説明

微生物感染症の治療

本発明は、微生物感染症、ならびに特に微生物感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療のための組成物、薬剤、および方法を提供する。詳細には、本発明は、特定の、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、あるいはペントキシフィリンのいずれかを用いた、病原性感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療、および治療方法におけるこれらの化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物感染症、ならびに特に微生物感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療に関する。詳細には、本発明は、特定の、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、あるいはペントキシフィリンのいずれかを用いた、病原性感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療、および治療方法におけるこれらの化合物の使用に関する。本発明は、特に、既存のウイルスだけでなく、既存のウイルスから突然変異してインフルエンザの大流行を引き起こす可能性のある将来の派生ウイルス株をも包含する、インフルエンザウイルス株などによる、ウイルス感染症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患は、呼吸器系の疾患について使用される用語であり、肺、胸腔、気管支、気管などの上下気道の疾患、ならびに呼吸に関わる神経および筋肉の疾患を含む。呼吸器疾患は、感冒のような軽度であって一定の経過をたどるものでありえ、しばしば治療を必要とせずに治まる。しかし、呼吸器疾患はまた、細菌性肺炎またはウイルス性肺炎のような生命にかかわるものでありえ、幼児、高齢者、肺に既往症を有する人々、および免疫機能の低下している人々など、微生物感染の影響をより受けやすい人々には、特別な看護と更なる治療が必要であり得る。
【0003】
呼吸器疾患の治療は、治療されている特定の疾患、疾患の重症度および患者に左右される。ワクチン接種は、抗生物質の使用と同様に、特定の呼吸器疾患を予防し得る。しかし、ウイルス感染症および真菌感染症の拡大、ならびにヒト細菌性病原体における抗菌薬耐性の出現は、世界的に深刻化している問題である。更に、抗菌薬の導入以来、耐性の出現は、特にE. coliおよびStaphylococcus spp.などの重要な病原体にますます広まっている。結果として、これらの微生物の効果的な治療および呼吸器疾患の管理は、より大きな課題になっている。
【0004】
疾患に対する防御はすべての動物の生存にとって重要であり、この目的のために用いられる機構は動物の免疫系である。免疫系は非常に複雑であり、2つの主要な部分、(i)先天性免疫および(ii)適応免疫から成る。先天性免疫系は、非特異的に、侵入微生物による感染から宿主を防御する細胞および機構を含む。先天性免疫系に関与する白血球は、特に、マクロファージ、好中球および樹状細胞などの食細胞を含む。先天性免疫系は、病原体が宿主に侵入する前に完全に機能し得る。
【0005】
一方、適応免疫系は、病原体が宿主に侵入した後にのみ開始され、その時点でその病原体に特異的な防御を発現させる。適応免疫系の細胞はリンパ球と呼ばれ、その2つの主要な種類はB細胞およびT細胞である。B細胞は、血漿およびリンパ液中を循環する中和抗体の産生に関与し、液性免疫反応の一部を形成する。T細胞は、液性免疫反応と細胞性免疫との両方において機能する。活性化T細胞またはエフェクターT細胞といういくつかのサブセットがあり、それらは細胞傷害性T細胞(CD8+)ならびに1型ヘルパーT細胞(Th1)および2型ヘルパーT細胞(Th2)として知られる2つの主要な種類がある「ヘルパー」T細胞(CD4+)を含む。
【0006】
Th1細胞は細胞性適応免疫反応を促進し、それはマクロファージの活性化を伴い、抗原に応答して、IFNγ、TNF-αおよびIL-12などの様々なサイトカインの放出を促進する。これらのサイトカインは、適応免疫反応および先天性免疫反応において他の細胞の機能に影響を及ぼし、微生物の破壊を引き起こす。通常、Th1反応は、宿主細胞の内部に存在するウイルスおよび細菌などの細胞内病原体に対してより効果的である。しかしながら、Th2反応は、IL-4の放出を特徴とし、それはB細胞の活性化を引き起こして中和抗体を産生し、液性免疫を誘導する。Th2反応は、宿主細胞の外部にある寄生生物および毒素などの細胞外病原体に対してより効果的である。従って、液性反応および細胞性反応は、侵入病原体に対して全く異なる機構を提供する。
【0007】
本発明は、呼吸器の感染症を引き起こす微生物感染の治療のための新規治療法の開発に関する。本発明は、特に、急性ウイルス感染症を含む広範なウイルス感染症の治療、およびそれによって引き起こされる呼吸器疾患の治療のための新規治療法の開発に関する。急性ウイルス感染症は、疾患の急激な発症、比較的短期間の症状、および通常数日以内での消散を特徴とする。急性ウイルス感染症は通常、早期の感染性ビリオンの産生および宿主免疫系による感染の排除を伴う。急性ウイルス感染症は、通常、インフルエンザウイルスおよびライノウイルスなどの病原体で観察される。急性ウイルス感染症は、1918年のスペイン風邪大流行を引き起こしたH1N1インフルエンザウイルスのような重篤で顕著な例であり得る。
【0008】
急性感染症は潜伏期間から始まり、その間にウイルスゲノムは複製し、宿主の先天性反応が開始される。感染の初期に産生されるサイトカインは、急性感染症の典型的な症状:すなわち、鈍痛(aches)、痛み(pains)、発熱、および吐き気を引き起こす。潜伏期間が1日程度の短期間であるものもあり(インフルエンザ、ライノウイルス)、これは、症状が侵入部位付近での局所的なウイルス増殖によって生じることを示唆する。典型的な急性感染症の例は、合併症を伴わないインフルエンザである。ウイルス粒子はくしゃみまたは咳によって生じる飛沫で吸い込まれ、気道の線毛円柱上皮細胞で複製を開始する。新たな感染性ビリオンが産生されると、それらは隣接細胞に広がる。ウイルスは、感染後1日目〜7日目の咽頭スワブまたは鼻汁から分離され得る。感染後48時間以内に症状が現れ、これらは約3日間持続し、その後治まる。感染は通常、約7日間で先天性反応および適応反応によって除去される。しかし、患者は通常、感染の間に産生されたサイトカインによる気道上皮の損傷の結果、数週間体調不良を感じる。
【0009】
インフルエンザおよび麻疹などの急性ウイルス感染症は、毎年何百万の人々を巻き込む疾患の流行の原因である。ワクチンが使用できない場合には、急性感染症を制御することは困難である。これは、大集団および混み合った場所における急性感染症の制御を非常に困難にする。典型的な急性感染症であるノロウイルス胃腸炎の頻発は、この問題を浮き彫りにする。有効であるためには感染の初期に投与されなければならないため、抗ウイルス療法は使用できない。従って、迅速診断検査が利用可能になるまで、大部分の急性ウイルス感染症は抗ウイルス薬による治療の見込みがほとんどない。しかし、大部分の一般的な急性ウイルス性疾患に対する抗ウイルス薬は、現在のところ存在しないことに注意しなければならない。従って、当技術分野において、ウイルス感染症、特に急性ウイルス感染症の治療に使用するための改良された薬剤が、明らかに必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、特定の、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体のいずれかが、微生物感染症の治療に有用な特性を有することを発見した。
【0011】
従って、本発明の第一の態様では、呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症の治療における使用のために、化学式Iの化合物
【化1】

【0012】
