説明

微粒子二酸化チタンおよびその製造方法ならびにその用途

【課題】光触媒や太陽電池、シリコーンゴムへの添加剤、誘電体用途等に好適な超微粒子二酸化チタン及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の最大粒子径Dtopと平均粒子径D50の比Dtop/D50が1以上3以下であることを特徴とする二酸化チタン。気相法で四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスとを反応させることにより二酸化チタンを製造する方法において、四塩化チタンを含むガス及び酸化性ガスをそれぞれ反応管に導入し反応させたとき、該反応管内の温度が1,050℃以上1,300℃未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒や太陽電池、シリコーンゴムへの添加剤、誘電体用途等に好適な超微粒子二酸化チタン及びその製造方法ならびにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
超微粒子二酸化チタンは、紫外線遮蔽材やシリコーンゴム等ヘの添加剤、誘電体原料、化粧料等、多岐の用途に亘って使用されてきた(一般名として酸化チタンが広く使用されているので本明細書中では酸化チタンと略称されるすべての二酸化チタンを総称して二酸化チタンまたは酸化チタンと称する)。また、二酸化チタンは光触媒や、太陽電池等としても応用される。
【0003】
二酸化チタンの結晶型にはルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3種類が存在するが、このうち、前述の光触媒、太陽電池用途の分野ではルチル型よりも光電気化学活性に優れるアナターゼ型やブルッカイト型が用いられる。
【0004】
二酸化チタンの光触媒作用は抗菌タイル、セルフ・クリーニング建材、消臭繊維など、有機物の分解に利用されており、その機構は次のように説明されている。二酸化チタンは紫外線を吸収し、その内部に電子と正孔を発生させる。正孔は二酸化チタンの吸着水と反応してヒドロキシラジカルを生成させ、二酸化チタン粒子表面に吸着した有機物を炭酸ガスや水に分解する(非特許文献1)。すなわち、光触媒作用の強い二酸化チタンの条件として、正孔を発生させやすいこと、二酸化チタン表面に正孔が到達しやすいこと、が挙げられる。(非特許文献2)には、光触媒作用が高い二酸化チタンとして、アナターゼ型二酸化チタン、格子欠陥の少ない二酸化チタン、粒子が小さく比表面積の大きい二酸化チタンが挙げられている。
【0005】
太陽電池としての応用は、1991年にローザンヌ工科大学のグレッツエルらが二酸化チタンとルテニウム系色素を組み合わせた色素増感型太陽電池を報告して以来、研究が進められている(非特許文献3)。前記色素増感型太陽電池において、二酸化チタンは色素の担持体及びn型半導体としての役割を有し、導電性ガラス電極に結着された色素電極として用いられる。色素増感型太陽電池は電解層を色素電極と対極で挟み込んだ構造であり、色素は光を吸収することで電子と正孔を発生する。発生した電子は二酸化チタン層を通じて導電性ガラス電極に到達し、外部へと取り出される。一方、発生した正孔は、電解層を通じて対極へと運ばれ、導電性ガラス電極を通じて供給された電子と結合する。色素増感型太陽電池の特性を高める一因として、二酸化チタンと色素の結合が容易であることが挙げられる。色素との結合が容易な二酸化チタンの結晶型としては、例えば、特許文献1にはアナターゼが使用されており、また、特許文献2にはブルッカイトが色素増感型太陽電池に好適であることが記載されている。
【0006】
二酸化チタンは分散性の良いものがその機能を引き出す上で重要である。例えば二酸化チタンを光触媒として使用する際、分散性が悪いと隠蔽力が強くなるため、使用できる用途が限定されてしまう。太陽電池の分野においても分散性の悪い二酸化チタンは光を透過しにくいため、光吸収に寄与できる二酸化チタンが限られ、光電変換効率を悪化させる。一般に、光散乱(隠蔽力)は粒径が可視光波長の1/2程度であるとき最大になり、粒径が小さくなると光散乱も弱まるといわれている(非特許文献4)。前述の分野で利用される二酸化チタンの一次粒子径は数〜数十nmであることが多いため分散性が良好であれば光散乱への影響は小さい。しかし、分散が悪く凝集粒径の大きい二酸化チタンは光散乱が強まることになる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−255863号公報
【特許文献2】特開2000−340269号公報
【特許文献3】特開平6−340423号公報
【特許文献4】特開平7−316536号公報
【特許文献5】特開平3−252315号公報
【特許文献6】特開平10−251021号公報
【非特許文献1】藤嶋昭、橋本和仁、渡部俊也共著「光クリーン革命」((株)シーエムシー,p.143〜145,1997)
【非特許文献2】橋本和仁、藤嶋昭 編集「二酸化チタン光触媒のすべて」((株)シーエムシー,p.29〜30,1998)
【非特許文献3】M.Graezel,Nature,353,737,1991
【非特許文献4】清野学著「二酸化チタン」(技報堂(株),p.129,1991)
【非特許文献5】斉藤進六監修「超微粒子ハンドブック」(フジ・テクノシステム、388頁、1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誘電体としてチタン酸バリウムを例にすると、その代表的な合成法である固相法、ゾルゲル法の原料には二酸化チタンが使用される。これらの反応は、二酸化チタン粒子へのバリウム源のマイグレーションによって進行すると言われており、二酸化チタンの一次粒子径が不均一である場合、粒径の大小によって反応時間に差が生じ、得られるチタン酸バリウムも粒径的あるいは品質的に不均一となる。
【0009】
従って、二酸化チタンを誘電体原料として使用する際には分散性に加えて一次粒子径の均一性が重要である。
【0010】
二酸化チタンを光触媒用途、太陽電池用途、誘電体原料として使用する場合、塩素のように腐食性を有する成分が存在すると基材を腐食させたり、変質させたりするため、二酸化チタンの塩素含有量は低く抑えることが好ましい。また、Fe、Al、Si、S等も低く抑えた方が良い。誘電体原料であれば不純物の存在は誘電特性に影響を与えるために極力避けることが好ましく、また、光触媒、太陽電池用途で利用する際も、例えば、Feを含む二酸化チタンは着色するため透明性を要求される用途での使用に適さないし、Al、S等の成分が多い二酸化チタンは格子欠陥を生じてしまい、光触媒、太陽電池としての機能を低下させることも考えられる。
【0011】
二酸化チタンの製造方法は、大別して四塩化チタンや硫酸チタニルを加水分解する液相法と、四塩化チタンを酸素あるいは水蒸気等の酸化性ガスと反応させる気相法とがある。液相法による二酸化チタンはアナターゼを主相として得ることはできるが、ゾルあるいはスラリー状態にならざるを得ない。この状態で使用する場合、用途は限定される。粉末として使用するためには乾燥させる必要があり、一般的に溶媒に濡れた超微粒子は乾燥が進むに連れて凝集が激しくなるといわれている(非特許文献5)。この二酸化チタンを光触媒等に供する場合には分散性を高めるため二酸化チタンを強く解砕したり粉砕する必要があり、粉砕等の処理に由来する摩耗物の混入や粒度分布の不均一さ等の問題を引き起こすことがある。
【0012】
一方、気相法による二酸化チタンは、溶媒を使用しないため液相法に比べて分散性に優れていると考えられる。さらに、気相法による二酸化チタンは、液相法による二酸化チタンと比較して合成時の温度が高く、結晶性に優れるという特徴がある。
【0013】
気相法で二酸化チタンの超微粒子を得る例は数多くあり、例えば、特許文献3では、四塩化チタンを火炎中にて加水分解し二酸化チタンを製造する方法において、酸素、四塩化チタン、水素のモル比を調整して反応させ、ルチル含有率の高い二酸化チタンを得る方法が開示されている。特許文献4には四塩化チタンを高温気相中で加水分解させ、反応生成物を急速に冷却することにより結晶質二酸化チタン粉末を製造する方法において、炎温度と原料ガス中のチタン濃度を特定することにより平均一次粒子径が40nm以上、150nm以下の結晶質透明二酸化チタンを得る方法が開示されている。
