説明

微粒子分散複合薄膜形成方法および形成装置

【課題】 ナノ材料である微粒子の機能を損ねることなく各種ナノ材料を適度に分散した状態で基板上に固定する汎用的な方法とそれを実現する装置を提供する。
【解決手段】 成膜物質に含まれる元素を成分とする化合物を含む溶媒に微粒子を溶解または分散させた原料溶液をエアロゾル化し、生成したエアロゾルを真空の容器内に導入してプラズマ化し、プラズマ化学的気相蒸着(CVD)法により堆積させることによって、微粒子13が分散した状態で混入した、堆積物元素を含む薄膜12を被処理物表面10に形成して複合薄膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子、特にナノメートルスケールの材料が分散した状態で混入した薄膜を被処理物表面に形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
10nm以下のサイズを有するナノ材料は、従来のバルク材料に見られない特異な性能を発現するようになる。ナノ材料の特異性能として、たとえば下のようなものが知られている。
(1) 数nmの結晶微粒子をアモルファス薄膜中に分散させると、超硬質材料が得られる。
(2) 微粒子の粒径が10nmより小さくなると、融点が著しく低下する。
(3) 紫外光応答型光触媒は、粒子径が数nmになると、可視光でも活性を示すようになる。
(4) 数nmレベルの微粒子は紫外線を照射することにより、サイズに応じて異なる色で発光する。
(5) 2種類の材料を数nm間隔で交互に積層すると、元の材料の2倍以上の硬度を持つ薄膜になる。
【0003】
ナノ粒子、ナノチューブ、ナノ層などナノメートルスケール材料について、様々な材質、特性、形状のものが試作されており、機械、電気、化学、医療など、様々な産業分野へのナノ材料の応用が期待されている。
しかし、ナノ材料は、超微細であるため、簡単に凝集したり、搬送する際に配管や出入り口で閉塞を起こすなど、取り扱いが困難である。
また、ナノ材料を構造物などの表面に適用して、ナノ材料の特性を被処理物の特性として利用するためには、ナノ材料を分散したまま安定化・固定化する必要がある。従来、ナノ材料の機能を損なわずに基板上に堆積させる方法には、ガスデポジション法がある。
【0004】
たとえば、特許文献1には、発光材料、光電変換材料などの機能性材料を成膜して高性能の電子デバイスを作成する1種のガスデポジション法が開示されている。開示方法は、原料液をエアロゾル化し、このエアロゾルを加熱することにより基板上に堆積させて薄膜を形成するものであって、溶質は溶媒中に溶解しなくても混合または分散されていればよいので、一般的な有機材料からナノサイズの無機超微粒子まで成膜が可能であるとしている。
開示方法では、エアロゾルは加熱により溶媒を気化して、媒質のみを基板上に堆積させる。
【0005】
また、特許文献2には、エアロゾル中の超微粒子を基板上に堆積させるジェットプリンティングシステムの技術が開示されている。開示方法は、基板に向かう超微粒子の飛行を妨げないプラズマ発生手段を備えて、ノズルから放出された超微粒子がプラズマ中を通過する間に表面の活性化や化合物被膜を行い、吹き付けによる運動エネルギーと超微粒子活性化エネルギーにより材料を溶融することなく超微粒子と基板もしくは超微粒子同士の結合を促進させるので、超微粒子の結晶性を保持したまま緻密で良好な膜物性と基板への密着性を有する堆積物を形成することができる。
特許文献2に開示された方法によっても、基板上の堆積物には超微粒子のみが含まれることになる。
【0006】
しかし、ナノ材料とも呼ばれる微粒子に付与する表面活性力や結合力では基板に接着する力が十分でなく、特に摩擦や擦過による落剥を避けることができない。また、被処理物の広い表面にナノ材料を万遍なく付着させることはできない。
ナノ材料の機能を長期間保持するためには、別の材料に混合したり別の材料に担持させたりする必要がある。
また、ナノ材料の特性を活用するためには、ナノ材料を分散したまま固定化する必要があるが、多種多様な材料に対して適用できる手法は未だ確立されていない。
このため、現状では利用分野が極めて限定されている。
【特許文献1】特開2004−160388号公報
【特許文献2】特開2002−263473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ナノ材料とも呼ばれる微粒子の機能を損ねることなく各種ナノ材料を適度に分散した状態で基板上に固定する汎用的な方法とそれを実現する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の微粒子分散複合薄膜形成方法は、薄膜生成物質に含まれる元素を成分とする化合物を含む溶媒に微粒子を溶解または分散させた原料溶液をエアロゾル化し、生成したエアロゾルを真空の容器内に導入してプラズマ化し、プラズマ化学的気相蒸着(CVD)法により堆積させることによって、微粒子が分散した状態で混入した、堆積物元素を含む薄膜を被処理物表面に形成することを特徴とする。
ここで、微粒子とは粒径が100nm以下の粒子をいい、表面効果が材料の性質に大きく影響する。特に、粒径が1〜10ナノメータの範囲(シングルナノメータスケール)にある粒子はナノ材料としての特異な性質をさらに顕著に表す。
【0009】
