微生物付着用担体
【課題】排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式のいずれにも使用することができ、更に、生物濾過法にも使用可能な、生物量を多くすることのできる微生物付着担体を提供する。
【解決手段】筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴とする微生物付着用担体。前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されている。前記窪み部の曲率と、前記突部の曲率とが同一である。
【解決手段】筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴とする微生物付着用担体。前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されている。前記窪み部の曲率と、前記突部の曲率とが同一である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は排水の生物処理法に使用される微生物付着用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から排水の処理に生物処理法が採用されている。生物処理法は流入する汚濁負荷と生物量の確保(汚泥の転換率)の関係から、一般的に、以下のように大別されて採用されている。
【0003】
(1)高濃度域
排水に活性汚泥を混合し、活性汚泥中の微生物で排水中の汚染物質を分解して浄化し、浄化した排水中の活性汚泥を沈殿分離させ、分離した上澄み液を放流する活性汚泥法が採用されている。活性汚泥法は汚泥量をコントロールすることが可能であり、汚泥転換量が多い。
【0004】
(2)中濃度域
排水に接触する接触材の表面に微生物を住み着かせ、この微生物が排水中の溶解性の有機性汚濁物質や有機物などを取り込んで生物膜を形成することにより廃水処理する接触酸化法が使用される。接触酸化法は生物群を固定する方式であり、大型微生物も多く共存する。このため汚泥捕食能が高く汚泥転換量は少ない。前記の接触材としては、固定型の濾材や、流動型の濾材が使用される。
【0005】
(3)低濃度域
排水の処理槽に担体を浸漬し、これに微生物を付着させ、有機物の生物的分解と物理的吸着や濾過作用によって排水の処理を行う生物濾過法が使用される。汚泥転換量が少なく、生物群などを固定及び保持する方式にしている。前記の担体としては、例えば粒状や礫状のものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−314780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、社会のニーズの多様化が進み、これに応じて、排水の種類が多くなり、難分解性排水が増加する傾向にある。このため、前述した従来一般的に採用されていた方式だけに留まらない処理が要請されるようになっている。
【0008】
このため、低濃度域においても多くの生物量を必要とする処理方法が求められるようになっている。
【0009】
そこで、この発明は、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式のいずれにも使用することができ、更に、生物濾過法にも使用可能な、生物量を多くすることのできる微生物付着担体を提供することを目的にしている。
【0010】
又、活性汚泥法との併用を行うことで生物量の安定化や汚泥転換量の低減(汚泥減容)も図ることを可能にする微生物付着担体を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、
中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴としている微生物付着用担体である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、
前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えていることを特徴とする請求項1記載の微生物付着用担体である。
【0013】
請求項3記載の発明は、
前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されていることを特徴とする請求項2記載の微生物付着用担体である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式のいずれにも使用することができ、更に、生物濾過法にも使用可能な、生物量を多くすることのできる微生物付着担体を提供することができる。
【0015】
又、この発明によれば、活性汚泥法との併用を行うことで生物量の安定化や汚泥転換量の低減(汚泥減容)も図ることを可能にする微生物付着担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の微生物付着担体の一例を表す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図2】この発明の微生物付着担体が複数個配置された場合の隣接する微生物付着担体との間に形成される空隙部を説明する平面図。
【図3】この発明の微生物付着担体が複数個配置されている状態の斜視図。
【図4】従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着担体が複数個配置された場合の隣接する微生物付着担体との間に形成される空隙部を説明する平面図。
