説明

微粒子含有インク用インクジェット装置

【課題】微粒子によるインクジェットヘッドの閉塞を抑制でき、インクジェット方式により長時間安定して、微粒子含有インクを吐出できる微粒子含有インク用インクジェット装置を提供する。
【解決手段】供給タンク1a、送液ポンプ1b、および、中間タンク1cを有し、インクジェットヘッド3へ、微粒子含有インクを供給するインク供給部1と、上記インク供給部から供給される微粒子含有インクを吐出するインクジェットヘッドと、上記インク供給部および上記インクジェットヘッドに接続され、上記インク供給部から上記インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを送液するインク送液配管1dとを有し、上記インク送液配管に超音波振動子4が取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの製造方法等に用いられる微粒子含有インク用インクジェット装置に関するものであり、より詳しくはインクジェットヘッドが微粒子含有インクにより閉塞されにくい微粒子含有インク用インクジェット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、カラーフィルタと液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御してカラーフィルタの透過光または反射光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
【0003】
このような液晶表示装置には、スタティック駆動方式、単純マトリックス方式、アクティブマトリックス方式など種々の駆動方式があるが、近年、パーソナルコンピューターや携帯情報端末などのフラットディスプレーとして、アクティブマトリックス方式又は単純マトリックス方式の液晶パネルを用いたカラー液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0004】
図4は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置パネルの一例である。液晶表示装置101は、カラーフィルタ21と液晶駆動側基板であるTFTアレイ基板22とを対向させて1〜10μm程度の間隙部23を設け、この間隙部23内に液晶Lを充填し、その周囲をシール材24で密封した構造をとっている(例えば特許文献1等)。カラーフィルタ21は、基材25上に、着色層27間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成された遮光部26と、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)を所定順序に配列した着色層27と、オーバーコート層28と、透明電極膜29とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。
【0005】
一方、TFTアレイ基板22は、透明基板上にTFT素子を配列し、透明電極膜を設けた構造をとっている(図示せず)。また、カラーフィルタ21及びこれと対向するTFTアレイ基板22の内面側には配向膜30が設けられる。そして、着色層の背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0006】
ここで、間隙部23の厚さ、すなわちセルギャップ(カラーフィルタと液晶駆動側基板の間隙距離)は液晶層の厚さそのものであり、色ムラやコントラストムラといった表示ムラを防止し、均一な表示、高速応答性、高コントラスト比、広視野角等の良好な表示性能をカラー液晶表示装置に付与するためには、セルギャップを一定且つ均一に維持する必要がある。
【0007】
セルギャップを維持する方法としては、例えば図4に示すように、間隙部23内にスペーサとしてガラス、アルミナ又はプラスチック等からなる一定サイズの球状又は棒状粒子のビーズスペーサ31を多数散在させ、カラーフィルタ21とTFTアレイ基板22とを貼り合わせ、液晶を注入する方法がある。この方法においては、ビーズスペーサの大きさをもってセルギャップが決定され、維持される。しかしながら、上記方法では、カラーフィルタ全面にビーズスペーサが散布されることから、着色層上にもビーズスペーサが散布され、この部分での光の透過率が低くなり、液晶表示装置の輝度が低くなる、という問題があった。
【0008】
また、例えば図5に示すように、カラーフィルタ21の内面側であって遮光部26上(非表示領域)に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサ32を形成する方法も一般的に行われている(例えば特許文献2等)。このような柱状スペーサ32は、カラーフィルタの透明基板上に光硬化性樹脂を均一な厚みに塗布し、得られた塗膜をフォトリソグラフィーによってパターン露光して硬化させることにより、液晶表示装置の非表示領域に形成される。しかしながら、この方法においては、液晶表示装置が大面積化された場合等、柱状スペーサの高さを一定に形成することが難しく、液晶表示装置の表示ムラや表示不良が発生する場合がある、という問題があった。
