説明

微粉炭の分配供給方法

【課題】高炉の羽口への微粉炭の分配供給方法において、微粉炭の流量測定及び流量調整の機能を維持しつつ、そのコストを低減する。
【解決手段】複数の分配支管3bの全数の微粉炭流量を粉体流量測定手段9で測定してそれぞれの測定値を比較手段11によって比較し、その比較結果に基づいて全数の分配支管3bの前記測定値が同一になるように粉体流量調整手段10によって調整する工程と、供給タンク1の重量減少速度をロードセル1bによって測定する工程とを並行して実施し、供給タンク1の重量減少速度を分配支管3bの全本数で割ることによって分配支管3bの微粉炭流量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の羽口から微粉炭を吹き込む際に、複数ある高炉の羽口に微粉炭を分配供給する微粉炭の分配供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高炉の羽口から微粉炭を吹き込む操業方法が広く採用されている(例えば特許文献1)。微粉炭はコークスの代替燃料としてコスト的にメリットが大きくかつ発熱量が良好なため、微粉炭の吹き込み量は増加する傾向にある。
【0003】
高炉には多数、例えば16〜42個の羽口が配置されており、各羽口から、系外から搬送されてきた微粉炭が吹き込まれるが、各羽口からの微粉炭の吹き込み量が均一にならないと、高炉内での均一な精錬反応が起こらず、生産性の低下要因となる。したがって、微粉炭の吹き込みにおいては、各羽口からの微粉炭の吹き込み量を均一にすることが重要な課題であり、この課題を解決するために従来から種々の研究・改良が図られている。
【0004】
その一例を図6を参照して説明する。図6において、微粉炭は、供給タンク1から図示しない気体圧送装置により供給管2を介して分配器3に圧送される。分配器3は、その下部の受入部3aから微粉炭を受け入れ、その側面の分配支管3bから微粉炭を排出する。分配支管3bの先端には吹き込みノズル4が設けられており、この吹き込みノズル4の先端から微粉炭が吹き込まれる。吹き込みノズル4の先端は、熱風環状管5から分岐した送風支管5a内に位置しており、微粉炭は送風支管5aから供給される熱風と共に、高炉6の下部に配置した羽口6aから高炉6内に吹き込まれる。
【0005】
上述のとおり高炉には多数、例えば16〜42個の羽口が配置されており、分配支管3b、吹き込みノズル4及び送風支管5aは各羽口に対応させて羽口の数と同数設けられる。つまり、分配器3は、複数の分配支管3bを介して高炉の複数の羽口6に微粉炭を供給する。
【0006】
ここで、分配器3から吹き込みノズル4までの分配支管3bは、例えば、高炉6及び分配器3が配置されている当該設備のレイアウト、周囲の関連設備の設置状況等により、その長さ、形状(直線・曲線)が相違し、それぞれの分配支管3aにおける圧力損失が相違するため流量が一定ではない。
【0007】
このため図6の例では、複数の分配支管3bのそれぞれに粉体流量測定手段7及び粉体流量調整手段8を設け、粉体流量測定手段7によってそれぞれの分配支管3bにおける微粉炭流量の絶対値を把握し、粉体流量調整手段8によってそれぞれの分配支管3bにおける微粉炭流量を均一になるように調整している。
【0008】
粉体流量測定手段7としては、微粉炭流量の絶対値を把握する必要があることから、従来から測定精度が高いものが使用されている。高精度の粉体流量測定手段としては、特許文献2に開示されているような透過及び位相差型のマイクロ波式の粉体流量測定装置が知られている。このほか、静電容量式の粉体流量測定装置が知られている。
【0009】
一方、粉体流量調整手段8としては、一般的な粉体流量調整バルブのほか、特許文献3に開示されているような分配支管進退手段が知られている。図6の例は分配支管進退手段を適用したものである。この分配支管進退手段は分配器3内部に分配支管3bの端部を中心方向に進退させ、分配支管3bの吸い込み点を中心方向に変えることで、その分配支管3bの固気濃度を調整し、粉体流量を調整するものである。
【0010】
ここで、従来、粉体流量測定手段7として使用されている透過及び位相差型のマイクロ波式、あるいは静電容量式の粉体流量測定装置はいずれも高価な計器である。したがって、従来の微粉炭の分配供給設備においては図6で説明したようにすべての分配支管3bに粉体流量測定手段7を設けるようにしていることから、設備コストが多大になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−27265号公報
