説明

微小繊維状セルロースを含んでなる濃化界面活性剤系、及びその製造方法

【課題】懸濁された微粒子を含有する透明な濃化界面活性剤系、及び多くの代替的な増粘剤が機能しない高界面活性剤系用の、懸濁助剤を提供すること。
【解決手段】細菌由来又はそれ以外由来の微小繊維状セルロース(MFC)を用いることにより、濃化界面活性剤系、並びに、高い界面活性剤濃度を有する調製物において、微粒子を懸濁させること。また、補助剤の有無にかかわらず、MFCをこの用途に使用すること。細菌由来の微小繊維状セルロースを利用する場合、細胞破片を除去することができ、それにより、典型的な使用濃度において透明な溶液が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小繊維状セルロースを含んでなる濃化界面活性剤系、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤ベースの製品(例えばボディウォッシュ、シャンプー、バブルバス、食器洗い用洗剤、自動食器洗い機用洗剤、洗濯用洗剤、自動車用洗剤、トイレ用洗剤、濃縮洗剤、泡消火剤)は通常、高濃度の界面活性剤を利用すること、相乗的に粘性を高める界面活性剤を組み合わせること、又は界面活性剤を少量の塩(例えばナトリウム塩)と組み合わせること、によって濃化(thickened)される。これらの調製により、濃厚でありかつ滑らかな外観の高粘性製品が得られるが、それらでは、粒子が懸濁されることを可能にする程の、充分な低い剪断粘性が得られないという点で欠点を有する。かかる粒子としては、審美剤(aesthetic agent)(装飾ビーズ、真珠光沢剤、気泡、芳香ビーズなど)、又は活性成分(不溶性酵素、封入された活性物質(例えば保湿剤、ゼオライト、表皮剥脱剤(例えばαヒドロキシ酸及び/若しくはグリコール酸又はポリエチレンビーズ)、ビタミン(例えばビタミンE)など))、又はそれらの両方が挙げられる。
【0003】
従来の増粘剤及び懸濁助剤(例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、並びに多くの種類のポリアクリレートは、高濃度界面活性剤系若しくは濃化界面活性剤系において良好に機能せず、しばしば曇り(clouding)による透明度の低下、ゲル化及び/若しくは相分離、又は不充分な懸濁特性を生じさせる。例えば、キサンタンガムは、界面活性剤の濃化の程度が低い特定のボディウォッシュにおいては優れた懸濁特性を付与するが、当該ガムはしばしば、界面活性剤の濃化の程度が高い系においてはその懸濁特性を喪失し、通常、かすんだ、不規則な外観を生じさせ、また粒状の若しくは塊の多いテクスチャを生じさせる。セルロース製品(CMC、HEC、HPMCなど)も、従来技術における増粘剤の他の例として挙げられるが、得られる懸濁液は信頼性が低く、界面活性剤との適合性に関しては重大な欠点を有する。アクリレート系は一般的であるが、しかしながらこれらの系では充分な透明度が必ずしも得られるわけではなく、また高濃度のポリマーを必要とし、また天然材料であるとはみなされない。塩は通常、濃化界面活性剤系において、剪断粘度を向上させることはできるが、長期にわたる懸濁特性を付与しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、消費財産業においては、懸濁された微粒子を含有する透明な濃化界面活性剤系に対する要望、並びに、多くの代替的な増粘剤が機能しない高界面活性剤系用の、懸濁助剤に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
細菌由来又はそれ以外由来の微小繊維状セルロース(MFC)を用いることにより、濃化界面活性剤系、並びに、高い界面活性剤濃度を有する調製物において、微粒子を懸濁させることができることを見出した。また、補助剤の有無にかかわらず、MFCがこの用途に使用できることも見出した。細菌由来の微小繊維状セルロースを利用する場合、細胞破片を除去することができ、それにより、典型的な使用濃度において透明な溶液が得られる。
【0006】
微小繊維状セルロースは、界面活性剤ミセル成長に影響を受けないと考えられ、これらの系の良好な懸濁状態を維持する。微小繊維状セルロースは、これらの系において、溶解するというよりはむしろ大部分が分散するため、その機能は独特なものとなり、それにより調製物中で所望の懸濁液特性が得られる。一方、代替的な可溶化ポリマーを使用した場合では通常、曇り(hazing)及び/又は沈殿が見られる。
【0007】
本発明は、微小繊維状セルロースを含んでなる界面活性剤系の提供に関する。「界面活性剤系」には、濃化界面活性剤系及び高濃度界面活性剤系が含まれるが、これらに限定されるものではない。微小繊維状セルロース(MFC)には、微生物発酵により調製されるMFC、又は機械的に穀物、木又は綿ベースのセルロース繊維を破壊し/加工することにより調製されるMFCが含まれる。細菌由来の微小繊維状セルロースを利用するとき、細胞破片を除去でき、それにより典型的な使用濃度で透明な溶液が得られる。本発明では、界面活性剤を利用することにより、高い剪断速度で、非常に濃厚な(非常に粘稠な)系が得られ、微小繊維状セルロースを用いることにより、その中で微粒子が懸濁された状態で存在する。
【0008】