【0009】
このような状況下、特許文献3にはビーズと接着剤とを含むビーズスペーサー形成材を用いてインクジェット方式により、ビーズと接着剤とからなるスペーサーを形成する方法が開示されている。このような方法は高精度でスペーサーを形成することができる点において有用であるが、一方、上記インクジェット方式に用いられるインクジェットヘッド内の流路がビーズで閉塞してしまい、生産性が劣るという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】特開平8−194216号公報
【特許文献2】特開2001−159707号公報
【特許文献3】特開2001−83524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、微粒子によるインクジェットヘッドの閉塞を抑制でき、インクジェット方式により長時間安定して、微粒子含有インクを吐出できる微粒子含有インク用インクジェット装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、供給タンク、送液ポンプ、および、中間タンクを有し、インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを供給するインク供給部と、上記インク供給部から供給される微粒子含有インクを吐出するインクジェットヘッドと、上記インク供給部および上記インクジェットヘッドに接続され、上記インク供給部から上記インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを送液するインク送液配管と、を有する微粒子含有インク用インクジェット装置において、上記インク送液配管に超音波振動子が取付けられていることを特徴とする、微粒子含有インク用インクジェット装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記インク送液配管に超音波振動子が取付けられていることにより、微粒子含有インクが送液される際に、上記インク送液配管内で微粒子の分散を促進することができるため、インク送液配管内で微粒子が凝集・沈降することを防止することができる。このため、本発明によれば、上記インクジェットヘッドが微粒子により閉塞されることを抑制することができ、長時間安定して微粒子含有インクを吐出できる。
【0014】
本発明においては、上記供給タンク、および、上記中間タンクの少なくとも一方に、超音波振動子が取付けられていることが好ましい。上記供給タンク、および、上記中間タンクの少なくとも一方に超音波振動子が取付けられていることにより、これらのタンク内においても微粒子の分散を促進できるため、上記インクジェットヘッドが閉塞することをより効果的に抑制できるからである。
【0015】
また本発明においては、上記インク送液配管に、上記インクジェットヘッドに形成されたインク流路の最小口径よりも、小さい口径を有するフィルターが設置されていることが好ましい。このようなフィルターを有することにより、インクジェットヘッドを閉塞させる微粒子等を、インクジェットヘッドに侵入する前に除去することができるため、インクジェットヘッドの閉塞をさらに防止できるからである。また、インク送液配管には上記超音波振動子が取付けられているため、上記フィルターを長寿命化できるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置によれば、微粒子によるインクジェットヘッドの閉塞を抑制でき、インクジェット方式により長時間安定して微粒子含有インクを吐出できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の微粒子含有インクジェット装置について詳細に説明する。
【0018】
本発明の微粒子含有インクジェット装置は、供給タンク、送液ポンプ、および、中間タンクを有し、インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを供給するインク供給部と、上記インク供給部から供給される微粒子含有インクを吐出するインクジェットヘッドと、上記インク供給部および上記インクジェットヘッドに接続され、上記インク供給部から、上記インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを送液するインク送液配管とを有し、上記インク送液配管に、超音波振動子が取付けられていることを特徴とするものである。
【0019】
