説明

微粒子計測方式

【課題】液体あるいは気体中に含まれる微粒子について、不純物濾過用のフィルター上に捕集した汚染物(コンタミネーション)として、その粒子径により数量分類して汚染度を等級表示するための高精度で安価な微粒子計測方式を提供する。
【解決手段】液体あるいは気体中の微粒子をフィルター1に捕集した汚染物として、フラットベッド型スキャナ2を用いて直接読み取る。そして、得られた情報をデジタル信号データとして情報処理手段3に入力し画像解析手段4によって得られた画像データより微粒子径を数量分類し汚染度の等級を判定する汚染等級判定手段5、および計測済みの汚染等級データより計測対象物の交換・浄化時期予測とその処置を促すための警告出力を制御する付加機能としての予測監視手段6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体あるいは気体中に含まれる微粒子について、不純物濾過用のフィルター上に捕集した汚染物(コンタミネーション/コンタミ)として、粒子径により数量分類して汚染度を等級表示するための微粒子計測方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
計測対象物をスキャナ装置により直接取り見込み、その情報をデジタル画像データとして情報処理手段により画像解析する計測方式については、計測分野や処理内容が異なるものの他の計測機器にも適用されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、フィルター上に捕集した汚染物(コンタミ)を顕微鏡と目視で微粒子径により数量分類して汚染度を等級表示する人手処理方式は、従来の各認定検査機関で実施されている。
【0004】
更に、フィルター上に捕集した汚染物を微粒子径により数量分類して汚染度を等級表示するための自動計測機器も、顕微鏡を採用した製品として出荷されている。(例えば、非特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−337471号 公報
【非特許文献1】「コンタミネーション解析システム」株式会社ニレコ、ホームページ製品情報 2006年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測対象が透明な液体や気体では、従来からレーザ光散乱方式による高精度な微粒子計測機器が製品として多数出荷されている。 しかし、汚染物としての微粒子が存在しない状態でも混濁あるいは乳化している液体の場合、前記のレーザ光散乱方式では不規則散乱や不透過のために採用できないため、汚染物をフィルター上に捕集して計測する必要がある。
【0006】
更に、フィルター上に捕集した微粒子を計測する場合は、標準規格のNAS1638規格等級法に従っている。一定量(100ml)の計測対象液体を濾過用フィルターで濾過後、フィルターをある大きさの格子(グリッド)に分割して、規格に従って何点かの格子内の微粒子径と数量を顕微鏡による人の目視でサンプル的に計数し、その結果を統計処理することでフィルター全体の汚染量を算出して汚染等級を決定している。その汚染等級は、その数値が小さい程、清浄度が高いと規定している。この場合、作業者の経験や技量により計測結果に差が生じて計測精度や品質が一定しないし、更には人手作業のために可也の計測時間も必要とする。
【0007】
他方、汚染物をフィルター上に捕集する場合でも自動計測する製品を適用できるが、顕微鏡の採用やフィルター支持台の付加、およびそれらの焦点や位置の制御機構も必要となり、機器は非常に高価なものとなっている。
【0008】
また、現行の計測製品では、その計測対象の液体や気体の汚染度を計測するだけで、直近や最新の汚染度データを監視して交換や浄化時期を予測する機能が付加されておらず、現場で遅滞無く効率的にそれらの処置を実施することが困難な場合があった。
【0009】
本発明の目的は、液体や気体中の微粒子を不純物濾過用のフィルター上に捕集した汚染物として、その粒子径により数量分類して汚染度を等級表示する場合に作業者の経験や技量に依らず均一な計測の精度・品質を実現し、更に計測対象物の交換・浄化時期を予測・通知するための高精度且つ安価な微粒子計測方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、フィルター上に捕集した汚染物の粒子径により数量分類して汚染度を等級表示する方式であって、上記のフィルター上に捕集した汚染物を、フラットベッド型スキャナを用いてフィルター全面を直接読み取り、得られた情報をフィルター全領域のデジタル画像データとして情報処理手段に入力して画像解析を行うことで実現する。
【0011】
また、前記の情報処理手段と共に計測結果の汚染度等級データを蓄積して、直近の数回および最新の汚染度等級データから計測対象物の汚染度の増加率(汚染の進行度)と予め規定された限界汚染等級に到達する時期を算出し、計測対象物の交換や浄化時期を予測して作業者に事前通知する監視機能を設ける。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、フィルターに補集された汚染物(コンタミネーション)を市販製品の高解像度のフラットベッド型スキャナによりそのフィルター全面・全領域を直接読み取り、そのデジタルデータを市販製品の高性能パソコンにより画像解析して汚染等級判定を実行させることが可能である。これにより高精度且つ高速に計測処理できるだけでなく市販製品で構成される安価な計測装置を提供できる利点がある。
【0013】
また、直近や最新の計測済みの汚染等級データを監視して交換や浄化時期を予測し警告も行うことで、現場で作業者が遅滞無く効率的にそれらの処置を実施することが可能となり非常に有用である。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例について図1〜図4に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明における装置の構成を示す図である。液体あるいは気体中の微粒子をフィルター1に捕集した汚染物として、フラットベッド型スキャナ2を用いて直接読み取る。 そして、得られた情報をデジタル信号データとして情報処理手段3に入力する。
