説明

微粒子計測装置、および微粒子モニタリング装置

【課題】ポータブルタイプとして適しかつ高感度、高効率で微粒子計測を行うことができる微粒子計測装置を提供する。
【解決手段】本発明による微粒子計測装置は、ケース壁内外に連通する微粒子トラップフィルタ13を装備して回転駆動される回転ケース11と、この回転ケースにレーザー光を照射するレーザー光照射装置3と、上記微粒子トラップフィルタへのレーザー光照射により得られる光に基づき微粒子分光検出する微粒子検出装置5と、微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御する制御装置7とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子計測装置に関するものである。
【0002】
本発明はまた、微粒子計測には至らないが、微粒子をモニタリングすることが可能な微粒子モニタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
微粒子の計測技術としては、粒子による散乱光量に基づいて浮遊微粒子を分級する光散乱式微粒子計測(特許文献1)、静電気力に基づいて微粒子を分級する微分型静電分級(特許文献2)、気流方向の変化に基づいて微粒子を分級する慣性インパクター分級がある(特許文献3)。これら計測技術では微粒子サイズに関する情報を得ることができる。上記分級技術では微粒子サイズに関する情報を得ることはできるが、微粒子の種類等に関する情報を得ることはできない。その課題を解決するものとして例えばラマン分光技術が提案されている。このラマン分光技術では微粒子サイズに加えて、微粒子の種類を特定することができるようになっている。ラマン分光はレーザー光等の単色光を微粒子に照射し、微粒子特有の形態で発生したラマン散乱光を分光器等で検出して微粒子の種類等に関する情報を得る技術である。近年では、ナノテクノロジの発展に伴って、微粒子の計測領域がサブマイクロレベルからナノレベルの領域を必要としているために、より高感度で、高効率で微粒子を計測できる技術が求められるようになっている。このような高感度、高効率で微粒子計測を行う装置も実際提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−062055号公報
【特許文献2】特開2006−122890号公報
【特許文献3】特開2004−144647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件出願人は、このような高感度、高効率で微粒子計測を行うことができると同時に簡易軽量コンパクトでポータブルタイプとして最適とし、かつ、低価格で製造販売可能な装置の開発に鋭意取り組んでいる。
【0006】
これまでの微粒子計測装置では、高感度、高効率で微粒子計測を行うことができる反面、その高感度、高効率化のために装置全体が大型化しかつ製造販売価格も高価格化せざるを得ないものとなっている。
【0007】
例えば高感度ラマン分光装置では、高感度、高効率化のために、分光検出器、CCD素子、液体窒素冷却、等の複雑な機構化と複雑な制御化とにより、装置全体が大型重量化して簡易軽量なポータブルな装置ではない。
【0008】
なお、簡易である一方、高感度、高効率化を達成するには、サイズがナノレベルの微粒子を簡易に捕捉(トラップ)可能とし、かつ、計測を行うに必要とする量の微粒子を捕捉確保することも必要となる。
【0009】
また、微粒子には各種サイズがあるが、これらを簡易に分級して計測できることも望まれる。
【0010】
したがって、本発明により解決すべき課題は、簡易軽量コンパクトでポータブルタイプとして最適とし、かつ、低価格で製造可能である一方で、高感度、高効率で、かつ、分級可能に、微粒子計測を行うことができる微粒子計測装置を提供することである。この場合、本発明は、最適には上記課題のすべてを解決できる微粒子計測装置を提供できることであるが、本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決する微粒子計測装置を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による微粒子計測装置は、回転方向に沿うケース壁の1ないし複数箇所に当該ケース壁を内外に連通するごとく微粒子トラップフィルタを装備して回転駆動される回転ケースと、上記回転ケースにレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