微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システム
【課題】配線を用いずとも建造物に配置し、建造物の振動を検知できる微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システムを提供することを目的とする。
【解決手段】微小変位表示デバイス1は、被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板11と、被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材14aと、振動伝達部材14aに固定される振動子15と、振動子15に固定され複数の平行線が施された移動側モアレスリット板12とを備える。
【解決手段】微小変位表示デバイス1は、被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板11と、被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材14aと、振動伝達部材14aに固定される振動子15と、振動子15に固定され複数の平行線が施された移動側モアレスリット板12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアレ縞を利用した微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場、建築物、橋梁などの建造物では、経年変化等により老朽し、強度不足等強度上の問題が生じる恐れがあるので、定期的に建造物の状態を監視し、保守管理を行う必要がある。
【0003】
建造物の状態を監視する手法として、建造物の振動を検知して欠陥等を判断する手法がある(例えば、特許文献1)。建造物の振動を振動センサで検知し、建造物に通常状態とは異なる振動が生じていることを検知した場合には、これら建造物の構造に毀損や老朽化等、異常が生じていると判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−178547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象となる建造物は非常に大きいため、建造物に電力供給及び信号伝達のための配線を取り回してさまざまな箇所に異常を検知するセンサを配置することは難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配線を用いずとも建造物に配置し、建造物の振動を検知できる微小変位表示デバイス、及び、これを用いた建造物の異常振動監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、複数の平行線が施された移動側モアレスリット板と、を備え、
それぞれの前記平行線の角度が異なるように前記固定側モアレスリット板と前記移動側モアレスリット板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレスリット板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、格子が施された移動側モアレ格子板と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレ格子板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第3態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
格子が施された移動側モアレ格子板と、
前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とを接続する振動伝達部材と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動で前記移動側モアレ格子板を前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心に回転させ、前記モアレ縞の幅を変化させて表示する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心にして同心円上に前記振動伝達部材が複数配置されていてもよい。
【0011】
本発明に係る建造物の異常振動監視システムは、
建造物に設置される前述した微小変位表示デバイスと、
前記微小変位表示デバイスに発現したモアレ縞を連続して撮影する撮影装置と、
連続して撮影した前記モアレ縞の画像処理を行い、前記モアレ縞の変位に基づく振動データを演算する演算装置と、
予め演算しておいた基準振動データと演算した前記振動データとを照合する照合装置と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記演算装置は、前記モアレ縞の変位量から加速度を算出して前記振動データを演算してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る微小変位表示デバイスでは、被測定対象の微小な振動に基づく振動子の変位をモアレ縞によって拡大して表示することができる。これは、視認できないような被測定対象の微小な振動を視覚的に認識することにつながる。
【0014】
本発明に係る建造物の異常振動監視システムでは、上述した微小変位表示デバイスを建造物に設置して、モアレ縞の変位に基づく建造物の振動データを演算し、正常時における建造物の基準振動データと照合を行っている。これにより、建造物に異常振動が発生しているか否かの判断が実現でき、橋梁、工場、ビル、等などの建造物の状態監視に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図であ
【図3】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの(A)固定側モアレスリット板、及び(B)移動側モアレスリット板の平面図である。
【図4】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの平面図である。
【図5】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図6】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図である。
【図8】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの(A)固定側モアレ格子板、及び(B)移動側モアレ格子板の平面図である。
【図9】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の平面図である。
【図10】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図11】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図12】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図13】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図である。
【図14】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの平面図である。
【図15】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変化を示す平面図である。
【図16】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの一形態例を示す概略構成図である。
【図17】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの動作を示すフローチャートである。
【図18】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの動作を示すフローチャートである。
