説明

循環式トイレ

【課題】余剰水槽内の処理水を曝気して強制的に蒸発させ大気に放散することでメンテナンスを軽減する。
【解決手段】循環式トイレ100は、便器1の下方に複数の生物処理槽(3〜7)と余剰水槽16とからなる汚水処理槽2を配設し、この汚水処理槽2によって汚水を浄化して該浄化後の処理水を循環させ、洗浄水として便器1に供給するものであり、複数の生物処理槽(3〜7)の下流側に、複数の生物処理槽(3〜7)から溢れた処理水を貯留する余剰水槽16を配置している。そして、余剰水槽16の処理水を曝気して蒸発させるべく、この余剰水槽16に浮かして配置された曝気蒸発手段25と、この曝気蒸発手段25に空気を送り込むブロワ20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の下方に配設した複数の生物処理槽により汚水を浄化させ、浄化後の処理水を洗浄水として便器に送水し再利用する循環式トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
公園やイベント会場、野営地等における屋外の常設及び仮設トイレとして、従来の移動式トイレに代わって循環式トイレが重用されるようになってきている。この種、循環式トイレでは、一度便器洗浄に使用した洗浄水を生物処理等して清浄にした後、再度洗浄水として使用するため、洗浄水としてシステムに加わる水分量の汲み取りが不要であり維持管理が容易であるという特徴を有する。
【0003】
すなわち、処理槽内に上水を補給して使用を開始した後は、原則として一般の水洗トイレのように外部から上水を補給する必要はない。しかし、使用回数が増えると屎尿が蓄積加算されるので、汚水の総量は増していき、この余剰水を、例えばバキュームカーで汲み取る方式によると、バキューム車の利用料金や処理料金がかかるため不経済である。一方、循環式トイレは浄化槽ではないので、放流することは禁止されている。
【0004】
また、汚水を土壌処理する方式では、余剰水を土壌に浸透させ、土壌表面及び土壌上の植栽を介して大気に蒸発させるが、この場合は土壌処理専用の敷地が必要であり、大雨時には専用土壌外に余剰水が流出するおそれがある。
【0005】
更に、このようなトイレ装置として、例えば特許文献1には、便器を設置した便槽の下部に排水バルブを有するドレンパイプを設けた点が開示されている。これによると、ドレンパイプに連通して地中に埋設した底面のみ開放した汚泥分解筒を有し、固形分は便槽内で微生物により分解させ、汚泥状に消化された状態で年に1回又は2回程度排水バルブを開放して地中に浸透させるというものである。
【0006】
また、特許文献2には、便器に排泄された大便と小便、及び洗浄水を固液分離する機構を設け、大便は圧送機構によって大便処理槽に導いて微生物によって発酵分解させ、小便及び便器洗浄水はリサイクル槽に導き、該リサイクル槽内の小便及び便器洗浄水を利用して便器の洗浄を行うようにした点が開示されている。
【特許文献1】特開平11−47034号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平11−131552号公報(第4−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、余剰水を土壌に直に浸透させているが、前述したように、土壌処理専用の敷地が必要であり、また、土壌や地下水の汚染が懸念される。この対策として、例えば図5に示すように、トイレ室40の地下にトイレ装置100の生物処理槽を配設し、余剰水槽16内に設けた水中ポンプ41により、ホース44を介して処理水を畑42に供給して野菜43の栽培に利用したものが考えられる。
【0008】
しかし、この場合においても、土壌中の適宜箇所で浸透を防止すべくシート45等を設ける必要があり、大雨時には専用土壌外に余剰水が流出するおそれがある。
また、特許文献2では、リサイクル槽にオーバフロー槽兼蒸散槽が接続されていて、リサイクル槽を溢れた処理水は、このオーバフロー槽兼蒸散槽に流れ込んで自然蒸発される構成を有しているが、自然蒸発のため蒸発効率が悪い。このため、余剰水が流出するおそれもある。
【0009】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、余剰水槽内の処理水を曝気して強制的に蒸発させ大気に放散することでメンテナンスを軽減させる循環式トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
便器の下方に複数の生物処理槽と余剰水槽とからなる汚水処理槽を配設し、該汚水処理槽にて汚水を浄化して該浄化後の処理水を循環させ、洗浄水として便器に供給する循環式トイレにおいて、
前記生物処理槽の下流側に配置され、該生物処理槽から溢れた処理水を貯留する余剰水槽と、
該余剰水槽の処理水を曝気して蒸発させるべく、該余剰水槽に浮かして配置された曝気蒸発手段と、
該曝気蒸発手段に空気を送り込むブロワと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の循環式トイレにおいて、
前記曝気蒸発手段は、