これらの系における界面活性剤濃度は、約5%〜約99%(重量/重量 活性な界面活性剤)の範囲であるが、具体的な濃度は製品により変化する。ボディウォッシュは典型的には約5%〜約15%(重量/重量)の界面活性剤を含有し、食器洗い用液体洗剤は典型的に約20%〜約40%(重量/重量)の界面活性剤(40%では「超」濃縮製品)を含有し、洗濯用洗剤は典型的に約15%〜約50%(重量/重量)の界面活性剤を含有する。業務用の界面活性剤濃縮物(後の製造への使用において、又は消費者により希釈される)は、約100%の非イオン系界面活性剤濃度であることもあり、またしばしば50%以上のアニオン系界面活性剤の濃度であることもありうる。これらの濃縮物は、入浴用ソープ及びシャンプーなどの消費財の製造において、又は、界面活性剤が使用時に希釈される用途(泡消火剤など)に使用できる。MFCをこれらの濃縮物に添加することにより、濃縮物又は希釈された系に、降伏応力を付与することができる。MFCは約0.05%〜約1.0%の濃度で存在させるが、当該濃度は所望の製品に応じて変化する。例えば、小さい気泡が懸濁している80%の界面活性剤系においては、約0.06%(重量/重量)のMFCが好適であり、気泡が懸濁している99%の界面活性剤系においては、約0.078%が好適であり、気泡若しくはビーズが懸濁している約40%(重量/重量)の界面活性剤を含有する系においては、約0.150%(重量/重量)が好適である。更に、透明度の高い系が要求される場合、当然MFCの濃度は調整される。具体的には、約0.055%〜約0.25%(重量/重量 活性な界面活性剤)のMFC濃度とすることにより、約5%〜約15%(重量/重量 活性な界面活性剤)の濃度の、非常に透明なボディウォッシュが得られる。
【0009】
懸濁させる微粒子としては、審美剤(aesthetic agent)(装飾ビーズ、真珠光沢剤(pearlescent)、気泡、芳香ビーズなど)、又は活性成分(不溶性酵素、封入された活性物質(例えば保湿剤、ゼオライト、表皮剥脱剤(例えばαヒドロキシ酸及び/若しくはグリコール酸又はポリエチレンビーズ)、ビタミン(例えばビタミンE)など))又はそれらの両方が挙げられる。他の適切な微粒子は、当業者に公知である。
【0010】
本発明はまた、補助剤及び/又は加工助剤(例えばCMC、キサンタン及び/又はグアーガム)と、微小繊維状セルロースとの、本願明細書に記載の界面活性剤系への使用に関する。微小繊維状セルロース混合物とは、補助剤を含有する、微小繊維のセルロース生産物である。MFC、キサン及びCMCを6:3:1の比率で含むもの、及び、MFC、グアーガム及びCMCを3:1:1の比率で含むもの、の2種類の混合物が挙げられる。これらの混合物の使用により、水又は他の水性溶液中で、高い剪断力又は長時間の(high extensional)混合によって「活性化」されうる乾燥生成物として、MFCを調製することができる。MFC混合物が水に添加され、補助剤/加工助剤が水和するときに、「活性化」がなされる。通常、上記補助剤/加工助剤の水和の後、効果的に微小繊維状セルロース繊維を分散させるために、次に高い剪断力を加え、真の降伏点を示す機能的な三次元ネットワーク構造を生じさせる必要がある。予想外にも、これらの微小繊維状セルロース混合物に存在する補助剤及び/又は加工助剤のCMC、キサンタン及び/又はグアーガムは、それらが高濃度界面活性剤系中における適合性を全般的に有さない(おそらくMFCを有するこれらの調製物中では、これらのポリマーの使用濃度が低いことによる)にもかかわらず、(水中での活性化の後)多くの高濃度界面活性剤の調製物中において可溶化されたままであることが観察された。
【0011】
本発明は更に、補助剤及び/又は加工助剤の有無における、上記の界面活性剤系の調製方法の提供に関する。
【0012】
上記の発明の概要は、以下の発明の詳細な説明を参照することにより、更に詳細に理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
補助剤の有無において、微小繊維状セルロースを使用して、高濃度の界面活性剤を含有する溶液を調製した。本願明細書に記載の当該系のpHは、約2〜約12の範囲であった。
【実施例】
【0014】
<実施例1>:0.1%の微小繊維状セルロース混合物(MFC/キサンタン/CMCを6:3:1で混合)を用いて、80%の非イオン系界面活性剤を含有する濃化溶液を調製した。濃縮物を最初に、脱イオン水中に、0.5%の微小繊維状セルロース混合物(MFC/キサンタン/CMCを6:3:1で混合)を含有させて調製した。この40gの溶液を250mlのビーカーに移し、次に160gの原液のTriton(登録商標)X−100(Union Carbide社製、〜100%の活性のオクトキシノール−9)を、jiffy(登録商標)混合ブレードを使用して600回転/分で混合しながら徐々に添加した。得られる溶液は視覚試験により良好な透明度を示し、ポリエチレンビーズ、ゼラチンカプセル、ジェランガムビーズ及び気泡を懸濁する能力を有していた。降伏値は、5.3のpHにおいて、0.33Pa(Brookfield(登録商標)Yield Rheometerにより測定)であった。
【0015】