【図19】実施例に用いた微小変位表示デバイスの振動子の力学的特性図である。
【図20】実施例における時間と加速度との関係を示す図である。
【図21】実施例における時間と加振器の変位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態に係る微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システムについて、詳細に説明する。まず、微小変位表示デバイスについて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図を参照して、実施の形態1に係る微小変位表示デバイスについて説明する。微小変位表示デバイス1は、図1の外観斜視図、及び図2の分解斜視図に示すように、固定側モアレスリット板11と、移動側モアレスリット板12と、ベース13と、振動伝達部材14a、14bと、振動子15と、から構成されている。
【0018】
ベース13は、建造物等の被測定対象に固定される部材である。このため、ベース13と被測定対象との相対位置が変化することはない。
【0019】
振動伝達部材14a、14bは、ベース13と振動子15とを接続している。振動伝達部材14a、14bは、被測定対象の振動を振動子15へ伝達するとともに、自らが変形して振動子15を変位させる役割を有する。したがって、振動伝達部材14a、14bは、変形率及び弾性率が高い部材であることが好ましい。また、伝達した振動で振動子15が慣性力で永続して振動しないよう、振動子15を減衰させる役割を備えていることが好ましいので、減衰力の高い部材を用いるとよい。
【0020】
振導伝達部材14a、14bの一例として、金属線や金属薄板、ゴムやプラスチック等の樹脂製棒状部材や板状部材等、種々の部材が挙げられる。また、バネとダンパーを組み合わせて構成されていてもよい。
【0021】
振動子15は、振動伝達部材14a、14bを介して伝達される被測定対象の振動を受けて振動する。振動子15は被測定対象に対して相対位置が変位することにより、後述する移動側モアレスリット板12を変位させる役割を有する。振動子15には、振動伝達部材14a、14bを経由して被測定対象の振動が伝達され、この振動を受けて、振動子15が振動することになる。すなわち、被測定対象に対して振動子15の相対位置は変化する。このため、振動子15は、被測定対象に対する相対位置が変化しやすいよう、重量がある必要がある。具体的な振動子15の重量及び振動伝達部材14a、14bの弾性率と減衰力の関係については、文献「計測工学;谷口 修、掘込 泰雄;森北出版株式会社;p.194−198」を参考にすればよい。
【0022】
固定側モアレスリット板11は、ベース13に固定されており、被測定対象に対して相対位置が変わらないようになっている。
【0023】
移動側モアレスリット板12は、振動子15に固定されている。上述のように、振動子15が振動し変位するので、この振動子15に追随して移動側モアレスリット板12が変位することになる。このため、移動側モアレスリット板12は、固定側モアレスリット板11に対し、相対位置が変化する仕組みである。
【0024】
固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12は、無色の長方形の板状部材で構成されており、図3に示すように、それぞれ複数の直線が平行に施されている。固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12に施されたそれぞれの複数の直線は全て同じ線幅で、等間隔に施されている。
【0025】
また、固定側モアレスリット板11には、x軸方向に複数の直線が平行に施されている。一方の移動側モアレスリット板12には、x軸方向に対してやや傾斜された複数の直線が平行に施されている。
【0026】
図4に、微小変位表示デバイス1の平面図を示す。上述のように、固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とが、それぞれに施された複数の直線の角度が異なるように重ねて配置されることにより、帯状のモアレ縞M1、M2、M3が発現している。
【0027】
図5は、被測定対象からの振動を受けて振動子15が振動し、y軸方向に変位した際の、モアレ縞M1、M2、M3の変位の状況を示している。振動子15が矢印で示すようにy軸方向下向きにΔy変位すると、振動子15に固定された移動側モアレスリット板12も追従して、Δyだけy軸方向下向きに変位する。すると、モアレ縞M1、M2、M3は、それぞれx軸方向左向きにΔxほど変位することになる。
【0028】
例えば、固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12に施された複数の直線のピッチをPlとし、それぞれの直線がθの角度で交差している場合に発現するモアレ縞のピッチをPMとした場合、PMは下記に示す式(1)で表される。
【数1】
【0029】
θが0.5°として考えると、PMは約114.593Plとなるので、モアレ縞M1、M2、M3の変位量Δxは、振動子15の変位量Δyの凡そ115倍(拡大率)となる。
【0030】
このように、このモアレ縞M1、M2、M3の変位量Δxは、振動子15の変位量Δyに比べて大きな変位量となるので、これにより振動子15の微小な変位を拡大して表示することができる。これは、被測定対象に生じる視認不可能な振動を、視覚的に認識することができることを意味し、後述の被測定対象に異常振動が生じていないかを視覚的に捉えることが可能になる。
【0031】
一方、振動子15がy軸方向を上向きに移動すると、モアレ縞M1、M2、M3は前述とは逆にx軸方向右向きに移動する。
【0032】
また、上記では、移動側モアレスリット板12の複数の直線が傾斜して施されているが、逆に、固定側モアレスリット板11の複数の直線が傾斜して施されていてもよい。
【0033】
また、ベース13を用い、間接的に固定側モアレスリット板11を被測定対象に取り付ける場合について説明したが、ベース13を必ずしも用いなくてもよい。例えば、振動伝達部材14a、14b、及び、固定側モアレスリット板11を直接被測定対象に固定する形態でもよい。
【0034】
また、固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とは、密着させて重ねて配置されていても、離間して配置されていてもよい。固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とを密着させて重ねる場合、移動側モアレスリット板12の動きを損なわないように、また、振動子15の振動が慣性力によって永続しないよう、オイルやゲル等、粘性を有する物質を介して重ねて配置するとよい。
【0035】
(実施の形態2)
図6の外観斜視図、及び、図7の分解斜視図を参照しつつ、実施の形態2に係る微小変位表示デバイス2について説明する。
【0036】
微小変位表示デバイス2は、ベース13と、振動伝達部材14と、振動子15と、固定側モアレ格子板21と、移動側モアレ格子板22とから構成される。
【0037】
ベース13及び振動子15については、前述した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
振動伝達部材14は、L字状の部材であり、機能や素材等については、前述した実施の形態1と同様であるが、実施の形態1では、振動子15の一軸の変位に対応していたが、本実施の形態では、二軸の変位に対応している点で異なる。
【0039】
固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とは、重ねて配置されている。
【0040】
固定側モアレ格子板21は、ベース13に固定され、被測定対象との相対位置が変化しないようになっている。
【0041】
一方、移動側モアレ格子板22は、振動子15に固定されており、振動子15の変位に追従して変位する。
【0042】