前記余剰水槽の水面に浮上するフロートと、
該フロートに所定間隔を隔ててその水面下に固定支持された曝気管と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の循環式トイレにおいて、
前記余剰水槽の水位を検出するセンサと、
該センサが前記余剰水槽の所定値以上の水位を検出したことで警報を発する警報手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、余剰水槽に浮かして配置された曝気蒸発手段により、余剰水槽内の処理水を曝気して強制的に蒸発させ大気に放散することで、余剰水処理についての管理が半減されるので、メンテナンス面及びコスト面を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態における循環式トイレ100の全体構成を示している。同図において、この循環式トイレ100は、水洗式の便器1の下方に複数の生物処理槽(3〜7)と余剰水槽16とからなる汚水処理槽2が配設され、この汚水処理槽2にて汚水を浄化し、浄化後の処理水を洗浄水として循環させて便器1に送水する方式が採用されている。
【0015】
本実施形態では、汚水処理槽2は複数の生物処理槽(3〜7)を有していて、これら複数の生物処理槽(3〜7)に順に汚水が下流側に送られて浄化される。すなわち、汚水処理槽2は、便器1からの汚物と洗浄水を固形物と浮遊物に分離する嫌気性の沈殿分離槽3と、浮遊物等を含む中間水を生物処理する接触曝気槽4と、生物処理後の中間水から沈殿物を分離する沈殿分離槽5と、沈殿分離後の中間水にオゾンガスを接触させるオゾン接触槽6、及び水中の不要なオゾンガスを分解するオゾン分解槽7と、を有している。
【0016】
接触曝気槽4の槽内には、微生物が住み着き易くなるように表面を凹凸にしたろ材8と、このろ材8に配管11を介して空気を送り込む散気管9が配置されている。この散気管9には、ブロア10から空気が送り込まれていて、この空気が、ろ材8の下方から散気管9に形成された多数の穴(図示せず)から細かい気泡となって上昇して、好気性処理が進み水質がさらによくなる。
【0017】
また、オゾン接触槽6の槽内には、多数の穴(図示せず)が形成された散気管12が配置されている。この散気管12には、オゾン発生器13により作られた高濃度のオゾンガスが配管14を経て多数の穴から気泡として噴出する。そして、槽内の水とオゾンとが十分に接触することにより、処理水が脱臭及び脱色されて槽内の水はさらに清浄になる。
【0018】
オゾン分解槽7では、清浄水中の不要なオゾンガスが分解された後、該清浄水は配管31を介してポンプ30により便器1の洗浄に使用される。なお、オゾン接触槽6の上部には、該オゾン接触槽6から発生する余剰のオゾンを除去するオゾン除去装置32が設けられ、オゾン除去後に大気に放散している。
【0019】
ここで、本実施の形態では、複数の生物処理槽(3〜7)の下流側に配置され、該複数の生物処理槽(3〜7)から溢れた処理水を貯留する余剰水槽16と、この余剰水槽16の処理水を曝気して蒸発させるべく、余剰水槽16に浮かして配置された曝気蒸発手段25と、この曝気蒸発手段25に空気を送り込むブロワ20とを備えている。
【0020】
図2に示すように、この曝気蒸発手段25は、余剰水槽16の水面に浮上するフロート18と、このフロート18に所定間隔を隔ててその水面下に支持具19を介して固定支持された曝気管17とを備えている。曝気管17には多数の穴(図示せず)が形成されていて、上述したブロワ20から曝気管17に送り込まれた空気は、この多数の穴から泡となって余剰水槽16内に噴出される。
【0021】
フロート18としては、例えば発泡スチロールやタイヤチューブ、又は塩化ビニル等の合成樹脂が用いられる。また、フロート18と曝気管17との中心間の距離Hは一定である。この距離Hは、処理水を曝気して蒸発させる能力に関係していて、例えば40〜400mmに設定されるが、本実施形態では、より好ましくは50〜200mmに設定されている。なお、ブロア20から空気を送り込む送風管24には、伸縮自在なフレキシブルホースが用いられている。
【0022】
上述した構成により、オゾン分解槽7の水位が余剰水の増加に伴って上昇し、越流面15から水が溢れて越流すると、この水は余剰水槽16に貯留される。こうして貯留された余剰水槽16内の水位は、使用開始時はゼロであっても、使用されることで上昇していく。
【0023】
本実施形態では、フロート18と曝気管17とは支持具19により固定支持されているため、余剰水槽16内の水位の変動に関係なく、水面から曝気管17までの距離Hは常に一定である。このため、ブロア20から余剰水槽16内に大量の空気を送り込むことができ、余剰水槽16の処理水を多量に蒸発させて水位を低下させることができる。これにより、余剰水槽16内の水位を自動的に調節してメンテナンスを軽減することができる。
【0024】
