説明

微多孔膜、これらの膜の作製方法、およびバッテリーセパレータフィルムとしてのこれらの膜の使用

本発明は、高いメルトダウン温度、高い透気度、および高い突刺強度を有する微多孔膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造およびバッテリーセパレータフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年1月27日出願の米国特許出願第61/298,756号の優先権を主張し、2010年1月27日出願の米国特許出願第61/298,752号、2009年6月19日出願の米国特許出願第61/218,720号、2010年5月20日出願の米国特許出願第61/346,675号、および2010年6月4日出願の米国特許出願第61/351,380号の利益および優先権を主張し、それらの全てはその全体が参照により組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、高いメルトダウン温度、高い透気度、および高い突刺強度を有する微多孔膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造およびバッテリーセパレータフィルムとしてのかかる膜の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、一次電池および二次電池用のバッテリーセパレータフィルム(「BSF」)として有用である。このような電池としては、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。
【0004】
内部短絡を防ぐために、バッテリーセパレータフィルムは比較的小さい熱収縮、特に高温を有することが望ましい。約1.0%〜10.0%の範囲の105℃における熱収縮を有する微多孔膜は、ポリオレフィンを用いて作製されてきた。例えば、特開昭60−242035号公報には、溶媒と7.0×10以上の重量平均分子量を有するポリオレフィンとを含有する溶液を押し出すことにより作製されるゲル状シートを成形すること、ゲル状シートから溶媒を除去すること、次いでゲル状シート延伸することを含むプロセスにより作製される膜が開示されている。
【0005】
微多孔膜は、比較的高い、透気度、突刺強度、およびメルトダウン温度を有することもまた望ましい。例えば、特開昭59−196706号公報および特開昭61−227804号公報には、電池の安全性の向上のためにポリメチルペンテン(PMP)を用いて膜のメルトダウン温度を高くすることが開示されている。しかしながら、これらの膜は比較的高いシャットダウン温度を有する。特開平07−060084号公報および特許第3634397号には、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンを含み、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンを溶媒または第3のポリマーと混合することにより製造される微多孔膜が開示されている。このフィルムは、比較的低いシャットダウン温度および比較的高いメルトダウン温度を有すると言われている。さらに、米国特許第6,096,213号には、いかなる溶媒または第3のポリマーも用いることなくポリエチレンおよびポリメチルペンテンを含む膜を作製する方法が開示されている。特開2004−161899号公報には、比較的高い透気度および105℃における小さい熱収縮を有するポリエチレンおよびポリメチルペンテンを含む微多孔膜が開示されている。特開2005−145999号公報には、ポリメチルペンテンおよびα−オレフィンコポリマーを含む微多孔膜が開示されている。ポリメチルペンテンを用いて微多孔膜の特性が改善されてきたが、さらなる改善が望まれている。
【特許文献1】特開昭59−196706号公報
【特許文献2】特開昭61−227804号公報
【特許文献3】特開平07−060084号公報
【特許文献4】特許第3634397号
【特許文献5】米国特許第6,096,213号明細書
【特許文献6】特開2004−161899号公報
【特許文献7】特開2005−145999号公報
【発明の概要】
【0006】
ある実施形態においては、本発明は、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを含む膜であって、微多孔性であり、かつ180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および0.90×10mN/μm以上の突刺強度を有する、膜に関する。
【0007】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造プロセスであって、
(1)希釈剤と、Aの量のポリメチルペンテン、Aの量のポリプロピレン、およびAの量のポリエチレンを含むポリマーとの混合物であり、5.0重量%≦A<25.0重量%、5.0重量%≦A<25.0重量%、かつA≦90.0重量%である(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの重量が基準である)混合物を押し出す工程;
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程;ならびに
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程
を含む、プロセスに関する。
【0008】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置するバッテリーセパレータとを含む電池であって、バッテリーセパレータが、(i)バッテリーセパレータの重量を基準として5.0重量%以上のポリメチルペンテン、(ii)ポリプロピレン、および(iii)ポリエチレンを損ない(compromising)、膜が、180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および0.90×10mN/μm以上の突刺強度を有する、電池に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
微多孔膜中のポリメチルペンテンの量を増やすと、膜のメルトダウン温度の上昇ならびに膜の強度および透気度の望ましくない低下につながることが認められている。ある実施形態においては、本発明は、比較的高いメルトダウン温度ならびに向上した強度および透気度を有する微多孔膜の発見に一部基づいている。かかる膜は、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを含む。他の実施形態においては、本発明は、ポリプロピレンが比較的高い分子量および結晶化度を有するアイソタクチックポリプロピレンであると膜の強度がさらに向上し得る、という発見に一部基づいている。他の実施形態においては、本発明は、膜中のポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを、混合ポリマーの押出物から膜を製造する場合等に使用することができる以下で定義する混合条件下で混合すると、膜の収率が上昇し得る、という発見に基づいている。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「ポリマー」という用語は、複数の高分子を含む組成物を意味し、これらの高分子は1種または複数のモノマーに由来する繰返し単位を含む。高分子は、大きさ、分子構造、原子含有量等が異なっていてもよい。「ポリマー」という用語は、コポリマー、ターポリマー等の高分子を含む。「ポリエチレン」は、50.0%以上(個数基準)のエチレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。「ポリプロピレン」は、50.0%超(個数基準)のプロピレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン単位であるポリプロピレンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。アイソタクチックポリプロピレンという用語は、(アイソタクチックポリプロピレンの合計モル数を基準として)約50.0モル%mmmmペンタッド以上、好ましくは96.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率を有するポリプロピレンを意味する。「ポリメチルペンテン」は、50.0%以上(個数基準)のメチルペンテン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリメチルペンテンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がメチルペンテン単位であるポリメチルペンテンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。「微多孔膜」は、細孔を有する薄膜であって、膜の細孔量の90.0パーセント以上(体積基準)が0.01μm〜10.0μmの範囲の平均直径を有する細孔にある膜である。押出物から製造される膜に関しては、機械方向(「MD」)は、ダイから押出物が製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、押出物のMDおよび厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。
