説明

微生物燃料電池

【課題】アノード表面領域に少なくとも約0.075mg/cmのタンパク質を含むelectricigenic微生物を含む本発明の実施形態に係る微生物燃料電池が提供される。
【解決手段】特定の実施形態において、アノード表面領域の少なくとも約90%がelectricigenic微生物の層を有することとなるように、electricigenic微生物が配置され、該層は厚さが約1μm以上とされる。この厚さは、該層に、少なくとも、上記アノードに直接接触するelectricigenic微生物の第1層と、第2層が上記アノードと間接的に接触するように上記第1層へ直接接触するelectricigenic微生物の第2層と、が含まれることを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して燃料電池に関する。より詳しくは、本発明は、微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー需要及び環境問題の急速な増加に起因して、再生可能資源からのクリーンで高効率なエネルギー生産が、強く望まれている。化学エネルギーを含む酸化可能な有機材料を消費して電気等の他の有用なエネルギーを発生させる、微生物が生体触媒として機能する微生物燃料電池が、特に注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
微生物燃料電池分野におけるこれまでの研究により、様々な微生物燃料電池が開発されてきている。しかしながら、これらの微生物燃料電池は、出力密度が低く、微生物栄養燃料を有用なエネルギーへ変換する際の効率が低いことから概して不十分であり、これまでのところ、微生物燃料電池の生産及び利用は限られている。
【0004】
そのため、微生物燃料電池の改良が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態にかかる微生物燃料電池は、アノード表面領域を有するアノードと、カソード表面領域を有するカソードと、該アノードと該カソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、アノードに配置された複数のelectricigenic微生物と、を具備し、これら複数のelectricigenic微生物は、複数のelectricigenic微生物の物質移動を向上させ微生物燃料電池の出力密度を増大させる複数のコロニーを、間隔を開けて形成する、微生物燃料電池である。
【0006】
特定の実施形態において、これら複数のelectricigenic微生物は、複数のGeobacteraceae微生物である。また、これら複数のelectricigenic微生物は、実質的にelectricigenic微生物の純個体群であっても良い。さらなる実施形態において、これら複数のelectricigenic微生物は、実質的にGeobacter sulfurreducensの純個体群である。
【0007】
本発明の実施形態にかかる微生物燃料電池は、アノード表面領域を有するアノードと、カソード表面領域を有するカソードと、該アノードと該カソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、アノードに配置された複数のelectricigenic微生物と、を具備し、これら複数のelectricigenic微生物は、複数のelectricigenic微生物の物質移動を向上させ微生物燃料電池の出力密度を増大させるとともに柱を有する複数のコロニーを、間隔を開けて形成する、微生物燃料電池である。
【0008】
これら複数のelectricigenic微生物は、約1μmより大きい厚みを有する生物膜を形成するように、アノードに配置されていても良い。ここで、該生物膜は、少なくとも、アノードと直接接触する上記複数のelectricigenic微生物の第1の部分、及び、該第1の部分と直接接触しアノードと間接的に接触する上記複数のelectricigenic微生物の第2の部分を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によって提供される燃料電池は、電力を供給する様々な用途に有用である。用途としては、電話機やポケットベルのような通信機器を含む携帯機器;コンピュータ、携帯情報端末、個人用オーディオプレーヤー、カメラ、電子ゲームプレーヤー等の携帯用電子機器;住宅用の発電装置;センサー;自動車、トラック、オートバイ等の車両、が例示される。
【0010】
大まかに言うと、微生物燃料電池は、アノード、カソード、及び、カチオン交換膜を具備している。作動中に、微生物は、易酸化性の有機材料を消化して、二酸化炭素、プロトン、及び、電子を作り出す。作り出された電子は、アノードへと移動され、その後、負荷を介してカソードへと移動される。プロトンは、カチオン交換膜を通ってカソードへと達する。カソードでは、例えば酸素等の酸化剤が、水を生成するためにプロトン及び電子と反応する。
【0011】
グルコースが易酸化性の有機材料であり、酸素が酸化剤である場合、半セル反応は、以下のように表される。
アノード: C12+6HO→6CO+24H+24e
カソード: 6O+24H+24e→12H
【0012】
本発明の実施形態にかかる燃料電池に含まれるelectricigensは嫌気性の微生物であり、有機材料を完全に酸化させて二酸化炭素とし、電子をアノードへ直接提供する。これは、還元された最終生成物を生成したり、酸化還元メディエータを還元したりする、チオニンやニュートラルレッド等のような、電子をアノードへ間接的に提供する微生物と対照をなす。electricigensは電子をアノードへ直接移動させるので、「酸化還元メディエータ」は必要とされない。加えて、多くの非electricigensは、微生物燃料電池で燃料として使用される有機材料を不完全に酸化させるのみであり、結果として、燃料から電気への変換効率が低下する。
【0013】
本発明にかかる燃料電池を運転させる上で燃料源として備えられる易酸化性の有機材料は、electricigenによって二酸化炭素へと代謝され得る任意の有機材料である。そのような有機材料の具体例には、アセテートや、酪酸塩や、プロピオン酸等の低分子量カルボン酸;グルコース等のような単糖類や、オリゴ糖や、でんぷんやセルロースのような多糖類を含む炭水化物;メタノールや、エタノールや、プロパノールや、ブタノール等の脂肪族アルコールを含むアルコール;システイン等のアミノ酸;ペプチド又はタンパク質;及びこれらの何れかの組み合わせが含まれる。加えて、特定の実施形態において、固形廃棄物や廃水のような有機物の複雑な混合物を、燃料として用いることができる。