CVD法で成膜させる元素を含む化合物からなる溶媒中にナノ材料を溶解し、あるいは分散させて、均質な原料溶液を調製する。原料溶液は、溶媒と溶質の組み合わせによって、微粒子が溶解した真性溶液であったり、分散したコロイド溶液であったりしてよい。
溶液は少量ずつ搬送し、噴射するキャリヤガスに当てて霧化し、溶媒の気体中に微粒子が分散した状態のエアロゾルにする。エアロゾルは、真空容器に搬送され、ここでプラズマに触れて電離したり活性化したりして、化学反応により薄膜形成材料を生成して被処理物表面上に堆積させる。また、微粒子の表面を活性化して、溶媒に含まれる元素からなる薄膜と微粒子の結合力を増大させる効果も有する。
【0010】
このとき、微粒子も薄膜形成材料に巻き込まれ一緒に堆積するので、形成された薄膜中には微粒子がほぼ均等に分散して混入している。すなわち、本発明の製造方法により得られる薄膜は、微粒子と異なる材料で形成される薄膜に微粒子が分散して存在する複合薄膜になっている。
本発明の方法は、真性溶液化あるいはコロイド溶液化が可能である限り、溶媒溶質共に、幅広く各種のものを利用することができるため、多様な材料の組み合わせに対応が可能で、色々な組み合わせの複合薄膜を形成することができる。
本発明に係る複合薄膜は、ナノ材料の特性を備えるものとなる。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の微粒子分散複合薄膜形成装置は、溶媒と微粒子からなる原料溶液をエアロゾル化するエアロゾル化装置と、内部に被処理物を設置する真空容器と、エアロゾルをエアロゾル化装置から真空容器に搬送する搬送系と、真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備えて、被処理物表面に溶媒に含まれる元素を含んでなる薄膜中に微粒子が分散した構造を持つ複合薄膜を形成するプラズマCVD装置であることを特徴とする。
【0012】
エアロゾル化装置は真空室に供給されるキャリヤガスの一部を噴出させる噴出機構を備えて、キャリヤガス流により原料溶液をエアロゾルにするようにしてもよい。このようなキャリヤガスとして、不活性ガス、窒素ガス、酸素ガス、炭化水素ガスなどを利用することができる。
また、エアロゾル化装置は室内を減圧する減圧機構およびもしくは室内雰囲気を昇温する昇温機構を備えることが好ましい。雰囲気温度を上昇させたり減圧したりして一旦蒸発した溶媒が容易に再液化しないようにすることにより、エアロゾル化装置において一旦生成したエアロゾルの状態を維持させることができる。設定する温度や圧力は対象とする物質の性質にしたがって選択できるようにする。
【0013】
搬送系の配管中にバッファー容器を備えることが好ましい。真空容器は真空になるため、真空容器とエアロゾル化装置を配管で直結するとエアロゾル化装置の圧力が低下して効率的にエアロゾル化ができなくなり、また真空容器内の圧力が上昇して効率的な成膜ができなくなる。搬送系配管中にバッファー容器を設けることにより、2つの容器の圧力状態を絶縁することができる。
真空容器には、被処理物を設置する機構を備え、設置した被処理物にバイアス電圧を印加する電源を備えることが好ましい。薄膜を形成するイオン化した原子や分子あるいは電荷をもった微粒子に対しこれと引き合う方向の電位を被処理物に与えることにより、原子、分子、微粒子を被処理物表面に衝突させて、付着性が高く高品質の薄膜を形成することができる。電源として、直流電源、RF電源、パルス電源などが利用できる。被処理物が絶縁性のものである場合はRF電源やパルス電源を使用してバイアス電圧を印加する。
【0014】
真空容器内にプラズマを生成するために、電子ビーム励起プラズマ発生装置を設けることが好ましい。
電子ビーム励起プラズマ発生装置は比較的簡単な装置でありながらガスの電離に最適なエネルギーをもった大電流の電子ビームでプラズマを生成するので、堆積物質を高効率に生成し、また低温状態で成膜することができる。
また、エアロゾル化装置や原料溶液容器を複数備えて、薄膜堆積途中で原料溶液を切り換えることができるようになっていてもよい。ナノ材料を含む異なる種類の薄膜を数nmごとに積層させることによって、より複合的な複合薄膜を得ることができる。なお、各薄膜層にナノ材料が含まれていなくても、ナノスケールで積層したナノ構造を形成することにより、ナノ材料としての特異な特性を呈すものになる。
また、堆積途中で原料溶液の成分を徐々に変化させることによって、傾斜組成構造の複合薄膜を形成することができる。
【0015】
原料溶液に炭素あるいはケイ素を含む溶媒を使用することができる。炭素を含む原料溶液からは、極めて高い硬度を有するダイヤモンドライクカーボン膜などの炭素系高機能薄膜を形成することができる。ダイヤモンドライクカーボン膜などを切削工具、摺動部品などの製品の表面に耐摩耗性薄膜として成膜することによって、製品に高度な耐久性を与えることができる。このような薄膜に微粒子を分散させたものは、薄膜固有の性質に加えて微粒子の有する例えば低摩擦性などの特性を併せ備えた優れた表面特性を有する製品となる。
ダイヤモンドライクカーボン膜にケイ素を含有させたものは、鉄系材料からなる被処理物に対して密着性のよい耐摩耗性薄膜を形成する。
また、ケイ素を含む原料溶液を用いると、酸化ケイ素膜に微粒子が分散した複合薄膜を被処理物表面に形成することができる。酸化ケイ素膜は透明性とガラスに対する密着性を有するのでガラス表面に被膜を形成するときに利用することができる。