【0014】
気相法でアナターゼが主相の二酸化チタンを製造する方法は、例えば、特許文献5には気相反応において酸素と水素の混合気体中の水素の比率を変えることでルチルの含有比率を調整する製造方法が開示されており、ルチル含有率が9%の二酸化チタンが記載されている。しかし、何れの場合もルチルの含有比率の高い二酸化チタンであったり、一次粒子径が大きいため光触媒用途、太陽電池用途には適さない。さらに一次粒子径の均一性、粒度分布については記載されていない。
【0015】
四塩化チタンを原料とする気相法で二酸化チタンを製造すると超微粒子は得やすいが、原料由来の塩素が二酸化チタンに残存するため、加熱あるいは水洗等による脱塩素が必要となることが多い。しかし、超微粒子二酸化チタンは低塩素化のための加熱によって粒子同士の焼結が進行し比表面積が低下しやすくなる上、アナターゼ型からルチル型への結晶型の転移が生じてしまうことがある。比表面積の低下、結晶転移を抑制するためには低温あるいは短時間の加熱を行わざるを得ないが、充分に脱塩素できなくなる。超微粒子二酸化チタンの低塩素化法は、例えば、特許文献6に開示されている。この方法は、二酸化チタンを円筒形回転式加熱炉中で転動させながら水蒸気と接触させ、塩素含有量を低くする方法である。また、これに記載されている二酸化チタンのルチル含有率は15%と高いものであった。
【0016】
一方、水洗等による脱塩素では二酸化チタン粒子表面に残存した塩素を除去することはできるが、粒子内部の塩素は水と接触しにくいため、内部塩素が残存しやすいという問題があった。
【0017】
これらのように、従来の気相法において、一次粒子径が均一で塩素含量が低く、かつ、低ルチル型の超微粒子二酸化チタンは得られていなかった。
【0018】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明の課題は、光触媒や太陽電池、シリコーンゴムへの添加剤、誘電体用途等に好適な超微粒子二酸化チタン及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、一次粒子径の均一性に優れ、好ましくは塩素含有量の低い、二酸化チタンを製造することで上記課題を解決し得ることを見い出した。
【0020】
すなわち本発明は、以下の発明を含む。
(1)電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の最大粒子径Dtopと平均粒子径D50の比Dtop/D50が1以上3以下であることを特徴とする二酸化チタン。
【0021】
(2)前記Dtop/D50が1以上2以下であることを特徴とする(1)に記載の二酸化チタン。
【0022】
(3)前記D50が5nm以上200nm以下であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の二酸化チタン。
【0023】
(4)二酸化チタンの塩素含有量が0.001質量%以上0.2質量%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【0024】
(5)二酸化チタンのSi、Al、FeおよびSの各元素の含有量がそれぞれ0.0001質量%以上0.01質量%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【0025】
(6)二酸化チタンのアナターゼ含有率が50%以上であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【0026】
(7)アナターゼの含有率が60%以上であることを特徴とする(6)に記載の二酸化チタン。
【0027】
(8)アナターゼの含有率が90%以上であることを特徴とする(7)に記載の二酸化チタン。
【0028】
(9)電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の粒度分布において、下記ロジン・ラムラー式による分布定数nが3以上であることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【0029】
R=100exp(−bDn
(式中、Dは粒径を表し、RはD(粒径)より大きな粒子の数の全粒子数に対する百分率であり、nは分布定数である。)
【0030】
(10)四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスとを反応させることにより二酸化チタンを製造する気相法において、四塩化チタンを含むガス及び酸化性ガスをそれぞれ反応管に導入し反応させたとき、該反応管内の温度が1,050℃以上1,300℃未満であることを特徴とする(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0031】
(11)前記反応管への四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入において、反応管の断面積(S1)と四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入管の断面積の総和(S2)の比(S1/S2)が、1以上2.5以下であることを特徴とする(10)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0032】
(12)前記S1/S2の比が1以上1.5以下であることを特徴とする(11)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0033】
(13)前記気相法による二酸化チタンの合成において、四塩化チタンと酸化性ガスが反応して生成した二酸化チタンが、反応管内で0.005秒以上0.08秒以下の平均滞留時間であることを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0034】
(14)前記気相法による二酸化チタンの合成において、反応管への導入部における四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスの流速が、各々30m/s以上150m/s以下であることを特徴とする(10)〜(13)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0035】
(15)四塩化チタンを含むガス及び酸化性ガスが、それぞれ、600℃以上、1,200℃未満に予熱されて反応管に導入される(10)〜(14)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0036】
(16)反応が、四塩化チタン1モルに対し不活性ガス100モル以下の割合で混合した原料ガスと、四塩化チタン1モルに対し1当量以上150当量以下の酸化性ガスとで行われることを特徴とする(10)〜(15)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0037】
(17)酸化性ガスが、水蒸気を含む酸素ガスであることを特徴とする(10)〜(16)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0038】
(18)酸化性ガスが、酸素ガス1モルに対し、水蒸気0.1モル以上含むことを特徴とする(17)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0039】
(19)二酸化チタンを乾式脱塩素法で脱塩素し、塩素の含有量が0.2質量%以下である二酸化チタンを得ることを特徴とする(10)〜(18)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0040】
(20)前記乾式脱塩素法が、二酸化チタンを200〜550℃に加熱することにより行う方法である(19)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0041】