これに対し、若しも曝気管17が余剰水槽16の底部に固定されている場合は、水面から曝気管17までの距離は水位によって変動することになる。このため、水位が高いときには、水位が低いときと比べてブロア20の性能上、余剰水槽16内に少量の空気しか送り込むことができず、よって余剰水槽16からの蒸発量も減少する。これにより、余剰水槽16内の水位が異常に上昇して、汲み取り等の必要が生じるおそれがある。
【0025】
ところで、余剰水槽16内には、水位監視用の電極21(又はフロートスイッチ)が設けられていて、この電極21により、余剰水槽16内の水位を検出することができる。すなわち、本実施形態では、電極21は3本の電極棒21a,21b,21cを有していて、余剰水槽16内の水位が低い順から夫々A点,B点,C点を越えたときに制御回路22に検出信号を送出する。
【0026】
制御回路22では、この検出信号を受信して余剰水槽16内の水位に応じてブロア20と排気ファン23とを連動制御するようになっている。
次に、図2〜図4に基づき本実施形態の作用について説明する。
【0027】
図2は、余剰水槽16内の水位が低い時の状態を示している。すなわち、余剰水槽16内の水位はゼロからスタートし、水位が中間のB点に達して電極棒21bがこれを検出するまでは、制御回路22によりブロア20と排気ファン23は駆動されず、停止状態を保っている。
【0028】
次に、図3は、余剰水槽16内の水位が高くなった時の状態を示している。すなわち、余剰水槽16内の水位がB点に達すると、電極棒21bがこれを検出し、この検出信号に基づき、制御回路22によりブロア20と排気ファン23が駆動される。こうして、ブロア20から曝気管17に向けて空気が送られ、その空気は余剰水槽16内に噴出されて泡となり、処理水を曝気して蒸発させる。同時に、排気ファン23によって蒸発気体を外部に放出する。
【0029】
このようにして、処理水が蒸発し余剰水槽16内の水位がA点まで下がると、ブロア20と排気ファン23は運転が停止され、以下、前述したと同様の動作が繰り返される。
更に、図4に示すように、トイレの使用回数が当初の想定の範囲を超えて多く、曝気蒸発手段25による蒸発が追いつかず、余剰水槽16内の水位がC点を越えたとする。すると、電極棒21cがこれを検出し、制御回路22を介してアラーム灯27が点灯し、管理者に汲み取り等の必要性を知らせる。なお、このアラーム灯27の代わりに警報音を発するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態における循環式トイレの全体構成を示す図である。
【図2】余剰水槽(低水位時)の詳細を示す図である。
【図3】余剰水槽(高水位時)の詳細を示す図である。
【図4】余剰水槽(異常高水位時)の詳細を示す図である。
【図5】トイレ装置における水処理の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 便器
2 汚水処理槽
3 沈殿分離槽
4 接触曝気槽
5 沈殿分離槽
6 オゾン接触槽
7 オゾン分解槽
8 ろ材
9 散気管
10 ブロア
11 配管
12 散気管
13 オゾン発生器
14 配管
15 越流面
16 余剰水槽
17 曝気管
18 フロート
19 支持具
20 ブロア
21 電極
21a 電極棒
21b 電極棒
21c 電極棒
22 制御回路
23 排気ファン
24 送風管
25 曝気蒸発手段
27 アラーム灯
30 ポンプ
31 配管
32 オゾン除去装置
40 トイレ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の下方に複数の生物処理槽と余剰水槽とからなる汚水処理槽を配設し、該汚水処理槽にて汚水を浄化して該浄化後の処理水を循環させ、洗浄水として便器に供給する循環式トイレにおいて、
前記生物処理槽の下流側に配置され、該生物処理槽から溢れた処理水を貯留する余剰水槽と、
該余剰水槽の処理水を曝気して蒸発させるべく、該余剰水槽に浮かして配置された曝気蒸発手段と、
該曝気蒸発手段に空気を送り込むブロワと、を備えている、
ことを特徴とする循環式トイレ。
【請求項2】
前記曝気蒸発手段は、
前記余剰水槽の水面に浮上するフロートと、
該フロートに所定間隔を隔ててその水面下に固定支持された曝気管と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の循環式トイレ。
【請求項3】
前記余剰水槽の水位を検出するセンサと、
該センサが前記余剰水槽の所定値以上の水位を検出したことで警報を発する警報手段と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の循環式トイレ。


【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−327235(P2007−327235A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158946(P2006−158946)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000111292)ネポン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】