【0016】
薄膜中に分散させる微粒子は、直径が100nm以下の球形の粒子や、ナノチューブやDNAなどのファイバー状のものであってもよい。
微粒子として、ダイヤモンドなど炭素系の超硬質材料、炭化ケイ素などのセラミックス、タンパク質などの生体高分子、カーボンナノチューブやDNAなどの長鎖分子、半導体材料、酸化チタンなどの光触媒材料、銀や銅などの抗菌性金属、フッ素樹脂などの撥水材料などを微粒子にしたものを利用することができる。
これら微粒子を薄膜基板に分散させたものを表面に堆積させた被処理物は、たとえば薄膜自体の硬質性能などと微粒子の有する各機能を併有するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の1実施例に係る微粒子分散複合薄膜形成装置の概念図、図2は微粒子分散複合薄膜の概念図である。
本実施例の微粒子分散複合薄膜形成装置は、原料溶液容器1、エアロゾル化室2、真空容器3で構成される。原料容器1には加圧配管が接続され、収納された原料溶液をマスフローコントローラ14によって所定の流量でエアロゾル化室2に送入することができる。エアロゾル化室2にはキャリヤガスが供給されて、原料溶液容器1から供給された原料溶液をキャリヤガスの噴流でエアロゾル化して真空容器3に送り込む。
キャリヤガスには、成膜する薄膜物質と反応しない不活性ガスを用いることができる。また、薄膜として堆積する元素の一部である窒素、炭化水素、酸素のガスを用いてもよい。
【0018】
エアロゾル化室2は減圧機構と昇温機構を備えている。雰囲気温度を上昇させて沸点以上に保持したり減圧して蒸気圧以下にしたりすることにより、エアロゾル化室2内で一旦蒸発した溶媒が再液化しないようにして、エアロゾル状態を維持させることができる。
なお、エアロゾル化室2と真空容器3を接続する搬送系配管中にバッファー容器4を備えて、真空容器3の真空とエアロゾル化室2の圧力を絶縁することが好ましい。
【0019】
真空容器3には、被処理物10を固定する取付け台5と電子ビーム励起プラズマ発生装置7が設備されている。
電子ビーム励起プラズマ発生装置7は、電子ビームガンと対峙した位置に設けられた加速電極8に向けて大電流の電子ビームを放出させて、真空容器3内のガス成分に電子を作用させて電離解離しプラズマ9を生成する。ガス中にエアロゾルとして含まれる微粒子は、プラズマ9の中で表面を活性化し、また、プラズマの作用により帯電したりイオン化したりする。
プラズマ中の成分は取付け台5上の被処理物表面に堆積して薄膜を形成する。形成された薄膜には微粒子が分散して含まれ、薄膜は薄膜自体の性質と微粒子の性質を併せ持つことになる。
【0020】
取付け台5には電源装置6が接続されていて、被処理物10にバイアス電圧を印加することができる。薄膜堆積の状態はバイアス電圧によっても変化し、バイアス電圧によって薄膜の硬度などの特性値が変化する。
また、真空容器3内で発生するプラズマ9は均質ではなく、取付け台5に固定した被処理物10の位置や姿勢によって堆積される薄膜が均質にならない場合があるので、取付け台5には自転と公転を可能とする機構を付属させて、被処理物10の表面に偏りなく薄膜を堆積させるようにしている。
なお、多数個の被処理物に成膜する場合は、プラズマ9の周囲に自公転機構を有する取付け台を配置することにより大量処理を可能にすることができる。
【0021】
原料溶液として、溶媒に微粒子が溶解した真性溶液、または微粒子が分散したコロイド溶液を用いる。
ナノサイズの微粒子は超微細であることが原因となって、簡単に凝集したり輸送管を詰まらせたりして取り扱いが容易でないが、溶液にすることにより大幅に扱いが容易になる。
また、微粒子単独では、被処理物表面に固着させることも難しく、従来は、たとえば高温で加熱して溶着させる手段などが用いられる。高温加熱処理を行う場合は、微粒子の本来の特性が減殺されて、被処理物に効果的な表面特性を与えることができない。
【0022】
本実施例の複合薄膜形成装置によれば、微粒子は低温のプラズマ中で表面活性を与えられ、被処理物表面との接着性を向上させることができる。
さらに、溶媒に、生成しようとする薄膜に含まれる元素を成分として含む液体を使用しCVD原料として利用する場合は、薄膜が堆積すると同時に微粒子が付着するので、微粒子は薄膜中に分散して閉じ込められ、剥がれ落ちないように保持される。また、微粒子は薄膜表面に露出して被処理物に薄膜の特性に加えて微粒子固有の特性を付与することができる。
【0023】
たとえば、トルエンC65CH3を溶媒とし微粒子のフラーレンC60,C70、あるいはカーボンナノチューブ(チューブ状フラーレン)を溶解した溶液を原料溶液とすることができる。原料溶液はエアロゾル化室2でキャリヤガスの噴流で霧化させてトルエンガス中にフラーレンが飛遊するエアロゾルとし、真空容器3でプラズマ化させて被処理物10の表面に堆積させる。すると、図2に示すように、トルエンが炭素イオンになってダイヤモンドライクカーボン薄膜12を形成し、同時にフラーレンの微粒子13が被処理物表面に引きつけられて堆積するため、薄膜中にフラーレン粒子が分散して含まれる複合薄膜11が形成される。
【0024】
