説明

微小気泡生成装置

【課題】より微細化した気泡を生成すると共に微細化した気泡混じりの液体が供給される系の成分に気泡以外の影響を与えないようにする。
【解決手段】内部にオリフィス状の喉部32を有する管状部材としてノズル本体31の液体の流出端に若干の隙間をもって円板部材として形成された気泡微細化促進拡散部材38を取り付ける。気泡微細化促進拡散部材38は、喉部32を通過した後の圧力上昇を大きくすることにより気泡の崩壊エネルギを大きくして気泡の微細化を促進すると共に微細化した気泡を液体中に拡散して気泡の合体を抑制する。この結果、より微細化した気泡を生成することができる。また、液体と空気だけを用いるから、気泡混じりの液体が供給される系の成分に気泡以外の影響を与えることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小気泡生成装置に関し、詳しくは、液体と空気の供給を得て液体中に微小な気泡を生成する微小気泡生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の微小気泡生成装置としては、一端の中央に小径の吐出口が形成された円筒ケーシングと、この円筒ケーシングの他端から水を供給すると共に円筒ケーシング内の水を旋回させる液体導入経路と、円筒ケーシングの他端の中央部に空気を導入する吸気管と、円筒ケーシングの吐出口の外側に配置されて吐出口から排出された気泡混じりの水を拡散する気液誘導部材と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、円筒ケーシング内の旋回流の中心近傍の負圧部に空気を吸入し、吸入した空気を旋回流による剪断作用によって微細化し、微細化した気泡が混じった液体を吐出口から吐出し、気液誘導部材によって水中に拡散する。
【0003】
また、高圧水をオリフィス状の喉部を通過させることによって生じる負圧を用いて喉部に自動的に空気を導入して微細化した気泡混じりの液体とするものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、微細化した気泡の液体中への拡散性の向上を図るために衝突板が設けられている。
【特許文献1】特開2005−34747号公報
【特許文献2】特開2001−890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、微小気泡生成装置は、小型であることが望ましく、液体中の溶存酸素を上昇させることを目的とする場合には生成される気泡の直径が小さいことが望ましい。これらから考えると、上述の前者の装置では、液体の旋回流を形成する必要から円筒ケーシングにある程度の大きさが必要となり、装置が大型化してしまう。また、後者の装置では、小型のものとなるが、生成される気泡の直径がより小さくなることが望まれる。
【0005】
本発明の微小気泡生成装置は、小型化を図ることを目的の一つとする。また、本発明の微小気泡生成装置は、より微細化した気泡を生成することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微小気泡生成装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の微小気泡生成装置は、
液体中に微小な気泡を生成する微小気泡生成装置であって、
内部にオリフィス状の喉部が形成された直管状のノズル本体と、前記喉部の下流側の所定位置に配置され気泡の微細化を促進する気泡微細化促進部材と、を有する微小気泡生成用ノズルと、
前記微小気泡生成用ノズルに空気混じりの液体を加圧して供給する液体供給手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の微小気泡生成装置では、ノズル本体に空気混じりの液体を供給すると内部に形成されたオリフィス状の喉部における圧力変化により供給された空気の気泡はせん断されて細化する。そして、喉部の下流側の所定位置に配置された気泡微細化促進部材により、気泡の微細化を促進し、微小な気泡の混じった液体として放出する。このように、気泡微細化促進部材を設けることにより、喉部の下流における気泡の微細化を促進することができる。この結果、気泡微細化促進部材を設けないものに比して、より微細化された気泡を生成することができる。また、ノズル本体と気泡微細化促進部材とを備えるだけだから、ノズルを小型化することができ、このノズルを備える装置を小型化することができる。
【0009】