微多孔膜の組成
【0011】
ある実施形態においては、本発明は、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを含む膜であって、微多孔性であり、かつ180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および0.90×10mN/μm以上の突刺強度を有する、膜に関する。ある実施形態においては、微多孔膜は、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを含み、ポリメチルペンテンの量は、5.0重量%≦ポリメチルペンテン<25.0重量%の範囲であり、ポリプロピレンの量は、5.0重量%≦ポリプロピレン≦25.0重量%の範囲であり、ポリエチレンの量は、50.0重量%<ポリエチレン≦90.0重量%の範囲である(重量パーセントは膜の重量が基準である)。所望により微多孔膜は、10.0重量%以上25.0重量%以下のポリメチルペンテン、10.0重量%以上25.0重量%以下のポリプロピレン、および50.0重量%以上80.0重量%以下のポリエチレンを含む。
【0012】
前述の実施形態のいずれにおいても、膜は、以下の性質の1つまたは複数を有し得る:(i)膜中のポリメチルペンテンの量(重量%)は膜中のポリプロピレンの量(重量%)以上である(重量パーセントは膜の重量が基準である)、(ii)ポリメチルペンテンおよびポリプロピレンは、膜の重量を基準として例えば25.0重量%〜35.0重量%の範囲といった、合わせて25.0重量%以上の量で膜中に存在する、(iii)ポリメチルペンテンは、例えば210℃〜240℃の範囲、例えば223.0℃〜230.0℃の範囲といった、200.0℃以上のTm、および例えば10dg/分〜40dg/分の範囲、例えば22.0dg/分〜28.0dg/分の範囲といった、80.0dg/分以下のMFRを有する、(iv)ポリプロピレンは、例えば約0.8×10〜約3.0×10の範囲、例えば約0.9×10〜約2.0×10の範囲といった、6.0×10以上の重量平均分子量(「Mw」)、例えば2.0〜約8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、20.0以下、または8.5以下、または6.0以下の分子量分布(「MWD」、Mwを数平均分子量「Mn」で割ったものと定義される)、および例えば110J/g〜120J/gの範囲といった、90.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有するアイソタクチックポリプロピレンである、(v)ポリエチレンは、1.0×10〜2.0×10の範囲のMwおよび130.0℃以上の融点(「Tm」)を有する、(vi)ポリエチレンは、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量を有する。所望によりポリエチレンは、複数のポリエチレン、例えば、(a)例えば50.0重量%〜95.0重量%の範囲といった、45.0重量%以上の、1.0×10未満のMwおよび132℃以上のTmを有する第1のポリエチレンならびに(b)5.0重量%以上〜55.0重量%の、1.0×10以上のMwおよび134℃以上のTmを有する第2のポリエチレン(重量パーセントはポリエチレン混合物の重量が基準である)の混合物(例えば反応器ブレンド)である。
【0013】
前述の実施形態のいずれにおいても、膜は以下の特性の1つまたは複数を有する:5.0%以下の105℃におけるTD熱収縮、20.0%未満の130℃におけるTD熱収縮、40.0%以下の170℃におけるTD熱収縮、25.0μm以下の厚さ、および20%〜80%の範囲の多孔度。例えば一実施形態においては、膜は、(i)25.0重量%〜35.0重量%の、1.0×10以上のMwおよび134℃以上のTmを有するポリエチレン、(ii)25.0重量%〜35.0重量%の、1.0×10未満のMwおよび132℃以上のTmを有するポリエチレン、(iii)例えば18.0重量%〜22.0重量%といった、15.0重量%〜24.0重量%の、223.0℃〜230.0℃の範囲のTmおよび22.0dg/分〜28.0dg/分の範囲のMFRを有するポリメチルペンテン、(iv)15重量%〜25重量%の、約0.9×10〜約2.0×10の範囲のMw、約2.0〜約8.5の範囲のMWD、および110J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンを含む微多孔膜である。かかる微多孔膜は、例えば以下の特性の1つまたは複数(および所望により全て)を有してもよい:15.0μm〜30.0μmの範囲の厚さ;例えば197℃〜205℃といった、190℃〜210℃の範囲のメルトダウン温度;例えば0.01%〜0.5%の範囲といった、0.5%以下の105℃TD熱収縮;10.0%以下、1.0%〜7.5%の、130℃TD熱収縮;例えば10秒/100cm/μm〜30秒/100cm/μmの範囲といった、30秒/100cm/μm以下の規格化透気度;30.0%〜60.0%の範囲の多孔度、および例えば1.0×10mN/μm〜2.5×10mN/μmの範囲といった、1.0×10mN/μm以上の規格化突刺強度。前述の発明の実施形態は、本発明のある特定の態様について詳述する働きをしているが、本発明はそれらに限定されるものではなく、これらの実施形態についてのこの説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。微多孔膜はポリマーを含むが、以下、これらのポリマーについてさらに詳細に説明する。
ポリメチルペンテン
【0014】
ある実施形態においては、ポリメチルペンテン(「PMP」)は、繰返し単位の少なくとも80.0%(個数基準)がメチルペンテン単位であるポリマーまたはコポリマーを含む。望ましいPMPは、例えば約200.0℃〜約250.0℃の範囲、例えば約210.0℃〜約240.0℃、または約220.0℃〜約230.0℃といった、200.0℃以上の融解温度(Tm)を有する。膜が240.0℃超、また特に250.0℃超のTmを有するPMPを含有する場合、膜が170.0℃超の温度にさらされた時に機械的強度の喪失を示さない膜を製造することがより困難であるということが認められている。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、これはPEのTmとPMPのTmの差が大きい場合にPMPとPEとの均一な混合物の製造が困難であることが原因である、と考えられている。また、膜が200.0℃未満のTmを有するPMPを含有する場合、比較的高いメルトダウン温度を有する膜を製造することがより困難であるということも認められている。PMPのTmは、"Macromolecules, Vol.38, pp. 7181-7183 (2005)"に例示されている、ポリプロピレンについて以下に説明する方法と同様の示差走査熱量測定法で決定することができる。
【0015】
ある実施形態においては、PMPは、例えば約0.5dg/分〜約60.0dg/分、例えば約1dg/分〜約30dg/分、例えば約10dg/分〜約40dg/分の範囲といった、80.0dg/分以下のメルトフローレート(「MFR」、ASTM D 1238に従って測定;260℃/5.0kg)を有する。PMPのMFRが80.0dg/分超であると、比較的高いメルトダウン温度を有する膜を製造することがより困難となり得る。1つまたは複数の実施形態においては、PMPは、1.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する。PMPのMwは、ポリプロピレンについて以下に説明する方法と同様のゲル浸透クロマトグラフィー法で決定することができる。
【0016】
PMPは、例えば、(チタン、またはチタンとマグネシウムを含有する触媒系等の)チーグラー・ナッタ触媒系または「シングルサイト触媒」を用いる重合プロセスで製造することができる。ある実施形態においては、PMPは、4−メチルペンテン−1またはメチルペンテン−1等のメチルペンテン−1モノマーをα−オレフィン等の1つまたは複数のコモノマーとともに用いて配位重合により製造される。所望によりα−オレフィンは、ブタン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクタン−1、ノネン−1、およびデセン−1の1つまたは複数である。シクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、ノルボルネン、トリシクロ−3−デセン等の、環状コモノマー(1つまたは複数)を用いてもよい。ある実施形態においては、コモノマーはヘキセン−1である。PMP中のコモノマー含有量は、通常は20.0モル%以下である。
【0017】
PMPは、例えば240.0℃以下といった250.0℃以下のTmを有する混合物を製造するために、PMPの混合物(例えば乾燥混合または反応器ブレンド)であってもよい。
ポリエチレン
【0018】
特定の実施形態においては、ポリエチレン(「PE」)は、2つ以上のポリエチレン(以下に記載の「PE1」、「PE2」、「PE3」、「PE4」等)の混合物等の、ポリエチレンの混合物または反応器ブレンドを含んでもよい。例えばPEは、(i)第1のPE(PE1)および/または第2のPE(PE2)と(ii)第4のPE(PE4)とのブレンドを含んでもよい。所望により、これらの実施形態は第3のPE(PE3)をさらに含んでもよい。
PE1
【0019】