[式中、Arはアリールもしくは置換アリール基であり、R1はC1-3アルキル基もしくは水素であり、R2はOHもしくは-NHOHである]、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物が提供される。
【0013】
化学式Iの化合物は、劇症呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症を治療するために使用されうる。1つの実施形態では、化学式Iの化合物は、ウイルス感染症、好ましくは急性ウイルス感染症を治療するために使用されうる。
【0014】
Arは、好ましくは置換フェニル基である。R1は、好ましくは水素またはメチル基である。R2は、好ましくは-NHOHである。
【0015】
Arが置換フェニル基である場合には、化学式Iに示された構造の残りの部分にそれを連結する結合は、フェニル環の炭素原子に直接伸びることが好ましい。
【0016】
本発明の文脈において、「アリール」という用語は、アレーンまたはヘテロアレーンから誘導された基を指す。
【0017】
本発明の好ましい化合物は、2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、または2-アリール, 2-メチル, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体である。
【0018】
本発明において有用な化合物の特定の実施形態は、下記のものを含む。
【化2】

【0019】

【0020】
上記の特定の化合物はまた、それぞれが、製薬上許容されうる塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物の形態で使用され得る。
【0021】
本発明の特定の化合物はキラルである。本発明は、従って、ラセミ混合物の形態、エナンチオマー濃縮混合物の形態で、または実質的に純粋なエナンチオマーとしての、このような化合物の使用を包含する。本発明の化合物は、商業的供給源から入手でき、または標準的な合成法を用いて製造され得る。
【0022】
第二の態様では、呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症の治療における使用のための、ペントキシフィリン、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物が提供される。
【0023】
ペントキシフィリン、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物は、劇症呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症を治療するために使用されうる。例えば、ペントキシフィリン、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物は、ウイルス感染症、好ましくは急性ウイルス感染症を治療するために使用されうる。
【0024】
従って、別の態様では、本発明は、ペントキシフィリン、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物を用いたウイルス感染症の治療に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、in vivoでのマウス攻撃試験の結果を示すグラフであり、マウスはH1N1ウイルスに感染させられ、その後、化学式Iで表される化合物、すなわち、ベノキサプロフェン(BC1005)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはオキサメタシン(BC1002)で処置された。ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはオキサメタシンは、3日目での単回投与量としてマウスに投与され、マウスの体重減少が測定された。ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはオキサメタシンは、対照マウスには与えられなかった。
【図2】図2は、図1と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験におけるマウスの生存率を示すグラフである。マウスは、ベノキサプロフェン(BC1005)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはオキサメタシン(BC1002)を3日目での単回投与量として投与され、生存率が測定された。ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはオキサメタシンは、対照マウスには与えられなかった。
【図3】図3は、in vivoでのマウス攻撃試験の結果を示すグラフであり、マウスはH1N1ウイルスに感染させられ、その後、化学式Iで表される化合物、すなわち、イブプロキサム(BC1048)、またはペントキシフィリン(BC1042)で処置された。イブプロキサムまたはペントキシフィリンは、3日目での単回投与量としてマウスに投与され、マウスの体重減少が測定された。イブプロキサムまたはペントキシフィリンは、対照マウスには与えられなかった。
【図4】図4は、図3と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験におけるマウスの生存率を示すグラフである。マウスは、イブプロキサムまたはペントキシフィリンを3日目での単回投与量として投与され、生存率が測定された。イブプロキサムまたはペントキシフィリンは、対照マウスには与えられなかった。
【図5】図5は、in vivoでのマウス攻撃試験の結果を示すグラフであり、マウスはH1N1ウイルスに感染させられ、その後、化学式Iで表される化合物、すなわち、イブプロキサムで処置された。イブプロキサムは、3日目での単回投与量としてマウスに投与され、マウスの体重減少が測定された。イブプロキサムは、対照マウスには与えられず、代わりにイブプロフェンが比較化合物としてこれらのマウスに投与された。
【図6】図6は、図5と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験におけるマウスの生存率を示すグラフである。マウスは、イブプロキサムを3日目での単回投与量として投与され、生存率が測定された。イブプロキサムは、対照マウスには与えられず、代わりにイブプロフェンが比較化合物としてこれらのマウスに投与された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
インフルエンザなどの急性ウイルス感染の間、ウイルスは主に、宿主の先天性免疫系および細胞性Th1反応によって闘われ、その後、体液性の抗体主導型Th2反応によって闘われることが知られている。更に、本発明者らは、感受性の個体(すなわち、若く、元気で健康な個体)において、インフルエンザ感染に対するTh1反応は極めて強く、IFN-γおよびTNF-αなどの特定のサイトカインの濃度の著しい増加を伴う、いわゆる「サイトカインストーム」を引き起こし得ると考える。この「サイトカインストーム」は、感染した肺組織の重篤な炎症、肺への体液の漏出、および感染個体の肺への著しい損傷を引き起こし得る。その最終的な結果は、肺水腫または二次細菌感染症などの呼吸器疾患であり得、これは最終的には、ウイルス自体よりもむしろ感染個体を殺し得る。
【0027】
BaumgarthおよびKelso(J. Virol., 1996, 70, 4411-4418)は、Th1サイトカイン、IFN-γの中和が、感染後の肺組織への細胞浸潤の程度の有意な減少を引き起こし得ることを報告し、IFN-γが、炎症を起こした肺への白血球輸送の増加を調節する機構に関与しうることを示唆した。彼らはまた、IFN-γが気道における局所的な細胞性反応、ならびにインフルエンザウイルス感染に対する全身的な液性反応に影響を及ぼすと仮定した。この研究の結果に基づき、本発明者らは、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの抑制がインフルエンザを治療するために有用でありうるかどうかを検討した。
【0028】
