説明

微粒化装置

【課題】壁体の一部に液状原料の導入口を有する圧力容器と、同圧力容器に内設された、前記液状原料の圧入用細孔が管壁に多数穿設された有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部と、同圧力容器外に延設された、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部以外の残部とから構成されてなる液状物の微粒化装置を改良して、均一化された粒径の微粒子液を取得できるようにする。
【解決手段】前記液状物の微粒化装置において、前記導入口から前記多数の各圧入細孔までの各々の距離をすべて同一となるように構成することにより、距離の違いによる加圧力の差異をなくし、前記円筒体又は角筒体の延設部から均一化された粒径の微粒子液を容易に取得できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、気体−液体、液体−液体及び固体−液体系における各種の物質を原料として、乳化の状態で、ミクロン以下の粒子に均一に微粒化する微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、微粒化装置には、被微粒化原料の入り口を有する圧力容器内に球状の容器を内設し、同球状容器の壁体に外周面からその中心に向けて複数の圧入用細孔を穿設してなるもの、
また、原料供給管を具備する圧力容器内に長い管を挿入し、この長い管の内孔に交差する複数の細孔を長手方向に所定レベル数設け、原料を前記原料供給管から圧力容器内に供給し前記細孔及び内孔を経て微粒化し取り出すようにした微粒化装置が知られている。
【特許文献1】特開平7−100404号公報
【特許文献2】特開平10−296114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の装置は、前者は圧力容器の入り口管から、内部の球状容器の外周に穿設された複数の各孔に到る距離は、長短バラバラであり、各孔への加圧力には差があり、その結果微粒化の処理により得られる粒子径は均一にならない問題があった。
また、後者は、微粒化される容量は、レベル数に対応し管長手方向の全ての各レベルにおいて調整が行われるため、装置は長い管を要し、小型装置には適用できず、
また、圧力容器の入り口から各複数孔に到る距離は、各レベルにより長短の差があり、
微粒化処理により得られる粒子径は均一にならない問題があった。
さらに、管の外周から中心に向かって4方から直交し中心の内孔で、原料同志が互いに衝突するように配設されているため、衝突回数にも制約があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記に鑑み、本発明者等は鋭意研究の結果下記の手段により、前記課題を解決した。
(1)壁体の一部に液状原料の導入口を有する圧力容器と、同圧力容器に内設された、前記液状原料の圧入用細孔が管壁に多数穿設された有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部と、同圧力容器外に延設された、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部以外の残部とから構成され、かつ、前記導入口から前記多数の各圧入用細孔までの各々の距離が、すべて同一となるように構成されてなり、
前記液状原料は前記圧力容器の導入口から入って、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の圧入用細孔から筒体内に圧入されて微粒化され、得られる同微粒化物が前記円筒体又は角筒体の延設部から導出されることを特徴とする液状物の微粒化装置。
(2)液状原料が、水と水に難溶性の油性物との混合物であり、得られる微粒化物がエマルジョンであることを特徴とする前記(1)記載の液状物の微粒化装置。
(3)液状原料が、水と水に難溶性の燃料油との混合物であり、得られる微粒化物がエマルジョン燃料であることを特徴とする前記(1)記載の液状物の微粒化装置。
(4)圧入用細孔が、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に軸線方向と直角に、かつ環状に穿設されてなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の液状物の微粒化装置。
(5)圧入用細孔が、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に、求心方向に向かって放射状に配列して穿設されてなり、各圧入用細孔から圧入されて筒内に射出される液状物の各射出液流同志が筒内で互いに衝突する衝突効果によって更に微粒化されることを特徴とする前記(4)に記載の液状物の微粒化装置。