【図5】この発明の微生物付着担体を用いた濾過実験の結果を表わす図。
【図6】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図7】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図8】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図9】従来の微生物付着担体を用いた濾過実験の結果を表わす図。
【図10】従来の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図11】従来の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
従来の流動床方式で使用されている微生物付着担体は、(1)スポンジ状などの立方体形状、(2)中空筒状などの円柱形状に大別される。これらは、表面積を大きくして付着する生物の量を確保している。この微生物付着担体は、処理すべき排水が流動することに応じて流動する。そこで、微生物付着担体同士の衝突や、微生物付着担体が収容されている排水処理槽の槽壁との間の接触などにより、微生物付着担体表面への微生物付着量は大きくなく、微生物付着担体の内面や空隙によって微生物が付着する有効表面積が確保される。
【0018】
なお、中空筒状などの円柱形状は生物の付着成長と、剥離が繰り返される。そこで、スポンジ状などの立方体形状からなる微生物付着担体よりは、中空筒状などの円柱形状の方が、新鮮な生物量を確保できる形状になっている。
【0019】
しかし、前述したように、微生物付着担体の内面や空隙によって微生物が付着する有効表面積が確保されるのが一般的なので、表面積に限界があり、これが生物量の限界につながっている。
【0020】
一方、従来の固定床方式で使用されている微生物付着濾材は、整流作用があり処理すべき排水のショートパスを軽減しながら中空筒状の担体と同様に生物の付着成長と剥離が繰り返されるという特徴がある。
【0021】
また、従来の生物濾過法に使用されている微生物付着担体は、濾過機能を発揮させるために隣接する微生物付着担体同士の間の空間が小さくなるようにした形状している点に特徴がある。これによって生物群を含む微粒子懸濁物質(以下、本明細書において「SS」と表すことがある)を保持するようにしている。
【0022】
ただし、このような従来の固定床方式で使用されている微生物付着濾材では、付着する生物量を確保するための微生物付着濾材の表面積は微生物付着濾材の空隙に頼ることになり、空隙の閉鎖が処理性の低下に結びつくことがあった。
【0023】
本発明が提案する微生物付着用担体は、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式、そして、生物濾過法にそれぞれ使用されていた微生物付着担体の上述した特徴を踏まえて開発されたものである。
【0024】
本発明が提案する微生物付着用担体は、中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えている。
【0025】
中空の筒状体であることから、当該筒状体を構成する周壁の内面に生物の付着成長と、剥離が繰り返され、新鮮な生物量を確保できる。また、前記筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることから、内面の表面積が大きくなり、微生物が付着する有効な表面積を多くし、生物量を多くすることができる。
【0026】
また、前記筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることから、本発明の微生物付着用担体同士が隣接した際に、隣接する微生物付着用担体との間の空間を少なくすることができる。これによって優れた濾過機能を発揮させ、生物群を含む微粒子懸濁物質(SS)を保持することができる。
【0027】
このような観点から、前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えている構造にすることが望ましい。
【0028】
このようにすると、本発明の微生物付着用担体同士が隣接した際に、隣接する微生物付着用担体との間の空間を効果的に減少させることができ、優れた濾過機能を発揮させ、生物群を含む微粒子懸濁物質(SS)の保持に有効になる。
【0029】
なお、前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数個所ずつ形成されている構造にすることができる。例えば、窪み部と、突部とが前記周壁の周方向に、交互に、3箇所ずつ形成されている構造などを採用することができる。
【0030】
中空の筒状体からなる本発明の微生物付着用担体は、前述したように、筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えている。
【0031】
そこで、処理すべき排水中において本発明の微生物付着用担体が流動する際に回転力が微生物付着用担体に与えられる。これによって、処理すべき排水の流動につれて微生物付着用担体がとも回りする現象の発生が抑制され、処理すべき排水と微生物付着用担体との接触効率の増加が図られる。
【0032】
本発明の微生物付着用担体は、従来、この技術分野で公知のように、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂と、炭酸カルシウムやタルクなどの無機物から製造することができる。用途に応じて比重調整や発泡処理を行う。例えば、生物濾過法に使用する場合には、処理すべき排水が上昇流の場合は浮上し易く、下降流の場合には沈降し易くする等、用途、濾過システムに応じて比重0.8〜1.2の範囲で比重調整などを行う。