実施例に記載されるように、本発明者らは、それらが急性ウイルス感染を反映するような方法で刺激された血液細胞に対する、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、あるいはペントキシフィリンのin vitroでの影響を試験した。ウイルス感染症のモデルとして、本発明者らは、シグナル伝達経路の引き金となり、それによって血液サンプル中に存在するリンパ球を刺激して有糸分裂を開始させる化合物である、分裂促進因子(リポ多糖類またはコンカナバリンA)によって刺激された血液細胞サンプルを用いた。従ってこのモデルは、ウイルス感染によって誘導される過程を厳密に再現し、試験化合物による処置の際にリンパ球によって示される免疫反応の直接評価を可能にする。
【0029】
実施例に記載されるように、本発明者らは、このin vitroモデルを用いて、イブプロキサム、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンが、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの両方の産生を効果的に阻害することを見いだした。従って、本発明は、IFN-γによって促進され、(例えば、若くて健康な)感受性の個体に呼吸器虚脱を引き起こす過剰免疫細胞性反応に関与する、Th1免疫反応の制御に基づく。
【0030】
これらの化合物は、共通の、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体コア構造、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体コア構造、あるいはペントキシフィリンを共有する活性化合物群の代表であり、類似した生理活性を示すことが知られている。この化合物群は、化学式(I)によって定義され、それらはすべて同じ活性提供モチーフを共有するため、それらはすべて、ウイルス感染後の「サイトカインストーム」においてIFN-γおよびTNF-αレベルの上昇を防ぐために効果的に使用され得るということになる。
【0031】
実施例に記載されるように、本発明者らはまた、in vivoマウスモデルにおいて、本明細書に記載される化合物が、ウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患を予防、治療または改善するために使用されうることを実証した。従って、本発明者らは、本発明者らが最初に、他の特性を共有することに加えて、定義された、アルキル置換もしくは非置換2-アリール酢酸誘導体、または2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、あるいはペントキシフィリンのいずれかが、急性および慢性ウイルス感染症の治療に有用であるようにTNF-αおよびIFN-γを調節するために使用され得ることを実証したと考える。
【0032】
一般的な病原体誘発性呼吸器疾患または急性呼吸困難は、院内感染性肺炎および市中肺炎である。肺炎は、咳、胸痛、発熱、および肺水腫による呼吸困難を特徴とする。これらの症状は、肺炎を引き起こす病原体にかかわらず、すべての肺炎患者において起こり、それは細菌(例えばStreptococcus pneumonia)、ウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、および真菌(例えばHistoplasma capsulatum)であり得る。肺炎を引き起こす病原体にかかわらず症状は同じであり、また、刺激にかかわらず、炎症過程は、過度の炎症反応を引き起こし、致死的な可能性のある肺水腫を生じる。インフルエンザ感染(すなわちウイルス性病原体)に関連する呼吸器疾患の動物モデルでは、評価項目は、肺水腫に関連した評価項目(すなわち感染後の生存率)を測定するように設計される。インフルエンザアッセイにおける、感染後の生存率に対する本明細書に記載される化合物の効果は、ウイルスであれ、細菌であれ、または真菌であれ、任意の種類の病原体によって引き起こされる肺水腫における効果の可能性を裏付ける。
【0033】
従って、本発明者らは、細菌、ウイルス(例えば急性ウイルス感染症)、または真菌などの任意の微生物感染または病原性感染によって引き起こされ、ある場合(例えば、インフルエンザ感染症)には死に至り得る呼吸器疾患を治療するために、これらの化合物が使用されうると考える。
【0034】
本発明の様々な代謝物もまた、微生物感染症の治療のために使用されうる。本発明における使用のための化合物(I)は、キラルでありうる。従って、その化合物は、任意のジアステレオマーおよびエナンチオマーを包含しうる。ジアステレオマーまたはエナンチオマーは、強力なサイトカイン調節活性を示すと考えられ、このような活性は、当業者に知られている適切なin vitroおよびin vivoアッセイの使用によって決定されうる。本発明における使用のための化合物はまた、製薬上活性のある塩、溶媒和物、または塩(例えば、塩酸塩)の溶媒和物を含みうることもまた、認識されるであろう。
【0035】
更に、本発明の第三の態様では、微生物感染症を予防、治療および/または改善する方法が提供され、その方法は、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の上記で定義されたような化合物を投与することを含む。
【0036】
本発明者らは、本発明の化合物が、様々な微生物感染症、およびそれによって起こりうる肺炎などの呼吸器疾患の治療に使用されうることを実証した。化合物は(微生物感染症に関連する呼吸器疾患の進行を妨げるための)予防薬として使用されてもよく、またはそれらは微生物感染症に関連する既存の呼吸器疾患を治療するために使用されてもよい。従って、本明細書に記載される化合物は、微生物感染症に関連する呼吸器疾患の治療のための組成物として有用である。
【0037】
本発明の化合物によって治療されうる呼吸器疾患を引き起こしうる微生物の例は、呼吸器疾患を引き起こす、細菌、ウイルス、真菌、または原生動物、ならびに他の任意の病原体および寄生生物を含みうる。これらの病原体は、上気道もしくは下気道疾患、または閉塞性もしくは拘束性肺疾患を引き起こし得るものであり、その各々が治療されうる。最も一般的な上気道感染症は感冒であり、それは治療されうる。加えて、副鼻腔炎、扁桃炎、中耳炎、咽頭炎、および喉頭炎などの上気道の特定の器官の感染症もまた、上気道感染症と考えられ、それらは本明細書に記載される化合物によって治療されうる。
【0038】
最も一般的な下気道感染症は肺炎であり、それは本明細書に記載される化合物によって治療されうる。肺炎は通常、細菌、特にStreptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)によって引き起こされる。しかし、結核もまた肺炎の重要な原因である。ウイルスおよび真菌などの他の病原体もまた、肺炎、例えば、重症急性呼吸窮迫、急性呼吸窮迫症候群、およびニューモシスチス肺炎を引き起こし得る。従って、本発明の化合物は、呼吸窮迫症候群(RDS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、または急性肺損傷(ALI)を治療するために使用されうる。更に化合物は、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、および細気管支炎などの同時病原体感染による疾患を治療するために使用されうる。
【0039】
第三の態様の方法は、細菌感染によって引き起こされる呼吸器疾患を予防、治療および/または改善するために使用されうる。詳細には、本明細書に記載される化合物は、気管支肺感染症、例えば肺炎;または耳鼻咽喉感染症、例えば中耳炎、副鼻腔炎、喉頭炎、およびジフテリアを含む、様々な呼吸器細菌感染症の治療のために使用されうる。
【0040】
感染症を引き起こす細菌は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌でありうる。本発明の化合物が有効である、呼吸器疾患を引き起こしうる細菌の例は、以下からなるリストより選択されうる。すなわち、Streptococcus spp.、Staphylococcus spp.、Haemophilus spp.、Klebsiella spp.、Escherichia spp.、Pseudomonas spp.、Moraxella spp.、Coxiella spp.、Chlamydophila spp.、Mycoplasma spp.、Legionella spp.、およびChlamydia spp.である。