、上記微粒子トラップフィルタへのレーザー光照射により得られる光に基づき微粒子を分光検出する微粒子検出装置と、微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御する制御装置と、を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、微粒子トラップフィルタは、回転ケースに対して回転方向に沿うケース壁の1ないし複数箇所に当該ケース壁を内外に連通するようにして設けられているので、回転ケースの回転が低速回転で回転遠心力が小さいときは、当該回転ケース内の溶媒を微粒子トラップフィルタを通じてケース外に排出させる向きにできるケース内外の圧力差を微粒子トラップに用いることが可能である。この圧力差を利用することでケース内に溶媒と共に取り込んだ微粒子のうち、重量が軽い微粒子を微粒子トラップフィルタ方向に移動させ、ここでトラップさせることができる。また、回転ケースの回転が高速回転するときは、回転遠心力が大きくなるから、この大きな回転遠心力を溶媒に作用させて、溶媒中の重量が重い微粒子を回転ケースの内周壁面に沿わせつつ移動させると共に、そこに設けてある微粒子トラップフィルタでトラップさせることができる。
【0013】
以上により、本発明では、簡易軽量コンパクトでポータブルタイプとして最適とし、かつ、低価格で製造可能であると共に、回転ケースの回転速度を制御することで微粒子重量に応じて微粒子をトラップして計測することができるようになる。
【0014】
また、本発明では、制御装置により、微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御するために、微粒子検出装置での検出波形は、微粒子トラップフィルタで捕捉されている微粒子のみの検出波形とすることができる結果、高感度、高効率で微粒子検出性能に優れた装置を得ることができる。
【0015】
本発明において、好ましい態様は、上記微粒子トラップフィルタを、細孔を多数有する多孔体により構成することである。
【0016】
本発明において、好ましい態様は、上記回転ケースには、トラップできる微粒子粒径が相違する少なくとも2つ以上の微粒子トラップフィルタを備えて微粒子を少なくとも2つ以上に分級計測可能とすることである。
【0017】
本発明による微粒子モニタリング装置は、回転方向に沿うケース壁の1ないし複数箇所に当該ケース壁を内外に連通する微粒子トラップフィルタを装備して回転駆動される回転ケースと、上記回転ケースにレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、上記微粒子トラップフィルタへのレーザー光照射により得られる光に基づき微粒子分光検出する微粒子検出装置と、微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御する制御装置と、含むことを特徴とする。本発明では、微粒子計測までには至らないまでも、微粒子モニタリングを含むことができる。このモニタリングには検出も含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易軽量コンパクトでポータブルタイプとして最適とし、かつ、低価格で製造可能である一方で、高感度、高効率で微粒子計測を行うことができる微粒子計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる微粒子計測装置の構成を示す図である。
【図2】図2(a)は図1の微粒子計測装置内の微粒子捕捉装置のA−A線断面構成を示す図、図2(b)は図1の微粒子計測装置内の微粒子捕捉装置のB−B線断面構成を示す図である。
【図3】図3は図1の円Cで囲む部分を拡大して示す図である。
【図4】図4は作用説明に供するもので微粒子捕捉装置の概略平面構成を示す図である。
【図5】図5は図4の作用説明に供するもので、図5(a)は分光検出器の検出波形図、図5(b)は回転ケース駆動モータの制御波形図、図5(c)は図5(a)の検出波形において、ノイズを除去した検出波形を示す図である。
【図6】図6は微粒子捕捉装置における回転ケースの環状外側シェルの変形例を示す図である。
【図7】図7はさらに環状外側シェルの他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る粒子計測装置を説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる微粒子計測装置の構成を示す。また、図2(a)は図1の微粒子計測装置内の微粒子捕捉装置のA−A線断面構成を示し、図2(b)は図1の微粒子計測装置内の微粒子捕捉装置のB−B線断面構成を示す。さらに、図3は図1の円Cで囲む部分を拡大して示す。