【0014】
ここにelectricigenic微生物とも呼ばれる特定のelectricigensは、Geobacteraceae科の微生物を含み、有機燃料化合物を二酸化炭素へ完全に酸化させることが可能であり異化型Fe(III)還元をすることが可能な、Geobacter属、Desulfuromonas属、Desulfuromusa属、Pelobacter属、及び、Malonomonas属の任意の微生物を含む。
【0015】
本発明にかかる燃料電池の実施形態に含まれる特定のelectricigenは、Geobacter sulfurreducensである。例えば、Geobacter sulfurreducensは、株種が、DSM12127に分類される51573番のATCCを有するPCA株であることを特徴とし、Caccavo, F., et al., Appl. Environ. Microbiol., 1994, 60, 3752-3759に記載されているものが、本発明にかかる燃料電池の実施形態に含まれる特定のelectricigenである。
【0016】
本発明にかかる燃料電池の実施形態に含まれるelectricigenの他の具体例は、限定されるものではないが、株種が、53774番のATCCを有するGS−15株であり、DSM7210に分類され、Lovley, D.R., et al., Arch. Microbiol., 1993, 159, 336-344に記載されたGeobacter metallireducens属の株種;株種が、BAA−1139番のATCCを有するG12株であり、JCM12999に分類され、Shelobolina, E.S. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2007, 57, 126-135に記載されたGeobacter argillaceus;株種が、BAA−1014番のATCCを有するBem株であり、DSM16622及びJCM12645に分類され、Nevin, K.P. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2005, 55, 1667-1674に記載されたGeobacter bemidjiensis;株種が、DSM12179及びOCM796に分類されるDfr1株であり、Straub, K.L. and Buchholz-Cleven, B.E.E.), Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2001, 51, 1805-1808に記載されたGeobacter bremensis;株種が、51744番のATCCを有する172株であり、DSM13688に分類され、Coates, J.D., et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2001, 51, 581-588に記載されたGeobacter chapellei;株種が、BAA−45番のATCCを有するTACP−2株であり、DSM13689に分類され、Coates, J.D. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2001, 51, 581-588に記載されたGeobacter grbiciae;株種が、51590番のATCCを有するH−2株であり、DSM13691に分類され、Coates, J.D. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2001, 51, 581-588に記載されたGeobacter hydrogenophilus;株種が、Dfr2株であり、DSM12255及びOCM797に分類され、Straub, K.L. and Buchholz-Cleven, B.E.E.), Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2001, 51, 1805-1808に記載されたGeobacter pelophilus;株種が、BAA−1140番のATCCを有するG13株であり、DSM17153及びJCM13000に分類され、Shelobolina, E.S. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2007, 57, 126-135に記載されたGeobacter pickeringii;及び、株種が、BAA−1013番のATCCを有するP35株であり、DSM16674及びJCM12644に分類され、Nevin, K.P. et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2005, 55, 1667-1674に記載されたGeobacter psychrophilusが含まれる。
【0017】
本発明の実施形態にかかる燃料電池のアノードには、複数のelectricigenic微生物が配置される。特定の実施形態において、本発明にかかる燃料電池のアノードに配置される複数のelectricigenic微生物は、実質的にelectricigenic微生物の純個体群である。ここに、「実質的に純個体群」という語は、少なくとも95%の微生物が特定の属又は種のelectricigensであることを特徴とする微生物の個体群であることを指す。特定の実施形態において、本発明に係る燃料電池に含まれる、微生物の実質的な純個体群は、少なくとも99%の微生物が特定の属又は種のelectricigensであることを特徴とする個体群である。好ましい実施形態において、本発明に係る燃料電池のアノードに配置される、微生物の実質的な純個体群は、少なくとも95%の微生物がGeobacter属のelectricigensであることを特徴とする個体群である。さらに好ましい実施形態において、本発明に係る燃料電池のアノードに配置される、微生物の実質的な純個体群は、少なくとも95%の微生物がGeobacter sulfurreducens種のelectricigensであることを特徴とする個体群である。