【0041】
本発明の組成物が有効である、呼吸器疾患を引き起こしうる細菌の種は、以下からなるリストより選択されうる。すなわち、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli、Pseudomonas aeroginosa、Moraxella catarrhalis、Coxiella burnettie、Chlamydophila pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae, Legionella pneumophila、およびChlamydia trachomatisである。
【0042】
第三の態様の方法は、真菌感染症を予防、治療および/または改善するために使用されうる。本明細書に記載される化合物は、気管支肺感染症、例えば肺炎を含む、様々な真菌感染症および病態の治療のために使用されうる。
【0043】
本発明の組成物が有効である、呼吸器疾患を引き起こしうる真菌の例は、以下からなる群より選択されうる。すなわち、Histoplasma spp. 、Blastomyces spp.、Coccidioides spp.、Cryptococcus spp.、Pneumocystis spp.、およびAspergillus spp.である。
【0044】
本発明の組成物が有効である、呼吸器疾患を引き起こしうる真菌の種は、以下からなる群より選択されうる。すなわち、Histoplasma capsulatum、Blastomyces dermatitidis、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans、Pneumocystis jiroveci、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus parasiticus、およびAspergillus terreusである。
【0045】
第三の態様の方法は、ウイルス感染症を予防、治療および/または改善するために特に有用でありうる。本明細書に記載される化合物は、気管支肺感染症、例えば肺炎を含む、様々なウイルス感染症の治療のために使用されうる。
【0046】
本発明者らは、本発明の化合物が、様々な急性または慢性ウイルス感染症、およびそれによって生じうる呼吸器疾患の治療に使用されうると考える。化合物は、(ウイルス感染症の進行を妨げるための)予防薬として使用されてもよく、または既存のウイルス感染症を治療するために使用されてもよい。ウイルスは、いかなるウイルスであってもよく、エンベロープウイルスであってもよい。ウイルスは、RNAウイルスまたはレトロウイルスでありうる。例えば、治療されうるウイルス感染症は、パラミクソウイルス感染症またはオルトミクソウイルス感染症でありうる。感染症を引き起こすウイルスは、ポックスウイルス、イリドウイルス、トガウイルス(thogavirus)、またはトロウイルスでありうる。感染症を引き起こすウイルスは、フィロウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、またはラブドウイルスでありうる。ウイルスは、ヘパドナウイルス、コロナウイルス、またはフラビウイルスでありうることが想定される。
【0047】
詳細には、呼吸器合併症に関連している下記のウイルス感染症が治療されうる。すなわち、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトボカウイルス、ヒトパルボウイルスB19、単純ヘルペスウイルス1型、水痘ウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、エンテロウイルス71、ハンタウイルス、SARSウイルス、SARS関連コロナウイルス、シンノンブレウイルス、呼吸器レオウイルス、ヘモフィルス・インフルエンザ、またはアデノウイルスである。
【0048】
本発明は、本明細書に記載される任意のウイルスの派生物による感染症の治療にまで及ぶ。「ウイルスの派生物」という用語は、既存のウイルス株から変異したウイルスの株を指し得る。
【0049】
ウイルスは、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;C型インフルエンザウイルス;イサウイルス、およびトゴトウイルス、または上述のウイルスの任意の派生物からなるウイルス属の群より選択されうる。A〜C型インフルエンザウイルスは、鳥類(すなわちトリインフルエンザ)、ヒト、および他の哺乳動物を含む脊椎動物においてインフルエンザを引き起こすウイルスを包含する。A型インフルエンザウイルスは、すべてのインフルエンザ大流行の原因となり、ヒト、他の哺乳動物、および鳥類に感染する。B型インフルエンザウイルスはヒトおよびアシカ・アザラシ類に感染し、C型インフルエンザウイルスはヒトおよびブタに感染する。イサウイルスはサケに感染し、トゴトウイルスは脊椎動物(ヒトを含む)および無脊椎動物に感染する。
【0050】
従って、本発明の化合物は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、もしくはC型インフルエンザウイルス、またはその派生物のいずれかによる感染症を治療するために使用されうる。その化合物は、A型インフルエンザ、またはその派生物による感染症を治療するために使用されうることが好ましい。A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面タンパク質である血球凝集素(HAまたはH)およびノイラミニダーゼ(NAまたはN)に基づいて分類される。A型インフルエンザウイルスの16種類のHサブタイプ(または血清型)および9種類のNサブタイプが同定されている。従って、本発明の化合物は、H1N1;H1N2;H2N2;H3N1;H3N2;H3N8;H5N1;H5N2;H5N3;H5N8;H5N9;H7N1;H7N2;H7N3;H7N4;H7N7;H9N2;およびH10N7からなる血清型の群より選択される任意の血清型のA型インフルエンザウイルス、またはその派生物による感染症を治療するために使用されうる。本発明者らは、本発明の化合物がH1N1ウイルス、またはその派生物によるウイルス感染症の治療のために特に有用でありうると考える。豚インフルエンザがH1N1ウイルスの株であることは理解されているであろう。
【0051】
本発明者らは、ウイルス感染後、IFN-γおよびTNF-αが、感染した対象の肺に体液を漏出させ、それが最終的に死に至り得る呼吸器疾患を引き起こすことを発見した。仮説に拘束されることを望まないが、本発明者らは、本発明の化合物が、サイトカイン産生、詳細には、IFN-γおよびTNF-αの阻害剤として作用し得るため、ウイルス感染症を治療するために使用され得るものであり、従って、それらはウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患を治療するために使用され得ると考える。
【0052】
本発明の化合物は、従って、ウイルス誘導性サイトカイン産生の炎症症状を改善するために使用されうる。その抗炎症性化合物は、任意のサイトカインに影響を及ぼしうる。しかし、好ましくは、それはIFN-γおよび/またはTNF-αを調節する。化合物は、未感作の対象の急性ウイルス感染症における炎症を治療するために使用されうる。「未感作の対象」という用語は、以前にそのウイルスに感染したことがない個体を指し得る。個体が一度ヘルペスなどのウイルスに感染すると、その個体は常に感染を維持するであろうことが理解されている。
【0053】
特に、本発明の化合物は、インフルエンザの末期のような、ウイルス感染症の最終段階を治療するために使用されうることを目的とする。化学式Iで表される化合物またはペントキシフィリンはまた、ウイルスの再燃を治療するためにも使用されうる。ウイルスの再燃とは、病徴の再発、またはより重篤な症状の発症のいずれかを指し得る。
【0054】