【0021】
これらの図を参照して、微粒子計測装置は、微粒子捕捉装置1と、レーザ光照射装置3と、微粒子検出装置5と、制御装置7と、を含む。
【0022】
(微粒子捕捉装置1)
微粒子捕捉装置1は、装置内部に大気等の気体あるいは液体である溶媒と共に微粒子を取り込むと共に、この取り込んだ溶媒内の微粒子を、装置内外の圧力差(主に低速回転域)および回転遠心力(主に高速回転域)により装置内所定箇所に集積して捕捉するものである。そのため、微粒子捕捉装置1は、装置本体9と、回転ケース11と、この回転ケース11内に設けられた複数の微粒子トラップフィルタ13と、を含む。この微粒子トラップフィルタ13は、回転ケース11の回転方向に沿う当該ケース壁(後述するように環状外側シェル11aのシェル壁に相当)の複数箇所に当該ケース壁を内外に連通して微粒子をトラップするフィルタとなっている。
【0023】
回転ケース11は、内部に微粒子を含む溶媒を取り込める環状空間を有するケースであり、光透過性で回転可能な環状外側シェル11aと、光非透過性かつ非回転固定の環状内側シェル11bとを同心に備える。環状内側シェル11bは、環状外側シェル11aを回転可能に支持するものであり、円筒体11b1と、円形平板11b2とを含む。環状内側シェル11bの円筒体11b1には、該空間15内に溶媒を吸入する溶媒吸入口11cが設けられている。環状内側シェル11bの円形平板11b2には溶媒吸入口11cに対して回転方向上流側で微粒子捕捉空間15内から溶媒を外部排出する溶媒排出口11dが設けられている。環状外側シェル11aと環状内側シェル11bとの間は図示略の密封機構で環状外側シェル11aが回転可能なごとく密封処理が施されている。
【0024】
微粒子トラップフィルタ13は、環状外側シェル11aの内周面に回転方向に複数箇所に設けられている。微粒子トラップフィルタ13は、環状外側シェル11aの内周面において好ましくは円周方向略等間隔で複数設けられている。
【0025】
微粒子トラップフィルタ13は、微粒子が通過できない孔径をもつ細孔を多数有する多孔体、例えば、多孔質ガラス、その他で構成されている。多孔質ガラスの作製法としては、ガラスの分相による方法、ゾルゲル法による方法、均一粒子の焼結による方法等がある。
【0026】
微粒子捕捉装置1において、環状外側シェル11aはモータ回転軸17が取り付けられている。このモータ回転軸17はモータ19により回転され、これにより、環状外側シェル11aはモータ回転軸17を中心にして回転駆動されるようになっている。
【0027】
環状外側シェル11aは、モータ19により回転駆動されると、環状内側シェル11bに設けてある溶媒吸入口11cから微粒子21と共に溶媒を吸入する。微粒子21にはカーボンナノチューブ等のナノサイズの微粒子を含む。モータは例えばステッピングモータで構成することができる。
【0028】
以上の構成において、微粒子トラップフィルタ13は環状外側シェル11aの壁面を内外に貫通しているので、環状外側シェル11aが回転停止しているときは、環状外側シェル11aと環状内側シェル11bとで囲む微粒子捕捉空間15内圧力(内圧)と環状外側シェル11a外の圧力(外圧)とは等圧である。
【0029】
そして、微粒子捕捉空間15内に溶媒が吸引され、環状外側シェル11aが低速回転すると、微粒子トラップフィルタ13により、環状外側シェル11a内圧は、外圧より高くなり、この内外圧力差により微粒子捕捉空間15内の溶媒は微粒子トラップフィルタ13を介して外部に流出すると共に、溶媒内の微粒子21はこの微粒子トラップフィルタ13でトラップされる。この場合、より内外圧力差を得るために溶媒吸引圧を高くすることが好ましい。また、環状外側シェル11aが低速回転するときは、溶媒に作用する回転遠心力は小さく、したがって、この回転遠心力は、溶媒が環状外側シェル11a内を半径方向外方へ移動するように作用する力としては小さい。
【0030】
次に、環状外側シェル11aが高速回転すると、上記圧力差よりも、微粒子捕捉空間15内の溶媒には、環状外側シェル11a内を半径方向外方へ移動させる回転遠心力が大きく作用するようになる。そして、上記溶媒は、回転遠心力により微粒子捕捉空間15内を回転方向に移動しつつ半径方向外側に移動する。この場合、重量が重い微粒子が特に半径方向外方へ移動し、微粒子トラップフィルタ13でトラップされる。
