説明

微粒子コーティング有機材料及び有機材料の微粒子コーティング方法

【課題】金属やセラミック、有機物の微粒子を有機材料の表面に固定させた微粒子コーティング有機材料及び有機材料の微粒子コーティング方法を提供するものである。
【解決手段】有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品を基材として、これをシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系の結合剤のうち少なくとも1種の結合剤に、粒径30μm以下の金属やセラミック、有機物の微粒子を分散させた溶媒中に浸漬し、その溶媒中で当該微粒子を基材表面に付着・固定させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やセラミック、有機物の微粒子を有機材料の表面に固定させた微粒子コーティング有機材料及び有機材料の微粒子コーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機材料で形成された繊維を、高比重・高強度の繊維とする方法として、微粒子を最初から有機材料に混合しておき、これを繊維に成型する原着固定法がある(例えば特許文献1)。またPVDやCVD等の「乾式法」による大規模な装置で材料表面に微粒子を固定する方法や、導電性粉末の微粒子を樹脂に含有させて導電性ペーストを作製し、これを基材表面にコーティングしてセラミック多層回路基板を製造する後加工法がある(例えば特許文献2)。
【0003】
しかしながら、予め樹脂に微粒子を含有させる原着固定法では、微粒子を多量に含有させると成型性が悪く、また成型後に比重の調整ができない問題がある。またPVDやCVD、微粒子を樹脂に含有させたペーストを基材表面にコーティングさせる後加工方法は、大掛かりな装置や、焼結装置が必要となり、安価に大量に製造できない問題があった。
【特許文献1】特開2004−169267
【特許文献2】特開2002−16345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を改善し、湿式法( 溶液法) による安価な設備により、有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品の表面に、金属やセラミック、有機物の微粒子を強固に付着・固定して、任意の機能を付加することができる微粒子コーティング有機材料及び有機材料の微粒子コーティング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の微粒子コーティング有機材料は、有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品を基材として、この基材表面にシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系の結合剤のうち少なくとも1種の結合剤を介して、粒径30μm以下の金属やセラミック、有機物の微粒子を固定したことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2記載の有機材料の微粒子コーティング方法は、有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品を基材として、これをシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系の結合剤のうち少なくとも1種の結合剤に、粒径30μm以下の金属やセラミック、有機物の微粒子を分散させた溶媒中に浸漬し、その溶媒中で当該微粒子を基材表面に付着・固定させることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3記載の有機材料の微粒子コーティング方法は、請求項1記載の有機材料の微粒子コーティング方法において、同一または異なる種類の微粒子を分散させた溶媒中に繰り返し浸漬、乾燥させて、基材表面に微粒子を付着・固定させる工程を繰り返して行なうことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4記載の有機材料の微粒子コーティング方法は、請求項2の有機材料の微粒子コーティング方法において、予め基材を強酸と酸化剤を混合した溶媒中に浸漬して基材表面の活性化処理を行なってから、結合剤に微粒子を分散させた溶媒中に浸漬し、その溶媒中で当該微粒子を基材表面に付着・固定させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項5記載の有機材料の微粒子コーティング方法は、強酸として、硫酸や発煙硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸のうち少なくとも1種を用い、酸化剤として過マンガン酸塩や重クロム酸塩のうち少なくとも1種を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載の有機材料の微粒子コーティング方法によれば、繊維やフィルムまたはバルク体成型品などの有機材料の基材の表面に、金属やセラミック、有機物の微粒子などの微粒子を強固に固定して、任意の機能を付加した基材を得ることができる。このため、各種の要望に応じた機能を付加した有機材料製品を得ることができる。