【0018】
本発明の実施形態に係る燃料電池において、electricigenic微生物は、一つ又はそれ以上の分離されたelectricigenic微生物種の実質的な純個体群とともにアノードへ接種されることによって、アノードへ配置される。ここに、「分離された」という語は、微生物が自然に見つかる環境から、electricigenic微生物が分離されていることを指す。それゆえ、例えば、塩水や淡水の堆積物の中で自然に存在する微生物は、塩水や淡水の堆積物から分離されて、培養液中で繁殖されると、分離された微生物となり、結果として分離された微生物の個体群となる。
【0019】
本発明に係る燃料電池の特定の実施形態において、燃料電池のアノードに配置された複数のelectricigenic微生物の、少なくとも第1の部分は、アノードと直接接触し、アノードに接触する種類の微生物の直径程度の平均厚さを有する生物膜を形成する。アノードと直接には接触していない微生物がアノードに配置されていることを示す、平均厚を有する生体膜が、改良された性能特性をもたらすことは、本発明の予期せぬ結果である。それゆえ、本発明に係る燃料電池の特定の実施形態において、燃料電池のアノードに配置された複数のelectricigenic微生物の第2の部分は、アノードと間接的に接触している。そのように配置された状態において、上記第2の部分のそれぞれの微生物は、一又はそれ以上の他の微生物と直接接触し、アノードに接触する微生物の直径の少なくとも二倍の平均厚さを有する生体膜を形成する。そのため、特定の実施形態において、本発明に係る燃料電池に含まれるアノードに配置される生体膜は、約1μmよりも大きな厚さを有している。アノードに配置される生体膜の厚さは、例えば、顕微鏡によるアノードの観察を含む、任意の様々な方法によって測定することができる。
【0020】
図8に最も良く表れているように、一形態において、複数のelectricigenic微生物を含む複数の微生物は、互いに間隔を開けた複数のコロニーを形成する。種々のコロニーは、20μmから50μmの高さを有する柱構造を形成していても良い。間隔を開けられた複数のコロニーの形成により、複数のelectricigenic微生物の物質移動が向上され、結果として、微生物燃料電池の出力密度が向上する。複数のコロニーは、互いに、最大で40μmの間隔を開けて形成されていても良い。
【0021】
図8に示すように、緑色の領域は、互いに間隔を開けて存在する活性なコロニーを表し、黒色の領域は、アノード材料の空の空間を指定している。図の軸方向部分に表されるように、コロニーは様々な高さの柱を形成し、それぞれ間隔を開けて存在している。
【0022】
さらなる実施形態において、アノードの生体膜の厚さは、アノードに存在する微生物タンパクの量によって表される。したがって、本発明に係る燃料電池の特定の実施形態において、燃料電池のアノードに配置された複数のelectricigenic微生物の少なくとも第1の部分は、アノードと直接接触し、アノードに形成された生体膜は、アノード表面の1cmにつき約0.05mg以下の微生物タンパクを有している(Bond and Lovley, Appl. Environ, Microbiol. 2003, 69:1548-1555)。特定の実施形態において、燃料電池のアノードに配置された複数のelectricigenic微生物の第2の部分は、アノードと間接的に接触しており、アノードに形成された生体膜は、アノード表面の1cmにつき0.75mg以上の微生物タンパクを有している。細菌性細胞は、一般に、1.2×10−13g/cellのタンパク質を含んでいる。
アノードの生体膜に含まれる微生物タンパクの量は、例えば、Lowrey分析などの標準的なタンパク質分析、及び/又は、ビシンコニン酸(BCA)法を含む、任意の様々な方法によって測定することができる。タンパク質分析法の例は、Lowry, O.H. et al., J. Biol. Chem. 193:265-275, 1951;Hartree, E.F., Anal Biochem 48:422-427, 1972;や、Stoscheck, C.M., Quantitation of Prtein, Methods in Enzymology 182:50-69, 1990に、詳しく記載されている。
【0023】
本発明に係る燃料電池の特定の実施形態に含まれるelectricigensは、導電性線毛の存在によって特徴付けられる。線毛の存在は、電子顕微鏡観察のような視覚的評価によって検出される。加えて、線毛の存在は、一又はそれ以上の線毛タンパクの分析、及び/又は、線毛タンパクをコードするRNAの分析によって検出される。線毛タンパクは、例えば、E. Harlow and D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988等に記載されている、ウエスタンブロット法、免疫蛍光検出、又は、免疫沈降等で例示される免疫学的検定によって任意に検出される。また、線毛タンパクは、例えば、タンパク質の分離及び酵素による消化後のペプチドの質量分析のような、質量分析法によって検出されても良い。タンパク質、及び/又は、ペプチドの質量分析法に関する詳細な記載例は、Li J., et al., Clin Chem., 48(8):1296-304, 2002;Hortin, G.L., Clinical Chemistry 52: 1223-1237, 2006;A.L. Burlingame, et al.編, Mass Spectrometry in Biology and Medicine, Humana Press, 2000;や、D.M. Desiderio, Mass Spectrometry of Peptides, CRC Press, 1990に見られる。線毛タンパクという表現は、例えば、RT−PCRやノーザンブロットやリボヌクレアーゼプロテクションアッセイによる検出等の、線毛タンパクをコードするmRNAの分析で発見され、J. Sambrook and D.W. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd Ed., 2001や、F.M. Ausubel, Ed., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 5th Ed., 2002に、詳しく記載されている。線毛タンパクをコードする核酸配列はこれまでに明らかにされており、RT−PCR等の特異的アッセイやRT−PCRで用いるプライマーについては、例えばChilders, S.E. et al., Nature, 2002, 416(6882):767-9に、詳しく記載されている。