(21)前記乾式脱塩素法が、水蒸気を含有するガスを200〜1000℃に加熱し、二酸化チタンと接触させながら行う方法である(19)または(20)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0042】
(22)前記水蒸気が、二酸化チタンに対し質量比で0.01以上1以下である(21)または(22)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0043】
(23)前記水蒸気を含有するガスが、水蒸気を0.1容量%以上含む空気である(21)または(22)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0044】
(24)前記乾式脱塩素法が、減圧状態の容器内で二酸化チタンの脱塩素を行うことを特徴とする(19)〜(23)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0045】
(25)前記減圧状態の容器内部の減圧度が、0.5kPa以上であることを特徴とする(24)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0046】
(26)二酸化チタンを湿式脱塩素法で脱塩素し、塩素の含有量が0.2質量%以下である二酸化チタンを含むスラリーを得ることを特徴とする(10)〜(25)のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0047】
(27)前記湿式脱塩素法が、二酸化チタンを水に懸濁させ、液相に移行した塩素を系外に分離する方法であることを特徴とする(26)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0048】
(28)前記湿式脱塩素法が、塩素の分離を限外ろ過膜で行う方法であることを特徴とする(26)または(27)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0049】
(29)前記湿式脱塩素法が、塩素の分離を逆浸透膜で行う方法であることを特徴とする(26)または(27)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0050】
(30)湿式脱塩素法が、塩素の分離をフィルタープレスで行う方法であることを特徴とする(26)または(27)に記載の二酸化チタンの製造方法。
【0051】
(31)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とするスラリー。
【0052】
(32)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする組成物。
【0053】
(33)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする光触媒材料。
【0054】
(34)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする湿式太陽電池用材料。
【0055】
(35)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする誘電体原料。
【0056】
(36)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とするシリコーンゴム添加剤。
【0057】
(37)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする化粧料。
【0058】
(38)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含む燃料電池用触媒。
【0059】
(39)(38)に記載の燃料電池用触媒を含む燃料電池。
【0060】
(40)(39)に記載の燃料電池を含む発電機器、コンピューター、携帯用電子機器または自動車。
【0061】
(41)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含む電子ペーパー。
【0062】
(42)(41)に記載の電子ペーパーを含むディスプレイ、時計、携帯電子機器、コンピューター、ICカード、USBメモリ、広告媒体、家庭用電気製品、おもちゃ。
【0063】
本発明により、太陽電池用途、光触媒用途、誘電体原料用途、燃料電池用途、電子ペーパー用途等として好適な超微粒子(一般に、一次粒子径約0.1μm以下の微粒子につき、超微粒子と呼称される。)二酸化チタン、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明の好ましい実施態様における二酸化チタンは、電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の最大粒子径Dtopと、平均粒子径D50の比Dtop/D50が1以上3以下であり、好ましくは1以上3未満、より好ましくは1以上2以下である。
【0065】
ここでいう一次粒子とは、一つ以上の結晶子が連晶構造をとった集合体を示し、二次凝集粒とは区別される(久保輝一郎ら編集「粉体」(丸善,p.73〜74,1970))。二酸化チタンの一次粒子と二次凝集粒子の例を図1に示す。
【0066】
電界放射型走査電子顕微鏡によるDtop、D50の測定方法について以下に示す。
対象となる試料について電界放射型走査電子顕微鏡を用いて1視野当たりの一次粒子数が200〜300個になるような画像を撮影し、その画像上の粒子約200〜300個について各々の粒子の一次粒子径を画像解析ソフトで求める。画像解析ソフトは、例えば、住友金属テクノロジー株式会社製粒子解析Ver3を用いることができる。同じ試料の別の視野についても同様の操作を行い、一次粒子径の算出に利用した粒子の合計が少なくとも1,000個を越えるまで同じ操作を繰り返す。得られた結果より平均粒子径(D50)、最大粒子径(Dtop)を算出し、Dtop/D50を求める。
【0067】
top/D50の値が小さいものほど粗粒側の粒度分布がシャープであることを示すため、本発明における二酸化チタンは、市販の二酸化チタンと比較して、粗粒側粒度分布がシャープであることが判る。
【0068】
全体の粒度の均一性を示す指標として、ロジン・ラムラー(Rosin−Rammler)式を用い、その分布定数(n)で規定する方法がある。以下に、ロジン・ラムラー式について簡単に説明するが、その詳細についてはセラミック工学ハンドブック((社)日本セラミック協会編 第1版)第596〜598頁に記載されている。
【0069】
ロジン・ラムラー式は下記式(1)で表される。
R=100exp(−bDn) (1)
ただし式中、Dは粒径を表し、RはD(粒径)より大きな粒子の数の全粒子数に対する百分率であり、nは分布定数である。
ここで、b=1/Den とおくと、(1)式は
R=100exp{−(D/Den } (2)
のように書き換えられる。ただし、Deは粒度特性数である。
(1)式または(2)式から下記式(3)が得られる。
log{log(100/R)}=nlogD+C (3)
ただし、式中、Cは定数を表す。上記式(3)から、x軸にlogD、y軸にlog{log(100/R)}の目盛をつけたロジン・ラムラー(RR)線図にそれらの関係をプロットするとほぼ直線となる。その直線の勾配(n)は粒度の均一性の度合いを表し、nの数値が大きいほど粒度の均一性に優れていると判断される。
【0070】
本発明の好ましい実施態様における微粒子二酸化チタンは、ロジン・ラムラー式による分布定数nが3以上であることが好ましく、さらに好ましくは3以上5以下である。
【0071】
本発明における二酸化チタンはアナターゼを主相とし、好ましくはアナターゼを50%以上含み、より好ましくはアナターゼ含有率が60%以上100%以下であり、さらに好ましくは90%以上100%以下である。
【0072】