ある実施形態においては、第1のPE(「PE1」)は、例えば、例えば約1.0×10〜約0.90×10の範囲といった、1.0×10未満のMw、例えば約2.0〜約50.0の範囲といった、50.0以下のMWD、および炭素原子1.0×10個当たり0.20未満の末端不飽和基量を有するPEであってもよい。所望によりPE1は、約4.0×10〜約6.0×10の範囲のMwおよび約3.0〜約10.0のMWDを有する。所望によりPE1は、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下、または炭素原子1.0×10個当たり0.12以下、例えば炭素原子1.0×10個当たり0.05〜0.14の範囲(例えば、測定の検出限界よりも下)の末端不飽和基量を有する。PE1は、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のSUNFINE(登録商標)SH-800(登録商標)またはSH-810(登録商標)高密度PEであってもよい。
PE2
【0020】
ある実施形態においては、第2のPE(「PE2」)は、例えば、例えば約2.0×10〜約0.9×10の範囲といった、1.0×10未満のMw、例えば約2〜約50の範囲といった、50.0以下のMWD、および炭素原子1.0×10個当たり0.20以上の末端不飽和基量を有するPEであってもよい。所望により、PE2は、炭素原子1.0×10個当たり0.30以上、または炭素原子1.0×10個当たり0.50以上、例えば炭素原子1.0×10個当たり0.6〜10.0の範囲の末端不飽和基量を有する。PE2の非限定的な例としては、例えば約7.5×10といった、約3.0×10〜約8.0×10の範囲のMw、および約4〜約15のMWDを有するものがある。PE2は、例えば、バセル(Basell)社製のLupolen(登録商標)であってもよい。
【0021】
PE1および/またはPE2は、例えばエチレンホモポリマー、または、α−オレフィン等の1種または複数のコモノマーをモル比で100%のコポリマーを基準として5.0モル%以下で含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。所望によりα−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1種または複数である。かかるPEは、132℃以上の融点を有してもよい。PE1は、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセスで製造することができるが、これは必須ではない。末端不飽和基量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定することができる。PE2は、例えばクロム含有触媒を用いて製造することができる。
PE3
【0022】
ある実施形態においては、PE3は、例えば、130.0℃以下のTmを有するPEであってもよい。130.0℃以下のTmを有するPE3を用いると、例えば130.5℃以下のシャットダウン温度といった、望ましいほどに低いシャットダウン温度を有する最終膜を得ることができる。
【0023】
所望により、PE3は、例えば105.0℃〜130.0℃、例えば115.0℃〜126.0℃の範囲といった、85.0℃以上のTmを有する。所望によりPE3は、例えば1.0×10〜4.0×10の範囲、例えば1.5×10〜約3.0×10の範囲といった、5.0×10以下のMwを有する。所望によりPE3は、例えば2.0〜5.0、例えば1.8〜3.5の範囲といった、5.0以下のMWDを有する。所望によりPE3は、0.905g/cm〜0.935g/cmの範囲の質量密度を有する。ポリエチレンの質量密度はASTM D1505に従って決定する。
【0024】
ある実施形態においては、PE3は、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマーの1つまたは複数等の5.0モル%以下のコモノマーとのコポリマーである。所望により、コモノマーの量は1.0モル%〜5.0モル%の範囲である。ある実施形態においては、コモノマーはヘキセン−1および/またはオクテン−1である。
【0025】
PE3は、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセス等のいずれかの都合のよいプロセスで製造することができる。所望によりPE3は、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、中密度ポリエチレン、分岐状LDPE、またはメタロセン触媒により製造されるPE等の直鎖状LDPEの1つまたは複数である。PE3は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,084,534号に開示されている方法(例えば当該特許の実施例27および41に開示されている方法)に従って製造することができる。
PE4
【0026】
ある実施形態においては、第4のPE(「PE4」)は、例えば、例えば約1.0×10〜約5.0×10の範囲といった1.0×10以上のMwおよび約1.2〜約50.0のMWDを有するPEであってもよい。PE4の非限定的な例としては、例えば約2.0×10といった、約1.0×10〜約3.0×10のMw、および例えば約2.0〜約20.0、好ましくは約4.0〜約15.0といった、20.0以下のMWDを有するものがある。PE4は、例えば、エチレンホモポリマー、またはモル比で100%のコポリマーを基準として、5.0モル%以下のα−オレフィン等の1種または複数のコモノマーを含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒を用いて製造することができるが、これは必須ではない。かかるPEは、134℃以上の融点を有してもよい。PE4は、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、例えば三井化学株式会社製のHI-ZEX MILLION(登録商標)240-m(登録商標)ポリエチレンであってもよい。PE1〜PE4の融点は、例えばPCT公開WO2008/140835に開示されている方法を用いて決定することができる。
【0027】
ある実施形態においては、PEは、ポリエチレンの混合物、例えば、(a)PE1および/またはPE4と、(b)PE4と、所望により(c)PE3との混合物である。例えば膜は、例えば45.0重量%〜95.0重量%の範囲といった、45.0重量%以上のPE1、30.0重量%以下のPE2、30.0重量%以下のPE3、および例えば5.0重量%〜55.0重量%といった、5.0重量%以上のPE4を含んでもよい(重量パーセントはPE混合物の重量が基準である)。所望により、PE混合物の重量を基準として、PE1の量は50.0重量%〜65.0重量%の範囲であり、PE4の量は35.0重量%〜50.0重量%の範囲である。
【0028】
ある実施形態においては、膜は、PE2を実質的に含まない。別の実施形態においては、膜は、PE3を実質的に含まない。さらに別の実施形態においては、膜は、PE1とPE3の両方を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、膜が0.1重量%以下の指定種を含有することを意味する。
ポリプロピレン
【0029】
ある実施形態においては、ポリプロピレン(「PP」)は、例えば、例えば7.5×10以上、例えば約0.8×10〜約3.0×10の範囲、例えば0.9×10〜2.0×10の範囲といった、6.0×10以上のMwを有するポリプロピレンであってもよい。所望によりPPは、160.0℃以上のTm、および例えば100.0J/g以上、例えば110J/g〜120J/gの範囲といった、90.0J/g以上のΔHmを有する。所望によりPPは、例えば約1.5〜約10.0の範囲、例えば約2.0〜約8.5の範囲といった、20.0以下のMWDを有する。所望によりPPは、プロピレンと5.0モル%以下のコモノマーとのコポリマー(ランダムまたはブロック)であり、コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等の1つまたは複数のα−オレフィン、またはブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の1つまたは複数のジオレフィンである。
【0030】
ある実施形態においては、PPはアイソタクチックポリプロピレンである。ある実施形態においては、PPは、(a)約90.0モル%mmmmペンタッド以上、所望により96.0モル%mmmmペンタッド以上、好ましくは96.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率、および(b)例えば炭素原子1.0×10個当たり約20以下といった、炭素原子1.0×10個当たり約50.0以下の立体的欠陥量、または例えば炭素原子1.0×10個当たり約5.0以下といった、炭素原子1.0×10個当たり約10.0以下の立体的欠陥量を有する。所望によりPPは、以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)162.0℃以上のTm、(ii)230℃の温度および25秒−1のひずみ速度における、約5.0×10Pa秒以上の伸張粘度、(iii)約230℃の温度および25秒−1のひずみ速度にて測定した場合の、約15以上のトルートン比、(iv)約0.1dg/分以下、例えば約0.01dg/分以下(すなわち、値が低く事実上MFRが測定不能)のメルトフローレート(「MFR」;ASTM D-1238-95 条件L、230℃および2.16kgにて)、または(v)PPの重量を基準として、例えば0.2重量%以下、例えば0.1重量%以下といった、0.5重量%以下の抽出可能な種の量(PPと沸騰キシレンとを接触させることにより抽出可能)。