固定側モアレ格子板21、及び、移動側モアレ格子板22は、無色の板状部材であり、図8に示すように、それぞれ格子が施されている。それぞれの格子の線幅及び格子のピッチは全て同じである。そして、移動側モアレ格子板22に施された格子は、固定側モアレ格子板21に施された格子に対して、傾斜され、異なる角度にされている。
【0043】
固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とが、各々に施された格子の角度が異なるように、重ねて配置されているので、図9の平面図に示すように、帯が交差した格子状のモアレ縞Mが発現する。
【0044】
図10に、被測定対象から伝達された振動によって、振動子15にy軸方向への力が加わった場合のモアレ縞Mの変位の様子を示している。被測定対象から振動を受けて、Δyほど振動子15がy軸方向下向きに変位した場合、振動子15に固定されている移動側モアレ格子板22も追随して同様にy軸方向下向きにΔyほど変位する。すると、y軸方向に延在しているモアレ縞Mはx軸方向左向きにΔxほど変位する。
【0045】
モアレ縞Mの変位量Δxは、実施の形態1と同様に、振動子15の変位量Δyに比べて非常に大きいので、微小な振動子15の変位を拡大して表示することができる。このことは、被測定対象に生じる視認不可能な振動を、視覚的に認識することができることを意味する。なお、振動子15がy軸方向上向きに変位した場合、y軸方向に延在しているモアレ縞Mが、x軸方向右向きに変位することになる。
【0046】
一方、図11には、被測定対象から伝達された振動によって、振動子15にx軸方向への力が加わった場合のモアレ縞Mの変位の様子を示している。被測定対象から振動を受け、x軸方向右向きにΔxほど振動子15が変位した場合、振動子15に固定されている移動側モアレ格子板22も付随して同様に変位する。この場合、x軸方向に延在しているモアレ縞Mがy軸方向下向きにΔyほど変位する。逆に、振動子15がx軸方向左向きに変位した場合、x軸方向に延在しているモアレ縞Mが、y軸方向上向きに変位することになる。
【0047】
(実施の形態3)
図12の外観斜視図、及び、図13の分解斜視図を参照しつつ、実施の形態3に係る微小変位表示デバイス3について説明する。
【0048】
微小変位表示デバイス3は、振動伝達部材14と、固定側モアレ格子板21と、移動側モアレ格子板22とから構成される。
【0049】
固定側モアレ格子板21は、直接的或いは間接的に被測定対象に取り付けられる。固定側モアレ格子板21は、被測定対象に対し相対的な位置関係は変わらない。
【0050】
移動側モアレ格子板22は、四隅に配置された振動伝達部材14を介して固定側モアレ格子板21に接続している。
【0051】
振動伝達部材14は、所定地点を中心点とする同心円上に4つ配置されており、振動伝達部材14は、被測定対象からの振動を移動側モアレ格子板22に伝達する役割を有する。これにより、移動側モアレ格子板22は、所定地点を中心軸とし、固定側モアレ格子板21の面に沿って回転することになる。
【0052】
固定側モアレ格子板21及び移動側モアレ格子板22は、上述した実施の形態2と同様に、それぞれ格子が施されており、固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とは、それぞれの格子が角度を異ならせて積層配置されているため、図14の平面図に示すように、格子状のモアレ縞Mが発現する。
【0053】
図15を参照して、微小変位表示デバイス3の作用について説明する。被測定対象から生じる振動が振動伝達部材14を介して移動側モアレ格子板22に伝達される。すると、移動側モアレ格子板22の四角に振動伝達部材14が接続されているため、移動側モアレ格子板22は中心を支点として回転することになる。
【0054】
移動側モアレ格子板22が反時計回りにθほど回転すると、モアレ縞Mのピッチが大きく表示される。モアレ縞Mのピッチは、わずかな移動側モアレ格子板22の回転によって、大きく変化するので、被測定対象に基づく移動側モアレ格子板22の微小な回転変位を拡大して観察することができる。一方、移動側モアレ格子板22が時計回りに回転する場合には、それぞれの格子の角度が一致する方向に向かうので、モアレ縞Mのピッチが小さくなる。
【0055】
(実施の形態4)
続いて、上述した微小変位表示デバイスを用いた実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムについて説明する。図16は、異常振動監視システムの一形態例を示す概略構成図である。
【0056】
橋桁42の上部に設置された微小変位表示デバイス4と、微小変位表示デバイス4を連続して高速撮影する撮影装置31と、撮影装置31で撮影された画像を処理し、振動データの演算及び照合を行う処理装置32と、を備えている。
【0057】
微小変位表示デバイス4としては、前述した微小変位表示デバイス1〜3のいずれかを用いればよい。
【0058】
撮影装置31は、微小変位表示デバイス4のモアレ縞の変位を撮影できるように配置される。撮影装置31として、単位時間当たりに多数の画像を撮影可能な高速カメラを用いるとよい。撮影装置31で撮影した画像は、画像データとして処理装置32に送られる。
【0059】
処理装置32は、予め演算しておいた基準振動データを保存しておくメモリ(不図示)と、送られてきた画像データの処理を行い、モアレ縞の変位に基づいて振動データを演算する演算装置(不図示)と、基準振動データと演算した振動データとの照合を行う照合装置(不図示)とが備えられている。
【0060】
続いて、図17及び図18に示すフローチャートを参照しつつ、建造物の異常振動監視システムの処理概要について説明する。
【0061】
まず、図17に示すフローチャートのように、正常時における橋の振動データである基準振動データが得られる。
【0062】
まず、撮影装置31にてモアレ縞の撮影S11を行う。撮影装置31で撮影された画像は、処理装置32に送られ、演算装置にて画像処理S12、基準振動データの演算S13が行われる。
【0063】
演算装置では、モアレ縞の変位量から、被測定対象である橋の加速度が算出され、この加速度に基づく基準振動データが演算される。この基準振動データとしては、例えば、この加速度をフーリエ変換、モード解析することにより求められる被測定対象である橋が持つ特有の振動特徴等を用いればよい。
【0064】
なお、被測定対象である橋の加速度は、モアレ縞の変位量を実施の形態1で説明した拡大率で割ることにより、求められる振動子15の変位量と、微小変位表示デバイス4の固有振動数の二乗との積より算出することができる。必要に応じ、求めた加速度を積分することにより、被測定対象の速度、変位を算出することができるため、これらを用いて基準振動データを作成してもよい。
【0065】
上記のように演算された基準振動データは、メモリに保存S14される。
【0066】
続いて、図18に示すフローチャートに沿って、振動データを取得し、橋に異常振動が発生していないかが監視される。
【0067】
前述と同様に、撮影装置にてモアレ縞の撮影S21を行う。そして、得られた画像の処理S22を行い、振動データの演算S23を行う。モアレ縞の撮影S21、画像処理S22、及び振動データの演算S23については、前述の基準振動データの演算手法と同様である。
【0068】
このようにして得られた振動データと基準振動データとが一致しているか否かの照合S24を行う。振動データと基準振動データとが一致している場合は、S21に戻り撮影を継続する。振動データと基準振動データとが不一致の場合には、橋が異常な状態であるとして、報知手段により、異常であることの報知S25を行う。報知手段は、表示や、発光、音等、種々の手段を用いればよい。
【0069】
撮影装置で橋を単純に撮影するだけでは、振動による橋の変位を識別可能な画像データを取得することは困難であるが、本実施の形態では、微小変位表示デバイスを用いることにより、上述のように橋の振動に基づく振動子の変位を識別できる画像データを取得することを実現している。橋の振動が振動子に伝達されて変位し、これによって移動側モアレ格子板22或いは移動側モアレスリット板12が変位するので、モアレ縞が変位するが、このモアレ縞の変位は、振動子15の変位に比べて大きいので、遠く離れて配置された撮影装置でも観察することができ、撮影した画像から振動データを得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る建造物の異常振動監視システムでは、電気信号を用いない微小変位表示デバイスを設置するので、橋に配線等を這わす必要がない。このため、メンテナンスが容易である。更に、電気信号を使わないので、振動検出センサに比べて、低コストで行える。