【0033】
本発明の微生物付着用担体は外径寸法6〜50mmの範囲で、処理すべき排水の水質や、用途、濾過システムに応じて適宜の大きさにすることができる。
【0034】
例えば、流入するSSが多い排水の場合には、微生物付着用担体の流出を防止するスクリーンの目詰まりが懸念されるので、流出防止スクリーンの目を大きくすることに対応させて微生物付着用担体の外径を前記の範囲内において比較的大きなものにする。
【0035】
一方、生物量を多くする必要がある排水の場合には、微生物付着用担体の外径を前記の範囲内において比較的小さくし、小口径化を図って、生物が付着する有効表面積を大きくする。
【0036】
中空の筒状体の長手方向の長さは外径寸法の0.8〜1.2倍にすることが望ましい。筒状体の周壁の厚さは1〜2mmにすることができる。
【0037】
内径寸法は、上記の外径寸法、肉厚に対応して4〜49mmの範囲に設定される。
【0038】
このように、微生物付着用担体は前述した外径寸法、肉厚の範囲で、処理すべき排水の水質や、用途、濾過システムに応じて適宜の大きさに設定することができる。
【0039】
本発明の微生物付着用担体は、好気性生物処理としては、通常の活性汚泥法にも使用可能であり、嫌気性生物処理としても適用できる。
【0040】
好気性生物処理に使用する場合、複数に分割した散気装置を全面に設置した分割全面曝気法等と組み合わせると曝気箇所は流動床として活躍し、曝気していない箇所に滞留した場合は、汚泥の保持機能が働き、生物量の増加を図ることができ、処理効率を上げることができる。
【0041】
本発明の微生物付着用担体は、上下に設置したスクリーンではさみ込むことにより流動床としても、固定床としても利用可能になる。
【0042】
本発明の微生物付着用担体は、既存の流動床法や生物膜濾過法の濾材との混合利用が可能であり、比表面積のカバーや、閉塞状態にある濾材の代替や補填を行うことで処理性のカバーを行うことができる。
【0043】
本発明の微生物付着用担体は、一般的な生物濾過用の濾材が機密性が高い構造であるのに対し、中空構造であるため、生物濾過法としての逆洗工程も効率よく行うことができ、且つ使用材料が少なく、価格も低価格に抑えることができる。
【0044】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明は上述した発明を実施するための形態及び、以下の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例】
【0045】
ポリプロピレンを用い、従来の円柱状で中空の筒状体を製造するのと同様にして、形状が図1(a)、(b)図示の本発明の微生物付着用担体1を準備した。外径寸法R:8mm、長手方向の長さL:8mm、肉厚:1mmの大きさとし、発泡処理を行って比重を0.87に調整した。
【0046】
図1(a)、(b)図示のように本発明の微生物付着用担体1は中空の筒状体である。この筒状体を構成する周壁2は、径方向内側に向かって凸湾する窪み部3a、3b、3cと、径方向外側に向かって凸湾する突部4a、4b、4cとを備えている。これらの窪み部3a、3b、3cと、突部4a、4b、4cとは、図示のように、周壁2の周方向に連続して形成されている。
【0047】
そして、窪み部3a、3b、3cにおける筒状体外周側の窪み部湾曲面13a、13b、13cの曲率と、突部4a、4b、4cにおける筒状体外周側の突部湾曲面14a、14b、14cの曲率とは、互いに正負逆方向で、等しい大きさになっている。
【0048】
この結果、図2、図3図示のように、複数個の本発明の微生物付着用担体1a〜1gが隣接した場合、隣接する微生物付着用担体1a〜1gが備えている窪み部湾曲面13a、13b、13cと、突部湾曲面14a、14b、14cとが互いに嵌めあって当接し、隣接する微生物付着用担体1a〜1gとの間の空間が非常に少なくなる。
【0049】
すなわち、図2に符号5a、5b、5c、5d、5e、5fで示す大きさの空間部しか形成されない。
【0050】
図4は、比較のために、従来の円柱状で中空の筒状体11a〜11gを、この実施例と同じく外径寸法R:10mm、長手方向の長さL:10mm、肉厚:2mm、比重:0.87で製造し、複数個隣接させた場合を説明する平面図である。隣接する微生物付着用担体11a〜11gの間に符号15a、15b、15c、15d、15e、15fで示す空間部が形成され、本願発明の微生物付着用担体1a〜1gの場合と比較して非常に大きな空間部が形成されてしまうことがわかる。
【0051】
試験・検討用に合成樹脂製の透明な直方体状の実験用濾過槽(容量:約170リットル)を準備し、上述のようにして準備した本発明の微生物付着用担体1を実験用濾過槽の容量の60%に相当する数だけ投入し、ここに水を流動させて生物濾過装置としての模擬実験を行った。比較のため、同一の実験用濾過槽に、上述の従来の円柱状で中空の筒状体11aを用い、まったく同一の条件で模擬実験を行った。
【0052】
微生物付着用担体を実験用濾過槽に投入し、水を入れただけの状態で、隣接する微生物付着用担体同士の間の状態を本発明品及び、従来品についてそれぞれ外部から観察した。本発明品の場合の方が、隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さいことを確認できた。
【0053】