【0031】
ある実施形態においては、PPは、約0.9×10〜約2.0×10の範囲のMw、例えば2.0〜8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックPPである。通常は、かかるPPは、94.0モル%mmmmペンタッド以上のメソペンタッド分率、炭素原子1.0×10個当たり約5.0以下の立体的欠陥量、および162.0℃以上のTmを有する。
【0032】
PPの非限定的な例、ならびにPPのTm、メソペンタッド分率、立体規則性、固有粘度、トルートン比、立体的欠陥、および抽出可能な種の量の決定方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2008/140835に記載されている。
【0033】
PPのΔHmは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/132942に開示されている方法で決定する。Tmは、パーキンエルマーインスツルメント社製、model Pyris 1 DSCによって得た示差走査熱量測定(DSC)デ−タから決定することができる。約5.5〜6.5mgの重量の試料をアルミニウム製の試料パンに封入する。DSCデータを、まず初めに、第一融解(デ−タは記録せず)と呼ぶ、試料を10℃/分の速度で230℃に加熱することにより記録する。冷却加熱サイクルを適用する前に、試料を10分間230℃に保持する。次いで、試料を10℃/分の速度で約230℃から約25℃に冷却(「結晶化」と呼ぶ)した後、10分間25℃に保持し、次いで10℃/分の速度で230℃に加熱(「第二融解」と呼ぶ)する。結晶化と第二融解の両方における熱事象を記録する。融解温度(T)は第2の融解曲線のピーク温度であり、結晶化温度(T)は結晶化ピークのピーク温度である。
他の種
【0034】
所望により、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174(ともにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーは、膜中に存在してもよい。ある実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として1.0重量%のかかる材料を含有する。
【0035】
例えば加工助剤としての少量の希釈剤または他の種もまた、層材料の重量を基準として通常は1.0重量%未満の量で、第1および/または第2の層材料中に存在してもよい。
【0036】
微多孔膜が押出しによって製造される場合、最終微多孔膜は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、通常は、膜の重量を基準として1重量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と膜の製造に用いるポリマーのMWD(例えば押出し前)との違いは、例えば、わずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
MwおよびMWDの決定
【0037】
ポリマーのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定することができる。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No.19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDの決定には、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。PEに関しては、公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。PPおよびPMPに関しては、公称流量は1.0cm/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、160℃に維持されたオーブン内に含まれている。
【0038】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。SEC溶離液として同じ溶媒を用いる。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0039】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
【0040】
以下、微多孔膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。押出しによって製造される単層膜について本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、またこの説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
膜の製造方法
【0041】
1つまたは複数の実施形態においては、微多孔膜は、PMP、PP、およびPEを、(例えば乾式混合または溶融混合により)希釈剤、および無機充填剤等の随意の構成成分と混合して混合物を形成し、次いで混合物を押し出して押出物を形成することにより製造することができる。希釈剤の少なくとも一部を押出物から除去して微多孔膜を形成する。例えば、PMP、PP、およびPEのブレンドを流動パラフィン等の希釈剤と混合して混合物を形成してもよく、その混合物を押し出して単層膜を形成する。所望により、追加の層を押出物に施して、例えばシャットダウン機能の低い最終膜としてもよい。言い換えれば、単層押出物または単層微多孔膜を積層または共押出しして多層膜を形成してもよい。
【0042】
膜の製造プロセスは、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を希釈剤除去後のいずれかの時点において膜から除去する工程、希釈剤除去の前または後に膜を熱的に処理(熱処理またはアニーリング等)にかける工程、希釈剤除去の前に押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程、および/または希釈剤除去の後に膜を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程等の随意の工程をさらに含んでもよい。PCT公開WO2008/016174に記載されている、随意の熱溶媒処理工程、随意の熱処理工程、随意の電離放射線による架橋工程、および随意の親水性処理工程等を所望により行ってもよい。これらの随意の工程の数も順序も重要ではない。
ポリマー−希釈剤混合物の製造
【0043】
1つまたは複数の実施形態においては、(上記の)PMP、PP、およびPEを混合してポリマーブレンドを形成し、このブレンドを希釈剤(希釈剤の混合物、例えば溶媒混合物であってもよい)と混合してポリマー−希釈剤混合物を製造する。混合は、例えば反応押出機等の押出機内にて行ってもよい。このような押出機としては、限定するものではないが、二軸スクリュー押出機、リング押出機、および遊星型多軸スクリュー押出機が挙げられる。本発明の実施は使用する反応押出機のタイプに限定されるものではない。充填剤、酸化防止剤、安定剤、および/または耐熱性ポリマー等の随意である種がポリマー−希釈剤混合物に含まれてもよい。このような随意である種の種類および量は、PCT公開WO2007/132942、同WO2008/016174、および同WO2008/140835に記載のものと同じであってもよく、それらの全ては全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
希釈剤は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーと相溶する。例えば希釈剤は、押出温度にて樹脂と合わさって単相を形成することが可能ないずれの種または種の組合せであってもよい。希釈剤の例としては、ノナン、デカン、デカリン等の脂肪族または環状炭化水素、およびパラフィン油、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルの1つまたは複数が挙げられる。例えば、40℃で20〜200cStの動粘度を有するパラフィン油を用いてもよい。希釈剤は、ともにその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第2008/0057388号および同第2008/0057389号に記載のものと同じであってもよい。
【0045】
ある実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物中のブレンドされたポリマーは、Aの量のPMP、Aの量のPP、およびAの量のPEを圧縮(compresses)しており、ここで、5.0重量%≦A<25.0重量%、5.0重量%≦A<25.0重量%、およびA≦90.0重量%である(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの重量が基準である)。所望により、Aは10.0重量%≦A<25.0重量%の範囲であり、Aは10.0重量%≦A<25.0重量%の範囲であり、Aは50.0重量%<A<80.0重量%の範囲である。所望により、A≧Aおよび/またはA+A≧25.0重量%である。