アナターゼ含有率はX線回折におけるアナターゼ型結晶に対応するピーク高さ(Haと略する。)とルチル型結晶に対応するピーク高さ(Hrと略する。)から算出した比率(=100×Ha/(Hr+Ha))で示され、例えば粉末X線回折による測定においてCu−Kα1線の回折角から算出される面間隔dが、アナターゼ結晶は2.38Åのピーク、ルチル結晶は3.25Åのピークを用いればよい。
【0073】
本発明の二酸化チタンは、電界放射型走査電子顕微鏡による一次粒子径が5〜200nmの範囲を有することが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。
【0074】
一次粒子径が5nm未満である二酸化チタンは結晶性が低い場合が多いので、光触媒用途、太陽電池用途、誘電体原料には使用しづらい。一次粒子径の上限は特に制限されないが、前述の分野における適正や使用実績から判断すると200nmが妥当である。
【0075】
本発明における二酸化チタンは、塩素含有量が0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。下限値は特に制約はないが、製造方法のコスト的な観点から0.001質量%以上が好ましい。
【0076】
また、Fe、Al、Si、Sの含有量が各0.01質量%以下であることが好ましい。
二酸化チタンを誘電体原料として使用する場合、誘電体合成時のバリウム源と二酸化チタンの混合比を厳密に管理する必要があるが、二酸化チタンに含まれる塩素の含有量が0.2質量%を越えると、得られるチタン酸バリウムの組成比に顕著なズレが生じる場合がある。また、Fe、Si、Al、Sの各含量が0.01質量%を越える場合、二酸化チタンとバリウム源の混合比にズレを生じさせるだけでなく、誘電特性に大きな影響を与える可能性がある。下限値は特に制約はないが、製造コスト的な観点から0.0001質量%以上が好ましい。
【0077】
本発明における超微粒子状二酸化チタンは、各種組成物の原料、顔料または光触媒効果を利用した粒子成分として含まれ、例えば、化粧料、紫外線遮蔽材、誘電体またはシリコーンゴム、色素増感型太陽電池、電子ペーパー、燃料電池用触媒等、様々な製品の原料、添加剤として利用できる。
【0078】
当該燃料電池用触媒を含む燃料電池は、各種発電機器、コンピューター、携帯電話・PDAなどの携帯用電子機器、燃料電池自動車などに採用可能である。
【0079】
さらに、本願発明の好ましい実施態様における電子ペーパー用マイクロカプセルを使用した電子ペーパーは、各種ディスプレイ、時計の表示部、携帯電話、PDA、読書端末などの携帯電子機器、コンピューター、電子マネー、ICカードなどのカード類、USBメモリなどの表示部、電車内の窓上や中吊りの広告媒体、携帯電話機の背面表示部や携帯型ビューワ、家庭用電気製品、おもちゃなどの用途に採用可能である。
【0080】
例えば、電子ペーパーとしては、白色や黒色の粒子を電界によって上下に移動させることで表示色を切り替える粒子移動型構造(例えばマイクロカプセルに内包した白色粒子、黒色粒子を上下させるマイクロカプセル型構造)を採用した場合の白色粒子として有用である。図2は電子ペーパーの模式断面図であり、代表的な電子ペーパーの構造を示す。図中、1は透明基材、2はマイクロカプセル、2aは白色粒子、2bは黒色粒子、3は導電膜、4は背面基材、5は電極、6は固定層である。
【0081】
例えば、誘電体原料として使用する場合、酸化チタンは炭酸バリウム等のバリウム源と混合、焼成され、チタン酸バリウムとなるが、酸化チタンの一次粒子径が不均一である場合、得られるチタン酸バリウムの一次粒子径も不均一となるため、誘電特性も不均一となってしまうが、本発明による酸化チタンを原料とすることで均一な誘電特性を有するチタン酸バリウムを得ることが出来る。また、色素増感型太陽電池において、酸化チタンは色素の担持体として使用されるが、酸化チタンの一次粒子径の不均一性は色素吸着量の不均一性に繋がり、太陽電池としての性能低下を引き起こす。
【0082】
次に製造方法について説明する。
気相法による一般的な二酸化チタンの製造方法は公知であり、四塩化チタンを酸素または水蒸気等の酸化性ガスを用いて、約1,000℃の反応条件下で酸化させると微粒子二酸化チタンが得られる。
【0083】
気相法による二酸化チタンの合成において、まず、原料である四塩化チタンと酸化性ガスが反応管内で混合され、反応することによって二酸化チタンの核が生成し、その核が粒成長することで一次粒子となるのであるが、この粒成長には化学的気相成長(CVD)と焼結の2通りの機構が考えられる。
【0084】
CVDによる粒成長とは、二酸化チタンの核や粒子表面に原料の四塩化チタンが反応し、新たな二酸化チタン表層を形成する機構であり、焼結による粒成長とは二酸化チタンの核や粒子同士が衝突し、それら表面に存在するCl基や水酸基などの活性基の脱塩化水素縮合反応あるいは脱水縮合反応を伴って合体する機構である。これら2つの機構は同時並行で進行していると考えられる。
【0085】
ここで、CVDに影響を与える因子として、反応領域における原料濃度、生成した核や粒子の濃度、温度、高温滞留時間が挙げられ、これら因子の均一性を高めることが一次粒子径の均一化に繋がる。例えば、原料濃度が不均一である場合、四塩化チタン濃度の高い部分では二酸化チタンの核や粒子と四塩化チタンとの反応が進行しやすく、その部分での粒成長は促進される。温度分布が不均一である場合、温度分布に従って反応速度に分布が生じ、粒成長速度にも分布が生じる。
【0086】
焼結による粒成長に影響を与える因子もCVDと同様で、例えば、二酸化チタン核や粒子の濃度が高い部分では核や粒子同士の衝突確率が高まり、焼結も進行しやすい。高温滞留時間が長い場合も衝突確率の上昇によって焼結が促進されるので、高温滞留時間を短くすることが好ましい。
【0087】
さらに詳しくは、本発明では、四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスとを反応(高温酸化)することにより二酸化チタンを製造する気相法において、600℃以上1,200℃未満に加熱した四塩化チタンを含有するガス及び600℃以上1,200℃未満に加熱した酸化性ガスをそれぞれ反応管に供給し、反応させて得られた二酸化チタンを1,050℃以上1,300℃未満の高温度条件で0.005秒以上0.08秒以下の時間、反応管内に滞留させた後、脱塩素することが好ましい。ここでいう脱塩素には乾式法と湿式法がある。乾式脱塩素法は、例えば、円筒形回転式加熱炉、熱風循環式加熱炉、流動乾燥炉、撹拌乾燥炉等の加熱装置を用いて二酸化チタンを加熱し、塩素を除去する方法がある。尚、本発明は、必ずしもこれら加熱装置に限定されるものではない。また、湿式脱塩素法は、例えば、二酸化チタンを純水に懸濁させ、液相に移行した塩素を系外に分離する方法がある。塩素を系外に分離した後、得られた二酸化チタンを乾燥しても良い。
【0088】
本発明における反応管内の温度は1,050℃以上1,300℃未満であることが好ましい。
【0089】
四塩化チタン含有ガスあるいは酸化性ガスを導入する反応管内の温度は1,050℃以上1,300℃未満が好ましく、更に好ましくは1,100℃以上1,250℃未満である。反応管内温度を高くすることによって、混合と同時に反応は完結するので均一核発生が増進され、かつ、反応(CVD)ゾーンを小さくすることができる。反応管内温度が1,050℃より低いとアナターゼ含有率の高い二酸化チタンが得られやすいものの、反応速度が不充分となるため未反応の四塩化チタンが増加し、CVDゾーンが延長する。反応管内温度が1,300℃以上になるとルチル転移や焼結による粒子成長が進行し、アナターゼ含有率は低下し、かつ、超微粒子が得られにくい。
【0090】
一方、原料ガスが反応管に導入され反応が進行すると、本反応が発熱反応である為、反応温度が1,300℃を越える反応ゾーンが存在する。装置放熱は多少あるものの、急冷を施さないかぎり二酸化チタン粒子はどんどん成長し、かつ、結晶型がルチルに転移してしまう。そこで、本発明においては1,050℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.005秒以上0.08秒以下の範囲に抑えることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.05秒である。高温滞留時間が0.08秒を越えると、ルチルへの転移や粒子の焼結が進行したり、焼結が進行しやすくなる。0.005秒未満であると四塩化チタンの酸化反応が不充分で、残存四塩化チタンによるCVDゾーンの延長や、粒子内部の残存塩素の増加に繋がる。