【0031】
なお、環状外側シェル11aが中速回転するときは、上記低速回転域と高速回転域との両状態で微粒子は微粒子トラップフィルタ13でトラップされる。
【0032】
以上から本実施の形態では、環状外側シェル11aの全回転域において微粒子を微粒子トラップフィルタ13でトラップすることができる。
【0033】
図1では符号t1,t2,t3,t4,…で示すように、溶媒吸入口11cから吸入された溶媒中の微粒子21は、微粒子トラップフィルタ13により捕捉され、最終的には微粒子21のほとんどは微粒子トラップ13に蓄積捕捉されるようになる。
【0034】
(レーザー光照射装置3)
レーザー光照射装置3は、レーザー光源3aと、集光レンズ3bと、を備え、このレーザー光源3aから単色光であるレーザー光を微粒子捕捉装置1に照射する装置である。レーザ光源3aは、微粒子捕捉装置1の環状外側シェル11aの外側からレーザ光出射口3cを向けた状態で配置され当該環状外側シェル11aに向けて単色光であるレーザ光25を照射することができるようになっている。集光レンズ3bは、装置本体9に設けたレーザ光導入用の窓孔9aに取り付けられている。
【0035】
このレーザ光25は、レーザ光導入用窓孔9aを介して、微粒子捕捉装置1を照射する。レーザ光25は、微粒子捕捉装置1の環状外側シェル11aに設けた微粒子トラップフィルタ13を照射する。このレーザー光25は、微粒子トラップフィルタ13でトラップされて蓄積されている微粒子21で反射されて、ラマン散乱する。ラマン散乱の詳細は周知のため略するが、該微粒子21内で散乱され、入射レーザ光25とは波長が異なるレーザ光として反射される現象である。
【0036】
(微粒子検出装置5)
微粒子検出装置5は、半透鏡(ビームスプリッタ)29と、回折格子31と、フォトマルチプライヤ等の微粒子検出器33とを備える。
【0037】
半透鏡29は、レーザ光源3aと微粒子捕捉装置1の環状外側シェル11aとの間を結ぶ光軸上に対して斜め45度の角度で配置されることで、レーザ光源3aから一方向に照射されるレーザ光25を透過させ、他方向からの上記反射レーザ光27を90度方向に全反射させることができるようになっている。回折格子31は、半透鏡29から反射されたレーザ光35の光軸に対して45度の角度で配置されることで当該レーザ光35を分光すると共に微粒子検出器33方向に反射させる。微粒子検出器33は、分光されてきたレーザ光37から微粒子を分光検出することができるようになっている。
【0038】
(制御装置7)
制御装置7は、例えばコンピュータ等から構成され、モータ19制御で微粒子捕捉装置1の回転制御、レーザー光源3aの駆動制御、微粒子検出器33の検出制御、を行う。制御装置7は、図4および図5を参照して後述するように、微粒子トラップフィルタ13にレーザー光25を照射し得る位置に回転ケース11の環状外側シェル11aを回転駆動するタイミングと、微粒子検出装置33により微粒子を検出するタイミングとを同期制御する。
【0039】
以下、図4および図5を参照して動作を説明する。図4は作用説明に供するもので微粒子捕捉装置の概略平面構成を示し、図5(a)は微粒子検出器33の検出波形、図5(b)は回転ケース11の駆動モータ19の制御波形、図5(c)は図5(a)の検出波形において、ノイズを除去した検出波形をそれぞれ示す。
【0040】
図4において微粒子トラップフィルタ13を説明する。なお、図5(b)で示す駆動モータ19の制御波形に代えて、図示を略するが、例えば回転ケース11に取り付けたマーカー等にセンサを取り付け、このセンサから得られるセンサ波形、その他同様のものでもよい。
【0041】
図4中、符号t1が記入された近傍の微粒子トラップフィルタ13は符号13Aで示し、装置本体9のレーザ光導入用窓孔9aを時刻t1で通過する微粒子トラップフィルタ13を示す。符号t2が記入された近傍の微粒子トラップフィルタ13は符号13Bで示し、装置本体9のレーザ光導入用窓孔9aを時刻t2で通過する微粒子トラップフィルタ13を示す。符号t3が記入された近傍の微粒子トラップフィルタ13は符号13Cで示し、装置本体9のレーザ光導入用窓孔9aを時刻t3で通過する微粒子トラップフィルタ13を示す。符号t4が記入された近傍の微粒子トラップフィルタ13は符号13Dで示し、装置本体9のレーザ光導入用窓孔9aを時刻t4で通過する微粒子トラップフィルタ13を示す。
【0042】