こうした本発明の第1の微小気泡生成装置において、前記気泡微細化促進部材は、前記ノズル本体の最下流端に取り付けられた板状部材であるものとすることもできる。この場合、前記気泡微細化促進部材は、複数の貫通孔が形成されてなる部材であるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の第1の微小気泡生成装置において、前記気泡微細化促進部材は、気泡混じりの液体を径方向に拡散させる拡散機能を有する部材であるものとすることもできる。こうすれば、微細化した気泡の合体を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の第1の微小気泡生成装置において、前記気泡微細化促進部材は、前記ノズル本体の前記喉部より下流における圧力上昇を促進する部材であるものとすることもできる。喉部下流における圧力上昇を促進することにより、より気泡の微細化を促進することができる。
【0012】
本発明の第2の微小気泡生成装置は、
液体中に微小な気泡を生成する微小気泡生成装置であって、
内部にオリフィス状の喉部が形成された直管状のノズル本体と、前記喉部の下流側の所定位置に配置され前記喉部より下流における圧力上昇を促進する圧力上昇促進部材と、を有する微小気泡生成用ノズルと、
前記微小気泡生成用ノズルに空気混じりの液体を加圧して供給する液体供給手段と、
を備えることを要旨とする。
【0013】
この本発明の第2の微小気泡生成装置では、ノズル本体に空気混じりの液体を供給すると内部に形成されたオリフィス状の喉部における圧力変化により供給された空気の気泡はせん断されて細化する。そして、喉部の下流側の所定位置に配置された圧力上昇促進部材により、喉部の下流側の圧力の上昇を促進することにより、気泡の微細化を促進し、微小な気泡の混じった液体として放出する。このように、圧力上昇促進部材を設けることにより、喉部の下流における気泡の微細化を促進することができる。この結果、圧力上昇促進部材を設けないものに比して、より微細化された気泡を生成することができる。また、ノズル本体と圧力上昇促進部材とを備えるだけだから、ノズルを小型化することができ、このノズルを備える装置を小型化することができる。
【0014】
こうした本発明の第2の微小気泡生成装置において、前記圧力上昇促進部材は、前記ノズル本体の最下流端に取り付けられた板状部材であるものとすることもできる。また、前記圧力上昇促進部材は、気泡混じりの液体を径方向に拡散させる拡散機能を有する部材であるものとすることもできる。こうすれば、微細化した気泡の合体を抑制することができる。
【0015】
本発明の第1または第2の微小気泡生成装置において、前記ノズル本体の前記喉部の上流側に配置され、液体流を旋回流とする旋回流生成部材を備えるものとすることもできる。こうすれば、液体流を旋回流とすることにより気泡の微細化を促進することができる。
【0016】
また、本発明の第1または第2の微小気泡生成装置において、液体中に直径が主として20μm以下の気泡を生成するためのものとすることもできる。ここで「直径が主として20μm以下」とは、本明細書中では、直径が20μm以下の気泡が50%以上であることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の一実施例としての微小気泡生成装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は実施例の微小気泡生成装置20が備える微小気泡生成用ノズル30の断面形状の一例を示す断面図である。実施例の微小気泡生成装置20は、図1に示すように、水中に配置された微小気泡生成用ノズル30と、水供給管52からの水にコンプレッサ56からの空気を混和させて気液供給管54を介して微小気泡生成用ノズル30に圧送する気液混合ポンプ50と、を備える。
【0019】
微小気泡生成用ノズル30は、腐食性と耐圧性に優れた金属材料(例えば、ステンレスや真鍮など)によって形成されており、図2に示すように、外径D1,内径D2,長さL1の管状部材としてノズル本体31と、ノズル本体31の一端に隙間L3をもって取付部材39により取り付けられた円板部材としての気泡微細化促進拡散部材38と、から構成されている。ノズル本体31の内部には、気泡微細化促進拡散部材38の取り付け端から長さL2の位置に開口径D3のオリフィス状の喉部32が形成されている。なお、実施例の微小気泡生成用ノズル30の一具体例としては、外径D1が40mm,内径D2が18mm,長さL1が75mm,喉部32の開口径D3が8mm,端部から喉部32までの長さL2が20mm,隙間L3が1.8mm,気泡微細化促進拡散部材38の厚みが1mmのものを用いた。