次に、本発明の微粒子含有インクジェット装置について図を参照しながら説明する。図1は本発明の微粒子含有インクジェット装置の一例を示す概略図である。図1に例示するように本発明の微粒子含有インクジェット装置10は、インク供給部1と、インクジェットヘッド3とが、インク送液配管2により接続されており、上記インク送液配管2に超音波振動子4が取付けられたものである。上記インク供給部1は、微粒子含有インクをインクジェットヘッド3へ供給する機能を有するものであり、供給タンク1aと、送液ポンプ1bと、中間タンク1cとが、インク供給部送液配管1dによりそれぞれ接続されたものある。上記インクジェットヘッド3は、インク供給部1から供給される微粒子含有インクを吐出する機能を有するものである。また、上記インク送液配管2は、上記インク供給部1から上記インクジェットヘッド3へ微粒子含有インクを送液する機能を有するものである。本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置10には、インク送液配管2の長さ等に応じて、インク送液配管2に超音波振動子4が複数個取り付けられていても良い。
【0020】
インクジェット方式により微粒子含有インクを精密塗工する方法は、高精細で塗工できるという利点を有するが、インクジェットヘッドから吐出される微粒子含有インクの量は通常数ピコリットルと極微量であるため、インクジェット装置内での微粒子含有インクの滞留時間が長くなってしまい、装置内で微粒子が凝集・沈降してしまう問題点があった。このような微粒子の凝集・沈降が生じると、これらの凝集物により微粒子含有インクを吐出するインクジェットヘッドが閉塞されてしまうため、インクジェット方式により長時間安定して微粒子含有インクを塗工することは困難であるという問題点があった。多くの場合、このような問題点は、インク供給部を構成する中間タンクや供給タンクにおいてはタンク内で微粒子含有インクを攪拌することにより、微粒子の分散を促進し、微粒子の凝集・沈降を防止することが可能であるが、一旦インク送液配管に送液されると微粒子の分散を促進する手段がないため、微粒子の凝集・沈降が生じてしまうことに起因する。したがって、微粒子の凝集・沈降を防止するには上記供給タンクまたは中間タンクでの分散状態を保ったままインクジェットヘッドから吐出できるように、微粒子含有インクのインク送液配管での滞留時間を短縮化する以外に手段がなかった。しかしながら、インクジェットヘッドは可動式であることから、インクジェットヘッドの動作に追従するためにはインク送液配管を短くするにも限界があり、また、高精細な塗工を実現するという観点からは、インクジェットヘッドからの微粒子含有インクの吐出量を増加させることも困難であり、インク送液配管内における微粒子含有インクの滞留時間を短縮化することには限界があった。
【0021】
本発明によれば、上記インク送液配管に超音波振動子が取付けられていることにより、微粒子含有インクが送液される際に、上記インク送液配管内で微粒子の分散が促進されるため、微粒子が凝集・沈降することを防止することができる。
また、このような方法によればインク送液配管が長くなったとしても、その長さに応じて超音波振動子の数を増加させる対応が可能であるため、微粒子の凝集・沈降をなお防止することが可能である。さらに、超音波振動子をインク供給配管に取付けることにより、インクジェットヘッドの可動性に影響を及ぼすことがないという利点も有する。
したがって、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置によれば、インクジェットヘッドが微粒子により閉塞されることを抑制できるため、長時間安定して微粒子含有インクを吐出できる。
【0022】
図2は、本発明の微粒子含有インクジェット装置の他の例を示す概略図である。図2に示すように本発明の微粒子含有インクジェット装置11は、インク送液配管2に加えて、インク供給部1を構成する供給タンク1aおよび中間タンク1cにも超音波振動子4を有していても良い。また、必要に応じてインク供給部循環送液配管1e、および、循環送液配管5を有するものであっても良い。
【0023】
図2に例示するように、上記供給タンク、および、上記中間タンクに超音波振動子が取付けられていることにより、タンク内においても微粒子の分散を促進できるため、上記インクジェットヘッドが閉塞することをより効果的に抑制できる。
【0024】
図3は、本発明の微粒子含有インクジェット装置のさらに他の例を示す概略断面図である。図3に例示するように、本発明の微粒子含有インクジェット装置12には、インク送液配管2に、フィルター6が取付けられていても良い。本発明に用いられる上記フィルター6は、インクジェットヘッド3に形成されたインク流路の最小口径よりも、小さい口径を有するものであることが好ましい。
【0025】