【0016】
フラットベッド型スキャナ2は、従来から写真、印刷物、絵画等の複写や編集に頻繁に使われており、平面状態のガラス面に置かれた対象物を走査して高精度で読み取り、デジタル信号データに変換する装置である。 本実施例では、直径25mmのフィルター紙を光学解像度4800dpi、出力解像度9600dpiで読み取れる市販製品を採用している。 これより、採用したスキャナ装置では、微粒子径に関するハードでの最小分解能は約5.3ミクロンであり、更なる高分解能は今後出荷される製品の性能に依存している。
【0017】
情報処理手段3には、フラットベッド型スキャナ2から受け取ったデジタル信号データの記憶手段、演算手段、それらの制御手段を含む画像解析手段4と、前記画像解析手段4によって得られた画像データより微粒子径を数量分類し汚染度の等級を判定する汚染等級判定手段5、および計測済みの汚染等級データより計測対象物の交換・浄化時期予測とその処置を促すための警告(アラーム)出力を制御する付加機能としての予測監視手段6が設けられている。 情報処理手段3としては、画像解析を高速処理する必要があり、本実施例では市販製品の高性能パーソナルコンピュータ(パソコン)を採用している。
【0018】
また、情報処理手段3で処理された汚染等級判定を含む計測結果の表示、および計測対象物の交換・浄化時期の予測や警告表示はディスプレイ7に表示され、必要によりそれらの表示データはプリンター8により紙に印刷・保管される。
【0019】
更に、前記情報処理手段3で処理された計測結果としての汚染等級データは、指定により計測実施日時データを含んで蓄積手段9に記憶され、交換・浄化時期の予測データとして予測監視手段6により使用される。
【0020】
尚、警告音出力手段10は、情報処理手段3の予測監視手段6により使用され、計測対象物の交換・浄化時期が迫り作業者にその処置を促すための警告(アラーム)音を出力する場合に使用される。
【0021】
前記情報処理手段3の画像解析手段4、汚染等級判定手段5、および予測監視手段6は、全てアプリケーションソフトウェアにより実現している。 特に、画像解析手段4については画像認識・処理の理論を基にして他の市販の画像処理ソフトを流用せずに独自開発したものである。 また、汚染等級判定手段5は、最終的な等級格付けとしてNAS1638規格等級法に準拠している。 全て独自開発したソフトウェアである。
【0022】
図2は、機械加工用の作動油についてフィルター上に捕集した汚染物(コンタミ)のサンプル写真である。 本図より、汚染物はフィルター全面に一様に分布していないことが確認でき従来のサンプル的な処理では計測精度に問題があるため、本発明ではその全領域を画像解析することにより計測の精度と品質を向上させている。
【0023】
図3は、図2に示すフィルターの汚染物サンプルについて実際に計測した結果のグラフ表示例を示している。 本例の計測結果では、NAS1638規格等級法で分類される(00,0,1,2,3,〜,10,11,12)の合計14クラス内の10等級に判定されているため、作動油としてかなり汚染が進行している。尚、計測時間は初期設定を除いて、平均5分間程度である。
【0024】
図4は、情報処理手段3の予測監視手段6が、蓄積手段9に記憶された直近の数回および最新の計測済みの汚染等級データより、計測対象物の汚染度の増加率(汚染の進行度)と予め規定された限界汚染等級に到達する時期を算出するために採用した手法の一例を説明している。 ここでは、蓄積している何回かの汚染等級データについて最小二乗法に基づいて一次近似により”y=ax+b”の直線を求めて、これと限界汚染等級値(Pm)線との交点における横軸(X軸)上の数値(時間・計測日)より、その時期を予測・算出している。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の微粒子計測方式は、フィルターに補集された微粒子の汚染等級判定方法を流用した大気汚染の定期監視、試験紙片上に一定時間に落下する埃の粒子径計測による工場内環境の空気汚染監視、等で産業上の利用可能性と応用分野は広い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に用いられる装置の構成を示す説明図。
【図2】フィルターに補集された汚染物(コンタミ)のサンプル写真。
【図3】フィルター上の汚染物について画像解析による計測結果のグラフ表示例。
【図4】汚染等級データより計測対象物の交換・浄化時期を予測計算する説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 フィルター
2 フラットベッド型スキャナ
3 情報処理手段
4 画像解析手段
5 汚染等級判定手段
6 予測監視手段
7 ディスプレイ
8 プリンター
9 蓄積手段
10 警告音出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体あるいは気体の計測対象物中に含まれる微粒子としてフィルター上に捕集した汚染物(コンタミネーション)を、フラットベッド型スキャナを用いてフィルター全面を直接読み取り、得られた情報をデジタル信号データとして情報処理手段に入力して画像解析を行い、前記汚染物を微粒子径により数量分類して汚染度を等級表示するようにしたことを特徴とする微粒子計測方式。
【請求項2】
前記画像解析として、フィルター上の全領域について捕集した微粒子を計測することにより汚染度の等級表示を得るようにしたことを特徴とする請求項1の微粒子計測方式。
【請求項3】
前記等級表示の付加機能として、直近の数回の計測済み等級データを蓄積手段に記憶して、前記計測済み及び最新の等級データを前記情報処理手段に入力することにより前記計測対象物の汚染度の増加率(汚染の進行度)と予め規定された限界汚染等級に到達する時期を予測計算し、作業者に前記計測対象物の交換あるいは浄化時期の予測表示、更には交換あるいは浄化処置を促すための警告(アラーム)表示と音、から構成される監視手段を具えることを特徴とする請求項1の微粒子計測方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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