次に、水を流動させている状態で観察したところ、本発明品の場合、水の流動が開始される前の、隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さい状態が維持されており、水が流動している状態でも、一貫して、従来品よりも隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さいことを確認できた。
【0054】
また、本発明品の微生物付着用担体1は、水が流動しているときにほとんどとも回りしないことを確認できた。そこで、処理すべき排水が流動する際には、とも回りが抑制されて、排水との接触効率が高まるものと認められた。
【0055】
その後、前記の実験用濾過槽(容量:約170リットル)を用い、処理すべき排水を実際に流して性能評価試験を行った。
【0056】
(試験1)
図1図示の形状で、外径寸法R:8mm、長手方向の長さL:8mm、肉厚:1mm、比重: 0.87の本発明の微生物付着用担体を用いて実験を行った。
【0057】
準備した微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の50%に相当する量で充填し、7日間にわたって排水を流入させた。結果は図5図示の通りであった。
【0058】
(試験2)
実験用濾過槽への微生物付着用担体の充填量を60%に変更した以外は試験1と同様にし、7日間にわたって排水を流入させた。結果は図6図示の通りであった。
【0059】
(試験3)
試験1で準備した微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の43%に相当する量で充填し、12日間にわたって排水を流入させた。結果は図7図示の通りであった。
【0060】
(試験4)
実験用濾過槽に充填しる微生物付着用担体を、上下に設置したスクリーンではさみ込む構造にした以外は試験3と同様にし、8日間にわたって排水を流入させた。結果は図8図示の通りであった。
【0061】
(比較試験1)
試験1で準備した本発明の微生物付着用担体と同一の材質で、外径寸法R:10mm、長手方向の長さL:10mm、肉厚:2mm、比重:0.87の従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体を準備し、これを用いて比較実験を行った。
【0062】
微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の60%に相当する量で充填し、27日間にわたって排水を流入させた。結果は図9図示の通りであった。
【0063】
(比較試験2)
比較試験2で準備した従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体と、従来の不定形の微生物付着用担体とを用いて比較実験を行った。
【0064】
従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の60%、従来の不定形の微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の10%、それぞれ、分離して実験用濾過槽に充填した。
【0065】
7日間にわたって排水を流入させたところ、結果は図10図示の通りであった。
【0066】
(比較試験3)
従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体と、従来の不定形の微生物付着用担体とを混合して実験用濾過槽に充填した以外は比較試験2と同様にし、2日間にわたって排水を流入させた。結果は図11図示の通りであった。
【0067】
比較試験1の結果と試験2の結果から、本発明の微生物付着用担体は、従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体に比較して1.2倍の高い除去COD量を示すことが確認できた。
【0068】
また、試験1では、少ない充填率でも従来品よりも高い除去率が認められた。
【0069】
試験1、2の結果と比較試験1〜3の結果を比較すると、除去COD量が増加したことにより汚泥量は増加するが、SS流出量は近似していた。これは補足能力の向上を示すものと考えられた。また、溶解性であるS−CODの除去率が上昇したことから、本発明の微生物付着用担体によれば処理能力が向上することが認められた。
【0070】
試験3の結果は充填率43%で既存の一般的な生物濾過用濾材と同等の能力が発揮されることを示していた。
【0071】
試験3と試験4を比較すると試験4の方が除去率が8%向上していた。これは、上下からスクリーンではさみ込むことにより、隣接する微生物付着用担体同士の隙間に生物量を多くできたためと認められた。
【符号の説明】
【0072】
1 微生物付着用担体
2 周壁
3a、3b、3c 窪み部
4a、4b、4c 突部
13a、13b、13c 窪み部湾曲面
14a、14b、14c 突部湾曲面
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 微生物付着用担体
5a、5b、5c、5d、5e、5f 隣接する微生物付着用担体との間の空間部
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g 従来の円柱状中空の筒状体
15a、15b、15c、15d、15e、15f 隣接する微生物付着用担体との間の空間部
【技術分野】
【0001】
この発明は排水の生物処理法に使用される微生物付着用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から排水の処理に生物処理法が採用されている。生物処理法は流入する汚濁負荷と生物量の確保(汚泥の転換率)の関係から、一般的に、以下のように大別されて採用されている。
【0003】