【発明の効果】
【0005】
1、本発明の請求項1の発明によれば、
圧力容器の液状原料の導入口から前記筒体に穿設された多数の各圧入用細孔までの各々の距離が、すべて同一となるように構成されているため、各圧入用細孔に対する液状原料の加圧力に差が生ぜず、均一化された粒径の微粒子液を取得することができる。
2、また、圧入用細孔が、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に軸線方向と直角に、かつ環状に穿設されてなり、更に前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に、求心方向に向かって放射状に配列して穿設されてなる本願発明によれば、
各圧入用細孔から圧入されて筒内に射出される液状物の各射出液流同志が筒内で互いに衝突する衝突効果によって更に細かく微粒化される。
3、さらに、液状原料として、水と水に難溶性の燃料油との混合物を用いれば、均一化された微細な粒径のエマルジョン粒子からなる長い乳化状態保持時間のエマルジョン燃料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて以下に示す。
図1は微粒化装置1の正面外観図であり、圧力容器2に有底筒体3を挿嵌した図である。
図2は、有底筒体の外観図で、図(A)は正面図、図(B)は左側面図、図(C)は右側面図を示す。そして図3は、図1の縦断面図である。また、図4は図3のA−A’断面図である。
図5は導入孔と多数の圧入用細孔との関係位置及び作用を示す原理図である。
図6は有底筒体を六角形にしたときの実施例の説明図で、(A)図は外観斜視図、(B)図は圧入用細孔 位置の説明図を示す。
【0007】
そして、図中、1は微粒化装置、2は圧力容器、3は有底筒体、4はナット状締め付け部、5はOリング嵌着部、6はフランジ、7は螺合部ねじ山、8は有底筒体の外周、9は圧入用細孔 、10はナットのねじ山部、11は有底筒体の内周、12は有底外側、13はOリング、14は原料導入口、15は出口、16は有底筒体の有底内部、17は圧力容器の内径、18は導入口ねじ部、19は原料圧入の方向、20は分流離した原料の圧入の方向、21は処理後の原料の出口方向、22は圧入用細孔の中心点、23は仮想円、24は有底6角筒体を示す。
【0008】
そこで、図によって説明すると、有底筒体3は、圧力容器2の内側に嵌挿されており、
有底筒体3には、液状原料導入口14から同一距離を保持する位置に複数の圧入用細孔9が穿設されている。そして筒体3の壁には、筒体に直交して、リング状に等間隔でその中心(22)に向けて放射状に、複数の圧入用細孔 9・・が穿設されている。
液状原料(一次乳化混濁液)は圧力容器2原料導入口14から圧入され、筒体内部で粒子粒径が均一化された微粒子が出口15より取り出される。
前記図3は、圧力容器2と有底筒体3との組図であり、有底筒体3は、圧力容器2の内側に、両者の螺合部ねじ山部7の部分で螺合され、さらに圧力容器2の先端の内周は押圧されたOリング13によって、有底筒体3のナット状締め付け部4の裏面に当接しており、原料導入口14から、圧入される50〜100気圧に耐えられるようになっている。
【0009】
そして、外部から液状の原料導入口14に圧入された液状原料(一次乳化液)は、
前記有底筒体3の複数の圧入用細孔9を通過して、有底筒体の内周11の径を有する常圧の筒体内の中心に向け放出される。
そして、この際、そのオリフィス(圧入用細孔9)で生ずる乱流によるキャビテーション効果並びに、求心方向に放射状に配列された有底筒体3の中心部で乳化液同志が互いに衝突し、その衝突効果で微粒化されると共に、
原料導入口14から、有底筒体3の外周に穿設された複数の圧入用細孔9に到る距離が、いずれの圧入用細孔9に対しても同一である(図5及び図6参照)ため、
有底筒体3の内部において場所による加圧の差がなく、粒径が均一化して微粒子化された乳化液を出口15から取得することができる。
その結果、従来の方式に比し表1、表2に示すごとき、差異が生じた。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
表1は多段孔方式(特許文献2記載装置による)と直孔方式(本発明装置による)における微粒化処理量と離水時間(乳化状態保持時間)を示す。
表2はエマルジョン燃料分析結果を示す。
表1、表2からみて、本願発明によれば、単位時間分当たりの微粒化処理量は約1.3倍に増加し、乳化状態保持時間(離水時間)も7倍に増加しまた、乳化状態の均一性(散乱強度分布と粒径値)も向上することが判った。すなわち、粒度分布も狭くなり、粒径も均一化され、かつ微粒化されることが判った。