【0091】
高温滞留時間の制御には反応混合物を急速に冷却する方法が有効であり、例えば、反応混合物に多量の冷却空気や窒素等のガスを導入する方法、あるいは水を噴霧する方法等が採用される。
【0092】
反応管の断面積(S1)と四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入管の断面積の総和(S2)の比(S1/S2)が1以上2.5以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1以上1.5以下である。
【0093】
導入管から供給されたガスが反応管内で混合、反応するが、CVDや焼結による成長を均一に発生させるには反応領域の温度や高温帯域時間を均一に近づける必要がある。原料ガスが導入管から反応管に供給されると、原料ガス反応管内で拡散しながら混合される。ここで原料ガスの流れ方向に対して垂直方向への拡散が大きいと反応領域における原料濃度、生成した核や粒子の濃度、温度、高温帯域時間等が均一化しやすくなり、一次粒子径の不均一化に繋がってしまう。垂直方向への拡散を抑制するためには反応管断面積(S1)と原料導入管の断面積総和(S2)の比(S1/S2)は小さいほうがよい。反応管断面積(S1)が原料導入管の断面積総和(S2)よりも小さい(S1/S2<1)場合、原料導入管から反応管への原料の流れが阻害されることから、原料導入管内への原料の滞留や、導入管の圧力負荷上昇による破損に繋がる恐れがある。S1/S2が2.5を超える場合、ガスの流れに対する垂直方向への拡散の影響が大きくなるため、一次粒子径は不均一となる場合がある。したがって、限定されるわけではないが、反応管に対して四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスがそれぞれ反応管内のガス流れ方向に導入されることが好ましい。
【0094】
一般に、四塩化チタンを原料とする気相法で得られる二酸化チタンには、通常、0.1〜4質量%の塩素が残存している。アナターゼ型二酸化チタン表面には、塩素等が結合可能な点が12〜14個/nm2あり(前述の清野学著「二酸化チタン」,p.54)、この全ての結合点が塩素化している場合、二酸化チタン粒子表面に残存する塩素含有量は理論上、下式(4)で表される。
Y=0.077×A ・・・・(4)
(式中、Yは二酸化チタン粒子表面に残存する塩素含有量(質量%)を示し、Aは比表面積(m2/g)を示す。)例えば、100m2/gの比表面積を有する二酸化チタン粒子表面に残存する塩素含有量は、前記式(4)によれば、約8質量%となる。
【0095】
実際は、反応で塩素と酸化性ガスが置換すること、また二酸化チタン粒子表面と気相の塩素濃度差によって塩素が平衡移動することにより、二酸化チタンの塩素含有量は前記式(4)で得られる値よりも若干低くなる可能性があるが、反応での高温滞留時間が0.005秒未満であると、四塩化チタンの酸化反応を完結させず、一部が塩素化されたままの二酸化チタンを増加させることになると考えられる。また、残存塩素が二酸化チタン粒子内部に取り残されると粒子内部の塩素量を増やすことにもなるため、塩素除去に要する加熱処理が高温、長時間化し、比表面積の低下を生じることとなる。従って、従来、気相法によって得られる超微粒子は、アナターゼ含有率は高いものの塩素含有量が高い、あるいは、塩素含有量は低いがアナターゼ含有率が低いというものであった。
【0096】
反応管内の温度を前記1,050℃以上1,300℃未満にするためには、原料ガスの加熱温度を600℃以上1,200℃以下に調整することが好ましい。加熱された原料ガスは反応管内で反応し発熱するが、原料ガス温度が600℃未満であると、反応管内の温度は1,050℃以上になりにくい。また、原料ガス温度が1,200℃以上であると装置放熱はあるものの、反応管内の温度は1,300℃を越えやすくなる。
【0097】
四塩化チタンを含む原料ガス組成は、四塩化チタンガス1モルに対し、不活性ガスが100モル以下であることが好ましく、さらに好ましくは80モル以下、特に好ましくは30モル以下である。不活性ガスが前記範囲よりも多い場合、反応性が低下し、二酸化チタンとしての回収率が低下する。
【0098】
四塩化チタンを含む原料ガスと反応させる酸化性ガス量は、四塩化チタン1モルに対し2〜150モルであることが好ましい。さらに好ましくは5〜50モルである。酸化性ガス量を増やすと核発生数が増加して超微粒子が得られやすくなるのに加え、高温滞留時間が短縮されるために一次粒子径の均一性を向上させる。150モルを越えても二酸化チタンの特性に影響は無いが、経済的な観点から上限が設定される。一方、四塩化チタンに対し酸化性ガス量が不足すると、酸素欠陥の多い二酸化チタンとなり着色してしまう。尚、酸化性ガスには、酸素の他に水蒸気が含まれていても良い。
【0099】
二酸化チタンの加熱による脱塩素は、水と二酸化チタンとの質量比(=水蒸気の質量/二酸化チタンの質量,以下同様)が0.01以上になるように二酸化チタン粉末に水蒸気を接触させながら加熱温度200℃以上550℃以下で行うことが好ましい。更に好ましくは水と二酸化チタンの質量比は0.04以上、加熱温度は250℃以上450℃以下である。加熱温度が550℃を越えると二酸化チタン粒子の焼結が進み、一次粒子径が不均一化する。加熱温度が200℃を下回ると脱塩素の効率が極端に低下する。脱塩素は、二酸化チタン表面の塩素が粒子近傍の水あるいは隣接する粒子の表面水酸基と置換反応することにより進行して行く。二酸化チタン粒子表面の塩素が、水と置換された場合には粒成長せずに脱塩素化されるが、隣接する粒子の表面水酸基と置換された場合は脱塩素と同時に粒成長することとなる。すなわち、粒成長を抑制しつつ脱塩素化を図るためには水と二酸化チタンの質量比も制御することが好ましく、水と二酸化チタンの質量比が0.01以上であれば粒成長を抑制する効果が認められ、好ましくは0.01以上1以下、より好ましくは0.05以上2以下であり、さらに好ましくは0.2以上1.8以下である。
【0100】
二酸化チタンと接触させる水蒸気は、二酸化チタンから分離した塩素を効率良く系外に移動させる役割を有するガスと混合して使用することが好ましい。このようなガスとして、例えば、空気が挙げられる。空気を用いる場合、水蒸気は、空気に0.1容量%以上含まれることが好ましく、更に好ましくは5容量%以上、特に好ましくは10容量%以上80容量%以下である。水蒸気を含んだ空気は200℃以上1,000℃以下に加熱しておくことが好ましく、より好ましくは450℃以上850℃以下である。
【0101】
二酸化チタンの脱塩素において、二酸化チタンから除去された塩素を系外に移動させる方法として、脱塩素に用いる容器の内部を減圧にする方法も効果的である。容器内部の減圧度は0.5kPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.5kPa以上2kPa以下である。ここでいう減圧度とは、減圧した容器内の圧力と大気圧との差圧を示す。
【0102】
減圧容器内の二酸化チタン量にも二酸化チタンから除去される塩素ガスの排気量から考えると減圧度は0.5kPaあれば充分である。
【0103】
減圧度の上限は特に制限されないが、減圧度を高めると大掛かりな減圧装置が必要となり、さらに連続式脱塩素運転を行う場合には減圧状態を維持するための設備、減圧状態の容器から大気圧雰囲気の環境へ二酸化チタンを移動させるための設備が必要となり、経済的には不利である。大掛かりな装置が不要な、減圧度の上限は2kPaである。
【0104】
本発明による微粒子二酸化チタンは粒子内部に塩素が殆ど存在せず、水洗等で除去できる粒子表面塩素が大半であるため、湿式で低塩素化することも可能である。湿式脱塩素方法には、例えば、二酸化チタンを純水に懸濁させ、液相に移行した塩素を限外ろ過膜、逆浸透膜、フィルタープレス等によって系外に分離する方法が挙げられる。