【0071】
なお、複数計測する際は、複数の微小変位表示デバイス4を設置し、それぞれの微小変位表示デバイス4を撮影する撮影装置31を設置すればよい。
【0072】
また、上記では、加速度を演算した振動データにて照合しているが、正常時における橋の振動と、異常時における橋の振動との照合が可能なデータであれば、これに限定されることはない。例えば、撮影した画像から、モアレ縞の振幅の大きさを演算したデータや、モアレ縞の周波数を演算したデータ、或いは、モアレ縞の移動パターンを演算したデータ等を、基準振動データ及び振動データとして照合するようにしてもよい。
【0073】
また、振動データと基準振動データとが一致するか否かは、閾値を設け、所望の許容範囲をもたせてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、撮影装置31からの映像を有線で処理装置32に伝達しているが、無線により撮影装置31から映像を処理装置32に送信してもよい。
【0075】
また、橋の異常振動を監視する場合について説明したが、塔やビル等の各種建造物についても同様である。
【実施例】
【0076】
実施の形態1と同様の構造の微小変位表示デバイスを作成し、振動によるモアレ縞の変位から加速度データ及び変位データを演算した。
【0077】
固定側モアレスリット板及び移動側モアレスリット板に施された、平行な複数の直線のピッチはいずれも0.02mmである。そして、それぞれの複数の直線が0.003radの角度で交わるようにして、固定側モアレ格子板と移動側モアレ格子板とが重ねて配置されている。このとき、発現するモアレ縞のピッチは、約6.7mmであり、移動側モアレスリット板の変位に対するモアレ縞の相対変位は、約335倍に拡大されていることになる。振動伝達部材の材料はジュラルミン2017、振動子には銅合金C2081を用いた。この微小変位表示デバイスの質量は25.9gである。
【0078】
まず、作成した微小変位表示デバイスの力学的特性を調べた。微小変位表示デバイスを自由振動させ、振動子の変位を計測した。その結果を図19に示す。固有角振動数は314rad/s(50Hz)、減衰比は約0.008であった。
【0079】
この微小変位表示デバイスのベースを加振器の上に固定し、振動を加えた。加振器の振動は、一次元の振動で、振幅1mm以下、振動数3Hzとした。また、同条件で、振動数5Hzについても行った。
【0080】
微小変位表示デバイスから約400mm離れたところから、カメラで撮影し、撮影した画像からモアレ縞の変位量を計測した。この変位量をモアレ縞の拡大率(本微小変位表示デバイスでは約335倍)で割り、振動子の変位量を算出した後、振動子の加速度、即ち加振器の加速度を求めた。
【0081】
なお、モアレ縞の変位の撮影には、高速カメラを用い、2000fpsにて撮影した。
【0082】
また、微小変位表示デバイスで計測したデータとの照合を得るため、加振器の変位をレーザ変位計により計測した。また、高速カメラとレーザ変位計の同期をとるために、LEDを用いた。
【0083】
得られた振動子の加速度を図20に示す。加振器の振動数と同じ、3Hz及び5Hzの加速度が計測されていることがわかる。なお、50Hzの振動が同時に検出されているが、この振動数は本微小変位表示デバイスの固有振動数と一致しており、固有振動数の影響が出ていると考えられる。
【0084】
図21は、図13に示した加速度を積分して求めた時間と加振器の変位との関係を示している。なお、実線が加速度から求めた加振器の変位であり、破線がレーザ変位計により計測した加振器の変位である。3Hz及び5Hzいずれにおいても、微小変位表示デバイスを用いて求めた加振器の変位は、レーザ変位計を用いて計測した加振器の変位とほぼ一致していることが確認できる。
【0085】
これらの実験結果から、微小変位表示デバイスでは、被測定対象の微小振動に基づく振動子の微小な変位をモアレ縞にて拡大して表示することができ、モアレ縞を撮影して画像処理を行うことで、モアレ縞の加速度や振動子の加速度を演算することができる。これにより、微小変位表示デバイスを用いて、建造物の異常振動を監視できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
微小変位表示デバイスでは、橋等の建造物の微小な振動に基づく振動子の変位をモアレ縞によって拡大して表示することができる。これは、視認できない建造物の微小な振動を視覚的に認識することにつながる。そして、このモアレ縞の変位に基づく建造物の振動データを演算し、正常時における建造物の基準振動データと照合を行うことにより、建造物に異常振動が発生しているか否かの判断が可能となる。したがって、橋梁、工場、ビル、等などの建造物の状態監視、保守管理を行う際に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 微小変位表示デバイス
2 微小変位表示デバイス
3 微小変位表示デバイス
4 微小変位表示デバイス
11 固定側モアレスリット板
12 移動側モアレスリット板
13 ベース
14 振動伝達部材
14a 振動伝達部材
14b 振動伝達部材
15 振動子
21 固定側モアレ格子板
22 移動側モアレ格子板
31 撮影装置
32 処理装置
41 橋
42 橋桁
43 橋脚
M モアレ縞
M1 モアレ縞
M2 モアレ縞
M3 モアレ縞
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアレ縞を利用した微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場、建築物、橋梁などの建造物では、経年変化等により老朽し、強度不足等強度上の問題が生じる恐れがあるので、定期的に建造物の状態を監視し、保守管理を行う必要がある。
【0003】
建造物の状態を監視する手法として、建造物の振動を検知して欠陥等を判断する手法がある(例えば、特許文献1)。建造物の振動を振動センサで検知し、建造物に通常状態とは異なる振動が生じていることを検知した場合には、これら建造物の構造に毀損や老朽化等、異常が生じていると判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−178547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象となる建造物は非常に大きいため、建造物に電力供給及び信号伝達のための配線を取り回してさまざまな箇所に異常を検知するセンサを配置することは難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配線を用いずとも建造物に配置し、建造物の振動を検知できる微小変位表示デバイス、及び、これを用いた建造物の異常振動監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、複数の平行線が施された移動側モアレスリット板と、を備え、
それぞれの前記平行線の角度が異なるように前記固定側モアレスリット板と前記移動側モアレスリット板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレスリット板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、格子が施された移動側モアレ格子板と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレ格子板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第3態様の微小変位表示デバイスは、
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
格子が施された移動側モアレ格子板と、