【0024】
燃料電池の形態
【0025】
本発明に係る燃料電池は、大まかに説明すると、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、アノードに配置されたelectricigenic微生物の個体群と、を有する。アノード及びカソードは、アノードからカソードへ電子が移動できるように、例えば電動デバイス等の負荷を介して、導電材料と接続されている。
【0026】
本発明に係る燃料電池の形態例を、図1に示す。図示された燃料電池10は、アノード支持材13と接触したアノード12と、カソード支持材15と接触したカソード14と、アノード12とカソード14との間に配置されたカチオン交換膜16と、を有している。この実施形態において、燃料電池は二室構造であり、アノード室支持材19によって一部分において画定されるアノード室18と、カソード室支持材21によって一部分において画定されるカソード室20と、を含んでいる。保護壁22、24は、保護壁とアノードとの間、及び、保護壁とカソードとの間にそれぞれ配置されたガスケットを支持する。そのような一つのガスケットが26で示されている。更なるガスケット28、30は、アノード支持材13とアノード室支持材19との間、及び、カソード支持材15とカソード室支持材21との間にそれぞれ配置されている。アノード室支持材を通ってアノード室へと達する吸気通路及び排気通路が、それぞれ32、34で示されている。吸気通路及び排気通路は、互いに他の場所に、任意に配置される。例えば、吸気通路及び排気通路は、アノード室、及び/又は、カソード室の反対側に配置される。
【0027】
特定の実施形態において、本発明に係る微生物燃料電池は、カチオン交換膜によって空気カソードから分離されたアノード室を有する単室型微生物燃料電池を含むように、構成される。
【0028】
本発明に係る燃料電池の特定の実施形態において、燃料電池は、コンパクトな形態を実現するように適応される。そのような一つの実施形態において、電極及びカチオン交換膜は、有利な電流出力密度を実現するために、大きさ及び配置がそれぞれ相対的に決められる。一形態において、燃料電池の電流出力密度は、100mA/mから4.56A/mとすることができる。
【0029】
本発明に係る燃料電池に含まれるアノード及び/又はカソードは、導電性である。アノードは、アノードに配置されるelectricigenic微生物に対して実質的に非毒性である。
【0030】
electricigenic微生物に対する、アノードのような材料の毒性は、ローダミン123や、ヨウ化プロピジウムや、SYTO9や、これら又は他の微生物生存マーカーの組み合わせを使った評価等の、任意の標準的な分析によって評価される。これらの例は、Kaprelyants, A.S. and Kell, D.B., J. Appl. Bacteriol., 72:410, 1992や、Gant, V.A. et al., J Med Microbiol 39: 147-154, 1993、並びに、Invitrogen, Carlsbad, CAによって商業的に販売されたLIVE/DEAD BacLightに説明されている。
【0031】
適当なアノード材料及びカソード材料の例は、限定されるものではないが、グラファイト、多孔質グラファイト、充填グラファイト粉末、カーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンウール、導電性金属、導電性ポリマー、及び、これらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
特定の実施形態において、本発明に係る燃料電池に含まれるアノードには、流体が浸透する。したがって、運転中に、アノード材料が多孔性であることによって存在するアノードの流路を通って、易酸化性の有機材料を含む流体が、随時絶え間なくアノードへと供給される。
【0033】
本発明に係る燃料電池に含まれるカソードは、特定の実施形態において、液体の中に任意に配置される。酸素のような酸化剤ガスが、液体中のカソードに供給されても良い。特定の実施形態において、カソードは、ヘキサシアノ鉄酸塩のような、酸素ではない電子受容体、を含有する液体の中に浸される。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明に係る燃料電池は、「空気カソード」としても知られる、「空気呼吸」型のカソードを含有する。カソードは、ガス拡散層、及び、カソードにおける酸素の還元の触媒作用に使われる触媒を含有する。ガス拡散層は、気体が浸透し、電子伝導性を有し、一般に、液体の通過に耐性がある。材料の例は限定されるものではないが、カーボンクロスやカーボンペーパーが、ガス拡散層の介在物に適している。
【0035】
特定の実施形態において、空気カソードは、カチオン交換膜、触媒、及び、ガス拡散層を不可欠のユニットとして含んでいる。例えば、触媒は、ガス拡散層及び/又はカチオン交換膜に沈殿しており、集められたカチオン交換膜、触媒、及び、ガス拡散層のサンドイッチは、空気カソードを形成するために、ホットプレスのような熱処理が施される。
【0036】
カソードにおける酸素還元の触媒作用に使われる触媒は、通常は白金のような金属触媒である。適当な金属触媒のさらなる例には、コバルト、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、錫、及び、タングステン、並びに、白金基金属、及び、これら又は他の触媒金属の任意の組み合わせが含まれる。
【0037】
一般に、白金のような触媒は、導電性のカソード材料に取り付けられ、その総量は、約0.01mg/cm〜5.0mg/cmの範囲とされる。
【0038】
本発明の実施形態に係る燃料電池には、電極から外部回路へ、そして外部回路から電極へ電子を伝導させるために、一又はそれ以上の電流コレクタが任意に含まれる。典型的な電流コレクタの一つは、電極と接触するように配置されたメッシュのステンレス鋼である。