【0105】
気相法による二酸化チタンは、液相法による二酸化チタンと比較して合成時の温度が高く、結晶性に優れるという特徴があり、一般的に、結晶性の違いはX線回折法などによって測定するが、気相法と液相法による二酸化チタンの結晶性の違いは粒子表面に顕著に現れるためX線回折法では検知しにくい。粒子表層の差を検知するためには全光線反射率によるバンドギャップ測定が有効であると考えられる。以下にバンドギャップ測定法について示す。
【0106】
(株)島津製作所製積分球式光度計UV−2400およびIRS−240A型等を用いて、波長と吸光度の関係を測定する。得られた吸光度のパターン(図3参照)の変曲点に対して接線を引き、接線が波長線と交わる点(吸収端波長)を読み取る。吸光度のパターンと吸収端波長の関係の一例を図3に示す。
【0107】
バンドギャップ(BG)は
E=1240/λ
(式中、Eはバンドギャップ[eV]、λは吸収端波長[nm]を示す。)
で表され、結晶型や粒径が同じであればバンドギャップ(BG)値の小さいものほど結晶性は低い。本発明の好ましい実施態様における酸化チタンのバンドギャップ(BG)は3eV以上3.2eV以下である。
【実施例】
【0108】
以下、実施例及び比較例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0109】
実施例1:
11.8Nm3/hr(Nは標準状態を意味する。以下同じ。)のガス状四塩化チタンを2Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、8Nm3/hrの酸素と32Nm3/hr水蒸気を混合した酸化性ガスを1,100℃に予熱し、これらの原料ガスを反応管の断面積(S1)と四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入管の断面積の総和(S2)の比(S1/S2)が1.5である石英ガラス製反応器に導入した。1,150℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.06秒となるように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0110】
得られた二酸化チタンを円筒形回転式加熱炉に通し、水と二酸化チタンの質量比0.02、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は82nm、Dtop/D50は2.4、アナターゼ含有率は95%、塩素含有量は0.12質量%であった。また、ロジン・ラムラー式の分布定数nは3.2であった。反射率から算出したバンドギャップは3.1eVであった。
【0111】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0112】
実施例2:
5.9Nm3/hrのガス状四塩化チタンを30Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と16Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,100℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が1.0である石英ガラス製反応器に導入した。1,150℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.04秒となるように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0113】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.04、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は21nm、Dtop/D50は2.0、アナターゼ含有率91%、塩素含有量は0.13質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは3.5であった。反射率から算出したバンドギャップは3.0eVであった。
【0114】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0115】
実施例3:
4.7Nm3/hrのガス状四塩化チタンを36Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,150℃に予熱し、36Nm3/hrの空気と25Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,150℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が2である石英ガラス製反応器に導入した。1,150℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.02秒となるように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0116】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.06、加熱温度350℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は14nmであった。Dtop/D50は1.9、アナターゼ含有率95%、塩素含有量は0.14質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは3.7であった。
【0117】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0118】
実施例4:
11.8Nm3/hrのガス状四塩化チタンを2Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,150℃に予熱し、36Nm3/hrの空気と25Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,150℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が1である石英ガラス製反応器に導入した。1,150℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.01秒となるように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0119】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.06、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は62nm、Dtop/D50は2.2、アナターゼ含有率90%、塩素含有量は0.08質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは3.1であった。
【0120】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0121】
比較例1:
11.8Nm3/hrのガス状四塩化チタンを8Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを900℃に予熱し、8Nm3/hrの酸素と32Nm3/hr水蒸気を混合した酸化性ガスを800℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が1.5である石英ガラス製反応器に導入した。1,150℃以上1,300℃未満の高温滞留時間を0.2秒となるように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末粉を捕集した。
【0122】