【0020】
次に、こうして構成された微小気泡生成装置20の動作、特に微小気泡生成用ノズル30により微小な気泡を生成する様子について説明する。ノズル本体31の気泡微細化促進拡散部材38側とは異なる端部側から気泡混じりの液体を加圧して供給すると、気泡混じりの液体は、喉部32で流速が大きくなるため、圧力低下を生じ、気泡が膨張する。喉部32を通り過ぎると、低下した圧力が回復する。このとき、気泡に対しては気泡を崩壊させるエネルギ(崩壊エネルギ)が作用し、これにより、気泡が崩壊し、微細化される。この気泡の微細化は、キャビテーションによる気泡の微細化として知られている。こうした気泡の微細化は、喉部32を通過した後の圧力上昇によって生じる気泡の崩壊エネルギが大きいほど促進すると考えられるから、実施例では、圧力上昇を促進するためにノズル本体31の流出端に気泡微細化促進拡散部材38が取り付けられている。図3は、実施例の微小気泡生成装置20の微小気泡生成用ノズル30内の圧力変化と気泡の微細化を説明するための説明図である。図中、実線は実施例の微小気泡生成用ノズル30内の圧力変化を示し、破線は比較例として気泡微細化促進拡散部材38が取り付けられていないノズル本体31内の圧力変化を示す。図示するように、実施例の微小気泡生成用ノズル30は、比較例に比して、喉部32の下流側における圧力上昇が大きい。
【0021】
実施例の微小気泡生成用ノズル30の気泡微細化促進拡散部材38は、上述した喉部32の下流側における圧力上昇を大きくして気泡の微細化を促進するだけでなく、ノズル本体31からの気泡混じりの液体の流れを横方向に拡散することにより、微細化した気泡を拡散する。
【0022】
図4は上述した実施例の微小気泡生成装置20の具体例に対して水流量60l/min,空気流量2l/minを供給したときの気泡の直径の分布を示す説明図であり、図5は具体例に対して水流量60l/minとして空気流量を変化させたときの気泡の平均直径を示す説明図である。図4および図5中、黒丸印が具体例であり、四角印が比較例であり、三角印が具体例を変形した変形例、即ち、実施例の微小気泡生成用ノズル30の喉部32に空気導入孔を設けて空気が自動的に導入されるようにしたと共に気泡が混じっていない液体を供給したものである。図4に示すように、比較例では直径が80μm以上の気泡が50%以上占めるのに対して、具体例では直径が20μm以下の気泡が50%以上占めている。変形例では直径が40μm以上の気泡が50%以上を占めることになる。また、図5に示すように、気泡の平均直径は、具体例では22μm〜35μmであるのに対して、比較例は70μm〜110μmであり、変形例では38μm〜50μmであった。、
【0023】
以上説明した実施例の微小気泡生成装置20によれば、気泡微細化促進拡散部材38を備える微小気泡生成用ノズル30に気泡混じりの液体を供給することにより、直径が20μm以下のより微細化した気泡が50%以上占める微小気泡を生成することができる。また、気泡微細化促進拡散部材38により微細化した気泡が拡散されるから、気泡の合体を抑制することができる。更に、ノズル本体31に気泡微細化促進拡散部材38を取り付けるだけだから、微小気泡生成用ノズル30の小型化を図ることができると共に微小気泡生成装置20の小型化を図ることができる。
【0024】
実施例の微小気泡生成装置20では、微小気泡生成用ノズル30の一具体例として、外径D1が40mm,内径D2が18mm,長さL1が75mm,喉部32の開口径D3が8mm,端部から喉部32までの長さL2が20mm,隙間L3が1.8mm,気泡微細化促進拡散部材38の厚みが1mmのものを用いたが、こうした具体例に限定されるものではなく、如何なる寸法の微小気泡生成用ノズル30を用いるものとしてもよい。
【0025】
実施例の微小気泡生成装置20では、ノズル本体31の内部には喉部32を形成するだけとしたが、図6の変形例の微小気泡生成用ノズル30Bに示すように、旋回流を生じさせる旋回ベーン37を取り付けるものとしてもよい。
【0026】
実施例の微小気泡生成装置20では、円板部材としての気泡微細化促進拡散部材38をノズル本体31の端部に取り付けて微小気泡生成用ノズル30を構成するものとしたが、気泡微細化促進拡散部材38は、円板部材である必要はなく、矩形部材などを用いるものとしても構わない。また、図7の変形例の気泡微細化促進拡散部材238に示すように、複数の貫通孔240を形成したものを用いるものとしても構わない。
【0027】