化学式(I)の化合物またはペントキシフィリンが単独療法(すなわち、化合物(I)単独での使用)で微生物(例えばウイルス)感染症を治療するために使用されうることは、理解されているであろう。あるいは、本発明の化合物は、既知の抗微生物療法の補助として、またはそれと併用して使用されうる。例えば、細菌感染症を治療するための従来の抗生物質は、アミカシン、アモキシシリン、アズトレオナム、セファゾリン、セフェピム、セフタジジム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、イミペネム、リネゾリド、ナフシリン、ピペラシリン、キヌプリスチン・ダルホプリスチン、チカルシリン、トブラマイシン、およびバンコマイシンを含む。加えて、抗ウイルス療法に使用される化合物は、アシクロビル、ガングシクロビル(gangcylovir)、リバビリン、インターフェロン、逆転写酵素のヌクレオチドまたは非ヌクレオシド阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、および融合阻害剤を含む。更に、従来の抗真菌薬は、例えば、ファルネソール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、フルコナゾール、ウンデシレン酸カルシウムまたはウンデシレン酸亜鉛、ウンデシレン酸、ブテナフィン塩酸塩、シクロピロクスオラミン(ciclopirox olaimine)、ミコナゾール硝酸塩、ナイスタチン、スルコナゾール、およびテルビナフィン塩酸塩を含む。従って、本発明の化合物は、このような抗生物質、抗ウイルス薬、および抗真菌薬と併用して使用されうる。
【0055】
本発明の化合物は、特に、その組成物が用いられる方法に応じて、多数の異なる形態を有する組成物に混合されうる。従って、例えば、組成物は、散剤、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮貼布、リポソーム懸濁液の形態、または治療を必要とするヒトもしくは動物に投与されうる他の任意の適切な形態でありうる。本発明の薬剤のためのベヒクルは、それを投与される対象が良好な耐容性を示すものでなくてはならず、好ましくは、血液脳関門を通過する薬剤の送達、または呼吸器疾患を治療するために、肺などの病原体(すなわちウイルス、細菌もしくは真菌)に感染した部位への直接的な薬剤の送達を可能にすることが、理解されるであろう。
【0056】
本発明の化合物を含有する組成物は、様々な方法で使用されうる。例えば、経口投与は、化合物が、例えば、錠剤、カプセルまたは液体の形態で経口摂取されうる組成物中に含有される場合に必要とされうる。あるいは、組成物は、注射によって血流中に投与されうる。注射は、静脈内(ボーラスもしくは注入)または皮下(ボーラスもしくは注入)でありうる。あるいは、本発明の化合物を含有する組成物は、(例えば鼻腔内もしくは口からの)吸入によって、または(例えば坐薬のように)直腸内に投与されうる。
【0057】
組成物はまた、局所使用のために製剤化されうる。例えば、軟膏は、特定のウイルス感染症を治療するために、皮膚、口または性器の中および周囲の領域に塗布されうる。皮膚への局所適用は、皮膚のウイルス感染症の治療のために、または他の組織への経皮的送達の手段として、特に有用である。
【0058】
必要とされる化合物の量は、その生物学的活性および生物学的利用能によって決定され、それは同様に、投与方法、化合物の物理化学的特性、および化合物が単独療法として用いられているか、または併用療法において用いられているかどうかに依存することが理解されるであろう。投与頻度もまた、上述の要因および特に治療される対象の体内での化合物の半減期の影響を受けるであろう。
【0059】
投与されるべき至適用量は、当業者によって決定されることができ、使用される特定の化合物、調製物の強さ、投与方法、および病状の進行によって異なる。治療される特定の対象に応じた更なる要因は、対象の年齢、体重、性別、食生活、および投与時期を含み、用量を調整する必要性を生じる。
【0060】
当業者は、選択された化合物の薬物動態に基づいて、必要とされる用量、および標的組織での化合物(I)およびペントキシフィリンの至適濃度を計算できることが理解されるであろう。製薬業界で通常用いられるような既知の方法(例えば、in vivo実験、臨床試験など)は、本発明の化合物の特定の製剤ならびに正確な治療計画(化合物の1日用量および投与頻度など)を確立するために使用されうる。
【0061】
どの化合物が使用されるかによって、微生物(例えばウイルス)感染症の予防および/または治療のために、通常、0.001μg/kg体重〜20mg/kg体重の化合物の1日用量が使用されうる。適切には、1日用量は、0.01μg/kg体重〜10mg/kg体重であり、より適切には、0.01μg/kg体重〜1mg/kg体重または0.1μg/kg体重〜100μg/kg体重であり、最も適切には、約0.1μg/kg体重〜10μg/kg体重である。
【0062】
化合物の1日用量は、単回投与(例えば、1日1回の注射または1回の吸入)として与えられうる。適切な1日用量は、0.07μg〜700mg(すなわち体重70kgと仮定)、または0.70μg〜500mg、または10mg〜450mgでありうる。薬剤は、ウイルスなどの、呼吸器疾患を引き起こす病原体への感染の前または後に投与されうる。薬剤は、感染後2、4、6、8、10または12時間以内に投与されうる。薬剤は、感染後14、16、18、20、22、または24時間以内に投与されうる。薬剤は、感染後1、2、3、4、5、もしくは6日以内、またはそれらの間の任意の時期に投与されうる。
【0063】
治療されている感染症がインフルエンザの感染症である実施形態では、インフルエンザが汎発性インフルエンザ(pandemic influenza)であるか否かとは無関係に、対象は、本発明の化合物を含有する薬剤によって治療される人であり、呼吸困難の症状が起こるか、および/またはサイトカインレベル(上述の任意のサイトカイン、しかし、通常はIFN-αもしくはTNF-γ)が呼吸困難の症状の発症時に増加する人である。より好ましくは、対象は、インフルエンザ症状の発症後、下記の時点で:すなわち、12、24、18または36時間以上(より好ましくは、48時間以上、60時間以上、もしくは72時間以上;最も好ましくは36〜96時間、48〜96時間、60〜96時間、もしくは72〜96時間)で、呼吸困難の症状が起こるか、および/あるいはサイトカインレベルが増加する対象である。あるいは、インフルエンザが汎発性インフルエンザであるか否かとは無関係に、対象は、感染した肺内への適応免疫系の動員の開始時(もしくはより早期)に、呼吸困難の症状が起こるか、および/またはサイトカインレベルが増加する人である。
【0064】
実施例のin vivoマウス試験に記載されるように、本発明者らは、2回分以上のサイトカイン阻害剤を投与されたマウスが、インフルエンザ感染症の症状の改善を示すことを明らかにした。従って、化合物(I)またはペントキシフィリンを含有する薬剤は、治療を必要とする対象に2回以上投与されうることが想定される。化合物は、1日のうちに2回以上の投与を必要としうる。例として、化合物(I)は、0.07μg〜700mg(すなわち体重70kgと仮定)の1日用量を2回(または治療されているウイルス感染症の重症度に応じてそれ以上)投与されうる。治療を受ける患者は、1回目の用量を起床時に摂取し、その後(2回の投与計画である場合)2回目の用量を夜に、またはその後3もしくは4時間間隔などで摂取しうる。化合物は、ウイルス感染後、毎日(必要であれば2回以上)投与されうることが想定される。
【0065】
このように、本発明の化合物は、好ましくは上述のような対象へ投与に適しており、好ましくはインフルエンザ症状の発症後、上記の時点での投与に適している。
【0066】
あるいは、至適用量の本発明の化合物を反復投与する必要なく患者に提供するために、持続放出装置が使用されうる。
【0067】
本明細書に記載される化合物が、TNF-αおよびIFN-γなどのサイトカインのレベルを減少させるために使用されうるという発見に基づき、本発明者らは、化合物のこれらの効果が臨床的に有用な組成物の製造に利用され、使用されうると考える。
【0068】
従って、第四の態様では、呼吸器疾患を引き起こす病原体感染症の治療における使用のために、治療上有効な量の上記で定義されたような一般式Iで表される化合物またはペントキシフィリン、および製薬上許容されうるベヒクルを含む医薬組成物が提供される。