得られた二酸化チタンを円筒形回転式加熱炉に通し、水と二酸化チタン質量比0.02、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は103nm、Dtop/D50は3.4、アナターゼ含有率68%、塩素含有量は0.07質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは2.5であった。
【0123】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0124】
比較例2:
4.7Nm3/hrのガス状四塩化チタンを36Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを700℃に予熱し、36Nm3/hrの空気と25Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを700℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が1である石英ガラス製反応器に導入した。該反応管温度を750℃に制御し、原料ガスを0.08秒滞留するように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0125】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.04、加熱温度350℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は34nm、Dtop/D50は3.9、アナターゼ含有率95%、塩素含有量は0.22質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは2.0であった。
【0126】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0127】
比較例3:
5.9Nm3/hrのガス状四塩化チタンを30Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,200℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と16Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,200℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が1である石英ガラス製反応器に導入した。該反応管温度を1,350℃に制御し、原料ガスを0.04秒滞留するように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0128】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.06、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は48nm、Dtop/D50は3.3、アナターゼ含有率72%、塩素含有量は0.16質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは1.9であった。
【0129】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0130】
比較例4:
5.9Nm3/hrのガス状四塩化チタンを30Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,200℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と16Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,200℃に予熱し、これらの原料ガスをS1/S2が3.0である石英ガラス製反応器に導入した。該反応管温度を1,350℃に制御し、原料ガスを0.04秒滞留するように冷却空気を反応管に導入後、ポリテトラフルオロエチレン製バグフィルターにて超微粒子状二酸化チタン粉末を捕集した。
【0131】
得られた二酸化チタンを熱風循環加熱炉に入れ、水と二酸化チタン質量比0.06、加熱温度450℃で脱塩素したところ、一次粒子径のD50は27nm、Dtop/D50は4.0、アナターゼ含有率67%、塩素含有量は0.06質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは1.5であった。
【0132】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0133】
比較例5:
市販の気相法二酸化チタン(日本アエロジル製P−25)について各種物性を測定したところ、一次粒子径のD50は29nm、Dtop/D50は3.3、アナターゼ含有率76%、塩素含有量は0.13質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは1.3であった。
【0134】
top/D50、分布定数n、アナターゼ含有率、BET比表面積、塩素含有量、及び、Fe、Al、Si、Sの分析結果を表1に示す。
【0135】
比較例6:
四塩化チタン濃度が0.2モル/Lの水溶液を101℃で1時間加熱還流して加水分解し、超微粒子酸化チタンゾルを得た。得られた酸化チタンゾルを純水で繰り返し水洗した後、熱風循環式乾燥機で120℃で12時間乾燥した。得られた超微粒子酸化チタンの各種物性を測定したところ、一次粒子径のD50は11nm、Dtop/D50は3.0、アナターゼ含有率84%、塩素含有量は0.13質量%であった。またロジン・ラムラー式の分布定数nは1.1であった。反射率から算出したバンドギャップは2.9eVであった。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の二酸化チタンは、光触媒用途や太陽電池用途、誘電体原料、燃料電池用触媒担体、電子ディスプレー用白色粒子等の各種用途に好適であり、特に、水系の溶媒に対する分散性が優れるので解砕工程等が不要もしくは極めて軽微な設備で済み、工業的に非常に大きな実用的価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は二酸化チタンの一次粒子と凝集粒の例を示す。
【図2】図2は電子ペーパーの模式断面図を示す。
【図3】図3は二酸化チタンの波長に対する吸光度パターンの一例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の最大粒子径Dtopと平均粒子径D50の比Dtop/D50が1以上3以下であることを特徴とする二酸化チタン。
【請求項2】
前記Dtop/D50が1以上2以下であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン。
【請求項3】
前記D50が5nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化チタン。
【請求項4】
二酸化チタンの塩素含有量が0.001質量%以上0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【請求項5】
二酸化チタンのSi、Al、FeおよびSの各元素の含有量がそれぞれ0.0001質量%以上0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン。
【請求項6】
二酸化チタンのアナターゼ含有率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
【請求項7】
アナターゼの含有率が60%以上であることを特徴とする請求項6に記載の二酸化チタン。
【請求項8】
アナターゼの含有率が90%以上であることを特徴とする請求項7に記載の二酸化チタン。
【請求項9】
電界放射型走査電子顕微鏡で観察した一次粒子の粒度分布において、下記ロジン・ラムラー式による分布定数nが3以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の二酸化チタン。