(1)高濃度域
排水に活性汚泥を混合し、活性汚泥中の微生物で排水中の汚染物質を分解して浄化し、浄化した排水中の活性汚泥を沈殿分離させ、分離した上澄み液を放流する活性汚泥法が採用されている。活性汚泥法は汚泥量をコントロールすることが可能であり、汚泥転換量が多い。
【0004】
(2)中濃度域
排水に接触する接触材の表面に微生物を住み着かせ、この微生物が排水中の溶解性の有機性汚濁物質や有機物などを取り込んで生物膜を形成することにより廃水処理する接触酸化法が使用される。接触酸化法は生物群を固定する方式であり、大型微生物も多く共存する。このため汚泥捕食能が高く汚泥転換量は少ない。前記の接触材としては、固定型の濾材や、流動型の濾材が使用される。
【0005】
(3)低濃度域
排水の処理槽に担体を浸漬し、これに微生物を付着させ、有機物の生物的分解と物理的吸着や濾過作用によって排水の処理を行う生物濾過法が使用される。汚泥転換量が少なく、生物群などを固定及び保持する方式にしている。前記の担体としては、例えば粒状や礫状のものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−314780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、社会のニーズの多様化が進み、これに応じて、排水の種類が多くなり、難分解性排水が増加する傾向にある。このため、前述した従来一般的に採用されていた方式だけに留まらない処理が要請されるようになっている。
【0008】
このため、低濃度域においても多くの生物量を必要とする処理方法が求められるようになっている。
【0009】
そこで、この発明は、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式のいずれにも使用することができ、更に、生物濾過法にも使用可能な、生物量を多くすることのできる微生物付着担体を提供することを目的にしている。
【0010】
又、活性汚泥法との併用を行うことで生物量の安定化や汚泥転換量の低減(汚泥減容)も図ることを可能にする微生物付着担体を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、
中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴としている微生物付着用担体である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、
前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えていることを特徴とする請求項1記載の微生物付着用担体である。
【0013】
請求項3記載の発明は、
前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されていることを特徴とする請求項2記載の微生物付着用担体である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式のいずれにも使用することができ、更に、生物濾過法にも使用可能な、生物量を多くすることのできる微生物付着担体を提供することができる。
【0015】
又、この発明によれば、活性汚泥法との併用を行うことで生物量の安定化や汚泥転換量の低減(汚泥減容)も図ることを可能にする微生物付着担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の微生物付着担体の一例を表す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図2】この発明の微生物付着担体が複数個配置された場合の隣接する微生物付着担体との間に形成される空隙部を説明する平面図。
【図3】この発明の微生物付着担体が複数個配置されている状態の斜視図。
【図4】従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着担体が複数個配置された場合の隣接する微生物付着担体との間に形成される空隙部を説明する平面図。
【図5】この発明の微生物付着担体を用いた濾過実験の結果を表わす図。
【図6】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図7】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図8】この発明の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図9】従来の微生物付着担体を用いた濾過実験の結果を表わす図。
【図10】従来の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【図11】従来の微生物付着担体を用いた他の濾過実験の結果を表わす図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
従来の流動床方式で使用されている微生物付着担体は、(1)スポンジ状などの立方体形状、(2)中空筒状などの円柱形状に大別される。これらは、表面積を大きくして付着する生物の量を確保している。この微生物付着担体は、処理すべき排水が流動することに応じて流動する。そこで、微生物付着担体同士の衝突や、微生物付着担体が収容されている排水処理槽の槽壁との間の接触などにより、微生物付着担体表面への微生物付着量は大きくなく、微生物付着担体の内面や空隙によって微生物が付着する有効表面積が確保される。
【0018】