今、環状外側シェル11aが回転すると、環状外側シェル11aの回転に伴い、溶媒中の微粒子21はその回転速度により、環状外側シェル11a内外の圧力差と、回転遠心力とにより半径方向外側に移動すると共に、各微粒子トラップフィルタ13により捕捉集積されてくるようになる。
【0043】
そして、時刻t1では、微粒子トラップフィルタ13Aが装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向している。この状態では、微粒子トラップフィルタ13Aに微粒子21はそのほとんどがトラップされて集積している。時刻t2で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向する微粒子トラップフィルタ13Bは図4で示す時刻t1の段階では、微粒子21は少しトラップされている。また、時刻t3で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向する微粒子トラップフィルタ13Cは図4で示す時刻t1の段階では、微粒子21はそれほどトラップされていない。時刻t4で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向する微粒子トラップフィルタ13Dは図4で示す時刻t1の段階では、微粒子21は、ほとんど、トラップされていない。
【0044】
以上により、時刻t1では微粒子トラップフィルタ13Aが装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向している。この状態では、微粒子トラップフィルタ13Aには微粒子21がトラップされている。微粒子トラップフィルタ13Aが装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向すると、この対向したタイミングで微粒子検出器33から検出信号S1が図5(a)の時刻t1で示すように出力される。ここで、この時刻t1前後でも微粒子検出器33から信号が出力されるが、これら信号は検出信号S1とは異なり、ノイズ信号Nとなる。
【0045】
次の微粒子トラップフィルタ13Bが時刻t2で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向すると、この対向したタイミングで微粒子検出器33から検出信号S2が図5(a)の時刻t2で示すように出力される。ここで、この時刻t2前後でも微粒子検出器33から信号が出力されるが、これら信号は検出信号S2とは異なり、ノイズ信号Nとなる。
【0046】
同様に、微粒子トラップフィルタ13C,13Dそれぞれが時刻t3,t4で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向すると、この対向したタイミングそれぞれで微粒子検出器33から検出信号S3,S4が図5(a)の時刻t3,t4で示すように出力される。
【0047】
このとき、微粒子トラップフィルタ13A−13Dそれぞれが時刻t1−t4で装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向するようにモータ19の回転を図5(b)で示すモータ制御波形で制御する。C1−C4は、モータ19の制御波形であり、微粒子検出器33からの信号S1−S4それぞれの出力時刻t1−t4と、モータ19の制御波形C1−C4それぞれの制御時刻t1−t4とが対応している。
【0048】
その結果、制御時刻t1−t4のタイミングで微粒子検出器33出力を図示略の同期増幅器で増幅すると、図5(c)で示すように、この同期増幅器からは、ノイズ信号Nが実質除去された検出信号S1−S4のみを得ることができる。この同期増幅器は、微粒子検出装置1の検出出力を微粒子計測のために処理するものであり、その同期増幅タイミングを制御時刻t1−t4のタイミングに同期させる。この同期増幅器出力により微粒子計測ないし微粒子モニタリングができる。
【0049】
図6を参照して環状外側シェル11aの変形例を説明する。この変形例で示す環状外側シェル11aには、微粒子をトラップするための細孔の孔径を異ならせて、分級トラップできる微粒子サイズが相違するようにした複数の微粒子トラップフィルタ13を備えて、微粒子を複数に分級計測することができるようになっている。
【0050】
例えば符号131は第1分級で微粒子を分級することができる微粒子トラップフィルタ、132は、第2分級で微粒子を分級することができる微粒子トラップフィルタ、133は、第3分級で微粒子を分級することができる微粒子トラップフィルタ…である。なお分級とは種々の粒径の微粒子が混じっている中から、規格を満たす一定の粒径分布をもつ微粒子を得る操作のことである。そのため、微粒子トラップフィルタ131,132,…は、それぞれの粒径の微粒子をトラップできるようになっている。