【0046】
所望によりPMPは、200.0℃〜250.0℃の範囲のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有する。所望によりPPは、6.0×10以上のMw、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンである。所望によりPEは、1.0×10〜2.0×10の範囲のMwおよび130.0℃以上のTmを有する。
【0047】
ある実施形態においては、ポリマーと希釈剤とは、例えば0.20KWh/kg>混合エネルギー≧0.39KWh/kgの範囲といった、0.50KWh/kg未満の混合エネルギーを用いて混合する。混合エネルギーがこの範囲内であると、押出物を引き裂かれることなくより大きい倍率に延伸することが可能であり、それにより(a)このプロセスからのより高い膜の収率、および(b)最終膜におけるより高い強度の両方につながることがわかっている。混合エネルギーは、キロワット時/キログラムを単位とする。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、0.50KWh/kg以下の混合エネルギーを用いると混合物内のPMPの分散が改善され、それにより技術的に有用な突刺強度を持つ膜が得られると考えられる。例えば、一実施形態においては、膜は実質的に均質なポリマー(例えばポリマー種の相分離が実質的にない)を含み、例えば膜は、10nm以上の直径を有するPE、PP、またはPMPのポリマードメインを実質的に含まない。所望により、膜中のポリマーの全重量を基準として、例えば0.001重量%以下といった0.01重量%以下の膜中のポリマーは、10nm以上の直径を有するドメイン内にある。
【0048】
0.20KWh/kg未満0.39KWh/kg以上の混合エネルギーを用いると、ポリマー分解の量が減少し、かつ有用な透過度等の有利な動作特性が維持されるとも考えられる。より高い混合エネルギーでは、(例えば混合中のずれ揺変により)ポリマーの分子量低下が起こると考えられ、また不十分な透過度が認められる。
【0049】
1つまたは複数の実施形態においては、ポリオレフィンを400rpm以下で作動している押出機内で混合するが、他の実施形態においては350rpm以下、他の実施形態においては300rpm以下、他の実施形態においては275rpm以下、他の実施形態においては250rpm以下、また他の実施形態においては225rpmである。ある実施形態においては、押出し中のポリマー−希釈剤混合物を、例えば210℃〜240℃といった140℃〜250℃の範囲の温度にさらす。ある実施形態においては、押出物の製造に用いる希釈剤の量は、ポリマー−希釈剤混合物の重量を基準として例えば約20.0重量%〜約99.0重量%の範囲であり、残りがポリマーとなる。例えば、希釈剤の量は約60.0重量%〜約80.0重量%の範囲であってもよい。
押出物の製造
【0050】
ある形態においては、ポリマー−希釈剤混合物をダイを通して押出機から導き押出物を製造する。押出物は、延伸工程後に望ましい厚さ(通常1.0μm以上)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有しているべきである。例えば押出物は、約0.1mm〜約10.0mm、または約0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有してもよい。押出しは通常は、溶融状態のポリマー−希釈剤混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合、ダイリップを、通常は、例えば140℃〜250℃の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に開示されている。
【0051】
所望により、押出物を約15℃〜約25℃の範囲の温度にさらして、冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に重要ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT公開WO2007/132942、同WO2008/016174、および同WO2008/140835に開示されているものと同じであってもよい。
押出物の延伸(上流延伸)
【0052】
押出物または冷却押出物は、少なくとも1つの方向に延伸してもよい(延伸によって押出物中のポリマーの延伸が生じる場合は上流延伸とも呼ぶ)。押出物は、例えばPCT公開WO2008/016174に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸することができる。延伸は、一軸に、または二軸に行ってもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と逐次延伸の組合せ)のいずれを用いてもよいが、同時二軸延伸が好ましい。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0053】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、例えば2倍以上、好ましくは3〜30倍であってもよい。二軸延伸の場合、延伸倍率は、例えばいずれの方向にも3倍以上であってもよく、すなわち面積倍率が、例えば16倍以上、例えば25倍以上といった、9倍以上であってもよい。この延伸工程の例としては、面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量はやはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸される、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。
【0054】
延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度(上流延伸温度)にさらしながら行ってもよいが、TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いPE(通常は、PE1またはPE3等のPE)の融点と定義される。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90℃〜約100℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば約100℃〜125℃、例えば105℃〜125℃といった、約90℃〜125℃であってもよい。
【0055】
試料(例えば押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす場合、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
希釈剤除去
【0056】
ある形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して乾燥膜を形成する。例えばPCT公開WO2008/016174に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。
【0057】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
膜の延伸(下流延伸)
【0058】
乾燥膜は、少なくともTDに延伸してもよい(希釈剤の少なくとも一部が除去または置換されているため「乾燥延伸」(dry stretching)または乾燥延伸(dry orientation)とも呼ぶ)。乾燥延伸の前には、乾燥膜は、MDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸(dry orientation)開始前における乾燥膜のTDへの大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸(dry orientation)開始前における乾燥膜のMDへの大きさを指す。例えば、WO2008/016174に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0059】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、例えば1.1〜1.5の範囲といった約1.1〜約1.6の範囲の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、ある倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以下である。TD乾燥延伸倍率は、約1.1〜約1.6の範囲であってもよい。乾燥延伸(希釈剤を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。TD熱収縮は、通常はMD熱収縮よりも電池の特性に与える影響が大きいため、TD倍率の大きさは、通常はMD倍率の大きさを超えることはない。二軸乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0060】
乾燥延伸は、乾燥膜を、例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といった、Tm以下の温度(下流延伸温度)にさらしながら行ってもよい。ある形態においては、延伸温度は、例えば約120℃〜約132℃、例えば約128℃〜約132℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらした膜で行う。