【0069】
感染症は、急性または慢性でありうる。
【0070】
化学式(I)で表される化合物またはペントキシフィリンの「治療上有効な量」は、対象に投与した場合、TNF-αおよびIFN-γなどのサイトカインのレベルの減少を引き起こし、それによって急性ウイルス感染症などの微生物感染症の予防および/または治療をもたらす任意の量である。
【0071】
例えば、用いられる化合物(I)またはペントキシフィリンの治療上有効な量は、約0.07μg〜約700 mg、好ましくは約0.7μg〜約70 mgでありうる。化合物(I)の量は、約7μg〜約7mg、または約7μg〜約700μgである。
【0072】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または家畜であってよく、好ましくはヒトである。従って、本発明の薬剤は、任意の哺乳動物、例えばヒト、家畜、ペットを治療するために使用されてもよく、または他の獣医学的用途に使用されてもよい。
【0073】
本明細書に記載される「製薬上許容されうるベヒクル」は、医薬組成物の製剤化において有用であることが当業者に知られている既知の化合物の任意の組み合わせであり得る。
【0074】
1つの実施形態では、製薬上許容されうるベヒクルは固体であり、組成物は散剤または錠剤の形態でありうる。固体の製薬上許容されうるベヒクルは、矯味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、色素、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤(compression aids)、不活性な結合剤、甘味剤、保存剤、色素、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても機能しうる1つ以上の物質を含みうる。ベヒクルはまた、カプセル化材料でありうる。散剤では、ベヒクルは、微粉化された活性物質(すなわち、本発明の化合物(I)またはペントキシフィリン)との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性物質は、必要な圧縮特性を有するベヒクルと適切な比率で混合され、望ましい形状および大きさに圧縮成型されうる。散剤および錠剤は、好ましくは最大99%まで活性物質を含有する。適切な固体ベヒクルは、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂を含む。
【0075】
別の実施形態では、製剤ベヒクルはゲルであってもよく、組成物はクリームなどの形態でありうる。更に別の実施形態では、製剤ベヒクルは液体であってもよく、医薬組成物は溶液の形態でありうる。液体ベヒクルは、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシルおよび加圧組成物の調製に使用される。活性化合物は、水、有機溶媒、両方の混合物または製薬上許容されうる油状物質もしくは脂質などの製薬上許容されうる液体ベヒクルに、溶解あるいは懸濁されうる。液体ベヒクルは、可溶化剤、乳化剤、バッファー、保存剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などの、他の適切な医薬品添加物を含有し得る。経口および非経口投与のための液体ベヒクルの適切な例は、水(部分的に上記のような添加物、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油状物質(例えばヤシ油(fractionated coconut oil)およびラッカセイ油)を含む。非経口投与のために、ベヒクルはまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。滅菌した液体ベヒクルは、非経口投与のための滅菌液状組成物に有用である。加圧組成物のための液体ベヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の製薬上許容されうる噴射剤であり得る。
【0076】
滅菌した溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、硬膜外注射、腹腔内注射、静脈内注射、および特に皮下注射に使用され得る。本発明の化合物は、投与時に滅菌水、生理食塩水、または他の適切な滅菌した注射用媒質を用いて溶解または懸濁されうる滅菌固体組成物として調製されうる。
【0077】
化合物は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするために十分な塩類もしくはブドウ糖)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合されたソルビトールおよびその無水物のオレイン酸エステル)などを含有する滅菌溶液または滅菌懸濁液の形態で経口投与されうる。化合物はまた、液体または固体組成物のいずれかの形態で経口投与され得る。経口投与に適した組成物は、丸剤(pills)、カプセル、顆粒、錠剤(tablets)、および散剤などの固体形態、ならびに溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁液などの液体形態を含む。非経口投与に有用な形態は、滅菌した溶液、エマルション、および懸濁液を含む。
【0078】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面のいずれをも包含する)に記載されるすべての特徴、および/または開示される任意の方法もしくは工程のすべてのステップは、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで任意の上記の態様と組み合わされうる。
【0079】
本発明の実施形態は下記に、単に例として、下記の実施例、および添付の図面に関して、更に記載される。
【実施例】
【0080】
本発明者らは、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの産生に対する、化学式Iで表される様々な化合物またはペントキシフィリンの効果を決定するために、様々なin vitroおよびin vivo実験を行った。本発明者らは、以下に記載される結果において、本発明の化合物が、驚くべきことに、IFN-γおよびTNF-αの阻害剤として作用することを実証した。更に、本発明者らは、in vivoマウスモデルにおいて、上述の化合物の投与が、マウスにおいてウイルス症状の減少(すなわち、体重減少の軽減、生存率の増加、および総罹患率の減少)をもたらすことを実証した。
【0081】
材料および方法
in vivoマウス試験
方法:
50匹のメスのC57BL/6マウス(6〜7週齢)を、各10匹の動物を含む5つの実験群に分けた。1日目に、動物は、ハロタン誘導性麻酔下で鼻腔内に致死量(全50μl、鼻孔25μl)のインフルエンザA/PR/8/34を接種された。3日目に、動物は、試験化合物(360μgイブプロキサム(BC1048)、54μgオキサメタシン(BC1002)、180μgベノキサプロフェン(BC 1005)、189μgベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006))の1回の腹腔内注射(100〜150μl)を受けた。
【0082】
1日目から少なくとも6日目までの罹患率、体重減少、および生存率について、すべての動物を毎日評価した。罹患率可変要素(すなわち、身体状態、姿勢、活動、立毛、呼吸、発声、運動失調および眼漏/鼻漏)を、下記の重症度の基準に従って記録した:すなわち、正常(0)、軽度(1)、苦痛(2)、および重度/処分レベル(3)である。
【0083】
実施例‐in vivoマウス試験
上述の標準的な技術を用いて、マウスを、対象のそれぞれに定着できるH1N1ウイルスに感染させた。各試験マウスをその後、ウイルスによる感染後3日目の単回投与量によって、イブプロキサム(BC1048)、オキサメタシン(BC1002)、ベノキサプロフェン(BC1005)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリンで処理した。対照マウスには、イブプロキサム(BC1048)、オキサメタシン(BC1002)、ベノキサプロフェン(BC1005)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリン(BC1042)を投与しなかった。その後、処理マウスおよび未処理マウスの両方の体重減少を測定した。