なお、中空筒状などの円柱形状は生物の付着成長と、剥離が繰り返される。そこで、スポンジ状などの立方体形状からなる微生物付着担体よりは、中空筒状などの円柱形状の方が、新鮮な生物量を確保できる形状になっている。
【0019】
しかし、前述したように、微生物付着担体の内面や空隙によって微生物が付着する有効表面積が確保されるのが一般的なので、表面積に限界があり、これが生物量の限界につながっている。
【0020】
一方、従来の固定床方式で使用されている微生物付着濾材は、整流作用があり処理すべき排水のショートパスを軽減しながら中空筒状の担体と同様に生物の付着成長と剥離が繰り返されるという特徴がある。
【0021】
また、従来の生物濾過法に使用されている微生物付着担体は、濾過機能を発揮させるために隣接する微生物付着担体同士の間の空間が小さくなるようにした形状している点に特徴がある。これによって生物群を含む微粒子懸濁物質(以下、本明細書において「SS」と表すことがある)を保持するようにしている。
【0022】
ただし、このような従来の固定床方式で使用されている微生物付着濾材では、付着する生物量を確保するための微生物付着濾材の表面積は微生物付着濾材の空隙に頼ることになり、空隙の閉鎖が処理性の低下に結びつくことがあった。
【0023】
本発明が提案する微生物付着用担体は、排水の生物処理において、接触酸化法で採用される流動床方式、固定床方式、そして、生物濾過法にそれぞれ使用されていた微生物付着担体の上述した特徴を踏まえて開発されたものである。
【0024】
本発明が提案する微生物付着用担体は、中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えている。
【0025】
中空の筒状体であることから、当該筒状体を構成する周壁の内面に生物の付着成長と、剥離が繰り返され、新鮮な生物量を確保できる。また、前記筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることから、内面の表面積が大きくなり、微生物が付着する有効な表面積を多くし、生物量を多くすることができる。
【0026】
また、前記筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることから、本発明の微生物付着用担体同士が隣接した際に、隣接する微生物付着用担体との間の空間を少なくすることができる。これによって優れた濾過機能を発揮させ、生物群を含む微粒子懸濁物質(SS)を保持することができる。
【0027】
このような観点から、前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えている構造にすることが望ましい。
【0028】
このようにすると、本発明の微生物付着用担体同士が隣接した際に、隣接する微生物付着用担体との間の空間を効果的に減少させることができ、優れた濾過機能を発揮させ、生物群を含む微粒子懸濁物質(SS)の保持に有効になる。
【0029】
なお、前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数個所ずつ形成されている構造にすることができる。例えば、窪み部と、突部とが前記周壁の周方向に、交互に、3箇所ずつ形成されている構造などを採用することができる。
【0030】
中空の筒状体からなる本発明の微生物付着用担体は、前述したように、筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えている。
【0031】
そこで、処理すべき排水中において本発明の微生物付着用担体が流動する際に回転力が微生物付着用担体に与えられる。これによって、処理すべき排水の流動につれて微生物付着用担体がとも回りする現象の発生が抑制され、処理すべき排水と微生物付着用担体との接触効率の増加が図られる。
【0032】
本発明の微生物付着用担体は、従来、この技術分野で公知のように、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂と、炭酸カルシウムやタルクなどの無機物から製造することができる。用途に応じて比重調整や発泡処理を行う。例えば、生物濾過法に使用する場合には、処理すべき排水が上昇流の場合は浮上し易く、下降流の場合には沈降し易くする等、用途、濾過システムに応じて比重0.8〜1.2の範囲で比重調整などを行う。
【0033】
本発明の微生物付着用担体は外径寸法6〜50mmの範囲で、処理すべき排水の水質や、用途、濾過システムに応じて適宜の大きさにすることができる。
【0034】
例えば、流入するSSが多い排水の場合には、微生物付着用担体の流出を防止するスクリーンの目詰まりが懸念されるので、流出防止スクリーンの目を大きくすることに対応させて微生物付着用担体の外径を前記の範囲内において比較的大きなものにする。
【0035】
一方、生物量を多くする必要がある排水の場合には、微生物付着用担体の外径を前記の範囲内において比較的小さくし、小口径化を図って、生物が付着する有効表面積を大きくする。
【0036】
中空の筒状体の長手方向の長さは外径寸法の0.8〜1.2倍にすることが望ましい。筒状体の周壁の厚さは1〜2mmにすることができる。
【0037】
内径寸法は、上記の外径寸法、肉厚に対応して4〜49mmの範囲に設定される。
【0038】
このように、微生物付着用担体は前述した外径寸法、肉厚の範囲で、処理すべき排水の水質や、用途、濾過システムに応じて適宜の大きさに設定することができる。
【0039】
本発明の微生物付着用担体は、好気性生物処理としては、通常の活性汚泥法にも使用可能であり、嫌気性生物処理としても適用できる。
【0040】