【0013】
図5は導入孔と多数の圧入用細孔との関係位置及び作用を示す原理図であり、
図示したように、原料導入口14から原料圧入の方向19に圧入された原料は、圧力容器2と有底筒体3との空隙(貯留部)を介して、各圧入用細孔9の入口に達するが、
前記有底筒体は、円筒体又は、正3角形以上の正多角形状の筒体であり、前記複数個の圧入用細孔9は、円筒体では、円筒上の外周にリング状に等間隔に穿設され、
また、正多角形状の筒体の場合は、正多角形の各頂点又は、正多角形の各辺の真ん中及び、円(仮想)が各辺をよぎる2箇所のいずれかに穿設されているため、前記原料導入口14から各圧入用細孔9の入口に達する距離は等間隔である。
【0014】
図6は有底筒体を六角形にしたときの実施例の説明図で、
(A)図は外観斜視図、(B)図は圧入用細孔 位置の説明図を示す。
図において、23は仮想円、24は有底6角筒体を示す。
本事例は、正6角形(正6角形筒)を、仮想の円23がその各辺をよぎる2箇所の、合計12ヶの圧入用細孔 9が穿設されている。
そして、前記導入口14は、その中心が有底筒体3の有底部12に対し、真正面に配設されている(図5)ため、前記導入口14に対する各圧入用細孔 9との距離は同一である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】微粒化装置の正面外観図
【図2】有底筒体の外観図
【図3】図1の縦断面図
【図4】図3のA−A’断面図。
【図5】導入孔と多数の圧入用細孔 との関係位置及び作用を示す原理図。
【図6】有底筒体を六角形にしたときの実施例の説明図。
【符号の説明】
【0016】
1:微粒化装置
2:圧力容器
3:有底筒体
4:ナット状締め付け部
5:Oリング嵌着部
6:フランジ
7:螺合部ねじ山
8:有底筒体の外周
9:圧入用細孔
10:ナットのねじ山部
11:有底筒体の内周
12:有底外側
13:Oリング
14:原料導入口
15:出口
16:有底筒体の有底内部
17:圧力容器の内径
18:導入口ねじ部
19:原料圧入の方向
20:分流離した原料の圧入の方向
21:処理後の原料の出口方向
22:圧入用細孔の中心点
23:仮想円
24:有底6角筒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の一部に液状原料の導入口を有する圧力容器と、同圧力容器に内設された、前記液状原料の圧入用細孔が管壁に多数穿設された有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部と、同圧力容器外に延設された、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の頭部以外の残部とから構成され、かつ、前記導入口から前記多数の各圧入用細孔までの各々の距離が、すべて同一となるように構成されてなり、
前記液状原料は前記圧力容器の導入口から入って、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の圧入用細孔から筒体内に圧入されて微粒化され、得られる同微粒化物が前記円筒体又は角筒体の延設部から導出されることを特徴とする液状物の微粒化装置。
【請求項2】
液状原料が、水と水に難溶性の油性物との混合物であり、得られる微粒化物がエマルジョンであることを特徴とする請求項1記載の液状物の微粒化装置。
【請求項3】
液状原料が、水と水に難溶性の燃料油との混合物であり、得られる微粒化物がエマルジョン燃料であることを特徴とする請求項1記載の液状物の微粒化装置。
【請求項4】
圧入用細孔が、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に軸線方向と直角に、かつ環状に穿設されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状物の微粒化装置。
【請求項5】
圧入用細孔が、前記有底円筒体又は有底正多角筒体の壁体に、求心方向に向かって放射状に配列して穿設されてなり、各圧入用細孔から圧入されて筒内に射出される液状物の各射出液流同志が筒内で互いに衝突する衝突効果によって更に微粒化されることを特徴とする請求項4項に記載の液状物の微粒化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−154132(P2009−154132A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337888(P2007−337888)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(502313325)
【Fターム(参考)】