【0084】
図1、3および5に示されるように、イブプロキサム(BC1048)、オキサメタシン(BC1002)、ベノキサプロフェン(BC1005)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリン(BC1042)の投与を受けたマウスは、対照マウスより少なくとも10%の体重減少の軽減を示した。従って、本発明者らは、仮説に拘束されることを望まないが、本発明者らは、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンに暴露された際のH1N1感染マウスにおけるサイトカイン、IFN-γおよびTNF-αのレベルの減少が、マウスの体重維持をもたらすと考える。
【0085】
図2、4および6を参照すると、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンで処理されたマウスのパーセント生存率の結果が示される。図に見られるように、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンで処理されたマウスは、対照である未処理マウスより高い生存率を示した。
【0086】
In vitro試験‐分裂促進因子、LPSおよびCon Aを用いた刺激実験
プラズマB細胞は、それらの免疫グロブリンに適合する抗原と遭遇した時、有糸分裂に入ることができる。分裂促進因子は、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼが関与するシグナル伝達経路の引き金となり、それによって細胞に細胞分裂の開始を促し、有糸分裂を引き起こす化学物質である。従って、分裂促進因子は、リンパ球を刺激し、その結果、免疫機能を評価するために効果的に使用され得る。リンパ球を刺激することによって、分裂促進因子は、ウイルス感染の影響を再現するために使用され得る。
【0087】
本発明者らがリンパ球を刺激し、その結果、免疫機能を評価するために用いた2つの分裂促進因子は、リポ多糖類(LPS)およびコンカナバリンA(Con A)であった。LPSはB細胞には作用するがT細胞には作用しない一方、Con AはT細胞には作用するがB細胞には作用しない。化学式Iで表される化合物の2つの実施形態、すなわち、イブプロキサム(表ではBC1048と示される)およびベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、ならびにペントキシフィリン(表ではBC1042と示される)の、IFN-γおよびTNF-αのレベルに対する影響を、LPSおよびCon A刺激アッセイにおいて調べた。末梢血単核細胞(PBMC)に、独立に各分裂促進因子、LPSまたはCon Aを投与し、その後、イブプロキサム、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンで処理した。IFN-γおよびTNF-αのレベルに対する何らかの影響は、試験化合物、イブプロキサム、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンの存在に直接起因する可能性があるため、LPSもCon Aも加えない対照実験を行った。
【0088】
材料および方法
末梢血単核細胞(PBMC)の分離、培養および処理
血液を6mlのバキュテナー(商標)(緑のキャップ)に採取した。血液は採取2時間以内に処理した。
【0089】
使用される材料:非凝固血液;FCS;L-GlnおよびP/Sを添加したRPMI-1640培地;PBS;滅菌チップおよびピペット;滅菌した15ml Falcon;滅菌したふた付きV底96ウェルプレート;ノイバウエル血球計算盤;トリパンブルー溶液;70% IPA溶液;Accuspin-Histopaqueチューブ(Sigma, A7054)。
【0090】
方法:
1. サンプルを滅菌したPBSで1:1に希釈する;
2. 30mlの希釈した血液をAccuspin-Histopaqueチューブ(Sigma, A7054)中に加える;
3. 800rcfで15分間、室温(RT)で遠心分離する;
4. 遠心分離後、赤血球はフリットの下の底に残る。単核細胞(PBMC)はフリットの上の層に存在し、その上に血漿がある。
【0091】
5. ピペットを用いて新しい15ml FalconチューブにPBMC層を回収し、PBSを15mlまで追加する;
6. 250rcfで1O分間、RTで遠心分離する;
7. 上清を捨て、沈殿を軽くはじいて、10mlのPBSをさらに加える;
8. 250rcfで1O分間、RTで遠心分離する;
9. ステップ7および8を繰り返す;
10. 上清を捨て、沈殿を1mlの完全培地(RPMI-1640 10% FCS)に再懸濁する;
11. 細胞を数え、完全培地で4×106細胞/mlの懸濁液を調製する。ウェルあたり100μlの細胞懸濁液をV底96ウェルプレートに加える。その後、完全培地中の刺激剤またはベヒクルを50μl添加し、完全培地中の薬物またはベヒクルを50μl添加する。細胞を24時間37℃、5% CO2で培養する;
12. 培養後、60μlの細胞上清を採取し、メーカーの使用説明書(BD Biosciences)に従って、ELISA(OptEIAヒトIFNγ、カタログ番号555142およびヒトTNF、カタログ番号555212)によって、IFNγおよびTNFαを測定する。
【0092】
LPS刺激試験
LPS刺激実験の結果を表1に示す。表中の値は、LPSのみの対照に対するパーセント値として表される。従って、LPSのみの存在下でPBMC細胞から発現されるサイトカイン、IFN-γまたはTNF-αのいずれかの最高濃度を100%とし、(i)LPSおよび(ii)イブプロキサム(BC1048)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリン(BC1042)の存在下でPBMC細胞から発現されるサイトカインの濃度を、LPSのみの100%対照に対するパーセントとして表す。標準偏差の値(標準誤差)は、発現されたIFN-γレベルまたはTNF-αレベルのそれぞれの値の下に示される。
【0093】
表1‐LPS刺激下でのIFN-γレベルおよびTNF-αレベルの測定(LPS刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントIFN-γレベルおよびTNF-αレベル)
【表1】

【0094】
表1に示されるデータに関して、本発明者らは、LPS刺激細胞において、イブプロキサム(BC1048)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリン(BC1042)の存在下でIFN-γおよびTNF-αの濃度が減少することを観察して驚いた。イブプロキサムは、最も高い濃度(100μM)で刺激後にIFN-γの産生を完全に阻害するが、一方、TNF-αに対する効果は低い。ベノキサプロフェンヒドロキサメートは、用いられたすべての濃度(1〜100μM)でIFN-γの産生を常に阻害し(35〜21%)、TNF-αに対するその最大効果は最も高い濃度においてであった(41%)。ペントキシフィリンは、100μMで効果を有するイブプロキサムと同様にIFN-γの産生を阻害するが、この効果はイブプロキサムよりはっきりせず、またTNF-αに対する効果も低かった。
【0095】
Con A刺激試験
Con A実験の結果を表2に示す。
【0096】
表2‐Con A刺激下でのIFN-γレベルおよびTNF-αレベルの測定(Con A刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントIFN-γレベルおよびTNF-αレベル)
【表2】

【0097】