【0061】
ある形態においては、MD延伸倍率は、例えば1.2〜1.4といった、約1.0〜約1.5の範囲であり、TD乾燥延伸倍率は、例えば約1.1〜約1.55、例えば1.15〜1.5、または1.2〜1.4の範囲といった、1.6以下であり、MD乾燥延伸はTD乾燥延伸の前に行い、乾燥延伸は、膜を、例えば約122℃〜約130℃の範囲といった、約80℃〜約132℃の範囲の温度にさらしながら行う。
【0062】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してもよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
制御された膜幅の縮小
【0063】
乾燥延伸に続き、乾燥膜に、第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である第3の乾燥幅への制御された幅の縮小を施してもよい。通常は幅の縮小は、膜を、Tcd−30℃以上であるがTm以下である温度にさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約122℃〜約132℃、例えば約125℃〜約130℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらしてもよい。温度は下流延伸温度と同じであってもよい。ある形態においては、膜の幅の減少は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。ある形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.4倍の範囲である。
【0064】
制御された幅の縮小中に、TD乾燥延伸中に膜がさらされた温度以上の温度に膜をさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられる。
熱処理
【0065】
所望により、例えば乾燥延伸の後、制御された幅の縮小の後、またはその両方の後に、希釈剤の除去に続いて少なくとも1度膜を熱的に処理(熱処理)する。熱処理により結晶が安定化して膜中に均一な薄層が形成されると考えられる。ある形態においては、熱処理は、例えば約100℃〜約135℃の範囲、例えば約120℃〜約132℃、または約122℃〜約130℃といった、TcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われる。熱処理温度は下流延伸温度と同じであってもよい。通常、熱処理は、例えば1000秒以下、例えば1〜600秒の範囲の時間といった、膜中に均一なラメラを形成するのに十分な時間行う。ある形態においては、熱処理は一般的な熱処理「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱処理中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅を実質的に一定に維持しながら行う熱処理を指す。
【0066】
所望により、熱処理工程の後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行ってもよい。アニーリングは、熱処理の後にテンターを緩めた状態で連続的に行ってもよい。アニーリング中、膜を、例えば約60℃〜およそTm−5℃の範囲といった、Tmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてもよい。アニーリングによって微多孔膜の透過度および強度が向上すると考えられる。
【0067】
随意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT公開WO2008/016174に記載されているように、所望により行ってもよい。
膜の構造および特性
【0068】
膜は、常圧で液体(水性および非水性)を透過させる微多孔膜である。したがって、膜は、バッテリーセパレータ、濾過膜等として使用することができる。熱可塑性フィルムは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池等の二次電池用のBSFとして特に有用である。ある実施形態においては、本発明は、熱可塑性フィルムを含むBSFを含有するリチウムイオン二次電池に関する。かかる電池は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開WO2008/016174に記載されている。かかる電池は、例えば電気自動車およびハイブリッド電気自動車用の電源として用いることができる。所望により、膜は以下の特性の1つまたは複数を有する。
厚さ
【0069】
ある実施形態においては、最終膜の厚さは、例えば約1.0μm〜約1.0×10μmの範囲といった1.0μm以上である。例えば、単層膜は約1.0μm〜約30.0μmの範囲の厚さを有してもよく、また多層膜は7.0μm〜30.0μmの範囲の厚さを有してもよいが、これらの値は単なる代表的なものである。膜の厚さは、例えば、縦方向に1cm間隔で10cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。〒416-0946静岡県富士市五貫島746-3、明産株式会社製モデルRC-1ロータリーキャリパー、または株式会社ミツトヨ製「ライトマチック」等の厚さ計が好適である。例えば光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定方法もまた好適である。ある実施形態においては、膜は、30.0μm以下の厚さを有する。
多孔度≧20.0%
【0070】
膜の多孔度は、膜の実重量と、100%ポリマーの同等の非多孔性膜(同じポリマー組成、長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより従来法で測定する。次に、以下の式を用いて多孔度を求める:多孔度%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する(同じポリマーの)同等の非多孔性膜の重量である。ある形態においては、膜の多孔度は25.0%〜85.0%の範囲である。
規格化透気度≦75.0秒/100cm/μm
【0071】
ある実施形態においては、膜は、例えば50.0秒/100cm/1.0μm以下、例えば30.0秒/100cm/1.0μm以下といった、75.0秒/100cm/1.0μm以下の規格化透気度(JIS P8117に従って測定)を有する。所望により膜は、10.0秒/100cm/1.0μm〜30.0秒/100cm/1.0μmの範囲の規格化透気度を有する。透気度値は、1.0μmのフィルム厚さを有する同等の膜の値に規格化するため、膜の透気度値は、「秒/100cm/1.0μm」の単位で表す。所望により膜の規格化透気度は、約1.0秒/100cm/1.0μm〜約25秒/100cm/1.0μmの範囲である。規格化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=1.0μm×(X)/Tの式を用いて、1.0μmの厚さを有する同等の膜の透気度値に規格化する。式中、Xは実厚さTを有する膜の透気度の実測値であり、Aは1.0μmの厚さを有する同等の膜の規格化透気度である。
規格化突刺強度≧0.90×10mN/μm
【0072】
膜の突刺強度は、1.0μmの厚さおよび50%の多孔度を有する同等の膜の突刺強度として表す[mN/μm]。突刺強度は、厚さTを有する膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に周囲温度で測定した最大荷重、と定義される。この突刺強度(「S」)を、S=[50%*20μm*(S)]/[T*(100%−P)](式中、Sは突刺強度の実測値であり、Sは規格化突刺強度であり、Pは膜の多孔度の実測値であり、Tは膜の平均厚さである)の式を用いて、1.0μmの厚さおよび50%の多孔度を有する同等の膜の突刺強度値に規格化する。所望により膜の規格化突刺強度は、例えば1.5×10mN/μm以上または2.0×10mN/μm以上、例えば0.90×10mN/μm〜2.5×10mN/μmの範囲といった、1.0×10mN/μm以上である。
シャットダウン温度≦140℃
【0073】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/052663に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(30℃で開始して5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に1.0×10秒/100cmを超える時の温度と定義される。膜のメルトダウン温度およびシャットダウン温度を測定する目的で、透気度を、例えば透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定してもよい。ある実施形態においては、シャットダウン温度は、例えば128℃〜133℃の範囲といった、140.0℃以下または130.0℃以下である。
メルトダウン温度(膜の破裂により測定)≧180.0℃
【0074】