【0039】
本発明に係る燃料電池の一実施形態において、カチオン交換膜はアノードとカソードとの間に配置される。適当なカチオン交換膜材料は、テトラフルオロエチレンの共重合体や、パーフルオロビニルエーテルスルホン酸や、NAFION等の誘導体や、E.I. du Pont de Nemours & Co. Wilmington, DE製の誘導体等のパーフルオロスルホン酸ポリマーによって例示される、プロトン伝導材料である。
【0040】
本発明に係る燃料電池は、運転用に「バッチ」モード及び/又は連続流モードに設定される。バイオ易酸化性有機材料を含む培地が、「バッチ」モードでは定期的に、又は、ある期間に亘って連続的に、アノードの微生物へと供給される。同様に、消耗したバイオ易酸化性有機材料からなる培地が、定期的に又は連続的に、取り除かれても良い。それゆえ、燃料電池は、バイオ易酸化性有機材料からなる培地を含有及び/又は消耗した培地が、アノードに配置された微生物へと届けられるアノード室と、流体伝達に適切な吸気通路及び/又は排気通路とを含有するように、構成される。
【0041】
特定の実施形態において、カソードは、カソード室の液体に浸されている。カソード室には、適切な吸気通路を経由して空気や酸素のような気体が散布されても良く、空気及び/又は還元されていない酸素が、吸気通路及び/又は別の排気通路を経由して取り除かれても良い。
【0042】
本発明に係る微生物燃料電池は、少なくとも一つのアノード室及び少なくとも一つのカソード室を含有するように任意に構成され、アノード室及びカソード室はカチオン交換膜によって分離されている。
【0043】
本発明に係る燃料電池に含有されるelectricigensは嫌気性生物である。それゆえ、アノード室から酸素が実質的に排除されることが好ましい。アノード室に存在する酸素を低減又は排除するため、例えば、窒素のような不活性ガスが任意にアノード室へと導入される。空気カソードが含まれる実施形態では、空気カソードからアノード室へと流入する酸素に対する実質的な障壁が、任意に含まれる。例えば、実質的に酸素不浸透性のカチオン交換膜が任意に使用される。
【0044】
本発明の燃料電池には、一以上のアノード、カソード、及び、カチオン交換膜が任意に含有される。
【0045】
発明の構成や方法の実施形態は、以下の実施例で明らかにされる。これらの実施例は例証目的で提供されており、発明の装置や方法の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1−バクテリア培養
【0047】
PCA株のGeobacter sulfurreducensを用いた。燃料電池用の接種材料は、30℃で成長させた。G. sulfurreducensは、電子供与体である10mMの酢酸塩が存在する、55mMのFe(III)クエン酸塩淡水培地、又は、変性NBAF培地で成長させた。
【0048】
55mMのFe(III)クエン酸塩淡水培地は、以下の成分を含んでいた(g/純水1L):NaHCO、2.5;CaCl・2HO、0.1;KCl、0.1;NHCl、1.5;NaHPO・HO、0.6;NaCl、0.1;MgCl 6HO、0.1;MgSO・7HO、0.1;MnCl・4HO、0.005;NaMoO・2HO、0.001;NaCHCOO、2.7;及び、酵母エキス(BBL Micrbiology Systems, Cockeysville, Md.),0.05。気相はN−CO(80:20)とした。
【0049】
変性NBAF培地は、通常のNBAF培地からレザズリンを除き、1.3mMの塩化第二鉄を加えることによって構成した。通常のNBAF培地は、電子供与体である15mMの酢酸塩と、電子受容体である40mMのフマル酸エステル塩と、を含んでいた。その組成は、純水1Lあたり、KHPOが0.42g、KHPOが0.22g、NHClが0.2g、KClが0.38g、NaClが0.36g、CaCl・2HOが0.04g、MgSO・7HOが0.1g、NaHCOが1.8g、NaCOが0.5g、NaC・3HOが2.04g、Naが6.4g、0.1%のレザズリンが0.5ml、100mMのNaSeOが1.0ml、ビタミン溶液(17)が10.0ml、NB微量鉱液が10.0mlであった。NB微量鉱液の組成は、純水1Lあたり、ニトリロ酢酸が2.14g、MnCl・4HOが0.1g、FeSO・7HOが0.3g、CoCl・6HOが0.17g、ZnSO・7HOが0.2g、CuCl・2HOが0.3g、AlK(SO・12HOが0.005g、HBOが0.005g、NaMoOが0.09g、NiSO・6HOが0.11g、NaWO・2HOが0.2gであった。
【0050】
実施例2−燃料電池におけるバクテリアの成長
【0051】
図1に示すようなミニスタック燃料電池を本実施例で用いた。この特定の実施形態において、アノード体積及びカソード体積は、それぞれ7mLであった。ガスケットにはブチルゴムを用いた。アノード室及びカソード室は、カチオン選択膜Nafion117によって分離された。
【0052】
大きさを約2.54cm×2.54cmから1.16cm×12.9cmの範囲としたアノードには、Electrolytica製,(Amherst, NY)のGC−14等級のグラファイトクロスを用いた。アノードの公称表面領域は、グラファイトクロスの両側を使って計算した。
【0053】
空気を吸い込むカソードには、白金が担持された担体と結合したNafion117を用い、その大きさは2.54cm×2.54cmであった。カソードの白金担持量は4.0mg/cmであった。ある場合に、カソードには、大きさが2.54cm×2.54cmのグラファイトクロスが用いられ、50mMのヘキサシアノ鉄酸塩を含有する水中に浸された。
【0054】
特定の実施形態において、アノードは、Amel Instruments製,(Milan, Italy)のポテンシオスタットを用いて300mVに制御した時に、平衡状態になった。対極は、淡水培地に浸されたカーボンクロスとした。
【0055】
接続には、直径0.25mmの白金ワイヤー又はステンレス鋼ワイヤーを用いた。特に断りのない限り、560オームの抵抗を、アノード−カソード回路に取り付けた。
【0056】