なお、フラーレンはプラズマ中でラジカル化して他の分子と結合しやすくなり、また、プラズマ内でイオン化して被処理物10に印加されたバイアス電圧により被処理物表面に衝突させられることにより、薄膜中で強固に結合することになる。
この複合薄膜で被覆した被処理物は、耐摩耗性を強化し、潤滑性を向上させる。
また、炭化ケイ素の粒径10nm程度の微粒子を分散させた溶液を原料とする場合にも、同様の複合薄膜を形成することができる。
【0025】
本実施例の複合薄膜形成方法を用いれば、セレン化カドミウムCdSeや硫化亜鉛ZnSなどの半導体の径を10nm以下にした微粒子が分散した複合薄膜を被処理物表面に付着させることができる。これらの半導体は、粒径がナノメートル領域になると紫外線を照射することにより粒径に応じて異なる波長の可視光を発生するようになるので、被処理物に蛍光体としての機能を付与することができる。
【0026】
また、酸化チタンTiO2などの光触媒微粒子を分散した複合薄膜をたとえばガラスなど被処理物の表面に成膜し、ガラス表面の曇りを防止したり、防汚、抗菌などの機能を付与したりすることができる。あるいは、微粒子化したフッ素系樹脂など撥水性の材料をエアロゾル化して薄膜中に分散させて、被処理物の表面が濡れにくくすることもできる。
なお、原料溶液の溶媒をメトキシトリメチルシランCH3OSi(CH3)3などシリコンを含む化合物から選択することにより、物体の表面に半導体ナノ粒子を分散した透明な酸化シリコン薄膜を形成することができる。
【0027】
電子ビーム励起プラズマは低温プラズマであり、室温レベルの処理も可能であるため、タンパク質などの生体高分子を利用することも可能である。カーボンナノチューブやDNAは長鎖分子で紐状になっており、たとえば薄膜中に配向して混入すると、機械的特性や潤滑性能を向上させる。
また、長鎖状の有機高分子化合物を利用することもできる。
さらに、抗菌、防藻に効果がある銀や銅の微粒子を分散させた複合薄膜を対象物の表面に形成して、衛生器具、医療器具、食品産業や医療品製造で使用するクリーン機器、さらに発電所の覆水管などに利用することもできる。
【0028】
上記実施例では、プラズマを電子ビーム励起プラズマ発生装置により生成させたが、さらに、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、誘導結合形プラズマ(ICP)、容量結合形プラズマなどであってもよいことはいうまでもない。
また、キャリヤガス流でエアロゾル化する代りに、超音波や高周波振動を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1実施例に係る微粒子分散複合薄膜形成装置の概念図である。
【図2】本実施例の装置で製作した微粒子分散複合薄膜の概念図である。
【符号の説明】
【0030】
1 原料溶液容器
2 エアロゾル化室
3 真空容器
4 バッファー容器
5 取付け台
6 電源装置
7 電子ビーム励起プラズマ発生装置
8 加速電極
9 プラズマ
10 被処理物
11 複合薄膜
12 薄膜
13 微粒子
14 マスフローコノローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜生成物質に含まれる元素を成分とする化合物を含む溶媒に微粒子を溶解または分散させた原料溶液をエアロゾル化し、該生成したエアロゾルを真空容器内に導入してプラズマを作用させ、化学的気相蒸着(CVD)法により該真空容器内に配置された被処理物上に膜状に堆積させることによって、前記堆積物元素を含んで形成され前記微粒子が分散した状態で混入した薄膜を被処理物表面に形成することを特徴とする微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項2】
前記溶媒は炭素を含むことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項3】
前記溶媒はケイ素を含むことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項4】
前記微粒子は球形状のものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項5】
前記微粒子はファイバー形状のものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項6】
前記微粒子は炭素系の超硬質材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項7】
前記微粒子は生体高分子からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項8】
前記微粒子は長鎖分子からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項9】
前記微粒子は半導体材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項10】
前記微粒子は光触媒材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項11】
前記微粒子は抗菌性金属からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項12】