前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とを接続する振動伝達部材と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動で前記移動側モアレ格子板を前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心に回転させ、前記モアレ縞の幅を変化させて表示する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心にして同心円上に前記振動伝達部材が複数配置されていてもよい。
【0011】
本発明に係る建造物の異常振動監視システムは、
建造物に設置される前述した微小変位表示デバイスと、
前記微小変位表示デバイスに発現したモアレ縞を連続して撮影する撮影装置と、
連続して撮影した前記モアレ縞の画像処理を行い、前記モアレ縞の変位に基づく振動データを演算する演算装置と、
予め演算しておいた基準振動データと演算した前記振動データとを照合する照合装置と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記演算装置は、前記モアレ縞の変位量から加速度を算出して前記振動データを演算してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る微小変位表示デバイスでは、被測定対象の微小な振動に基づく振動子の変位をモアレ縞によって拡大して表示することができる。これは、視認できないような被測定対象の微小な振動を視覚的に認識することにつながる。
【0014】
本発明に係る建造物の異常振動監視システムでは、上述した微小変位表示デバイスを建造物に設置して、モアレ縞の変位に基づく建造物の振動データを演算し、正常時における建造物の基準振動データと照合を行っている。これにより、建造物に異常振動が発生しているか否かの判断が実現でき、橋梁、工場、ビル、等などの建造物の状態監視に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図であ
【図3】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの(A)固定側モアレスリット板、及び(B)移動側モアレスリット板の平面図である。
【図4】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスの平面図である。
【図5】実施の形態1に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図6】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図7】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図である。
【図8】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスの(A)固定側モアレ格子板、及び(B)移動側モアレ格子板の平面図である。
【図9】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の平面図である。
【図10】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図11】実施の形態2に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変位を示す平面図である。
【図12】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す外観斜視図である。
【図13】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの概略構成を示す分解斜視図である。
【図14】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスの平面図である。
【図15】実施の形態3に係る微小変位表示デバイスのモアレ縞の変化を示す平面図である。
【図16】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの一形態例を示す概略構成図である。
【図17】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの動作を示すフローチャートである。
【図18】実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムの動作を示すフローチャートである。
【図19】実施例に用いた微小変位表示デバイスの振動子の力学的特性図である。
【図20】実施例における時間と加速度との関係を示す図である。
【図21】実施例における時間と加振器の変位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態に係る微小変位表示デバイス及びこれを用いた建造物の異常振動監視システムについて、詳細に説明する。まず、微小変位表示デバイスについて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図を参照して、実施の形態1に係る微小変位表示デバイスについて説明する。微小変位表示デバイス1は、図1の外観斜視図、及び図2の分解斜視図に示すように、固定側モアレスリット板11と、移動側モアレスリット板12と、ベース13と、振動伝達部材14a、14bと、振動子15と、から構成されている。
【0018】
ベース13は、建造物等の被測定対象に固定される部材である。このため、ベース13と被測定対象との相対位置が変化することはない。
【0019】
振動伝達部材14a、14bは、ベース13と振動子15とを接続している。振動伝達部材14a、14bは、被測定対象の振動を振動子15へ伝達するとともに、自らが変形して振動子15を変位させる役割を有する。したがって、振動伝達部材14a、14bは、変形率及び弾性率が高い部材であることが好ましい。また、伝達した振動で振動子15が慣性力で永続して振動しないよう、振動子15を減衰させる役割を備えていることが好ましいので、減衰力の高い部材を用いるとよい。
【0020】
振導伝達部材14a、14bの一例として、金属線や金属薄板、ゴムやプラスチック等の樹脂製棒状部材や板状部材等、種々の部材が挙げられる。また、バネとダンパーを組み合わせて構成されていてもよい。
【0021】
振動子15は、振動伝達部材14a、14bを介して伝達される被測定対象の振動を受けて振動する。振動子15は被測定対象に対して相対位置が変位することにより、後述する移動側モアレスリット板12を変位させる役割を有する。振動子15には、振動伝達部材14a、14bを経由して被測定対象の振動が伝達され、この振動を受けて、振動子15が振動することになる。すなわち、被測定対象に対して振動子15の相対位置は変化する。このため、振動子15は、被測定対象に対する相対位置が変化しやすいよう、重量がある必要がある。具体的な振動子15の重量及び振動伝達部材14a、14bの弾性率と減衰力の関係については、文献「計測工学;谷口 修、掘込 泰雄;森北出版株式会社;p.194−198」を参考にすればよい。
【0022】
固定側モアレスリット板11は、ベース13に固定されており、被測定対象に対して相対位置が変わらないようになっている。
【0023】
移動側モアレスリット板12は、振動子15に固定されている。上述のように、振動子15が振動し変位するので、この振動子15に追随して移動側モアレスリット板12が変位することになる。このため、移動側モアレスリット板12は、固定側モアレスリット板11に対し、相対位置が変化する仕組みである。
【0024】
固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12は、無色の長方形の板状部材で構成されており、図3に示すように、それぞれ複数の直線が平行に施されている。固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12に施されたそれぞれの複数の直線は全て同じ線幅で、等間隔に施されている。