実施例の微小気泡生成装置20では、円板部材としての気泡微細化促進拡散部材38をノズル本体31の端部に取り付けて微小気泡生成用ノズル30を構成するものとしたが、図8の変形例の微小気泡生成用ノズル330に示すように、円板部材や矩形部材などの気泡微細化促進拡散部材338をノズル本体331の喉部332の下流側の内部に取り付けて微小気泡生成用ノズル330を構成するものとしてもよい。
【0028】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、微小気泡生成装置の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例としての微小気泡生成装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】微小気泡生成用ノズル30の断面形状の一例を示す断面図である。
【図3】微小気泡生成用ノズル30内の圧力変化と気泡の微細化を説明するための説明図である。
【図4】微小気泡生成装置20の具体例に対して水流量60l/min,空気流量2l/minを供給したときの気泡の直径の分布を示す説明図である。
【図5】微小気泡生成装置20の具体例に対して水流量60l/minとして空気流量を変化させたときの気泡の平均直径を示す説明図である。
【図6】変形例の微小気泡生成用ノズル30Bの断面形状の一例を示す断面図である。
【図7】変形例の気泡微細化促進拡散部材238の構成の一例を示す構成図である。
【図8】変形例の微小気泡生成用ノズル330の断面形状の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
20 微小気泡生成装置、30,30B,330 微小気泡生成用ノズル、31,331 ノズル本体、32,332 喉部、37 旋回ベーン、38,238,338 気泡微細化促進拡散部材、39 取付部材、50 気液混合ポンプ、52 水供給管、54 気液供給管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に微小な気泡を生成する微小気泡生成装置であって、
内部にオリフィス状の喉部が形成された直管状のノズル本体と、前記喉部の下流側の所定位置に配置され気泡の微細化を促進する気泡微細化促進部材と、を有する微小気泡生成用ノズルと、
前記微小気泡生成用ノズルに空気混じりの液体を加圧して供給する液体供給手段と、
を備える微小気泡生成装置。
【請求項2】
前記気泡微細化促進部材は、前記ノズル本体の最下流端に取り付けられた板状部材である請求項1記載の微小気泡生成装置。
【請求項3】
前記気泡微細化促進部材は、複数の貫通孔が形成されてなる部材である請求項2記載の微小気泡生成装置。
【請求項4】
前記気泡微細化促進部材は、気泡混じりの液体を径方向に拡散させる拡散機能を有する部材である請求項1ないし3いずれか記載の微小気泡生成装置。
【請求項5】
前記気泡微細化促進部材は、前記ノズル本体の前記喉部より下流における圧力上昇を促進する部材である請求項1ないし4いずれか記載の微小気泡生成装置。
【請求項6】
液体中に微小な気泡を生成する微小気泡生成装置であって、
内部にオリフィス状の喉部が形成された直管状のノズル本体と、前記喉部の下流側の所定位置に配置され前記喉部より下流における圧力上昇を促進する圧力上昇促進部材と、を有する微小気泡生成用ノズルと、
前記微小気泡生成用ノズルに空気混じりの液体を加圧して供給する液体供給手段と、
を備える微小気泡生成装置。
【請求項7】
前記圧力上昇促進部材は、前記ノズル本体の最下流端に取り付けられた板状部材である請求項6記載の微小気泡生成装置。
【請求項8】
前記圧力上昇促進部材は、気泡混じりの液体を径方向に拡散させる拡散機能を有する部材である請求項6または7記載の微小気泡生成装置。
【請求項9】
前記ノズル本体の前記喉部の上流側に配置され、液体流を旋回流とする旋回流生成部材を備える請求項1ないし8いずれか記載の微小気泡生成装置。
【請求項10】
液体中に直径が主として20μm以下の気泡を生成するための請求項1ないし9いずれか記載の微小気泡生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−216149(P2007−216149A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39916(P2006−39916)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】