前記微粒子は撥水材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項13】
前記エアロゾル化はキャリヤガスの噴射流に前記原料溶液を供給することによって行うことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項14】
前記キャリヤガスは不活性ガスであることを特徴とする請求項13記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項15】
前記キャリヤガスは窒素、酸素、炭化水素系ガスから選ばれる少なくとも1つのガスであることを特徴とする請求項13記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項16】
前記原料溶液をエアロゾル化するときに、該形成されたエアロゾルを減圧およびまたは昇温することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項17】
前記プラズマは電子ビームを照射することにより生成することを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項18】
前記真空容器に導入された前記エアロゾルに電子ビームを照射することによって該エアロゾルに含まれる前記微粒子を帯電させることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項19】
前記真空容器に配置された被処理物に正または負のバイアス電圧を印加して、前記帯電した微粒子を被処理物に引きつけることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項20】
前記原料溶液を切り換えることによって多層構造の複合薄膜を形成することを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項21】
前記原料溶液の成分を徐々に変化させることによって傾斜組成構造の複合薄膜を形成することを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成方法。
【請求項22】
被処理物表面に溶媒に含まれる元素を含んでなる薄膜中に微粒子が分散した構造を持つ複合薄膜を形成するプラズマCVD装置であって、溶媒と微粒子からなる原料溶液をエアロゾル化するエアロゾル化装置と、内部に被処理物を設置する真空容器と、前記エアロゾル化装置から前記形成されたエアロゾルを前記真空容器に搬送する搬送系と、前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備えることを特徴とする微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項23】
前記エアロゾル化装置はキャリヤガスを噴出させる噴出機構を備えて前記原料溶液をエアロゾルにすることを特徴とする請求項22記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項24】
前記エアロゾル化装置は室内を減圧する減圧機構およびもしくは室内雰囲気を昇温する昇温機構を備えることを特徴とする請求項22または23記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項25】
前記搬送系にバッファー容器を備えることを特徴とする請求項22から24のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項26】
前記真空容器内に設置された被処理物にバイアス電圧を印加する直流電源、RF電源、パルス電源のいずれかを備えることを特徴とする請求項22から25のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項27】
前記真空容器にプラズマを発生させる電子ビーム励起プラズマ発生装置が設けられることを特徴とする請求項22から26のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項28】
前記エアロゾル化装置と前記搬送系が複数設置されて前記真空容器に供給するエアロゾルを切り換えられるようにしたことを特徴とする請求項22から27のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項29】
前記原料溶液を収納する原料溶液容器が複数設置されて、前記真空容器に供給するエアロゾルを切り換えられるようにしたことを特徴とする請求項22から27のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。
【請求項30】
前記真空容器内の前記被処理物を設置する機構が自公転機能を備えることを特徴とする請求項22から29のいずれかに記載の微粒子分散複合薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−142159(P2006−142159A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333367(P2004−333367)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】