R=100exp(−bDn
(式中、Dは粒径を表し、RはD(粒径)より大きな粒子の数の全粒子数に対する百分率であり、nは分布定数である。)
【請求項10】
気相法で四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスとを反応させることにより二酸化チタンを製造する方法において、四塩化チタンを含むガス及び酸化性ガスをそれぞれ反応管に導入し反応させたとき、該反応管内の温度が1,050℃以上1,300℃未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項11】
前記反応管への四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入において、反応管の断面積(S1)と四塩化チタンを含むガスおよび酸化性ガスの導入管の断面積の総和(S2)の比(S1/S2)が、1以上2.5以下であることを特徴とする請求項10に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項12】
前記S1/S2の比が1以上1.5以下であることを特徴とする請求項11に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項13】
前記気相法による二酸化チタンの合成において、四塩化チタンと酸化性ガスが反応して生成した二酸化チタンが、反応管内で0.005秒以上0.08秒以下の平均滞留時間であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項14】
前記気相法による二酸化チタンの合成において、反応管への導入部における四塩化チタンを含むガスと酸化性ガスの流速が、各々30m/s以上150m/s以下であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項15】
四塩化チタンを含むガス及び酸化性ガスが、それぞれ、600℃以上、1,200℃未満に予熱されて反応管に導入される請求項10〜14のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項16】
反応が、四塩化チタン1モルに対し不活性ガス100モル以下の割合で混合した原料ガスと、四塩化チタン1モルに対し1当量以上150当量以下の酸化性ガスとで行われることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項17】
酸化性ガスが、水蒸気を含む酸素ガスであることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項18】
酸化性ガスが、酸素ガス1モルに対し、水蒸気0.1モル以上含むことを特徴とする請求項17に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項19】
二酸化チタンを乾式脱塩素法で脱塩素し、塩素含有量が0.2質量%以下である二酸化チタンを得ることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項20】
前記乾式脱塩素法が、二酸化チタンを200〜550℃に加熱することにより行う方法である請求項19に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項21】
前記乾式脱塩素法が、水蒸気を含有するガスを200〜1000℃に加熱し、二酸化チタンと接触させながら行う方法である請求項19又は20に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項22】
前記水蒸気が、二酸化チタンに対し質量比で0.01以上1以下である請求項20又は21に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項23】
前記水蒸気を含有するガスが、水蒸気を0.1容量%以上含む空気である請求項21又は22に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項24】
前記乾式脱塩素法が、減圧状態の容器内で二酸化チタンの脱塩素を行うことを特徴とする請求項19〜23のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項25】
前記減圧状態の容器内部の減圧度が0.5KPa以上であることを特徴とする請求項24に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項26】
二酸化チタンを湿式脱塩素法で脱塩素し、塩素含有量が0.2質量%以下である二酸化チタンを含むスラリーを得ることを特徴とする請求項10〜25のいずれか1項に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項27】
前記湿式脱塩素法が、二酸化チタンを水に懸濁させ、液相に移行した塩素を系外に分離する方法であることを特徴とする請求項26に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項28】
前記湿式脱塩素法が、塩素の分離を限外ろ過膜で行う方法であることを特徴とする請求項26又は27に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項29】
前記湿式脱塩素法が、塩素の分離を逆浸透膜で行う方法であることを特徴とする請求項26又は27に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項30】
湿式脱塩素法が、塩素の分離をフィルタープレスで行う方法であることを特徴とする請求項26又は27に記載の二酸化チタンの製造方法。
【請求項31】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とするスラリー。
【請求項32】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項33】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする光触媒材料。
【請求項34】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする湿式太陽電池用材料。
【請求項35】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする誘電体原料。
【請求項36】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とするシリコーンゴム添加剤。
【請求項37】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含むことを特徴とする化粧料。
【請求項38】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含む燃料電池用触媒。
【請求項39】
請求項38に記載の燃料電池用触媒を含む燃料電池。
【請求項40】
請求項39に記載の燃料電池を含む発電機器、コンピューター、携帯用電子機器または自動車。
【請求項41】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタンを含む電子ペーパー。
【請求項42】
請求項41に記載の電子ペーパーを含むディスプレイ、時計、携帯電子機器、コンピューター、ICカード、USBメモリ、広告媒体、家庭用電気製品、おもちゃ。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−265094(P2006−265094A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53524(P2006−53524)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】