【0011】
また請求項2記載の有機材料の微粒子コーティング方法によれば、繊維やフィルムまたはバルク体成型品などの有機材料の基材の表面に、任意の機能を簡単に付加することができるので、素材の状態だけではなく製品を作成した後にでも、機能を簡単に付加することができる。また本発明方法は、湿式法( 溶液法) により処理することができるので、従来の原着固定法のように成型性の問題がなく、また後加工方法のように大掛かりな装置や焼結装置が不要で、安価に大量に製造することができる。
【0012】
また請求項3記載の有機材料の微粒子コーティング方法によれば、同一または異なる種類の微粒子を分散させた溶媒中に繰り返し浸漬、乾燥させることにより、微粒子コーティング層を厚く形成したり、異なる機能を併せて付加することができる。
【0013】
また請求項4記載の有機材料の微粒子コーティング方法によれば、予め基材を強酸と酸化剤を混合した溶媒中に浸漬して基材表面の活性化処理を行なってから処理するので、微粒子の付着性を向上させて、効率よくコーティングすることができる。
【0014】
また請求項5記載の有機材料の微粒子コーティング方法によれば、強酸として、硫酸や発煙硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸のうち少なくとも1種を用い、酸化剤として過マンガン酸塩や重クロム酸塩のうち少なくとも1種を用いることにより、更に基材表面を効率良く活性化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を図1を参照して詳細に説明する。本発明において各種の機能を付加させる基材としては、有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品である。この繊維としては、単繊維を撚り合わせたものや、繊維を製織した織物、更にこれを縫製した衣服などの製品を基材として用いることができる。
【0016】
また基材となる有機材料としては、ポリエチレンやポリテトラフルオロエチレン等の合成有機材料や、綿や絹等の天然有機材料を用いることができる。天然有機材料は結晶性を有しなくとも良いが、合成有機材料の場合は結晶性を有する事が必要である。微粒子は非晶質のアモルファスの合成有機材料には付着しにくい。合成有機材料の場合、結晶性を有する表面に付着する理由は不明であるが、結晶化度の増加に比例して付着量が増加していくことが判明した。この場合、結晶化度は少なくとも20%以上が望ましく、これ未満であると密着性が低くなる。また本発明に用いる、結合剤としてはシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系のうち少なくとも1種を用いる。
【0017】
また有機物の基材に付着させる微粒子の種類としては、金属やセラミック、有機物の微粒子が用いられる。この金属微粒子としては、例えばタングステン、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、チタン、ケイ素、鉛、ビスマスなどを用いることができる。またセラミック微粒子としては、例えばアルミン酸ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ハフニウム、炭化硼素、炭化チタン、窒化硼素、窒化チタン、炭素などを用いることができる。更に有機物微粒子としては、例えばレーキレッドC(赤色顔料)、フタロシアニンブルー(青色顔料)、メチレンブルー(青色染料)、ルモゲンエロー(蛍光顔料)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(難燃剤)、リン酸トリアリールイソプロピル化物(難燃剤)、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル(UVカット剤)、ポリエチレン、Lーメントール(冷感剤)、カプサイシン(温感剤)などを用いることができる。
【0018】