好気性生物処理に使用する場合、複数に分割した散気装置を全面に設置した分割全面曝気法等と組み合わせると曝気箇所は流動床として活躍し、曝気していない箇所に滞留した場合は、汚泥の保持機能が働き、生物量の増加を図ることができ、処理効率を上げることができる。
【0041】
本発明の微生物付着用担体は、上下に設置したスクリーンではさみ込むことにより流動床としても、固定床としても利用可能になる。
【0042】
本発明の微生物付着用担体は、既存の流動床法や生物膜濾過法の濾材との混合利用が可能であり、比表面積のカバーや、閉塞状態にある濾材の代替や補填を行うことで処理性のカバーを行うことができる。
【0043】
本発明の微生物付着用担体は、一般的な生物濾過用の濾材が機密性が高い構造であるのに対し、中空構造であるため、生物濾過法としての逆洗工程も効率よく行うことができ、且つ使用材料が少なく、価格も低価格に抑えることができる。
【0044】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明は上述した発明を実施するための形態及び、以下の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例】
【0045】
ポリプロピレンを用い、従来の円柱状で中空の筒状体を製造するのと同様にして、形状が図1(a)、(b)図示の本発明の微生物付着用担体1を準備した。外径寸法R:8mm、長手方向の長さL:8mm、肉厚:1mmの大きさとし、発泡処理を行って比重を0.87に調整した。
【0046】
図1(a)、(b)図示のように本発明の微生物付着用担体1は中空の筒状体である。この筒状体を構成する周壁2は、径方向内側に向かって凸湾する窪み部3a、3b、3cと、径方向外側に向かって凸湾する突部4a、4b、4cとを備えている。これらの窪み部3a、3b、3cと、突部4a、4b、4cとは、図示のように、周壁2の周方向に連続して形成されている。
【0047】
そして、窪み部3a、3b、3cにおける筒状体外周側の窪み部湾曲面13a、13b、13cの曲率と、突部4a、4b、4cにおける筒状体外周側の突部湾曲面14a、14b、14cの曲率とは、互いに正負逆方向で、等しい大きさになっている。
【0048】
この結果、図2、図3図示のように、複数個の本発明の微生物付着用担体1a〜1gが隣接した場合、隣接する微生物付着用担体1a〜1gが備えている窪み部湾曲面13a、13b、13cと、突部湾曲面14a、14b、14cとが互いに嵌めあって当接し、隣接する微生物付着用担体1a〜1gとの間の空間が非常に少なくなる。
【0049】
すなわち、図2に符号5a、5b、5c、5d、5e、5fで示す大きさの空間部しか形成されない。
【0050】
図4は、比較のために、従来の円柱状で中空の筒状体11a〜11gを、この実施例と同じく外径寸法R:10mm、長手方向の長さL:10mm、肉厚:2mm、比重:0.87で製造し、複数個隣接させた場合を説明する平面図である。隣接する微生物付着用担体11a〜11gの間に符号15a、15b、15c、15d、15e、15fで示す空間部が形成され、本願発明の微生物付着用担体1a〜1gの場合と比較して非常に大きな空間部が形成されてしまうことがわかる。
【0051】
試験・検討用に合成樹脂製の透明な直方体状の実験用濾過槽(容量:約170リットル)を準備し、上述のようにして準備した本発明の微生物付着用担体1を実験用濾過槽の容量の60%に相当する数だけ投入し、ここに水を流動させて生物濾過装置としての模擬実験を行った。比較のため、同一の実験用濾過槽に、上述の従来の円柱状で中空の筒状体11aを用い、まったく同一の条件で模擬実験を行った。
【0052】
微生物付着用担体を実験用濾過槽に投入し、水を入れただけの状態で、隣接する微生物付着用担体同士の間の状態を本発明品及び、従来品についてそれぞれ外部から観察した。本発明品の場合の方が、隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さいことを確認できた。
【0053】
次に、水を流動させている状態で観察したところ、本発明品の場合、水の流動が開始される前の、隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さい状態が維持されており、水が流動している状態でも、一貫して、従来品よりも隣接する微生物付着用担体同士の間の隙間が小さいことを確認できた。
【0054】
また、本発明品の微生物付着用担体1は、水が流動しているときにほとんどとも回りしないことを確認できた。そこで、処理すべき排水が流動する際には、とも回りが抑制されて、排水との接触効率が高まるものと認められた。
【0055】
その後、前記の実験用濾過槽(容量:約170リットル)を用い、処理すべき排水を実際に流して性能評価試験を行った。
【0056】
(試験1)
図1図示の形状で、外径寸法R:8mm、長手方向の長さL:8mm、肉厚:1mm、比重: 0.87の本発明の微生物付着用担体を用いて実験を行った。
【0057】
準備した微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の50%に相当する量で充填し、7日間にわたって排水を流入させた。結果は図5図示の通りであった。
【0058】
(試験2)
実験用濾過槽への微生物付着用担体の充填量を60%に変更した以外は試験1と同様にし、7日間にわたって排水を流入させた。結果は図6図示の通りであった。
【0059】
(試験3)
試験1で準備した微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の43%に相当する量で充填し、12日間にわたって排水を流入させた。結果は図7図示の通りであった。