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置が、上記フィルターを有することにより、インクジェットヘッドを閉塞させる微粒子の凝集物等を、これらがインクジェットヘッドに侵入する前に除去できるため、インクジェットヘッドの閉塞をさらに防止できる。また、インク送液配管には上記超音波振動子が取付けられているため、上記フィルターを長寿命化できる。
【0026】
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置は、インク供給部、インクジェットヘッド、インク送液配管、および、上記インク送液配管に取付けられた超音波振動子を有するものである。以下、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置の各構成について詳細に説明する。
【0027】
1.超音波振動子
まず、本発明に用いられる超音波振動子について説明する。本発明に用いられる超音波振動子は、インク送液配管に取付けることによりインク送液配管に滞留する微粒子含有インク中の微粒子がインク送液配管内において凝集・沈降することを防止する機能を有するものである。
【0028】
本発明に用いられる超音波振動子は、インク送液配管内の微粒子含有インクに超音波を伝達できるものであれば特に限定されず、市販の超音波発生装置を用いることができる。
【0029】
本発明においてインク送液配管に取付けられる超音波振動子の数は、インク送液配管の長さや、インク送液配管に通液する微粒子含有インクの組成等に応じて、微粒子含有インク中の微粒子がインク送液配管において凝集・沈降しない範囲で適宜選択される。本発明に用いられる超音波振動子の数は、1つであっても、または、複数個であってもよいが、なかでも1個〜10個の範囲内が好ましく、特に4個〜6個の範囲内が好ましい。
【0030】
また、本発明に用いられる超音波振動子の、インク送液配管の単位長さ当たりの取付け個数についても、インク送液配管に通液する微粒子含有インクの組成等に応じて、微粒子含有インク中の微粒子がインク送液配管において凝集・沈降しない範囲で適宜選択すれば良い。なかでも本発明においては、インク送液配管の長さ1m当たりの超音波振動子の取付け個数は、1個〜10個の範囲内が好ましく、なかでも2個〜4個の範囲内が好ましい。超音波振動子の取付け個数が上記範囲よりも少ないと、インク送液配管内において微粒子が凝集・沈降してしまう可能性が有り、また、上記範囲よりも多いとインクジェットヘッドの動作性を損なう恐れがあるからである。
【0031】
本発明に用いられる超音波振動子が発振する超音波の周波数は、インク送液配管を通液する微粒子含有インクの微粒子が凝集・沈降することを防止できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、15kHz〜3MHzの範囲内が好ましく、特に20kHz〜100kHzの範囲内が好ましい。
【0032】
本発明において、インク送液配管に複数個の超音波振動子を取付ける場合、各超音波振動子が発振する超音波の周波数は、同一であっても良く、または、異なる周波数であっても良い。また、超音波振動子を取付ける間隔は、一定間隔であっても良く、または、不規則であってもよい。
【0033】
2.インク送液配管
次に、本発明に用いられるインク送液配管について説明する。本発明に用いられるインク送液配管は、インク供給部からインクジェットヘッドへ微粒子含有インクを送液する機能を有するものである。また、本発明に用いられるインク送液配管は、上記インク送液配管は超音波振動子が取付けられるものである。
【0034】
本発明におけるインク送液配管は、微粒子含有インクを吐出するために所定の位置へ動作するインクジェットヘッドに接続されるため、本発明に用いられるインク送液配管は、このようなインクジェットヘッドの動作に追従できるフレキシビリティーを有することが必要である。本発明に用いられるインク送液配管は、一部分が上記フレキシビリティーを有するものであっても良く、または、全体が上記フレキシビリティーを有するものであっても良い。なかでも、本発明においては、全体が上記フレキシビリティーを有するものであることが好ましい。
【0035】
本発明に用いられるインク送液配管の材質としては、上記フレキシビリティーを有し、かつ、上述した超音波振動子から発振される超音波を、微粒子含有インクに伝達できるものであれば特に限定されない。
【0036】
本発明に用いられるインク送液配管の長さ、口径等については、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置におけるインク供給部とインクジェットヘッドとの距離、や、インクジェットヘッドからのインク吐出流量等に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0037】
3.インクジェットヘッド