【0025】
また、固定側モアレスリット板11には、x軸方向に複数の直線が平行に施されている。一方の移動側モアレスリット板12には、x軸方向に対してやや傾斜された複数の直線が平行に施されている。
【0026】
図4に、微小変位表示デバイス1の平面図を示す。上述のように、固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とが、それぞれに施された複数の直線の角度が異なるように重ねて配置されることにより、帯状のモアレ縞M1、M2、M3が発現している。
【0027】
図5は、被測定対象からの振動を受けて振動子15が振動し、y軸方向に変位した際の、モアレ縞M1、M2、M3の変位の状況を示している。振動子15が矢印で示すようにy軸方向下向きにΔy変位すると、振動子15に固定された移動側モアレスリット板12も追従して、Δyだけy軸方向下向きに変位する。すると、モアレ縞M1、M2、M3は、それぞれx軸方向左向きにΔxほど変位することになる。
【0028】
例えば、固定側モアレスリット板11、及び、移動側モアレスリット板12に施された複数の直線のピッチをPlとし、それぞれの直線がθの角度で交差している場合に発現するモアレ縞のピッチをPMとした場合、PMは下記に示す式(1)で表される。
【数1】
【0029】
θが0.5°として考えると、PMは約114.593Plとなるので、モアレ縞M1、M2、M3の変位量Δxは、振動子15の変位量Δyの凡そ115倍(拡大率)となる。
【0030】
このように、このモアレ縞M1、M2、M3の変位量Δxは、振動子15の変位量Δyに比べて大きな変位量となるので、これにより振動子15の微小な変位を拡大して表示することができる。これは、被測定対象に生じる視認不可能な振動を、視覚的に認識することができることを意味し、後述の被測定対象に異常振動が生じていないかを視覚的に捉えることが可能になる。
【0031】
一方、振動子15がy軸方向を上向きに移動すると、モアレ縞M1、M2、M3は前述とは逆にx軸方向右向きに移動する。
【0032】
また、上記では、移動側モアレスリット板12の複数の直線が傾斜して施されているが、逆に、固定側モアレスリット板11の複数の直線が傾斜して施されていてもよい。
【0033】
また、ベース13を用い、間接的に固定側モアレスリット板11を被測定対象に取り付ける場合について説明したが、ベース13を必ずしも用いなくてもよい。例えば、振動伝達部材14a、14b、及び、固定側モアレスリット板11を直接被測定対象に固定する形態でもよい。
【0034】
また、固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とは、密着させて重ねて配置されていても、離間して配置されていてもよい。固定側モアレスリット板11と移動側モアレスリット板12とを密着させて重ねる場合、移動側モアレスリット板12の動きを損なわないように、また、振動子15の振動が慣性力によって永続しないよう、オイルやゲル等、粘性を有する物質を介して重ねて配置するとよい。
【0035】
(実施の形態2)
図6の外観斜視図、及び、図7の分解斜視図を参照しつつ、実施の形態2に係る微小変位表示デバイス2について説明する。
【0036】
微小変位表示デバイス2は、ベース13と、振動伝達部材14と、振動子15と、固定側モアレ格子板21と、移動側モアレ格子板22とから構成される。
【0037】
ベース13及び振動子15については、前述した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
振動伝達部材14は、L字状の部材であり、機能や素材等については、前述した実施の形態1と同様であるが、実施の形態1では、振動子15の一軸の変位に対応していたが、本実施の形態では、二軸の変位に対応している点で異なる。
【0039】
固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とは、重ねて配置されている。
【0040】
固定側モアレ格子板21は、ベース13に固定され、被測定対象との相対位置が変化しないようになっている。
【0041】
一方、移動側モアレ格子板22は、振動子15に固定されており、振動子15の変位に追従して変位する。
【0042】
固定側モアレ格子板21、及び、移動側モアレ格子板22は、無色の板状部材であり、図8に示すように、それぞれ格子が施されている。それぞれの格子の線幅及び格子のピッチは全て同じである。そして、移動側モアレ格子板22に施された格子は、固定側モアレ格子板21に施された格子に対して、傾斜され、異なる角度にされている。
【0043】
固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とが、各々に施された格子の角度が異なるように、重ねて配置されているので、図9の平面図に示すように、帯が交差した格子状のモアレ縞Mが発現する。
【0044】
図10に、被測定対象から伝達された振動によって、振動子15にy軸方向への力が加わった場合のモアレ縞Mの変位の様子を示している。被測定対象から振動を受けて、Δyほど振動子15がy軸方向下向きに変位した場合、振動子15に固定されている移動側モアレ格子板22も追随して同様にy軸方向下向きにΔyほど変位する。すると、y軸方向に延在しているモアレ縞Mはx軸方向左向きにΔxほど変位する。
【0045】
モアレ縞Mの変位量Δxは、実施の形態1と同様に、振動子15の変位量Δyに比べて非常に大きいので、微小な振動子15の変位を拡大して表示することができる。このことは、被測定対象に生じる視認不可能な振動を、視覚的に認識することができることを意味する。なお、振動子15がy軸方向上向きに変位した場合、y軸方向に延在しているモアレ縞Mが、x軸方向右向きに変位することになる。
【0046】
一方、図11には、被測定対象から伝達された振動によって、振動子15にx軸方向への力が加わった場合のモアレ縞Mの変位の様子を示している。被測定対象から振動を受け、x軸方向右向きにΔxほど振動子15が変位した場合、振動子15に固定されている移動側モアレ格子板22も付随して同様に変位する。この場合、x軸方向に延在しているモアレ縞Mがy軸方向下向きにΔyほど変位する。逆に、振動子15がx軸方向左向きに変位した場合、x軸方向に延在しているモアレ縞Mが、y軸方向上向きに変位することになる。
【0047】
(実施の形態3)
図12の外観斜視図、及び、図13の分解斜視図を参照しつつ、実施の形態3に係る微小変位表示デバイス3について説明する。
【0048】
微小変位表示デバイス3は、振動伝達部材14と、固定側モアレ格子板21と、移動側モアレ格子板22とから構成される。
【0049】
固定側モアレ格子板21は、直接的或いは間接的に被測定対象に取り付けられる。固定側モアレ格子板21は、被測定対象に対し相対的な位置関係は変わらない。
【0050】
移動側モアレ格子板22は、四隅に配置された振動伝達部材14を介して固定側モアレ格子板21に接続している。
【0051】
振動伝達部材14は、所定地点を中心点とする同心円上に4つ配置されており、振動伝達部材14は、被測定対象からの振動を移動側モアレ格子板22に伝達する役割を有する。これにより、移動側モアレ格子板22は、所定地点を中心軸とし、固定側モアレ格子板21の面に沿って回転することになる。
【0052】
固定側モアレ格子板21及び移動側モアレ格子板22は、上述した実施の形態2と同様に、それぞれ格子が施されており、固定側モアレ格子板21と移動側モアレ格子板22とは、それぞれの格子が角度を異ならせて積層配置されているため、図14の平面図に示すように、格子状のモアレ縞Mが発現する。
【0053】
図15を参照して、微小変位表示デバイス3の作用について説明する。被測定対象から生じる振動が振動伝達部材14を介して移動側モアレ格子板22に伝達される。すると、移動側モアレ格子板22の四角に振動伝達部材14が接続されているため、移動側モアレ格子板22は中心を支点として回転することになる。
【0054】
