部材90を備えている。
第3の変形例が、第1の実施形態と異なるのは、補強部材90の下部が、リアストラットタワー25の後方で、フロアパネル15に連結され、上部がリアストラットタワー25より前方で、アッパーバック60と連結されている点である。なお、補強部材90は、上方を前方に向けて設けられ、補強部材90を含む面がリアアクスルセンタ10Rを含む面と交差するように構成されている。その他は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
後部車体構造13によれば、ストラットからの荷重を効率よくリアピラーに伝達する点で優れている。
【0053】
なお、上記第4〜第7の実施形態において、補強部材80、85、90、95が副パネルを備え、副パネルを介してリアピラー50等に連結される場合について説明したが、補強部材80、85、90、95が一枚のパネルから構成され連結部に対応する箇所に設けたブラケット等を用いてフロアパネル15、リアピラー50等と直接連結する構成としてもよい。
かかる構成により、車体構造1のねじり剛性を大きく向上することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、車体が高張力鋼により形成される場合について説明したが、車体構造の一部又は全部が高張力鋼以外の材料により形成されていてもよい。
【0055】
また、全体の車体構造1がモノコックボディからなる場合について説明したが、例えば、一部にフレーム構造を有するなど他の車体構造に適用してもよい。
【0056】
また、上記実施の形態においては、リアホイールハウス20の内側にリアストラットタワー25が隣接して設けられる場合について説明したが、リアストラットタワー25が、例えば、リアホイールハウス20の上側、リアホイールハウス20よりも内側又は後方等に形成されていてもよい。
また、本発明に係る後部車体構造10、11、12、13、14は、内燃機関を搭載した自動車のほか、ハイブリッド車、各車輪に電動機が設けられた電気自動車等に適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
自動車の車体構造のねじり剛性を効率的に向上することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車体構造
10 後部車体構造
10R リアアクスルセンタ
15 フロアパネル
20 リアホイールハウス
25 リアストラットタワー(ストラットタワー)
30 トランクルーム
40 シートバックパネル(副パネル)
40A 上部壁部(副パネル)
40L、40R シートバックサイドパネル(副パネル)
50 リアピラー
60 アッパーバック
70、80、85、90、95 補強部材
71 主パネル
73 補強凸部(主補強形状部)
73A、73B、73C、73D、73E 補強凸部(主補強形状部)
76A 第1補助補強形状部
76B 第2補助補強形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、
前記フロアパネルの左右部分に形成されたリアホイールハウスと、
前記リアホイールハウスに対応して設けられたストラットタワーと、
前記フロアパネルの側部及び前記リアホイールハウスに接続されたリアピラーと、を備えた後部車体構造であって、
前記フロアパネルと、前記リアピラーのそれぞれとを相互に連結する補強部材を備え、
前記補強部材は、
車体後方から見たときに、中央部から左側上部、左側下部、右側上部、右側下部に向かって延在する主補強形状部を備えることを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の後部車体構造であって、
前記補強部材は、
前記主補強形状部が形成される主パネルと、
一端部が前記主パネルの車体幅方向外側に連結され、他端部が前記リアピラーの車体幅方向内側に立設して連結される一対の副パネルと、備えることを特徴とする後部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の後部車体構造であって、
前記リアピラーは、前記補強部材の上方において左右間が連結されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の後部車体構造であって、
前記副パネルが、シートバックサイドパネルであることを特徴とする後部車体構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造であって、
前記補強部材は、
前記主補強形状部に加えて、車体幅方向に形成された第1補助補強形状部と車体高さ方向に形成された第2補助補強形状部の少なくともいずれかを備えることを特徴とする後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−201228(P2012−201228A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67885(P2011−67885)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】