次に、本発明に用いられるインクジェットヘッドについて説明する。本発明に用いられるインクジェットヘッドは、インク供給部からインク送液配管を通じて供給される微粒子含有インクを予め規定された一定量吐出する機能を有するものである。
【0038】
本発明に用いられるインクジェットヘッドは、所望の一定量を吐出できるものであれば特に限定されるものではない。このようなインクジェットヘッドとしては、圧電方式(ピエゾ方式)のものと、バブルジェット(登録商標)方式のものを挙げることができる。なかでも本発明においては、圧電方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。圧電方式のインクジェットヘッドは、吐出力において上記バブルジェット(登録商標)方式のものよりも優れるため、固体である微粒子を含有する微粒子含有インクを吐出するのに好適だからである。
【0039】
上記インクジェットヘッドが有する吐出口の数は、1つであっても良く、または、複数個であっても良いが、本発明においては複数個の吐出口を有することが好ましい。複数の吐出口を有することにより、同時に複数箇所への微粒子含有インクの吐出が可能となるからである。
【0040】
本発明に用いられるインクジェットヘッドは、インクジェットヘッド内で微粒子含有インクを一次的に溜め込むマニホールド部と、上記マニホールド部からインク吐出口へ微粒子含有インクを送液するオリフィス部とを有することが好ましい。このようなマニホールド部とオリフィス部とを有することにより、上記インクジェットヘッドが複数の吐出口を有する場合に、微粒子含有インクを複数の吐出口から均一に吐出することが容易になるからである。
【0041】
また、本発明に用いられるインクジェットヘッドは、インクジェットヘッド内において微粒子含有インクが接液するインク流路の少なくとも一部が撥水化処理されていてもよい。このような撥水化処理がなされていることにより、インクジェットヘッド内の流路が、微粒子含有インクに含まれる微粒子によって閉塞されることを防止できるからである。上記撥水化処理を行う部位は、インクジェットヘッド内のインク流路の口径等に応じて任意に決定すればよく、例えば、インク流路の一部であってもよく、または、インク流路の全体であっても良い。上記撥水化処理としては例えば、フッ素樹脂コーティング処理を挙げることができる。
【0042】
本発明に用いられるインクジェットヘッド内の微粒子含有インクが通液するインク流路の最小口径は、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置に用いられる微粒子含有インクに含まれる微粒子の粒径よりも大きければ良い。なかでも本発明においては、上記最小口径が上記微粒子の粒径の2.5倍以上であることが好ましく、なかでも3倍以上であることが好ましくい。より具体的には、1μm〜100μmの範囲内が好ましく、なかでも15μm〜40μmの範囲内が好ましい。
【0043】
4.インク供給部
次に、本発明に用いられるインク供給部について説明する。本発明に用いられるインク供給部は、インク送液配管を通じて、インクジェットヘッドに微粒子含有インクを供給する機能を有するものである。
【0044】
上述した図1に示すように、本発明に用いられるインク供給部1は、供給タンク1aと、ポンプ1bと、中間タンク1cとが、それぞれインク供給部送液配管1dにより接続された構成を有するものである。以下、本発明に用いられるインク供給部の各構成について説明する。
【0045】
(1)供給タンク
本発明に用いられる供給タンクは、微粒子含有インクを送液ポンプへ供給する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に公知の形状、材質からなるものを適宜選択して用いることができる。
【0046】
本発明に用いられる供給タンクには、供給タンク内で微粒子含有インクに含まれる微粒子が凝集・沈降することを防止するため、微粒子の分散性を維持・向上する微粒子分散装置が設置されていてもよい。このような微粒子分散装置は、上記微粒子の分散性を維持・向上できるものであれば特に限定されず、例えば、攪拌機や超音波振動子を挙げることができる。
【0047】
また、本発明に用いられる供給タンクは、内部が加圧されていても良い。供給タンクの内部が加圧されていることにより、微粒子含有インクをポンプへより安定的に供給できるからである。
【0048】
(2)送液ポンプ
本発明に用いられる送液ポンプは、一定量の微粒子含有インクを送液する機能を有するものである。このような送液ポンプとしては、所望の送液能力を有するものであれば、送液方式や、駆動方式等において特に限定されず、一般的に公知のポンプを用いることができる。
【0049】
(3)中間タンク
本発明に用いられる中間タンクは、インク送液配管を通じてインクジェットヘッドに送液される微粒子含有インクの送液圧を制御する送液圧制御機能を有するものである。
【0050】