【0060】
(試験4)
実験用濾過槽に充填しる微生物付着用担体を、上下に設置したスクリーンではさみ込む構造にした以外は試験3と同様にし、8日間にわたって排水を流入させた。結果は図8図示の通りであった。
【0061】
(比較試験1)
試験1で準備した本発明の微生物付着用担体と同一の材質で、外径寸法R:10mm、長手方向の長さL:10mm、肉厚:2mm、比重:0.87の従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体を準備し、これを用いて比較実験を行った。
【0062】
微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の60%に相当する量で充填し、27日間にわたって排水を流入させた。結果は図9図示の通りであった。
【0063】
(比較試験2)
比較試験2で準備した従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体と、従来の不定形の微生物付着用担体とを用いて比較実験を行った。
【0064】
従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の60%、従来の不定形の微生物付着用担体を実験用濾過槽の容量の10%、それぞれ、分離して実験用濾過槽に充填した。
【0065】
7日間にわたって排水を流入させたところ、結果は図10図示の通りであった。
【0066】
(比較試験3)
従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体と、従来の不定形の微生物付着用担体とを混合して実験用濾過槽に充填した以外は比較試験2と同様にし、2日間にわたって排水を流入させた。結果は図11図示の通りであった。
【0067】
比較試験1の結果と試験2の結果から、本発明の微生物付着用担体は、従来の円柱状で中空の筒状体からなる微生物付着用担体に比較して1.2倍の高い除去COD量を示すことが確認できた。
【0068】
また、試験1では、少ない充填率でも従来品よりも高い除去率が認められた。
【0069】
試験1、2の結果と比較試験1〜3の結果を比較すると、除去COD量が増加したことにより汚泥量は増加するが、SS流出量は近似していた。これは補足能力の向上を示すものと考えられた。また、溶解性であるS−CODの除去率が上昇したことから、本発明の微生物付着用担体によれば処理能力が向上することが認められた。
【0070】
試験3の結果は充填率43%で既存の一般的な生物濾過用濾材と同等の能力が発揮されることを示していた。
【0071】
試験3と試験4を比較すると試験4の方が除去率が8%向上していた。これは、上下からスクリーンではさみ込むことにより、隣接する微生物付着用担体同士の隙間に生物量を多くできたためと認められた。
【符号の説明】
【0072】
1 微生物付着用担体
2 周壁
3a、3b、3c 窪み部
4a、4b、4c 突部
13a、13b、13c 窪み部湾曲面
14a、14b、14c 突部湾曲面
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 微生物付着用担体
5a、5b、5c、5d、5e、5f 隣接する微生物付着用担体との間の空間部
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g 従来の円柱状中空の筒状体
15a、15b、15c、15d、15e、15f 隣接する微生物付着用担体との間の空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴としている微生物付着用担体。
【請求項2】
前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えていることを特徴とする請求項1記載の微生物付着用担体。
【請求項3】
前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されていることを特徴とする請求項2記載の微生物付着用担体。
【請求項1】
中空の筒状体からなり、当該筒状体を構成する周壁が、径方向内側に向かって凸湾する窪み部と、径方向外側に向かって凸湾する突部とを周方向に連続して備えていることを特徴としている微生物付着用担体。
【請求項2】
前記窪み部における前記筒状体外周側の窪み部湾曲面と、前記突部における前記筒状体外周側の突部湾曲面とが互いに正負逆方向で、等しい大きさの曲率を備えていることを特徴とする請求項1記載の微生物付着用担体。
【請求項3】
前記窪み部と、前記突部とは前記周壁の周方向に、交互に、複数箇所ずつ形成されていることを特徴とする請求項2記載の微生物付着用担体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−176366(P2012−176366A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41385(P2011−41385)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(503354631)新日本フエザーコア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(503354631)新日本フエザーコア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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