表2に示されるデータに関して、本発明者らは、TNF-αおよびIFN-γの濃度がまた、Con A刺激細胞において、イブプロキサム(BC1048)、ベノキサプロフェンヒドロキサメート(BC1006)、またはペントキシフィリン(BC1042)の存在下で減少することを観察した。このin vitro系では、イブプロキサムは、最も高い濃度でConA誘導性のIFN-γおよびTNF-α産生に対して軽度の効果を示した。ベノキサプロフェンヒドロキサメートは、10および100μMで明らかにIFN-γおよびTNF-αに対してより大きな効果を示した。この刺激に対して、ペントキシフィリンは、ConA誘導性のTNF-αまたはIFN-γ産生に対してほどんど効果を示さない。
【0098】
要約
要約すると、本発明者らは、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、およびペントキシフィリンが、インフルエンザ攻撃されたマウスにおける生存を改善することを観察して驚いた。従って、本発明者らは、化学式(I)で表される任意の化合物またはペントキシフィリンがIFN-γおよびTNF-α阻害剤として使用され、それが、インフルエンザなどの呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症の治療に使用され得ると考える。実施例に記載されるin vivoマウス試験の有望な結果は、H1N1ウイルスに感染したマウスが、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、ベノキサプロフェンヒドロキサメート、またはペントキシフィリンの単回投与量の投与によって効果的に治療され得ることを明示する。従って、任意の化合物(I)またはペントキシフィリンが、ウイルス感染症、または劇症呼吸器疾患を引き起こす他の病原体感染症を治療するために使用され得ることは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾患、好ましくは劇症呼吸器疾患を引き起こす病原体感染症の治療における使用のための、化学式Iの化合物
【化1】

[式中、Arはアリールもしくは置換アリール基であり、R1はC1-3アルキル基もしくは水素であり、R2はOHもしくは-NHOHである]、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物。
【請求項2】
Arが置換フェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が水素またはメチル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が-NHOHである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Arが置換フェニル基である場合に、化学式Iに示された構造の残りの部分にそれを連結する結合が、フェニル環の炭素原子に直接伸びる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
化合物(I)が、2-アリール, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体、または2-アリール, 2-メチル, N-ヒドロキシアセトアミド誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
化合物(I)が、イブプロキサム、オキサメタシン、ベノキサプロフェン、またはベノキサプロフェンヒドロキサメートである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
化合物(I)が、
【化2】

である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
化合物(I)が、
【化3】

である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
呼吸器疾患を引き起こす病原体感染症の治療における使用のための、ペントキシフィリン、またはその製薬上許容されうる塩、溶媒和物、もしくは塩の溶媒和物。
【請求項11】
感冒、副鼻腔炎、扁桃炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎、肺炎、呼吸窮迫症候群(RDS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、または急性肺損傷(ALI)を治療するために使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
細菌感染症を治療するために使用される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
真菌感染症を治療するために使用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
ウイルス感染症、好ましくは急性ウイルス感染症を治療するために使用される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
パラミクソウイルス感染症またはオルトミクソウイルス感染症を治療するために使用される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、もしくはC型インフルエンザウイルス、またはその派生物のいずれかによる感染症を治療するために使用される、請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
H1N1;H1N2;H2N2;H3N1;H3N2;H3N8;H5N1;H5N2;H5N3;H5N8;H5N9;H7N1;H7N2;H7N3;H7N4;H7N7;H9N2;およびH10N7からなる血清型の群より選択される任意の血清型のA型インフルエンザウイルス、またはその派生物の感染症を治療するために使用される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
H1N1ウイルス、またはその派生物のウイルス感染症を治療するために使用される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
ウイルス誘導性サイトカイン産生の炎症症状を改善するために使用される、請求項14〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
IFN-γおよび/またはTNF-αを調節する、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
未感作の対象の急性ウイルス感染症における炎症を治療するために使用される、請求項14〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
ウイルスの再燃を治療するために使用される、請求項14〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
呼吸器疾患を引き起こす病原体による感染症を予防、治療、および/または改善する方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の請求項1〜22のいずれか1項に定義される化合物を投与することを含む方法。
【請求項24】
呼吸器疾患を引き起こす病原体感染症の治療における使用のための、治療上有効な量の請求項1〜22のいずれか1項に定義される化合物、および製薬上許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510838(P2013−510838A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538408(P2012−538408)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051858
【国際公開番号】WO2011/058346
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510179526)バイオコピア リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biocopea Limited
【Fターム(参考)】