また付着させる微粒子の粒径は30μm以下が望ましい。微粒子の粒径が30μmを超えると、付着しにくくなって、摩耗により剥離する恐れがあり、また触った時に表面がザラザラした感じになるからで、最も望ましい範囲は15μm以下である。
【0019】
次に本発明方法について説明する。先ず繊維やフィルムまたはバルク体成型品などの有機材料基材を洗浄してから乾燥させる。結合剤は濃度が、0.01〜3%程度の濃度になるように溶媒を調整すると良い。このように調整した溶液に、付着させる微粒子を分散させて溶媒を作製する。この場合、結合剤と微粒子の割合は、結合剤1重量部に対して、微粒子が1〜20重量部が望ましい。
【0020】
このように作成した溶媒を反応容器に入れ、基材を浸漬してマグネチックスターラーで攪拌を行なうと、徐々に基材表面に微粒子が付着していく。この場合、濃度調整した結合剤の溶液に、微粒子と基材を同時に投入しても良い。この後、基材を溶媒から引き揚げて乾燥機などで乾燥させることにより、微粒子が表面に固定されてコーティングされた有機材料が得られる。
【0021】
また微粒子を分散させた溶媒中に浸漬、乾燥する工程を繰り返し行なうことにより、強固な微粒子コーティング層を厚く形成することができる。また異なる微粒子を複合して付着させても良く、例えば先にタングステン微粒子を分散させた溶媒中に浸漬、乾燥させた後、蓄光材の微粒子を分散させた溶媒中に浸漬、乾燥することにより、比重の増加と、表面の蓄光という2つの機能を併せ持った有機材料を製造することもできる。
【0022】
また基材の表面への微粒子の付着性を向上させるために、予め基材を強酸と酸化剤とを混合した溶媒中に浸漬して基材表面の活性化処理を行なってから、結合剤に微粒子を分散させた溶媒中に浸漬する方法でも良い。この場合、強酸としては例えば、硫酸や発煙硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸のうち少なくとも1種を用いることができる、また酸化剤としては例えば、過マンガン酸塩や重クロム酸塩のうち少なくとも1種を用いることができる。
【0023】
このように予め基材を強酸と酸化剤とを混合した溶媒中に浸漬することにより基材表面が荒れた状態となって活性化され、微粒子の付着性を向上させることができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)ポリエチレン製釣り糸の高比重化の実施例。
繊維基材として、市販されているポリエチレン製釣り糸(繊維基材:結晶化度90%の単繊維125dを125本×8本組み紐加工し単繊維計1000本を1本の釣り糸とした物)を用いた。また、微粒子として平均粒径0.6μmのタングステン微粒子を用い、結合剤にシラン系カップリング剤を用いた。
【0025】
初めに基材のポリエチレン製釣り糸をエタノール中で超音波洗浄した後、これを乾燥した。次にビーカーに蒸留水500mlを入れ、これにシラン系カップリング剤2mlを徐々に加え溶媒が白濁から透明になるまで室温中でマグネチックスターラーで良く攪拌した。この溶媒を溶媒Aとする。次に基材の釣り糸1.0g(約10m)と、タングステン微粒子1.0gをビーカー中に同時に加えて約3時間マグネチックスターラーで攪拌すると、徐々に釣り糸の表面にタングステン微粒子が付着した。
【0026】
最後に釣り糸を引き揚げて乾燥機で約12時間乾燥した。このポリエチレン製釣り糸の比重を、精密天秤を使用したアルキメデス法で測定したところ、元の比重0.9のものが1.3に増加した。またタングステン微粒子の密着性は摩擦堅牢度試験機で摩擦に対する染色堅牢度試験(JIS L0849)を行った所、乾燥試験で4級、湿潤試験で4−3級であり、リールで摩耗を受ける釣り糸として密着性も十分であった。
【0027】
(実施例2)ポリエチレン製釣り糸の更なる高比重化の実施例。
上記実施例1で比重1.3にまで高比重化したポリエチレン製釣り糸1.6g(約10m)と、平均粒径0.6μmのタングステン微粒子1.0gとを、前記溶媒Aが500ml入ったビーカー中に同時に投入して、室温中で約3時間マグネチックスターラーで攪拌し、釣り糸表面にタングステン微粒子を更に付着させて積層した。その後、釣り糸を引き揚げ乾燥機で約12時間乾燥した。その結果、釣り糸の比重は1.3から1.7まで更に高比重化することができた。この後、同様に工程を繰り返し行なうことにより、釣り糸の比重を2.6まで高比重化させることができた。
【0028】
(実施例3)釣り糸に蓄光剤を付加して光るようにした実施例。
基材に実施例1と同じポリエチレン製釣り糸(結晶化度90%)を用い、微粒子として蓄光材の平均粒径3.0μmのアルミン酸ストロンチウム、結合剤にチタネート系カップリング剤を用いた。
【0029】