移動側モアレ格子板22が反時計回りにθほど回転すると、モアレ縞Mのピッチが大きく表示される。モアレ縞Mのピッチは、わずかな移動側モアレ格子板22の回転によって、大きく変化するので、被測定対象に基づく移動側モアレ格子板22の微小な回転変位を拡大して観察することができる。一方、移動側モアレ格子板22が時計回りに回転する場合には、それぞれの格子の角度が一致する方向に向かうので、モアレ縞Mのピッチが小さくなる。
【0055】
(実施の形態4)
続いて、上述した微小変位表示デバイスを用いた実施の形態4に係る建造物の異常振動監視システムについて説明する。図16は、異常振動監視システムの一形態例を示す概略構成図である。
【0056】
橋桁42の上部に設置された微小変位表示デバイス4と、微小変位表示デバイス4を連続して高速撮影する撮影装置31と、撮影装置31で撮影された画像を処理し、振動データの演算及び照合を行う処理装置32と、を備えている。
【0057】
微小変位表示デバイス4としては、前述した微小変位表示デバイス1〜3のいずれかを用いればよい。
【0058】
撮影装置31は、微小変位表示デバイス4のモアレ縞の変位を撮影できるように配置される。撮影装置31として、単位時間当たりに多数の画像を撮影可能な高速カメラを用いるとよい。撮影装置31で撮影した画像は、画像データとして処理装置32に送られる。
【0059】
処理装置32は、予め演算しておいた基準振動データを保存しておくメモリ(不図示)と、送られてきた画像データの処理を行い、モアレ縞の変位に基づいて振動データを演算する演算装置(不図示)と、基準振動データと演算した振動データとの照合を行う照合装置(不図示)とが備えられている。
【0060】
続いて、図17及び図18に示すフローチャートを参照しつつ、建造物の異常振動監視システムの処理概要について説明する。
【0061】
まず、図17に示すフローチャートのように、正常時における橋の振動データである基準振動データが得られる。
【0062】
まず、撮影装置31にてモアレ縞の撮影S11を行う。撮影装置31で撮影された画像は、処理装置32に送られ、演算装置にて画像処理S12、基準振動データの演算S13が行われる。
【0063】
演算装置では、モアレ縞の変位量から、被測定対象である橋の加速度が算出され、この加速度に基づく基準振動データが演算される。この基準振動データとしては、例えば、この加速度をフーリエ変換、モード解析することにより求められる被測定対象である橋が持つ特有の振動特徴等を用いればよい。
【0064】
なお、被測定対象である橋の加速度は、モアレ縞の変位量を実施の形態1で説明した拡大率で割ることにより、求められる振動子15の変位量と、微小変位表示デバイス4の固有振動数の二乗との積より算出することができる。必要に応じ、求めた加速度を積分することにより、被測定対象の速度、変位を算出することができるため、これらを用いて基準振動データを作成してもよい。
【0065】
上記のように演算された基準振動データは、メモリに保存S14される。
【0066】
続いて、図18に示すフローチャートに沿って、振動データを取得し、橋に異常振動が発生していないかが監視される。
【0067】
前述と同様に、撮影装置にてモアレ縞の撮影S21を行う。そして、得られた画像の処理S22を行い、振動データの演算S23を行う。モアレ縞の撮影S21、画像処理S22、及び振動データの演算S23については、前述の基準振動データの演算手法と同様である。
【0068】
このようにして得られた振動データと基準振動データとが一致しているか否かの照合S24を行う。振動データと基準振動データとが一致している場合は、S21に戻り撮影を継続する。振動データと基準振動データとが不一致の場合には、橋が異常な状態であるとして、報知手段により、異常であることの報知S25を行う。報知手段は、表示や、発光、音等、種々の手段を用いればよい。
【0069】
撮影装置で橋を単純に撮影するだけでは、振動による橋の変位を識別可能な画像データを取得することは困難であるが、本実施の形態では、微小変位表示デバイスを用いることにより、上述のように橋の振動に基づく振動子の変位を識別できる画像データを取得することを実現している。橋の振動が振動子に伝達されて変位し、これによって移動側モアレ格子板22或いは移動側モアレスリット板12が変位するので、モアレ縞が変位するが、このモアレ縞の変位は、振動子15の変位に比べて大きいので、遠く離れて配置された撮影装置でも観察することができ、撮影した画像から振動データを得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る建造物の異常振動監視システムでは、電気信号を用いない微小変位表示デバイスを設置するので、橋に配線等を這わす必要がない。このため、メンテナンスが容易である。更に、電気信号を使わないので、振動検出センサに比べて、低コストで行える。
【0071】
なお、複数計測する際は、複数の微小変位表示デバイス4を設置し、それぞれの微小変位表示デバイス4を撮影する撮影装置31を設置すればよい。
【0072】
また、上記では、加速度を演算した振動データにて照合しているが、正常時における橋の振動と、異常時における橋の振動との照合が可能なデータであれば、これに限定されることはない。例えば、撮影した画像から、モアレ縞の振幅の大きさを演算したデータや、モアレ縞の周波数を演算したデータ、或いは、モアレ縞の移動パターンを演算したデータ等を、基準振動データ及び振動データとして照合するようにしてもよい。
【0073】
また、振動データと基準振動データとが一致するか否かは、閾値を設け、所望の許容範囲をもたせてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、撮影装置31からの映像を有線で処理装置32に伝達しているが、無線により撮影装置31から映像を処理装置32に送信してもよい。
【0075】
また、橋の異常振動を監視する場合について説明したが、塔やビル等の各種建造物についても同様である。
【実施例】
【0076】
実施の形態1と同様の構造の微小変位表示デバイスを作成し、振動によるモアレ縞の変位から加速度データ及び変位データを演算した。
【0077】
固定側モアレスリット板及び移動側モアレスリット板に施された、平行な複数の直線のピッチはいずれも0.02mmである。そして、それぞれの複数の直線が0.003radの角度で交わるようにして、固定側モアレ格子板と移動側モアレ格子板とが重ねて配置されている。このとき、発現するモアレ縞のピッチは、約6.7mmであり、移動側モアレスリット板の変位に対するモアレ縞の相対変位は、約335倍に拡大されていることになる。振動伝達部材の材料はジュラルミン2017、振動子には銅合金C2081を用いた。この微小変位表示デバイスの質量は25.9gである。
【0078】
まず、作成した微小変位表示デバイスの力学的特性を調べた。微小変位表示デバイスを自由振動させ、振動子の変位を計測した。その結果を図19に示す。固有角振動数は314rad/s(50Hz)、減衰比は約0.008であった。
【0079】
この微小変位表示デバイスのベースを加振器の上に固定し、振動を加えた。加振器の振動は、一次元の振動で、振幅1mm以下、振動数3Hzとした。また、同条件で、振動数5Hzについても行った。
【0080】
微小変位表示デバイスから約400mm離れたところから、カメラで撮影し、撮影した画像からモアレ縞の変位量を計測した。この変位量をモアレ縞の拡大率(本微小変位表示デバイスでは約335倍)で割り、振動子の変位量を算出した後、振動子の加速度、即ち加振器の加速度を求めた。
【0081】
なお、モアレ縞の変位の撮影には、高速カメラを用い、2000fpsにて撮影した。
【0082】
また、微小変位表示デバイスで計測したデータとの照合を得るため、加振器の変位をレーザ変位計により計測した。また、高速カメラとレーザ変位計の同期をとるために、LEDを用いた。
【0083】
得られた振動子の加速度を図20に示す。加振器の振動数と同じ、3Hz及び5Hzの加速度が計測されていることがわかる。なお、50Hzの振動が同時に検出されているが、この振動数は本微小変位表示デバイスの固有振動数と一致しており、固有振動数の影響が出ていると考えられる。
【0084】