本発明に用いられる中間タンクとしては、上記送液圧制御機構を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に公知のものを用いることができる。なかでも本発明においては、上記送液圧制御機構として、インクジェットヘッドの位置と連動して中間タンクの高さが変化することにより送液圧を制御する機構を有するものが好ましい。このような機構によれば簡易的に送液圧を制御することが可能となるからである。
【0051】
本発明に用いられる中間タンクには、中間タンク内で微粒子含有インクに含まれる微粒子が凝集・沈降することを防止するため、微粒子の分散性を維持・向上する微粒子分散装置が設置されていてもよい。このような微粒子分散装置は、上記微粒子の分散性を維持・向上できるものであれば特に限定されず、例えば、攪拌機や超音波振動子を挙げることができる。
【0052】
また、本発明に用いられる中間タンクは、内部が加圧されていても良い。中間タンクの内部が加圧されていることにより、微粒子含有インクをインクジェットヘッドへより安定的に供給できるからである。
【0053】
(4)その他
本発明に用いられるインク供給部には、中間タンクから供給タンクへ接続されたインク供給部循環送液配管を有していても良い。このようなインク供給部循環送液配管を有することにより、インクジェットヘッドから微粒子含有インクを吐出する必要のないタイミングにおいても、微粒子含有インクを循環させて送液することが可能になるため、インク供給部内における微粒子の沈降・凝縮を抑制することが可能になるからである。
【0054】
5.微粒子含有インク用インクジェット装置
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置は、上記以外の他の構成を有していても良い。このような構成としては、フィルターおよび循環送液配管等を挙げることができる。
【0055】
本発明においては、上記インク送液配管にフィルターが設置されていることが好ましい。上記インク送液配管にフィルターが設置されていることにより、微粒子含有インク中の微粒子の凝集物やその他の異物を当該フィルターにより除去できるため、上記インクジェットヘッドの内部流路が上記の物により閉塞されることを抑制できるからである。また、本発明においてはインク送液配管に超音波振動子が取付けられているため、他の部位へフィルターを設置した場合よりも、フィルターの寿命を長くすることができるからである。
【0056】
上記フィルターの口径としては、微粒子含有インクに含まれる微粒子の一次粒径以上であれば特に限定されないが、上記インクジェットヘッドに形成されたインク流路の最小口径よりも小さいことが好ましい。上記インクジェットヘッドに形成されたインク流路の最小口径よりも、小さい口径を有するフィルターを取付けることにより、インクジェットヘッド内のインク流路を閉塞させる物をインクジェットヘッドに侵入する前に除去することができるため、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置により、長時間安定して微粒子含有インクを吐出することができるからである。
【0057】
本発明に用いられるフィルターの口径としては、0.1μm〜100μmの範囲内が好ましく、なかでも10μm〜50μmの範囲内が好ましい。
【0058】
また、本発明に用いられるフィルターには、撥水化処理がなされていても良い。このような撥水化処理としては、例えば、フッ素樹脂コーティング処理を挙げることができる。
【0059】
本発明の微粒子含有インクジェット装置には、インクジェットヘッドとインク供給部へ接続された循環送液配管が取付けられていても良い。本発明に用いられる循環送液配管は、インクジェットヘッドからインク供給部の供給タンクへ微粒子含有インクを送液する機能を有するものであり、このような循環送液配管を有することにより、安定的にインクジェットヘッドから微粒子含有インクを吐出できるようになる。
【0060】
6.用途
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置は、任意の溶媒中に微粒子が含まれる微粒子含有インクを吐出するために用いられるものであり、なかでも微粒子の粒径が0.1μm〜10μmの範囲内、特に1μm〜8μmの範囲内の微粒子を含有する微粒子含有インクを吐出するのに好適に用いられる。
【0061】
本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタのビーズスペーサを形成するインクジェット装置としての用途に用いられることが好ましい。このような用途に用いられる場合、本発明のインクジェット装置に用いられる微粒子含有インクに含まれる微粒子としては、一般的にカラーフィルタのビーズスペーサーとして用いられるビーズが用いられる。
【0062】