ある実施形態においては、微多孔膜は、例えば190.0℃以上、例えば200.0℃以上といった、180.0℃以上のメルトダウン温度を有する。所望により膜は、例えば197.0℃〜210.0℃の範囲といった、約190.0℃〜約210.0℃の範囲のメルトダウン温度を有する。メルトダウン温度は次のようにして測定することができる。5cm×5cmの微多孔膜の試料を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有する金属ブロックの間に挟むことによってその外周に沿って固定する。次いでこれらのブロックを、膜の平面が水平になるような配置にする。直径10mmの炭化タングステンの球を、上側のブロックの円形の開口部内の微多孔膜上に置く。30℃で開始した後、膜を5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。球によって微多孔膜が破れる温度を膜のメルトダウン温度と定義する。
105℃TD熱収縮≦5.0%
【0075】
ある実施形態においては、膜は、例えば0.5%以下、例えば約0.01%〜約0.5%の範囲といった、5.0%以下の105.0℃におけるTD熱収縮を有する。所望により膜は、例えば約0.5%〜約2.0%の範囲といった、2.5%以下の105.0℃におけるMD熱収縮を有する。
【0076】
105.0℃における直交面方向(例えばMDまたはTD)への膜の熱収縮(「105.0℃熱収縮」)は、次のようにして測定する:(i)23.0℃における微多孔膜の試験片の大きさをMDおよびTDの両方について測定し、(ii)試験片を、荷重をかけずに8時間105.0℃の温度にさらし、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方について測定する。MDまたはTDのいずれかへの熱(すなわち「熱による」)収縮は、測定結果(i)を測定結果で割り、(ii)得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
130℃TD熱収縮および170℃TD熱収縮
【0077】
ある実施形態においては、膜は、例えば10.0%以下、例えば約1.0%〜約7.5%の範囲といった、20.0%以下の130℃におけるTD熱収縮を有する。ある実施形態においては、膜は、例えば30.0%以下、例えば約15.0%〜約40.0%といった、40.0%以下の170℃におけるTD熱収縮を有する。
【0078】
130℃および170℃の熱収縮の測定値は、105℃における熱収縮の測定値とはわずかに異なるが、これは、横方向と平行である膜の端が、通常は電池内で固定され、特にMDと平行である端の中心付近においてはTDへの拡大または縮小(収縮)を可能にする自由度が限られている、という事実を反映している。したがって、TDに沿って50mm、MDに沿って50mmの正方形の微多孔性フィルムの試料を、TDと平行である端を(例えばテープにより)フレームに固定して、MDに35mmでTDに50mmの開放口を残し、フレームに設置して23.0℃の温度にさらす。次に、試料を取り付けたフレームを30分間130℃または170℃の温度にさらし、次いで冷却する。通常は、TD熱収縮によって、MDと平行であるフィルムの端が内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TDへの収縮(パーセントで表す)は、加熱前の試料のTDの長さを加熱後の試料のTDの(フレーム内の)最短長さで割り100パーセントを掛けたものと等しい。
【0079】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
【実施例】
【0080】
実施例1
(1)ポリマー−希釈剤混合物の調製
ポリマー−希釈剤混合物を、希釈剤と、PMP、PP、ならびに2つのポリエチレン、PEおよびPEのポリマーブレンドとを混合することにより次のようにして調製する。ポリマーブレンドは、(a)20.0重量%の、21dg/分のMFRおよび222℃のTmを有するポリメチルペンテン(三井化学株式会社、TPX:MX002)(PMP)、(b)10.0重量%の、1.1×10のMwおよび114J/gのΔHmを有するアイソタクチックPP(PP1)、(c)40.0重量%の、5.6×10のMw、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量、および136.0℃のTmを有するPE(PE1)ならびに(d)30.0重量%の、1.9×10のMwおよび136.0℃のTmを有するPE(PE4)(重量パーセントは混合したポリマーの重量が基準である)を含む。
【0081】
次に、25.0重量%のポリマーブレンドを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、75.0重量%の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。220℃および200rpmで混合を行ってポリマー−希釈剤混合物を製造する(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物の重量が基準である)。
(2)膜の製造
【0082】
ポリマー−希釈剤混合物を押出機からシート形成ダイへと導いて(シートの形態の)押出物を形成する。ダイの温度は210℃である。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーとの接触により冷却する。冷却押出物を、テンター延伸機で、MDおよびTDの両方に5倍の倍率に、115℃にて同時二軸延伸(上流延伸)する。延伸したシートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に浸漬して3分間の100rpmの振動で流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させる。次いで、膜の大きさをほぼ一定に保ちながら、膜を10分間125℃で熱処理して最終微多孔膜を製造する。選択した出発物質、処理条件、および膜特性を表1に示す。
実施例2〜8および比較例1〜16
【0083】
表1に記載したことを除き実施例1を繰り返す。出発物質および処理条件は、表に記載したことを除き実施例1で使用したものと同じである。例えば、実施例2では、PP1を5.3×10のMwおよび114J/gのΔHmを有するポリプロピレン(PP2)に換え、実施例7および8では、PE1を7.46×10のMw、134.0℃のTm、および炭素原子1.0×10個当たり0.20以上の末端不飽和基量を有するPEに換える。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

考察
【0087】
実施例1〜8から、180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および1.0×10mN/μm以上の突刺強度を有する微多孔膜は、PMP、PP、およびPEから製造できることがわかる。比較的高いΔHmを有するアイソタクチックPP(PP1)を用いると、実施例1と2を比較することによってわかる通り、膜の強度の向上がもたらされる。炭素原子1.0×10個当たり0.20以上の末端不飽和基量を有するPEを用いると、実施例7および8からわかる通り、透気度の低下につながる。膜を下流延伸に付すと、(a)実施例4および5を(b)実施例1〜3と比較することによってわかる通り、強度および透過度の向上がもたらされる。比較例1からわかる通り、膜中のPMP+PPの総量が膜の重量を基準として25.0重量%以上であるとメルトダウン温度の改善が見られる。比較例2、3、4、8、9、10、および15から、膜中のPMPの量が膜の重量を基準として25.0重量%以上であると膜の透過度が低下し得ることがわかる。比較例5、6、7、11、および16から、PPの量(重量%)が膜中のPMPの量(重量%)より多いと、膜はより低いメルトダウン温度および/または強度を有し得ることがわかる。比較例12から、PMPによってメルトダウン温度の改善がもたらされることがわかる。比較例13および14から、PPを省略すると透気度の低下につながり得ることがわかる。
実施例9
【0088】
実施例1のポリマーブレンドと同じ方法でポリマーブレンドを調製する。このブレンドは、(a)20.0重量%の、21dg/分のMFRおよび222℃のTmを有するポリメチルペンテン(三井化学株式会社、TPX:MX002)(PMP)、(b)20.0重量%の、1.1×10のMwおよび114J/gのΔHmを有するアイソタクチックPP(PP1)、(c)30.0重量%の、5.6×10のMw、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量、および136.0℃のTmを有するPE(PE1)、ならびに(d)30.0重量%の、1.9×10のMwおよび136.0℃のTmを有するPE(PE4)を含む(重量パーセントは混合したポリマーの重量が基準である)。
【0089】
次に、28.5重量%のポリマーブレンドを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、71.5重量%の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。225℃、200rpm、および0.167KWh/kgの混合エネルギーにて混合を行ってポリマー−希釈剤混合物を製造する(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物の重量が基準である)。ポリマー−希釈剤混合物を押出機からシート形成ダイへと導いてシートの形態の押出物を形成する。ダイの温度は210℃である。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーとの接触により冷却する。冷却押出物を115℃にさらしながらテンター延伸機で同時に二軸延伸(上流延伸)して、MDおよびTDの両方に5倍の倍率にしようと試みる。フィルムは、表2に記載の通り、(例えば目的の5×5の延伸倍率が達成できる前に)4.5×4.5の倍率で引き裂かれる。