アノード室及びカソード室は、紫外線照射によって殺菌され、その後、1Lの滅菌水で洗い流され、酢酸塩−フマル酸エステル塩培地で満たされ、アノード室を通過した培地を希釈率0.85h−1で再循環させる200mlの酢酸塩−フマル酸エステル塩培地貯留層に接続された。バクテリア培養の成長は、600nm(A600)で吸光度を測定することによって決定した。A600の培養物が0.2に達すると、培地貯留層は、フマル酸エステル塩を含有しない酢酸塩含有培地と交換された。電流の生産が開始されると、培地は再循環されなくなり、アノード室へ新たな培地が希釈率0.17h−1で連続的に供給された。
【0057】
燃料電池の電圧は、Excelinkが動いているコンピュータに接続された、Keithley datalogger一体型の抵抗器を用いて測定した。電流測定は、ポテンシオスタットの毎秒の出力を、Macintoshコンピュータに接続されたPower Lab 4SPを用いて直接集め、ソフトウエアChart 5.0, ADI instruments製,(Mountain View, CA)でデータを記録することによって行った。
【0058】
実施例3−微生物タンパク質分析
【0059】
電極からタンパク質を抽出するために、カーボンクロスアノード全体を取り外し、凍結乾燥した。J. E. Butler et al., J. Bacteriology, 2004, 186:4042-4045に記載されている等張洗浄バッファ20mLの中で、棒状グラファイトの表面をかみそりの刃で削り、重炭酸塩をMOPSと取り換えるために調整された。剥離物は4000rpmで15分間に亘って遠心分離機にかけられ、そのペレットを凍結乾燥した。カーボンクロス又はグラファイト剥離物を、2−20mLの5%SDS中にセットし、その後、voltex(2分間)し、超音波で分解(1分間)し、蒸気に当てた(5分間)。プランクトンバイオマスのため、アノード全体の体積は、4000rpmで15分間に亘る遠心分離によって集められた。タンパク質は、Sigma, St. Louis, MOによって提供された試薬を用いたビシンコニン酸法によって測定した。
【0060】
実施例4−反応物質分析
【0061】
酢酸塩や他の有機酸は、Bio-Rad製,(Hercules, CA)から市販されているfast-acidカラムを用いたHPLCによって測定し、測定では8mmのHSO溶離液を用い、紫外検出は210nmで行った。Fe(II)は、Stookey, L.L., 1970, Analytical Chemistry, 42:779-781に記載されているferrozine法によって測定した。
【0062】
実施例5−共焦点顕微鏡
【0063】
アノード表面の生体膜を分析するため、燃料電池を分解し、表面に触れずにカーボンクロスアノードを取り外した。その後、アノードは、付着生体膜の一部ではない遊離したセルや破片を取り除くため、淡水培地に浸した。アノード生体膜は、Molecular Probes, Inc.製,(Eugene, OR)から市販されている、LIVE/DEAD BacLightバクテリア生存率キットL7012を用いて蛍光染色した。メーカーの取扱説明書は、以下の例外とともに理解される:染料は、バクテリア懸濁液ではなく淡水培地で混合され、培養段階後に、余分な染料を取り除くため、5分間に亘ってサンプルを再び淡水培地に浸される。染色後の濡れている間、ガラスのカバースリップの表面に追加され、Molecular Probes, Inc., Eugene, ORから市販されている、ProLong Antifade剤P7481が数滴添加された生体膜に支障を来たさないように、アノードは静置された。生体膜構造は、10倍、25倍、40倍、63倍の対物レンズを装備したZeiss LSM510 Meta倒立顕微鏡と一体になった共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)によって観察した。二次元画像及び三次元画像が作成され、生体膜の厚さはZeiss LSM Image Browser v.4.0.0.157を使って計算した。それぞれのサンプルに対して、2から7の視野を観察し、観察可能な各々のカーボンクロス繊維に沿って少なくとも3箇所で生体膜を測定することによって、平均生体膜厚さを計算した。
【0064】
実施例6−アノードに配置されたGeobacter sulfurreducensの実質的な純個体群
【0065】
実施例2で説明した空気カソードを含むミニスタック燃料電池へGeobacter sulfurreducensを接種すると、図2Aに示すように、時間の経過とともに電流が増加し、0.58A/mに相当するca.0.75mAで安定した。電流が最大になると、燃料がアノード室へ供給される間はいつまでも最大電流を維持することができる。白金が取り付けられた空気カソードをカーボンクロスと交換して、カソード室が50mMのシアン化鉄で満たされると、図2Bに示すように、電流生産量は0.7A/mに相当する0.9mAとなった。これらの結果は、アノードに配置されたG. sulfurreducensの実質的な純個体群が、アノードへの電子の移動を可能にすることを示している。空気カソードを具備する形態の燃料電池とカソードに固体の電子受容体を有する燃料電池との比較は、アノードに配置されたG. sulfurreducensの実質的な純個体群に起因する限界ではなく、これら二つの燃料電池の相違に対する電気化学的な根拠を示唆する。
【0066】
実施例7−相対的な電極の大きさ
【0067】
カソードがシアン化鉄である系において、アノードの大きさは系によって変わり、図3に示すように、アノードの大きさは全体の電流生産に直接関係する。しかしながら、電流密度は、アノードが最初の1/8の大きさとなるまで増加した。この1/8の大きさにおける電流密度は、ポテンシオスタットを使ってアノードが平衡状態に達した時に観察された値に匹敵する。アノードが1/8の大きさである場合と同様の電流密度は、空気カソードをシアン化鉄で満たされたカソード室に置き換えた場合にも観察される。560オームの外部抵抗が取り付けられた非カソード限定系における4.56A/mの電流密度は、1.88W/mの出力密度に相当し、アノード室の単位体積あたりの出力は43W/mに相当した。
【0068】
実施例8−電圧と出力
【0069】
図4に示すように、外部抵抗を10−100000オームの範囲に設定して、FeCNカソードを有する燃料電池の電圧及び出力生成を測定した。最大の出力密度は、燃料電池が最初に培養され順応される時の外部抵抗である560オームにとても近い、外部抵抗が700オームの時に測定された。