上記ビーズとしては、ガラス、シリカ、金属酸化物(MgO、Al23)などの無機化合物の多孔質体や非多孔質体、中空体等や、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリル、ナイロン、シリコーン樹脂などのプラスチック類等を用いることができる。またこのようなビーズの表面は、ビーズ組成物層中に含有される樹脂との接着性を良好なものとするため、表面処理が施されたもの等であってもよい。
【0063】
上記ビーズの形状は球状であることが好ましい。またビーズの粒径は1.0μm〜8.0μm程度、中でも2.5μm〜5.5μm程度であることが好ましい。
【0064】
また、本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置に用いられる微粒子含有インクには、樹脂が含まれていても良い。このような樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0067】
(実施例)
本発明の装置構成について説明する。インク供給部とインクジェットヘッドとを、長さ3mのインク送液配管で接続することにより、微粒子含有インク用インクジェット装置を構成した。上記インク送液配管としては、フッ素樹脂製チューブ(内径4mm、外径6mm)を用い、超音波振動子(周波数40kHz)を3個/mの頻度で取付けた。
【0068】
(比較例)
上記超音波振動子を取付けないこと以外は、実施例1と同様にして微粒子含有インク用インクジェット装置を構成した。
【0069】
(評価)
実施例および比較例の微粒子含有インク用インクジェット装置を用い、インク送液配管中の流量が0.3g/時間(流速0.5mm/時間)となるように以下の組成を有する微粒子含有インクを1時間吐出した。
【0070】
<微粒子含有インクの組成>
ビーズ : 積水化学製ミクロパール(粒径4μm) 1.0質量%
熱硬化型樹脂 : アクリル樹脂(グリシジルメタクリレート) 20.0質量%
溶媒 : ブチルカルビトールアセテート 79.0質量%
【0071】
その結果、上記比較例の微粒子含有インク用インクジェット装置においては、インク送液配管内にビーズの沈降が見られた。一方、実施例の微粒子含有インク用インクジェット装置においては、インク送液配管内のビーズの沈降は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の微粒子含有インク用インクジェット装置の他の例を示す概略図である。
【図4】従来のカラーフィルタを説明するための概略図である。
【図5】従来のカラーフィルタを説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 …インク供給部
2 …インク送液配管
3 …インクジェットヘッド
4 …超音波振動子
5 …循環送液配管
6 …フィルター
1a … 供給タンク
1b … 送液ポンプ
1c … 中間タンク
1d … インク供給部送液配管
1e … インク供給部循環送液配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給タンク、送液ポンプ、および、中間タンクを有し、インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを供給するインク供給部と、
前記インク供給部から供給される微粒子含有インクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インク供給部および前記インクジェットヘッドに接続され、前記インク供給部から前記インクジェットヘッドへ微粒子含有インクを送液するインク送液配管と、
を有する微粒子含有インク用インクジェット装置において、
前記インク送液配管に超音波振動子が取付けられていることを特徴とする、微粒子含有インク用インクジェット装置。
【請求項2】
前記供給タンク、および、前記中間タンクの少なくとも一方に、超音波振動子が取付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の微粒子含有インク用インクジェット装置。
【請求項3】
前記インク送液配管に、前記インクジェットヘッドに形成されたインク流路の最小口径よりも、小さい口径を有するフィルターが設置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の微粒子含有インク用インクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−90280(P2007−90280A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285306(P2005−285306)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】