図21は、図13に示した加速度を積分して求めた時間と加振器の変位との関係を示している。なお、実線が加速度から求めた加振器の変位であり、破線がレーザ変位計により計測した加振器の変位である。3Hz及び5Hzいずれにおいても、微小変位表示デバイスを用いて求めた加振器の変位は、レーザ変位計を用いて計測した加振器の変位とほぼ一致していることが確認できる。
【0085】
これらの実験結果から、微小変位表示デバイスでは、被測定対象の微小振動に基づく振動子の微小な変位をモアレ縞にて拡大して表示することができ、モアレ縞を撮影して画像処理を行うことで、モアレ縞の加速度や振動子の加速度を演算することができる。これにより、微小変位表示デバイスを用いて、建造物の異常振動を監視できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
微小変位表示デバイスでは、橋等の建造物の微小な振動に基づく振動子の変位をモアレ縞によって拡大して表示することができる。これは、視認できない建造物の微小な振動を視覚的に認識することにつながる。そして、このモアレ縞の変位に基づく建造物の振動データを演算し、正常時における建造物の基準振動データと照合を行うことにより、建造物に異常振動が発生しているか否かの判断が可能となる。したがって、橋梁、工場、ビル、等などの建造物の状態監視、保守管理を行う際に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 微小変位表示デバイス
2 微小変位表示デバイス
3 微小変位表示デバイス
4 微小変位表示デバイス
11 固定側モアレスリット板
12 移動側モアレスリット板
13 ベース
14 振動伝達部材
14a 振動伝達部材
14b 振動伝達部材
15 振動子
21 固定側モアレ格子板
22 移動側モアレ格子板
31 撮影装置
32 処理装置
41 橋
42 橋桁
43 橋脚
M モアレ縞
M1 モアレ縞
M2 モアレ縞
M3 モアレ縞
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、複数の平行線が施された移動側モアレスリット板と、を備え、
それぞれの前記平行線の角度が異なるように前記固定側モアレスリット板と前記移動側モアレスリット板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレスリット板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項2】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、格子が施された移動側モアレ格子板と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレ格子板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項3】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
格子が施された移動側モアレ格子板と、
前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とを接続する振動伝達部材と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動で前記移動側モアレ格子板を前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心に回転させ、前記モアレ縞の幅を変化させて表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項4】
前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心にして同心円上に前記振動伝達部材が複数配置されていることを特徴とする請求項3に記載の微小変位表示デバイス。
【請求項5】
建造物に設置される請求項1乃至4のいずれかの微小変位表示デバイスと、
前記微小変位表示デバイスに発現したモアレ縞を連続して撮影する撮影装置と、
連続して撮影した前記モアレ縞の画像処理を行い、前記モアレ縞の変位に基づく振動データを演算する演算装置と、
予め演算しておいた基準振動データと演算した前記振動データとを照合する照合装置と、
を備えることを特徴とする建造物の異常振動監視システム。
【請求項6】
前記演算装置は、前記モアレ縞の変位量から加速度を算出して前記振動データを演算することを特徴とする請求項5に記載の建造物の異常振動監視システム。
【請求項1】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、複数の平行線が施された固定側モアレスリット板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、複数の平行線が施された移動側モアレスリット板と、を備え、
それぞれの前記平行線の角度が異なるように前記固定側モアレスリット板と前記移動側モアレスリット板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレスリット板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項2】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
前記被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられる振動伝達部材と、
前記振動伝達部材に固定される振動子と、
前記振動子に固定され、格子が施された移動側モアレ格子板と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動による前記振動子の変位により前記移動側モアレ格子板をスライドさせ、
前記モアレ縞の変位量を前記振動子の変位量よりも大きくして表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項3】
被測定対象に直接的或いは間接的に取り付けられ、格子が施された固定側モアレ格子板と、
格子が施された移動側モアレ格子板と、
前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とを接続する振動伝達部材と、を備え、
それぞれの前記格子の角度が異なるように前記固定側モアレ格子板と前記移動側モアレ格子板とが重ねて配置されてモアレ縞を発現させ、
前記振動伝達部材を経由する前記被測定対象の振動で前記移動側モアレ格子板を前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心に回転させ、前記モアレ縞の幅を変化させて表示する、
ことを特徴とする微小変位表示デバイス。
【請求項4】
前記固定側モアレ格子板の所定地点を中心にして同心円上に前記振動伝達部材が複数配置されていることを特徴とする請求項3に記載の微小変位表示デバイス。
【請求項5】
建造物に設置される請求項1乃至4のいずれかの微小変位表示デバイスと、
前記微小変位表示デバイスに発現したモアレ縞を連続して撮影する撮影装置と、
連続して撮影した前記モアレ縞の画像処理を行い、前記モアレ縞の変位に基づく振動データを演算する演算装置と、
予め演算しておいた基準振動データと演算した前記振動データとを照合する照合装置と、
を備えることを特徴とする建造物の異常振動監視システム。
【請求項6】
前記演算装置は、前記モアレ縞の変位量から加速度を算出して前記振動データを演算することを特徴とする請求項5に記載の建造物の異常振動監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−271253(P2010−271253A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124730(P2009−124730)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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