初めに基材の釣り糸をエタノール中で超音波洗浄した後、乾燥した。次にビーカーに蒸留水150mlを入れ、結合剤2mlを徐々に加え溶媒が白濁から透明になるまで室温中でマグネチックスターラーで良く攪拌した。この溶媒を溶媒Bとする。次に基材の釣り糸1.0g(約10m)と平均粒径3.0μmのアルミン酸ストロンチウム微粒子0.2gをビーカー中に同時に加え約12時間マグネチックスターラーで攪拌しながら釣り糸表面にアルミン酸ストロンチウム微粒子を付着・固定させた。最後に釣り糸を引き揚げ乾燥機で乾燥した。この釣り糸は、表面に蓄光材微粒子がコーティングされているので、夜釣りなどの暗闇の中で青色に発光して釣り糸の状態をはっきり確認することができた。また蓄光材微粒子の密着性は摩擦堅牢度試験機で摩擦に対する染色堅牢度試験(JIS L0849)を行った所、乾燥試験で4級、湿潤試験で4−3級であり、リールで摩耗を受ける釣り糸として密着性も十分であった。
【0030】
(実施例4)釣り糸の高比重化と蓄光化の実施例。
基材として実施例1と同じポリエチレン製釣り糸、結合剤としてシラン系カップリング剤を用いた。初めに基材の釣り糸をエタノール中で超音波洗浄して乾燥した後、実施例1と同様の手法で平均粒径0.6μmのタングステン微粒子1.0gと釣り糸1.0g(約10m)を溶媒Aが500ml入ったビーカーの中に同時に投入して約1時間マグネチックスターラーで攪拌しながらタングステン微粒子を付着させた。この後、釣り糸を引き揚げて乾燥機で乾燥した。比重は0.9から1.1まで高比重化した。
【0031】
次に乾燥後の釣り糸1.1gと実施例3と同じ平均粒径3.0μmの蓄光剤のアルミン酸ストロンチウム微粒子0.2gを溶媒Aが500mlの入ったビーカー中に同時に投入して約12時間マグネチックスターラーで攪拌しながらアルミン酸ストロンチウム微粒子を更に付着させた。この後、再び釣り糸を引き揚げて乾燥機で乾燥した。この釣り糸は表面にタングステン微粒子が第一層としてコーティングされ、次に蓄光剤アルミン酸ストロンチウム微粒子が第二層としてコーティングされ、高比重化と蓄光化の両機能を併せ持った釣り糸を製造することができる。
【0032】
(実施例5)釣り糸に着色した実施例。
基材として実施例1と同じ釣り糸を用い、微粒子に粒径5.0μmの蛍光橙色顔料微粒子を用い、結合剤にシラン系カップリング剤を用いた。初めに基材の釣り糸をエタノール中で超音波洗浄した後乾燥した。次にここでコーティング後の微粒子の摩擦堅牢度を更に向上させる為に前処理として活性化処理を行った。活性化処理はビーカー中に蒸留水500mlと酸化剤の過マンガン酸カリウム20gと強酸の硫酸100gを混ぜた混合液(この溶媒を活性化処理液とする)に、釣り糸を約3分間浸漬して基材表面の活性化を行った。
【0033】
次にこの活性化処理をした釣り糸を蒸留水で洗浄後、顔料微粒子0.2gと溶媒Aが500ml入ったビーカーの中に同時に投入して、室温中で約12時間マグネチックスターラーで攪拌しながら顔料微粒子を付着させた。この後、釣り糸を引き揚げて乾燥機で乾燥した。このように元来、半透明の釣り糸を、蛍光橙色に着色できた。また顔料微粒子の密着性は摩擦堅牢度試験機で摩擦に対する染色堅牢度試験(JIS L0849)を行った所、乾燥試験で4級、湿潤試験で4ー3級であった。
【0034】
(実施例6)フィルム基材への難燃性付与の実施例。
基材としてポリエチレン製フィルム(結晶化度70%)を3×3cm角に作ったものを用い、難燃材微粒子として平均粒径0.5μmの三酸化アンチモンを用い、結合剤に実施例1と同じシラン系カップリング剤を用いた。
【0035】
初めに基材のフィルムをエタノール中で超音波洗浄して乾燥した後、コーティング後の微粒子の摩擦堅牢度を更に向上させる為に前処理として、実施例5と同様に酸化剤の過マンガン酸カリウムと強酸の硫酸を混ぜた活性化処理液に、釣り糸を約3分間浸漬して基材表面の活性化処理を行った。
【0036】
次に実施例1と同様の手法で三酸化アンチモン微粒子1.0gと3cm角のポリエチレンフィルム0.56gを溶媒Aが500ml入ったビーカーの中に同時に投入して、約12時間マグネチックスターラーで攪拌しながら徐々に難燃材微粒子をフィルム表面に付着させた。この後、フィルムを引き揚げて乾燥機で乾燥した。このフィルムは表面に三酸化アンチモン微粒子がコーティングされ難燃性を付与できた。
【0037】
(実施例7)バルク体成型品基材表面への蓄光化付与の実施例。
基材として重量が3.5gのナイロン製車輪(結晶化度30%)を用い、蓄光材微粒子として実施例3の平均粒径3.0μmのアルミン酸ストロンチウムを用い、結合剤として実施例1のシラン系カップリング剤を用いた。
【0038】