【0051】
なお、以上の実施の形態では微粒子計測装置であったが、計測ではなく、微粒子のモニタリングにも適用することができる。このモニタリングには微粒子検出も含むことができる。
【0052】
図7を参照して環状外側シェル11aの変形例を説明する。上記環状外側シェル11aにおける微粒子トラップフィルタ13は、半径方向外方にドーム状に突出した形状であるが、図7の変形例で示す環状外側シェル11aにおける微粒子トラップフィルタ13では、環状外側シェル11aの周壁を複数箇所(この例では8箇所)において矢印で示す回転方向と反対方向で漸次にその半径を拡径させる。そして、各箇所(この例では上記8箇所)における最大半径部位それぞれに微粒子トラップフィルタ13を配置する構成としている。この構成では、回転遠心力が作用した際に、微粒子21がより円滑に微粒子トラップフィルタ13に向けて移動し効果的にトラップすることができるようになっている。
【0053】
以上から本実施の形態では、装置的には、内部に溶媒と共に取り込んだ微粒子21を、微粒子捕捉装置1の環状外側シェル11aの回転遠心力により微粒子トラップフィルタ13でトラップするという構成であり、微粒子捕捉装置1としては簡易軽量でコンパクト化を図れる。
【0054】
本実施の形態では、制御装置7により、微粒子トラップフィルタ13が装置本体9のレーザ光導入窓9aに対向しレーザー光25により照射されるタイミングと、微粒子検出装置5により微粒子が検出されるタイミングとを同期制御するために、微粒子検出装置1での検出波形は、微粒子のみの検出波形とすることができるので、高感度、高効率で微粒子検出ができる装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 微粒子捕捉装置
9 装置本体
11 回転ケース
11a 環状外側シェル
11b 環状内側シェル
13 微粒子トラップフィルタ
3 レーザ光照射装置
5 微粒子検出装置
7 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向に沿うケース壁の1ないし複数箇所に当該ケース壁を内外に連通する微粒子トラップフィルタを装備して回転駆動される回転ケースと、
上記回転ケースにレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、
上記微粒子トラップフィルタへのレーザー光照射により得られる光に基づき微粒子を分光検出する微粒子検出装置と、
微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御する制御装置と、
を含むことを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項2】
上記微粒子トラップフィルタが、細孔を多数有する多孔体により構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記回転ケースには、トラップできる微粒子粒径が相違する少なくとも2つ以上の微粒子トラップフィルタを備えて微粒子を少なくとも2つ以上に分級計測可能とした、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
回転方向に沿うケース壁の1ないし複数箇所に当該ケース壁を内外に連通する微粒子トラップフィルタを装備して回転駆動される回転ケースと、
上記回転ケースにレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、
上記微粒子トラップフィルタへのレーザー光照射により得られる光に基づき微粒子分光検出する微粒子検出装置と、
微粒子トラップフィルタにレーザー光を照射し得る位置に回転ケースを回転駆動するタイミングと、上記微粒子検出装置の検出出力を微粒子計測のために処理するタイミングとを同期制御する制御装置と、
を含むことを特徴とする微粒子モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281660(P2010−281660A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134732(P2009−134732)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】