【0090】
【表4】

実施例10〜17
【0091】
表2に記載したこと以外は実施例9を繰り返し、引き裂かれることなく達成できる最大延伸倍率を表に明記する。例えば実施例10では、混合は、223℃の混合温度および0.180KWh/kgの混合エネルギーで行う。押出物が引き裂かれることなく達成できる最大上流延伸倍率は、表に明記した通り、4.5×4.5(MD×TD)である。
考察
【0092】
上流延伸の量を増やすと最終膜の収率(Kg/秒)が増加し、より強い膜の強度がもたらされる。表2の結果から、引き裂かれることなく得ることができる最大上流延伸倍率は5×5(MD×TD)であることがわかり、これは、混合エネルギーが、例えば0.20KWh/kg<混合エネルギー≦0.39KWh/kgの範囲といった、0.50KWh/kg以下の時に達成されている。
【0093】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0094】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0095】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンを含む膜であって、微多孔性であり、かつ180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および0.90×10mN/μm以上の突刺強度を有することを特徴とする膜。
【請求項2】
ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、およびポリエチレンが、それぞれ、5.0重量%≦ポリメチルペンテン≦25.0重量%、5.0重量%≦ポリプロピレン≦25.0重量%、および50.0重量%<ポリエチレン≦90.0重量%の範囲の量で存在し(重量パーセントは膜の重量が基準である)、ポリメチルペンテンの量(重量%)が、ポリプロピレンの量(重量%)以上であることを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項3】
ポリメチルペンテンおよびポリプロピレンが、膜の重量を基準として合わせて25.0重量%以上の量で膜中に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の微多孔膜。
【請求項4】
膜が、5.0%以下の105℃におけるTD熱収縮、20.0%未満の130℃におけるTD熱収縮、40.0%以下の170℃におけるTD熱収縮、30.0μm以下の厚さ、および20%〜80%の範囲の多孔度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項5】
ポリメチルペンテンが、200.0℃以上のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項6】
ポリプロピレンが、6.0×10以上のMw、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項7】
ポリエチレンが、1.0×10〜2.0×10の範囲のMwおよび130.0℃以上のTmを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項8】
ポリメチルペンテンが、22.0〜28.0の範囲のMFRおよび223.0℃〜230.0℃の範囲のTmを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項9】
ポリエチレンが、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下の末端不飽和基量を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレータフィルム。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、Aの量のポリメチルペンテン、Aの量のポリプロピレン、およびAの量のポリエチレンを含むポリマーとの混合物であり、5.0重量%≦A<25.0重量%、5.0重量%≦A<25.0重量%、かつA≦90.0重量%である(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの重量が基準である)混合物を押し出す工程;
(2)押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程;ならびに
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程
を含むことを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
10.0重量%≦A<25.0重量%であり、かつポリメチルペンテンが、210.0℃〜240.0℃の範囲のTmおよび80.0dg/分以下のMFRを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)10.0重量%≦A<25.0重量%であり、(ii)ポリプロピレンが、6.0×10以上のMw、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックポリプロピレンであり、(iii)A≧Aであり、かつ(iv)A+A≧25.0重量%であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
50.0重量%<A<90.0重量%であり、かつポリエチレンが、1.0×10〜2.0×10の範囲のMwおよび130.0℃以上のTmを有することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(2)の前に押出物を冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(3)に続いて膜を少なくとも1つの平面方向に延伸する工程および工程(3)に続いて膜を熱処理にかける工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
押出しが、0.50KWh/kg以下の混合エネルギーで行われることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(2)の延伸が、押出物を90.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら、面積が9倍〜49倍の範囲の倍率になるまで二軸に行われることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(3)の後に、残留したいずれかの揮発性種を膜から除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれかに記載の膜生成物。
【請求項21】
負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置するバッテリーセパレータとを含む電池であって、バッテリーセパレータが、(i)バッテリーセパレータの重量を基準として5.0重量%以上のポリメチルペンテン、(ii)ポリプロピレン、および(iii)ポリエチレンを損ない(compromising)、膜が、180.0℃以上のメルトダウン温度、75.0秒/100cm/μm以下の規格化透気度、および0.90×10mN/μm以上の突刺強度を有することを特徴とする電池。
【請求項22】
バッテリーセパレータ、層が、10nm以上の直径を有するポリマードメインを実質的に含まないことを特徴とする請求項21に記載の電池。
【請求項23】
バッテリーセパレータが、膜の重量を基準として、5.0重量%以上25.0重量%未満のポリメチルペンテン、5.0重量%以上25.0重量%以下のポリプロピレン、および50.0重量%超で90.0重量%以下のポリエチレンを含み、かつポリメチルペンテンの重量%がポリプロピレンの重量%以上である(重量パーセントはバッテリーセパレータの重量が基準である)ことを特徴とする請求項21または22に記載の電池。
【請求項24】
ポリメチルペンテンおよびポリプロピレンが、バッテリーセパレータの重量を基準として合わせて25.0重量%以上の量でバッテリーセパレータ内に存在することを特徴とする請求項21または23に記載の電池。
【請求項25】
請求項24に記載の電池に電気的に接続された動力手段を含むことを特徴とする電気自動車またはハイブリッド電気自動車。

【公表番号】特表2012−530803(P2012−530803A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516128(P2012−516128)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037769
【国際公開番号】WO2010/147802
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】