初めに基材のナイロン製車輪部品をエタノール中で超音波洗浄して乾燥した後、コーティング後の微粒子の摩擦堅牢度を更に向上させる為に前処理として実施例5と同様に酸化剤の過マンガン酸カリウムと強酸の硫酸を混ぜた活性化処理液に約3分間浸漬して車輪表面の活性化処理を行った。次にビーカーに蒸留水50mlに結合剤1.0mlを徐々に加えて溶媒が白濁から透明になるまで室温中でマグネチックスターラーで良く攪拌した。次にナイロン製車輪と蓄光材微粒子0.2gをビーカー中に同時に加え約12時間マグネチックスターラーで攪拌しながら徐々に車輪表面に蓄光材微粒子を付着させた。この後、車輪を引き揚げて乾燥機で乾燥した。このナイロン製車輪部品は表面に蓄光材微粒子がコーティングされ、暗闇の中で緑色に発光するので、夜間でも移動している状態を確認することができる。
【0039】
(実施例8)バルク体成型品基材への着色の実施例。
基材としてポリテトラフルオロエチレン(結晶化度30%)製の時計皿を3×3cm角に切ったものを用い、微粒子として平均粒径5.0μmの炭素微粒子を用い、結合剤としてアルミネート系カップリング剤を用いた。
【0040】
初めに基材の小片をエタノール中で超音波洗浄した後乾燥した。次にビーカーに蒸留水150mlを入れ、結合剤1.0mlを徐々に加えて溶媒が白濁から透明になるまで室温中でガラス棒で良く攪拌した。次に基材の小片4.4gと炭素微粒子1.0gをビーカー中に同時に投入して約30分間ガラス棒で攪拌しながら徐々に基材表面に炭素微粒子を付着させた。次に基材の小片を引き揚げて乾燥機で乾燥した。この基材表面には炭素微粒子がコーティングされ、艶消し黒色を着色することができた。
【0041】
(実施例9)天然有機材料に酸化鉄を付与した実施例。
基材として綿糸を用い、綿糸3.0gと、平均粒径0.5μmの酸化鉄(碧玉石)微粒子1.0gとを、前記溶媒Bが150ml入ったビーカー中に同時に投入して、室温中で約12時間マグネチックスターラーで攪拌し、綿糸表面に酸化鉄(碧玉石)微粒子を付着させた。その後、綿糸を引き揚げ乾燥機で約12時間乾燥した。その結果、綿糸に宝石の一種である碧玉石を固定することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、有機材料で形成された種々の繊維製品やフィルムまたはプラスチック部品などのバルク体成型品に、後から金属やセラミック、有機物など各種の機能を有する微粒子をコーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の処理工程を示した説明図ある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品を基材として、この基材表面にシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系の結合剤のうち少なくとも1種の結合剤を介して、粒径30μm以下の金属やセラミック、有機物の微粒子を固定したことを特徴とする微粒子コーティング有機材料。
【請求項2】
有機材料で形成された繊維やフィルムまたはバルク体成型品を基材として、これをシラン系またはアルミネート系、もしくはチタネート系の結合剤のうち少なくとも1種の結合剤に、粒径30μm以下の金属やセラミック、有機物の微粒子を分散させた溶媒中に浸漬し、その溶媒中で当該微粒子を基材表面に付着・固定させることを特徴とする有機材料の微粒子コーティング方法。
【請求項3】
請求項1記載の有機材料の微粒子コーティング方法において、同一または異なる種類の微粒子を分散させた溶媒中に繰り返し浸漬、乾燥させて、基材表面に微粒子を付着・固定させる工程を繰り返して行なうことを特徴とする有機材料の微粒子コーティング方法。
【請求項4】
請求項2の有機材料の微粒子コーティング方法において、予め基材を強酸と酸化剤を混合した溶媒中に浸漬して基材表面の活性化処理を行なってから、結合剤に微粒子を分散させた溶媒中に浸漬し、その溶媒中で当該微粒子を基材表面に付着・固定させることを特徴とする有機材料の微粒子コーティング方法。
【請求項5】
強酸として、硫酸や発煙硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸のうち少なくとも1種を用い、酸化剤として過マンガン酸塩や重クロム酸塩のうち少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項4記載の有機材料の微粒子コーティング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−257566(P2006−257566A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74399(P2005−74399)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(391041062)福島県 (42)
【Fターム(参考)】