【0070】
実施例9−効率
【0071】
ミニスタック燃料電池が最大出力で安定すると、廃水中の酢酸塩濃度は、長期に亘ってca.8.8mMで安定し、流入酢酸塩濃度と流出酢酸塩濃度との差や供給される酢酸塩の流量から、酢酸塩の消費速度を計算することが可能になる。酢酸塩の消費と電気として回収される電子との比較から、FeCNカソードが用いられると、消費される酢酸塩から生じた電子の55%が電気に変換されることが示唆された。電気へ変換されずに消費された酢酸塩のうち、どの位の割合が、時間とともに微生物燃料電池へ取り込まれるかを測定するため、酢酸塩の供給を、成長培地から、細胞増殖を抑える重炭酸塩緩衝器へと切り替えた。この条件で、消費される酢酸塩から生じた電子の65%が電流に変換された。アノード室へと漏れる酸素の潜在的効果を評価するため、ミニスタックを嫌気性チャンバーに配置した。この条件で、成長培地や緩衝器の存在下における効率はca.100%であった。
【0072】
実施例10−アノード生体膜特性
【0073】
本実施例では、実質的にGeobacter sulfurreducensの純個体群からなる生体膜が、ミニスタック燃料電池に含まれるカーボンクロスアノードの繊維の表面を完全に覆っている形態について説明する。フルサイズのアノードに配置された生体膜は、2.2−8.5μm厚の融合膜であった。カソード制限が1/8サイズのアノードとともに排除されると、生体膜は、フルサイズのアノードに配置された生体膜よりも3−18μm厚くなった。カソード制限系の生体膜と同じように、カソード制限のない系の生体膜は比較的均一であった。しかしながら、場合によっては、生体膜がはびこった主としてカーボンファイバーの間の空間に、最大高さが10μm程度の小さな柱が観察された。
【0074】
追加実験で、大きさが0.635cm×1.27cmの固体グラファイトの棒状アノードを有するミニスタック燃料電池を、同じ大きさで1/8サイズのカーボンクロスアノードを有するミニスタック燃料電池と比較した。固体グラファイトの棒状アノードでは電流密度が3.1A/mに達した。固体グラファイトアノードの生体膜は、ca.50μm厚の柱によって大いに分化された。
【0075】
実施例11−「Hセル」形態の燃料電池と「ミニスタック」形態の燃料電池との比較
【0076】
「Hセル」燃料電池は、カチオン交換膜を有するブリッジによって二室が接続されていることを特徴とする、二室型燃料電池である。「H」という文字の外観を有する燃料電池となるように、ブリッジの高さは二室の高さよりも低い。「Hセル」形態の燃料電池と「ミニスタック」形態の燃料電池との比較により、本発明に係るミニスタック燃料電池で空隙体積/重さが低減され、空気カソードが備えられる場合もカソードに固体電子受容体が備えられる場合も、電流及び出力密度が改善されることが実証された。図5は、いずれも単室型のミニスタック空気カソードを用いたBが、カソード室に固体の電子受容体FeCNが配置された二室型のCと同様に、Hセル形態のAと比較して出力密度が増加する様子を示している。表1は、空気カソード又はカソードに配置された固体電子受容体を有するミニスタック燃料電池を用いることで、Hセル形態よりも改善した電流密度及び出力密度を示している。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例12−連続運転
【0079】
図6は、アノードにGeobacter sulfurreducensの実質的な純個体群を具備し、燃料電池を「バッチ」モードで運転したミニスタック形態において、発生した電流を時間とともに示している。0時間から約400時間まで用いたアノード電解質は、約400時間経過した時点で、新しいアノード電解質に交換した。培地の交換直後に、発生電流は低下し、その後、急速に以前のレベル又はそれ以上にまで増大した。これは、アノードの微生物個体群は培地交換によって洗い流されず悪影響も与えられないことを示している。本発明に係る微生物燃料電池は、易酸化性の有機材料(10mMの酢酸塩)が供給される間は自立するので、長期に亘って動作すると考えられる。
【0080】
実施例13−連続運転
【0081】
図7は、電流生成と微生物タンパクの量、すなわち、アノードの微生物の量との直接的な関係を示している。
【0082】
本明細書で言及した特許や出版物は、参照して援用されるために、一つ一つの文献が明確に個々に示されたのと同程度に参照されることによって、本明細書に援用される。
【0083】
本明細書で説明した構成や方法は、好ましい実施形態や典型例の現時点における表現であり、発明の範囲がこれらに限定されることを意図していない。当業者は、変更や他の用途に想到すると考えられる。クレームで説明される発明の範囲から逸脱しなければ、そのような変更や他の用途もすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一実施形態例にかかる本発明の燃料電池の分解図を示している。
【図2A】白金を含有する空気カソードを具備しGeobacter sulfurreducensを接種した燃料電池のca.を0.75mA、0.58A/mに固定した場合に、時間とともに増加する電流の様子を示すグラフである。
【図2B】Geobacter sulfurreducensを含有するアノード、カソード側に配置されたカーボンクロス、及び、50mMのシアン化鉄を含有させたカソードを備える燃料電池に、0.9mA、0.7A/mの電流を流した場合における、電流と時間との関係を示すグラフである。
【図3】アノードの大きさ及びカソードの大きさの比率を変動させた場合における、電流及び電流密度の影響を示すグラフである。
【図4】外部抵抗範囲の全域で測定された、FeCNを含有させた形態のカソードを有する燃料電池の、電圧及び出力生成を示すグラフである。
【図5】空気カソードを有する単室型燃料電池Bと、二室を有しカソード室に固体の電子受容体を有する燃料電池Cと、を用いて得られた出力密度とHセル形態のAとの比較を示すグラフである。
【図6】Geobacter sulfurreducensの実質的な純個体群が配置されたアノードを有する本発明の実施形態にかかる燃料電池の、電流と時間との関係を示すグラフである。