【特許文献2】特開2000−146646号公報
【特許文献3】特開平3−26609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、高炉の羽口への微粉炭の分配供給方法において、微粉炭の流量測定及び流量調整の機能を維持しつつ、そのコストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、微粉炭を供給タンクから供給管を介して分配器に受け入れ、分配器から複数の分配支管を介して高炉の複数の羽口に供給する微粉炭の分配供給方法において、前記複数の分配支管の全数の微粉炭流量の大小を測定してそれぞれの測定値を比較し、その比較結果に基づいて全数の分配支管の前記測定値が同一になるように調整する工程と、前記供給タンクの重量減少速度を測定する工程とを並行して実施し、供給タンクの重量減少速度を分配支管の全本数で割ることによって分配支管の微粉炭流量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、供給タンクの重量減少速度を分配支管の全本数で割ることによって分配支管の微粉炭流量を算出するので、全ての分配支管の微粉炭流量を同一にする際の微粉炭流量の測定は、微粉炭流量の正確な絶対値を求めるものではなく、相対的に大小を比較可能なものであれば良い。したがって、それぞれの分配支管の微粉炭流量の大小の測定には、簡易的で安価な流量測定装置を使用することができ、設備コストを低減できる。
【0015】
一方、微粉炭流量の正確な絶対値は、上述のとおり供給タンクの重量減少速度に基づき把握できるので、測定精度の高い粉体流量測定手段をすべての分配支管に設けていた従来の方法と同様の微粉炭の流量測定及び流量調整の機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る微粉炭の分配供給方法を実施する設備の一例を示す。
【図2】分配支管の配置例を示す。
【図3】粉体流量調整手段の一例を示す。
【図4】粉体流量調整手段の他の例を示す。
【図5】比較手段による比較表示例を示す。
【図6】従来の微粉炭の分配供給設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明に係る微粉炭の分配供給方法を実施する設備の一例を示す。図1において、微粉炭は、供給タンク1から図示しない気体圧送装置により供給管2を介して分配器3に圧送される。供給タンク1は複数設けられており、切り替え弁1aの操作により使用する供給タンク1を選択するようにしている。また、それぞれの供給タンク1にはロードセル1bが設けられており、このロードセル1bによって供給タンク1の重量減少速度を測定するようにしている。
【0019】
分配器3は、その下部の受入部3aから微粉炭を受け入れ、その側面の分配支管3bから微粉炭を排出する。分配支管3bの先端部分の構成は図6と同様である。すなわち、分配支管3bの先端には吹き込みノズル4が設けられており、この吹き込みノズル4の先端から微粉炭が吹き込まれる。吹き込みノズル4の先端は、熱風環状管5から分岐した送風支管5a内に位置しており、微粉炭は送風支管5aから供給される熱風と共に、高炉6の下部に配置した羽口6aから高炉6内に吹き込まれる。
【0020】
高炉には多数、例えば7〜42個の羽口が配置されており、分配支管3bは各羽口に対応させて羽口の数と同数設けられる。つまり、分配器3は、複数の分配支管3bを介して高炉の複数の羽口に微粉炭を供給する。分配支管3bは図2に示すように、分配器3の本体部分から例えば放射状に延びるように設けられる(図2は分配支管3bを16本設けた例を示す。)。
【0021】
再度図1を参照すると、複数の分配支管3bのそれぞれに、微粉炭流量を測定する粉体流量測定手段9と微粉炭の流量を調整する粉体流量調整手段10とが設けられている。さらに、複数の分配支管3bのそれぞれに設けた粉体流量測定手段9によって測定した微粉炭流量を相互に比較する比較手段11が設けられている。
【0022】