<実施例2>:0.1%の微小繊維状セルロース混合物(MFC/キサンタン/CMCを6:3:1で混合)を用いて、80%の非イオン系界面活性剤を含有する濃化溶液を調製した。濃縮物を最初に、脱イオン水中に、0.5%の微小繊維状セルロース混合物(MFC/キサンタン/CMCを6:3:1で混合)を含有させて調製した。この40gの溶液を250mlのビーカーに移し、次に160gの原液のTween(登録商標)20(ICI社製、〜100%の活性のポリソルベート20)を、jiffy(登録商標)混合ブレードを使用して600回転/分で混合しながら徐々に添加した。得られる溶液は視覚試験により良好な透明度を示し、ポリエチレンビーズ、ゼラチンカプセル、アラビアガムカプセル及び気泡を懸濁する能力を有していた。降伏値は、6.0のpHにおいて、0.11Pa(Brookfield(登録商標)Yield Rheometerにより測定)であった。
【0016】
<実施例3>:微小繊維状セルロースの湿ケーキを使用して、99%の非イオン系界面活性剤を含有する濃化溶液を調製し、0.78%の湿ケーキを、原液のTriton(登録商標) X−100に添加し、Oster(登録商標)混合機で、5分間「液化」速度(最高速度)で混合した。活性形態のこのMFCの湿ケーキは約16%(%固体)であったため、活性MFCレベルが界面活性剤の0.125%であった。得られる溶液は、視覚試験により良好な透明度を示し、ポリエチレンビーズ、ゼラチンカプセル、アラビアガムカプセル及び気泡を懸濁する能力を有していた。上記溶液を真空下で脱気し、降伏点を測定した。視覚試験において、得られる溶液は、ごくわずかな曇りを有する良好な透明度を示し、14.6Paの降伏点を示した。
【0017】
<実施例4>:微小繊維状セルロースの湿ケーキを使用し、99%の非イオン系界面活性剤を含有する濃化溶液を調製した。0.78%の湿ケーキを、原液のTween(登録商標)20に添加し、Oster(登録商標)混合機で、5分間「液化」速度(最高速度)で混合した。活性形態のこのMFCの湿ケーキは約16%(%固体)であったため、活性MFCレベルが界面活性剤の0.125%であった。得られる溶液は視覚試験により良好な透明度を示し、ポリエチレンビーズ、ゼラチンカプセル、アラビアガムカプセル及び気泡を懸濁する能力を有していた。上記溶液を真空下で脱気し、降伏点を測定した。得られる溶液は、視覚試験において若干の曇りを有する良好な透明度を示し、17.8Paの降伏点を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.05%〜約1.0%(重量/重量)の濃度の微小繊維状セルロースと、
約51%〜約99%(重量/重量 活性な界面活性剤)の濃度の界面活性剤と、
微粒子と、を含んでなる界面活性剤系。
【請求項2】
前記微小繊維状セルロースが約0.06%で存在する、請求項1記載の界面活性剤系。
【請求項3】
前記微小繊維状セルロースが約0.075%で存在する、請求項1記載の界面活性剤系。
【請求項4】
前記微小繊維状セルロースが約0.125%で存在する、請求項1記載の界面活性剤系。
【請求項5】
前記界面活性剤が約80%(重量/重量 活性な界面活性剤)で存在する、請求項2記載の界面活性剤系。
【請求項6】
懸濁された気泡を更に含んでなる、請求項5記載の界面活性剤系。
【請求項7】
前記界面活性剤が約99%(重量/重量 活性な界面活性剤)で存在する、請求項4記載の界面活性剤系。
【請求項8】
pHが約3〜約11である、請求項5記載の界面活性剤系。
【請求項9】
pHが約3〜約11である、請求項7記載の界面活性剤系。
【請求項10】
界面活性剤系の調製方法であって、微小繊維状セルロースと水とを組み合わせ、混合するステップと、
界面活性剤を添加し、更に混合するステップと、
微粒子を添加し、続いて混合するステップと、を有してなり、
得られる系が透明であり、前記微粒子がそこに懸濁される方法。
【請求項11】
前記微小繊維状セルロースが約0.05%〜約1.0%(重量/重量)の濃度で存在し、かつ、前記界面活性剤が約51%〜約99%(重量/重量 活性な界面活性剤)で存在する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記微小繊維状セルロースが約0.06%で存在する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記微小繊維状セルロースが約0.075%で存在する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記微小繊維状セルロースが約0.125%で存在する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記界面活性剤が約80%(重量/重量 活性な界面活性剤)で存在する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記界面活性剤が約99%(重量/重量 活性な界面活性剤)で存在する、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2010−513603(P2010−513603A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541553(P2009−541553)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087229
【国際公開番号】WO2008/076753
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】