【図7】電流生成とアノードに配置された微生物タンパクの量との直接的な関係を示すグラフである。この図は、Reguera, G., Nevin, K.P., Nicoll, J.S., Covalla, S.F., Eoodard, T.L. and Lovley, D.R.、「2006 Biofilm and nanowire production leads to increased current in Geobacter sulfurreducens Fuel Cells」、Appl. Environ. MicroBiol. 72:7345-7348から引用した。
【図8】ミニスタック微生物燃料電池における固体グラファイトアノードの表面に配置されたGeobacter sulfurreducensの共焦点レーザー走査顕微鏡観察結果を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
10…燃料電池
12…アノード
13…アノード支持材
14…カソード
15…カソード支持材
16…カチオン交換膜
18…アノード室
19…アノード室支持材
20…カソード室
22、24…保護壁
26、28、30…ガスケット
32…吸気通路
34…排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード表面領域を有するアノードと、カソード表面領域を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、前記アノードの上に配置されるとともに複数のelectricigenic微生物の物質移動を向上させ微生物燃料電池の出力密度を増大させる複数のコロニーを、互いに間隔を開けて形成する複数のelectricigenic微生物と、を含む、微生物燃料電池。
【請求項2】
前記複数のコロニーは、20μm〜50μmの高さを有する柱構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項3】
前記複数のコロニーは、40μm以下の間隔を有することを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項4】
前記複数のelectricigenic微生物は、前記アノード表面領域に少なくとも約0.075mg/cmのタンパク質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項5】
前記複数のelectricigenic微生物は、1μmより大きい厚さを有する生体膜を形成することを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項6】
前記複数のelectricigenic微生物は、前記複数のelectricigenic微生物間における電子の運搬を可能にする線毛を形成することを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項7】
前記複数のelectricigenic微生物が、Geobacteraceaeであることを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項8】
前記複数のelectricigenic微生物は、実質的にelectricigenic微生物の純個体群であることを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項9】
前記複数のelectricigenic微生物は、実質的にGeobacter sulfurreducensの純個体群であることを特徴とする、請求項8に記載の微生物燃料電池。
【請求項10】
前記カソードが空気カソードであることを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項11】
前記燃料電池が100mA/m〜4.56A/mの出力密度を有することを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項12】
前記アノードは、前記複数の微生物に対して実質的に非毒性であることを特徴とする、請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項13】
前記アノードは、グラファイト、多孔質グラファイト、充填グラファイト粉末、カーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンウール、導電性金属、導電性ポリマー、及び、これらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項15に記載の微生物燃料電池。
【請求項14】
アノード表面領域を有するアノードと、カソード表面領域を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、前記アノードに配置されるとともに複数のelectricigenic微生物の物質移動を向上させ微生物燃料電池の出力密度を増大させる柱を有する複数のコロニーを、互いに間隔を開けて形成する複数のelectricigenic微生物と、を含む、微生物燃料電池。
【請求項15】
アノード表面領域を有するアノードと、カソード表面領域を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたカチオン交換膜と、前記アノードに配置されるとともに複数のelectricigenic微生物の物質移動を向上させ微生物燃料電池の出力密度を増大させる複数のコロニーを、互いに間隔を開けて形成する複数のelectricigenic微生物と、を含み、前記複数のelectricigenic微生物は、1μmより大きい厚さを有する生体膜を形成することを特徴とする、微生物燃料電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−288198(P2008−288198A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−101376(P2008−101376)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(508108718)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイテッド (4)
【出願人】(508108741)ユニヴァーシティ オブ マサチューセッツ (1)
【Fターム(参考)】