粉体流量測定手段9による微粉炭流量の測定は、微粉炭流量の正確な絶対値を求めるものではなく、相対的に比較可能なものであれば良い。したがって、粉体流量測定手段9としては簡易的で安価な流量測定装置を使用することができる。具体的には、ドップラー型のマイクロ波式の粉体流量測定装置を使用できる。ドップラー型のマイクロ波式の粉体流量測定装置は、粉体搬送管に設置した1ヶ所の検出部にてμ波ドップラー効果を利用し、流体粒子によって反射された周波数及び振幅の計測値から粉体流量を測定するものである。
【0023】
図3は、図1の実施例で採用した粉体流量調整手段10を示す。この粉体流量調整手段10は、分配器3内部に分配支管3bの端部を中心方向に進退させる分配支管進退手段からなる。すなわち、この分配支管進退手段は分配器3内部に分配支管3bの端部を中心方向に進退させ、分配支管3bの吸い込み点を中心方向に変えることで、その分配支管3bの固気濃度を調整し、粉体流量を調整する。分配支管3bの端部を中心方向に進退させる機構としては、手動ジャッキ等を使用して分配支管3bを伸縮させるようにすることができる。
【0024】
なお、粉体流量調整手段としては、上述の分配支管進退手段を設けるほか、図4に示すように一般的な粉体流量調整バルブ10aを設けることもできる。
【0025】
比較手段11は、全数の分配支管3bに設けた粉体流量測定手段9によって測定した微粉炭流量の大小を相互に比較する。実施例では、図5に示すように全数の分配支管3bに設けた粉体流量測定手段9によって測定した微粉炭流量の大小をレーダーチャートとして表示し、比較するようにしている。
【0026】
以上の構成において、本発明においては、複数の分配支管3bの全数の微粉炭流量の大小の値を粉体流量測定手段9で測定して比較手段11によって比較し、その比較結果に基づいてそれぞれの分配支管3bの微粉炭流量が同一になるように粉体流量調整手段10によって調整する工程と、供給タンク1の重量減少速度をロードセル1bによって測定する工程とを並行して実施し、供給タンク1の重量減少速度を分配支管3bの全本数で割ることによって分配支管3bの微粉炭流量を算出する。
【0027】
このように本発明では、供給タンク1の重量減少速度を分配支管3bの全本数で割ることによって分配支管3bの微粉炭流量を算出するので、それぞれの分配支管3bの微粉炭流量を同一にする際の微粉炭流量の測定は、微粉炭流量の正確な絶対値を求めるものではなく、相対的に大小を比較可能なものであれば良い。したがって、それぞれの分配支管3bの微粉炭流量の大小の測定には、簡易的で安価な流量測定装置を使用することができ、設備コストを低減できる。また、微粉炭流量の正確な絶対値は、上述のとおり供給タンク1の重量減少速度に基づき把握できる。
【0028】
以上の本発明の分配供給方法を実機に適用したところ、それぞれの分配支管3bにおける微粉炭流量を±5%の精度で均一に調整することができた。
【符号の説明】
【0029】
1 供給タンク
1a 切り替え弁
1b ロードセル
2 供給管
3 分配器
3a 受入部
3b 分配支管
4 吹き込みノズル
5 熱風環状管
5a 送風支管
6 高炉
6a 羽口
7 粉体流量測定手段
8 粉体流量調整手段
9 粉体流量測定手段
10 粉体流量調整手段(分配支管進退手段)
10a 粉体流量調整バルブ(粉体流量調整手段)
11 比較手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を供給タンクから供給管を介して分配器に受け入れ、分配器から複数の分配支管を介して高炉の複数の羽口に供給する微粉炭の分配供給方法において、
前記複数の分配支管の全数の微粉炭流量の大小を測定してそれぞれの測定値を比較し、その比較結果に基づいて全数の分配支管の前記測定値が同一になるように調整する工程と、前記供給タンクの重量減少速度を測定する工程とを並行して実施し、供給タンクの重量減少速度を分配支管の全本数で割ることによって分配支管の微粉炭流量を算出することを特徴とする微粉炭の分配供給方法。
【請求項2】
前記複数の分配支管の全数の微粉炭流量の大小を、ドップラー型のマイクロ波式の粉体流量測定装置によって測定する請求項1に記載の微粉炭の分配供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−12324(P2011−12324A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158938(P2009−158938)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】